(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047046
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】非常時に破壊可能なフェンス
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
E04H17/16 104
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-63620(P2013-63620)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-66127(P2014-66127A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-193872(P2012-193872)
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 拓也
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−285058(JP,A)
【文献】
実公昭63−024727(JP,Y1)
【文献】
特開2007−224607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/16
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ、前記低強度パネルに貼着された表示材は、切れ目が形成されるとともに、前記切れ目は、表示材の表面から該表示材が貼着された低強度パネルに達していることを特徴とする非常時に破壊可能なフェンス。
【請求項2】
複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ、前記低強度パネルに貼着された表示材は、縦方向に切れ目が形成されているとともに、前記低強度パネルには、その側端部を支持する縦枠が設けられ、前記縦枠が支柱に固定されるとともに、少なくとも前記低強度パネルの下端部には枠材が取付けられていないことを特徴とする非常時に破壊可能なフェンス。
【請求項3】
複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ、前記低強度パネルに貼着された表示材は、縦方向に切れ目が形成されているとともに、前記低強度パネルは、その側端部に設けた縦枠のみによって支持され、かつ、前記縦枠が支柱に固定されていることを特徴とする非常時に破壊可能なフェンス。
【請求項4】
前記低強度パネルは、横方向に複数個連続して設けられていることを特徴とする請求項
1〜3のいずれか1項に記載の非常時に破壊可能なフェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路の敷地境界部、商業施設、公共施設、工場や山間部等の立入禁止区域との境界部等に沿って取付けられるフェンスであって、非常時に破壊可能なフェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路の敷地境界部、工場、山間部、商業施設、公共施設等の立入禁止区域との境界部等には、その敷地内に一般人が容易に入られないように、その境界部に沿ってフェンスが設置されている。フェンスの形態としては、一般には、境界部に沿って適宜間隔をおいて支柱を埋設し、これら支柱間に、格子状や板状のパネルを取付けたものが利用されている。更に、より厳重に侵入防止を図るために、フェンスの上端にさらに鉄条網を取付けたもの、フェンスの上端を敷地外の方向に向けて傾けたもの、あるいは敷地外の方向に向けて鏃状の突出部を有する忍び返しを取付けたものが用いられている。
【0003】
ここで、地震やそれに伴う津波、洪水等が発生し、または発生する可能性が高まった場合は、避難先として、付近の公民館や体育館、学校等の他に、上記のような高速道路の敷地境界部、工場や山間部等も挙げることができる。この中で、例えば、高速道路は、一般に盛土によって付近より海抜高度が高くなっていることが多く、避難場所として有効であるが、これらの敷地境界部に設けられるフェンスは、特に一般人が入らないように、通常のものより堅牢であることが多く、避難時のような一刻を争う状況では、前記フェンスを壊したり、乗り越えたりすることは容易ではなかった。
【0004】
