特許第6047067号(P6047067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6047067-毛髪用処理剤 図000007
  • 特許6047067-毛髪用処理剤 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047067
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】毛髪用処理剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20161212BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161212BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20161212BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61Q5/12
   A61K8/34
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-113599(P2013-113599)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231501(P2014-231501A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】永見 恵子
(72)【発明者】
【氏名】山田 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇希
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098928(JP,A)
【文献】 特開2011−001359(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0071568(US,A1)
【文献】 特開2002−053436(JP,A)
【文献】 特開2005−154348(JP,A)
【文献】 特開平11−255612(JP,A)
【文献】 特開平10−109923(JP,A)
【文献】 特開平06−256144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−99/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状炭化水素、(B)分枝アルコールと直鎖脂肪酸との液状エステル油、及び直鎖アルコールと分枝脂肪酸との液状エステル油から選ばれた一種又は二種以上の液状エステル油、及び(C)ノニオン界面活性剤が配合され、
使用前は透明であって、水で希釈すると濁りが生じる外観を有し、
洗い流す態様で用いられることを特徴とする毛髪用処理剤。
【請求項2】
前記(A)液状炭化水素として、流動パラフィンが配合された請求項1に記載の毛髪用処理剤。
【請求項3】
前記(B)液状エステル油が、炭素数17以上26以下の液状エステル油である請求項1又は2に記載の毛髪用処理剤。
【請求項4】
前記(B)液状エステル油として、下記一般式(b1)で表される液状エステル油b1及び下記一般式(b2)で表される液状エステル油b2から選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項3に記載の毛髪用処理剤。
COOR (b1)
[上記一般式(b1)において、RCOはRが分枝アルキル基である炭素数8以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数2以上18以下の直鎖アルキル基を表す。]
COOR (b2)
[上記一般式(b2)において、RCOはRが直鎖アルキル基である炭素数12以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数3以上8以下の分枝アルキル基を表す。]
【請求項5】
前記(A)液状炭化水素及び前記(B)液状エステル油の総配合量が、40質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の毛髪用処理剤。
【請求項6】
(D)多価アルコール及び(E)水が配合されており、当該(D)多価アルコール及び(E)水の総配合量が10質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の毛髪用処理剤。
【請求項7】
前記(D)多価アルコール及び前記(E)水の総配合量に対する前記(C)ノニオン界面活性剤の配合量(C)/[(D)+(E)]が、3以上である請求項6に記載の毛髪用処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に塗布してから洗い流す態様で使用される毛髪用処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレンジングオイルには、口紅、ファンデーション、マスカラなどの化粧料を除去するための成分として流動パラフィンなどの液状炭化水素を配合することが知られている。例えば、透明な化粧料組成物に関する特許文献1には、水添ポリイソブテンと共にノニオン界面活性剤、液状エステル油及び水が配合されたクレンジングオイルが開示されており(段落0035参照)、皮膚洗浄剤に関する特許文献2には、流動パラフィンと共にノニオン界面活性剤、液状エステル油及び水が配合されたクレンジングオイルが開示されている(段落0024参照)。
