特許第6047070号(P6047070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047070
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】電機子及び電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/36 20060101AFI20161212BHJP
   H02K 3/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02K23/36
   H02K3/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-126013(P2013-126013)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-2616(P2015-2616A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小谷 浩二
(72)【発明者】
【氏名】関 明彦
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/080374(WO,A1)
【文献】 特開2008−263697(JP,A)
【文献】 特開2009−055733(JP,A)
【文献】 特開2008−237015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0224562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/36
H02K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に延びる複数のティースを有すると共に、前記複数のティースの間にそれぞれスロットが形成されたコアと、
前記コアにおける周方向の一方側へ層毎に1スロットずつずれながら複数の層まで連続して、各層がそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回された複数の層から構成される第一巻線巻回部と、
前記コアにおける周方向の前記一方側とは逆方向である他方側へ層毎に1スロットずつずれながら複数の層まで連続して、各層がそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに逆方向に巻回された、複数の層から構成される第二巻線巻回部と、
を備えた電機子。
【請求項2】
前記複数の第一巻線巻回部のうち最終層の第一巻線巻回部における前記一方側の端部は、前記ティースの側面に該ティースの基端側から先端側に亘って平積みされている、
請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記コアは、前記複数のティースとして、18本のティースを有し、
前記複数の第一巻線巻回部は、それぞれ対応する4本の前記ティースに亘って複数巻きに巻回された第一層から第四層の第一巻線巻回部であり、
前記複数の第二巻線巻回部は、前記複数の第一巻線巻回部のうちの最終層である前記第四層の第一巻線巻回部における前記他方側の端部が挿入された前記スロットを巻き始めとして、それぞれ対応する4本の前記ティースに亘って複数巻きに巻回された第五層から第九層の第二巻線巻回部である、
請求項1又は請求項2に記載の電機子。
【請求項4】
前記複数の第一巻線巻回部及び前記複数の第二巻線巻回部は、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項5】
前記複数の第一巻線巻回部は、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回され、
前記複数の第二巻線巻回部は、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項6】
前記複数の第一巻線巻回部は、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回され、
前記複数の第二巻線巻回部は、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項7】
放射状に延びる複数のティースを有すると共に、前記複数のティースの間にそれぞれスロットが形成されたコアにおける周方向の一方側へ層毎に1スロットずつずらしながら複数の層まで連続して各層をそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回して、複数の層から構成される第一巻線巻回部を形成する第一工程と、
前記コアにおける周方向の前記一方側とは逆方向である他方側へ層毎に1スロットずつずらしながら複数の層まで連続して各層をそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回して、複数の層から構成される第二巻線巻回部を形成する第二工程と、
を備えた電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子及び電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射状に延びる複数のティースを有するコアと、複数の巻線巻回部とを備えた電機子が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電機子において、複数のティースの間には、スロットがそれぞれ形成されており、複数の巻線巻回部は、コアにおける周方向の一方側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する幾つかのティースに亘って複数巻きに巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−269781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の電機子では、複数の巻線巻回部の重なり合いが累積することにより、何れかのスロットにおいては浅い位置で巻線巻回部が巻回されてしまうことがある。従って、この場合には、巻線の占積率を向上させることが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、巻線の占積率を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の電機子は、放射状に延びる複数のティースを有すると共に、前記複数のティースの間にそれぞれスロットが形成されたコアと、前記コアにおける周方向の一方側へ層毎に1スロットずつずれながら複数の層まで連続して、各層がそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回された複数の層から構成される第一巻線巻回部と、前記コアにおける周方向の前記一方側とは逆方向である他方側へ層毎に1スロットずつずれながら複数の層まで連続して、各層がそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに逆方向に巻回された、複数の層から構成される第二巻線巻回部と、を備えている。
