特許第6047023号(P6047023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047023
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/00 20060101AFI20161212BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20161212BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F04D29/00 B
   F04D13/06 E
   F04D29/58 F
   F04D29/58 D
   F04D13/06 F
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-12628(P2013-12628)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-25471(P2014-25471A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-140958(P2012-140958)
(32)【優先日】2012年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】竹村 有司
(72)【発明者】
【氏名】平井 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕一
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−128076(JP,A)
【文献】 特開2006−257912(JP,A)
【文献】 特開2005−180211(JP,A)
【文献】 特開2009−133305(JP,A)
【文献】 特開2002−184915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/00
F04D 13/06
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転することによって流入した液体を圧送するインペラと、
前記インペラが取付けられていると共に、周方向に沿ってマグネットが配設されたロータと、前記ロータの径方向外側に配置されかつ自らが界磁する磁界によって前記ロータを回転させるステータと、を含んで構成されたモータ部と、
有底筒状に形成されかつ前記ロータが収容されるキャン部を有すると共に、前記ステータが前記ロータの径方向外側の位置に支持されたモータハウジングと、
前記モータハウジングにおける前記キャン部に近接する部位に取付けられ、前記モータ部を制御する回路装置と、
を備え
前記回路装置は、回路基板及びこの回路基板上に取付けられた回路素子を含んで構成されていると共に、前記回路基板における前記回路素子が取付けられた面と反対側の面が前記モータハウジングに取付けられており、
前記回路基板の一方側の面には、前記回路素子と電気的に接続された導電パターン部が設けられていると共に、前記回路基板の他方側の面にも導電パターン部が設けられており、
前記回路基板の一方側の面に設けられた前記導電パターン部と前記回路基板の他方側の面に設けられた前記導電パターン部とが、スルーホールビアを介してつながれており、
前記回路基板の他方側の面に設けられた前記導電パターン部及び前記スルーホールビアの前記モータハウジング側の端部が、伝熱部材を介して前記キャン部と接している電動ポンプ。
【請求項2】
前記キャン部の底壁には、前記ロータが軸支される軸支部が立設されていると共に、前記底壁は前記回路基板に沿って延在され、かつ前記底壁における前記軸支部が設けられた面と反対側の面に前記回路基板が取付けられている請求項記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記キャン部の内部において、前記インペラによって攪拌された液体が循環している請求項1又は請求項2記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記キャン部における前記回路装置側の部位が金属製とされている請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータの回転を制御するための回路装置を内部に備えた電動ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−13946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータを回転させるために、回路装置に通電されると、該回路装置の一部を構成する回路素子等が発熱する。
【0005】
