【実施例】
【0196】
以下に本実施形態をより具体的に説明した実施例を例示する。ただし、本発明はその要旨を超えない限りにおいて以下の実施例に限定されるものではない。
【0197】
実施例及び比較例における物性の評価は以下の手順で行った。
<無機化合物粒子のHR−STEM撮影>
(1)0.1gの有機無機複合体と、9.9gのクロロホルム(和光純薬工業株式会社製)をサンプル瓶にはかりとり、そこに回転子を入れた。内容物をスターラーで30分間攪拌した後、30分間超音波処理を施して、サンプル溶液を得た。有機無機複合体がクロロホルムに分散しにくい場合は、適宜、良分散性の溶媒を選択し、クロロホルムの代わりに用いた。
(2)上記サンプル溶液を、グリッド(応研商事株式会社製、「STEM100Cuグリッド」)に滴下し、風乾させて、有機無機複合体の膜(有機無機複合膜)を形成させた。
(3)グリッド上の有機無機複合体を、HR−STEMの透過モードで観察し、撮影を行った。粒子の大きさや形状に応じ、任意の測定倍率を選択した。
<無機化合物粒子の円形度>
(4)上記(1)〜(3)と同様の方法で撮影されたHR−STEM像を、上記画像解析ソフトによって処理し、無機化合物粒子(粒子の外径)の「円相当径」と「周囲長」を算出した。算出された円相当径及び周囲長に基づき、下記式に従って、粒子200個各々の円形度を求めた。円形度が0.5以上である場合を「A」、円形度が0.5未満の場合を「B」と判定した。
円形度=(円相当径から求めた円周長)/(周囲長) ・・・(10)
ここで、(円相当径から求めた円周長)=(円相当径)×πである。
(5)200個の粒子の円形度のうち、上位5%及び下位5%の数値を除去し、残り90%の平均値を求め、その値を無機化合物粒子の円形度とした。
【0198】
<無機化合物粒子のL/D>
(6)上記(1)〜(3)と同様の方法で撮影されたHR−STEM像を、上記画像解析ソフトによって処理し、粒子200個各々の外径の、「最大長」及び「最小幅」を算出した。
図1は、各粒子の最大長及び最小幅の算出方法を示す模式図である。
図1に示されるように、「最大長」とは、HR−STEM像における粒子の周上の任意の2点間の距離の最大値を指し、「最小幅」とは、粒子が最大長を示す方向に対して垂直な方向における粒子の幅を指す。
(7)求められた最大長L及び最小幅Dを下記式に代入して、粒子200個各々のL/Dを求めた。
L/D=(最大長)/(最小幅) ・・・(11)
(8)200個の粒子のL/Dのうち、上位5%及び下位5%の数値を除去し、残り90%の平均値を求め、その値を無機化合物粒子のL/Dとした。
【0199】
<中空粒子の外殻厚み>
(9)上記(1)〜(3)と同様の方法で撮影されたHR−STEM像を、上記画像解析ソフトによって処理し、中空粒子200個について、各々の中空粒子の内径の円相当径を求めた。本明細書において、「円相当径」とは、粒子の面積と等しい面積を有する円の直径を指す。
(10)200個の粒子の円相当径のうち、上位5%及び下位5%の数値を除去し、残り90%の平均値を求め、その値を「中空粒子の平均内径」とした。
(11)上記で求めた、無機化合物粒子の平均粒径と、中空粒子の平均内径より、中空粒子の外殻厚みを以下の式に従って、算出した。
中空粒子の外殻厚み=(無機化合物粒子の平均粒径−中空粒子の平均内径)/2 ・・・(6)
【0200】
<中空粒子の空洞率>
(12)次いで、上記中空粒子の平均内径から、以下の式に従って、中空粒子の内腔半径aを求めた。
中空粒子の内腔半径a=中空粒子の平均内径/2 ・・・(7)
(13)上記無機化合物粒子の平均粒径から、以下の式に従って、無機化合物粒子の半径bを求めた。
無機化合物粒子の半径b=無機化合物粒子の平均粒径/2 ・・・(8)
(14)上記(12)〜(13)で求めた、中空粒子の内腔半径a、及び、無機化合物粒子の半径bを、以下の式に代入し、無機化合物粒子の空洞率を求めた。
空洞率(%)=(4πa
3/3)/(4πb
3/3)×100 ・・・(9)
【0201】
<無機化合物粒子の屈折率>
無機化合物粒子の屈折率は、標準屈折液(Cargill社製)を使用して、以下の方法により求めた。但し、所望の屈折率の標準屈折液が入手出来ない場合は、屈折率既知の試薬で代用した。
(1)無機化合物粒子の分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させた。
(2)これを120℃の真空乾燥機で乾燥し、粉末にした。
(3)屈折率既知の標準屈折液を、2〜3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合した。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を無機化合物粒子の屈折率とした。
【0202】
<表面改質無機化合物粒子のハロゲン含有量の測定>
表面改質無機化合物粒子のハロゲン含有量を、燃焼処理及びそれに続くイオンクロマトグラフ法により、以下の手順で求めた。
(1)サンプルを酸素気流中で、石英燃焼管を使用して燃焼させ、発生したガスを、吸収液(3%過酸化水素水)に吸収させた。
(2)吸収液を適宜希釈し、吸収液中の臭素イオンと塩素イオンの量を、イオンクロマトグラフ(Daionex社製、「ICS−2000」)で、測定した。
(3)測定された臭素イオン及び塩素イオンの合計量から、表面改質無機化合物の質量に対する、臭素イオン及び塩素イオンの合計量を、ハロゲン含有量として求めた。
【0203】
<ポリマーの比重>
ASTM D792に準じて測定した。
【0204】
<ポリマーの分子量及び分子量の分散度>
ポリマーの分子量及び分子量の分散度を、「分解法」又は「添加法」により求めた。成膜性有機無機複合体が、トルエンに対して易分散の場合は「分解法」で測定を行い、難溶性の場合は「添加法」で測定した。
【0205】
[分解法]
(前処理)
無機化合物粒子に結合したポリマーの分子量測定のための前処理として、以下の手順に従って、有機無機複合体に対してふっ化水素酸処理(以下、「HF処理」という。)を施した。
(1)テフロン(登録商標)製回転子を入れたテフロン(登録商標)製、又は、任意の樹脂製容器に、2mLのトルエン(和光純薬工業株式会社製)と、15mgの相間移動触媒(Aldrich社製、「Alquat336」)を加え、攪拌して、相間移動触媒がトルエンに溶解した溶液を得る。
(2)溶液に有機無機複合体のサンプル200mgを加え、攪拌により溶解させる。
(3)得られた溶液に、更に、2mLのふっ化水素酸(和光純薬工業株式会社製、濃度:46〜48%)を加え、室温で24時間攪拌して、無機化合物粒子からポリマーを分離する。
(4)上記溶液を、炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)の水溶液によって中和する。この時、相分離が困難な場合は、さらにトルエン2mLを加えて遠心分離した溶液を使用してもよい。
【0206】
(分子量測定)
上記前処理で得られたサンプル溶液について、下記の条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定を行った。測定結果から、ポリメタクリル酸メチルスタンダード(創和科学株式会社製)を用いて作成した検量線に基づいて、メインピークのポリメタクリル酸メチル換算の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を求めた。
・装置:東ソー株式会社製、「HLC−8220GPC」
・検出器:RI検出器
・移動相:テトラヒドロフラン
・流量:0.35mL/分
・カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」を2本連結したものを用いた。
・カラム温度:40℃
【0207】
(分子量分布)
ポリメタクリル酸メチル換算の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を以下の式に代入して、ポリマーの分子量分布を求めた。分子量分布が2.31以下である場合を「A」、分子量分布の分散度が2.31を超える場合を「B」と判定した。
分子量分布=Mw/Mn ・・・(12)
【0208】
[添加法]
以下の方法で前処理を行い、「分子量測定」と「分子量分布」は、上述の「分解法」と同様の方法で求めた。
【0209】
(前処理)
以下の手順に従って、無機化合物粒子に結合したポリマーの「分子量」と「分子量分布」を求めた。分子量測定用サンプルとして、実施例とは別に、重合開始剤を添加した状態で有機無機複合体を合成し、重合開始剤の添加により副生するポリマーを測定し、これを無機化合物粒子に結合したポリマーの「分子量」と「分子量分布」とみなした。
(1)分子量測定用サンプルの合成
(1−1)実施例と同様の方法で、有機無機複合体の原料を含む溶液を準備した。
(1−2)上記溶液に、モノマー:重合開始剤=100:(0.01〜0.25)(mol比)となるように、重合開始剤を加えた。重合開始剤は、実施例の重合液中の臭素含有量に対し、約10〜20%の臭素含有量となるように配合した。
・重合開始剤:2−ブロモイソ酪酸エチル(EBIB):Aldrich社製
(1−3)上記溶液に触媒溶液を加え、実施例と同様の方法で、測定用サンプル(有機無機複合体と副生ポリマーの混合物)を重合した。
(1−4)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、静置した。その後、上澄み液を廃棄した。
(1−5)残った沈殿物に、ヘキサンを再び加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に8回繰り返し、残った沈殿物を、実施例と同様の方法で乾燥した。
(2)上記(1)で得られた、分子量測定用サンプル1gに、10mLの溶媒(例えば、MIBK)を加え、24時間攪拌した。
(3)上記溶液に適量のTHFを加え、更に1時間攪拌した溶液を、遠心分離した。
(4)上述の「分解法」と同様の方法で、遠心分離後の上澄み液を測定し、「分子量」と「分子量の分散度」を求めた。
<有機無機複合体の「無機化合物粒子に結合しているポリマー」の量>
(1)サンプル瓶に10gの有機無機複合体をはかりとり、MIBKを加えて100mLとした後、回転子を入れて、内容物をスターラーで24時間攪拌した。
(2)別のサンプル瓶に、10mLの上記溶液をはかりとり、THFを加えて100mLに希釈後、回転子を入れて、内容物をスターラーで、更に24時間攪拌した。
(3)上記溶液を遠沈管に移し、遠心分離機で、6600rpmで30分間処理した。
(4)遠心分離後の上澄み液について、下記の条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定を行い、有機無機複合体におけるフリーポリマーを測定した。測定結果から、ポリメタクリル酸メチルスタンダード(創和科学株式会社製)を用いて作成した検量線に基づいて、メインピークのポリメタクリル酸メチル換算の、ピークトップ分子量(Mp)を求めた。
・装置:東ソー株式会社製、「HLC−8220GPC」
・検出器:RI検出器
・移動相:テトラヒドロフラン
・流量:0.35mL/分
・カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」を2本連結したものを用いた。
・カラム温度:40℃
(5)上記で得られた、Mp>800のピークを、フリーポリマーとして定量した。定量の際には、Mpが最も近い「定量標準物質」を下記から選択して検量線を作成し、定量標準物質換算で、有機無機複合体中のフリーポリマーの量(質量%)を算出した。またピークが複数ある場合は、それらの合計量を求め、フリーポリマーの量(質量%)とした。
(5−1)定量標準物質:ポリメタクリル酸メチル(創和科学株式会社製)
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA850(Mp=860)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA2K(Mp=2,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA7K(Mp=7,500)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA11K(Mp=11,800)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA21K(Mp=20,850)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA30K(Mp=33,500)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA45K(Mp=46,300)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA85K(Mp=87,800)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA110K(Mp=107,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA135K(Mp=130,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA135K(Mp=130,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA190K(Mp=185,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA225K(Mp=240,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA320K(Mp=322,000)」
・ポリメタクリル酸メチル「PMMA680K(Mp=670,000)」
【0210】
