(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047060
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】航空機用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20161212BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20161212BHJP
B60C 11/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C11/24 Z
B60C11/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-90761(P2013-90761)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-213651(P2014-213651A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大北 洋平
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−038416(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/061991(WO,A1)
【文献】
特開平03−045404(JP,A)
【文献】
特開平06−211003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/02
B60C 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間に跨るカーカスプライと、
前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に設けられたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に設けられた保護層と、
前記保護層のタイヤ半径方向外側に設けられ、周方向溝によってリブが区画形成されたトレッドと、
前記保護層と前記トレッドとの間、又は前記トレッド内に設けられ、タイヤ軸方向に延在し、タイヤ周方向に間隔を空けて配置される糸状体と、
を有し、
タイヤ軸方向における前記糸状体の両端は、前記ベルト層のタイヤ軸方向両端よりタイヤ軸方向外側に位置している、航空機用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッドは、幅広の前記リブと、幅狭の前記リブとを有し、
幅広の前記リブの下層に位置する前記糸状体のタイヤ周方向の間隔は、幅狭の前記リブの下層に位置する前記糸状体のタイヤ周方向の間隔よりも小さい、請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に間隔を空けて配置される前記糸状体の両端部が、タイヤ周方向に延びる縦糸で夫々連結されている、請求項1または請求項2に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に好適な空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層とトレッドとの間に保護層を配設した構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4424989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機用空気入りタイヤは、トレッドが摩耗して、周方向溝の残溝深さが所定値まで減少すると、トレッドの摩耗末期に至ったものとして航空機から取り下ろされる。従って、溝以外の箇所であるリブが局所的に摩耗してしまっても、残溝深さが所定値まで減少していないと、使用条件等によっては、その状態がトレッドの摩耗末期と認識されないことがあった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、保護層が露出する前に、トレッドの摩耗末期であることを目視できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、一対のビード部間に跨るカーカスプライと、前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に設けられたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に設けられた保護層と、前記保護層のタイヤ半径方向外側に設けられ、周方向溝によってリブが区画形成されたトレッドと、前記保護層と前記トレッドとの間、又は前記トレッド内に設けられ、タイヤ軸方向に延在し、タイヤ周方向に間隔を空けて配置される糸状体と、
を有し、タイヤ軸方向における前記糸状体の両端は、前記ベルト層のタイヤ軸方向両端よりタイヤ軸方向外側に位置している。
【0007】
請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤでは、保護層とトレッドとの間、又はトレッド内に糸状体が設けられているので、周方向溝の残溝深さが所定値まで減少するよりも早くリブの摩耗が局所的に進んだ場合には、糸状体が最初に露出する。このため、保護層が露出する前に、トレッドの摩耗末期であることを目視することができる。
【0008】
また、請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤは、タイヤ軸方向における前記糸状体の両端が、
前記ベルト層の両端よりタイヤ軸方向外側に位置している。
【0009】
請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤでは、タイヤ軸方向における糸状体の両端が、ベルト層の
