特許第6046989号(P6046989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046989
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/626 20060101AFI20161212BHJP
   C04B 35/573 20060101ALI20161212BHJP
   C04B 35/565 20060101ALI20161212BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C04B35/56 101P
   C04B35/56 101U
   C04B35/56 101C
   H05B3/14 C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-254396(P2012-254396)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101253(P2014-101253A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】影山 健友
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 真
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504092(JP,A)
【文献】 特開2012−131686(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/082938(WO,A1)
【文献】 特開2008−156170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/565−35/577
C04B 38/00−38/10
H05B 3/14
B01D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素の粉末と、ケイ素粉末と、炭素粉末と、の混合粉末よりなる原料を焼成する工程を有する炭化ケイ素焼結体の製造方法であって、
該原料に含まれる炭化ケイ素は、その粒度分布が、(D90)/(D10)≦10,(D50)/(D10)≦5の条件を満たす微細な炭化ケイ素粉末を有し、
気孔率が40〜55%となるように製造することを特徴とする炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記原料に含まれる炭化ケイ素の粒度分布が、前記微細な炭化ケイ素粉末のピークと、該微細な炭化ケイ素粉末とは異なるひとつ以上のピークと、を示し、
該原料に含まれる炭化ケイ素は、該ひとつ以上のピークのうち、該微細な炭化ケイ素粉末のピークの大径側で最も近接したピークのD10が、該微細な炭化ケイ素粉末のピークのD90に対して、(D10)/(D90)≧1の条件を満たす請求項1記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記原料に含まれる炭化ケイ素は、前記微細な炭化ケイ素粉末と、該微細な炭化ケイ素粉末よりもメジアン径(D50)が大きな粗大な炭化ケイ素粉末と、の混合粉末よりなる請求項1〜2のいずれかに記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記微細な炭化ケイ素粉末は、前記原料に含まれる炭化ケイ素の質量を100mass%としたときに、10〜50mass%で含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記原料に含まれる前記ケイ素粉末のケイ素と前記炭素粉末の炭素とのモル比が、0.5〜1.0である請求項1〜4のいずれかに記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記原料は、アルミニウム系化合物を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素は、良導電性の半導体化合物であり、材質的に優れた熱的及び化学的な安定性を備えていることから、発熱体として用いられている。一般に、炭化ケイ素よりなる発熱体は、炭化ケイ素原料粉末に有機バインダを混合し、所定形状に成形したのちに、焼結処理することで、組織を再結晶炭化ケイ素に転化させることにより製造されている。そして、炭化ケイ素は、バンドギャップが約3eVと広い関係から、電気抵抗を通電可能なレベルにまで引き下げる必要がある。このためには、炭化ケイ素中に3価の元素や5価の元素を固溶、あるいは分散させる手段が有効とされている。
【0003】
