(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2電圧は前記第1電圧よりも高く、前記第3電圧は前記第1電圧よりも低く、前記第4電圧は前記第3電圧よりもさらに低いことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
前記第1セレクタは、前記誤差電圧が前記第4電圧を下回ったときに前記第1基準電圧を前記第1電圧から前記第2電圧に引き上げる一方、前記誤差電圧が前記第3電圧を上回ったときに前記第1基準電圧を前記第2電圧から前記第1電圧に引き下げるように、前記下限検出信号に応じて前記第1電圧と前記第2電圧の選択出力を行い、
前記第2セレクタは、前記誤差電圧が前記第4電圧を下回ったときに前記第2基準電圧を前記第4電圧から前記第3電圧に引き上げる一方、前記誤差電圧が前記第3電圧を上回ったときに前記第2基準電圧を前記第3電圧から前記第4電圧に引き下げるように、前記下限検出信号に応じて前記第3電圧と前記第4電圧の選択出力を行うことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
前記帰還電圧にリップル成分を注入するリップルインジェクション部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非線形制御方式のスイッチング電源装置には、エラーアンプを用いて帰還電圧と基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成し、これを基準電圧に代えてメインコンパレータに入力するものがある。このような構成を採用することにより、帰還電圧と基準電圧が一致するように出力帰還制御を行うことができるので、スイッチング電源装置の出力特性(ラインレギュレーション特性やロードレギュレーション特性など)を向上することが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記の従来構成では、負荷への出力電流がほぼ0Aとなる超軽負荷状態(無負荷に近い状態)において、帰還電圧が基準電圧を上回っている限り、エラーアンプが誤差電圧を引き下げるように動作し続けるので、誤差電圧が0V(ないしはその近傍)まで低下してしまう。
【0007】
上記の超軽負荷状態から負荷の急変(出力電流の急増)が生じると、出力電圧が急低下して帰還電圧が基準電圧を下回るので、エラーアンプは、誤差電圧を引き下げる動作から引き上げる動作に切り替わる。しかしながら、エラーアンプの応答能力には限界があり、誤差電圧が本来の電圧値(過渡応答経過後の電圧値)に復帰するまでには相応の時間を要するので、その間に出力電圧が大きく低下してしまうという課題があった。
【0008】
なお、特許文献1には、帰還電圧と目標電圧との差分に応じて基準電圧のオフセット調整を行うエラーアンプ(オフセット調整部)が開示されているが、その出力信号はあくまでオフセット調整信号として用いられるものであり、基準電圧に代えてメインコンパレータに入力されるものではない。この点において、特許文献1のスイッチング電源装置は、上記の従来構成とも本発明に係るスイッチング電源装置とも異なっている。
【0009】
また、特許文献2のDC/DCコンバータは、そもそも、非線形制御方式ではなく、線形制御方式(電流モードのPWM[pulse width modulation]制御方式)であるという点において、上記の従来構成とも本発明に係るスイッチング電源装置とも異なっている。
【0010】
本発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、負荷急変時の出力変動を抑制することのできるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、帰還電圧と第1基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプと、前記帰還電圧と前記誤差電圧とを比較して比較信号を生成するメインコンパレータと、前記比較信号に応じてパルス幅固定のオン時間設定信号を生成するオン時間設定部と、前記オン時間設定信号に応じてスイッチ素子のオン/オフ制御を行うことにより入力電圧から出力電圧を生成するドライバと、前記誤差電圧と第2基準電圧とを比較して下限検出信号を生成する誤差電圧監視部と、前記下限検出信号に応じて第1電圧と第2電圧のいずれか一方を前記第1基準電圧として選択出力する第1セレクタと、前記下限検出信号に応じて第3電圧と第4電圧のいずれか一方を前記第2基準電圧として選択出力する第2セレクタと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0012】
なお、上記第1の構成から成るスイッチング電源装置において、前記第2電圧は前記第1電圧よりも高く、前記第3電圧は前記第1電圧よりも低く、前記第4電圧は前記第3電圧よりもさらに低い構成(第2の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第2の構成から成るスイッチング電源装置において、前記第1セレクタは、前記誤差電圧が前記第4電圧を下回ったときに前記第1基準電圧を前記第1電圧から前記第2電圧に引き上げる一方、前記誤差電圧が前記第3電圧を上回ったときに前記第1基準電圧を前記第2電圧から前記第1電圧に引き下げるように、前記下限検出信号に応じて前記第1電圧と前記第2電圧の選択出力を行い、前記第2セレクタは、前記誤差電圧が前記第4電圧を下回ったときに前記第2基準電圧を前記第4電圧から前記第3電圧に引き上げる一方、前記誤差電圧が前記第3電圧を上回ったときに前記第2基準電圧を前記第3電圧から前記第4電圧に引き下げるように、前記下限検出信号に応じて前記第3電圧と前記第4電圧の選択出力を行う構成(第3の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