(6)有機無機複合体中のポリマー量(無機化合物に結合しているポリマー及びフリーポリマーの量)の測定
熱重量測定装置により、以下の条件で有機無機複合体を加熱したときの質量減量(質量%)をn=3で測定し、その平均値を「有機無機複合体中のポリマー量(無機化合物に結合しているポリマー及びフリーポリマー)」とした。
・装置:株式会社島津製作所、「TGA−50」
・雰囲気:1%酸素含有窒素気流
・試料容器:アルミパン
・温度プログラム:25℃スタート→20℃/分で昇温→500℃に到達→500℃で1時間保持
(7)上記で得られた「フリーポリマーの量(質量%)」と、「有機無機複合体中のポリマー量(無機化合物に結合しているポリマー及びフリーポリマーの量)(質量%)」から、下記式に従って「無機化合物粒子に結合しているポリマーの量(質量%)」を算出した。
無機化合物粒子に結合しているポリマーの量(質量%)=(A−B)/A×100 ・・・(13)
ここで、A:有機無機複合体中のポリマー量(無機化合物に結合しているポリマー及びフリーポリマーの量)(質量%)、B:フリーポリマーの量(質量%)である。
【0211】
<ポリマー中の反応性二重結合量>
ポリマー中の反応性二重結合量は、以下の手順に従って測定した。
(1)ポリマー中の官能基として水酸基を含むモノマー(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)のモル量を、各々のモノマー転化率から求めた。モノマー転化率は、下記の条件でガスクロマトグラフィー(GC)により求めた。
・装置:株式会社島津製作所製、「GC−14B」
・検出器:FID
・カラム温度:50℃→200℃(昇温速度20℃/分)、250℃で保持
・GC注入口温度:230℃
・検出器温度:280℃
・キャリアガス:ヘリウム
(2)官能基として水酸基を含むモノマーと、官能基としてイソシアネート基を含むモノマー(例えば、メタクリル酸2−イソシアネートエチル)の付加反応を行ない、その生成物中に残存する官能基として水酸基を含むモノマーの水酸基量から求めた。水酸基量の測定は、下記の条件で核磁気共鳴装置(NMR)により求めた。
・装置:ブルカー社製、「DPX−400」
・溶媒:N,N−ジメチルホルムアミドの重水素化体
【0212】
<有機無機複合体のTgの測定>
示差走査熱量測定装置(DSC)により、以下の条件で有機無機複合体のTgを求めた。
・装置:PerkinElmer社製、「Diamond DSC」
・温度プログラム:−40℃スタート→20分間保持→20℃/分で昇温→200℃
【0213】
<有機無機複合体のハロゲン含有量の測定>
有機無機複合体のハロゲン含有量は、前述の「表面改質無機酸化物粒子のハロゲン含有量の測定」と同様の方法で求めた。
【0214】
<有機無機複合体の銅含有量の測定>
酸分解及びそれに続くICP発光分析法により、以下の手順で、銅含有量を求めた。
(1)サンプルを、硫酸(和光純薬工業株式会社製)、硝酸(和光純薬工業株式会社製)、フッ化水素酸(和光純薬工業株式会社製)で分解した。
(2)更に、硝酸(1+2)で加温溶解を行った。
(3)上記溶液を希釈し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、「ICPS−8100」)で測定した。
【0215】
<有機無機複合体のフッ素含有量の測定>
燃焼処理及びそれに続くイオンクロマトグラフ法により、以下の手順で、フッ素含有量を求めた。
(1)サンプルを酸素気流下で、石英燃焼管を使用して燃焼させた。このとき、サンプルは必要に応じ、溶解及び/又は希釈してから使用してもよい。
(2)燃焼により発生したガスを、氷冷した吸収液(0.2%NaOH水溶液)に吸収させた。
(3)吸収液を適宜希釈し、吸収液中のフッ素イオンの量を、イオンクロマトグラフ(Daionex社製、「ICS−2000」)で、測定した。測定されたフッ素イオンの量から、有機−無機複合体の質量に対するフッ素イオンの量をフッ素含有量として求めた。
【0216】
<有機無機複合体の無機酸化物含有量の測定>
熱重量測定装置により、以下の条件で有機無機複合体を加熱したときの質量減量を求めた。
・装置:株式会社島津製作所、「TGA−50」
・雰囲気:1%酸素含有窒素気流
・試料容器:アルミパン
・温度プログラム:25℃スタート→20℃/分で昇温→500℃に到達→500℃で1時間保持
【0217】
測定をn=3で行い、それらの平均値を有機−無機複合体の無機酸化物含有量とした。質量%及び体積%の値を下記のように算出した。
(1)質量%
測定された質量減量(質量%)を以下の式に代入し、無機酸化物の含有量(質量%)を算出した。
無機酸化物含有量(質量%)=100−質量減量(質量%)
(2)体積%
(2−1)ポリマーの質量と体積の算出
測定された質量減量(mg)を、ポリマーの質量(mg)と見なし、その値を下記式に代入して、ポリマーの体積(μL)を算出した。
ポリマーの体積(μL)={ポリマーの質量(mg)}/{ポリマーの比重}
(2−2)無機酸化物の質量と体積の算出
測定された質量減量(mg)を下記式に代入して、無機酸化物の質量(mg)を算出した。
無機酸化物の質量(mg)=試料量(mg)−質量減量(mg)
無機酸化物の質量を下記式に代入して、無機酸化物の体積(μL)を算出した。
無機酸化物の体積(μL)={無機酸化物の質量(mg)}/{無機酸化物の密度(g/cm
3)}
(2−3)無機酸化物含有量(体積%)の算出
上記のようにして得られた値を下記式に代入して、無機酸化物含有量(体積%)を算出した。
【0218】
【数1】
【0219】
<コーティング材の作製>
有機無機複合体に、任意の有機溶媒を加え、室温で24時間攪拌処理を行い、有機無機複合体の溶媒分散液を調製した。更に、必要に応じて、光重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤、フリーポリマー等を加えて混合し、コーティング材とした。尚、必要に応じ、超音波処理やエバポレーターによる濃縮処理を加えた。
【0220】
<コーティング材の固形分濃度>
以下の手順で、コーティング材の固形分濃度を求めた。
(1)秤量瓶に、コーティング材をはかりとり、内容物の質量(質量A)を記録した。
(2)内容物の流動性が無くなるまで、窒素気流下で、上記秤量瓶を風乾した。
(3)上記秤量瓶を、105℃、真空下で、24時間乾燥させた後、デシケータ内で室温まで冷却した。
(4)秤量瓶の質量をはかり、内容物の質量(質量B)を記録した。
(5)以下の式により、固形分を求めた。
固形分(質量%)=(質量B)/(質量A)×100
【0221】
<コーティング材の凝集物評価>
上述の方法で作製したコーティング材を、5℃の冷蔵庫で、24時間静置し、そのときの沈降物量を目視により確認した。凝集物の沈降が無い場合を合格(「A」)と判定し、明らかに凝集物が沈降している場合、若しくは、コーティング材作製時に任意の溶媒に溶解しない不溶物が存在する場合を(「B」)と判定した。
【0222】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の作製>
以下の手順で、有機無機複合膜(コーティング膜)を作製した。
(1)上述のコーティング材を、適量、はかりとった。
(2)PETフィルム又はTACフィルムの上に、(1)のコーティング材を載せ、速やかにバーコーターで塗工した。但しバーコーターは、乾燥後のコーティング膜厚が1.5〜2μm程度になるように、適宜選択した。
・PETフィルム:東洋紡績株式会社製、「コスモシャイン4100」(厚み100μm、全光線透過率90%、ヘーズ0.9%)
・TACフィルム:富士フィルム株式会社製(厚み80μm、全光線透過率93%、ヘーズ0.7%)
(3)10分間風乾後、80℃の防爆型送風乾燥機で、10分間乾燥した後、必要に応じて、光硬化又は熱硬化を行い、「有機無機複合膜(コーティング膜)」を得た。
・光硬化:窒素下で、乾燥後のコーティング膜に有機無機複合膜側から高圧水銀灯により600mJ/cm
2の光量でUV光を照射した。
・熱硬化:100℃の防爆型送風乾燥機で、5時間加熱した。
【0223】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の外観>
上記有機無機複合膜(コーティング膜)を目視により観察し、粒子の凝集が実質的に見られない場合を合格(「A」)と判定し、粒子の凝集が見られた場合を「B」と判定した。
【0224】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の屈折率測定>
屈折率測定装置を使用し、屈折率を下記条件で測定した。
・装置:Metricon社製、「MODEL 2010 PRISM COUPLER」
・モード:シングルフィルムモード
・測定波長:633nm
【0225】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の全光線透過率及びヘーズの測定>
ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、「NDH 5000W」)を使用し、「JIS K7105:プラスチックの光学的特性試験方法」に準じて、コーティング膜の、全光線透過率とヘーズを測定した。
【0226】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の鉛筆硬度の測定>
電動鉛筆引っかき硬度試験機(株式会社安田精機製作所製)を使用し、荷重500gで、「JIS K5600−5−4:塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準じて、コーティング膜の、鉛筆硬度を測定した。
【0227】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の密着性>
クロスカットガイド(CCI−1、コーテック株式会社製)を使用し、「JIS−K5600」に準じて、テープ剥離試験を実施し、密着性を判断した。剥離しない有機無機複合硬化膜をA、剥離した有機無機複合硬化膜をBと判定した。
【0228】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の耐溶剤性>
ガラスの上に、「有機無機複合膜の作製」と同様な方法で硬化膜を作成し、テトラヒドロフラン液中に硬化膜を浸し、蓋をした。その状態で3日間放置した後、液に浸した部分の硬化膜の状態を確認した。膜が残存している状態をA、膜が溶解、若しくは膨潤した状態をBと判定した。
【0229】
<有機無機複合膜(コーティング膜)の接触角の測定>
接触角計(協和界面科学株式会社製)を使用し、液滴法で、コーティング膜の水接触角(水に対する接触角)と、油接触角(n−ヘキサデカンに対する接触角)を測定した。
【0230】
<有機無機複合膜の計算屈折率>
得られた有機無機複合膜の計算屈折率を求めるためにMaxwell−Garnettの式を用いた。ポリマーの屈折率は、有機無機複合体中のポリマーと同組成のポリマーを合成し、その屈折率を測定することにより求めた。
【0231】
無機酸化物粒子の屈折率として、上述の<無機酸化物粒子の屈折率>の方法により測定した屈折率の値を使用し、無機酸化物粒子の体積分率として、上述の<有機無機複合体の無機物含有量の測定>により測定した無機物粒子含有量(体積%)を100で割った値を使用した。
<Maxwell−Garnettの式>
(n
a2−n
m2)/(n
a2+2n
m2)=q(n
p2−n
m2)/(n
p2+2n
m2) ・・・(8)
但し、式(8)中、n
aは有機無機複合膜の計算屈折率、n
mはポリマーの屈折率、n
pは無機酸化物粒子の屈折率、qは無機酸化物粒子の体積分率をそれぞれ表す。
【0232】
硬化性組成物の無機酸化物粒子、有機ポリマーの代表的な計算値を以下に示す。光重合開始剤は、極微量であるため、計算から除外した。
・MMAポリマー;屈折率1.490、比重1.19
・MMAと反応性二重結合からなる共重合ポリマー;モル比が異なる共重合ポリマーの屈折率と比重は、下記値とMMAポリマーから得られる線形近似式から求めた。
MMAと反応性二重結合のモル比が77/23の共重合ポリマー;屈折率1.508、比重1.21
MMAと反応性二重結合のモル比が45/55の共重合ポリマー;屈折率1.529、比重1.23
メタクリル酸エチルと反応性二重結合のモル比が67/33の共重合ポリマー;屈折率1.514、比重1.16
アクリル酸ブチルと反応性二重結合のモル比が60/40の共重合ポリマー;屈折率1.519、比重1.20
アクリル酸ブチルと反応性二重結合のモル比が73/27の共重合ポリマー;屈折率1.510、比重1.19
アクリル酸エチルと反応性二重結合のモル比が48/52の共重合ポリマー;屈折率1.526、比重1.24
メタクリル酸2、2、2−トリフルオロエチルと反応性二重結合の55/45モル%比の共重合ポリマー;屈折率1.522、比重1.32
・20nm球状シリカ、50nm球状シリカ、100nm球状シリカ、数珠状シリカ;屈折率1.450、比重2.20
・48nm中空シリカ;屈折率1.300、比重1.73
・64nm中空シリカ;屈折率1.250、比重1.55
【0233】
<有機無機複合膜の空隙率>
空隙を有する有機無機複合膜の実測屈折率は、有機無機複合体の屈折率と体積分率との積に、空隙(空気の屈折率1.00)の屈折率と体積分率との積を加算した値と一致する。そのため、空隙率は、下記の式で計算した。
空隙率(%)=(n
a−n
b)/(n
a−1)×100 ・・・(9)
式(9)中、n
aは有機無機複合体の計算屈折率、n
bは有機無機複合膜の実測屈折率をそれぞれ表す。
【0234】
<反射防止フィルムの作製>
乾燥、硬化後の低屈折率層の厚みが約110nmとなる条件を選択し、以下の手順で、反射防止フィルム(
図2(a)に相当する)を作製した。
(1)上述のコーティング材を、適量、はかりとった。
(2)支持体(PETフィルム又はTACフィルム)の上に、(1)のコーティング材を載せ、速やかにバーコーターで塗工し、風乾した。ただしコーターは、所望の膜厚になるように、適宜選択した。