【0007】
この電機子によれば、複数の第一巻線巻回部は、コアにおける周方向の一方側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに亘って複数巻きに巻回されている。一方、複数の第二巻線巻回部は、上述の複数の第一巻線巻回部とは逆に、コアにおける周方向の他方側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに亘って複数巻きに巻回されている。これにより、何れかのスロットにおいて浅い位置で巻線巻回部が巻回されてしまうことを抑制することができるので、巻線の占積率を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の電機子は、請求項1に記載の電機子において、前記複数の第一巻線巻回部のうち最終層の第一巻線巻回部における前記一方側の端部が、前記ティースの側面に該ティースの基端側から先端側に亘って平積みされたものである。
【0009】
この電機子によれば、複数の第一巻線巻回部のうち最終層の第一巻線巻回部における一方側の端部は、ティースの側面に該ティースの基端側から先端側に亘って平積みされている。従って、この第一巻線巻回部における一方側の端部が挿入されたスロットでは、平積みによりコアにおける周方向の一方側にスペースを確保することができる。従って、このスペースに他の第二巻線巻回部における他方側の端部を配置することができるので、何れかのスロットにおいて浅い位置で巻線巻回部が巻回されてしまうことを抑制することができる。
【0010】
なお、請求項3に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の電機子としては、前記コアが、前記複数のティースとして、18本のティースを有し、前記複数の第一巻線巻回部が、4本の前記ティースに亘って複数巻きに巻回された第一層から第四層の第一巻線巻回部であり、前記複数の第二巻線巻回部が、前記複数の第一巻線巻回部のうちの最終層である前記第四層の第一巻線巻回部における前記他方側の端部が挿入された前記スロットを巻き始めとして、4本の前記ティースに亘って複数巻きに巻回された第五層から第九層の第二巻線巻回部である電機子が一例として挙げられる。
【0011】
請求項4に記載の電機子は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子において、前記複数の第一巻線巻回部及び前記複数の第二巻線巻回部が、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されたものである。
【0012】
この電機子によれば、複数の第一巻線巻回部及び複数の第二巻線巻回部は、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されている。従って、巻線の巻回時又は巻回後に第一巻線巻回部及び第二巻線巻回部の緩みを抑制することができる。
【0013】
請求項5に記載の電機子は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子において、前記複数の第一巻線巻回部が、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回され、前記複数の第二巻線巻回部が、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回されたものである。
【0014】
この電機子によれば、複数の第一巻線巻回部は、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されている。従って、第一巻線巻回部が挿入されたスロットでは、開口両端部にスペースを確保することができる。そして、第二巻線巻回部は、上述のスペースを利用しながら、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回される。従って、第一巻線巻回部が挿入されたスロットにおける開口両端部において、第一巻線巻回部と第二巻線巻回部との干渉を抑制することができる。
【0015】
請求項6に記載の電機子は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電機子において、前記複数の第一巻線巻回部が、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回され、前記複数の第二巻線巻回部が、それぞれ対応する前記少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されたものである。
【0016】
この電機子によれば、下層である複数の第一巻線巻回部は、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに緩み方向に巻回されているが、上層である複数の第二巻線巻回部は、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに締り方向に巻回されている。従って、この上層である第二巻線巻回部により下層である第一巻線巻回部を締め付けることができるので、第一巻線巻回部の緩みを抑制することができる。
【0017】
また、前記課題を解決するために、請求項7に記載の電機子の製造方法は、放射状に延びる複数のティースを有すると共に、前記複数のティースの間にそれぞれスロットが形成されたコアにおける周方向の一方側へ層毎に1スロットずつずらしながら複数の層まで連続して各層をそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回して、複数の層から構成される第一巻線巻回部を形成する第一工程と、前記コアにおける周方向の前記一方側とは逆方向である他方側へ層毎に1スロットずつずらしながら複数の層まで連続して各層をそれぞれ対応する少なくとも2本の前記ティースに亘って複数巻きに順方向に巻回して、複数の層から構成される第二巻線巻回部を形成する第二工程と、を備えている。
