特許第6047080号(P6047080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コロナの特許一覧

<>
  • 特許6047080-貯湯タンクの断熱材構造 図000002
  • 特許6047080-貯湯タンクの断熱材構造 図000003
  • 特許6047080-貯湯タンクの断熱材構造 図000004
  • 特許6047080-貯湯タンクの断熱材構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047080
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】貯湯タンクの断熱材構造
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20161212BHJP
   F16L 59/06 20060101ALI20161212BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F24H9/00 E
   F16L59/06
   F24H1/18 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-184621(P2013-184621)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52411(P2015-52411A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】中島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】渡部 史生
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−229027(JP,A)
【文献】 特開2011−163580(JP,A)
【文献】 特開2013−2752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F16L 59/06
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で加熱された温水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクを包囲する外装ケースと、前記貯湯タンクと外装ケースとの間の貯湯タンク側面に対向する空間に前記貯湯タンクの断熱を行う真空断熱材を、前記貯湯タンク上面側と底面側に対向する空間に発泡断熱材備えたものに於いて、前記真空断熱材は心材が表裏2枚からなるフイルム状被覆材の間に心材を配置し、内部を低真空に密封したもので、前記真空断熱材外周で真空断熱材の厚さ方向の略中央には被覆材を溶着する外縁を備え、前記発泡断熱材端部の厚さを真空断熱材の厚さの半分以下とし、発泡断熱材端部から発泡断熱材中央側に傾斜面を設け、前記外縁を粘着テープにて発泡断熱材に固定する貯湯タンクの断熱材構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気温水器やヒートポンプ式給湯機の貯湯タンクの保温、断熱を行う真空断熱材を備えた貯湯タンクの断熱材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものは、断熱性能の向上や器具のコンパクト化のために、その使い勝ってに応じて貯湯タンクの周囲を発泡断熱材や真空断熱材によって保温している。そして、薄くて断熱効果が高い真空断熱材を、貯湯タンクの中央円筒部を覆うようにして使用しているものもある。(特許文献1参照。)
図4で示すように円柱状の貯湯タンク7中央部分の周囲には真空断熱材26を、接続配管等が取り付けられるために形状の複雑な貯湯タンク7上面や底面には発泡断熱材30を使用したものがある。前記真空断熱材26は表裏2枚からなるフイルム状被覆材28の間に心材27を配置し、内部を低真空に密封したもので、前記真空断熱材26外周で真空断熱材の厚さ方向の略中央には被覆材28を溶着する外縁29を備えており、この外縁29を前記発泡断熱材30に粘着テープ33で貼り付けて固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4254902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、発泡断熱材30と真空断熱材26の接合部は円柱状の真空断熱材26の外縁29を発泡断熱材端部31に覆った状態で粘着テープ33にて固定するために、前記の外縁29は2回折り曲げられることで、取付作業の効率が低下するものだった。