第3の構成から成るスイッチング電源装置において、前記エラーアンプは、その駆動電流の大きさが前記下限検出信号に応じて切り替えられる構成(第4の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成るスイッチング電源装置において、前記オン時間設定部は、その充放電によって鋸波電圧を生成するキャパシタと、前記入力電圧に応じて前記キャパシタの充電電流を生成する電圧/電流変換部と、前記キャパシタの充放電を切り替える充放電スイッチと、前記出力電圧に応じて閾値電圧を生成する電圧/電圧変換部と、前記鋸波電圧と前記閾値電圧を比較してリセット信号を生成するオンタイムコンパレータと、前記比較信号と前記リセット信号に応じて前記オン時間設定信号のセット/リセットを行うRSフリップフロップと、を含む構成(第5の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第5の構成から成るスイッチング電源装置において、前記オン時間設定部は前記閾値電圧をオフセットさせるオフセット部を含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第6の構成から成るスイッチング電源装置において、前記オフセット部は、前記入力電圧に応じて前記閾値電圧のオフセット量を可変制御する構成(第7の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第7の構成から成るスイッチング電源装置において、前記電圧/電流変換部は、前記入力電圧に応じて前記キャパシタの充電電流とは別系統のオフセット調整電流を生成し、前記オフセット部は、前記オフセット調整電流に応じて前記閾値電圧のオフセット量を可変制御する構成(第8の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第1〜第8いずれかの構成から成るスイッチング電源装置は、前記スイッチ素子への逆流電流を検出して逆流検出信号を生成する逆流検出部をさらに有し、前記ドライバは、前記逆流検出信号に応じて前記スイッチ素子を強制的にオフさせる構成(第9の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第1〜第9いずれかの構成から成るスイッチング電源装置は、前記出力電圧を分圧して前記帰還電圧を生成する帰還電圧生成部をさらに有する構成(第10の構成)にするとよい。
【0021】
また、上記第1〜第10いずれかの構成から成るスイッチング電源装置は、前記帰還電圧にリップル成分を注入するリップルインジェクション部をさらに有する構成(第11の構成)にするとよい。
【0022】
また、本発明に係る電子機器は、上記第1〜第11いずれかの構成から成るスイッチング電源装置を有する構成(第12の構成)とされている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、負荷急変時の出力変動を抑制することのできるスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<スイッチング電源装置(第1実施形態)>
図1は、スイッチング電源装置の第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態のスイッチング電源装置Aは、非線形制御方式(ここではボトム検出オン時間固定方式)により入力電圧INから出力電圧OUTを生成する降圧型DC/DCコンバータである。スイッチング電源装置Aは、半導体装置1と、半導体装置1に外付けされる種々のディスクリート部品(インダクタL1、キャパシタC1及びC2、並びに、抵抗R1及びR2)とを有する。
【0026】
半導体装置1は、外部との電気的な接続を確立する手段として、外部端子T1〜T5を有する。半導体装置1の外部において、外部端子(電源端子)T1は、入力電圧INの印加端に接続されている。外部端子(スイッチ端子)T2は、インダクタL1の第1端に接続されている。外部端子T2には、トランジスタ11及び12のオン/オフに応じて矩形波状のスイッチ電圧SWが現れる。インダクタL1の第2端、キャパシタC1の第1端、及び、抵抗R1の第1端は、いずれも出力電圧OUTの印加端に接続されている。キャパシタC1の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1の第2端、及び、抵抗R2の第1端は、いずれも半導体装置1の外部端子(帰還端子)T4に接続されている。抵抗R2の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1及びR2は、互いの接続ノードから出力電圧OUTを分圧した帰還電圧FBを出力する帰還電圧生成部として機能する。半導体装置1の外部端子(接地端子)T3は、接地端に接続されている。半導体装置1の外部端子(エラーアンプ端子)T5は、キャパシタC2を介して接地端に接続されている。なお、キャパシタC2は、半導体装置1に内蔵することも可能である。その場合、外部端子T5は不要となる。
【0027】
半導体装置1は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ11及び12と、エラーアンプ13と、メインコンパレータ14と、オン時間設定部15と、逆流検出部16と、ドライバ17と、リップルインジェクション部18と、誤差電圧監視部19と、セレクタ20及び21と、を集積化したモノリシック半導体集積回路装置(いわゆるスイッチング電源IC)である。
【0028】
トランジスタ11は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続され、ドライバ17から入力されるゲート信号G1に応じてオン/オフ制御されるスイッチ素子(出力トランジスタ)である。接続関係について具体的に述べると、トランジスタ11のドレインは、外部端子T1に接続されている。トランジスタ11のソースは、外部端子T2に接続されている。トランジスタ11のゲートは、ゲート信号G1の印加端に接続されている。