【0003】
また、液状炭化水素は、毛髪に塗布する組成物に配合される場合がある。例えば、損傷毛の内部構造を補強する毛髪化粧料に関する特許文献3には、流動パラフィンと共に液状植物油、シリコーン油及びノニオン界面活性剤が配合された洗い流さない態様で使用される毛髪化粧料が開示され(段落0040)、ヘアケア組成物に関する特許文献4には、重質流動イソパラフィン、アミノ変性シリコーン及びカチオン界面活性剤が配合されたリンスオフタイプの水性ヘアケア組成物が開示されている(段落0023〜0036)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−35828号公報
【特許文献2】特開2008−106060号公報
【特許文献3】特開2009−67781号公報
【特許文献4】特開2007−320871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記にも一例を挙げた通り、毛髪に塗布して洗い流す態様で使用する毛髪用処理剤には、液状炭化水素を配合する場合があり、そのような毛髪用処理剤には、実使用者の好みにより、透明な外観が求められる。透明な毛髪用処理剤を毛髪に塗布して使用する際には、毛髪からの洗い流しの終了判断を、毛髪の触感に頼って行うことが可能である。しかし、触感と共に視覚に頼ることができれば、毛髪用処理剤の流し残し防止に有用となる。視覚による判断は、他人の長い頭髪を処理する美容師において特に有用であると考えられる。また、毛髪用処理剤が透明であるか否かにかかわらず求められることであるが、毛髪用処理剤が経時的に安定なことが望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、液状炭化水素が配合され、外観が透明である上に、洗い流しを視覚により確認でき、更には経時的安定性を向上させた毛髪用処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が液状炭化水素を含む洗い流す態様で使用する毛髪用処理剤について鋭意検討を行った結果、液状エステル油及びノニオン界面活性剤の選定と配合量を適宜設定すれば、透明であるが水で希釈すると濁る外観を実現でき、経時的な安定性も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る毛髪用処理剤は、(A)液状炭化水素、(B)分枝アルコールと直鎖脂肪酸との液状エステル油、及び直鎖アルコールと分枝脂肪酸との液状エステル油から選ばれた一種又は二種以上の液状エステル油、及び(C)ノニオン界面活性剤が配合され、使用前は透明であって、水で希釈すると濁りが生じる外観を有し、洗い流す態様で用いられることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る毛髪用処理剤は、前記(A)液状炭化水素として、流動パラフィンが配合されたものが良い。流動パラフィンが配合されていると、頭皮及び頭髪の油分の除去と、頭皮のマッサージの行い易さに優れる。
【0010】
前記(B)液状エステル油は、炭素数17以上26以下の液状エステル油であると良い。当該炭素数17以上26以下の液状エステル油として、例えば、下記一般式(b1)で表される液状エステル油b1及び下記一般式(b2)で表される液状エステル油b2から選ばれた一種又は二種以上を、本発明に係る毛髪用処理剤に配合すると良い。
COOR (b1)
[上記一般式(b1)において、RCOはRが分枝アルキル基である炭素数8以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数2以上18以下の直鎖アルキル基を表す。]
COOR (b2)
[上記一般式(b2)において、RCOはRが直鎖アルキル基である炭素数12以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数3以上8以下の分枝アルキル基を表す。]
【0011】
本発明の毛髪用処理剤における前記(A)液状炭化水素及び前記(B)液状エステル油の総配合量は、例えば40質量%以上である。
【0012】
本発明の毛髪用処理剤は、(D)多価アルコール及び(E)水が配合され、当該(D)多価アルコール及び(E)水の総配合量が10質量%以下であるものが良い。この配合量範囲であると、外観が透明のものを製造容易となる。
【0013】
また、前記(D)多価アルコール及び前記(E)水の総配合量に対する前記(C)ノニオン界面活性剤の配合量(C)/[(D)+(E)]が、3以上であると良い。この配合量比であると、外観が透明のものを製造容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る洗い流す態様の毛髪用処理剤によれば、使用前の外観が透明であるものの、水で希釈すると濁るものなので、洗い流しの終了判断を目視で行う場合などに有用である。また、本発明に係る毛髪用処理剤は、液状炭化水素と共に配合する液状エステル油及びノニオン界面活性剤の選定と量を適宜設定したものなので、経時的な安定性が向上したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】水又は本発明の実施形態に係る毛髪用処理剤を収容した透明容器を表す図面代用写真。