【0018】
この電機子の製造方法によれば、何れかのスロットにおける巻線巻回部の重なり合いを抑制することができ、このスロットから巻線巻回部がはみ出してしまうことを抑制することができるので、巻線の占積率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の側面断面図である。
図2図1に示される電機子の平面図である。
図3図2に示されるコアに第一層から第四層の第一巻線巻回部を巻回する方法を説明する図である。
図4図2に示されるコアに第五層から第九層の第二巻線巻回部を巻回する方法を説明する図である。
図5図2に示される整流子に第一巻線巻回部及び第二巻線巻回部を結線する方法を説明する図である。
図6図2に示される整流子に第一巻線巻回部及び第二巻線巻回部を結線する方法の第一変形例を説明する図である。
図7図2に示される整流子に第一巻線巻回部及び第二巻線巻回部を結線する方法の第二変形例を説明する図である。
図8】比較例に係る電機子の平面図である。
図9図8に示されるコアに第一層から第四層の巻線巻回部を巻回する方法を説明する図である。
図10図8に示されるコアに第五層から第九層の巻線巻回部を巻回する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
図1に示される本発明の一実施形態に係る回転電機Mは、ブラシ付き直流モータであり、電機子10、固定子12、フロントハウジング14、エンドハウジング16、及び、ブラシ装置18を備えている。
【0022】
電機子10は、シャフト20、整流子22、コア24、及び、巻線26を有している。シャフト20は、フロントハウジング14及びエンドハウジング16に設けられた一対の軸受28により回転可能に支持されており、整流子22及びコア24は、シャフト20に固定されている。巻線26は、コア24に巻装されており、この巻線26の端末部は、整流子22に接続されている。
【0023】
固定子12は、ヨーク30、及び、マグネット32を有している。ヨーク30は、円筒状に形成されており、このヨーク30の内側には、電機子10が収容されている。マグネット32は、ヨーク30の内周面に例えば接着等により固定されており、電機子10と径方向に対向されている。
【0024】
フロントハウジング14は、ヨーク30の軸方向一方側の端部に固定されており、エンドハウジング16は、ヨーク30の軸方向他方側の端部に固定されている。フロントハウジング14には、ブラシ装置18が固定されており、このブラシ装置18には、整流子22と当接されたブラシ34が設けられている。
【0025】
そして、この回転電機Mでは、ブラシ34に電流が供給されると、この電流が整流子22を介して巻線26に流れる。また、この巻線26に流れる電流と、マグネット32の磁界との間に電磁力が働き、電機子10が回転される。
【0026】
また、図2に示されるように、上述の電機子10のコア24は、より具体的には、環状部36と、複数のティース38とを有している。本実施形態では、一例として、複数のティース38の本数は、18本とされている。つまり、この電機子10を有する回転電機Mは、4極18スロットのモータとされている。複数のティース38は、環状部36からコア24の径方向外側に向けて放射状に延びており、この複数のティース38の間には、スロット39がそれぞれ形成されている。
【0027】
また、コア24に巻装された巻線26は、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44と、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49とを有している。この第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44と、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49とは、次のようにして複数のティース38に巻回されている。
【0028】
以下、電機子10の製造方法として、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44及び第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49を複数のティース38に巻回する方法について説明すると共に、電機子10の構成をさらに詳しく説明する。
【0029】
なお、本実施形態において、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44及び第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、それぞれ一組ずつ(二つずつ)設けられている。各組の巻線巻回部は、コア24の中心部を中心に点対称に配置されている。
【0030】
先ず、図3に示されるように、下層である第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44が、コア24における周方向の一方側である矢印R1側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0031】
つまり、一方の第一層の第一巻線巻回部41は、「9」番〜「12」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第一層の第一巻線巻回部41は、「18」番〜「3」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0032】
また、一方の第二層の第一巻線巻回部42は、一方の第一層の第一巻線巻回部41に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「10」番〜「13」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第二層の第一巻線巻回部42は、他方の第一層の第一巻線巻回部41に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「1」番〜「4」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0033】
