(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
[緩衝材]
本発明に係る緩衝材は、発熱する部材と、該発熱する部材を覆い該部材の熱を放射する筐体との間に配置される熱伝導性を有する緩衝材であって、エラストマーを含む樹脂(A)及び熱伝導性を有する熱伝導性フィラー(B)を含む樹脂組成物を発泡させてなり、25%圧縮強度が200kPa以下である緩衝層を有する。
25%圧縮応力の範囲が200kPaを超えると、柔軟性が不充分になり、発熱する部材や筐体などの形状に沿って緩衝材が十分に追随できず、十分な密封性が得られない。また、25%圧縮強度が200kPaを超えると、発熱する部材と筐体との間に配置した際に、筐体の強度に反発力が見合わなくなり、筐体が変形したり、筐体同士を密接することができないなどの不具合が生じる。
【0012】
緩衝材は、エラストマーを含む樹脂(A)100質量部に対して、熱伝導性フィラー(B)を40〜800質量部を含むことが好ましい。エラストマーを含む樹脂(A)に対して、熱伝導性フィラーの含有量が40質量部以上であれば、緩衝層の25%圧縮時における熱伝導率を1〜20W/m・Kにすることができ、発熱する部材の放熱に十分に寄与できる。熱伝導性フィラーの含有量が800質量部以下であれば、25%圧縮強度を200kPa以下にすることができる。
緩衝層の25%圧縮時における熱伝導率は、1〜20W/m・Kであることが好ましい。緩衝層の25%圧縮時における熱伝導率が1〜20W/m・Kであると、発熱する部材から発生した熱を筐体などの放熱体に伝え易くすることができる。
緩衝材全体の厚みは、0.5〜10mmである。緩衝材全体の厚みが、0.5〜10mmであれば、電子部品と筐体との間に配置することができる。
緩衝層の厚さが0.5mm以上であれば、発熱する部材の表面の凹凸に追従することができる。緩衝層の厚みが3mm以下であれば、発熱する部材から発生した熱を筐体などの放熱体に伝え易くなる。この観点から、緩衝層の厚みは、より好ましくは0.5〜3mmである。
緩衝層の発泡倍率は、1.1〜4とすることができる。発泡倍率が上記範囲であると、適正な圧縮強度が得られ、例えば、シール材や緩衝材として用いた際に、気体又は液体から保護することが必要な部材や筐体を変形させることがなく、適用した製品の使用可能期間に亘って所定の圧縮強度を維持できる。これにより、密封性を維持することができる。また、使用可能期間に亘って緩衝材としての機能を維持することができる。
【0013】
<エラストマーを含む樹脂(A)>
本発明に係る緩衝材を構成する緩衝層を形成するエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーが好適であり、シロキサン系化合物を含まない化合物であることが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、液状エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、液状エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム(NR)、液状天然ゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、液状ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、液状ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、液状スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、液状水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、液状水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、液状水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、液状水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
なかでも、電子線架橋或いは化学架橋がしやすく架橋促進剤としてのモノマーが必要ないという利点からアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を用いることが好ましい。また、ニトリルゴムは、圧縮永久歪みが小さいため、使用期間の経過による気密性の低下も少なく、好ましい。
上述した熱可塑性エラストマーは、一般にガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、緩衝層の柔軟性及び形状追随性を高めることができる。これにより、緩衝層が発熱する部材の形状に追従するように変形することができ、該部材との接触面積が多くなる。従って、筐体への熱伝導効率を高めることができる。
【0014】
