【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本発明によれば、航空機用のタイヤであって、
‐トレッドを介して路面に接触するようになっていて且つリムに接触するようになった2つのビードにサイドウォールによって連結されているクラウンと、
‐2つのビードを互いに連結している半径方向カーカス補強材と、
‐トレッドの半径方向内側に位置し且つ半径方向カーカス補強材の半径方向外側に位置していて、実働補強材及び保護補強材を有するクラウン補強材とを有し、
‐実働補強材は、保護補強材の半径方向内側に、実働補強材の少なくとも1つの層を有し、
‐各実働補強材層は、軸方向に並置された実質的に円周方向のストリップから成り、
‐各ストリップは、ポリマー被覆材料で被覆された相互に平行な繊維補強要素で構成されている、タイヤにおいて、
少なくとも1つの実働補強材層の各ストリップは、少なくともその半径方向内側の軸方向フェースにわたって、少なくとも1本の平行な実質的に円周方向の細線状熱伝導性材料を含む熱伝達要素と接触状態にあり、熱伝達要素の熱伝導性材料の熱伝導率は、熱伝達要素と接触状態にあるストリップの繊維補強要素のポリマー被覆材料の熱伝導率の少なくとも50倍に等しく、熱伝達要素の厚さと熱伝達要素の引張り弾性率の積は、ストリップの厚さとストリップの引張り弾性率の積のせいぜい0.3倍に等しいことを特徴とするタイヤを用いて達成される。
【0018】
本発明によれば、少なくとも1つの実働補強材層の各ストリップは、少なくともその半径方向内側軸方向フェースにわたって、熱伝導性材料で作られた相互に平行な実質的に円周方向の細線状要素を含む熱伝達要素と接触状態にあり、このことは、ストリップのフェースがタイヤの回転軸線に平行であり且つタイヤの回転軸線の半径方向最も近くに位置していることを意味している。
【0019】
熱伝達要素は、少なくとも1つの熱伝導性材料の存在により熱を除去する機能を実行する。熱伝達要素は、必ずしも熱伝導性材料(これには限定されない)で構成される必要はない。
【0020】
熱伝導性材料は、熱伝導率が高い材料、例えば金属材料であることを意味している。材料の熱伝導率は、W・m
-1・K
-1で表される物理量であり、これは、材料が熱エネルギーを運ぶことができるという特徴を示している。熱伝導性材料の熱伝導率が高ければ高いほど、この材料は熱エネルギーをそれだけ一層良好に運搬できる。
【0021】
これとは対照的に、材料が熱の導体ではなく、より正確に言えば、熱の不良導体であるという表現は、材料の熱伝導率が低く、例えばタイヤに従来用いられている従来型ポリマー材料であることを意味している。
【0022】
実働補強材層の軸方向端部のところで生じた熱又は熱エネルギーは、実働補強材層の軸方向端部のところに位置するストリップと接触状態にある熱伝達要素によって除去され、次に、軸方向最も内側に位置すると共に軸方向に並置されたストリップと接触状態にある熱伝達要素に次第に軸方向内方に伝達される。ストリップは、実質的に円周方向に差し向けられているので、かかるストリップと接触状態にあるそれぞれの熱伝達要素は、実働補強材層の軸方向端部のところで生じた熱を円周方向に分布させる。かくして、実働補強材層の軸方向端部のところで生じた熱は、軸方向と円周方向の両方向において並置状態にあるストリップとそれぞれ接触状態にある熱伝達要素によって除去され、それにより実働補強材層のその軸方向端部とその中央部分との間の軸方向幅と実働補強材層の周囲にわたって温度を均一にする。
【0023】
目的が実働補強材層の軸方向端部と中央との間で温度を均一にすることにあるこの熱伝達が可能である。というのは、実働補強材層の軸方向端部と中央との間における温度が高く、それ故、熱の伝導を生じさせる温度勾配が作られるからである。
【0024】
実働補強材層を構成するストリップと接触状態にある熱伝達要素によって熱エネルギーを優先的に除去するためには、熱伝達要素の熱伝導性材料の熱伝導率は、熱伝達要素と接触状態にあるストリップの繊維補強要素を被覆しているポリマー被覆材料の熱伝導率よりも著しく高いことが必要であり、ポリマー被覆材料は、性質上、熱の不良導体である。本発明者は、熱伝達要素と接触状態にあるストリップの繊維補強要素を被覆しているポリマー被覆材料の熱伝導率の少なくとも50倍に等しい熱伝導性材料の熱伝導率が実働補強材層の軸方向端部のところの熱のレベルを許容可能なレベル、即ち、関与する材料を劣化させる可能性の低いレベルまで減少させることができるのに十分な量の熱エネルギーを除去することができるということを実証した。
【0025】