また、一方の第三層の第一巻線巻回部43は、一方の第二層の第一巻線巻回部42に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「11」番〜「14」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第三層の第一巻線巻回部43は、他方の第二層の第一巻線巻回部42に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「2」番〜「5」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0034】
また、一方の第四層の第一巻線巻回部44は、一方の第三層の第一巻線巻回部43に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「12」番〜「15」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第四層の第一巻線巻回部44は、他方の第三層の第一巻線巻回部43に対して矢印R1側へ1スロットずれた状態で、「3」番〜「6」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0035】
また、このとき、第一層から第三層の第一巻線巻回部43は、下層から上層につれて巻き数が減少して断面略台形状を成すように複数巻きに巻回される。さらに、第一層から第三層の第一巻線巻回部43の各端部は、V字状のスロット39の底部側(コア24の径方向内側)に挿入される。
【0036】
これに対し、一方の第四層の第一巻線巻回部44における矢印R1側の端部は、「15」番のティース38の側面に該ティース38の基端側から先端側に亘って平積みされる(つまり、「15」番のティース38の基端側から先端側に亘って巻き数が略一定とされて断面略長方形状とされる)。また、一方の第四層の第一巻線巻回部44における矢印R2側の端部は、一方の第三層の第一巻線巻回部43よりもコア24の径方向外側において「12」番のティース38の側面に平積みされる。
【0037】
同様に、他方の第四層の第一巻線巻回部44における矢印R1側の端部は、「6」番のティース38の側面に該ティース38の基端側から先端側に亘って平積みされ、他方の第四層の第一巻線巻回部44における矢印R2側の端部は、他方の第三層の第一巻線巻回部43よりもコア24の径方向外側において「3」番のティース38の側面に平積みされる(以上、第一工程)。
【0038】
続いて、図4に示されるように、上層である第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49が、複数の第一巻線巻回部41〜44のうちの最終層である第四層の第一巻線巻回部44における矢印R2側の端部が挿入されたスロット39を巻き始めとして、コア24における周方向の他方側である矢印R2側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0039】
つまり、一方の第五層の第二巻線巻回部45は、「11」番〜「8」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第五層の第二巻線巻回部45は、「2」番〜「17」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0040】
また、一方の第六層の第二巻線巻回部46は、一方の第五層の第二巻線巻回部45に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「10」番〜「7」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第六層の第二巻線巻回部46は、他方の第五層の第二巻線巻回部45に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「1」番〜「16」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0041】
また、一方の第七層の第二巻線巻回部47は、一方の第六層の第二巻線巻回部46に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「9」番〜「6」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第七層の第二巻線巻回部47は、他方の第六層の第二巻線巻回部46に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「18」番〜「15」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0042】
また、一方の第八層の第二巻線巻回部48は、一方の第七層の第二巻線巻回部47に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「8」番〜「5」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第八層の第二巻線巻回部48は、他方の第七層の第二巻線巻回部47に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「17」番〜「14」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0043】
また、一方の第九層の第二巻線巻回部49は、一方の第八層の第二巻線巻回部48に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「7」番〜「4」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回され、他方の第九層の第二巻線巻回部49は、他方の第八層の第二巻線巻回部48に対して矢印R2側へ1スロットずれた状態で、「16」番〜「13」番の4本のティース38に亘って複数巻きに巻回される。
【0044】
また、このとき、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、下層から上層につれて巻き数が減少して断面略台形状を成すように複数巻きに巻回される。また、一方の第五層の第二巻線巻回部45における矢印R1側の端部は、一方の第三層の第一巻線巻回部43よりもコア24の径方向外側において「11」番と「12」番のティース38間のスロット39における矢印R2側(「11」番のティース38側)のスペースに挿入される。また、この一方の第五層の第二巻線巻回部45における矢印R2側の端部は、「7」番と「8」番のティース38間のスロット39に挿入される。他方の第五層の第二巻線巻回部45も、一方の第五層の第二巻線巻回部45と同様に、その両端部は、「2」番と「3」番のティース38間のスロット39、「16」番と「17」番のティース38間のスロット39にそれぞれ挿入される。