炭化ケイ素は、3価の元素を固溶させるとp型半導体となり、また5価の元素を固溶させた場合にはn型半導体となる。このうちp型半導体のキャリアはホールであり、n型半導体のキャリアは電子であるが、電子はホールに比べて一般に移動度が速いため、5価の元素を固溶させてn型半導体とした方が比抵抗を下げるためには有効である。炭化ケイ素に固溶可能な5価の元素としては、窒素、リン、ヒ素、アンチモンまたはビスマスのような窒素族の元素や、バナジウム、ニオブ、タングステンがあげられるが、これらの中では窒素が最も固溶し易く、固溶限界も高い。このため、炭化ケイ素の電気抵抗を下げる目的で組織中に窒素を固溶させる試みが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には炭化ケイ素を窒素雰囲気中で焼結する方法が開示され、特許文献2には炭化ケイ素を窒素雰囲気中でホットプレス焼結する方法が開示されている。しかし、単に窒素ガス中で焼結するだけでは窒素の固溶化は円滑に進まず、比抵抗を十分に低減させることはできなかった。特許文献3では窒素の固溶度合を増大させるため、炭化ケイ素焼結時の窒素ガス圧を80〜500気圧まで高め、窒素を強制的に固溶させる方法が記載されている。この方法によれば窒素固溶量が増大するため炭化ケイ素の電気比抵抗を効果的に低下させることが可能となるが、前記条件の窒素ガス圧を確保するには例えば熱間静水圧プレス(HIP)のような高価な装置を適用しなければならず、設備やコストなどの面で工業的手段としての難点があった。
【0005】
さらに、特許文献4では、炭化ケイ素に対する窒素固溶度合を高めるための簡便な手段として、発熱体の製造時に炭化ケイ素原料粉末に特定量の窒化物と炭素の粉末を混合し、さらに特定された条件で焼結処理をおこなうと、特別な装置設備を必要とせずに窒素固溶量を効果的に増大することができ、材質強度を損ねることなしに炭化ケイ素発熱体の比抵抗低下を図ることができることが記載されている。
【0006】
また、炭化ケイ素に固溶可能な3価の元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムをあげることができる。アルミニウムは、炭化ケイ素中では、固溶しているか、分散しているか、あるいはその両方の状態であるか、のいずれかであると考えられる。
【0007】
しかしながら、これらの炭化ケイ素発熱体(焼結体)においては、強度の向上が求められていた。その上で、強度をもたせるため高密度を図ることが検討されていたが、他の要因(例えば導電性を持たせた場合の抵抗値等)を犠牲にすることになるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭57−18682号公報
【特許文献2】特開昭52−110499号公報
【特許文献3】特公昭64−4312号公報
【特許文献4】特開平6−92733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、炭化ケイ素焼結体に高い強度を持たせることができる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者は炭化ケイ素焼結体の製造方法に関する検討を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0011】
本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法は、炭化ケイ素の粉末と、ケイ素粉末と、炭素粉末と、の混合粉末よりなる原料を焼成する工程を有する炭化ケイ素焼結体の製造方法であって、原料に含まれる炭化ケイ素は、その粒度分布が、(D90)/(D10)≦10,(D50)/(D10)≦5の条件を満たす微細な炭化ケイ素粉末を有し、気孔率が40〜55%となるように製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法は、鋭い粒度分布ピークを示す微細な炭化ケイ素粉末を炭化ケイ素を含有する原料が有し、この原料を焼成することで、ヤング率及び曲げ強度に優れた炭化ケイ素焼結体を製造できる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】SiC(微細粒子−A)を含む炭化ケイ素粉末の粒径分布を示す図である。
図2】SiC(微細粒子−B)を含む炭化ケイ素粉末の粒径分布を示す図である。
図3】実施例の各試料の曲げ強度の測定結果を示す図である。
図4】実施例の各試料のヤング率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(炭化ケイ素焼結体の製造方法)
本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法は、炭化ケイ素を含有する原料を焼成する工程を有する。
【0017】
そして、本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法は、原料に含まれる炭化ケイ素が、その粒度分布が、(D90)/(D10)≦10,(D50)/(D10)≦5の条件を満たす微細な炭化ケイ素粉末を有する。
【0018】