<熱伝導性フィラー(B)>
熱伝導性フィラーとしては、絶縁性を有する材料であることが好ましく、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、タルク、窒化アルミから選択される少なくとも1つが挙げられる。なかでも、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
このほかにも、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンなどの炭素質材料は、熱伝導率が高く、熱伝導性フィラーとして有用である。
【0015】
<バルク層>
緩衝材は、緩衝層と接合されたバルク層を有していてもよい。本実施形態において、バルク層とは、緩衝層よりも柔軟性が低く放熱性の高い層であることが好ましい。バルク層と緩衝層との接合の方法は特に限定しない。例えば、熱ラミネート、両面テープ、粘着材塗工などがある。
バルク層は、ゴム、エラストマーであることが好ましい。バルク層は、上述した緩衝層を形成するエラストマーと同一の樹脂で形成されていてもよい。上述したエラストマーを含む樹脂を発泡せずに用いてもよい。バルク層として上述したエラストマーを含む樹脂を発泡させて用いる場合には、緩衝層の発泡倍率よりも低い発泡倍率に設定することが好ましい。バルク層は、ゴム、緩衝層を形成するエラストマー、及びその他のエラストマーから選ばれる少なくとも1種を用いて形成された層が複数重ねられて構成されていてもよい。
緩衝材がバルク層と緩衝層とを有する場合には、緩衝層を発熱する部材に接するように配置し、バルク層を筐体に接するように配置する。
これにより、緩衝層が発熱する部材の形状に追従するように変形するため、発熱する部材との接触面積が多くなる。また、熱伝導率の高いバルク層を筐体に接するように配置することにより、筐体への熱伝導効率を高めることができる。従って、発熱する部材から発生される熱の放熱効率を高めることができる。
【0016】
<その他の添加剤>
緩衝層を形成する樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は特に限定されず、緩衝層の成形に通常使用される各種添加剤を使用できる。
このような添加剤としては、例えば、滑剤、収縮防止剤、充填剤、難燃剤、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、収縮防止剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、表面処理剤などが挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の樹脂の発泡成形に用いられる添加量を採用できる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
[緩衝材の製造方法]
<製造方法1>
本発明の緩衝材の製造方法は、エラストマーを含む樹脂(A)に気泡を形成できる方法であればよく、いわゆるバッチ方式、連続方式等を適用できる。
エラストマーを含む樹脂(A)及び熱伝導性フィラー(B)を含む樹脂組成物(原料組成物という)を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して押し出すことにより、原料組成物をシート状に加工することができる。あるいは、原料組成物をバンバリーミキサー、加圧ニーダなどの混練機で混練し、この後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどを用いて混練しながら連続的に搬送することにより原料組成物を、所定厚みを有するシート状に加工する。
加工された原料組成物を高圧容器中に入れて、二酸化炭素、窒素、空気などからなるガスを高圧で注入し、原料組成物中にガスを含浸させる。十分に高圧ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、原料組成物中に気泡核を発生させる。気泡核は、室温で成長させてもよいが、加熱により成長させてもよい。
気泡を成長させた後、原料組成物を冷水などにより冷却し、原料組成物中に形成された気泡の形状を固定する。これにより、緩衝層を得ることができる。
なお、原料組成物は、用途に応じて種々の形状のものを使用できる。また、発泡に供する成形体は押出成形、プレス成形のほか、射出成形等の他の成形法により作製することもできる。
【0018】
(製造方法1に用いられる発泡剤)
上述した製造方法では、発泡剤として、高圧の不活性ガスを用いることが好ましい。使用可能な不活性ガスとしては、エラストマーを含む樹脂に対して不活性であり、原料組成物の内部に注入可能であれば特に制限されない。例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらの不活性ガスを混合して用いてもよい。これらの不活性ガスのうち、原料組成物への含浸量が多く、含浸速度が速い二酸化炭素が好適である。
