(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047082
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】患者監視システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
A61B5/00 102E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-190580(P2013-190580)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54193(P2015-54193A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】板橋 忍
(72)【発明者】
【氏名】小谷 裕子
【審査官】
増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−289676(JP,A)
【文献】
特開2005−046320(JP,A)
【文献】
特開2009−233042(JP,A)
【文献】
特開平09−294784(JP,A)
【文献】
特開2005−128967(JP,A)
【文献】
特開2012−071003(JP,A)
【文献】
米国特許第07612679(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の容態を映像で監視する患者監視システムにおいて、
前記患者の映像を撮影する複数のカメラと、
該複数のカメラで撮影した映像をネットワーク回線を介して受信し、受信した映像を処理する表示処理装置と、
該表示処理装置で処理された複数のカメラの映像を集中して表示するディスプレイと、
前記表示処理装置に対し前記ディスプレイに表示する映像表示状態を指示する操作指示装置とを備え、
該操作指示装置は、前記複数のカメラの映像から前記ディスプレイに表示するカメラ映像とその表示位置を選択して、表示指示信号として前記表示処理装置へ送信することを特徴とする患者監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の患者監視システムにおいて、
前記ディスプレイの各カメラ映像には、各映像に関連する文字情報を重畳して表示し、
該文字情報は前記操作指示装置にて入力し、表示指示信号として前記表示処理装置へ送信することを特徴とする患者監視システム。
【請求項3】
請求項1記載の患者監視システムにおいて、
前記表示処理装置は、受信したカメラ映像内の患者映像の時間的な変化量を検出する映像解析部と、前記ディスプレイに対し前記複数のカメラの映像を分割して表示させる表示処理部と、を有し、
前記患者映像の時間的な変化量が所定の閾値以上の時、前記表示処理部を介して前記ディスプレイ内の該当患者の映像上に警告文字を表示することを特徴とする患者監視システム。
【請求項4】
請求項3記載の患者監視システムにおいて、
前記映像解析部は、患者の身体を複数の部位に分け、各部位の映像の変化量を各部位の閾値と比較することを特徴とする患者監視システム。
【請求項5】
請求項1記載の患者監視システムにおいて、
前記患者の音声を集音する複数の音声マイクをさらに備え、
集音した患者の音声を前記表示処理装置を介して前記ディスプレイのスピーカから出力することを特徴とする患者監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等における患者の容態を監視する患者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等においては、複数の患者の健康状態を集中して監視する必要がある。これに関する技術として、特許文献1には、患者の健康状態を評価して、その患者についての健康状態インジケータを生成して表示装置に表示するシステムが開示され、健康状態インジケータは、視覚的に伝えるように構成されている視覚的勾配を有することが記載されている。また特許文献2には、患者の生体情報を個別に検出するバイメタルセンサを病室に設置して、各バイメタルセンサのデータから各患者の安否情報を判断してモニターに集中表示する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−291606号公報
【特許文献2】特開2010−284245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
救命救急センターなどに設置される集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)では、各患者の健康状態(測定値)だけでなく容態(姿勢)や顔色について、患者から離れた場所(例えばスタッフステーション)で、スタッフが集中して監視できることが望ましい。前記特許文献1では、患者の健康状態(例えば心拍数、血圧、体温などの測定値)を視覚的に伝えるために、健康状態インジケータを生成して表示する構成としている。また前記特許文献2では、患者の呼吸数を圧力検知バイメタルセンサで検出して安否情報として伝える構成としている。しかしこれらは患者の健康状態の測定値であって、患者の容態(ベッド上の姿勢)や顔色を直接視覚的に伝える情報ではない。特にICUにおいては、患者の容態が急変する恐れがあり(暴れる、ベッドから転落するなど)、スタッフはこれをいち早く検知して迅速に処置を行う必要がある。前記特許文献1,2の構成では、これに対処することができない。