この場合も又、本発明によれば、熱伝達要素の厚さと熱伝達要素の引張り弾性率の積は、ストリップの厚さとストリップの引張り弾性率の積のせいぜい0.3倍に等しい。
【0026】
引張り弾性率は、張力曲線に接した直線の勾配として定められ、張力曲線上の点のところの伸びの関数として50daNの引張り力に一致した引張り力を定める。
【0027】
この特徴により、熱伝達要素がストリップと熱伝達要素の組立体の全体的円周方向伸び剛性に対してもたらす寄与の程度を制限することができる。換言すると、熱伝達要素の存在により、ストリップの受ける機械的応力に対する影響が制限される。
【0028】
具体的に説明すると、ストリップの厚さと引張り弾性率と伸びの積を計算すると、ストリップの単位軸方向幅当たりの円周方向荷重が与えられる。同様に、熱伝達要素の厚さと引張り弾性率と伸びの積により、熱伝達要素の単位軸方向幅当たりの円周方向荷重が与えられる。かくして、ストリップの伸びと熱伝達要素の伸びは、同一なので、このことは、熱伝達要素の単位軸方向幅当たりの円周方向荷重又は分布状態の張力は、熱伝達要素と接触状態にあるストリップの単位軸方向幅当たりの円周方向荷重のせいぜい0.3倍に等しいことを意味している。かくして、換言すると、熱伝達要素による機械的寄与の度合いは、円周方向荷重に反作用する際のストリップの機械的寄与の度合いの30%に制限されたままである。
【0029】
有利には、各実働補強材層の各ストリップは、少なくともその半径方向内側の軸方向フェースにわたって、少なくとも1つの熱伝導性材料を含む熱伝達要素と接触状態にある。最も高い温度を有する軸方向端部のところに生じる熱だけでなく、実働補強材層の各々の軸方向端部のところに生じる熱は、有利には、各実働補強材層中の、従って、半径方向補強材の厚さ全体にわたって温度を均一にするよう除去される。
【0030】
また、有利には、熱伝達要素は、少なくとも1つの実質的に円周方向のバンドで構成される。金属バンドが、ストリップの周囲全体にわたって延び且つ子午面における最も短い寸法が半径方向に差し向けられると共に子午面における最も長い寸法が軸方向に差し向けられる長方形の子午線断面を有する要素である。実質的に円周方向のバンドは、これが接触状態にあるストリップの実質的に円周方向の経路を辿る。
【0031】
第1の好ましい実施形態では、熱伝達要素は、軸方向幅が熱伝達要素と接触状態にあるストリップの軸方向幅に等しい単一の実質的に円周方向の金属バンドで構成される。単一の実質的に円周方向の金属バンドの軸方向幅がストリップの軸方向幅に等しいかかる実施形態は、タイヤの製造の面で有利である。というのは、ストリップと単一の実質的に円周方向の金属バンドをストリップの初歩的レベルで前もって組み立てることができ、次に、ストリップ及び単一の実質的に円周方向の金属バンドでこのようにして作られた組立体を実働補強材層を作るために用いられる円筒形製造装置に巻き付けることができるからである。さらに、円周方向及び軸方向における熱の伝導の連続性は、各単一の実質的に円周方向の金属製のバンドの連続性及びストリップの螺旋状又はジグザグ状円周方向巻回によって与えられる。かくして、この実施形態により、軸方向と円周方向の両方向における実働補強材層の端部のところで生じる熱を最適に除去することができる。
【0032】
本発明の第2の実施形態によれば、熱伝達要素は、軸方向幅の合計が熱伝達要素と接触状態にあるストリップの軸方向幅にせいぜい等しい複数の軸方向に並置された実質的に円周方向のバンドで構成される。この実施形態は、熱伝導という観点において、単一の実質的に円周方向金属バンドを含む先の実施形態と同等である。さらに、実質的に円周方向の基本的金属バンドの並置により、有利には、単一の実質的に円周方向金属バンドよりも低い半径方向周りの曲げ剛性が得られ、このことは、ストリップの半径方向周りの曲げ剛性に対し、及びかくして実働補強材層の半径方向周りの曲げ剛性に対するこの単一の実質的に円周方向金属バンドの影響が小さいことを意味しており、それ故、熱伝達要素の導入により、実働補強材の機械的挙動に対する影響が小さい。
【0033】