本発明の製造方法では、炭化ケイ素を含有する原料を焼成することで、炭化ケイ素発熱体を製造することができる。また、原料が微細な炭化ケイ素粉末を含有し、この原料を焼成することから、緻密質でない(多孔質の)発熱体を製造することができる。
【0019】
本発明の製造方法は、原料に含まれる炭化ケイ素が、その粒度分布が、(D90)/(D10)≦10,(D50)/(D10)≦5の条件を満たす微細な炭化ケイ素粉末を有する。炭化ケイ素が所定の条件を同時に満たす微細な炭化ケイ素粉末を有することで、製造される炭化ケイ素焼結体のヤング率及び曲げ強度を高くすることができる。ここで、(D90),(D50),(D10)は、それぞれ、微細な炭化ケイ素粉末の粒度分布を測定したときの累積値が90,50,10%の値を示す。
【0020】
本発明の製造方法は、原料に含まれる炭化ケイ素が、粒度分布が鋭いピークを示す微細な炭化ケイ素粉末を有している。すなわち、微細な炭化ケイ素粉末が、粒径のバラツキの少ない微粒子のみで形成される。このため、比較的粒径の大きな粒子を含まないことで、焼結性が高くなっており、短時間で焼成(焼結)できるだけでなく、製造される炭化ケイ素焼結体の強度を高くすることができる。
【0021】
さらに、本発明の製造方法は、微粒子のみからなる微細な粉末の粒子が、微細な粉末が含まれる原料の粒子間に多量に存在することとなる。そして、この状態で焼成されることで、炭化ケイ素粉末の焼結体のネックが多量に形成され、結果として製造される炭化ケイ素焼結体の強度を高くする。
【0022】
(D90)/(D10)は、粒度分布のピーク幅の広がりを示し、(D90)/(D10)≦10となることで、微細な炭化ケイ素粉末の粒度分布が鋭いピークを示し、製造される炭化ケイ素焼結体のヤング率及び曲げ強度を高くすることができる効果を発揮する。(D90)/(D10)が10を超えると、微細な炭化ケイ素粒子の粒度分布が広くなり、上記の効果を十分に発揮できなくなる。好ましい(D90)/(D10)は5以下であり、より好ましい(D90)/(D10)は2以下である。
【0023】
(D50)/(D10)は、粒度分布におけるピークの広がりを示し、(D50)/(D10)≦5となることで、微細な炭化ケイ素粉末の粒度分布((D50)と(D10)の幅)が鋭いピークを示し、製造される炭化ケイ素焼結体のヤング率及び曲げ強度を高くすることができる効果を発揮する。(D50)/(D10)の値が5を超えるようになると、微細な炭化ケイ素粒子の粒度分布が広くなり、上記の効果を十分に発揮できなくなる。好ましい(D50)/(D10)は3.3以下であり、より好ましい(D50)/(D10)は2.5以下である。
【0024】
本発明の製造方法において、微細な炭化ケイ素粉末とは、原料に含まれる炭化ケイ素(粉末)の粒度分布を測定したときに、最も小さな粒径に対応したピークを示す粉末であることが好ましい。微細な炭化ケイ素粉末が最も粒径の小さなピークに対応することで、微細な炭化ケイ素粉末がそれよりも粒径の大きな炭化ケイ素粉末等の混合粉末の粒子間に位置して、焼結体のネックを形成することができる。ここで、最も小さな粒径に対応したピークとは、粒度分布を測定したときに、ピークと認識できる程度のピーク高さを有するピークのことを示すものであり、ノイズや極めて微小なピークは該当しない。
【0025】
なお、粒度分布を測定したときに、微細な炭化ケイ素に対応したピークが、他の炭化ケイ素粉末のピークと重なりを有している場合に、微細な炭化ケイ素に対応したピークは、プロファイルフィッティング法により同定した(分離した)ピークを用いることができる。なお、本発明において、微細な炭化ケイ素以外の炭化ケイ素のピークにおいても、このプロファイルフィッティング法により同定した(分離した)ピークを採用することができる。
【0026】
また、粒度分布を測定したときに、微細な炭化ケイ素に対応したピークは、独立したピークを示すことが好ましい。微細な炭化ケイ素に対応したピークが独立したピークとなることで、微細な炭化ケイ素のD10,D50,D90を測定(確認)できる。ここで、微細な炭化ケイ素の独立したピークとは、D10〜D90の間に別のピークが確認できない状態を示す。
【0027】
本発明の炭化ケイ素発熱体の製造方法では、原料は、炭化ケイ素の粉末と、ケイ素粉末と、炭素粉末と、の混合粉末よりなる。原料がこれらの混合粉末よりなることで、この原料を焼成することで、炭化ケイ素発熱体を焼成(焼結)により製造することができる。
【0028】
本発明の炭化ケイ素発熱体の製造方法では、上記のように、炭化ケイ素の粉末が、微細な炭化ケイ素粉末を有している。この微細な炭化ケイ素を含む炭化ケイ素が焼成(焼結)すると、炭化ケイ素焼結体が製造できる。
【0029】
さらに、原料(混合粉末)に含まれるケイ素粉末と炭素粉末とが、焼成時に炭化ケイ素を生成する。この生成した炭化ケイ素も、炭化ケイ素を結合して炭化ケイ素発熱体(焼結体)の強度を高くする。
【0030】