・PETフィルム:東洋紡績株式会社製、「コスモシャインA4100」(厚み100μm、全光線透過率90%、ヘーズ0.9%)
・TACフィルム:富士フィルム株式会社製(厚み80μm、全光線透過率93%、ヘーズ0.7%)
(3)更に90℃の防爆型送風乾燥機で2分間乾燥後、必要に応じて、UV硬化、又は、熱硬化を行い、支持体の上に低屈折率層が形成された、反射防止フィルムを得た。
【0235】
<反射防止フィルムの外観>
上記反射防止フィルムを目視により観察し、粒子の凝集が実質的に見られない場合を合格(「A」)と判定し、粒子の凝集が見られた場合を不合格(「B」)と判定した。
【0236】
<反射防止フィルムの映り込み>
下記手順で、反射防止フィルムに対する映り込みを評価した。
(1)上記反射防止フィルムの支持体の裏面を、紙やすりで軽く擦った後、つや消しの黒色スプレーで塗装した。
(2)反射防止フィルムの表面(反射防止膜側)から蛍光灯の光を照射し、基準に対する映り込みが少ない場合を合格(「A」)と判定し、映り込みが同等以上の場合を不合格(「B」)と判定した。
【0237】
<反射防止フィルムの最小反射率の測定>
分光光度計を使用し、最小反射率を、下記手順で測定した。
(1)反射防止フィルムの支持体の裏面を、紙やすりで軽く擦った後、つや消しの黒色スプレーで塗装した。
(2)下記分光光度計で、波長380〜700nmの範囲で、反射率を測定した。
・装置:日立製作所株式会社製、「U−3410」:大型試料室積分球付き
・基準:アルミ蒸着膜における反射率を100%とした。
(3)波長450〜650nmの中で、最も低い反射率を、最小反射率とした。
【0238】
<原材料>
実施例及び比較例で使用した原材料の内容を以下の(1)〜(8)に示す。
(1)無機物粒子溶液
(1−1)20nm球状シリカ溶液
・商品名:日産化学工業株式会社製、「MIBK−ST」
・SiO
2含有量:30質量%
・空洞率:0%
・屈折率:1.45
・L/D:1.1
(1−2)50nm球状シリカ溶液
・商品名:日産化学工業株式会社製、「MIBK−ST−L」
・SiO
2含有量:30質量%
・空洞率:0%
・屈折率:1.45
・L/D:1.1
(1−3)100nm球状シリカ溶液
・商品名:日産化学工業株式会社製、「MEK−ST−ZL」
・SiO
2含有量:30質量%
・空洞率:0%
・屈折率:1.45
・L/D:1.1
(1−4)数珠状シリカ溶液A
・商品名:日産化学工業株式会社製、「MEK−ST−UP」
・20質量%数珠状シリカ粒子/MEK溶液
・空洞率:0%
・屈折率:1.45
・球状のシリカが数珠状に連結して形成された長鎖の構造。
図2に数珠状無機物粒子のTEM写真を示す。
(1−5)数珠状シリカ溶液B
・商品名:日産化学工業株式会社製、「MIBK−ST−UP」
・20質量%数珠状シリカ粒子/MIBK溶液
・空洞率:0%
・屈折率:1.45
(1−6)中空シリカ溶液C
・商品名:日揮触媒化成株式会社製、「スルーリア2320」
・20質量%中空シリカ粒子/MIBK溶液
・平均粒径48nm、外殻厚み8.5nm
・空洞率:27%
・屈折率:1.30
・L/D:1.1
(1−7)中空シリカ粒子溶液D
・商品名:日揮触媒化成株式会社製
・中空シリカ粒子含有量:20質量%
・20質量%中空シリカ粒子/MIBK溶液
・平均粒径64nm、外殻厚み9nm
・空洞率:37%
・屈折率:1.25
・ L/D:1.1
(1−8)ジルコニア溶液
・商品名:日産化学工業株式会社製
・ジルコニア複合粒子含有量:30質量%
・30質量%ジルコニア複合粒子/MIBK溶液(ジルコニア複合粒子:ジルコニアと、シリカ、酸化スズとの複合粒子。)
・屈折率:1.91
・L/D:1.5
・密度:5.1g/cm
3
(1−9)チタニア溶液
・商品名:日揮触媒化成株式会社製
・チタニア粒子含有量:20質量%
・20質量%チタニア粒子/MIBK溶液
・屈折率:1.90
・L/D:2.1
・無機酸化物粒子の密度:4.1g/cm
3【0239】
(2)シラン化合物
(2−1)3−(2−ブロモイソブチロキシ)プロピルジメチルクロロシラン(以下、「BPS」という。)
公知の方法(特開2006−063042号公報等)を参考に、下記化学式(10)で表されるBPSを合成した。
【0240】
【化9】
【0241】
(2−2)(3−(2−ブロモイソブチリル)プロピル)ジメチルエトキシシラン(以下、「BIDS」という。)
公知の方法(特開2006−257308号公報)に従って、下記化学式(11)で表されるBIDSを合成した。
【0242】
【化10】
【0243】
(2−3)1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」という。):東京化成工業株式会社製
(3)重合触媒
(3−1)臭化銅(I)(CuBr):和光純薬工業株式会社製
(3−2)臭化銅(II)(CuBr
2):和光純薬工業株式会社製
(4)配位子
(4−1)N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、「PMDETA」という。):Aldrich社製
(4−2)4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ジピリジン(以下、「dNbpy」という。):Aldrich社製
【0244】
(5)モノマー
以下の(5−11)と(5−12)以外のモノマーは、アルミナカラムを通じて重合禁止剤を除去した後、1時間以上窒素バブリングして、脱酸素処理を行ってから使用した。アルミナカラムが使用できない場合は、蒸留等の公知の方法で、重合禁止剤を除去してもよい。
(5−1)メタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−2)メタクリル酸エチル(以下、「EMA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−3)アクリル酸ブチル(以下、「BA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−4)アクリル酸エチル(以下、「EA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−5)アクリル酸メチル(以下、「MA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−6)メタクリル酸2、2、2−トリフルオロエチル(以下、「TFEMA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−7)メタクリル酸2,2,3,3,3,−ペンタフルオロプロピル(以下、「PFPMA」ともいう。):ダイキン工業株式会社製
(5−8)メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−9)メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」ともいう。):東京化成工業株式会社製
(5−10)メタクリル変性シリコーンオイル(以下、「SiMA」とも言う。):信越シリコーン株式会社製、「X−22−2475」
(5−11)メタクリル酸2−イソシアネートエチル(以下、「MOI」ともいう。):昭和電工株式会社
(5−12)アクリル酸2−イソシアネートエチル(以下、「AOI」ともいう。):昭和電工株式会社
【0245】
(6)溶剤等
(6−1)メタノール:和光純薬工業株式会社製
(6−2)メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−3)メチルエチルケトン(以下、「MEK」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−4)テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−5)ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−6)n−メチルピロリドン(以下、「NMP」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−7)ヘキサン:和光純薬工業株式会社製
(6−8)トルエン:和光純薬工業株式会社製
(6−9)シクロヘキサノン:和光純薬工業株式会社製
(6−10)ジアセトンアルコール(以下、「DAA」という。):和光純薬工業株式会社製
(6−11)メチルセロソルブ:和光純薬工業株式会社製
(7)メタノール−水混合溶液
(7−1)メタノール−水混合溶液−1:77容量%のメタノールと、23容量%のイオン交換水とを含む混合溶液
(7−2)メタノール−水混合溶液−2:80容量%のメタノールと、20容量%のイオン交換水とを含む混合溶液
【0246】
(8)重合開始剤
(8−1)2−ブロモイソ酪酸エチル(以下、「EBIB」ともいう。):Aldrich社製
(8−2)アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。):和光純薬工業株式会社製
(9)付加反応触媒
・ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと言う。):和光純薬工業株式会社製
(10)重合禁止剤
・2,6−ジ−tert−ブチルフェノール:東京化成工業株式会社製
(11)光ラジカル開始剤
(11−1)1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184):チバ・ジャパン株式会社製
(11−2)2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907):チバ・ジャパン株式会社製
(12)光酸発生剤
・CPI−100P(商標名):サンアプロ株式会社製
(13)硬化剤
(13−1)「4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30」
・商品名:新日本理化株式会社製、「リカシッド MH−700G」
(13−2)マレイン酸:和光純薬工業株式会社製
(14)硬化促進剤
(14−1)アミン系化合物
・商品名:サンアプロ株式会社製、「U−CAT 18X」
(14−2)トリエチルアミン(以下、TEAと言う。):和光純薬工業株式会社製
(15)架橋剤
(15−1)(3’、4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(以下、「セロキサイド2021P」ともいう。):ダイセル化学工業株式会社
(15−2)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:Sigma−Aldrich社製
【0247】
<表面改質無機酸化物粒子−1の合成(BPS改質20nm球状シリカ粒子の合成)>
以下の手順に従って、BPS改質20nm球状シリカ粒子(BPSが表面に結合した、20nm球状シリカ粒子)を合成した。
(1)冷却管を接続し、回転子を入れた二口フラスコの内部を、窒素置換した。
(2)窒素下で、フラスコ内に84容量%の20nm球状シリカ溶液を導入し、更に、8容量%のBPSを導入し、攪拌を開始した。
(3)上記フラスコを85℃のオイルバスに浸し、攪拌しながら36時間反応を行った。
(4)反応液を室温まで冷却した後、窒素下で8容量%のHMDSを導入した。
(5)室温で2時間攪拌後、80℃で8時間攪拌して反応を行い、反応液を室温まで冷却した。
(6)反応液を遠沈管に移し、遠心分離機(株式会社久保田製作所製、型式:7700)を用いて、10000rpm、10℃で、30分間、遠心分離を行った。
(7)遠沈管内の上澄み液をメタノール−水混合溶液−2に投入、混合し、静置後、上澄み液を廃棄した。
(8)沈殿物に窒素を吹き込み、残留する液体を揮発させた後、少量のTHFを加え、攪拌により沈殿物をTHFに溶解させた。
(9)上記溶液をメタノールに投入して攪拌し、静置した後、上澄み液を廃棄した。
(10)残った沈殿物にメタノールを加えて攪拌し、静置した後、上澄み液を廃棄した。更にこの操作を10回繰り返した。
(11)上記沈殿物に窒素を吹きこみながら、一晩風乾することにより、液体を揮発させ、固形物を得た。
(12)上記固形物を、80℃、真空下で、24時間乾燥させて、BPS改質20nm球状シリカ粒子を得た。
(13)ハロゲン含有量は、2.4質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0248】
<表面改質無機酸化物粒子−2の合成(BPS改質50nm球状シリカ粒子の合成)>
20nm球状シリカ溶液を、50nm球状シリカ溶液に変更し、配合量を以下のように変更した以外は、上述の<表面改質無機酸化物粒子−1の合成>と同様の方法で、BPS改質50nm球状シリカ粒子を合成した。
配合量:50nm球状シリカ溶液(82容量%)、BPS(9容量%)、HMDS(9容量%)
ハロゲン含有量は、0.6質量%であった。
【0249】
<表面改質無機酸化物粒子−3の合成(BPS改質100nm球状シリカ粒子の合成)>
50nm球状シリカ溶液を、100nm球状シリカ溶液に変更した以外は、上述の<表面改質無機酸化物粒子−2の合成>と同様の方法で、BPS改質100nm球状シリカ粒子を合成した。
ハロゲン含有量は、0.45質量%であった。
【0250】
<表面改質無機酸化物粒子−4の合成(BPS改質数珠状シリカ粒子A1の合成)>
20nm球状シリカ溶液を、数珠状シリカ溶液Aに変更し、配合量を以下のように変更した以外は、上述の<表面改質無機酸化物粒子−1の合成>と同様の方法で、BPS改質数珠状シリカ粒子A1を合成した。
配合量:数珠状シリカ溶液(86容量%)、BPS(7容量%)、HMDS(7容量%)
ハロゲン含有量は、2.2質量%であった。
【0251】
<表面改質無機酸化物粒子−5の合成(BPS改質数珠状シリカ粒子A2の合成)>