そのため、回路素子等を冷却するために、アルミニウム合金等の金属材料を用いて形成されたヒートシンク等の冷却装置を設けることが考えられるが、この場合、電動ポンプのコストが上昇すると共に、電動ポンプの体格が大きくなる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、電動ポンプのコストアップを抑制すると共に、小型化を図ることができる電動ポンプを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る電動ポンプは、軸線回りに回転することによって流入した液体を圧送するインペラと、前記インペラが取付けられていると共に、周方向に沿ってマグネットが配設されたロータと、前記ロータの径方向外側に配置されかつ自らが界磁する磁界によって前記ロータを回転させるステータと、を含んで構成されたモータ部と、有底筒状に形成されかつ前記ロータが収容されるキャン部を有すると共に、前記ステータが前記ロータの径方向外側の位置に支持されたモータハウジングと、前記モータハウジングにおける前記キャン部に近接する部位に取付けられ、前記モータ部を制御する回路装置と、を備え、前記回路装置は、回路基板及びこの回路基板上に取付けられた回路素子を含んで構成されていると共に、前記回路基板における前記回路素子が取付けられた面と反対側の面が前記モータハウジングに取付けられており、前記回路基板の一方側の面には、前記回路素子と電気的に接続された導電パターン部が設けられていると共に、前記回路基板の他方側の面にも導電パターン部が設けられており、前記回路基板の一方側の面に設けられた前記導電パターン部と前記回路基板の他方側の面に設けられた前記導電パターン部とが、スルーホールビアを介してつながれており、前記回路基板の他方側の面に設けられた前記導電パターン部及び前記スルーホールビアの前記モータハウジング側の端部が、伝熱部材を介して前記キャン部と接している
【0008】
請求項1記載の本発明では、モータ部が駆動する即ちロータが回転すると、このロータと共にインペラが回転する。その結果、電動ポンプ内に流入した液体が圧送される。また、本発明では、モータ部が回路装置によって制御されている。そのため、モータ部を制御するために、回路装置に通電されると、回路装置自体が発熱する。この熱を放熱させるために、ヒートシンク等の冷却装置を設けることが考えられるが、本発明では、回路装置がモータハウジングにおけるキャン部に近接する部位に取付けられている。そのため、回路装置の熱はモータハウジングに伝達された後、キャン部に満たされた液体に伝達される。即ち、本発明では、ヒートシンク等の冷却装置を設けることなく回路装置の熱を放熱させることができる。その結果、本発明では、電動ポンプのコストアップを抑制することができると共に、電動ポンプ自体の小型化を図ることができる。
【0010】
また、請求項記載の本発明では、回路基板上に取付けられた回路素子が発熱すると、この熱は回路基板を介してモータハウジングに伝達される。そのため、回路基板上における回路素子の位置を適宜設定することによって、回路素子の冷却性能を向上させることができる。
【0019】
請求項記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項記載の電動ポンプにおいて、前記キャン部の底壁には、前記ロータが軸支される軸支部が立設されていると共に、前記底壁は前記回路基板に沿って延在され、かつ前記底壁における前記軸支部が設けられた面と反対側の面に前記回路基板が取付けられている。
【0020】
請求項記載の本発明では、キャン部の底壁が回路基板に沿って延在している。そのため、回路基板の取付けを容易にすることができると共に、回路素子の熱を回路基板及びキャン部の底壁を介してキャン部に満たされた液体に放熱させることができる。
【0021】
請求項記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1又は請求項2記載の電動ポンプにおいて、前記キャン部の内部において、前記インペラによって攪拌された液体が循環していることを特徴としている。
【0022】
請求項記載の本発明では、インペラによって攪拌された液体がキャン部の内部にて循環している。換言すると、キャン部の底壁から伝達された熱によって温度が上昇した液体が、キャン部の底壁付近に留まらない。その結果、本発明では、回路素子の冷却性能をより一層向上させることができる。
【0023】
請求項記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電動ポンプにおいて、前記キャン部における前記回路装置側の部位が金属製とされている。
【0024】
請求項記載の本発明では、モータハウジングのキャン部における回路装置側の部位が熱伝導率が高い金属製とされている。これにより、本発明では、回路装置からキャン部への放熱性能をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る電動ポンプを示す断面図である。
図2】ポンプ部の外郭を形成するポンプケースの断面を示す断面図である。
図3】モータハウジングの断面を示す断面図である。
図4】インペラ及びこのインペラが取付けられたロータの断面を示す断面図である。