図2】水に本実施形態の毛髪用処理剤を滴下混合したものを収容した透明容器を表す図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る毛髪用処理剤に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る毛髪用処理剤は、(A)液状炭化水素、(B)液状エステル油、及び(C)ノニオン界面活性剤が配合されたものである。また、使用前の外観が透明であること、及び水との希釈による濁りを維持できるのであれば、本実施形態の毛髪用処理剤に、公知の毛髪用処理剤に配合される原料を任意原料として配合しても良い。
【0017】
((A)液状炭化水素)
本実施形態の毛髪用処理剤には、20〜50℃で液状の公知の炭化水素から選ばれた一種又は二種以上を(A)液状炭化水素として配合する(以下、「(A)液状炭化水素」を「(A)成分」と称することがある。)。
【0018】
(A)成分としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワランが挙げられる。本実施形態の毛髪用処理剤を使用する際に、頭皮及び頭髪の油分の除去と、頭皮のマッサージを行う場合には、流動パラフィンを配合すると良い。
【0019】
本実施形態の毛髪用処理剤における(A)成分の配合量は、特に限定されないが、30質量%以上70質量%以下が良く、40質量%以上60質量%以下が好ましい。
【0020】
((B)液状エステル油)
本実施形態の毛髪用処理剤には、分枝アルコールと直鎖脂肪酸との液状エステル油、及び直鎖アルコールと分枝脂肪酸との液状エステル油から選ばれた一種又は二種以上を(B)液状エステル油として配合する(以下、「(B)液状エステル油」を「(B)成分」と称することがある。)。この(B)成分は、20〜50℃で液状のものである。
【0021】
(B)成分は、炭素数17以上26以下のものであると良く、例えば、下記一般式(b1)で表される液状エステル油b1及び下記一般式(b2)で表される液状エステル油b2から選ばれた一種又は二種以上を(B)成分として配合する。
【0022】
COOR (b1)
上記一般式(b1)において、RCOはRが分枝アルキル基である炭素数8以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数2以上18以下の直鎖アルキル基を表す。RCOを構成するためのカルボン酸としては、例えば2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸が挙げられ、Rを構成するためのアルコールとしては、例えばエタノール、ヘキサノール、セチルアルコール、ステアリルアルコールが挙げられる。また、液状エステル油b1の具体例としては、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸ヘキシルが挙げられる。
【0023】
COOR (b2)
上記一般式(b2)において、RCOはRが直鎖アルキル基である炭素数12以上18以下のアシル基を表し、Rは炭素数3以上8以下の分枝アルキル基を表す。RCOを構成するためのカルボン酸としては、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられ、Rを構成するためのアルコールとしては、例えばイソプロパノール、2−エチルヘキサノールが挙げられる。また、液状エステル油b2の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0024】
本実施形態の毛髪用処理剤における(B)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総配合量が40質量%以上75質量%以下となる量であると良い。(B)成分の単独の配合量としては、例えば5質量%以上25質量%以下であり、7質量%以上20質量%以下が良く、8質量%以上15質量%以下が好ましい。
【0025】
((C)ノニオン界面活性剤)
本実施形態の毛髪用処理剤には、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどの公知のノニオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上を(C)ノニオン界面活性剤として配合する(以下、「(C)ノニオン界面活性剤」を「(C)成分」と称することがある。)。