本発明の第3の実施形態の特徴によれば、熱伝達要素は、軸方向幅の合計が熱伝達要素が接触状態にあるストリップの軸方向幅にせいぜい等しい複数の軸方向に並置された実質的に円周方向の金属バンドで構成される。かくして、この実施形態では、熱伝達要素は、軸方向に1対ずつそれぞれが次のものから分離された複数の実質的に円周方向の金属バンドで構成され、このことは、実質的に円周方向金属バンドの軸方向幅の合計が実質的に円周方向金属バンドと接触関係をなすストリップの軸方向幅よりも小さいことを意味している。実質的に円周方向の金属バンド相互間のこの幾何学的不連続性のために、熱の伝導は、軸方向には連続して行われず、円周方向に連続して行われる。しかしながら、かかる実施形態により、互いに分離された実質的に円周方向の金属バンドで構成された熱伝達要素が単一の実質的に円周方向の金属バンドで構成された熱伝達要素の剛性よりも低い剛性を持つことが可能である。第2の実施形態の場合のように、1対ずつそれぞれが次のものから分離されている複数の実質的に円周方向の金属バンドの半径方向における曲げ剛性は、単一の実質的に円周方向の金属バンドの半径方向における曲げ剛性よりも低い。加うるに、この実施形態における熱伝達要素の円周方向伸び剛性は、ストリップと熱伝達要素の組立体の円周方向伸び剛性に対する寄与の度合いが僅かであるに過ぎず、これにより、実働補強材層が製造されているときに円筒形製造装置周りのストリップと熱伝達要素の組立体の容易な巻回が可能である。
【0034】
本発明のオプションとしての一特徴によれば、実質的に円周方向の金属バンドが、有利には、穴を有する。熱伝達要素が単一の実質的に円筒形の金属バンドで構成されているにせよ複数本の軸方向に並置され又は互いに分布された実質的に円周方向の金属バンドで構成されているにせよいずれにせよ、各実質的に円周方向金属バンドに設けられた穴は、金属バンドの半径方向外側のストリップと半径方向内側のストリップとの良好な付着をこれら穴を介するこれら2つのストリップのそれぞれのポリマー被覆材料相互間の直接的な接触により促進する。
【0035】
本発明のオプションとしての別の特徴によれば、実質的に円周方向の金属バンドが円形の穴を有する。ストリップと熱伝達要素の組立体の円周方向伸び剛性の面における上述の利点とは別に、例えば穴あけによって円形の穴を作ることは、工業的観点からは容易である。
【0036】
実質的に円周方向の金属バンドが、有利には、せいぜいバンドの軸方向幅の半分に等しい直径の穴を有する。というのは、金属バンドの穴の断面は、金属バンドが熱を伝導する上で効果的であるようにするために制限されなければならないからである。
【0037】
熱伝達要素の熱伝導性材料は、有利には、依然として金属製である。金属材料、例えばアルミニウムの熱伝導率は、200W・m
-1・K
-1であり、これに対し、ポリマー材料の熱伝導率は、0.3W・m
-1・K
-1である。
【0038】
好ましくは、熱伝達要素の熱伝導性材料は、熱伝導率が高く且つ密度が低いアルミニウムである。アルミニウムは、これが接触状態にあるストリップのポリマー被覆材料にくっつくようにするためのインターフェース被膜を必要とし、これを達成するのに利用できる技術は種々あり、かかる技術としては、真鍮形式の被膜、有機形式(シラン又はアミノシラン)の被膜、エポキシ又は市販の接着剤が挙げられる。
【0039】
アルミニウムで作られた1本又は数本の実質的に円周方向金属バンドで構成された熱伝達要素は、有利には、熱伝達要素の円周方向伸び剛性を制限するようせいぜい0.1mmに等しい一定の厚さを有する。
【0040】
最後に、熱伝達要素は、その周囲全体に沿って、軸方向に垂直な円周方向平面内に周期的な幾何学的振動形態を有することが有利である。これら周期的な幾何学的振動形態は、交互にV字形の曲がり部又は正弦波形状の起伏部であるのが良いが、これらには限定されない。周期的な幾何学的振動形態の存在により、熱伝達要素の円周方向伸長性が増大し、従って、熱伝達要素の引張り破壊の恐れが減少する。
【0041】
有利には、周期的幾何学的振動形態の最高最低振幅とこの周期の波長の比は、熱伝達要素に満足のいく円周方向伸長性を与えるために0.05を超える。
【0042】
本発明の別の要旨は、金属化ストリップであって、ポリマー被覆材料で被覆された相互に平行な繊維補強要素で構成されているストリップを有する金属化ストリップにおいて、金属化ストリップは、少なくともその半径方向内側の軸方向フェースにわたって、少なくとも1つの熱伝導性材料を含む熱伝達要素と接触状態にあり、熱伝達要素の熱伝導性材料の熱伝導率は、熱伝達要素と接触状態にあるストリップの繊維補強要素のポリマー被覆材料の熱伝導率の少なくとも50倍に等しく、熱伝達要素の厚さと熱伝達要素の引張り弾性率の積は、ストリップの厚さとストリップの引張り弾性率の積のせいぜい0.3倍に等しいことを特徴とするタイヤにある。
【0043】
本発明は又、本発明のタイヤへの上述の金属化ストリップの使用に関する。
【0044】
本発明の別の要旨は、本発明のタイヤに関して上述した特徴の全てを備える金属化ストリップにある。
【0045】
本発明の特徴及び他の利点は、添付の
図1〜
図4bの助けを借りると良好に理解されよう。