原料に含まれる炭化ケイ素の粒度分布が、微細な炭化ケイ素粉末のピークと、微細な炭化ケイ素粉末とは異なるひとつ以上のピークと、を示し、原料に含まれる炭化ケイ素は、ひとつ以上のピークのうち、微細な炭化ケイ素粉末のピークの大径側で最も近接したピークのD10が、微細な炭化ケイ素粉末のピークのD90に対して、(D10)/(D90)≧1の条件を満たすことが好ましい。
【0031】
すなわち、炭化ケイ素の粒度分布を測定したときに、微細な炭化ケイ素粉末のピークのD90(D90fine)と、それ以外の炭化ケイ素のピークのD10(D10large)と、が、(D10large)/(D90fine)≧1の条件を満たすことで、微細な炭化ケイ素粉末のピークが、それより粒径が大きな炭化ケイ素粉末のピークと、を明確に判別できるようになる。さらに、この条件を満たすと、微細な炭化ケイ素粉末が、大きな炭化ケイ素粉末を含まないことになり、微細な炭化ケイ素粉末を使用することの効果を十分に発揮できる。
【0032】
本発明の製造方法において、原料に含まれる炭化ケイ素(炭化ケイ素の粉末)は、微細な炭化ケイ素粉末と、微細な炭化ケイ素粉末よりもメジアン径(D50)が大きな粗大な炭化ケイ素粉末を有することが好ましい。微細な炭化ケイ素粉末と粗大な炭化ケイ素粉末との混合粉末となることで、強度の向上した炭化ケイ素焼結体を製造することができる。また、微細な炭化ケイ素粉末と、粗大な炭化ケイ素粉末と、を混合することで、混合粉末を簡単に製造することができ、炭化ケイ素焼結体を簡単に製造することができる。ここで、粗大な炭化ケイ素粉末は、粒度分布を測定したときに、上記(請求項3に記載)の微細な炭化ケイ素粉末とは異なるひとつ以上のピークを示すための粉末に該当する。
【0033】
粗大な炭化ケイ素粉末は、微細な炭化ケイ素粉末よりもメジアン径(D50)が大きな粗大な炭化ケイ素粉末であれば、特に限定されるものではない。
【0034】
すなわち、粗大な炭化ケイ素粉末は、粒度分布を測定したときに、ひとつのピークを示す粉末であっても、複数のピークを示す粉末であっても、いずれでもよい。また、そのピークについても、ブロードなピークであっても、シャープなピークであっても、いずれでもよい。
【0035】
粗大な炭化ケイ素粉末は、粒度分布を測定したときに、微細な炭化ケイ素粉末のピークのD90よりも大きな粒度にピークを出現させる粉末であることが好ましい。これにより、微細な炭化ケイ素粉末の粒度分布のピークの粒度分布の累積値を求めることができる。
【0036】
炭化ケイ素の粉末は、粒度分布を測定したときに、微細な炭化ケイ素粉末に対応したピークが、粗大な炭化ケイ素粉末に対するピークに対して独立したピークを示すことが好ましい。粗大な炭化ケイ素粉末が複数のピークを示すときに、それぞれが独立したピークを示すことが好ましい。
【0037】
炭化ケイ素の粉末は、粒度分布特性が異なる複数種の炭化ケイ素の混合粉末であることが好ましい。炭化ケイ素の粉末が複数種の混合粉末よりなることで、簡単に所望の特性の炭化ケイ素の粉末を製造することができる。また、混合される炭化ケイ素を簡単に変更することができ、炭化ケイ素粉末の粒度分布特性を簡単に調節できる。
【0038】
炭化ケイ素の粉末は、平均粒径(又はメジアン径(D50))が異なる2種類の炭化ケイ素の混合粉末であることが好ましい。すなわち、微細な炭化ケイ素粉末と、粗大な炭化ケイ素粉末と、を混合してなる混合粉末であることが好ましい。
【0039】
炭化ケイ素の粉末において、微細な炭化ケイ素粉末と粗大な炭化ケイ素粉末との平均粒径(又はメジアン径(D50))の粒径比が、5〜30であることが好ましい。粒径比がこの範囲内になることで、微細な炭化ケイ素粉末の粒子が粗大な炭化ケイ素粉末の粒子間で焼結して、製造される焼結体の強度を高くする。
【0040】
炭化ケイ素の粉末は、その粒径が限定されるものではなく、平均粒径(又はメジアン径(D50))が0.4〜0.8μmの微細な炭化ケイ素粉末と、平均粒径(又はメジアン径(D50))が10〜15μmの粗大な炭化ケイ素粉末と、の混合粉末であることが好ましい。
【0041】
微細な炭化ケイ素粉末は、原料に含まれる炭化ケイ素の質量を100mass%としたときに、10〜50mass%で含まれることが好ましい。微細な炭化ケイ素粉末は、焼成時に炭化ケイ素粉末の炭化ケイ素粒子同士のネックを多量に形成するものであり、この範囲で含まれることで、微細な炭化ケイ素粉末を添加した効果を十分に発揮できる。微細な炭化ケイ素粉末の含有量が、10mass%未満となると、微細な炭化ケイ素粉末が少なくなりすぎてネックが十分に形成されず、炭化ケイ素焼結体の強度の向上の効果が十分に得られなくなる。含有量が、50mass%を超えると、微細な粒子が多くなりすぎて、製造される焼結体が緻密体となることで重量(質量)が増加することとなり、たとえば、発熱体として使用するときの電気容量が大きくなって温度が上がりにくくなる。好ましい割合は12〜45mass%であり、より好ましい割合は15〜40mass%である。
【0042】