【0026】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンが挙げられる。上記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラステアリン酸ソルベス−60、テトラオレイン酸ソルベス−6、テトラオレイン酸ソルベス−30、テトラオレイン酸ソルベス−40、テトラオレイン酸ソルベス−60、テトライソステアリン酸ソルベス−30が挙げられる。また、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸PEG−5グリセリル、ステアリン酸PEG−15グリセリル、イソステアリン酸PEG−5グリセリル、イソステアリン酸PEG−8グリセリル、イソステアリン酸PEG10−グリセリル、イソステアリン酸PEG−20グリセリル、イソステアリン酸PEG−25グリセリル、イソステアリン酸PEG−30グリセリル、オレイン酸PEG−5グリセリル、オレイン酸PEG−15グリセリルが挙げられる。
【0027】
選定する(C)成分によっては、外観を透明にできないか、水との希釈による濁りが生じ難くなる。そのような場合には、(C)成分を二種以上とし、(C)成分全体の加重平均したHLB(Hydrophile―Lipophile Balance)値を適宜調整すると良い。例えばソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステルを(C)成分とする場合、これらの加重平均HLBは、9.0以上10.2以下が良く、9.5以上10.0以下が好ましい。
【0028】
なお、各(C)成分のHLB値の算出では、乳化試験による方法を採用する。すなわち、(1)a質量部のセチルエーテル系ノニオン界面活性剤と、b質量部のソルビタンモノステアリン酸エステル(日光ケミカル社製「NIKKOL
SS −10MV」、HLB値=4.7)を使用し、aとbを様々な比率とした下記組成、調製法で複数の乳化物を得る、(2)一日放置した後のこれら乳化物における油滴の粒径が最小となるaとbの比率に基づき、HLB値を「(10.5−4.7×b/4)4/a」により算出する。
乳化物の組成:
流動パラフィン(油相) 40質量%
乳化剤 a+b=4質量%
水 56質量%
乳化物の調製法:
流動パラフィンを80℃程度に加温して、攪拌しながら80℃以上の水相を加えて乳化する。その後、冷却しながら、攪拌を続けて40℃で放置する。
【0029】
本実施形態の毛髪用処理剤における(C)成分の配合量は、配合する(C)成分の種類に応じて、透明な外観と水との希釈による濁りを生じさせる量を適宜設定するべきものである。配合量による一般的な傾向として、配合量を多くすると透明な外観を実現し易くなり、配合量を少なくすると希釈による濁りを生じさせ易くなる。例えば20質量%以上30質量%以下の配合量で、本実施形態の毛髪用処理剤に(C)成分を配合する。
【0030】
(任意原料)
本実施形態の毛髪用処理剤には、上記の通り、任意原料を配合しても良い。この任意原料としては、(D)多価アルコール(以下、「(D)多価アルコール」を「(D)成分」と称することがある。)、(E)水(以下、「(E)水」を「(E)成分」と称することがある。)、動植物抽出物、油脂、カチオン界面活性剤、エステル油、炭化水素、シリコーン、アミノ酸などが挙げられる。
【0031】
1,3−ブチレングリコールなどの(D)成分及び(E)成分は、動植物抽出物の配合に伴って配合される頻度が高い。(D)成分及び(E)成分を多量に配合すると、透明な外観を損ない易いので、本実施形態の毛髪用処理剤における(D)成分及び(E)成分の総配合量は、10質量%以下が良く、8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい。
【0032】
また、(D)成分及び(E)成分の総配合量と、(C)成分の配合量との関係を一定の関係にすることが、透明な外観を達成する上で好ましい。その好ましい配合量の関係は、(D)成分及び(E)成分の総配合量に対する(C)成分の配合量(C)/[(D)+(E)]が、3以上である。
【0033】
(使用方法)
本実施形態の毛髪用処理剤は、流動性のある液状のものであり、これを水で希釈して又は希釈せずに毛髪に塗布し、洗い流して用いられる。洗い流す際の毛髪用処理剤は水で希釈されて濁りが生じたものとなるから、毛髪用処理剤の洗い流しの終了判断に目視を採用することもできる。図1は、水又は本実施形態の毛髪用処理剤を収容した透明容器(容量50ml)を表す図面代用写真であり、図2は、水に本実施形態の毛髪用処理剤1gを滴下混合したものを収容した透明容器(容量50ml)を表す図面代用写真である。図1において、本実施形態の毛髪用処理剤を目視確認した外観が透明であることを確認でき、図2において、本実施形態の毛髪用処理剤を水と希釈したときに、白く濁ったことを確認できる。
【0034】
また、本実施形態の毛髪用処理剤を毛髪に塗布して水洗した後に、カチオン界面活性剤及び高級アルコールが配合されたトリートメントを毛髪に塗布して水洗すると良い。このトリートメントによる処理を行うことで、(A)成分及び(B)成分によって生じる毛髪のべたつきを抑制できる。
【0035】
上記トリートメントに配合されるカチオン界面活性剤は、公知のものから選定すると良い。このカチオン界面活性剤としては、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる(ここでの「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖又は分枝のアルキル基を意味し、その炭素数が16以上22以下であると皮膚への刺激の抑制や毛髪に付与する感触の観点から好ましい。)。トリートメントにおけるカチオン界面活性剤の配合量は、適宜設定されるべきものであるが、例えば1質量%以上5質量%以下であり、2質量%以上4質量%以下が良い。1質量%以上にすることで、毛髪の感触改善に好ましく、5質量%以下にすることで、皮膚刺激の抑制に好ましい。
