(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047062
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】緊急駆込みルーム付き建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20161212BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
E04H1/04 Z
F24F9/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-97717(P2013-97717)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-218811(P2014-218811A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】堀 福次郎
(72)【発明者】
【氏名】片野 雅尚
【審査官】
渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−295976(JP,A)
【文献】
特開2006−350947(JP,A)
【文献】
特開2005−080793(JP,A)
【文献】
特開2006−006722(JP,A)
【文献】
特開2004−259192(JP,A)
【文献】
特開平05−311929(JP,A)
【文献】
特開2003−041787(JP,A)
【文献】
特開2007−191955(JP,A)
【文献】
特開2005−194063(JP,A)
【文献】
特開2002−364253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00−1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームは風除室内に設けられており、上記風除室と建物内の境界に扉が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉は上記緊急駆込みルーム内に設けられた押しボタンが操作されることでロックされることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項2】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームにはエアシャワー装置が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉は上記緊急駆込みルーム内に設けられた押しボタンが操作されることでロックされることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項3】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームは風除室内に設けられており、上記風除室と建物内の境界に扉が設けられており、上記緊急駆込みルームにはエアシャワー装置が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉は上記緊急駆込みルーム内に設けられた押しボタンが操作されることでロックされることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項4】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームは風除室内に設けられており、上記風除室と建物内の境界に扉が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉がロックされると当該扉の全体または一部が、上記緊急駆込みルーム内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム内が見えない不透明または半透明状態に切り替わることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項5】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームにはエアシャワー装置が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉がロックされると当該扉の全体または一部が、上記緊急駆込みルーム内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム内が見えない不透明または半透明状態に切り替わることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項6】
集合住宅部分を有する建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられており、この緊急駆込みルームは風除室内に設けられており、上記風除室と建物内の境界に扉が設けられており、上記緊急駆込みルームにはエアシャワー装置が設けられており、上記緊急駆込みルームの扉がロックされると当該扉の全体または一部が、上記緊急駆込みルーム内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム内が見えない不透明または半透明状態に切り替わることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の緊急駆込みルーム付き建物において、上記緊急駆込みルーム内には警備会社と通信する通信機器が設けられていることを特徴とする緊急駆込みルーム付き建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人が難を逃れるために入ることができる緊急駆込みルーム付き建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンビニエンススト等の店舗で働く店員の生命を守り、売上金等の現金が盗まれることを防止することが可能な施錠装置が開示されている。