【0045】
また、一方の第六層の第二巻線巻回部46における矢印R1側の端部は、一方の第五層の第二巻線巻回部45よりもコア24の径方向外側において、「10」番と「11」番のティース38間のスロット39に挿入される。また、一方の第六層の第二巻線巻回部46における矢印R2側の端部は、「6」番と「7」番のティース38間のスロット39における矢印R1側(「7」番のティース38側)のスペースに挿入される。他方の第六層の第二巻線巻回部46も、一方の第六層の第二巻線巻回部46と同様に、その両端部は、「1」番と「2」番のティース38間のスロット39、「15」番と「16」番のティース38間のスロット39にそれぞれ挿入される。
【0046】
また、一方の第七層の第二巻線巻回部47における矢印R1側の端部は、一方の第六層の第二巻線巻回部46よりもコア24の径方向外側において、「9」番と「10」番のティース38間のスロット39に挿入される。また、一方の第七層の第二巻線巻回部47における矢印R2側の端部は、他の第三層の第一巻線巻回部43よりも径方向外側において、「5」番と「6」番のティース38間のスロット39に挿入される。他方の第七層の第二巻線巻回部47も、一方の第七層の第二巻線巻回部47と同様に、その両端部は、「1」番と「18」番のティース38間のスロット39、「14」番と「15」番のティース38間のスロット39にそれぞれ挿入される。
【0047】
また、一方の第八層の第二巻線巻回部48における矢印R1側の端部は、一方の第七層の第二巻線巻回部47よりもコア24の径方向外側において、「8」番と「9」番のティース38間のスロット39に挿入される。また、一方の第八層の第二巻線巻回部48における矢印R2側の端部は、他の第二層の第一巻線巻回部42よりもコア24の径方向外側において、「4」番と「5」番のティース38間のスロット39に挿入される。他方の第八層の第二巻線巻回部48も、一方の第八層の第二巻線巻回部48と同様に、その両端部は、「17」番と「18」番のティース38間のスロット39、「13」番と「14」番のティース38間のスロット39にそれぞれ挿入される。
【0048】
また、一方の第九層の第二巻線巻回部49における矢印R1側の端部は、一方の第八層の第二巻線巻回部48よりもコア24の径方向外側において、「7」番と「8」番のティース38間のスロット39に挿入される。また、一方の第九層の第二巻線巻回部49における矢印R2側の端部は、他方の第一層の第一巻線巻回部41よりもコア24の径方向外側において、「3」番と「4」番のティース38間のスロット39に挿入される。他方の第九層の第二巻線巻回部49も、一方の第九層の第二巻線巻回部49と同様に、その両端部は、「16」番と「17」番のティース38間のスロット39、「12」番と「13」番のティース38間のスロット39にそれぞれ挿入される。
【0049】
このように、上層である第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、下層である第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44が巻回された後に残されたスロット39内のスペースに効率良く挿入されている(以上、第二工程)。
【0050】
また、図5の上図に示されるように、上述の下層である第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44は、それぞれ対応する4本のティース38に締り方向に巻回される。つまり、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44は、その両端部から延びる一対の接続線52が互いに交差するようにそれぞれ対応する4本のティース38に巻回される。このとき、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44は、フライヤが正回転(矢印R3方向に回転)することで巻回される。
【0051】
また、このとき、一方の第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44は、整流子22における「1」番から「5」番のセグメント23(結線爪)にフッキングされる。このフッキングの方向Fは、インデックス方向I(電機子10の回転方向)と反対の方向とされている。さらに、「5」番のセグメント23と、「11」番のセグメント23とは、短絡線54によって接続され、「2」番のセグメント23と、「11」番のセグメント23とは、短絡線56によって接続される。他方の第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44は、一方の第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44に対して整流子22の軸周りに180度回転した位置で整流子22と接続される。
【0052】
そして、巻線26が一旦切断された後に、図5の下図に示されるように、フライヤが逆回転(矢印R4方向に回転)されることで、上層である第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49が、それぞれ対応する4本のティース38に締り方向に巻回される。つまり、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、その両端部から延びる一対の接続線62が互いに交差するようにそれぞれ対応する4本のティース38に巻回される。
【0053】
また、このとき、一方の第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、整流子22における「18」番から「14」番のセグメント23にフッキングされる。このフッキングの方向Fは、インデックス方向I(電機子10の回転方向)と反対の方向とされている。また、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44から延びる巻き始めの端末部63と、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49から延びる巻き終わりの端末部64とは、共通の「1」番のセグメント23にフッキングされる。さらに、「10」番のセグメント23と、「1」番のセグメント23とは、短絡線66によって接続される。他方の第五層から第九層の第一巻線巻回部41〜44は、一方の第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49に対して整流子22の軸周りに180度回転した位置で整流子22と接続される。