本発明の製造方法は、気孔率が40〜55%となるように製造する。気孔率が40〜55%となるように製造することで、たとえば、気体の流通を妨げることない焼結体を製造することができる。気孔率が40%未満では製造される焼結体が緻密体となることで重量(質量)が増加することとなり、たとえば、発熱体として使用するときの電気容量が大きくなって温度が上がりにくくなり、55%を超えると製造される焼結体の強度が低くなる。好ましい気孔率は42〜53%であり、より好ましい気孔率は45〜50%である。
【0043】
原料に含まれるケイ素粉末と炭素粉末は、炭素のモル数が、ケイ素のモル数よりも多く含まれることが好ましい。炭素がケイ素よりも多いモル数で含まれることで、炭素とケイ素が炭化ケイ素を生成するときに、全てのケイ素が炭化ケイ素となる。すなわち、製造される炭化ケイ素発熱体中にケイ素が残留しなくなる。炭化ケイ素発熱体中にケイ素が残留すると、残留したケイ素が炭化ケイ素焼結体の特性に影響を及ぼすこととなる。特に、炭化ケイ素焼結体を炭化ケイ素発熱体に用いるときに、所望の強度や電気抵抗率を得られなくなる。ここで、炭素及びケイ素のモル数は、それぞれ純炭素,純ケイ素換算したモル数である。そして、本発明の製造方法では、原料に含まれるケイ素粉末のケイ素と炭素粉末の炭素とのモル比(Si/C)が、0.5〜1.0である。
【0044】
原料は、炭化ケイ素中に固溶、あるいは分散したときに電気抵抗を低下させることができる元素を有する化合物を含有することが好ましい。この化合物を原料が含有することで、原料を焼成したときに、製造される炭化ケイ素焼結体が、この元素が炭化ケイ素焼結体に固溶、あるいは分散するようになる。すなわち、製造される炭化ケイ素焼結体に、導電性を付与することができる。さらに、混合粉末がこの元素を含有することで、炭化ケイ素の生成と分散が、焼成の一つの工程で進行することとなる。
【0045】
ここで、炭化ケイ素中に固溶、あるいは分散したときに電気抵抗を低下させることができる元素としては、3価の元素をあげることができる。そして、炭化ケイ素に固溶可能な3価の元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムより選ばれる1種以上をあげることができる。
【0046】
そして、炭化ケイ素中に固溶、あるいは分散したときに電気抵抗を低下させることができる元素としては、3価の元素であることが好ましい。すなわち、混合粉末は、3価の元素を有する化合物を含有することが好ましい。さらに、3価の元素としては、取り扱いの容易さなどから、アルミニウムであることが好ましい。
【0047】
本発明において、電気抵抗を低下させることができる元素を有する化合物は、粉末状態で原料に混合したことが好ましい。この化合物が粉末状態で原料に混合することで、原料中に均一に混合することができ、均一に炭化ケイ素焼結体に固溶することとなる。すなわち、製造される炭化ケイ素焼結体の抵抗値の特性に部分的なバラツキが生じなくなる。
【0048】
原料は、アルミニウム系化合物を含有することが好ましい。アルミニウム系化合物を含有した原料を焼成することで、製造される炭化ケイ素焼結体は、アルミニウム系化合物に由来する原子状のアルミニウムが炭化ケイ素焼結体に固溶、あるいは分散する。すなわち、製造される炭化ケイ素焼結体に、導電性を付与することができる。さらに、原料がアルミニウム系化合物を含有することで、炭化ケイ素の生成と原子状のアルミニウムの分散が、焼成の一つの工程で進行する。
【0049】
本発明の製造方法において、アルミニウム系化合物は、原料に含まれる炭化ケイ素に対するアルミニウム系化合物に含まれるアルミニウム原子換算のモル比が0.1〜5%であることが好ましい。つまり、[(アルミニウム系化合物に含まれるアルミニウムのモル数)/(原料の炭化ケイ素のモル数)]×100で示される値(%)が、0.1〜5%である。アルミニウムのモル比を0.1〜5%とすることで、炭化ケイ素焼結体が発熱体として優れた抵抗値の特性を有するようになる。なお、0.1%未満ではアルミニウムが少なすぎて導電性を向上させる効果が得られず、5%を超えると炭化ケイ素焼結体を形成する炭化ケイ素(アルミニウムが分散した炭化ケイ素)の強度が低下し、焼結体自身の強度が十分に得られなくなる。特に10%と過剰になると、成形が困難となり、実験に供することができなくなった。好ましいモル比は、0.5〜5%であり、より好ましいモル比は0.5〜2%である。
【0050】
アルミニウム系化合物は、アルミナであることが好ましい。アルミニウム系化合物は、焼成時に生成される炭化ケイ素中に、原子状態のアルミニウムを分散させることができればよい。すなわち、純アルミニウム(表面に酸化被膜が形成された状態)であっても、アルミナであっても、窒化アルミニウムであっても、いずれでもよく、取り扱いの容易さから、アルミナを用いることが好ましい。アルミニウム系化合物は、アルミニウムの粉末,アルミナ粉末,窒化アルミニウム粉末等の粉末であることが好ましく、これらの粉末の粒子の形態は特に限定されるものではなく、配合割合や焼成条件等により適宜決定できる。
【0051】