20nm球状シリカ溶液を、数珠状シリカ溶液Aに変更し、配合量を以下のように変更した以外は、上述の<表面改質無機酸化物粒子−1の合成>と同様の方法で、BPS改質数珠状シリカ粒子A2を合成した。
配合量:数珠状シリカ溶液(92.7容量%)、BPS(0.2容量%)、HMDS(7.1容量%)
ハロゲン含有量は、0.18質量%であった。
【0252】
<表面改質無機酸化物粒子−6の合成(BPS改質50nm中空シリカ粒子の合成)>
中空シリカ溶液C(平均粒径48nm)(86容量%)、BPS(7容量%)、HMDS(7容量%)に、配合量を変更し、上記表面改質無機酸化物粒子−1の合成と同様の方法で、BPS改質50nm中空シリカ粒子(BPSが表面に結合した、50nm中空シリカ粒子)を合成した。
【0253】
BPS改質50nm中空シリカ粒子のハロゲン含有量は、1.0質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0254】
<表面改質無機酸化物粒子−7の合成(BPS改質60nm中空シリカ粒子の合成)>
中空シリカ溶液D(平均粒径64nm)(86容量%)、BPS(7容量%)、HMDS(7容量%)に、配合量を変更し、上記表面改質無機酸化物粒子−1の合成と同様の方法で、BPS改質60nm中空シリカ粒子(BPSが表面に結合した、60nm中空シリカ粒子)を合成した。
BPS改質60nm中空シリカ粒子のハロゲン含有量は、1.2質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0255】
<表面改質無機物粒子−8の合成(CPS改質20nm球状シリカ粒子の合成)>
BPSをCPSに変更し、上記表面改質無機物粒子−1の合成と同様の方法で、CPS改質20nm球状シリカ粒子(CPSが表面に結合した、20nm球状シリカ粒子)を合成した。
【0256】
[
参考例1:20nmSiO
2−g−p(TFEMA−co−PFPMA)、熱可塑]
有機無機複合体Aを、表1の配合に従って、以下の手順で製造した。各成分の濃度は、全成分の合計量を基準とした数値である。得られた有機無機複合体Aの評価結果を表6に示す。
(1)回転子を入れたシュレンクフラスコに、CuBr及びCuBr
2を加え、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMIBKを窒素下で導入し、攪拌した。
(2)上記溶液に、PMDETAを加え、60℃で攪拌したものを、触媒溶液とした。
(3)冷却管を接続し、回転子を入れた別のシュレンクフラスコに、BPS改質20nmシリカ粒子を投入した。
(4)シュレンクフラスコに冷却管を接続し、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した。
(5)フラスコに、窒素下で残りの溶媒(MIBK)を導入し、超音波洗浄機で10分間処理した後、更にモノマー(TFEMA)を導入し、75℃のオイルバスに浸し、攪拌した。
(6)更に、上記で調製した触媒溶液を、窒素下で導入後、反応液を8分間攪拌し、重合反応を行った。
(7)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、メタノール(メタノールのみで固形分が析出しにくい場合は、ヘキサンを使用しても良い。)に投入して攪拌し、沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離して、静置した。
(8)静置後、上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、メタノールを再び加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に8回繰り返した。
(9)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、一晩風乾することにより、液体を揮発させ、固形物を得た。
(10)上記固形物を、真空下、80℃で24時間乾燥させて、有機無機複合体Aを得た。
(11)有機無機複合体AのTgを上述の方法で測定したところ、73℃であった。
(12)有機無機複合体Aのハロゲン含有量を、上述の方法で測定したところ、1.8質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
(13)有機無機複合体Aのフッ素含有量を、上述の方法で測定したところ、5質量%であった。
(14)有機無機複合体Aを構成するポリマーの数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を上述の方法で測定したところ、Mn=9,500、Mw=14,100であった。更に、分子量の分散度(Mw/Mn)を算出したところ、Mw/Mn=1.48であり、鎖長が揃ったポリマー鎖が、無機酸化物粒子に結合していることがわかった。
(15)有機無機複合体Aのフリーポリマー量を測定したところ、フリーポリマーは検出されず、無機酸化物粒子に結合しているポリマーの量は100質量%であった。
(16)有機無機複合体Aの無機酸化物粒子含有量を上述の方法で測定したところ、無機酸化物粒子含有量は、84質量%及び75体積%であった。
(17)固形分が約10質量%となるように、有機無機複合体Aに、MEKとシクロヘキサノンを8:2(容積比)で混合した溶媒を添加し、上述の方法でコーティング材を得た。
(18)上記コーティング材を使用し、上述の方法で、PETフィルムに、塗工、乾燥し、有機無機複合膜(コーティング膜)を得た。得られた膜の外観を目視で確認したところ、無機酸化物粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(19)膜の全光線透過率とヘーズを、上述の方法で測定したところ、全光線透過率は92%、ヘーズは0.3%であった。
(20)上述の方法で有機無機複合膜(コーティング膜)の屈折率を測定したところ1.39であり、理論屈折率(1.44)と比較して、低い値を示した。
(21)上述の方法で、有機無機複合膜の空隙率を求めたところ、12%であった。
(22)更に、上述の方法で測定した、膜の鉛筆硬度は2Hであり、比較例2のpTFEMAのコーティング膜の鉛筆硬度(HB)と比較して、強度が上がっていることがわかった。
(23)上述の方法で、膜の接触角を評価した結果、水接触角は95°、油接触角は48°であった。
(24)上述のコーティング材を使用して、PETフィルムの代わりに、TACフィルムを使用して、上述と同様の方法で、コーティング膜を作製し、評価した結果、PETフィルムと同様、良好な結果が得られた。
【0257】
[
参考例2:50nmSiO
2−g−p(TFEMA/MMA/EA)、熱可塑]
有機無機複合体Bを、表1の配合に従って、重合反応条件を、75℃、12時間とした以外は
参考例1と同様の方法で、製造し、評価した。得られた有機無機複合体Bの評価結果を表6に示す。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0258】
有機無機複合体Bを構成するポリマーの数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を上述の方法で測定したところ、Mn=14,200、Mw=21,900、Mw/Mn=1.54であり、鎖長が揃ったポリマー鎖が無機酸化物粒子に結合していることがわかった。
【0259】
有機無機複合体Bを使用し、溶媒をMIBKに変更し、上述の方法で、コーティング材と、有機無機複合膜(コーティング膜)を得た。評価結果を表9に示す。得られた膜の外観を目視で確認したところ、無機酸化物粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。更に、上述の方法で屈折率を測定したところ1.38であり、理論屈折率(1.44)と比較して、顕著に低い値を示した。更に屈折率の値から求めた空隙率は14%であった。このことから、屈折率の制御ができることが判明した。
【0260】
[
参考例3:50nm中空SiO
2−g−p(TFEMA−co−HEMA)、熱可塑]
有機無機複合体Cを、表1の配合に従って、重合反応条件を、60℃、20分とした以外は
参考例1と同様の方法で、製造し、評価した。得られた有機無機複合体Cの評価結果を表6に示す。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0261】
有機無機複合体Cを使用し、MIBKとMEKを1:1(容積比)で混合した溶媒を使用し、上述の方法で調製し、コーティング材を得た。この時、超音波処理を3時間実施した。更に上述の方法でコーティング膜を作製した。評価結果を表9に示す。
【0262】
その外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。更に、上述の方法で屈折率を測定したところ1.33であり、理論屈折率(1.37)と比較して、顕著に低い値を示した。更に屈折率の値から求めた空隙率は9%であった。このことから、屈折率の制御ができることが判明した。
【0263】
有機無機複合体Cを構成するポリマーの分子量を測定したところ、Mn=12,900、Mw=21,900、Mw/Mn=1.70(≦2.3)であり、鎖長が揃ったポリマー鎖が無機酸化物粒子に結合していることがわかった。
【0264】
[
参考例4:60nm中空SiO
2−g−p(MMA−co−MA)、熱可塑]
有機無機複合体Dを、表1の配合に従って、重合反応条件を、60℃、15分とした以外は
参考例2と同様の方法で、製造し、評価した。得られた有機無機複合体Dの評価結果を表6に示す。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0265】
有機無機複合体Dを使用し、
参考例2と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜(コーティング膜)を得た。評価結果を表9に示す。得られた膜の外観を目視で確認したところ、無機酸化物粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。更に、上述の方法で屈折率を測定したところ1.20であり、理論屈折率(1.32)と比較して、顕著に低い値を示した。更に屈折率の値から求めた空隙率は38%であった。このことから、屈折率の制御ができることが判明した。
【0266】
[実施例5:数珠状SiO
2−g−pMMA、熱可塑]
有機無機複合体Eを、表1の配合に従って、重合反応条件を、60℃、10分とした以外は
参考例1と同様の方法で、製造し、評価した。得られた有機無機複合体Eの評価結果を表6に示す。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
【0267】
有機無機複合体Eを使用し、
参考例2と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜(コーティング膜)を得た。評価結果を表9に示す。得られた膜の外観を目視で確認したところ、無機酸化物粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。更に、上述の方法で屈折率を測定したところ1.21であり、理論屈折率(1.46)と比較して、顕著に低い値を示した。更に屈折率の値から求めた空隙率は54%であった。このことから、屈折率の制御ができることが判明した。
【0268】
[
参考例6:20nmSiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
有機無機複合体Fを、表1の配合に従って、以下の方法で製造し、評価した。得られた有機無機複合体Fの評価結果を表6に示す。
(1)回転子を入れたシュレンクフラスコに、CuBr及びCuBr
2を加え、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMEKを窒素下で導入し、溶液を攪拌した。
(2)上記溶液に、PMDETAを加え、40℃で攪拌したものを、触媒溶液とした。
(3)冷却管を接続し、回転子を入れた別のシュレンクフラスコに、BPS改質20nm球状シリカ粒子を投入した。
(4)シュレンクフラスコに冷却管を接続し、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した。
(5)フラスコに、窒素下で残りのMEK溶媒を導入し、超音波洗浄機で10分間処理した後、GMAモノマーを導入し、40℃のオイスバスに浸し、攪拌した。
(6)更に、上記で調製した触媒溶液を、窒素下で導入後、反応液を7時間攪拌し、重合反応を行った。
(7)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離して、静置した。
(8)静置後、上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、ヘキサンを再び加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返した。
(9)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、一晩風乾することにより、液体を揮発させ、有機無機複合体を得た。
(10)有機無機複合体を構成するポリマーの数平均分子量(Mn)を上述の方法で測定したところ、Mn=10,900であった。更に、分子量分布(Mw/Mn)を算出したところ、Mw/Mn=1.38(≦2.3)であり、鎖長が揃ったポリマー鎖が、無機物粒子に結合していることがわかった。
(11)有機無機複合体のフリーポリマー量を測定したところ、フリーポリマーが2質量%検出され、無機物粒子に結合しているポリマーの量は98質量%であった。
(12)更に、表5の配合に従って、有機無機複合体、光酸発生剤、MEKを混合し、上述の方法でコーティング材を得た。光酸発生剤を、有機無機複合体中の有機ポリマー量に対して5質量%となるように導入した。また、有機無機複合組成物(有機無機複合体と光酸発生剤)の固形分濃度が10質量%となるように、溶媒(容積比で、MEK:シクロヘキサノン=8:2で混合したもの)を加えた。