【0005】
本発明の目的は、患者の容態や顔色の情報を直接視覚的に伝えることのできる患者監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。その一例を挙げるならば、本発明の患者監視システムは、患者の映像を撮影する複数のカメラと、複数のカメラで撮影した映像をネットワーク回線を介して受信し、受信した映像を処理する表示処理装置と、表示処理装置で処理された複数のカメラの映像を集中して表示するディスプレイと、表示処理装置に対しディスプレイに表示する映像表示状態を指示する操作指示装置とを備え、操作指示装置は、複数のカメラの映像からディスプレイに表示するカメラ映像とその表示位置を選択して、表示指示信号として表示処理装置へ送信する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スタッフはスタッフステーションにいながら複数の患者の容態を映像により集中監視し、容態が急変した患者に対し迅速に処置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による患者監視システムの一実施例を示す全体構成図。
【
図2】操作指示装置130による映像表示割当を行う画面例を示す図。
【
図3】操作指示装置130による表示文字入力を行う画面例を示す図。
【
図4】表示処理装置120における患者映像の解析手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明による患者監視システムの一実施例を示す全体構成図である。患者監視システム100は、スタッフステーションに設置されたディスプレイ110と、表示処理装置120と、操作指示装置130と、各病床150a〜150pに設置されたカメラ151a〜151pと、音声マイク152a〜152pを有する。
【0010】
カメラ151a〜151pでは監視対象の患者153a〜153pの映像(容態や顔色)を撮影する。音声マイク152a〜152pでは患者153a〜153pの音声を集音する。カメラ151a〜151pと音声マイク152a〜152pで取得した映像と音声信号は適宜圧縮処理され、患者の映像・音声データとして、ネットワーク回線160を介して表示処理装置120と操作指示装置130へ送信する。
【0011】
表示処理装置120において、映像受信部124は送信された映像・音声データを受信し、適宜復号処理を行う。表示処理部121はディスプレイ110に対し、受信した各カメラ映像を分割して表示させる。ディスプレイ110には、各カメラ映像111a〜111pと各映像に関連する文字情報(ベッド番号など)112a〜112pを表示し、スタッフ140はこれを監視する。
【0012】
この際表示処理装置120の指示受信部123は、操作指示装置130からの表示指示信号(映像分割数、映像表示位置、映像に関連する文字情報)を受信し、これに従って表示処理部121は表示条件を設定する。このとき、音声マイク152a〜152pから集音した音声をディスプレイ110のスピーカ(図示せず)から出力させることもできる。
【0013】
映像解析部122は、受信したカメラ映像内の各患者映像の時間的な変化量(すなわち患者の身体の動き量)を検出する。変化量が閾値以上の場合、表示処理部121を介してディスプレイ110の該当患者の映像上に警告文字(Warning)113を表示する。これにより患者の容態に変化があることをスタッフ140へ通知する。
図1の例では、ベッド16の患者がベッドから転落する恐れがあり、警告文字を表示している状態である。
【0014】
操作指示装置130において、映像受信部132はネットワーク回線160を介してカメラ151a〜151pから送信された映像データを受信し、適宜復号処理を行う。表示設定画面131は受信した全部のカメラ映像を表示するとともに、スタッフ140が操作してディスプレイ110に表示する映像の選択、画面分割数や表示位置を指示する。また、カメラ映像上に重畳して表示する文字情報(ベッド番号など)112a〜112pを入力する。これらの表示指示信号は、ネットワーク回線160を介し表示処理装置120に送信する。
【0015】
この構成によれば、スタッフ140は、スタッフステーションにいながらディスプレイ110に表示されたカメラ映像を監視することで、監視対象の患者153a〜153pの容態や顔色を集中して把握することができる。
【0016】
図2は、操作指示装置130による映像表示割当を行う画面例を示す図である。ディスプレイ110に表示するカメラ映像を割り当てるため、スタッフ140は表示設定画面131を映像表示割当画面200に切り替える。映像表示割当画面200では、画面分割数選択201、表示位置選択202、表示映像選択205、音声選択207などの操作を行う。このうち表示映像選択205の画面には、映像受信部132にて受信した全部のカメラ映像を表示している。
【0017】
まず画面分割数選択201では、ディスプレイ110に表示するカメラ映像の分割数を選択する。例えば選択肢を、分割無し、4分割、9分割、16分割とし、ここでは16分割を選択したものとする。
【0018】
次に表示位置選択202では、ディスプレイ110に表示するカメラ映像の表示位置を選択する。この画面では、前記選択した分割数(16分割)に従い、No.1〜No.16の表示位置が設定される。この中から、例えばNo.1の表示位置を選択したとする。続いて表示映像選択205では、前記選択した表示位置(No.1)に対して割り当てる映像を全部のカメラ映像から選択する。例えば左上隅の映像(ベッド1)を選択したとする。その結果、ベッド1の映像がNo.1の位置に表示される。