又、真空断熱材26は元々板状のものを円柱状に巻いて使用するために、取付作業によって外縁29が円周方向に引っ張られるために外縁29にしわが発生しやすく、このしわが原因で発泡断熱材30と真空断熱材26の間に隙間が生じ断熱性能が低下するという問題が有った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特にその構成を、加熱手段で加熱された温水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンクを包囲する外装ケースと、前記貯湯タンクと外装ケースとの間の貯湯タンク側面に対向する空間に前記貯湯タンクの断熱を行う真空断熱材を、前記貯湯タンク上面側と底面側に対向する空間に発泡断熱材備えたものに於いて、前記真空断熱材は心材が表裏2枚からなるフイルム状被覆材の間に心材を配置し、内部を低真空に密封したもので、前記真空断熱材外周で真空断熱材の厚さ方向の略中央には被覆材を溶着する外縁を備え、前記発泡断熱材端部の厚さを真空断熱材の厚さの半分以下とし、発泡断熱材端部から発泡断熱材中央側に傾斜面を設け、前記外縁を粘着テープにて発泡断熱材に固定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のようにこの発明によれば、破損し易い真空断熱材を外縁の折り曲げ作業をすることなく簡単に発泡断熱材に粘着テープで固定できるので、作業効率を向上させることができる。また、真空断熱材の外縁にしわが発生しないので、発泡断熱材と真空断熱材の間に隙間が発生しないのでより高い断熱性能を達成でき、長時間に渡って貯湯タンク内の湯水を高温に保持することができ、極めて使用勝手が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明の断熱構造が施される一実施形態を示す貯湯式給湯機の概略構成図。
図2】貯湯タンクの断熱構造を示す説明図。
図3】同要部の拡大断面図。
図4】従来例の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は貯湯タンクユニットを構成する外装ケース、2はヒートポンプユニットよりなる加熱手段、3は給湯栓、4はリモートコントローラ、5は浴槽、6は電源である。
【0009】
前記外装ケース1内には、湯水を貯湯する貯湯タンク7と、貯湯タンク7の上部に接続された出湯管8と、貯湯タンク7の下部に接続された給水管9と、出湯管8からの高温水と給水管9から分岐されたバイパス管10からの低温水とを混合するミキシング弁11と、ミキシング弁11の下流に接続された給湯管12と、給湯管12に設けられた給湯温度センサ13と、給湯管11に設けられた給湯流量センサ14と、給水管9に設けられた給水温度センサ15と、給湯管12から分岐され浴槽5に接続された湯張り管16と、この湯張り管16の開閉を行う湯張り弁17と、湯張り管16を流れる流量を積算する湯張り流量センサ18と、出湯管8から分岐して接続された貯湯タンク7の過圧を逃す過圧逃し弁19と、給水管9に設けられた給水圧を減圧する減圧弁20と、貯湯タンク7の側面上下方向に複数設けられた貯湯温度センサ21と、この外装ケース1内の各種機器の制御を行うマイクロコンピュータを主に構成される給湯制御部22と、貯湯タンク7と加熱手段2とを接続して湯水を循環させるヒーポン往き管23とヒーポン戻り管24からなる加熱循環回路25とを備えて構成されている。
【0010】
26は貯湯タンク7と外装ケース1との間で、該貯湯タンク7の外郭中央のほぼ全面を覆う真空密閉された真空断熱材で、心材27の全周を大きめの透明のフィルムからなる被覆材28で覆われている。前記真空断熱材26は表裏2枚からなるフイルム状被覆材28の間に前記心材27を配置し、内部を低真空に密封した後、真空断熱材26外周で真空断熱材26の厚さ方向の略中央には被覆材28を溶着する外縁29を備えている。
【0011】
30は発泡断熱材で、接続配管等が取り付けられるために形状の複雑な貯湯タンク7の上面や底面を覆って外装ケース1間に設けられる。前記発泡断熱材30の端部31は前記真空断熱材26との接続を簡単で確実にするために、その厚さが前記真空断熱材26の外縁29の位置に合わせて前記真空断熱材26の厚さの1/2以下に設け、前記端部31から発泡断熱材30の中央側に向けて傾斜面32を備えたので、真空断熱材26の外縁29をあまり曲げることなくスムーズに傾斜面32に粘着テープ33で貼り付けて固定することができるものである。このように破損し易い真空断熱材26を外縁29の折り曲げ作業をすることなく簡単に発泡断熱材30に粘着テープ33で固定できるので、作業効率を向上させることができる。また、真空断熱材26の外縁29にしわが発生しないので、発泡断熱材30と真空断熱材26の間に隙間が発生しないのでより高い断熱性能を達成でき、長時間に渡って貯湯タンク7内の湯水を高温に保持することができる。
【0012】
前記加熱手段2は、二酸化炭素冷媒を圧縮するコンプレッサー34と、凝縮器としての冷媒水熱交換器35と、減圧器36と、蒸発器としての空気熱交換器37よりなるヒートポンプ回路38と、空気熱交換器37に送風する送風機39と、加熱循環回路25途中に設けられた能力可変の循環ポンプ40と、加熱循環回路25の冷媒水熱交換器35入口側に設けられ、冷媒水熱交換器35に流入する湯水の温度を検出する熱交入口温度センサ41と、加熱循環回路25の冷媒水熱交換器35出口側に設けられ、冷媒水熱交換器35から流出する湯水の温度を検出する熱交出口温度センサ42と、この加熱手段2の制御を行うマイクロコンピュータを主に構成される加熱制御部43とを備えて構成されている。