【0036】
上記トリートメントに配合される高級アルコールは、公知のものから選定すると良い。この高級アルコールとしては、炭素数16以上22以下のものが良く、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールなどの分岐状飽和アルコール;が挙げられる。トリートメントにおける高級アルコールの配合量は、例えば3質量%以上15質量%以下であり、5質量%以上10質量%以下が良い。3質量%以上にすることで、粘度が高くなり、15質量%以下にすることで、油性感の抑制に好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0038】
流動性ある液状の実施例及び比較例の毛髪用処理剤を、下記表1〜4に記載の質量比で原料を配合して製造した。配合した原料は、下記表1〜4に記載の通り、(A)成分(流動パラフィン、流動イソパラフィン)、(B)成分(2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル)、(C)成分(オレイン酸ソルビタン、テトラオレイン酸ソルベス−30)、(D)成分(1,3−ブチレングリコール)、(E)成分(水)、液状油脂(コメヌカ油、ヒマシ油)、植物エキス、及び香料から選定した。毛髪用処理剤の製造は、(D)成分、(E)成分及び植物エキスを混合し、HLBが高い方の(C)成分を混合してから、HLBが低い方の(C)成分を混合した後に、(A)成分及び(B)成分を混合した。
【0039】
製造した毛髪用処理剤について、「透明性」と「希釈による濁り」を確認した(「希釈による濁り」については、「透明性」の評価で透明であると確認できたもののみを確認した。)。また、「常温一日放置後の分離」を、確認した(「希釈による濁り」で、濁りを確認できたもののみを確認した。)。なお、「透明性」の確認では、毛髪用処理剤を収容した容量50mlの透明容器を目視確認し、透明と認識したものを「〇」、濁りがあると認識したものを「×」とした。「希釈による濁り」の確認では、深さ7cm程度の容器内の水1.5Lに毛髪用処理剤2〜3mlを混合し、容器の底面が見えないものを「〇」、容器の底面が見えるものを「×」とした。また、「常温一日放置後の分離」では、毛髪用処理剤を収容した容量50mlの透明容器を目視観察し、分離を確認できなかったものを「なし」、分離が確認されたものを「分離」とした。
【0040】
更に、一部の毛髪用処理剤については、毛髪処理中において実際に頭髪に適用し、毛髪処理後の「頭髪の根元の立ち上がり」と「指通り」に関する官能評価を行った。上記毛髪処理は、シャンプーで洗髪した毛髪に、毛髪用処理剤を毛髪に馴染ませてから水洗し、更に市販のカチオン界面活性剤及び高級アルコールが配合されたトリートメント(ミルボン社製「プラーミア リフティングエフェクト2ndエッセンス」)を毛髪に馴染ませてから水洗し、毛髪を温風乾燥させるものとした。
【0041】
下記表1〜4に、原料、原料の配合比等を示す。
【表1】
【0042】
表1において、(C)成分の加重平均HLBを調整することで、「透明性」と「希釈による濁り」を設定できることを確認できる。また、処理した毛髪の「頭髪の根元の立ち上がり」の官能評価に関して、実施例1aは実施例1b及び1cよりも良い結果であった。「指通り」の官能評価に関して、実施例1aは実施例1cよりも良い結果であった。
【0043】
【表2】
【0044】
表2において、(C)成分の配合量を増加させると、「希釈による濁り」を生じさせ難くなることを確認できる。
【0045】
【表3】
【0046】
表3において、実施例3と比較例3aとの対比により、(C)/[(D)+(E)]を3以上にすると、透明性を実現し易いことを確認できる。
【0047】
【表4】
【0048】
表4において、(B)成分を配合していない比較例4のみが「常温一日放置後の分離」で「分離」となっていたことから、(B)成分の配合が分離抑制を向上させたことを確認できる。また、処理した毛髪の「頭髪の根元の立ち上がり」の官能評価に関して、実施例4aは実施例4b、4d及び4eよりも良い結果であった。「指通り」の官能評価に関して、実施例4aは実施例4b及び4cよりも良い結果であった。
【0049】
上記実施例及び比較例の毛髪用処理剤とは別に、下記表5に記載の質量比で原料を配合して流動性ある液状の実施例5a〜5bの毛髪用処理剤を製造した。配合した原料は、下記表5に記載の通り、(A)成分(流動パラフィン)、(B)成分(2−エチルヘキサン酸セチル)、(C)成分(オレイン酸ソルビタン、テトラオレイン酸ソルベス−30、イソステアリン酸PEG−8グリセリル)、(D)成分(1,3−ブチレングリコール)、(E)成分(水)、コメヌカ油、植物エキス、及び香料から選定した。
【0050】
下記表5に、原料、原料の配合比等を示す。
【表5】
【0051】
処理した毛髪の官能評価に関しては、毛髪が整うことにより生じる自然なツヤの評価を、
実施例5aと実施例5bを直接対比した。対比の結果は、実施例5bの方が実施例5aよりも優れていた。
図1
図2