【0029】
トランジスタ12は、外部端子T2と外部端子T3との間に接続され、ドライバ17から入力されるゲート信号G2に応じてオン/オフ制御されるスイッチ素子(同期整流トランジスタ)である。接続関係について具体的に述べると、トランジスタ12のドレインは外部端子T2に接続されている。トランジスタ12のソースは、外部端子T3に接続されている。トランジスタ12のゲートは、ゲート信号G2の印加端に接続されている。整流素子としては、トランジスタ12に代えてダイオードを用いても構わない。
【0030】
エラーアンプ13は、反転入力端(−)に印加されるリップル注入済みの帰還電圧FBと、非反転入力端(+)に印加される基準電圧REF1との差分に応じた誤差電圧ERRを生成する。帰還電圧FBが基準電圧REF1よりも低いときには、エラーアンプ13がキャパシタC2に向けて電流を流し込むので、誤差電圧ERRが上昇する。一方、帰還電圧FBが基準電圧REF1よりも高いときには、エラーアンプ13がキャパシタC2から電流を引き込むので、誤差電圧ERRが低下する。
【0031】
メインコンパレータ14は、反転入力端(−)に印加されるリップル注入済みの帰還電圧FB(出力電圧OUTの分圧電圧)と、非反転入力端(+)に印加される誤差電圧ERRとを比較して比較信号S1を生成する。帰還電圧FBが誤差電圧ERRよりも高ければ比較信号S1はローレベルとなり、帰還電圧FBが誤差電圧ERRよりも低ければ比較信号S1はハイレベルとなる。
【0032】
オン時間設定部15は、比較信号S1に応じてパルス幅固定のオン時間設定信号S2を生成する。オン時間設定信号S2は、比較信号S1がハイレベルに立ち上がった時点でハイレベルに立ち上がり、その後、オン時間Tonが経過した時点でローレベルに立ち下がる。なお、オン時間設定部15の構成及び動作については、後ほど詳細に説明する。
【0033】
逆流検出部16は、トランジスタ12のオン期間中にスイッチ電圧SWと接地電圧GNDとを比較することにより、トランジスタ12への逆流電流を検出して逆流検出信号S3を生成する。逆流検出信号S3は、スイッチ電圧SWが接地電圧GNDよりも低いときにローレベルとなり、スイッチ電圧SWが接地電圧GNDよりも高いときにハイレベルとなる。つまり、逆流検出信号S3は、インダクタ電流ILが接地端からトランジスタ12を介してインダクタL1に流れているときにローレベルとなり、インダクタ電流ILがインダクタL1からトランジスタ12を介して接地端に逆流したときにハイレベルとなる。
【0034】
ドライバ17は、オン時間設定信号S2に応じてゲート信号G1及びG2を生成し、トランジスタ11及び12の相補的(排他的)なオン/オフ制御を行うことで、入力電圧INから出力電圧OUTを生成する。なお、本明細書中で用いられる「相補的(排他的)」という文言は、トランジスタ11及び12のオン/オフ状態が完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点からトランジスタ11及び12のオン/オフ遷移タイミングに所定の遅延が与えられている場合(同時オフ期間が設けられている場合)も含む。また、ドライバ17は、逆流検出信号S3がハイレベルとなった時点(トランジスタ12への逆流電流が検出された時点)でトランジスタ12を強制的にオフさせる機能(スイッチング停止機能)を備えている。このような機能を備えることにより、トランジスタ12への逆流電流を遮断して、軽負荷時の効率を向上することが可能となる。
【0035】
リップルインジェクション部18は、ゲート信号G1やスイッチ電圧SWを用いて生成したリップル成分を外部端子T4から入力される帰還電圧FBに注入する。このようなリップルインジェクション技術を導入すれば、出力電圧OUT(延いては帰還電圧FB)のリップル成分がそれほど大きくなくても、安定したスイッチング制御を行うことができるので、キャパシタC1としてESR[equivalent series resistance]の小さい素子(積層セラミックキャパシタなど)を用いることが可能となる。
【0036】
誤差電圧監視部19は、反転入力端(−)に印加される誤差電圧ERRと、非反転入力端(+)に印加される基準電圧REF2とを比較して下限検出信号DETを生成するコンパレータである。誤差電圧ERRが基準電圧REF2よりも高ければ下限検出信号SDETはローレベルとなり、誤差電圧ERRが基準電圧REF2よりも低ければ下限検出信号DETはハイレベルとなる。
【0037】
セレクタ20は、下限検出信号DETに応じて第1電圧REFaと第2電圧REFbのいずれか一方を基準電圧REF1として選択出力する。より具体的に述べると、セレクタ20は、下限検出信号DETがローレベルであるときに第1電圧REFaを基準電圧REF1として選択出力し、下限検出信号DETがハイレベルであるときに第2電圧REFbを基準電圧REF1として選択出力する。なお、第1電圧REFaは、通常時における帰還電圧FBの目標値に相当する。第2電圧REFbは、誤差電圧ERRの強制上昇時における帰還電圧FBの名目上の目標値に相当し、第1電圧REFaよりも高い電圧値(例えばREFb=REFa×1.05)に設定されている。
【0038】
セレクタ21は、下限検出信号DETに応じて第3電圧REFcと第4電圧REFdのいずれか一方を基準電圧REF2として選択出力する。より具体的に述べると、セレクタ21は、下限検出信号DETがローレベルであるときに第4電圧REFdを基準電圧REF2として選択出力し、下限検出信号DETがハイレベルであるときに第3電圧REFcを基準電圧REF2として選択出力する。なお、第3電圧REFcは、誤差電圧ERRの強制上昇解除レベルに相当し、第1電圧REFaよりも低い電圧値(例えばREFc=REFa×0.97)に設定されている。第4電圧REFdは、誤差電圧ERRの強制上昇開始レベル(誤差電圧ERRの下限値)に相当し、第3電圧REFcよりもさらに低い電圧値(例えばREFd=REFa×0.95)に設定されている。