原料組成物に不活性ガスを含浸させる際、不活性ガスは超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態では、原料組成物への不活性ガスの溶解度が増大するため、原料組成物中に混入される不活性ガスの濃度を高濃度にすることができる。原料組成物に高濃度の不活性ガスが混入されていると、原料組成物に不活性ガスを含浸した後、急激に圧力を降下すると、より多くの気泡核が発生する。このため、気泡核が成長してできる気泡の密度が高くなり、気孔率に対して微細な気泡が得られる。
なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0019】
(製造方法1における発泡処理)
製造方法1において、不活性ガスを原料組成物に含浸させるときの圧力条件は、不活性ガスの種類や製造上の操作性等を考慮して適宜選択できるが、6MPa以上(例えば、6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜100MPa程度)であることが好ましい。圧力が6MPa以上であれば、本発明の緩衝層に好適な気泡径及び気泡密度を得ることができる。
不活性ガスとして、二酸化炭素を用いる場合には、圧力条件は、5〜100MPa程度(好ましくは7.4〜100MPa程度)とすることが好ましい。
不活性ガスを原料組成物に含浸させるときの圧力が低いほど、ガスの含浸量は相対的に少なくなるため、気泡核が形成される速度が低下し、気泡核数が少なくなる。この場合には、1気泡あたりのガス量が増え、圧力を解放した際に、気泡径が成長しやすくなる。
このため、圧力が6MPaより低い場合には、気泡径が大きく成長する傾向があり、平均セル径(平均気泡径)が200μm以下程度の気泡を得るには不向きである。
【0020】
不活性ガスを原料組成物に含浸させるときの温度条件は、使用する不活性ガスや原料組成物によって適宜選択できるが、製造上の操作性等を考慮すると、例えば、10〜350℃程度とすることが好ましい。不活性ガスが含浸された状態の原料組成物を押し出して成形と同時に発泡を行う連続方式では、60〜350℃とすることが好ましい。
なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、上述した超臨界状態を保持するため、32℃以上、特に40℃以上に設定することが好ましい。
不活性ガスの混合量は、特に制限されないが、発泡性や、平均気泡径のサイズの観点から、原料組成物全量に対して1〜15質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜12質量%であり、さらにより好ましくは3〜10質量%である。
【0021】
<製造方法2>
本発明の緩衝層は、加熱により分解して発泡ガスを発生させる熱分解型発泡剤を用いても製造できる。
製造方法2では、エラストマーを含む樹脂と熱伝導性フィラーとを含む原料組成物に、さらに熱分解型発泡剤を添加した組成物(発泡性原料組成物という)を用いる。発泡性原料組成物に、必要に応じて、架橋剤、充填剤等を配合してもよい。
製造方法2では、発泡性原料組成物を作製し、発泡性原料組成物をバンバリーミキサー、加圧ニーダなどの混練機で混練する。この後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどを用いて混練しながら連続的に搬送することにより発泡性原料組成物をシート状に加工する。加工後、発泡性原料組成物を加熱することによって、熱分解型発泡剤を発泡させる。
発泡性原料組成物を架橋する必要がある場合には、発泡性原料組成物を架橋した後、熱分解型発泡剤を発泡させる。あるいは、熱分解型発泡剤を発泡させた後、発泡性原料組成物を架橋してもよい。
【0022】
(製造方法2に用いられる発泡剤)
発泡剤は、加熱により分解して発泡ガスを発生させる熱分解型発泡剤であれば、特に限定されることなく使用できるが、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等が挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
発泡性原料組成物中における熱分解型発泡剤の配合量は、エラストマーを含む樹脂との合計100質量部に対して3〜35質量部とすることが好ましく、より好ましくは、6〜33質量部であり、さらに好ましくは、12〜32質量部である。配合量が上記範囲であれば、緩衝層の発泡倍率を1.1〜4とすることができる。
また、発泡処理方法は、プラスチックフォームハンドブック(牧広、小坂田篤編集 日刊工業新聞社発行 1973年)に記載されている方法を含め、公知の方法を用いることができる。
【0023】
(製造方法2における架橋処理)
製造方法2において、必要に応じて実行する架橋処理は、電離性放射線による物理架橋処理であってもよいし、有機過酸化物若しくは硫黄化合物による化学架橋処理であってもよい。
【0024】
(化学架橋処理)