例えば、特許文献1には、錠付き門扉において、門扉のパネルの一部を破壊可能な低強度パネルで構成し、上記低強度パネルを破壊して設けた開口部の外側から腕を通したときに上記錠を開錠可能な位置に設けた門扉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−270533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のような門扉では、低強度パネルを破壊して、そこから門扉の錠に腕が届いても、その時に錠を解錠できる鍵を持っていないと扉を開けることができず、また錠を解錠できた場合であっても、門扉や、門扉の支持材に歪みや変形が生じてしまうと、門扉を開けることができなくなる恐れがあり、その門扉を通って手前から奥側に進むことが困難な場合があった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、フェンスの一部を壊して、フェンスの手前側から奥側に、容易に通り抜けることができる非常時に破壊可能なフェンスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスは、複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ
、前記低強度パネルに貼着された表示材は、切れ目が形成され
るとともに、前記切れ目は、表示材の表面から該表示材が貼着された低強度パネルに達していることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る他の非常時に破壊可能なフェンスは、複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ、前記低強度パネルに貼着された表示材は、縦方向に切れ目が形成されているとともに、前記低強度パネルには、その側端部を支持する縦枠が設けられ、前記縦枠が支柱に固定されるとともに、少なくとも前記低強度パネルの下端部には枠材が取付けられていないことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る更に他の非常時に破壊可能なフェンスは、複数のパネルと、設置面に立設されて前記パネルを支持する支柱とを備えたフェンスであって、前記複数のパネルのうちの一部のパネルはそれ以外の他のパネルよりも破壊容易な低強度パネルが用いられ、前記低強度パネルに貼着された表示材は、縦方向に切れ目が形成されているとともに、前記低強度パネルは、その側端部に設けた縦枠のみによって支持され、かつ、前記縦枠が支柱に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスは、非常時に、人が低強度パネルをたたいたり、蹴ったりして衝撃を与えて破壊することにより、人の通り抜けを可能とすることができる。この場合、低強度パネルに当該パネルが破壊容易なパネルであることを示す表示材が貼着されていると、該表示材が補強材となって、当該補強材で破壊が止まるおそれがあるが、表示材は、切れ目が形成されているので、破壊が表示材に達すると、表示材の切れ目に沿って破壊されやすく、したがって、破壊が表示材で止まらず、破壊が進むことから、大きく破れて、人が通り抜けやすくなる。
【0012】
また、前記切れ目を、上下方向に沿って形成されていれば、上下に沿って大きく破壊され、さらに当該切れ目が左右に間隔をおいて複数設けたものとすれば、低強度パネルに人が衝撃を与えて破壊させる際、いずれかの切れ目に沿って破壊が進むこととなるので、低強度パネルが上下方向に更に破壊しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスの実施の一形態を示す正面図である。
【
図2】
図1の低強度パネル付近の拡大正面図である。
【
図3】
図1のA−A断面における主要部の拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスにおける、破壊された低強度パネルの一例を示す正面図である。
【
図5】本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスの実施の他の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
図面において、1は設置面に適宜間隔をおいて立設された支柱、2,3は支柱1間に取付けられたパネルであって、2は従来からフェンスに用いられている通常の強度を有する通常のパネル、3は前記の通常のパネル2よりも破壊容易な低強度パネルであり、4は低強度パネル3に貼着される表示材であって、本発明に係るフェンスは、主に、支柱1、通常のパネル2、低強度パネル3及び表示材4とから構成されている。