【0039】
なお、上記の各電圧REFa〜REFdとしては、入力電圧INや周囲温度の変動に依存しない一定電圧(バンドギャップ電圧など)を用いることが望ましい。
【0040】
図2は、重負荷時(連続モード時)におけるスイッチング動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、出力電圧OUT、スイッチ電圧SW、インダクタ電流IL、帰還電圧FB、誤差電圧ERR、比較信号S1、オン時間設定信号S2、逆流検出信号S3、ゲート信号G1及びG2、並びに、下限検出信号DETが描写されている。
【0041】
時刻t11において、帰還電圧FBが誤差電圧ERRを下回り、比較信号S1がハイレベルに立ち上がると、オン時間設定信号S2がハイレベルに立ち上がる。その後、オン時間設定信号S2は、所定のオン時間Tonが経過するまでハイレベルに維持される。
【0042】
時刻t11〜t12(オン時間設定信号S2のハイレベル期間)では、ゲート信号G1がハイレベルとなり、ゲート信号G2がローレベルとなるので、トランジスタ11がオンとなり、トランジスタ12がオフとなる。従って、時刻t11〜t12では、スイッチ電圧SWがほぼ入力電圧INまで上昇し、インダクタ電流ILが増大していく。
【0043】
時刻t12において、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられると、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。従って、スイッチ電圧SWはほぼ接地電圧GNDまで低下し、インダクタ電流ILは減少に転じる。
【0044】
ここで、負荷に流れる出力電流Ioが十分に大きければ、ゲート信号G1が再びハイレベルに立ち上げられる時刻t13まで、インダクタ電流ILはゼロ値を下回ることなく負荷に向けて流れ続ける。従って、トランジスタ12への逆流電流は発生しないので、逆流検出信号S3がハイレベルに立ち上がることはない。
【0045】
その後、時刻t13において、帰還電圧FBが再び誤差電圧ERRを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がり、上記と同様のスイッチング動作が繰り返される。
【0046】
なお、
図2の重負荷時には、誤差電圧ERRが第4電圧REFdまで低下しないので、下限検出信号DETはローレベルに維持されている。
【0047】
図3は、軽負荷時(不連続モード時)におけるスイッチング動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、出力電圧OUT、スイッチ電圧SW、インダクタ電流IL、帰還電圧FB、誤差電圧ERR、比較信号S1、オン時間設定信号S2、逆流検出信号S3、ゲート信号G1及びG2、並びに、下限検出信号DETが描写されている。
【0048】
トランジスタ11のオン期間(t21〜t22)が経過した後、時刻t22において、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられると、トランジスタ11がオフとなり、トランジスタ12がオンとなる。従って、スイッチ電圧SWはほぼ接地電圧GNDまで低下し、インダクタ電流ILは減少に転じる。
【0049】
ここで、負荷に流れる出力電流Ioが十分に大きければ、ゲート信号G1が再びハイレベルに立ち上げられる時刻t24まで、コイル電流ILはゼロ値を下回ることなく負荷に向けて流れ続ける。一方、負荷に流れる出力電流Ioが小さい軽負荷時には、インダクタL1に蓄えられているエネルギが少ないので、時刻t23において、インダクタ電流ILがゼロ値を下回り、トランジスタ12への逆流電流が発生する。このような状態では電荷を接地端に捨てていることになるので、軽負荷時における効率低下の原因となる。
【0050】
そこで、スイッチング電源装置Aは、逆流電流検出部16を用いてトランジスタ12への逆流電流を検出し、逆流検出信号S3がハイレベルに立ち上がる時刻t23でトランジスタ12を強制的にオフする構成とされている。このような構成とすることにより、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。
【0051】
なお、負荷に流れる出力電流Ioが小さくなるほど、トランジスタ11のオフ期間に出力電圧OUTが低下しにくくなるので、帰還電圧FBが基準電圧REF1(=REFa)を上回っている期間が長くなり、誤差電圧ERRの低下量が大きくなる。ただし、
図3の例では、誤差電圧ERRが第4電圧REFdを下回る前に上昇に転じているので、下限検出信号DETはローレベルに維持されている。
【0052】
その後、時刻t24において、帰還電圧FBが再び誤差電圧ERRを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がり、上記と同様のスイッチング動作が繰り返される。
【0053】
図4は、超軽負荷時(不連続モード時)におけるスイッチング動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、出力電圧OUT、スイッチ電圧SW、インダクタ電流IL、帰還電圧FB、誤差電圧ERR、比較信号S1、オン時間設定信号S2、逆流検出信号S3、ゲート信号G1及びG2、並びに、下限検出信号DETが描写されている。
【0054】
負荷への出力電流Ioがほぼ0Aとなる超軽負荷状態(無負荷に近い状態)では、トランジスタ11ないし12がオフされて以降、出力電圧OUTがほとんど低下しない状態となる。このとき、エラーアンプ13は、帰還電圧FBが基準電圧REF1(=REFa)を上回っている限り、誤差電圧ERRを引き下げるように動作し続けるので、そのままでは誤差電圧ERRが0V(ないしはその近傍)まで低下してしまう。