(13)上記コーティング材を使用し、上述の方法で、PETフィルムに、塗工、乾燥し、空気下で、UV照射することで有機無機複合膜を得た。評価結果を表9に示す。得られた有機無機複合膜の外観を目視で確認したところ、無機物粒子の凝集やクラックは見られず、透明性を維持していた。
(14)有機無機複合膜の全光線透過率とヘーズを、上述の方法で測定したところ、全光線透過率は91%、ヘーズは1.2%であった。
(15)有機無機複合硬化膜の鉛筆硬度を上述の方法で測定したところHであった。また、密着性試験を上述の方法で実施したところ、剥離部位は無く良好であった。
(16)上述の方法で有機無機複合膜の屈折率を測定したところ、1.42であり、理論屈折率(1.47)と比較して、顕著に低い値を示した。このことから、空隙を有する有機無機複合膜が形成されていることが判明した。
(17)上述の方法で有機無機複合膜の空隙率を計算したところ、11%であり、高い空隙率を示した。
【0269】
[
参考例7:50nmSiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質50nm球状シリカ粒子に変更し、重合温度を50℃、重合停止時間を4時間とした以外は、表1の配合に従って、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合体Gを製造した。
【0270】
更に、表5の配合に従って、コーティング材を作製し、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0271】
[
参考例8:100nmSiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質100nm球状シリカ粒子に変更し、重合温度を50℃に変更し、重合停止時間を6.5時間とした以外は、表1の配合に従って、実施例6と同様の方法で、有機無機複合体Hを製造した。
更に、表5の配合に従って、コーティング材を作製し、実施例6と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0272】
[
参考例9:50nm中空SiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質50nm中空シリカ粒子に変更し、重合温度を50℃に変更し、重合停止時間を6.5時間とした以外は、表1の配合に従って、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合体Iを製造した。
更に、表5の配合に従って、コーティング材を作製し、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0273】
[実施例10:数珠状SiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質数珠状シリカ粒子A2に変更し、表1の配合に従って、重合温度を50℃に変更し、重合停止時間を7時間とした以外は、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合体Jを製造した。
更に、表5の配合に従って、コーティング材を作製し、
参考例6と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0274】
[実施例11:数珠状SiO2−g−pGMA+セロキサイド、光カチオン硬化]
実施例10の有機無機複合体Jに、表5の配合に従って、架橋剤(「セロキサイド2021P」)、光酸発生剤を導入し、固形分濃度が10質量%となるように、溶媒(容積比で、MEK:シクロヘキサノン=8:2で混合したもの)を加え、コーティング材を得た。
参考例6と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0275】
[実施例12:数珠状SiO
2−g−pGMA+酸無水物+硬化触媒、熱硬化]
実施例10の有機無機複合体Jに、表5の配合に従って、硬化剤(「リカシッド MH−700G」)、硬化促進剤(「U−CAT 18X」)を導入し、固形分濃度が10質量%となるように、溶媒(容積比で、MEK:シクロヘキサノン=8:2で混合したもの)を加え、コーティング材を得た。
参考例6と同様の方法で、コーティングした後、防爆型送風乾燥機で100℃、6時間加熱して、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0276】
[実施例13:数珠状SiO
2−g−pGMA+マレイン酸+硬化触媒、熱硬化]
実施例10の有機無機複合体Jに、表5の配合に従って、硬化剤(マレイン酸)、硬化促進剤(TEA)を導入し、固形分濃度が10質量%となるように、溶媒(容積比で、MEK:シクロヘキサノン=8:2で混合したもの)を加え、コーティング材を得た。
更に、
参考例6と同様の方法で、コーティングした後、防爆型送風乾燥機で100℃、6時間加熱して、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
【0277】
[実施例14:数珠状SiO
2−g−pGMA、基材変更(TAC+ハードコート層へのコーティング)、光カチオン硬化]
以下の方法で、TACフィルム(富士フィルム株式会社製、厚み80μm)上にハードコート層を形成し、PETフィルムの代わりに、基材として使用した。それ以外は、実施例10と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
(1)100gのウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製、「紫光UV−7640B」)に、100gのMEKを混合した。
(2)更に光重合開始剤として、5gの「イルガキュア184」と、1gの「イルガキュア907」を加えて混合し、ハードコート液とした。
(3)TACフィルム上に、上記ハードコート液をバーコーターで塗工し、90℃の防爆型送風乾燥機で2分間乾燥した。更に紫外線硬化装置(セイエンジニアリング株式会社製)を使用して、空気下で、積算光量500mJ/cm
2でUV照射し、厚み約5μmのハードコート層を形成した。
(4)上記ハードコート層の上に、実施例10と同様の方法で、有機無機複合膜を形成し、評価した。
【0278】
[実施例15:数珠状SiO
2−g−pGMA、高沸溶媒変更、基材変更(TAC+ハードコート層へのコーティング)、光カチオン硬化]
実施例14のシクロヘキサノンを、DAAに変更した以外は、実施例14と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表9に示す。
溶解性パラメーターを制御することで、屈折率制御が可能であることがわかった。
【0279】
[実施例16:数珠状SiO
2−g−pGMA、高沸溶媒変更、基材変更(TAC+ハードコート層へのコーティング)、光カチオン硬化]
実施例14のシクロヘキサノンを、メチルセロソルブに変更した以外は、実施例14と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表10に示す。
溶解性パラメーターを制御することで、屈折率制御が可能であることがわかった。
【0280】
[実施例17:数珠状SiO
2−g−pGMA、、基材変更(ガラス板へのコーティング)、光カチオン硬化]
PETフィルムの代わりに、基材としてガラス板を使用した以外は、実施例10と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表10に示す。
【0281】
[実施例18:数珠状SiO
2−g−pGMA、光カチオン硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子をBPS改質数珠状シリカ粒子A1に変更し、表1の配合に従って、重合温度を60℃に変更し、重合停止時間を、5分とした以外は
参考例6と同様の方法で、有機無機複合体Kとその有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表7及び10に示す。
【0282】
[
参考例19:20nmSiO
2−g−p(MMA/HEMA/MOI)、光ラジカル硬化]
有機無機複合体Lを、表2及び表4の配合に従って、以下の手順で製造した。得られた有機無機複合膜の評価結果を、表7及び10に示す。
(1)回転子を入れたシュレンクフラスコに、CuBr及びCuBr
2加え、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMIBKを窒素下で導入し、溶液を攪拌した。
(2)上記溶液に、PMDETAを加え、40℃で攪拌したものを、触媒溶液とした。
(3)冷却管を接続し、回転子を入れた別のシュレンクフラスコに、BPS改質20nm球状シリカ粒子を投入した。
(4)シュレンクフラスコに冷却管を接続し、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した。
(5)フラスコに、窒素下で残りのMIBK溶媒を導入し、5時間攪拌した後、MMAとHEMAのモル比が70/30で、全モノマー重量が、表面改質無機粒子に対して約78質量%(MMAモノマーとHEMAモノマー)になるようにモノマーを導入し、80℃のオイスバスに浸し、攪拌した。
(6)更に、上記で調製した触媒溶液を、窒素下で導入後、反応液を3時間攪拌し、重合反応を行った。
(7)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離して、静置した。
(8)静置後、上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、MIBKを加えて再分散させた後、ヘキサンを加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返し、最後にヘキサンで洗浄し、上澄み液を廃棄することで未反応のモノマーを除去した。
(9)表4の配合に従って、残った沈殿物に重合禁止剤とMEK溶媒を加えて、溶液が透明になるまで攪拌を行なった。
(10)次いで、溶液を60℃に加熱した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、MOIと言う。)とDBTDLを加えて、6時間攪拌し、HEMAとMOIの付加反応を行なった。
(11)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、静置した。沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離を行なった。
(12)上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、MEK/メタノール混合溶媒(容量比で、MEK:メタノール=1:1で混合)を加えて再分散させた後、ヘキサンを加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返し、最後にヘキサンで洗浄し、上澄み液を廃棄することで未反応のモノマーを除去した。
(13)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、風乾することにより、液体を揮発させ、有機無機複合体Lを得た。
(14)有機無機複合体Lを構成するポリマーの数平均分子量(Mn)を上述の方法で測定したところ、Mn=13,900であった。更に、分子量分布(Mw/Mn)を算出したところ、Mw/Mn=1.82(≦2.3)であり、鎖長が揃ったポリマー鎖が、無機物粒子に結合していることがわかった。
(15)有機無機複合体Lのフリーポリマー量を測定したところ、フリーポリマーが2質量%検出され、無機物粒子に結合しているポリマーの量は98質量%であった。
(16)有機無機複合体L、光ラジカル開始剤(質量比で、「イルガキュア184」:「イルガキュア907」=4:1で混合したもの)、溶媒(容量比で、MEK:シクロヘキサノン=8:2で混合したもの)を混合し、上述の方法でコーティング材を得た。光ラジカル開始剤は、有機無機複合体中の有機ポリマー量に対して5質量%となるように導入した。また、有機無機複合組成物(有機無機複合体と光ラジカル開始剤)の固形分濃度が10質量%となるように、溶媒を加えた。
(17)上記コーティング材の凝集物を上述の方法で確認したところ、分散不良の固形物等は見られなかった。
(18)上記コーティング材を使用し、上述の方法で、PETフィルムに、塗工、乾燥し、窒素下で、UV照射することで有機無機複合硬化膜を得た。得られた有機無機複合膜の外観を目視で確認したところ、無機物粒子の凝集やクラックは見られず、透明性を維持していた。
(19)有機無機複合膜の全光線透過率とヘーズを、上述の方法で測定したところ、全光線透過率は91%、ヘーズは0.4%であった。
(20)有機無機複合膜の屈折率を上述の方法で測定したところ、1.43であり、上述の方法で計算される屈折率の値(1.47)と比較して、低い値を示した。このことから、空隙を有する有機無機複合膜が形成されていることが判明した。
(21)有機無機複合膜の空隙率を上述の方法で計算したところ、8%であり、高い空隙率を示した。
(22)有機無機複合膜の耐溶剤性を上述の方法で確認したところ、硬化膜は溶解せずにガラス上に存在していた。
(23)有機無機複合膜の密着性試験を上述の方法で実施したところ、剥離部位は無く良好であった。
【0283】
[
参考例20:50nmSiO
2−g−p(MMA/HEMA/MOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質50nm球状シリカ粒子に変更し、MMA/HEMAモル比を80/20に変更し、重合停止時間を4時間とした以外は、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合体Mを製造し、評価した。得られた有機無機複合膜の評価結果を表7及び10に示す。