【0013】
ここで、前記電源6は時間帯別電灯であり、夜間(ここでは23時から翌7時まで)が割安な電力料金設定となっているもので、この割安な夜間電力を用いて夜間に一日に必要な貯湯熱量を沸かし上げて使用するものであり、又この時間帯別電灯では昼間(7時から23時まで)にも電力は供給され、残湯量が少なくなったときに追加の沸き増しが行われるものである。なお、前記電源6は給湯制御部22に接続され、この給湯制御部22からリモートコントローラ4および加熱制御部43に有線にて通信信号が重畳されて電力供給されるものである。
【0014】
そして、夜間時間帯になると前記給湯制御部22が翌日に必要な貯湯熱量を演算し、この目標となる貯湯熱量を夜間時間帯の終了時までに沸き上げるよう加熱制御部43に指示してヒートポンプ回路38を作動させ、加熱循環回路25の循環ポンプ40を駆動開始する。そして、循環ポンプ40の駆動により貯湯タンク7下部から取り出された湯水がヒーポン往き管23を通り加熱手段2の冷媒水熱交換器35に流入して加熱され、ヒーポン戻り管24を介して貯湯タンク7の上部に戻されることにより高温の湯が貯湯される。
【0015】
更に貯湯タンク7の側面に設けられた貯湯温度センサ21が所定の量の高温水が貯湯されたことを検出するか、又は、熱交入口温度センサ41が所定温度以上を検出すると、給湯制御部22が加熱制御部43へ加熱動作の停止を指令し、ヒートポンプ回路38と循環ポンプ40の作動が停止され、夜間時間帯の終了時までに貯湯動作を終了するものである。
【0016】
なお、ここで貯湯タンク7内に貯湯される熱量は給湯制御部22により、過去数日分の給湯負荷から適切と思われる熱量を目標貯湯熱量として算出されるもので、貯湯される湯水の温度は季節(又は給水温度センサ15で検出する給水温度)及び目標貯湯熱量の大小によって60℃〜90℃の範囲で変動するものである。
【0017】
前記リモートコントローラ4には、給湯設定温度を設定する温度設定スイッチ44、浴槽5への湯張りを指示する湯張りスイッチ45、湯張り量を設定する湯張り量設定スイッチ46、及び給湯可能な残時間を表示させる残時間表示スイッチ47とを有した操作部48と、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部49と、これら操作部48及び表示部49を制御すると共に、前記給湯制御部22と通信を行うマイクロコンピュータを主に構成されたリモコン制御部50を備えており、通常運転時は前記表示部49に操作部48で設定された給湯設定温度や時刻情報及び貯湯温度センサ21で検知する残り貯湯量等が表示されるものである。なお、前記表示部49はドットマトリクス型の液晶表示部としても良い。
【0018】
次に給湯栓3を開くと、給水管9からの給水圧により貯湯タンク7上部の高温水が出湯管8に押し出され、給湯制御部22により制御されるミキシング弁11にて、バイパス管10の低温水と給湯温度センサ13の検出する温度が、前記リモートコントローラ4の操作部48で設定された給湯設定温度になるように混合されて、給湯管12を介して給湯されるものである。
【0019】
もしも給湯量が通常よりも多くなってしまい、昼間電力時間帯にて貯湯温度センサ21で検出する残り貯湯量が少なくなったことを給湯制御部22が検知し、貯湯タンク7内に貯湯された湯の湯切れが予想される場合は、その時点にて昼間電力を利用して必要な熱量の沸き増しが行われるものである。
【0020】
次に浴槽5に湯張りを行う際は、リモートコントローラ4の湯張りスイッチ45が操作されると、給湯制御部22が湯張り弁17を開いて湯張りを開始し、湯張りを開始してからの積算流量が湯張り量に達したことを検出すると湯張り弁17を閉じて湯張りを完了するものである。
【0021】
次に真空断熱材26の組み付けは、まず貯湯タンク7の上面と底面に発泡断熱材30を取り付けた後、板状の真空断熱材26を貯湯タンク7の中央に巻いて、真空断熱材26の外縁29をあまり曲げることなくスムーズに発泡断熱材30の傾斜面32に粘着テープ33で貼り付けて固定することができるものである。
【0022】
この真空断熱材26の組み付けによって、破損し易い真空断熱材26を外縁29を強引な折り曲げ作業をすることなく簡単に発泡断熱材30に粘着テープ33で固定できるので、作業効率を向上させることができる。また、真空断熱材26の外縁29にしわが発生しないので、発泡断熱材30と真空断熱材26の間に隙間が発生することを防止し、より高い断熱性能を達成でき、長時間に渡って貯湯タンク内の湯水を高温に保持することができ、極めて使用勝手が良く、常に良好な貯湯が得られるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 外装ケース
2 加熱手段
7 貯湯タンク
26 真空断熱材
28 被覆材
29 外縁
30 発泡断熱材
31 端部
32 傾斜面
33 粘着テープ
図1
図2
図3
図4