図5】モータ部を制御する回路装置を示す側面図である。
図6】回路装置とモータハウジングとの取付部を拡大して示す拡大断面図である。
図7】対比例に電動ポンプにおいて、回路装置が設けられた部位を拡大して示す拡大断面図である。
図8】第2実施形態に係る電動ポンプを示す分解斜視図である。
図9図8に示された電動ポンプのキャン部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図10】第3実施形態に係る電動ポンプを示す分解斜視図である。
図11図10に示されたキャン部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図12】第4実施形態に係る電動ポンプのキャン部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図5を用いて、本発明の第1実施形態に係る電動ポンプについて説明する。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態の電動ポンプ12は、車両のエンジン等の内部に冷却水を圧送するためのウォータポンプである。具体的には、電動ポンプ12は、流入した冷却水を圧送するポンプ部14の外郭を形成するポンプケース16と、インペラ18を回転させることによりポンプ部14を駆動するロータ20と、を備えている。また、電動ポンプ12は、自らが界磁する磁界によってロータ20を軸線回りに回転させるステータ22と、このステータ22を支持するモータハウジング24と、を備えている。上記のロータ20及びステータ22を主要な要素としてモータ部10が構成されている。さらに、電動ポンプ12は、モータ部10を制御するための回路装置28を備えている。
【0028】
以下、先ずポンプケース16について説明し、次いでモータハウジング24、ロータ20、ステータ22、及び回路装置28についてこの順で説明する。
【0029】
(ポンプケース16)
図2に示されるように、ポンプケース16は、冷却水が流入する入口管30及び冷却水が流出する出口管32を備えた略蝸牛状に形成された一体成形品である。具体的には、ポンプケース16は略円盤平板状の基部34及び該基部34の径方向内側の端部からモータの軸方向一方側(矢印A1方向)に突出した膨出部36を備えている。また、ポンプケース16は、膨出部36の径方向内側の端部から後述するインペラ18の第1円盤部78(図4参照)の形状に沿って延在するインペラガイド部38を備えている。さらに、ポンプケース16は、インペラガイド部38の径方向内側の端部からモータの軸方向一方側(矢印A1方向)に延出するように形成された管状の入口管30を備えている。また、この入口管30の端部には、ゴムホース等の配管の抜けを抑制する抜け止め突起30Aが形成されている。さらに、ポンプケース16は、上記膨出部36に接続されていると共に、入口管30の開口方向と直交する方向に延出するように形成された管状の出口管32を備えている。
【0030】
さらに、ポンプケース16は、基部34の径方向外側の端部からモータの軸方向他方側(矢印A2方向)に延在する円筒状の開放端部40を備えている。
【0031】
図1に示されるように、以上説明したポンプケース16に後述するインペラ18が収容されることにより、入口管30から流入した冷却水を出口管32に向けて圧送するポンプ部14が形成されている。
【0032】
(モータハウジング24)
図3に示されるように、モータハウジング24は有底円筒状に形成された一体成形品である。具体的には、モータハウジング24におけるモータの軸方向一方側(矢印A1方向)には後述するロータ20(図4参照)を収容するためのキャン部42が形成されていると共に、モータハウジング24におけるモータの軸方向他方側(矢印A2方向)には後述するステータ22(図1参照)を収容するためのステータ収容部44が形成されている。
【0033】
キャン部42は、モータの軸方向一方側(矢印A1方向)に開口した略U字状断面を成していると共に、円形状の底壁46を備えている。また、この底壁46の中心部にはモータの軸方向一方側(矢印A1方向)に突出するように形成された管状の軸支部48が設けられている。後述するロータ20がこの軸支部48に支持されることにより、ロータ20が該軸支部48を軸中心として回転可能となる構成である。さらに、底壁46における軸支部48が設けられた面と反対側の面は、後述する回路基板88が取付けられる取付面46Aとされている。この取付面46Aは、モータの軸方向他方側(矢印A2方向)に面が向けられていると共に、回路装置28がモータハウジング24に取付けられた状態において、回路基板88と略同一方向に延在している。
【0034】