【0284】
[
参考例21:100nmSiO
2−g−p(MMA/HEMA/MOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質100nm球状シリカ粒子に変更し、MMA/HEMAモル比を90/10に変更し、重合停止時間を5時間とした以外は、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合体Nを製造し、評価した。得られた有機無機複合膜の評価結果を表7及び10に示す。
【0285】
[
参考例22:数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/MOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質数珠状シリカ粒子A1に変更し、MMA/HEMAモル比を90/10に変更し、重合停止時間を5.5時間とした以外は、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合体Oを製造し、評価した。得られた有機無機複合膜の評価結果を表7及び10に示す。
【0286】
[実施例23:数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質数珠状シリカ粒子A1に変更し、MMA/HEMAモル比=70/30とし、付加反応に使用するモノマーを、MOIからAOIに変更して、重合停止時間を2時間とした以外は、表2及び4の配合に従って、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合体Pを製造し、評価した。得られた有機無機複合膜の評価結果を表7及び10に示す。
【0287】
[実施例24:数珠状SiO
2−g−p(SiMA/HEMA/AOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質数珠状シリカ粒子A1に変更し、重合反応に使用するモノマーをSiMA/HEMAモル比=70/30とし、付加反応に使用するモノマーを、MOIからAOIに変更して、重合停止時間を15分とした以外は、表2及び4の配合に従って、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合体Qを製造し、評価した。
更に、コーティング材製造に使用する溶媒を、MEK/シクロヘキサノン混合溶媒から、MIBKに変更した以外は、
参考例19と同様の方法で、有機無機複合膜を作成し、評価した。評価結果を表7及び10に示す。
【0288】
[実施例25:数珠状SiO
2−g−p(EMA/HEMA/AOI)、光ラジカル硬化]
BPS改質20nm球状シリカ粒子を、BPS改質数珠状シリカ粒子A2に変更し、EMA/HEMAモル比=50/50とし、付加反応に使用するモノマーを、MOIからAOIに変更して、重合停止時間を22時間とした以外は、表2の配合に従って、重合反応を行った。
更に、重合液を使用して、表4の配合に従って、
参考例19と同様の方法で、付加反応を行い、有機無機複合体Rと有機無機複合膜を製造し、評価した。基材は、実施例14のTAC上に、ハードコート層を形成したものを用いた。評価結果を表7及び10に示す。
【0289】
[実施例26:数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)、全工程一環合成、光ラジカル硬化]
以下の手順に従って、BIDS改質数珠状シリカ粒子/MIBK溶液(BIDSが表面に結合した、数珠状シリカ粒子/MIBK溶液)を合成し、連続して、表2の配合に従って、有機無機複合体Uを製造し、評価した。
(1)冷却管を接続し、回転子を入れた二口フラスコの内部を、窒素置換した。
(2)窒素下で、フラスコ内に98.9容量%の数珠状シリカ溶液B(「MIBK−ST−UP」)を導入し、更に、0.1容量%のBIDSを導入し、攪拌を開始した。
(3)上記フラスコを110℃のオイルバスに浸し、攪拌しながら24時間反応を行った。
(4)反応液を室温まで冷却した後、窒素下で1.0容量%のHMDSを導入した。
(5)室温で2時間攪拌後、80℃で8時間攪拌して反応を行い、反応液を室温まで冷却したものを、BIDS改質数珠状シリカ溶液とした。一部を洗浄乾燥し、ハロゲン含有量を測定したところ、0.1質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
(6)引き続き、表2の配合に従って、80℃で3時間重合した後、室温まで冷却し、重合液とした。
(7)更に引き続き、表4の配合に従って、60℃で6時間、付加反応を行い、室温まで冷却した。
(8)上記反応液を、
参考例19と同様の方法で洗浄・乾燥し、有機無機複合体Sを得た。評価結果を表7に示す。
(9)更に、有機無機複合体Uを使用して、
参考例19と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した結果を表10に示す。基材は、実施例14のTAC上に、ハードコート層を形成したものを用いた。
【0290】
[実施例27:数珠状SiO
2−g−p(TFEMA/HEMA/AOI)、全工程一環合成、光ラジカル硬化]
以下の手順に従って、BIDS改質数珠状シリカ粒子/MEK溶液(BIDSが表面に結合した、数珠状シリカ粒子/MEK溶液)を合成し、連続して、表2の配合に従って、有機無機複合体Vを製造し、評価した。
(1)冷却管を接続し、回転子を入れた二口フラスコの内部を、窒素置換した。
(2)窒素下で、フラスコ内に98.8容量%の数珠状シリカ溶液A(「MEK−ST−UP」を導入し、更に、0.2容量%のBIDSを導入し、攪拌を開始した。
(3)上記フラスコを85℃のオイルバスに浸し、攪拌しながら24時間反応を行った。
(4)反応液を室温まで冷却した後、窒素下で1.0容量%のHMDSを導入した。
(5)室温で2時間攪拌後、80℃で8時間攪拌して反応を行い、反応液を室温まで冷却したものを、BIDS改質数珠状シリカ溶液とした。一部を洗浄乾燥し、ハロゲン含有量を測定したところ、0.2質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
(6)引き続き、表4の配合に従って、実施例26と同様の方法で、有機無機複合体Tを製造し、評価した結果を表7に示す。
(7)更に、有機無機複合体Tを使用して、実施例26と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した結果を表10に示す。
【0291】
[
参考例28:中空SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)、全工程一環合成]
数珠状シリカ溶液B(「MIBK−ST−UP」)を、中空シリカ溶液C(50nm中空シリカ溶液)に変更した以外は、実施例26と同様の方法で、BIDS改質50nm中空シリカ粒子/MIBK溶液(BIDSが表面に結合した、50nm中空シリカ/MIBK粒子溶液)を合成し、連続して、表2の配合に従って、有機無機複合体Uを製造し、評価した結果を表7に示す。
更に、有機無機複合体Uを使用して、実施例26と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した結果を表10に示す。
【0292】
[実施例29:数珠状SiO
2−g−p(EMA/HEMA/AOI)+架橋性高分子p(MMA/HEMA/AOI)、架橋剤(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)]
実施例25の有機無機複合体R(82.5質量%)に、比較例9のフリーポリマー〔p(MMA/HEMA/AOI)(14.0質量%)〕、架橋剤〔ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(3.5質量%)〕を加え、実施例26と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表7及び10に示す。
【0293】
[実施例30:数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)、基材変更(TAC+ハードコート層へのコーティング)、光ラジカル硬化]
実施例26の有機無機複合体Uを使用して、シクロヘキサノンをDAAに変更し、実施例26と同様の方法で、コーティング材製造した。これを実施例15の基材(TAC+ハードコート層)上に、塗工し、実施例26と同様の方法で、有機無機複合膜を製造し、評価した。評価結果を表10に示す。
溶解性パラメーターを制御することで、屈折率の制御ができることがわかった。
【0294】
[比較例1]
表3の配合に従って、以下の手順で、フリーラジカル重合による有機無機複合体αを合成した。得られた有機無機複合体αを、
参考例19と同様の方法で評価した。評価結果を表8に示す。
(1)回転子を入れたシュレンクフラスコに、AIBNを加え、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMEKを窒素下で導入し、攪拌したものを、触媒溶液とした。
(2)冷却管を接続し、回転子を入れた別のシュレンクフラスコに、CPS改質20nm球状シリカ粒子を投入した。
(3)シュレンクフラスコに冷却管を接続し、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した。
(4)フラスコに、窒素下で残りのMIBK溶媒を導入し、5時間攪拌した後、MMAとHEMAのモル比が90/10で、全モノマー重量が、表面改質無機粒子に対して78質量%(MMAモノマーとHEMAモノマー)になるようにモノマーを導入し、80℃のオイスバスに浸し、攪拌した。
(5)更に、上記で調製した触媒溶液を、窒素下で導入後、反応液を6時間攪拌し、重合反応を行った。
(6)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離して、静置した。
(7)静置後、上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、MIBKを加えて再分散させた後、ヘキサンを加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返し、最後にヘキサンで洗浄し、上澄み液を廃棄することで未反応のモノマーを除去した。
(8)残った沈殿物に2、6−ジ−tert−ブチルメチルフェノールとMEK溶媒を加えて、溶液が透明になるまで攪拌を行なった。
(9)次いで、溶液を60℃に加熱した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとジブチルチンジラウレートを加えて、6時間攪拌し、HEMAと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの付加反応を行なった。
(10)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、静置した。沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離を行なった。
(11)上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、MEKを加えて再分散させた後、ヘキサンを加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返し、最後にヘキサンで洗浄し、上澄み液を廃棄することで未反応のモノマーを除去した。
(12)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、風乾することにより、液体を揮発させ、有機無機複合体αを得た。
(13)ポリマーの分子量は、有機無機複合体αがゲル化したため完全に溶解しなかったが、溶解成分のみを測定したところ分子量分布は2.3より大きかった。その有機無機複合体αを使用し、上述の方法で、コーティング液を調整した結果、明らかに溶解していない凝集物が沈殿していた。このコーティング液から得られたコーティング膜の外観を目視で確認したところ、粒子の凝集が見られ、微白濁を呈していた。また、密着性も低下した。得られた有機無機複合硬化膜の評価結果を表11に示す。
【0295】
[比較例2]
無機化合物粒子を配合せずに、表3及び4の配合に従って、重合反応を行い、p(MMA−co−HEMA)共重合ポリマーを合成し、
参考例19と同様に、反応性二重結合を有する化合物を付加させた。得られた有機ポリマーとBPS改質数珠状シリカ粒子A1の混合コーティング膜を作成し、
参考例19と同様の方法で評価した。
(1)回転子を入れたシュレンクフラスコに、CuBrを加え、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMEKを窒素下で導入し、攪拌した。
(2)上記溶液に、PMDETAを加え、40℃で攪拌したものを、触媒溶液とした。
(3)回転子を入れたシュレンクフラスコを、内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した後、少量のMIBKとEBIBを窒素下で導入し、攪拌したものを、重合開始剤溶液とした。
(4)回転子を入れた、別のシュレンクフラスコに、冷却管を接続し、フラスコ内部を真空処理してから窒素置換する操作を3回繰り返して、フラスコ内を脱酸素した。
(5)フラスコに、窒素下で残りのMIBK溶媒、MMAモノマーとHEMAを導入し、80℃のオイスバスに浸し、攪拌した。
(6)更に、上記で調製した触媒溶液と重合開始剤溶液を、窒素下で導入後、反応液を10時間攪拌し、重合反応を行った。
(7)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、静置した。その後、上澄み液を廃棄した。