原料は、全体を100%としたときに、原料に含まれる炭化ケイ素(炭化ケイ素の粉末)が55〜95mass%で含まれることが好ましい。全体とは、原料全体を示す。炭化ケイ素粉末が55〜95mass%で含まれることで、製造された炭化ケイ素焼結体が十分な強度を有することができる。炭化ケイ素粉末が55mass%未満では、十分な強度が得られにくくなる。また、炭化ケイ素粉末が95mass%を超えると、ケイ素と炭素とから生成する反応焼結炭化ケイ素が少なすぎ、結合ネックの形成が十分に行われなくなる。好ましい割合は60〜90mass%であり、より好ましい割合は75〜90mass%であり、さらに好ましい割合は85〜90mass%である。
【0052】
本発明の製造方法において、原料(混合粉末)を調製する工程は、原料(混合粉末)を調製することができる工程であれば、具体的な調整方法は限定されない。たとえば、炭化ケイ素粉末,ケイ素粉末,炭素粉末等の各粉末を十分に混合する工程,炭化ケイ素粉末,ケイ素粉末,炭素粉末等の各粉末を溶媒(たとえば、水)に添加剤とともに分散させて混練する工程,等の工程をあげることができる。その後の工程での成形性を得るために、各粉末を溶媒に分散させて混練する工程であることが好ましい。
【0053】
上記したように、本発明において原料の混合粉末とは、各粉末が混合しているものを示すものであり、粉末状態のみを示すだけではなく、混合粉末が溶媒に分散した粘土状(あるいは、スラリー状)であることも含む。
【0054】
本発明の製造方法において、原料(混合粉末)は、炭化ケイ素焼結体の形状に成形された状態で、すなわち、原料(混合粉末)を成形する工程を施した後に、焼成する工程が施されることが好ましい。原料(混合粉末)を成形する工程は、原料(混合粉末)を所定の形状に成形することができる工程であれば、具体的な成形方法は限定されない。たとえば、粘土状の原料(混合粉末)を押出成形する工程,スラリー状の原料(混合粉末)を所定の成形型を用いて成形する工程,粉末状の原料(混合粉末)を圧粉成形する工程,をあげることができる。
【0055】
原料(混合粉末)を成形する工程は、粘土状の原料(混合粉末)を押出成形する工程であることが好ましい。ここで、押出成形には、成形体が加熱によりクラックなどが発生することを抑制するために、真空混練成形機を使用することが好ましい。押出成形した成形体は、保形性が低い場合には、マイクロ乾燥器による乾燥や、円筒形の場合には、回転式乾燥機などを使用することが好ましい。また、乾燥時に温風や熱風で乾燥したり、あるいは他の乾燥方法と組み合わせてもよい。
【0056】
成形体の乾燥は、成形後、直ちに行うことが好ましい。成形体の保形性が低い場合、成形体は、自重により変形を生じ、製造される炭化ケイ素焼結体の寸法精度の低下(不具合品となる)を招く。この成形体の変形を抑えるために、成形体の乾燥が直ちに行われることが好ましい。
【0057】
成形体の乾燥が加熱して行われるときに、成形体の変形やクラックが発生しない程度の乾燥条件(加熱温度,加熱時間,昇温速度)により行うことが好ましい。乾燥条件が緩すぎる(加熱温度が低い場合等)と、成形体の乾燥の進行が遅くなり、成形体が変形を生じやすくなる。また、乾燥条件が厳しくなり過ぎる(加熱温度が高すぎる場合等)と、成形体の内部が湿潤な状態で表面が乾燥を生じ、結果として成形体の表面にヒビ割れが生じるようになる。このように、成形体の乾燥条件は、乾燥後の成形体に不具合が生じない程度の条件であることが好ましい。
【0058】
混合粉末を成形する工程において、成形される形状は特に限定されるものではない。すなわち、本発明の製造方法により製造される炭化ケイ素焼結体が使用されるときの形状に成形されることが好ましい。
【0059】
本発明の製造方法において、成形体を焼成する工程は、成形体を焼成する(炭化ケイ素粉末を焼結するとともに,ケイ素粉末と炭素粉末とから炭化ケイ素を生成する)ことができる工程であれば、具体的な調整方法は限定されない。
【0060】
成形体を焼成する工程において、焼成条件についても、特に限定されるものではなく、成形体を焼成する(炭化ケイ素粉末を焼結するとともに,ケイ素粉末と炭素粉末とから炭化ケイ素を生成する)ことができる温度及び時間とすることができる。また、昇温速度等の条件も同様である。焼成条件がこれらの範囲内となることで、炭化ケイ素発熱体が優れた抵抗値の特性を有するようになる。
【0061】
不活性ガス雰囲気下で焼成が進められることが好ましい。本発明の製造方法において、原料(混合粉末)にアルミニウム粉末を混在させた状態で焼成する場合には、炭化ケイ素を生成しながらアルミニウムを固溶、あるいは分散させている。つまり、導電性の向上に寄与するアルミニウムを、焼成雰囲気に含有させる必要がなくなっている。すなわち、不活性ガス雰囲気下で焼成を行うことで、焼成を行う焼成炉の損傷を抑えることができる。焼成時の不活性ガスは、特に限定されるものではなく、アルゴンガスを用いることが好ましい。
【0062】
窒素ガス雰囲気下で、焼成が進められることが好ましい。窒素ガスは、反応性に乏しく、不活性ガスと同様に機能する。なお、窒素ガスは、不活性ガス(アルゴンガス)との混合ガスであってもよい。混合ガスである場合に混合割合は、限定されるものではなく適宜決定できる。