また、キャン部42は、底壁46の径方向外側の端部からモータの軸方向一方側(矢印A1方向)に延在する内周壁50を備えている。さらに、キャン部42は、内周壁50の端部から該内周壁50の径方向外側に延在する第1インペラガイド壁52A及び該第1インペラガイド壁52Aの端部からモータの軸方向一方側(矢印A1方向)に延びる第2インペラガイド壁52Bを備えている。この、第1インペラガイド壁52A及び第2インペラガイド壁52Bは、後述するインペラ18の第2円盤部80の外周端部の形状に沿って形成されている。以上説明した、底壁46、内周壁50、第1インペラガイド壁52A、及び第2インペラガイド壁52Bによってキャン部42が形成されている。
【0035】
また、モータハウジング24は、キャン部42の第2インペラガイド壁52Bの端部からモータハウジング24の径方向外側に延在する側壁54を備えている。さらに、モータハウジング24は、側壁54の径方向外側の端部からモータの軸方向他方側(矢印A2方向)に延在する接合壁部56を備えている。図1に示されるように、この接合壁部56とポンプケース16の開放端部40とがモータの軸方向(矢印A1及び矢印A2方向)に嵌合された後、熱溶着等が施されることによって接合されている。
【0036】
また、図3に示されるように、ステータ収容部44は、上記キャン部42と反対方向に開口したW字状断面を成していると共に、円環状の底壁58を備えている。また、ステータ収容部44は、底壁58の径方向内側の端部からモータの軸方向他方側(矢印A2方向)に向けて延在する内周壁50を備えている。さらに、ステータ収容部44は、底壁58の径方向外側の端部からモータの軸方向他方側(矢印A2方向)に延在する外周壁60を備えている。以上説明した底壁58、内周壁50、及び外周壁60によってステータ収容部44が形成されていると共に、底壁58、内周壁50、及び外周壁60に囲まれた部分に後述するステータ22(図1参照)が支持されている。
【0037】
また、図1及び図3に示されるように、モータハウジング24は、外周壁60の径方向外側に向けて突出するように形成されたコネクタ部68を備えている。この、コネクタ部68を介して回路装置28が電源等に接続される構成である。
【0038】
(ロータ20)
図4に示されるように、ロータ20は、円筒状のロータ70が出力軸72に取付けられることによって構成されている。具体的には、出力軸72は、円柱状の鋼材に浸炭処理等の表面処理が施されることにより構成されており、その一方の端部は上記モータハウジング24の軸支部48(図3参照)に挿入される回転軸部72Aとされている。即ち、出力軸72は軸支部48に片持ち支持されている構成である。
【0039】
また、ロータ70は、上記出力軸72の径方向外側に配置された厚肉円筒状を成している。また、このロータ70の内部には、その周方向に沿って複数のマグネット74が設けられている。さらに、このロータ70はロータ保持部材76を介して出力軸72に固定されている。
【0040】
また、出力軸72における回転軸部72Aと反対側の端部には、インペラ18が取付けられている。インペラ18は、モータの径方向(矢印R1及び矢印R2方向)に延在すると共に円盤状に形成された第1円盤部78と第2円盤部80との間に複数のブレード82が立設されることによって形成されている。
【0041】
(ステータ22)
図1及び図3に示されるように、ステータ22は、環状に形成されたモータコア84と、導電性の巻線26と、を主要な要素として構成されている。具体的には、モータコア84は、所定の形状となるように打ち抜かれた鋼板がモータの軸方向(矢印A1及び矢印A2方向)に積層されることによって構成されている。その結果、モータコア84には、モータの径方向外側(矢印R1方向)に向けて延びると共に巻線26が巻回されるティース部84Aが形成されている。
【0042】
また、巻線26がティース部84Aに層状に巻回されることによって、該ティース部84Aに沿って巻線部86が形成されている。さらに、この巻線26の端末部は、後述する回路基板88に接続されている。
【0043】
なお、巻線部86とティース部84Aとの間には、図示しない絶縁部材が介装されている。
【0044】
(回路装置28)
図5に示されるように、回路装置28は、モータの径方向(矢印R1及び矢印R2方向)に延びる円盤状に形成された回路基板88と、この回路基板88上に取付けられた複数の回路素子90A,90Bと、を主要な要素として構成されている。また、回路素子90Aは、回路基板88の略中心部に配置されている。
【0045】
また、図1に示されるように、回路基板88における回路素子90A,90Bが取付けられた面と反対側の面(矢印A1方向側の面)は、伝熱部材としての放熱シート94(シリコン)を介してモータハウジング24の取付面46A(キャン部42の底壁46)に接合されている(回路基板88の中心部がモータハウジング24の取付面46Aに接合されている)。その結果、回路装置28(回路基板88)がモータハウジング24に取付けられる構成である。また、回路装置28がモータハウジング24に取付けられた状態において、回路素子90Aはモータハウジング24の取付面46A(キャン部42の底壁46)と対向する部位に配置されている。換言すると、回路基板88とキャン部42の底壁46とが接合された部位に回路素子90Aが取付けられている。
【0046】