【0016】
図1は、本発明に係るフェンスPの実施の一形態を示す正面図である。支柱1は、その下部が設置面に埋設されて適宜間隔をおいて立設されている。支柱1は一般に強度的に安定している鋼管が用いられるが、鋼材以外に他の金属を用いてもよい。他の金属としては、アルミニウム合金、ステンレス合金等を挙げることができる。また、支柱1の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装が施されてもよい。尚、フェンスPの前面側とは、低強度パネル3に表示材4が貼着されている面側を前面側としたものであり、実施例についてもその様に説明する。また、本形態では、支柱1の上端に支柱キャップ11が取付けられている。
【0017】
通常のパネル2は、破壊が容易でなく、人が叩いたり、蹴ったりして受けた衝撃によっては、人が通過できるほどの破損が容易には生じない強度を有して一般のフェンスに用いられているものでよく、本形態では、多数の鋼線を縦横に格子状に配置して、交差部を溶接等によって接合したメッシュパネルを用いている。パネル2の他の形態としては、無孔パネルや有孔パネルを挙げることができる。無孔パネルとしては、金属板や、金属板と樹脂板とを積層した積層板を挙げることができる。有孔パネルとしては、無孔パネルに孔をあけたものを挙げることができる。
【0018】
低強度パネル3は、前記の通常のパネル2よりも破壊容易なパネルであって、人が該低強度パネル3に衝撃を与えて破り、通過可能となされたものである。低強度パネル3の個数は、フェンスP全体において、1個でもよいし、2個以上でもよく、通常のパネル2に対する、低強度パネル3の個数と配置は設置される現場の状況に応じて適宜決定されればよい。また、前記低強度パネル3は、周囲の補強枠等を除いて、当該パネル全体が破壊容易なものでもよいし、当該パネルの一部に人が通り抜ける程度の大きさの破壊容易な箇所が形成されていてもよい。
【0019】
低強度パネル3は、一般には、石灰石やセメント等の石灰質原料、珪酸質原料及びガラス繊維等の無機質繊維を主成分とし、前記各原料に混和物質や水を加えて混練し、抄造し、養生して形成した板材であって、具体的には、JIS A 5430(繊維強化セメント板)に規定された珪酸カルシウム板を挙げることができる。本形態においては、低強度パネルは、前記珪酸カルシウム板を用いており、その厚さは約3mmであって、該低強度パネルに対して厚さ方向に向けて、人がたたいたり、蹴ったりするような衝撃が加わると割れて破れが生じる。
【0020】
低強度パネル3は、通常時には、人が容易には乗り越えられない程度の高さであることが好ましく、具体的には、設置時に該低強度パネルの上端が地上から1500〜2000mmの高さであることが好ましい。また低強度パネル3は、本形態では、矩形状に形成されているが、設置される設置面の傾斜に合わせて形状を変更してもよい。すなわち、フェンスを傾斜地に設置する場合は、その傾斜に沿ってパネルの下端部を斜めに加工しておけば、設置後もパネルと傾斜地の設置面との間に不必要な隙間が生じないように設置することができる。
【0021】
低強度パネル3は、該低強度パネル3が破壊容易なパネルであること、すなわち衝撃を与えると破れることを示した表示材4が貼着されている。これにより、地震、津波、台風、洪水等によって災害が発生した時に避難するような緊急時に、避難者は、通常のパネルの部分を乗り越えたり、壊したりする必要はなく、低強度パネル3を破って、スムーズに避難することができる。
【0022】
表示材4は、一般に低強度パネル3の表面に接着させたものであって、低強度パネル3に衝撃を与えると破れること等、
図1、2の形態では「非常時は、ここを破って避難して下さい。ここを強くたたくと破れる仕様になっております。」の如き表示を施した表示層と、該表示層を低強度パネル3に接着させるための接着層とを積層したシート材であって、これに耐候性、耐水性、耐久性等を向上させるための機能を有する層を備えたものとしてもよい。
【0023】
表示材4は、緊急時に避難者が視認しやすい方がよいことから、避難者が容易に視認できる高さであることが好ましく、具体的には、地上から800〜1500mmの高さに位置するようにパネルに貼着することが好ましい。
【0024】