【0063】
本発明の製造方法において、成形体を焼成する工程は、雰囲気中に導電性を付与する元素(上記した3価の元素)が含まれた状態で焼成を行う工程であってもよい。この場合、成形体(混合粉末)は、導電性を付与する元素(アルミニウム系化合物)を含まないことが好ましい。
【0064】
本発明の製造方法において、焼成する工程において焼成した焼結体を、酸化性雰囲気下で焼成する酸化工程を有することが好ましい。
【0065】
酸化工程は、酸化性雰囲気下で焼成する工程であり、焼結体に残存している炭素分が除去されるとともに、表面を酸化して安定した物質とすることができる。
【0066】
酸化工程は、酸化性雰囲気下で加熱する工程であることが好ましい。酸化性雰囲気下での加熱によると、焼成する工程よりも低い温度で炭素を除去できる。すなわち、酸化工程は、焼成する工程の焼成温度よりも低い温度で加熱することが好ましい。具体的には、熱衝撃で亀裂を生じさせない範囲であれば良い。
【0067】
本発明の製造方法において、焼結工程が施される原料粉末(成形体)は、脱脂工程が施されていることが好ましい。脱脂工程を施すことで、製造の効率の向上や、焼結を行う焼成炉がダメージを受けることが抑えられる。脱脂工程は、特に限定されるものではなく、不活性雰囲気下で加熱する工程であることが好ましい。不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガスをあげることができ、アルゴンガスであることがより好ましい。また、加熱温度は、脱脂が進行する程度の温度とすることが好ましい。さらに、脱脂量としても同様に特に指定はないが、半分以上脱脂した方が良い。
【0068】
(炭化ケイ素焼結体)
炭化ケイ素焼結体(以下、本発明の炭化ケイ素焼結体と称する。)は、本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法により製造される。
【0069】
本発明の炭化ケイ素焼結体は、上記の製造方法で製造された焼結体であり、上記した製造方法の効果を発揮する。すなわち、強度(ヤング率及び曲げ強度)に優れた焼結体となっている。
【0070】
そして、本発明の炭化ケイ素焼結体は、炭素とケイ素とから生成した炭化ケイ素を有することができる。この場合、炭素とケイ素とから生成する炭化ケイ素は、その内部に導電性を付与する元素(3価元素,アルミニウム)を配しやすい。アルミニウム系化合物を混合粉末に配することで、特性を変化させることができる。すなわち、炭素とケイ素とから生成した炭化ケイ素を有することで、本発明の炭化ケイ素発熱体の特性の調節を簡単に行うことができる。
【0071】
本発明の炭化ケイ素焼結体は、炭化ケイ素発熱体であることが好ましい。上記したように、炭化ケイ素焼結体は、発熱体として利用することができる。そして、本発明の焼結体は、強度に優れたものであるため、強度に優れた発熱体となる効果を発揮する。
【0072】
本発明の炭化ケイ素発熱体は、低温(常温)〜高温(数百度)にわたってすぐれた抵抗値を有することができる。つまり、この炭化ケイ素発熱体に電圧を印加したときに、低温(室温)〜高温(数百度)のいずれの温度においても、発熱体が発熱する。このことから、炭化ケイ素発熱体は、揮発性有機化合物(VOC)が含まれる気体等の除去に用いることが好ましい。さらに、内燃機関からの排気ガスの浄化に用いることが好ましい。
【0073】
すなわち、本発明の炭化ケイ素発熱体は、浄化される成分を含むガス(加熱されるガス)が流れる流路を区画したハニカム構造を備えていることが好ましい。ハニカムとしたときの形状は限定されるものではなく、円柱状,だ円柱状,角柱状などの形状をあげることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例として、炭化ケイ素焼結体(炭化ケイ素発熱体)を製造した。
【0075】
(実施例1)
(炭化ケイ素発熱体の製造)
まず、表1に記載の原料を、表2に記載の割合で秤量・準備した。
【0076】
まず、粗大な炭化ケイ素粉末(表中、SiC(粗大粒子)と表記),微細な炭化ケイ素粉末(表中、SiC(微細粒子−A)又はSiC(微細粒子−B)と表記),ケイ素粉末(Si)と炭素粉末(C)とアルミナ粉末(Al2O3)との混合粉末である導電性付与化合物粉末,分散剤,バインダ,水を表1に記載の割合で秤量・準備した。ここで、導電性付与化合物粉末において、ケイ素粉末と炭素粉末は、ケイ素と炭素のモル比が0.84〜0.89となるように粉末が調製されている。さらに、導電性付与化合物粉末において、アルミナ粉末は、炭化ケイ素粉末,炭素粉末及びケイ素粉末の合計に対するモル比が1.00〜1.75となるように調製されている。
【0077】
【表1】
【0078】