また、回路装置28は、カバー部材92がモータハウジング24に取付けられることによって該カバー部材92に覆われている。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
図1に示されるように、本実施形態では、ロータ20が回転すると、該ロータ20の出力軸72に取付けられたインペラ18が回転する。その結果、ポンプ部14が駆動され、ポンプケース16の入口管30から流入した冷却水が出口管32に向けて圧送される。
【0049】
また、図6に示されるように、インペラ18によって攪拌された冷却水の一部は、ポンプケース16に形成されたキャン部42の内部を循環した後、出口管32(図1参照)に向けて流れて行く。
【0050】
ところで、本実施形態では、ロータ20の回転(モータ部10の駆動)が回路装置28によって制御されている。そのため、ロータ20の回転を制御するために、回路装置28に通電されると、回路装置28を構成する回路素子90A,90Bが発熱する。そのため、図7に示されるように、回路素子90A,90Bの熱を放熱させるために、ヒートシンク96等の冷却装置を設けることが考えられるが、この場合、電動ポンプのコストが上昇すると共に、電動ポンプの体格が大きくなる。
【0051】
しかしながら、本実施形態では、回路装置28がモータハウジング24におけるキャン部42に近接する部位に取付けられている。詳述すると、図1に示されるように、回路基板88における回路素子90A,90Bが取付けられた面と反対側の面がモータハウジング24の取付面46A(キャン部42の底壁46)に取付けられている。そのため、回路装置28の熱はモータハウジング24(キャン部42の底壁46)に伝達された後、キャン部42に満たされた冷却水に伝達される。即ち、本実施形態では、ヒートシンク等の冷却装置を設けることなく回路装置28の熱を放熱させることができる。その結果、本実施形態では、電動ポンプ12のコストアップを抑制することができると共に、電動ポンプ12自体の小型化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、回路基板88上に取付けられた回路素子90A,90Bが発熱すると、この熱は回路基板88を介してモータハウジング24に伝達される。そのため、回路基板88上における回路素子90A,90Bの位置を適宜設定することによって、回路素子90A,90Bの冷却性能を向上させることができる。特に、本実施形態では、モータハウジング24の取付面46A(キャン部42の底壁46)と対向する部位(キャン部42の底壁46と最も近い位置)に配置された回路素子90Aの冷却性能が向上されている。
【0053】
さらに、本実施形態では、モータの軸方向他方側(矢印A2方向)に面が向けられた取付面46A(キャン部42の底壁46)が、回路基板88と略同一方向に延在している。そのため、回路基板88の取付けを容易にすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、回路基板88とキャン部42の底壁46との間に放熱シート94が介装されることによって回路基板88とキャン部42の底壁46とが接合されている。そのため、回路素子90A,90Bの熱が回路基板88(及び放熱シート94)を介して速やかにキャン部の底壁に伝達される。即ち、本実施形態では、回路素子90A,90Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、インペラ18によって攪拌された冷却水の一部が、ポンプケース16に形成されたキャン部42の内部を循環した後、出口管32(図1参照)に向けて流れて行く。換言すると、キャン部42の底壁46から伝達された熱によって温度が上昇した冷却水が、キャン部42の底壁46付近に留まらない。その結果、本実施形態では、回路素子90A,90Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、インペラ18によって攪拌された冷却水の一部が、ポンプケース16に形成されたキャン部42の内部を循環する例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、冷却水がキャン部42の内部を循環しない構成としてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、回路素子90Aをモータハウジング24の取付面46A(キャン部42の底壁46)と対向する部位(キャン部42の底壁46と最も近い位置)に配置した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回路素子90Aを回路素子90Bと同様の位置に配置した構成としてもよい。このように回路素子90Aの配置は、回路素子90Aが発熱する熱量及び回路基板88の熱伝導率等を考慮して適宜設定すればよい。
【0058】