【0055】
そこで、第1実施形態のスイッチング電源装置Aは、誤差電圧ERRを監視して下限検出信号DETを生成する誤差電圧監視部19と、下限検出信号DETに応じて基準電圧REF1及びREF2を切り替えるセレクタ20及び21を用いて、誤差電圧ERRの下限値を制限する構成とされている。以下、
図4の例に即しつつ、
図5も適宜参照しながら具体的に説明する。
【0056】
時刻t31〜t33を経てトランジスタ11及び12がオフされた後、時刻t34において、誤差電圧ERRが第4電圧REFdを下回り、下限検出信号DETがハイレベルに立ち上がると、基準電圧REF1が電圧REFaから電圧REFbに引き上げられると共に、基準電圧REF2が第4電圧REFdから第3電圧REFcに引き上げられる。基準電圧REF1の引き上げにより、帰還電圧FBが基準電圧REF1(=REFb)を下回る状態になると、誤差電圧ERRが上昇に転ずる。
【0057】
その後、時刻t35において、誤差電圧ERRが第3電圧REFcを上回り、下限検出信号DETがローレベルに立ち下がると、基準電圧REF1が電圧REFbから電圧REFaに引き下げられると共に、基準電圧REF2が第3電圧REFcから第4電圧REFdに引き下げられる。
【0058】
なお、下限検出信号DETがローレベルに立ち下がった時点で、帰還電圧FBが基準電圧REF1(=REFa)を上回っていれば、誤差電圧ERRは再び下降に転じるが、帰還電圧FBが基準電圧REF1(=REFa)を下回っていれば、誤差電圧ERRはそのまま上昇し続ける(時刻t35と時刻t37を比較参照)。
【0059】
その後、時刻t38において、帰還電圧FBが再び誤差電圧ERRを下回ると、比較信号S1がハイレベルに立ち上がり、上記と同様のスイッチング動作が繰り返される。
【0060】
図5は、負荷急変時(超軽負荷状態から重負荷状態への移行時)における過渡応答の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、出力電圧OUT、帰還電圧FB、誤差電圧ERR、下限検出信号DET、及び、出力電流Ioが描写されている。
【0061】
先にも述べたように、第1実施形態のスイッチング電源装置Aでは、誤差電圧監視部19とセレクタ20及び21を用いて、超軽負荷状態における誤差電圧ERRの下限値が制限されている。このような構成とすることにより、時刻txにおいて、出力電流Ioが急激に大きくなった場合であっても、誤差電圧ERRがこれに追従して素早く通常の制御レベル(=REFa)に復帰する。従って、誤差電圧ERRの下限値を制限しない構成(図中の破線を参照)と比べて、負荷急変に対する応答性が高まるので、出力電圧OUTの変動を小さく抑えることが可能となる。
【0062】
なお、エラーアンプ13は、その駆動電流の大きさが下限検出信号DETに応じて切り替えられる構成にしておくとよい。より具体的に述べると、下限検出信号DETのハイレベル期間にエラーアンプ13の駆動電流をブーストし、その電流出力能力を一時的に高める構成とすれば、下限検出信号DETのハイレベル期間にのみ、誤差電圧ERRを通常時よりも速く立ち上げることができるようになるので、負荷急変に対する応答性をさらに向上することが可能となる。エラーアンプ13の駆動電流を定常的に高めてしまうと、スイッチング電源装置Aの自己消費電流が増大するほか、出力帰還ループの位相余裕が小さくなって発振しやすくなる。一方、下限検出信号DETのハイレベル期間に限り、エラーアンプ13の駆動電流を高める構成であれば、上記の問題を生じることなく、負荷急変に対する応答性を向上することができる。
【0063】
また、第1実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、後述する第2実施形態と異なり、エラーアンプ13のバッファ処理(エラーアンプ13をバッファとして用いるように信号入力経路を切り替える処理)を行わないので、バッファ処理の前後(不連続モードと連続モードとの切替前後)で意図しない出力変動を生じることがない。
【0064】
また、第1実施形態のスイッチング電源装置Aであれば、後述する第3実施形態と異なり、クランパを用いて誤差電圧ERRを強制的に吊り上げる構成ではないので、エラーアンプ13がキャパシタC2から電流を最大限まで引き抜こうとしている状態にならない。従って、第3実施形態よりも迅速に誤差電圧ERRを通常の制御レベル(=REFa)まで復帰させることができる。
【0065】
<スイッチング電源装置(第2実施形態)>
図6は、スイッチング電源装置の第2実施形態を示すブロック図である。第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同様の構成であり、誤差電圧監視部19とセレクタ20及び21に代えて、セレクタ22を設けた点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分についてのみ、重点的な説明を行う。
【0066】
セレクタ22は、連続モード時にはエラーアンプ13の反転入力端(−)をリップルインジェクション部18の出力端に接続する一方、不連続モード時にはエラーアンプ13の反転入力端(−)をエラーアンプ13の出力端に接続する。すなわち、不連続モード時には、エラーアンプ13のバッファ処理(エラーアンプ13をバッファとして用いるように信号入力経路を切り替える処理)が行われる。
【0067】
図7は、第2実施形態における出力挙動の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、出力電圧OUT、誤差電圧ERR、及び、出力電流Ioが描写されている。
【0068】