(8)残った沈殿物に、ヘキサンを再び加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返した。
(9)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、一晩風乾することにより、液体を揮発させ、沈殿物「p(MMA−co−HEMA)」を得た。
(10)残った沈殿物に2、6−ジ−tert−ブチルメチルフェノールとMEK溶媒を加えて、溶液が透明になるまで攪拌を行なった。
(11)次いで、溶液を60℃に加熱した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとジブチルチンジラウレートを加えて、6時間攪拌し、HEMAと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの付加反応を行なった。
(12)フラスコを氷浴に浸して速やかに冷却してから、ヘキサンに投入して攪拌し、静置した。沈殿物が沈みにくい場合は、遠心分離で分離を行なった。
(13)上澄み液を廃棄した後、残った沈殿物に、MEKを加えて再分散させた後、ヘキサンを加えて静置し、上澄み液を廃棄した。この操作を更に2回繰り返し、最後にヘキサンで洗浄し、上澄み液を廃棄することで未反応のモノマーを除去した。
(14)残った沈殿物に窒素を吹きこみながら、風乾することにより、液体を揮発させ、フリーポリマー「p(MMA/HEMA/MOI)」を得た。
(15)ポリマーの数平均分子量(Mn)を上述の方法で測定したところ、Mn=61,200であった。更に、分子量分布(Mw/Mn)を算出したところ、Mw/Mn=1.85(≦2.3)であった。
(16)上記ポリマーに、無機含量が90重量%になるようにBPS改質数珠状シリカ粒子A1を加えて、
参考例19と同様の方法で、有機ポリマーとBPS改質数珠状シリカ粒子A1の混合物で、有機無機複合膜を作成し、評価した。
(17)得られた有機無機複合膜の外観を目視で確認したところ、微白濁を呈していた。有機無機複合硬化膜の全光線透過率とヘーズを、上述の方法で測定したところ、全光線透過率は82%、ヘーズは10.1%であった。また、密着性も低下した。得られた有機無機複合硬化膜の評価結果を表11に示す。
【0296】
[比較例3]
表3及び4に従い、重合停止時間を14時間とした以外は、
参考例22と同様の方法で有機無機複合体β、製造し、評価した。得られた有機無機複合体βの無機含量は、47質量%であり、屈折率を低下させる効果は見られなかった。得られた有機無機複合膜の評価結果を、表11に示す。
【0297】
[比較例4]
表3及び4に従い、重合停止時間を20分とした以外は、
参考例22と同様の方法で、有機無機複合体γを製造し、評価した。得られた有機無機複合体γの無機含量は96質量%であり、外観を目視で確認したところ、微白濁を呈していた。また、得られた有機無機複合膜が脆く、破損してしまい、屈折率等の評価ができなかった。評価結果を表11に示す。
【0298】
[比較例5]
参考例22の有機無機複合体O(65質量%)に、比較例2のフリーポリマー「p(MMA/HEMA/MOI)」(35質量%)を加え、
参考例22と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を作製し、評価した。得られた有機無機複合膜には、屈折率を低下させる効果は見られなかった。評価結果を、表11に示す。
【0299】
[
参考例31]
参考例4に記載の有機無機複合体Dを使用し、下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(a)に相当する)を作製し、評価した。
(1)
参考例4の有機無機複合体Dを用い、
参考例4と同様の方法で、コーティング材を作製した。
(2)上記コーティング材を使用し、上記の方法で、評価用の低屈折率層を作製し、屈折率を測定したところ、1.20であった。
(3)上記コーティング材を、固形分濃度を3質量%に希釈し、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて、PETフィルムに塗工、乾燥し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(4)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ0.04%であり、反射防止効果を有することがわかった。更に映り込みを評価したところ、基準のpMMAの反射防止フィルム(比較例6)よりも映り込みが少なく、合格(「A」)と判断した。
【0300】
[比較例6]
参考例4のBPS改質60nm中空シリカ粒子の代わりに、EBIBを使用し、表3の配合に従って、pMMAを合成した。下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(a)に相当する)を作製し、評価した。
(1)上記pMMAを用い、
参考例4と同様の方法で、コーティング材を得た。
(2)上記コーティング材を使用して、上記の方法でバーコーターを用いて、評価用の低屈折率層を作製し、屈折率を測定したところ、1.49であった。
(3)上記コーティング材を使用し、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて、PETフィルムに塗工、乾燥し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、透明性を維持していた。
(4)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ4.1%であり、反射防止効果が不十分であった。
【0301】
[実施例32]
実施例10の有機無機複合体Jを使用し、以下の方法で、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルムを作製し、評価した。
【0302】
以下の方法で、TACフィルム上にハードコート層を形成し、更にその上に低屈折率層を積層することで、反射防止フィルム(
図2(b)に相当する)を作製した。
(1)100gのウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製、「紫光UV−1700B」)に、100gのMEKを混合した。
(2)更に光重合開始剤として、5gの1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュア184」)と、1gの2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製、「イルガキュア907」)を加えて混合し、ハードコート液とした。
(3)TACフィルム上に、上記ハードコート液をバーコーターで塗工し、90℃の送風乾燥機で2分間乾燥した。更に紫外線硬化装置(セイエンジニアリング株式会社製)を使用して、窒素下で、積算光量500mJ/cm
2でUV照射し、厚み約5μmのハードコート層を形成した。
(4)実施例10の有機無機複合体Jを使用して、実施例10と同様の方法でコーティング材を作製し、更に溶媒で3質量%濃度に希釈した。
(5)上記ハードコート層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(6)更に、実施例10と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(7)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ0.1%であり、反射防止効果を有することがわかった。更に映り込みを評価したところ、基準のpGMAの反射防止フィルム(比較例7)よりも映り込みが少なく、合格(「A」)と判断した。
【0303】
[比較例7]
実施例10の、BPS改質数珠状シリカ粒子A1の代わりに、EBIBを使用し、表3の配合に従って、pGMAを合成した。下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(b)に相当する)を作製し、評価した。
(1)上記pGMAを用い、実施例10と同様の方法で、コーティング材を得た。
(2)上記コーティング材を、上記の方法でバーコーターを用いて、評価用の低屈折率層を作製し、屈折率を測定したところ、1.51であった。
(3)
参考例31と同様の方法で、TACフィルム上にハードコート層を作製した。
(4)上記コーティング材を、固形分濃度3質量%に希釈し、上記ハードコート層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(5)更に、実施例10と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(6)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ4.5%であり、反射防止効果が不十分であった。
【0304】
[
参考例33]
参考例19の有機無機複合体Lを使用し、下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(d)に相当する)を作製し、評価した。
(1)実施例32と同様の方法で、TACフィルム上にハードコート層を作製した。
(2)更にハードコート層の上に、高屈折率コーティング材(JSR株式会社製、「オプスターKZ6666」:屈折率1.74)を、バーコーターで塗工し、90℃の送風乾燥機で2分間乾燥した。
(3)更に紫外線硬化装置(セイエンジニアリング株式会社製)を使用して、窒素下で、積算光量1J/cm
2でUV照射し、支持体上に、厚み約120nmの高屈折率層を形成した。
(4)上記有機無機複合体Lを使用し、参考例19と同様の方法で、コーティング材を得た。
(5)上記コーティング材を、固形分濃度3質量%に希釈し、上記高屈折率層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(6)更に、参考例19と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(7)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ1.1%であり、反射防止効果を有することがわかった。更に映り込みを評価したところ、基準のp(MMA/HEMA/MOI)の反射防止フィルム(比較例8)よりも、映り込みが少なく、合格(「A」)と判断した。
【0305】
[比較例8]
参考例19の、BPS改質20nm球状シリカ粒子の代わりに、EBIBを使用し、表3及び4の配合に従って、
参考例19と同様の方法で、p(MMA/HEMA/MOI)を合成した。下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(d)に相当する)を作製し、評価した。
(1)上記p(MMA/HEMA/MOI)を用い、
参考例19と同様の方法で、コーティング材を得た。
(2)上記コーティング材を、上記の方法でバーコーターを用いて、評価用の低屈折率層を作製し、屈折率を測定したところ、1.49であった。
(3)実施例32と同様の方法で、TACフィルム上に、ハードコート層、高屈折率層を作製した。
(4)上記コーティング材を、固形分濃度3質量%に希釈し、上記高屈折率層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(5)更に、
参考例19と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(6)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ3.1%であり、反射防止効果が不十分であった。
【0306】
[実施例34]
実施例25の有機無機複合体Rを使用し、以下の方法で、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルムを作製し、評価した。
【0307】
実施例32と同様の方法で、TACフィルム上にハードコート層を形成し、更にその上に低屈折率層を積層することで、反射防止フィルム(
図2(b)に相当する)を作製した
(1)実施例25の有機無機複合体Rを使用して、実施例25と同様の方法でコーティング材を作製し、更に溶媒で3質量%濃度に希釈した。
(2)上記ハードコート層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(3)更に、実施例25と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(4)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ0.05%であり、反射防止効果を有することがわかった。更に映り込みを評価したところ、基準のp(EMA/HEMA/AOI)の反射防止フィルム(比較例9)よりも映り込みが少なく、合格(「A」)と判断した。
【0308】
[比較例9]
実施例25の、BPS改質数珠状シリカ粒子A2の代わりに、EBIBを使用し、表3及び4の配合に従って、実施例25と同様の方法で、p(MMA/HEMA/AOI)を合成した。下記の手順に従い、コーティング材、低屈折率層、反射防止フィルム(
図2(b)に相当する)を作製し、評価した。
(1)上記p(MMA/HEMA/AOI)を用い、実施例25と同様の方法で、コーティング材を得た。
(2)上記コーティング材を、上記の方法でバーコーターを用いて、評価用の低屈折率層を作製し、屈折率を測定したところ、1.49であった。
(3)実施例33と同様の方法で、TACフィルム上に、ハードコート層を作製した。
(4)上記コーティング材を、固形分濃度3質量%に希釈し、ハードコート層の上に、低屈折率層の厚みが約110nmになるように、上述の方法で、バーコーターを用いて塗工、乾燥した。