さらに、本実施形態では、回路基板88とキャン部42の底壁46との間に放熱シート94が介装されることによって回路基板88とキャン部42の底壁46とが接合されている例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、回路基板88とキャン部42の底壁46とが溶着等によって接合された構成としても良い。
【0059】
また、本実施形態では、回路装置28(回路基板88)をキャン部42の底壁46に取付けた(接合した)例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、回路装置28(回路基板88)をキャン部42の内周壁50に伝熱部材を介して取付けた構成としてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、回路基板88上に取付けられた回路素子90A,90Bの熱が回路基板88を介してモータハウジング24に伝達される例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回路素子90A,90Bがキャン部42の底壁46に当接している構成としてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電動ポンプ100について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同一の部品及び部分については、電動ポンプ12と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8及び図9に示されるように、本実施形態の電動ポンプ100の一部を構成する回路基板102には、ステータ22(図1参照)のU相、V相、W相に各々供給される電力のスイッチング等を行う回路素子としての複数のFET104が取付けられている。このFET104は、キャン部42の底壁46と回路基板102との間に配置された状態で回路基板102の中央部に取付けられている。また、回路基板102は、キャン部42の底壁46と回路基板102との間に放熱シート94が介装された状態でキャン部42の底壁46に取付けられている。これにより、FET104がキャン部42の底壁46と回路基板102との間に介装された放熱シート94に被われる構成である。
【0063】
また、回路基板102の中央部には、FET104と電気的に接続された導電パターン部106が設けられており、この導電パターン部106は、放熱シート94を介してキャン部42の底壁46と接している。
【0064】
さらに、本実施形態では、キャン部42における回路基板102側の部位が金属製とされている。具体的には、有底円筒状に形成された金属製のキャップ108がキャン部42の内周壁50に沿って圧入、又はキャップ108がキャン部42の底壁46及び内周壁50に接着剤を介して接合されることによってキャン部42における回路基板102側の部位が金属製とされている。
【0065】
以上説明した第2実施形態に係る電動ポンプ100では、FET104が回路基板102上の前記位置に配置されている。そのため、FET104の熱を放熱シート94を介して速やかにモータハウジング24(キャン部42)に放熱することができる。また、本実施形態では、キャン部42の底壁46と回路基板102との間に放熱シート94が介装されている。これにより、放熱シート94がFET104を被っている。そのため、FET104の熱をより効率よくモータハウジング24に放熱することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記の導電パターン部106が回路基板102に設けられている。そのため、FET104の熱を導電パターン部106に伝達させた後にモータハウジング24に伝達させることができる。また、導電パターン部106と放熱シート94との接触面積を適宜設定することによってFET104の冷却性能をより一層向上させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、モータハウジング24のキャン部42における回路基板102側の部位が、熱伝導率が高い金属製とされている。これにより、本実施形態では、FET104からキャン部42への放熱性能をより一層向上させることができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る電動ポンプ110について説明する。なお、第1実施形態等の電動ポンプ12,100と基本的に同一の部品及び部分については、電動ポンプ12,100と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図10及び図11に示されるように、本実施形態の電動ポンプ110は、複数のFET104が回路基板112の径方向外側かつキャン部42と近接する部位に配置されていると共に、FET104と電気的に接続された導電パターン部114が回路基板112の中央部まで延出していることに特徴がある。具体的には、FET104は、回路基板112の径方向外側の部位のモータハウジング24側の面に取付けられている。また、回路基板112におけるFET104が取付けられた面と同じ側の面に導電パターン部114が設けられている、この導電パターン部114は、回路基板112の径方向外側の部位から該回路基板112の中央部に向けて延びる帯状に形成されている。