【0019】
この映像表示割当は、マウスを使用したドラッグ&ドロップでも可能である。表示映像選択205の映像から所望の映像210を選択し、表示位置選択202の所望位置にドラッグ&ドロップ操作することで、簡単に割り当てを行うことができる。
【0020】
表示解除ボタン203は、特定の表示位置の映像表示割当を解除するためのものであり、全解除ボタン204は、全ての表示位置の映像表示割当を解除するためのものである。いずれかの映像表示割当を行うと表示指示ボタン206が活性化し、表示指示ボタン206をクリックすると表示指示信号(映像分割数、映像表示位置)が表示処理装置120へ送信され、ディスプレイ110の表示画面に反映される。
【0021】
音声選択ボタン207は、マイクで集音した音声を出力させるか否かを選択する。例えば、通常は非選択(オフ)にしておき、スタッフ140がディスプレイ110上の患者の映像に異変を感じた時に選択(オン)に切り替える。これにより、患者の容態の変化を映像だけでなく音声(叫び声)からも判断することができる。
【0022】
このような映像割当機能により、患者数に応じてディスプレイ110の画面分割数を変更する(例えば、16分割から4分割に変更する)ことで、各患者の映像を拡大して表示することができ、患者の容態、顔色の監視をより精密に行なうことができる。
【0023】
図3は、操作指示装置130による表示文字入力を行う画面例を示す図である。ディスプレイ110のカメラ映像に重畳して表示する文字を入力するため、スタッフ140は表示設定画面131を表示文字入力画面300に切り替える。表示文字入力画面300は、各カメラ151a〜151pに対するカメラID301、設置場所302、表示文字入力303の欄で構成する。
【0024】
スタッフ140は、各カメラ映像に重畳して表示したい文字列を表示文字入力303の欄に入力する。この文字列は、ベッド番号、患者の名前、医者の名前、特記事項などのカメラ映像に関連する任意の情報である。この例では「ベッド番号」を入力している。表示文字入力303の欄に文字を入力後、表示指示ボタン304をクリックすると、表示文字の指示信号が表示処理装置120へ送信され、ディスプレイ110の表示画面に反映される。
【0025】
このように、各患者映像上に重畳して表示する文字を任意に設定することができ、例えば患者を識別する文字列を表示させることで患者の取り違えを防止できる。
【0026】
図4は、表示処理装置120における患者映像の解析手順を示すフローチャートである。映像解析部122は各患者の映像について、所定時間(n秒)間隔で映像解析を行う。
【0027】
S401では、受信した映像データのうち患者の上部(頭部)の映像データを取得し、所定時間(n秒)前の映像データと比較する。この場合、患者の容態変化を捉えるために、nは数秒〜数分程度とするのが好ましい。S402では、映像の変化量(頭部の動き量でも良い)を算出し、変化量が閾値m1以上かどうかを判定する。閾値m1以上の場合はS407へ進み、閾値m1未満の場合はS403へ進む。
【0028】
S403では、受信した映像データのうち患者の中部(腹部)の映像データを取得し、所定時間(n秒)前の映像データと比較する。S404では、映像の変化量(動き量)を算出し、変化量が閾値m2以上かどうかを判定する。閾値m2以上の場合はS407へ進み、閾値m2未満の場合はS405へ進む。
【0029】
S405では、受信した映像データのうち患者の下部(足部)の映像データを取得し、所定時間(n秒)前の映像データと比較する。S406では、映像の変化量(動き量)を算出し、変化量が閾値m3以上かどうかを判定する。閾値m3以上の場合はS407へ進み、閾値m3未満の場合は終了する(次の映像の解析を行う)。
【0030】
S407では、表示処理部121はディスプレイ110内の該当患者のカメラ映像上に警告文字113を重ねて表示する。このとき、合わせて警告音を発するようにしても良い。
【0031】
上記の解析では、患者映像の変化量を身体の部位に分けて比較しているが、これは、警告を発する変化量の閾値が身体の部位によって異なるからである。例えば、腹部の動きは元々小さいので腹部閾値m2は小さくし、頭部や足部の動きは元々大きいので頭部閾値m1と足部閾値m3は大きくする。これにより、より的確に患者容態の変化を検知することができる。なお、身体の部位のどこに注目するか、また閾値の大きさは適宜決定すればよい。
このように、患者の身体の変化量(動き量)を検出し、変化量が閾値以上のとき自動的に警告を発するので、患者の容態の変化をより確実に検知することができる。
【0032】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100:患者監視システム、
110:ディスプレイ、
111a〜111p:カメラ映像、
112a〜112p:カメラ映像に重畳する文字情報、
113:警告文字、
120:表示処理装置、
121:表示処理部、
122:映像解析部、
123:指示受信部、
124:映像受信部、
130:操作指示装置、
131:表示設定画面、
132:映像受信部、
140:スタッフ、
150a〜150p:病床、
151a〜151p:カメラ、
152a〜152p:音声マイク、
153a〜153p:患者、
160:ネットワーク回線、
200:映像表示割当画面、
201:画面分割数選択、
202:表示位置選択、
205:表示映像選択、
207:音声選択、
300:表示文字入力画面、
303:表示文字入力。