タイヤ軸方向両端よりタイヤ軸方向外側に位置しているので、リブの摩耗が局所的に進んだ際に、保護層から外れた領域においてベルト層が糸状体よりも先に露出することが抑制される。このため、ベルト層が露出する前に、トレッドの摩耗末期であることを目視することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤにおいて、前記トレッドは、幅広の前記リブと、幅狭の前記リブとを有し、幅広の前記リブの下層に位置する前記糸状体のタイヤ周方向の間隔は、幅狭の前記リブの下層に位置する前記糸状体のタイヤ周方向の間隔よりも小さい。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の航空機用空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に間隔を空けて配置される前記糸状体の両端部が、タイヤ周方向に延びる縦糸で夫々連結されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る航空機用空気入りタイヤによれば、保護層やベルト層が露出する前に、トレッドの摩耗末期であることを目視することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】タイヤ回転軸を含む面で切断した航空機用空気入りタイヤを示す断面図である。
【
図2】トレッド及びその下層の構造を示す部分破断展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図面において、矢印R方向はタイヤ半径方向を示し、矢印W方向はタイヤ軸方向を示す。タイヤ回転軸(図示せず)から遠のく方向を、「タイヤ半径方向外側」という。タイヤ赤道面CLから遠のく方向をタイヤ軸方向外側といい、タイヤ赤道面CLに近づく方向をタイヤ軸方向内側という。
【0013】
図1において、本実施形態に係る航空機用空気入りタイヤ10は、一対のビード部(図示せず)間に跨るカーカスプライ12と、ベルト層14と、保護層16と、トレッド18と、糸状体20と、を有している。
【0014】
ベルト層14は、カーカスプライ12のクラウン部12Aのタイヤ半径方向外側に設けられている。
図2に示されるように、ベルト層14は、例えば6層の主ベルト層15と、1層の副ベルト層17とで構成されている。主ベルト層15の各層は、タイヤ周方向に螺旋状に巻かれたコード25を含んで構成されている。このコード25は、有機繊維(例えば、芳香族ポリアミド)で構成されている。副ベルト層17は、タイヤ赤道面CLに対して、例えば2〜25°の角度で傾斜し、タイヤ軸方向端部で反対方向に傾斜するように同一面内で屈曲してタイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数本のコード27を含んで構成されている。このコード27は、有機繊維(例えば、脂肪族ポリアミド)で構成されている。
【0015】
保護層16は、ベルト層14のタイヤ半径方向外側に設けられている。この保護層16は、タイヤ周方向に波状に延びる複数本の波状コード22を、互いに平行に並べてゴムコーティングしたものである。波状コード22は、有機繊維(例えば、脂肪族ポリアミド)で構成されている。
【0016】
トレッド18は、保護層16のタイヤ半径方向外側に設けられ、例えば4本の周方向溝24,26によってリブ30,32,34が区画形成されている。リブ30は、タイヤ赤道面CLの両側の周方向溝24によって区画され、タイヤ赤道面CLを含むタイヤ軸方向の中央部に位置している。リブ32は、周方向溝24,26によって区画され、中央部のリブ30より幅狭となっている。リブ34は、周方向溝26によって区画され、該周方向溝26のタイヤ軸方向外側に位置している。リブ32,34は、タイヤ赤道面CLの両側に夫々形成されている。なお、周方向溝の数は、6本であってもよい。この場合、リブの数も更に増加する。
【0017】
糸状体20は、保護層16とトレッド18との間、又はトレッド18内に設けられ、タイヤ軸方向に延在し、タイヤ周方向に間隔を空けて配置されている。糸状体20は、タイヤ周方向に少なくとも12本配置される。これは、航空機用空気入りタイヤ10の接地範囲の下層に、少なくとも1本の糸状体20を位置させるためである。一方、タイヤ周方向において隣り合う糸状体20の間隔Dの最小値は、20〜30mm程度である。これは、間隔Dが狭すぎることによるセパレーションの発生を抑制するためである。この間隔Dは一定でもよく、また不等であってもよい。糸状体20は、有機繊維(例えば、脂肪族ポリアミド)で構成されているが、材質はこれに限られるものではなく、他の材料を用いてもよい。
【0018】
タイヤ軸方向における糸状体20の両端は、ベルト層14の
タイヤ軸方向両端よりタイヤ軸方向外側に位置している。具体的には、タイヤ軸方向における糸状体20の
長さは、ベルト層14の
幅よりも大である。これは、トレッド18に局所摩耗が生じた際に、糸状体20より先にベルト層14が露出することがないようにするためである。なお、タイヤ軸方向における糸状体20の範囲は、
ベルト層14の範囲よりも広い。
【0019】
糸状体20の配置は、タイヤ軸方向と平行に限られず、タイヤ軸方向に対して傾斜していてもよい。また、タイヤ周方向に隣り合う糸状体20同士は、互いに平行でなくてもよい。更に、糸状体20は、タイヤ軸方向に細切れに配置されていてもよい。また、糸状体20の両端部を
タイヤ周方向に延びる縦糸(図示せず)で夫々連結して、糸状体20を全体として梯子状に構成してもよい。更に、糸状体20は、リブ30,32,34内に配置されていてもよい。
【0020】
タイヤ軸方向において、糸状体20を細切れに配置して、リブ30,32,34の幅に応じて、タイヤ周方向の間隔Dを変化させてもよい。例えば、比較的幅広のリブ30の下層に位置する糸状体20の間隔Dを小さくし、比較的幅狭のリブ32,34の下層に位置する糸状体20の間隔Dを広くすることができる。
【0021】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図1において、本実施形態に係る航空機用空気入りタイヤ10では、保護層16とトレッド18との間、又はトレッド18内に糸状体20が設けられているので、周方向溝24,26の残溝深さが所定値まで減少するよりも早くリブの摩耗が局所的に進んだ場合には、糸状体20が最初に露出する。このため、保護層16が露出する前に、トレッド18の摩耗末期であることを目視することができる。
【0022】
また、タイヤ軸方向における糸状体20の両端が、ベルト層14の
タイヤ軸方向両端よりタイヤ軸方向外側に位置しているので、リブ30,32,34の摩耗が局所的に進んだ際に、保護層16から外れた領域においてベルト層14が糸状体20よりも先に露出することが抑制される。このため、ベルト層14が露出する前に、トレッド18の摩耗末期であることを目視することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 航空機用空気入りタイヤ、12 カーカスプライ、12A クラウン部、14 ベルト層、16 保護層、18 トレッド、20 糸状体、24 周方向溝、26 周方向溝、30 リブ、32 リブ、34 リブ