本形態の低強度パネル3は、後記するように、左右の側端部に縦枠31が取付けられているものの、上下端部には枠材は取付けられておらず、これにより、避難者が低強度パネル3に衝撃を加えた際に生じる破壊は、該低強度パネル3の上下方向に沿って進むように意図されていることから、表示材4には、上下方向に沿って切れ目41が形成されており、本形態では、前記切れ目41が、表面から裏面側までに達している。表示材4が接着された部分は、該表示材4が補強材となって破壊しにくいが、切れ目が形成された部分はその形成方向に沿って前記接着部分よりも相対的に破壊しやすくなる。すなわち、避難者が低強度パネルに衝撃を与えた際に生じる割れ目が表示材4に達した場合、前記切れ目がない場合は、割れ目がその周端部で止まって、低強度パネル3は破れが拡がりにくい。
【0025】
一方、本形態のように、表示材4の上下方向に沿って切れ目41が形成されていると、避難者が低強度パネル3に衝撃を与えた際、
図4に示すように、低強度パネル3に生じる破壊部Dが表示材4の上端42又は下端43に達した場合、その割れ目が前記切れ目41に沿って進みうるので、低強度パネル3の割れ目が表示材4を経て進みうる。したがって、低強度パネル3の破壊部Dが上下方向に大きく拡がり、避難者は破壊された低強度パネル3を通り抜けしやすくなる。
【0026】
切れ目41は、表示材4を接着させたあとに、カッター等の刃物で設ける方が、作業が容易であり、また表示材4が接着された低強度パネル3まで刃物が達すると、切れ目41に沿って低強度パネル3が割れやすくなるので好ましいが、予め切れ目41を設けた表示材を低強度パネルに接着させるものでもよい。
【0027】
表示材4の切れ目41は、その上端が表示材4の上端42に達しており、その下端が表示材4の下端43に達している。これにより、低強度パネル3に衝撃を与えた際に生じる割れ目が表示材4の上端又は下端に達すれば、割れ目は切れ目41の上端又は下端から該切れ目に沿って上下方向に進みやすくなり、低強度パネル3がより破壊しやすくなる。
【0028】
表示材4の切れ目41は、本形態では、左右に間隔をあけて多数形成されている。これにより、低強度パネル3に衝撃を与えて、複数の割れ目が生じた場合も、該割れ目が表示材4の上端42又は下端43に達すれば、それぞれの割れ目は、近い切れ目41に沿って進みやすく、割れ目が拡がり、低強度パネル3が更に破れやすくなる。また、表示材4は、本形態では、該表示材4の裏面全体が低強度パネル3に接着されたものであるが、例えば、表示材4の裏面の外周部のみが低強度パネル3に接着されたものでもよい。
【0029】
衝撃が加えられた低強度パネル3は、上下方向に破れた方が、避難者が通過する際に通りやすくなるので、表示材4の切れ目41も、本形態のように上下方向に形成する方が好ましい。また、表示材4は、本形態では、低強度パネル3の上部に1個接着したものであるが、複数個接着してもよい。加えて、避難者が低強度パネル3に衝撃を与える際は、表示材4の接着部分に衝撃を与えてもよく、表示材4が接着されていない部分に衝撃を与えてもよい。いずれにしても、表示材4の切れ目41に沿って割れることによって、低強度パネル3が上下方向に割れることが促され、避難者は、その破断により設けられた空間を通って避難しやすくなる。
【0030】
支柱1間に低強度パネル3を取付ける際、本形態では、低強度パネル3の側端部を支持する縦枠31を設け、取付金具12を介して前記縦枠31を支柱1に固定することによって、支柱1間に低強度パネル3を取付けている。縦枠31は、本形態では、前壁32と後壁33との間に溝部34が形成された横断面コ字型であって、前記溝部34を相対向させて低強度パネル3の左右に2個配置されている。そして、左右の縦枠31が左右の支柱1にそれぞれ固定されている。
【0031】
縦枠31は、一般にアルミニウム合金を押出成型してなる長尺形材を適宜長さに切断して用いられる。他の金属として、ステンレス合金や鋼材を用いてもよく、これらを用いる場合は、板材をプレス加工や曲げ加工等によって横断面コ字型に成形したものでもよい。
【0032】
縦枠31に対する低強度パネル3の取付構造は特に限定されるものではなく、本形態では、縦枠31の溝部34の前壁32と後壁33との間に低強度パネル3の側端部が挿入され、更に溝部34の低強度パネル3との間に生じた空隙を埋めるスペーサー35が配置され、そして縦枠31の前壁32、低強度パネル3、スペーサー35及び後壁33を挿通する固定ボルトBにナットNが螺着されて締結されたものである。なお、低強度パネル3が風により振動が生じることを防ぐために、縦枠31の溝部34内に防振ゴムや防振シートを配置してもよい。
【0033】