【0054】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0055】
先ず、本発明の一実施形態の作用及び効果を明確にするために、比較例について説明する。図8に示される比較例に係る電機子70は、コア24と、第一層から第九層の巻線巻回部71〜79を備えている。コア24は、上述の本実施形態と同様の構成とされている。複数の巻線巻回部71〜79は、図9図10に示されるように、コア24における周方向の一方側である矢印R1側へ1スロットずつずれながら、それぞれ対応する4本のティース38に亘って複数巻きに巻回されている。
【0056】
しかしながら、この比較例に係る電機子70では、図10に示されるように、第五層の巻線巻回部75を巻回した段階で、この第五層の巻線巻回部75によって、「12」番と「13」番のティース38間のスロット39、及び、「3」番と「4」番のティース38間のスロット39がほぼ埋まってしまうため、第七層以降の巻線巻回部77〜79をコア24の大外で巻回する必要がある。このため、第九層の巻線巻回部79が挿入されるスロット39においては浅い位置で第九層の巻線巻回部79が巻回されてしまうので、巻線26の占積率を向上させることが困難になる。
【0057】
これに対し、本発明の一実施形態によれば、図4に示されるように、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、複数の第一巻線巻回部41〜44のうち最終層である第四層の第一巻線巻回部44における矢印R2側の端部が挿入されたスロット39を巻き始めとして、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44とは逆の方向に1スロットずつずれながら、それぞれ対応する4本のティース38に巻回されている。
【0058】
また、一方の第四層の巻線巻回部における矢印R1側の端部は、「15」番のティース38の側面に該ティース38の基端側から先端側に亘って平積みされており、他方の第四層の巻線巻回部における矢印R1側の端部は、「6」番のティース38の側面に該ティース38の基端側から先端側に亘って平積みされている。そして、この第四層の第一巻線巻回部44における矢印R1側の端部が挿入されたスロット39では、平積みにより矢印R2側にスペースが確保されており、このスペースに第六層の第二巻線巻回部46における矢印R2側の端部が配置されることで、第九層の第二巻線巻回部49を配置するためのスペースが確保されている。これにより、何れかのスロット39において浅い位置で巻線巻回部が巻回されてしまうことを抑制することができるので、巻線26の占積率を向上させることができる。
【0059】
しかも、図5に示されるように、複数の第一巻線巻回部41〜44及び複数の第二巻線巻回部45〜49は、それぞれ対応する4本のティース38に締り方向に巻回されている。従って、巻線の巻回時又は巻回後に第一巻線巻回部41〜44及び第二巻線巻回部45〜49の緩みを抑制することができる。
【0060】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0061】
上記実施形態において、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44及び第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、それぞれ対応する4本のティース38に締り方向に巻回されていた。しかしながら、図6に示されるように、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49は、それぞれ対応する4本のティース38に緩み方向に、すなわち、その両端部から延びる一対の接続線62が互いに反対方向に向かうように(交差しないように)、それぞれ対応する4本のティース38に巻回されても良い。
【0062】
このように構成されていると、第一巻線巻回部41〜44が挿入されたスロット39では、その開口両端部にスペースを確保することができる。そして、第二巻線巻回部45〜49は、上述のスペースを利用しながら、それぞれ対応する4本のティース38に緩み方向に巻回される。従って、第一巻線巻回部41〜44が挿入されたスロット39における開口両端部において、第一巻線巻回部41〜44と第二巻線巻回部45〜49との干渉を抑制することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、図7に示されるように、第一層から第四層の第一巻線巻回部41〜44が、それぞれ対応する4本のティース38に緩み方向に巻回され、第五層から第九層の第二巻線巻回部45〜49が、それぞれ対応する4本のティース38に締り方向に巻回されていても良い。
【0064】
このように構成されていると、上層である第二巻線巻回部45〜49により下層である第一巻線巻回部41〜44を締め付けることができるので、第一巻線巻回部41〜44の緩みを抑制することができる。
【0065】
また、上記実施形態において、電機子10は、18本のティースを有していたが、その他の数のティースを有していても良い。つまり、回転電機Mは、4極18スロット以外のモータでも良い。そして、複数の第一巻線巻回部41〜44及び第二巻線巻回部45〜49は、それぞれ対応する少なくとも2本のティースに亘って複数巻きに巻回されても良い。
【0066】
また、電機子10は、複数の第一巻線巻回部41〜44及び第二巻線巻回部45〜49を備えていたが、これらに加えて、複数の第三巻線巻回部を備えていても良い。
【0067】
また、回転電機Mは、ブラシ付き直流モータとされていたが、ブラシレスモータとされても良い。そして、上記実施形態は、ブラシレスモータの電機子に適用されても良い。
【0068】
なお、上記複数の変形例のうち、組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされても良い。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10…電機子、12…固定子、14…フロントハウジング、16…エンドハウジング、18…ブラシ装置、20…シャフト、22…整流子、23…セグメント、24…コア、26…巻線、28…軸受、30…ヨーク、32…マグネット、34…ブラシ、36…環状部、38…ティース、39…スロット、41〜45…第一巻線巻回部、45〜49…第二巻線巻回部、52,62…接続線、54,56,66…短絡線、63,64…端末部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10