出力電流Ioが閾値電流Ithよりも小さい不連続モード時(時刻ty以前)には、エラーアンプ13がバッファとして機能するので、誤差電圧ERRが基準電圧REFに固定される。従って、不連続モード時に誤差電圧ERRが不必要に下がり過ぎることはないので、超軽負荷状態から負荷が急に重くなった場合であっても、誤差電圧ERRを遅滞なく応答させて、出力電圧OUTの変動を抑えることが可能となる。
【0069】
ただし、第2実施形態のスイッチング電源装置Aでは、バッファ処理の前後(不連続モードと連続モードとの切替前後)で、エラーアンプ13の出力制御レベル(反転入力端への信号レベル)が変化するので、急峻な負荷変動が生じていない場合であっても、出力電圧OUTに意図しない過渡変動が発生する。
【0070】
<スイッチング電源装置(第3実施形態)>
図8は、スイッチング電源装置の第3実施形態を示すブロック図である。第3実施形態は、基本的に第1実施形態と同様の構成であり、誤差電圧監視部19とセレクタ20及び21に代えて、クランパ23を設けた点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3実施形態の特徴部分についてのみ、重点的な説明を行う。
【0071】
クランパ23は、誤差電圧ERRがクランプ電圧Vclampを下回らないように、誤差電圧ERRを強制的に吊り上げるための素子ないしは回路である。
【0072】
図9は、第3実施形態における出力挙動の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、出力電圧OUT、帰還電圧FB、誤差電圧ERR、及び、出力電流Ioが描写されている。
【0073】
第3実施形態のスイッチング電源装置Aでは、クランパ23を用いて超軽負荷状態における誤差電圧ERRの下限値が制限される。このような構成とすることにより、時刻tzにおいて、出力電流Ioが急激に大きくなった場合であっても、誤差電圧ERRの下限値を制限しない構成(図中の破線を参照)と比べて、誤差電圧ERRをより速く通常の制御レベル(=REFa)に復帰させることが可能となる。
【0074】
ただし、第3実施形態のスイッチング電源装置Aでは、時刻tzにおいて、エラーアンプ13がキャパシタC2から電流を最大限まで引き抜こうとしている状態となっているので、先出の第1実施形態と比べると、誤差電圧ERRの復帰に時間を要する。
【0075】
<オン時間設定部>
図10は、オン時間設定部15の第1構成例を示すブロック図である。第1構成例のオン時間設定部15は、RSフリップフロップ151と、電圧/電流変換部152と、キャパシタ153と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ154と、電圧/電圧変換部155と、オンタイムコンパレータ156と、を含む。
【0076】
RSフリップフロップ151は、セット信号S(比較信号S1)の立上がりエッジで出力信号Q(オン時間設定信号S2)をハイレベルにセットし、リセット信号Rの立上がりエッジで出力信号Qをローレベルにリセットする。また、RSフリップフロップ151は出力信号Qを出力すると共に、これを論理反転させた反転出力信号QBも出力する。
【0077】
電圧/電流変換部152は、入力電圧INを電圧/電流変換することにより、キャパシタ153の充電電流Iaを生成する。充電電流Iaの電流値は、入力電圧INの電圧値に応じて変動する。具体的には、入力電圧INが高いほど充電電流Iaは大きくなり、入力電圧INが低いほど充電電流Iaは小さくなる。
【0078】
キャパシタ153の第1端は、電圧/電流変換部152に接続されている。キャパシタ153の第2端は、接地端に接続されている。トランジスタ154がオフされているときには、キャパシタ153が充電電流Iaによって充電され、キャパシタ153の第1端に現れる鋸波電圧Vaが入力電圧INに応じた上昇度(傾き)を持って上昇する。一方、トランジスタ154がオンされているときには、キャパシタ153がトランジスタ154を介して放電され、鋸波電圧Vaが急峻に低下する。
【0079】
トランジスタ154は、反転出力信号QBに応じてキャパシタ153の充放電を切り替える充放電スイッチである。トランジスタ154のドレインは、キャパシタ153の第1端に接続されている。トランジスタ154のソースは、接地端に接続されている。トランジスタ154のゲートは、反転出力信号QBの印加端に接続されている。
【0080】
電圧/電圧変換部155は、出力電圧OUTを電圧/電圧変換することにより、出力電圧OUTに応じた閾値電圧Vbを生成する。閾値電圧Vbの電圧値は、出力電圧OUTの電圧値に応じて変動する。具体的には、出力電圧OUTが高いほど閾値電圧Vbは高くなり、出力電圧OUTが低いほど閾値電圧Vbは低くなる。
【0081】
オンタイムコンパレータ156は、非反転入力端(+)に入力される鋸波電圧Vaと、反転入力端(−)に入力される閾値電圧Vbを比較してリセット信号Rを生成する。鋸波電圧Vaが閾値電圧Vbよりも高ければリセット信号Rはハイレベルとなり、鋸波電圧Vaが閾値電圧Vbよりも低ければリセット信号Rはローレベルとなる。
【0082】
図11は、オン時間設定動作の一例(理想状態)を示すタイミングチャートであり、上から順に、帰還電圧FB、セット信号S、反転出力信号QB、鋸波電圧Va、リセット信号R、及び、出力信号Qが描写されている。
【0083】
トランジスタ11のオフ期間中に、帰還電圧FBが誤差電圧ERRを下回ると、セット信号Sがハイレベルに立ち上がり、出力信号Qがハイレベルに遷移される。従って、トランジスタ11がオンとなり、帰還電圧FBが上昇に転ずる。このとき、トランジスタ154は、反転出力信号QBのローレベル遷移に伴ってオフとなるので、充電電流Iaによるキャパシタ153の充電が開始される。先にも述べたように、充電電流Iaの電流値は、入力電圧INの電圧値に応じて変動する。従って、鋸波電圧Vaは、入力電圧INに応じた上昇度(傾き)を持って上昇する。
【0084】