化学架橋処理に使用可能な架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物等が挙げられる。なかでも、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
【0025】
化学架橋処理で用いる架橋剤の1分間半減期温度は、熱分解型発泡剤の分解温度よりも高いことが好ましい。このような熱分解型発泡剤及び架橋剤を用いることにより、発泡成型後に架橋を施すことができる。また、寸法安定性が高く、高倍率・高架橋度の緩衝層を得ることができる。ここで、熱分解型発泡剤の分解温度とは、熱分解型発泡剤が急激に分解し始める温度をいい、具体的には、熱重量分析(TG)によって昇温速度1℃/分の条件下にて測定したとき、質量が50%減少するときの温度である。
【0026】
発泡性原料組成物中における架橋剤の配合量は、適宜、調整することができるが、エラストマー100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、0.5〜4質量部であることがより好ましい。架橋剤の配合量がこの範囲であれば、発泡剤が良好に発泡し、独立気泡を形成することができる。
【0027】
(物理架橋処理)
物理架橋処理に用いられる電離性放射線としては、例えば、紫外線、γ線、電子線などが挙げられるが、電子線を用いることが好ましい。電子線の場合の照射量としては、エラストマーの特性や緩衝層の用途によって適宜調整することができる。例えば、0.5〜10Mradが好ましく、0.7〜5.0Mradがより好ましい。電子線源に制限はないが、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離性放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むことが好ましい。紫外線源に制限はないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
電離性放射線を用いた物理架橋処理を選択する場合には、発泡性原料組成物には、従来公知の光重合開始剤を適量含有させることが好ましい。
【0028】
[バッテリの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る緩衝材を適用したバッテリ1の構成を模式的に示す縦断面図である。
バッテリ1は、セル2と、セルを覆う外装ケース3と、セル2と外装ケース3との間に配置される緩衝材4とを有する。
図1に示すバッテリ1において、セル2は発熱する部材に相当する。外装ケース3は、発熱する部材を覆うとともに部材の熱を放射する筐体に相当する。
セル2は、セル本体部21と、セル本体部21から引き出された電極部22とを有する。図示しないが、セル本体部21には、電池として機能するための、正極集電体及び正極活物質層からなる正極、負極集電体及び負極活物質層からなる負極、セパレータなどの構成が含まれる。電極部22は、セル本体部21から引き出されている。図示されていないが、各電極部22にはリード部が接続されている。リード部は、外装ケース3の外側表面に形成された接続用端子と電気的に接続されている。
緩衝材4は、バッテリ1と外装ケース3との間に配置されている。緩衝材4は、電極部22に接するように配置された緩衝層41と、外装ケース3に接するように配置されたバルク層42とを有する。なお、バルク層42は必ずしも配置されていなくてもよい。
セル本体部21と外装ケース3との間には、熱伝導性を有する緩衝材4が配置されている。熱伝導性を有する緩衝材4が配置されていることにより、バッテリ1のセル本体部21から発生した熱が緩衝材4を介して外装ケース3に速やかに伝えられる。外装ケース3は、放熱効果を高めるために、金属材料で形成されていることが好ましい。また、熱伝導性を有する緩衝材4は、25%圧縮強度が200kPa以下であることから、外装ケース3の捻れや外装ケース3に伝わる振動を緩衝する柔軟性を備える。
図1には、セル2を構成する電極部22の周囲に緩衝材4が配置されている様子が記載されている。緩衝材4を配置する場所は、電極部22の周囲に限定されない。例えば、セル2同士の間、セル2と外装ケース3との間に配置されていてもよい。
緩衝材全体の厚みは、0.5〜10mmとすることができる。緩衝材全体の厚みが、0.5〜10mmであれば、電子部品と筐体との間に配置することができる。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない
[測定方法]
<25%圧縮強度>
実施例及び比較例の緩衝材の試験片を用い、JIS K6767に準拠する方法で測定した。
【0030】
<熱伝導性>