(5)更に、実施例25と同様の方法で、UV照射し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。
(6)反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ4.3%であり、反射防止効果が不十分であった。
【0309】
[比較例10]
比較例9のp(MMA/HEMA/AOI)の代わりに、比較例3の有機無機複合体β[数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/MOI)]を用いた以外は、比較例9と同様の方法で、反射防止フィルムを作製し、評価した。
得られた反射防止フィルムの外観を目視で確認したところ、粒子の凝集は見られず、透明性を維持していた。しかしながら、反射防止フィルムの最小反射率を、上述の方法で測定したところ4.1%であり、反射防止効果が十分でなかった。
【0310】
[実施例35]
実施例32の反射防止フィルムを使用して、以下の手順で偏光板を作製し、液晶表示装置(LCD)に組み込んで、評価を行った。
〔偏光子の作製〕
(1)ヨウ素0.63質量%、ヨウ化−カリウム9.44質量%、イオン交換水89.93質量%(合計で100質量%)を混合し、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液を作製した。
(2)ポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製)を、上記ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液に5分間浸漬した。
(3)上記フィルムを、4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦軸方向に一軸延伸し、緊張状態を保った状態で乾燥し、偏光子を得た。
〔反射防止フィルムの鹸化処理〕
(1)1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を調製し、さらに50℃に温度調節したものを、鹸化液とした。
(2)
参考例1の反射防止フィルムの支持体の裏面(反射防止膜が形成されていない面)を、上記鹸化液を使用して、鹸化処理した後、イオン交換水で十分に洗浄した。
(3)更に鹸化処理した面を、0.005mol/L硫酸水溶液で洗浄後、イオン交換水で十分に洗浄し、100℃で10分間乾燥させた。
〔偏光板の作製〕
(1)上記偏光子の片面と、上記反射防止フィルムの鹸化処理した面を、ポリビニルアルコール系接着剤を使用して、貼りあわせた。
(2)更に偏光子のもう片方の面と、片面を鹸化処理したTACフィルムの鹸化処理した面を、ポリビニルアルコール系接着剤を使用して、貼りあわせ、偏光子の両面が保護された偏光板を得た。
〔液晶表示装置(LCD)への組み込み〕
(1)評価用に、「液晶表示装置(LCD)、透過型TNモード:液晶セルとバックライトの間に、偏光分離フィルム(住友3M株式会社製、「DBFF」)を有するもの」搭載のノートパソコンを準備した。
(2)液晶表示装置(LCD)の視認側の偏光板を取り外し、代わりに、上記偏光板を反射防止膜側が最表面となるように、貼り換えた。
(3)上記液晶表示装置(LCD)を作動させたところ、比較例10と比較して、背景の映り込みが極めて低く、画像品位の非常に高い、表示装置が得られた。
【0311】
[比較例11]
比較例7の反射防止フィルムを使用して、実施例35と同様の方法で、偏光板を作製し、液晶表示装置(LCD)に組み込んで、評価を行った。
上記液晶表示装置(LCD)を作動させたところ、実施例35と比較して、背景の映り込みが激しく、画像品位が顕著に低下した。
【0312】
[実施例36]
実施例34の反射防止フィルムを使用して、実施例35と同様の方法で、偏光板を作製し、液晶表示装置(LCD)に組み込んで、評価を行った。上記液晶表示装置(LCD)を作動させたところ、比較例11と比較して、背景の映り込みが極めて低く、画像品位の非常に高い、表示装置が得られた。
【0313】
[比較例12]
比較例9の反射防止フィルムを使用して、実施例35と同様の方法で、偏光板を作製し、液晶表示装置(LCD)に組み込んで、評価を行った。
上記液晶表示装置(LCD)を作動させたところ、実施例36と比較して、背景の映り込みが激しく、画像品位が顕著に低下した。
【0314】
[実施例37]
実施例34の反射防止フィルムの支持体の裏面(反射防止膜が形成されていない面)を、有機EL表示装置(ELD)の表面のガラス面に、粘着剤を介して貼りあわせた。装置を作動させたところ、比較例12に比較して、画面の反射が顕著に抑制された、視認性の高い表示装置が得られた。
【0315】
[比較例13]
実施例34の反射防止フィルムの代わりに、比較例9の反射防止フィルムを使用し、実施例37と同様の方法で、有機EL表示装置(ELD)の表面のガラス面に、粘着剤を介して貼りあわせた。装置を作動させたところ、実施例34に比較して、画面の反射が顕著に高く、視認性の低い表示装置が得られた。
【0316】
[実施例38]
射出成形機(株式会社日本製鋼所製、「J−50EP」)を使用して、シリンダ−温度290℃、金型温度80℃、成形サイクルを1分の条件で、厚さ2mm、直径50mmの、ポリカーボネート樹脂(旭美化成社製)を成形して、眼鏡レンズを得た。
【0317】
実施例23の有機無機複合体P[数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)]を使用し、コーティング材製造に使用する溶媒を、MEK/シクロヘキサノン混合溶媒からメチルセロソルブに変更し、固形分濃度を3質量%とした以外は、実施例23と同様の方法で、コーティング材を得た。
【0318】
上述の眼鏡レンズの両面に、膜厚が低屈折率層の厚みが約110nmになるように、スプレーを用いて上記コーティング材を塗工した。乾燥後、実施例23と同様の方法でUV硬化処理を行った。得られた眼鏡レンズは、比較例13の眼鏡レンズと比較して、顕著に映り込みが少なく、視認性に優れていた。
【0319】
[比較例14]
実施例38と同様の方法で、眼鏡レンズを成形し、コーティング材の塗工を行わすに評価を行ったところ、映り込みが激しく、視認性が不良であった。
【0320】
[比較例15]
実施例38の有機無機複合体P[数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)]の代わりに、比較例9のp(MMA/HEMA/AOI)を使用し、コーティング材製造に使用する溶媒を、MEK/シクロヘキサノン混合溶媒からメチルセロソルブに変更し、これら以外は比較例9と同様の方法で、コーティング材を得た。このコーティング材を用いて、実施例38と同様の方法で眼鏡レンズを作製した。得られた眼鏡レンズを評価したところ、映り込みが激しく、視認性が不良であった。
【0321】
[比較例16]
実施例38の有機無機複合体P[数珠状SiO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)]の代わりに、比較例10の有機無機複合体β[数珠状SiO
2−p(MMA/HEMA/MOI)]を使用し、コーティング材製造に使用する溶媒を、MEK/シクロヘキサノン混合溶媒からメチルセロソルブに変更した以外は、比較例10と同様の方法で、コーティング材を得た。このコーティング材を用いて、実施例38と同様の方法で、眼鏡レンズを作製した。得られた眼鏡レンズを評価したところ、映り込みが激しく、視認性が不良であった。
【0322】
[実施例39]
有機無機複合体Jを使用し、実施例32と同様の方法で、コーティング材を得た。更に、スライドガラス(全光線透過率=90.1%)上に、実施例32と同様の方法で、低屈折率層の厚みが約110nmとなるように、コーティング材ををコーティングし、乾燥及びUV硬化処理を行って、低屈折率層を形成した。得られた積層フィルムの全光線透過率を測定したところ、92.3%と有意に高く、光取出し効率が向上していることがわかった。
次に、スライドガラスの裏面にも、同様の方法で低屈折率層を形成し、全光線透過率を測定したところ、93.8%と更に高くなり、光取出し効率が、より向上することがわかった。
【0323】
[実施例40]
ポリカーボネート樹脂(旭美化成社製)を使用し、溶融押し出し成形法で、厚み約200μmのフィルム(全光線透過率=90.3%)を作製した。
このフィルム上に、実施例38のコーティング材をバーコーターでコーティングし、乾燥及びUV硬化処理を行って、厚みが約110nmの低屈折率層を形成させた。得られた積層フィルムの全光線透過率を測定したところ、92.5%と有意に高く、光取出し効率が向上していることがわかった。
次に、フィルムの裏面にも、同様の方法で低屈折率層を形成し、全光線透過率を測定したところ、94.0%と更に高くなり、光取出し効率が、より向上することがわかった。
【0324】
[実施例41]
PMMA板(旭化成テクノプラス株式会社製、厚み800μm、全光線透過率=92.9%、ヘーズ=0.3%)に、実施例38のコーティング材をバーコーターでコーティングし、乾燥及びUV硬化処理を行って、厚みが約110nmの低屈折率層を形成させた。得られた積層フィルムの全光線透過率を測定したところ、95.3%と有意に高く、光取出し効率が向上していることがわかった。また最小反射率は、0.1%であった。
次に、PMMA板の裏面にも、同様の方法で低屈折率層を形成した。外観は透明性を維持しており、ヘーズは0.3%であった。全光線透過率を測定したところ、97.2%と更に高くなり、光取出し効率が、より向上することがわかった。
【0325】
[比較例17]
実施例41のコーティング材の代わりに、比較例15のコーティング材を使用した以外は、実施例41と同様の方法で、PMMA板の片面又は両面に、厚みが約110nmの低屈折率層を形成させた。得られた積層フィルムの全光線透過率を測定したところ、片面だけに低屈折率層を形成した場合は、92.8%であり、両面の場合は93.3%と有意差が無く、光取出し効率が向上しなかった。また最小反射率は4.1%であり、十分な反射防止効果が得られなかった。
【0326】
[比較例18]
実施例41のコーティング材の代わりに、比較例16のコーティング材を使用した以外は、実施例41と同様の方法で、PMMA板の片面又は両面に、厚みが約110nmの低屈折率層を形成させた。得られた積層フィルムの全光線透過率を測定したところ、片面だけに低屈折率層を形成した場合は、93.1%であり、両面の場合は92.9%と有意差が無く、光取出し効率が向上しなかった。また最小反射率は4.2%であり、十分な反射防止効果が得られなかった。
【0327】
[実施例42]
有機無機複合体Jを使用し、実施例32と同様の方法でコーティング材を得た。更に、クリアガラスLED電球(パナソニック株式会社製)に、スプレーにより、コーティング材をコーティングし、乾燥及びUV硬化処理を行って、厚みが約110nmの低屈折率層を形成させた。
暗室で、未処理のクリアガラスLED電球と、低屈折率層を形成させたクリアガラスLED電球を並べて点灯させたところ、低屈折率層を有するものの方が、明るく感じられた。
【0328】
[
参考例43:ZrO
2−g−p(MMA/HEMA/AOI)、全工程一環合成、光ラジカル硬化]
実施例26の数珠状シリカ溶液B(「MIBK−ST−UP」)の代わりに、上述のジルコニア溶液を使用した以外は、実施例26と同様の方法で、BIDS改質ジルコニア溶液を作製した。ジルコニア溶液の一部を洗浄及び乾燥し、ハロゲン含有量を測定したところ、0.2質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
引き続き、実施例26と同様の方法で、有機無機複合体Wを得た。評価結果を表7に示す。
更に、有機無機複合体Wを使用して、
参考例19と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した結果を表10に示す。基材は、実施例14のTAC上に、ハードコート層を形成したものを用いた。
【0329】
[実施例44:(数珠状SiO
2/TiO
2)−g−p(MMA/HEMA/AOI)、全工程一環合成、光ラジカル硬化]
以下の手順で、混合液Aを作製した。
混合液A:数珠状シリカ溶液B(「MIBK−ST−UP」)と、チアニア溶液を、容積比で、9:1の比率で混合し、20質量%(数珠状SiO
2+TiO
2)/MIBK溶液を得た。
実施例26の数珠状シリカ溶液B(「MIBK−ST−UP」)の代わりに、上述の混合液Aを使用した以外は、実施例26と同様の方法で、BIDS改質混合液Aを作製した。混合液の一部を洗浄乾燥し、ハロゲン含有量を測定したところ、0.1質量%であった。塩素は検出されなかったため、臭素含有量をハロゲン含有量として示した。
引き続き、実施例26と同様の方法で、有機無機複合体Xを得た。評価結果を表7に示す。
更に、有機無機複合体Xを使用して、
参考例19と同様の方法で、コーティング材と有機無機複合膜を製造し、評価した結果を表10に示す。基材は、実施例14のTAC上に、ハードコート層を形成したものを用いた。
【0330】
【表1】
【0331】
【表2】
【0332】
【表3】
【0333】
【表4】
【0334】
【表5】
【0335】
【表6】
【0336】
【表7】
【0337】
【表8】
【0338】
【表9】
【0339】
【表10】
【0340】
【表11】
【0341】
表4〜11に示される実験結果から、ポリマーを、無機物粒子に結合した重合開始基から、リビングラジカル重合法により合成することによって、ポリマー鎖の長さが揃ったポリマー層が形成され、各有機無機複合体が結合することなく単独で生成し、また、空隙を埋めるフリーポリマーの量が少ないことによって、無機充填量に対する空隙率を容易に高めることが可能な有機無機複合膜になることがわかった。また、該有機無機複合膜を硬化させることによって、耐溶剤性に優れ、膜強度の高い有機無機複合膜になることがわかった。