【0070】
また、キャン部42の底壁46と回路基板112の中央部との間に放熱シート94が介装された状態で回路基板112の中央部がキャン部42の底壁46に取付けられている。その結果、導電パターン部114が放熱シート94を介してキャン部42の底壁46と接している。
【0071】
以上説明した第3実施形態に係る電動ポンプ110では、上記の導電パターン部114が回路基板112に設けられている。そのため、FET104の熱を導電パターン部114に伝達させた後にモータハウジング24に伝達させることができる。また、本実施形態では、上記第2実施形態に比して、導電パターン部114と放熱シート94との接触面積が拡大されているためFET104の冷却性能をより一層向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、導電パターン部114とキャン部42の底壁46との間に放熱シート94を介装した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、金属製のキャップ108を取り外して、導電パターン部114と樹脂製とされたキャン部42の底壁46とを直接接触させた構成とすることもできる。
【0073】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る電動ポンプ116について説明する。なお、第1実施形態等の電動ポンプ12,100,110と基本的に同一の部品及び部分については、電動ポンプ12,100,110と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図12に示されるように、本実施形態の電動ポンプ116では、複数のFET104が回路基板118におけるキャン部42の底壁46と対向する部位に配置されていると共に、このFET104が回路基板118におけるカバー部材92(図10等参照)側の面に取付けられている。また、回路基板118におけるFET104が取付けられた部位のカバー部材92側の面にはFET104と電気的に接続された導電パターン部120が設けられていると共に、回路基板118におけるFET104が取付けられた部位のモータハウジング24側の面にも導電パターン部122が設けられている。また、回路基板118におけるFET104が取付けられた部位には、複数のスルーホールビア124が形成されている。このスルーホールビア124は回路基板118を貫通する小径の円筒状に形成されており、スルーホールビア124の内周面には導体が鍍金されている。上記の導電パターン部120と導電パターン部122とがスルーホールビア124を介して電気的に接続される構成である。
【0075】
また、キャン部42の底壁46と回路基板118の中央部との間に放熱シート94が介装された状態で回路基板118の中央部がキャン部42の底壁46に取付けられている。その結果、回路基板118に設けられた導電パターン部122及びスルーホールビア124のモータハウジング24側の端部が放熱シート94を介してキャン部42の底壁46と接している。
【0076】
以上説明した第4実施形態に係る電動ポンプ116では、FET104の熱が導電パターン部120に伝達され、次いで導電パターン部120に伝達された熱がスルーホールビア124に伝達される。そして、スルーホールビア124に伝達された熱の一部は、放熱シート94を介してモータハウジング24に放熱される。また、スルーホールビア124に伝達された熱の他の一部は、導電パターン部122に伝達された後放熱シート94を介してモータハウジング24に放熱される。これにより、本実施形態では、FET104が回路基板118におけるモータハウジング24と反対側に配置されている場合においてもFET104の冷却性能をより一層向上させることができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
なお、以上説明した第1実施形態〜第4実施形態において、本発明の構成と対応しない構成を備えた電動ポンプは、本発明の参考例とする。
【符号の説明】
【0078】
10…モータ部,12…電動ポンプ,18…インペラ,20…ロータ,22…ステータ,24…モータハウジング,28…回路装置,42…キャン部,46…底壁,48…軸支部,88…回路基板,90A…回路素子,90B…回路素子,94…放熱シート(伝熱部材),100…電動ポンプ,102…回路基板,104…FET(回路素子),106…導電パターン部,110…電動ポンプ,112…回路基板,114…導電パターン部,116…電動ポンプ,118…回路基板,120…導電パターン部,122…導電パターン部,124…スルーホールホールビア
図1
図2
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図12