その後、鋸波電圧Vaが閾値電圧Vb(出力電圧OUTの分圧電圧)まで上昇すると、リセット信号Rがハイレベルに立ち上がり、出力信号Qがローレベルに遷移される。従って、トランジスタ11がオフとなり、帰還電圧FBが再び下降に転ずる。このとき、トランジスタ154は、反転出力信号QBのハイレベル遷移に伴ってオンとなる。従って、キャパシタ153がトランジスタ154を介して速やかに放電され、鋸波電圧Vaがローレベルに引き下げられる。
【0085】
ドライバ17は、オン時間設定信号S2(出力信号Qに相当)に応じてゲート信号G1及びG2を生成し、これを用いてトランジスタ11及び12のオン/オフ制御を行う。その結果、外部端子T2から矩形波形状のスイッチ電圧SWが出力される。スイッチ電圧SWは、インダクタL1とキャパシタC1によって整流及び平滑され、出力電圧OUTが生成される。なお、出力電圧OUTは、抵抗R1及びR2によって分圧され、先述の帰還電圧FBが生成される。このような出力帰還制御により、スイッチング電源装置Aでは、極めて簡易な構成によって、入力電圧INから所望の出力電圧OUTが生成される。
【0086】
ここで、オン時間設定部15は、オン時間Tonを固定値として設定するのではなく、入力電圧INと出力電圧OUTに応じた変動値として設定する。より具体的には、オン時間設定部15は、入力電圧INが高いほど鋸波電圧Vaの上昇度(傾き)を大きくしてオン時間Tonを短くし、入力電圧INが低いほど鋸波電圧Vaの上昇度(傾き)を小さくしてオン時間Tonを長くする。また、オン時間設定部15は、出力電圧OUTが低いほど閾値電圧Vbを引き下げてオン時間Tonを短くし、出力電圧OUTが高いほど閾値電圧Vbを引き上げてオン時間Tonを長くする。言い換えれば、オン時間設定部15は、入力電圧INに反比例して、出力電圧OUTに比例するオン時間Tonを設定する。
【0087】
このような構成とすることにより、非線形制御方式の長所を損なうことなく、スイッチング周波数の変動を抑制することができる。従って、出力電圧精度やロードレギュレーション特性の向上、ないし、セット設計におけるEMI[electromagnetic interference]対策やノイズ対策の容易化を実現することが可能となる。また、入力電圧変動の大きいアプリケーションや、様々な出力電圧を必要とあるアプリケーションの電源手段として、スイッチング電源装置Aを支障なく適用することも可能となる。
【0088】
ただし、オンタイムコンパレータ156に回路遅延がある場合には、
図12で示したように、鋸波電圧Vaが閾値電圧Vbを上回った後も、リセット信号Rがローレベルに維持されたままとなり、遅延時間Tdが経過した時点でようやくリセット信号Rがハイレベルに立ち上げられる。その結果、オン時間Tonが長くなり(Ton→Ton’)、延いてはオフ時間Toffも長くなるので(Toff→Toff’)、意図したスイッチング周波数が得られなくなる。特に、スイッチング周波数が速いほど周波数変動が大きくなる。
【0089】
図13は、オン時間設定部15の第2構成例を示すブロック図である。第2構成例は、基本的に第1構成例と同様の構成であり、入力電圧INに応じて閾値電圧Vbをオフセットさせるオフセット部157を設けた点に特徴を有する。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、
図10と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2構成例の特徴部分についてのみ、重点的な説明を行う。
【0090】
オフセット部157は、閾値電圧Vbからオフセット電圧Vofsを差し引いて、オフセット済みの閾値電圧Vb2(=Vb−Vofs)を生成し、これをオンタイムコンパレータ156の反転入力端(−)に印加する。
【0091】
なお、第2構成例のオン時間設定部15において、電圧/電流変換部152は、入力電圧INに応じてキャパシタ153の充電電流Iaとは別系統のオフセット調整電流Ibを生成する構成とされており、オフセット部157は、オフセット調整電流Ib(延いては入力電圧IN)に応じてオフセット電圧Vofs(閾値電圧Vbのオフセット量に相当)を可変制御する構成とされている。以下では、本構成の技術的意義について詳述する。
【0092】
キャパシタ153の容量値をCとした場合、オフセット済みの閾値電圧Vb2を用いて設定されるオン時間Tonは、次の(1)式で算出することができる。
【0093】
Ton=(C×Vb2/Ia)+Td
={C×(Vb−Vofs)/Ia}+Td
=(C×Vb/Ia)−(C×Vofs/Ia)+Td … (1)
【0094】
ここで、右辺第1項(C×Vb/Ia)は、遅延時間Tdのない理想状態におけるオン時間を表しているので、右辺第2項(C×Vofs/Ia)が右辺第3項(Td)と一致するようにオフセット電圧Vofsを設定すれば、オンタイムコンパレータ156の回路遅延(遅延時間Td)をキャンセルすることが可能となる(
図14を参照)。
【0095】
上記の右辺第2項(C×Vofs/Ia)において、容量値Cは固定値であるが、充電電流Iaは入力電圧INに比例した可変値である。そのため、オフセット電圧Vofsを固定値とした場合には、右辺第2項(C×Vofs/Ia)が入力電圧INに反比例して変動するので、入力電圧INの電圧値によっては、右辺第3項(Td)を適切にキャンセルすることができなくなる。
【0096】
一方、オフセット電圧Vofsを入力電圧INに比例した可変値とした場合には、右辺第2項(C×Vofs/Ia)の分母と分子で、入力電圧INの影響を相殺することができるので、入力電圧INの電圧値に依ることなく、右辺第3項(Td)を適切にキャンセルすることが可能となる。
【0097】
このように、第2構成例のオン時間設定部15によれば、入力電圧INに比例したオフセット電圧Vofsを用いて、オンタイムコンパレータ156の回路遅延に起因するオン時間Tonのずれを適切に補正することができるので、スイッチング周波数の変動を抑制することが可能となる。