具体的には、レール上を走行する車輪によって引き戸が移動して施錠される施錠装置において、引き戸の上部両端に突起部が設けられ、この突起部は引き戸に設けられた操作部によって出没自在であり、前記レールの下方側両端に前記突起部を係止するためのストッパが設けられ、前記操作部によって前記突起部の係止が解除されたときに前記引き戸を閉状態とするための引き込み手段が設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、屋外から住居等に入る際に衣服や頭髪に付着した花粉等を吹き飛ばすエアシャワー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37517号公報
【特許文献2】特開2007−255778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された施錠装置は、店舗で働く店員の生命を守ることができるものの、不審者につけまわされた方が当該店舗に入ってきた場合に十分に安全を確保できるものではなかった。そして、このように不審者につけまわされたときに、傍に集合住宅等の建物があったとしても、自宅ではない他人の建物に駆け込むことに躊躇しがちとなるものであり、このように駆け込みを躊躇したために何らかの被害を受けることがあった。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、不審者につけられたような場合に自宅ではない他人の建物に駆け込んで難を逃れることを容易にする緊急駆込みルーム付き建物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の緊急駆込みルーム付き建物は、上記の課題を解決するために、建物の玄関を入って直進する方向には通路が形成されており、上記玄関を入って上記直進する方向から外れる方向には、扉を開けて人が入り中から当該扉をロックすることができる緊急駆込みルームが設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記建物の傍を歩いているときに不審者につけられたような場合に、当該建物の玄関に入って上記緊急駆込みルームに駆け込んで難を逃れることができる。一方、当該建物内に居住者や使用者が入ることにおいては、上記玄関を入って直進すれば上記通路に至ることができるので、居住者等の玄関出入りの動線を害することはない。
【0009】
上記扉は上記緊急駆込みルーム内に設けられた押しボタンが操作されることでロックされるようにしてもよい。これによれば、上記緊急駆込みルーム内に入って慌ててサムターンを回そうとしても上手く回せないことがあるが、上記押しボタンであれば操作しやすく、慌てているときでも上記扉を素早くロックすることができる。
【0010】
上記緊急駆込みルーム内には警備会社と通信する通信機器が設けられていてもよい。これによれば、自身の携帯電話を利用して知人などに来てもらうよりも的確に警備員が駆けつけてくれることになる。
【0011】
上記緊急駆込みルームにエアシャワー装置が設けられていてもよい。これによれば、上記緊急駆込みルームがエアシャワー室を兼ねることになり、通常時には、建物の居住者や使用者が帰宅したときに、当該緊急駆込みルームを利用して花粉や埃を衣服や毛髪から除去することができる。
【0012】
上記緊急駆込みルームは風除室内に設けられてもよい。これによれば、上記建物のロビーにまで入らずに上記緊急駆込みルームに入ることができる。
【0013】
上記扉がロックされると当該扉の全体または一部が、上記緊急駆込みルーム内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム内が見えない不透明または半透明状態に切り替わるようにしてもよい。これによれば、不審者から上記緊急駆込みルーム内を見られずに済むことになる。なお、上記緊急駆込みルームの外側をカメラで撮像した画像を当該上記緊急駆込みルームのモニターに表示すれば、駆け込んだ方は外の様子を確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明であれば、不審者につけられたような場合に自宅ではない他人の建物に駆け込んで難を逃れることを容易にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の緊急駆込みルーム付き建物を示した間取り図である。
【
図2】本発明の実施形態の緊急駆込みルーム付き建物における緊急駆込みルームの設置例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の緊急駆込みルーム付き建物(集合住宅)1は、1階が事務所使用であり、2階から上が集合住宅となっている。この例では、図面下側には事務所用の玄関11および風除室12が設けられており、上記風除室12内に緊急駆込みルーム2が設置されている。そして、上記玄関11には玄関扉11aが設けられており、上記風除室12と事務所内通路との境界部には自動扉12aが設けられている。また、図面上側には集合住宅用の玄関13が設けられている。この実施形態では上記集合住宅用の玄関13には緊急駆込みルームは設置されていないが、設置する形態を採用することもできる。
【0017】
上記緊急駆込みルーム2が設置される箇所においては、上記玄関11を入って直進する方向に通路が設けられる。そして、上記玄関11を入って上記直進する方向から右に外れる方向に上記緊急駆込みルーム2が設けられる。