低強度パネル3は、本形態では、左右の側端部に縦枠31が取付けられて、上下端部には枠材は取付けられていない。これにより、避難者が低強度パネル3に衝撃を加えた際に生じる割れ目は、該低強度パネル3の上下端までに達するように破れやすくなるので、通過しやすくなる。なお、低強度パネル3の自重を支えるため、該低強度パネル3の形状を保持するため、また該低強度パネル3の上下方向の寸法が1800mmを超えて避難者のくぐり抜けに大きな支障がない場合等は、低強度パネル3の上端部、下端部又はその両方に横枠材を取付けてもよい。
【0034】
フェンスは、本形態では、門扉5と隣接して設けられている。これにより、通常時は、管理者等は、門扉5を通じて出入りが可能となり、緊急時や、経時的に埋設した支柱の傾き等によって、門扉5の開閉が困難になった場合であっても、低強度パネル3を破って通り抜けることができる。また、一般に低強度パネル3に用いられる珪酸カルシウム板は、門扉5の錠よりは価格が安価であるので、経済的な負荷も小さい。更に低強度パネル3を破壊した後に取替える際は、古い低強度パネル3を外して、新しい低強度パネル3に縦枠31を取付けることによって支柱1に取付け可能となるので、低強度パネル3の取替作業も容易である。
【0035】
低強度パネル3として珪酸カルシウム板を用いると、中央部が破壊した場合、破壊されていない低強度パネル3の部分を押すと、縦枠31付近で折れ曲がり、観音開き状に変形しうるので、避難者は通り抜けやすくなる。
【0036】
また低強度パネル3の表面における少なくとも表示材4が貼着された以外の箇所又は低強度パネル3の縦枠31に、反射材料及び蓄光材料の一方又は両方を含む表面層が設けられたものを用いてもよい。反射材料としては、光を照射すると、その光を照射元に向けて再び反射させる再帰反射性を有するものが好ましい。例えば、入射された光を高い効率で再帰反射できるレンズ反射体や、多数の反射素子群を形成し、その反射素子群の裏面にアルミニウムのような金属の薄膜を金属蒸着法等により積層して反射性能を高めたプリズム状のものや、ガラスビーズやプリズム反射体を表面に配置した反射シート、合成樹脂製のシートにガラスビーズを埋設したものを挙げることができる。これにより、夜間時に避難する際、避難者が利用している懐中電灯等の灯具の明かりが前記表面層で反射して、低強度パネル3の場所を把握し、スムーズに避難することができる。
【0037】
また、蓄光材料は、一般に太陽光や蛍光灯などの光を吸収蓄積して、暗所でこれを徐々に放出、発光する性質を持った材料であり、例えば硫化亜鉛や、それに銅を配合した等の硫化系のものを用いてもよいが、酸化アルミ、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム等の酸化物を主体とし、それにユーロピウム等の希土類を配合した酸化系ものが、安全性、化学的な安定性、耐熱性、発光時間の長さ等において利点があり好ましい。このような蓄光材料を含む塗料を低強度パネル3の表面に塗布して表面層を形成すればよい。これにより、特に朝夕の薄暮時に避難する際、避難者は低強度パネル3の表面層の蓄光を視認して、その場所を把握し、スムーズに避難することができる。
【0038】
反射材料及び蓄光材料の一方又は両方を含む表面層は、低強度パネル3のみに設けてもよく、縦枠31のみに設けてもよく、いずれにも設けてもよい。また、低強度パネル3の全体に前記表面層を設けてもよく、比較的視認しやすい上端部のみ等の、一部に表面層を設けてもよい。前記において、低強度パネル3は取替えた場合に再度前記表面層を形成する必要があり、また低強度パネル3が破壊された後は表面層が視認しにくくなることから、少なくとも縦枠31に前記表面層を形成しておけば、低強度パネル3を破壊した後でも視認可能であって、加えて経済的な負荷は小さくなる。
【0039】
図5は本発明に係る非常時に破壊可能なフェンスの実施の他の形態を示す正面図であって、前記標示材4が表面に接着された低強度パネル3が横方向に複数個連続して設けられたものであって、本形態では、支柱1を介して該低強度パネル3が横方向に2個連続して設けられている。これにより、避難時の通路を2箇所確保して、よりスムーズに避難できる。本形態においては、低強度パネル3の間の支柱1により各低強度パネル3をしっかりと支持できるので好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 支柱
11 支柱キャップ
12 取付金具
2 パネル
3 低強度パネル
31 縦枠
32 前壁
33 後壁
34 溝部
35 スペーサー
4 表示材
41 切れ目
42 上端
43 下端
5 門扉
B 固定ボルト
D 破壊部
N ナット
P フェンス