SiC(粗大粒子)とSiC(微細粒子)とを混合した状態の炭化ケイ素粉末の粒度分布を測定し、測定結果を図1〜2に示した。図1〜2は、頻度(%)と累積値(%)を同時に示した。図1(a)には試料1の炭化ケイ素粉末(SiC(微細粒子−A)のみ)の粒度分布を、図1(b)には試料2の炭化ケイ素粉末の粒度分布を、図1(c)には試料3の炭化ケイ素粉末の粒度分布を、図1(d)には試料4の炭化ケイ素粉末(SiC(粗大粒子)のみ)の粒度分布を、それぞれ示した。同様に、図2(a)にはSiC(微細粒子−B)のみの粒度分布を、図2(b)には試料5の炭化ケイ素粉末の粒度分布を、図2(c)には試料6の炭化ケイ素粉末の粒度分布を、図2(d)にはSiC(粗大粒子)のみの粒度分布を、それぞれ示した。粒度分布の測定は、マイクロトラックを用いて行われた。
【0079】
図1(a)及び図2(a)に示したように、SiC(微細粒子−A)は、D10:0.198(μm),D50:0.513(μm),D90:1.127(μm)であり、(D90)/(D10):5.69,(D50)/(D10):2.591であった。SiC(微細粒子−B)は、D10:0.243(μm),D50:2.164(μm),D90:9.278(μm)であり、(D90)/(D10):38.18,(D50)/(D10):8.91であった。
また、SiC(粗大粒子)は、D10:9.05(μm),D50:13.75(μm),D90:21.64(μm)であった。
【0080】
試料2〜3に用いた炭化ケイ素粉末は、粒度分布を示した図1(b)〜(c)に示されたように、二つの独立したピークが確認できる。二つのピークの間には、頻度が0%の領域があることで、二つのピークが完全に独立していることが確認できる。ここで、SiC(粗大粒子)のD10(D10large)と、SiC(微細粒子−A)のD90(D90fine)と、の比(D10large)/(D90fine)は、8.03であった。
【0081】
対して、試料5〜6に用いた炭化ケイ素粉末は、粒度分布を示した図2(b)〜(c)に示されたように、大きなひとつのピークと、そのピークの粒径が小さい部分になだらかなわずかな盛り上がりが位置していることが確認できる。このことは、SiC(微細粒子)の粒度分布に起因することがわかる。すなわち、試料2〜3に用いたSiC(微細粒子−A)は、ひとつのシャープなピークを示すような粒度分布を有している(図1(a))。対して、試料5〜6に用いたSiC(微細粒子−B)は、ブロードなふたつのつながったピークを示すような粒度分布を有している(図2(a))。ここで、SiC(粗大粒子)のD10(D10large)と、SiC(微細粒子−B)のD90(D90fine)と、の比(D10large)/(D90fine)は、0.975であった。
【0082】
秤量・準備したSiC(粗大粒子),SiC(微細粒子),導電性付与化合物粉末を、袋に入れて十分に混合した後に、バインダ,分散剤,水とともに、加圧型ニーダーで混練した。
【0083】
得られた粘土状の混合粉末を、押出成形装置で円筒状に押出成形で成形した。得られた成形体は、外径:6mm,内径:4mm,長さ:150mmのパイプ状であった。
次に、成形体を、ただちに乾燥した。
乾燥した成形体を、不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気)下で加熱して脱脂した。
その後、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気)下で焼結させた(焼成した)。
焼結体を、酸化性ガス雰囲気(空気)下で加熱して、熱処理した。
熱処理後、放冷してパイプ状の炭化ケイ素発熱体(試料1〜6の発熱体)が製造された。
製造された試料1〜6の発熱体の気孔率を測定し、表1に合わせて示した。
【0084】
(評価)
製造された試料2〜3,5〜6の発熱体の評価として、曲げ強度,ヤング率を測定した。
【0085】
(曲げ強度)
曲げ強度の測定は、電子式万能試験機を用いて、支点間距離;4cmの3点曲げ試験により行われた。測定結果を表2,図3に示した。
【0086】
(ヤング率)
ヤング率の測定は、上記の曲げ強度と同じ測定装置を用いて行われた。測定結果を表2にあわせて示した。また、図4に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
表2に示したように、SiC(微細粒子)に、SiC(微細粒子−A)を用いた試料2〜3の発熱体は、SiC(微細粒子−B)の試料5〜6の発熱体に比べて、曲げ強度及びヤング率がいずれも高くなっている。すなわち、SiC(微細粒子−A)を用いることで、炭化ケイ素発熱体(焼結体)の強度が高くなっていることが確認できた。
【0089】
すなわち、粒度分布を測定したときに、独立した二つのピークを示す炭化ケイ素粉末を用いた試料2〜3の発熱体は、炭化ケイ素粉末の粒度分布ピークが二つのピークを示さない試料5〜6の発熱体に比べて、強度が高くなっていることが確認できた。
(比抵抗)
【0090】
次に、試料2,5の発熱体の抵抗値の特性(比抵抗)を測定したところ、いずれの発熱体も、発熱体として十分な比抵抗を同じように有していることが確認できた。すなわち、本発明に該当する各試料の発熱体は、通電により発熱を生じさせることができる。
図1
図2
図3
図4