【0018】
図2に示しているように、上記緊急駆込みルーム2には、扉21が設けられており、この扉21を開けて人が入り中からロックをすることができる。上記扉21は破壊されにくい防犯複層ガラスなどからなる。
【0019】
上記緊急駆込みルーム2内の壁には非常用の押しボタン22が設けられており、また、この押しボタン22の近傍には、これが非常用の押しボタンであることを示す表示がされている。上記扉21は、上記押しボタン22が操作されることで自動的にロックされる。例えば、電動サムターンを用い、上記扉21が閉じられて上記押しボタン22が操作されたときに上記電動サムターンによってデッドボルトを突出させることで上記扉21をロックすることができる。上記扉21が閉じられたか否かは、例えば上記扉21が閉じられたときにオンする近接スイッチ等を設けておくことで判断することができる。なお、アンロックのための操作ボタンは別に設けられてもよいし、上記電動サムターンを手動で回してアンロックするようにしてもよい。
【0020】
また、上記緊急駆込みルーム2内には警備会社と通信する通信機器を含むルーム内装置23が設けられている。この実施形態では、上記押しボタン22が操作されたときに、上記ルーム内装置23によって上記警備会社への通報処理が実行されるようにしている。もちろん、このような通報だけでなく、上記ルーム内装置23に受話器を設けておき、この受話器がオフフックされたときに、上記警備会社への通信回線接続処理を行い、ルーム内に駆け込まれた方から警備員が事情を聴いて適切に対処することもできる。
【0021】
また、この実施形態では、上記扉21は液晶フィルムを透明板(ガラス等)で挟んだ透明構造部分を有している。上記液晶フィルムは通電によって光を遮断する或いは光を散乱させる機能を有する。すなわち、上記扉21がロックされると上記透明構造部分は上記緊急駆込みルーム2内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム2内が見えない不透明または半透明状態に切り替わる。上記緊急駆込みルーム2内に駆け込まれた方が、上記液晶フィルムに対する通電と非通電を専用のボタンによって操作するようにしてもよいが、この実施形態では、上記押しボタン22が操作されたときに、上記扉21のロックと同時に上記液晶フィルムに対する通電(不透明または半透明状態)を自動的に行うようにしている。
【0022】
また、この実施形態では、上記緊急駆込みルーム2内にエアシャワー装置24を設け、当該緊急駆込みルーム2がエアシャワー室を兼ねるようにしている。上記エアシャワー装置24は、装置の前方に強い風を送出して衣服や頭髪の埃や花粉を吹き飛ばし、下部より空気を吸込み、フィルターを通して空気を巡回させるものである。
【0023】
また、上記緊急駆込みルーム2には、ルーム内画像を記録するためのカメラやレコーダー、音声を出力するスピーカー、画像を表示するディスプレイなどが設けられている。上記ディスプレイには、通常時において上記エアシャワー装置24の操作案内を表示する一方、緊急駆込み時において不審者対処のための注意表示などを行うことができる。
【0024】
このような、緊急駆込みルーム付き建物1であれば、当該建物1の傍を歩いているときに不審者につけられたような場合に、上記玄関11に入って上記緊急駆込みルーム2に駆け込んで難を逃れることができる。一方、当該建物1内に居住者や使用者が入ることにおいては、上記玄関11を入って直進すれば通路に至ることができるので、使用者の玄関出入りの動線を害することはない。なお、上記の例示では、上記建物1の1階側が事務所使用となっていたが、1階側を店舗とするようにしてもよいし、或いは全部を集合住宅とするタイプとしてもよい。
【0025】
上記緊急駆込みルーム2内に入って慌ててサムターンを回そうとしても上手く回せないことがあるが、上記扉21が上記押しボタン22が操作されることでロックされるようにしてあると、上記押しボタン22は操作しやすいので、慌てた状態でも上記扉21を素早くロックすることができる。
【0026】
上記緊急駆込みルーム2内に警備会社と通信する通信機器(ルーム内装置23)が設けられていると、自身の携帯電話を利用して知人などに来てもらうよりも的確に警備員が駆けつけてくれることになる。
【0027】
上記緊急駆込みルーム2にエアシャワー装置24が設けられていると、上記緊急駆込みルーム2がエアシャワー室を兼ねることになり、通常時には、建物1の居住者や使用者が帰宅したときに、当該緊急駆込みルーム2を利用して花粉や埃を衣服や毛髪から除去することができる。なお、上記の例では、上記エアシャワー装置24を上記緊急駆込みルーム2の奥側に設けたが、上記エアシャワー装置24を上記緊急駆込みルーム2の右サイド或いは左サイドに配置するようにしてもよい。
【0028】
また、上記緊急駆込みルーム2が風除室12内に設けられていると、上記建物1のロビーにまで入らずに上記緊急駆込みルーム2に入ることができる。
【0029】
上記扉21がロックされたときに当該扉21の全体または一部が、上記緊急駆込みルーム内が見える透明状態から上記緊急駆込みルーム内が見えない不透明または半透明状態に切り替わることができると、不審者から上記緊急駆込みルーム2内を見られずに済むことになる。なお、上記緊急駆込みルーム2の外側をカメラで撮像した画像を当該上記緊急駆込みルームの上記ディスプレイ(モニター)に表示すれば、駆け込んだ方は外の様子を確認することができる。
【0030】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 建物(集合住宅)
11 玄関
11a 玄関扉
12 風除室
12a 自動扉
2 緊急駆込みルーム
21 扉
22 押しボタン
23 ルーム内装置
24 エアシャワー装置