熱伝導性は、以下のように測定した。断熱材の上に縦50mm×横100mm×厚み1mmのアクリル板と、縦25mm×横25mm×厚み2mmのヒーター(坂口電熱社、マイクロセラミックヒーター MS5)を載せて、さらにその上に、縦25mm×横25mmのサンプル片を重ねた。サンプル片の上に縦50mm×横100mm×厚み2mmのアルミニウム板を載せて、ボルトでアクリル板とアルミニウム板とを締めてサンプル片の熱がアルミニウム板に伝わる構造とした。なお、サンプル片が25%圧縮された状態になるようにアクリル板とアルミニウム板とを締め付けた。この状態でヒーターに1Wの電力を印加し、15分後のヒーター温度を測定した。ヒーターのみの場合、1Wの電力を15分間印加するとヒーター表面の温度が60℃になる。すなわち、測定用の構造を作製して同じ電力を印加したとき、ヒーターのみの場合と比べて、ヒーター表面の温度が低ければ、表面から除熱されていることを意味する。結果を第1表に示す。
【0031】
[実施例1〜3、比較例1及び2]
<実施例1>
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1041」、密度:1.00g/cm
3、アクリロニトリル成分:40.5質量%)100質量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学株式会社製、商品名「SO−L」)15質量部、酸化アルミニウム(マイクロン社製、球状アルミナ、商品名「AX3−32」、
平均粒径3μm)400質量部、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャリーケミカルズ
株式会社製、商品名「イルガノックス1010」)0.1質量部を押出機において溶融し、混練した後、プレスして、厚み1.6mmの樹脂シートを得た。
この樹脂シートの両面に加速電圧1000kevの電子線を1.2Mrad照射して、樹脂シートを架橋させた。架橋後の樹脂シートを250℃に加熱することによって発泡させて、見かけ密度0.99g・cm
3、厚み2.0mmの緩衝層Aを得た。
製造された緩衝層Aを用いて形成された緩衝材を、上記評価方法により評価した。結果を第1表に示す。
【0032】
<実施例2>
配合処方は実施例1と同一で、樹脂シートのプレス後の厚みを0.85mmとした。この樹脂シートを発泡させて、見かけ密度0.99g・cm
3、厚み1.0mmの緩衝層Bを得た。次に、緩衝層Bと同一の配合処方の組成物をプレスして、厚み1.0mmのバルク層を得た。緩衝層Bとバルク層とを両面テープ(積水化学社製 ダブルタックテープ3801 10μm)で張り合わせ、合計厚み2.0mmの緩衝材を得た。
【0033】
<実施例3>
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(JSR(株)製、商品名「EP21」、商品名「EP21」、密度:0.86g/cm
3、プロピレン含量:34質量%)70質量部、液状エチレン−プロピレン−ジエンゴム(三井化学(株)製、商品名「PX−068」、密度:0.9g/cm
3、プロピレン含量:39質量%)30質量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学株式会社製、商品名「SO−L」)15質量部、酸化アルミニウム(マイクロン社製、球状アルミナ、商品名「AX3−32」、平均粒径3μm)400質量部、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、商品名「イルガノックス1010」)0.1質量部を押出機において溶融し、混練した後、プレスして、厚み0.4mmの樹脂シートを得た。
この樹脂シートの両面に加速電圧500kevの電子線を2.0Mrad照射して、樹脂シートを架橋させた。架橋後の樹脂シートを250℃に加熱することによって発泡させて、見かけ密度0.56g/cm
3、厚み0.5mmの緩衝層Cを得た。
次に、緩衝層Cと同一の配合処方の組成物をプレスして、厚み1.5mmのバルク層を得た。緩衝層Bとバルク層とを両面テープ(積水化学社製 ダブルタックテープ3801 10μm)で張り合わせ、合計厚み2.0mmの緩衝材を得た。
【0034】
<参考例1>
比較緩衝層Aとして、シート状に加工された熱伝導性を有するシリコーンゲル(タイカ社製、商品名「λゲル COH−4000」、厚み2.0mm、熱伝導率6.5W/m・
K)を、上記評価方法により評価した。結果を第1表に示す。
【0035】
<比較例1>
比較緩衝層Bとして、熱伝導シート(3M社製、商品名「ハイパーソフト放熱材 5590H」、厚み2.0mm、熱伝導率3.0W/m・K)を、上記評価方法により評価した。結果を第1表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
第1表から明らかなように、実施例1及び2は、シロキサン系化合物を含まないが、従来の参考例1と同程度の熱伝導性を有することが判った。従って、実施例1及び2の緩衝材は、電子機器分野に使用可能である。比較例1は、シロキサン系化合物を含まないが、25%圧縮強度が高く、所望の緩衝性が得られないことから、実用上適さないことが判った。すなわち、実施例1及び2のサンプルは、熱伝導性と緩衝性の両方に優れることが判った。