【0098】
図15は、オン時間設定部15の詳細構成を示す回路図である。以下では、電圧/電流変換部152、電圧/電圧変換部155、及び、オフセット部157の順番に、各々の回路構成と動作を詳述する。
【0099】
電圧/電流変換部152は、オペアンプa1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタa2と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタa3〜a5と、抵抗a6〜a8とを含む。抵抗a6の第1端は、入力電圧INの印加端に接続されている。抵抗a6の第2端と抵抗a7の第1端は、いずれもオペアンプa1の非反転入力端(+)に接続されている。抵抗a7の第2端は、接地端に接続されている。オペアンプa1の反転入力端(−)は、トランジスタa2のソースと抵抗a8の第1端に各々接続されている。抵抗a8の第2端は、接地端に接続されている。オペアンプa1の出力端は、トランジスタa2のゲートに接続されている。トランジスタa2のドレインは、トランジスタa3のドレインに接続されている。トランジスタa3〜a5のソースは、いずれも入力電圧INの印加端に接続されている。トランジスタa3〜a5のゲートは、いずれもトランジスタa3のドレインに接続されている。トランジスタa5のドレインは、第1出力端(充電電流Iaの出力端)に相当する。トランジスタa4のドレインは、第2出力端(オフセット調整電流Ibの出力端)に相当する。
【0100】
上記構成から成る電圧/電流変換部152において、オペアンプa1は、その2入力端に印加される電圧が互いに等しくなるようにトランジスタa2のゲート電圧を生成する。従って、抵抗a8には、入力電圧INの分圧電圧Vxが印加され、これに比例した基準電流Ixが流れる。一方、カレントミラーを形成するトランジスタa3〜a5は、基準電流Ixをミラーして充電電流Ia及びオフセット調整電流Ibを生成する。従って、充電電流Iaとオフセット調整電流Ibは、それぞれ、基準電流Ix(延いては入力電圧IN)に比例した電流となる。
【0101】
電圧/電圧変換部155は、オペアンプb1と抵抗b2〜b5を含む。抵抗b2の第1端は、出力電圧OUTの印加端に接続されている。抵抗b2の第2端と抵抗b3の第1端は、いずれもオペアンプb1の非反転入力端(+)に接続されている。抵抗b3の第2端は接地端に接続されている。オペアンプb1の出力端は、閾値電圧Vbの出力端に相当しており、抵抗b4の第1端に接続されている。オペアンプb1の反転入力端(−)は、抵抗b4の第2端と抵抗b5の第1端に各々接続されている。抵抗b5の第2端は、接地端に接続されている。
【0102】
上記構成から成る電圧/電圧変換部155において、オペアンプb1は、その2入力端に印加される電圧が互いに等しくなるように閾値電圧Vbを生成する。すなわち、オペアンプb1は、出力電圧OUTの分圧電圧Vy1(=α×OUT、ただし、αは抵抗b2及びb3の各抵抗値に応じて定まる分圧比)と、閾値電圧Vbの分圧電圧Vy2(=β×Vb、ただし、βは抵抗b4及びb5の各抵抗値に応じて定まる分圧比)とが互いに等しくなるように閾値電圧Vbを生成する。従って、閾値電圧Vbは、出力電圧OUTに比例した電圧(=(α/β)×OUT)となる。
【0103】
オフセット部157は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタc1及びc2と、抵抗c3(抵抗値:Rc3)を含む。トランジスタc1のドレインは、電圧/電流変換部152の第2出力端(オフセット調整電流Ibの出力端)に接続されている。トランジスタc1及びc2のゲートは、いずれもトランジスタc1のドレインに接続されている。トランジスタc1及びc2のソースは、いずれも接地端に接続されている。抵抗c3の第1端は、電圧/電圧変換部155の出力端(閾値電圧Vbの印加端)に接続されている。抵抗c3の第2端とトランジスタc2のドレインは、いずれもオンタイムコンパレータ156の反転入力端(オフセット調整済みの閾値電圧Vb2の印加端)に接続されている。
【0104】
上記構成から成るオフセット部157において、カレントミラーを形成するトランジスタc1及びc2は、電圧/電圧変換部155の出力端(閾値電圧Vbの印加端)から抵抗c3を介して接地端に至る向きでオフセット調整電流Ibが流れるように、オフセット調整電流Ibの電流方向を折り返す。その結果、抵抗c3の両端間には、オフセット調整電流Ib(延いては入力電圧IN)に比例したオフセット電圧Vofs(=Ib×Rc3)が生じ、このオフセット電圧Vofsが閾値電圧Vbから差し引かれる。
【0105】
ただし、閾値電圧Vbのオフセット手法については、これに限定されるものではなく、オンタイムコンパレータ156の非反転入力端(+)と反転入力端(−)との間に入力オフセットを付与する構成としても構わない。
【0106】
<電子機器への適用>
図16〜
図18は、それぞれ、先述のスイッチング電源装置Aを搭載した電子機器の一例(パーソナルコンピュータX、デジタル複合機Y、及び、携帯端末(スマートフォン)Z)を示す外観図である。これらの図示はいずれも例示であり、先述のスイッチング電源装置Aは、多種多様な電子機器に搭載することが可能である。
【0107】
<その他の変形例>
なお、上記実施形態では、同期整流方式の降圧型スイッチング電源装置に本発明を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、スイッチング駆動方式として非同期整流方式を採用してもよいし、また、スイッチング電源装置の出力段を昇圧型や昇降圧型としても構わない。
【0108】
このように、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。