(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記より長い期間が、現在時間から所定の時間量さかのぼるreceding−horizon time windowにより規定される、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
自律的又は半自律的制御システムであり、前記コントローラが、インスリンの補正用量を投与するように、前記グルコースレベル信号に応答して前記インスリン用量制御信号を生成して、前記グルコースレベル信号の調節をする補正インスリンコントローラを含む、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
前記インスリンの基礎注入速度の変更は、最小限界値と最大限界値との間の範囲に制限され、この最小限界値及び最大限界値は、計算された生の変更値が前記範囲外となった際に前記基礎注入速度の実際の変更を決定するものである、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
前記公称基礎注入速度を連続的に調整することが、前記変更された基礎注入速度の移動積分又は合計平均を、前記より長い期間にわたって算出することを含む、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
前記公称基礎注入速度を連続的に調整することが、前記公称基礎注入速度に対する前記変更された基礎注入速度の比を、前記より長い期間にわたって算出することを含む、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
前記公称基礎注入速度を連続的に調整することが、前記公称基礎注入速度に対する前記変更された基礎注入速度の比を、各速度の対応する瞬間値の比の移動積分又は合計平均として、前記より長い期間にわたって算出することを含む、請求項7に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
前記公称基礎注入速度を連続的に調整することが、前記公称基礎注入速度に対する前記変更された基礎注入速度の比を、各速度の対応する瞬間値の重量比の移動積分又は合計平均として、前記より長い期間にわたって算出することを含む、請求項7に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
逆調節剤用量制御信号に応答して、前記対象者に逆調節剤を注入するよう作動する逆調節剤送達デバイスを更に備え、前記コントローラが、(3)前記グルコースレベル信号に基づいた生の用量制御値、及び(4)前記インスリン送達デバイスにより前記対象者に注入されたインスリンの効果の推定値に基づいた前記生の用量制御値の変更物としての前記逆調節剤用量制御信号、を生成する計算を行うことにより、前記逆調節剤用量制御信号を生成するよう作動する、請求項1に記載のセンサ駆動型グルコース制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の米国特許仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
1.2010年10月31日出願の米国特許第61/408,639号
2.2010年3月31日出願の米国特許第61/470,210号
【0009】
図1は、ヒトであってもよい動物対象(対象者)12の血糖レベルを調節するための自動化制御システム10を示す。対象者12は、カテーテル(一つ又は複数)により結合された一つ以上の送達デバイス14、例えば注入ポンプから、インスリンを対象者12の皮下空間へと受容する。下記に記載するように、送達デバイス14は、所定の環境下で血糖レベルを制御するための、例えばグルカゴン等の逆調節剤も送達することができる。インスリン及びグルカゴンの両方を送達するために、送達デバイス14は、インスリン及びグルカゴンのそれぞれ用の二重カートリッジを有する機械的駆動による注入機構であることが好ましい。本記載では、特にグルカゴンに言及しているが、これは単に利便性のためであり、他の逆調節剤を使用してもよいことを理解するべきである。同様に、本明細書で用語「インスリン」は、天然のヒト又は動物インスリン、及び多様な形態のいずれかの合成インスリン(通常「インスリン類似体」と称される)を含む、インスリン様物質の全形態を包含するものと理解するべきである。
【0010】
グルコースセンサ16は、対象者12に作動可能に結合されて、対象者12のグルコースレベルを連続的にサンプリングする。感知は、多様な方法で達成することができる。コントローラ18は、送達デバイス(一つ又は複数)14の作動を、グルコースセンサ16からのグルコースレベル信号19の関数として制御し、患者/使用者により提供され得る、プログラムされた入力パラメータ(PARAMS)20に従う。開示した技術の一つの特徴は、対象者12が消化した食事、又は任意の他の「フィードフォワード」情報に関する明確な情報を受容せずに実行する能力である。必要な一つの入力パラメータは、対象者12の体重である。外部から供給される他のパラメータは、「設定値」であり、これは下記に記載するように、システム10が維持するよう努める目標血糖レベルを確立する。
【0011】
コントローラ18は、本明細書に記載するような作動機能を提供する制御回路を有する電気デバイスである。一実施形態において、コントローラ18は、一つ以上のコンピュータプログラムを実行するコンピュータ命令処理回路を有するコンピュータ化されたデバイスとして実現されてもよく、前記一つ以上のコンピュータプログラムのそれぞれは、対応するコンピュータ命令のセットを含む。この場合、処理回路は、概して、一つ以上のプロセッサと、該プロセッサ(一つ又は複数)に結合されたメモリ及び入力/出力回路とを含み、メモリはコンピュータプログラム命令及びデータを格納し、入力/出力回路は、グルコースセンサ16及び送達デバイス(一つ又は複数)14等の外部デバイスに対するインターフェース(一つ又は複数)を提供する。
【0012】
図2は、コントローラ18の構造を示す。コントローラ18は、4つの別個のコントローラ、即ちグルカゴンコントローラ22、基礎インスリンコントローラ24、補正インスリンコントローラ26及びプライミングインスリンコントローラ28を含む。基礎インスリンコントローラ24は、公称速度コントローラ30及び変更コントローラ32を含む。図示するように、グルカゴンコントローラ22は、グルカゴン送達デバイス14−1に提供されるグルカゴン用量制御信号34を生成する。コントローラ24〜28からのそれぞれの出力36〜40は、組み合わされて、インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2に提供される全体的なインスリン用量制御信号42を形成する。図示するように、出力信号36自体は、公称速度コントローラ30及び変更コントローラ32のそれぞれの出力の組み合わせにより形成される。インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2は、異なるタイプ及び/又は量のインスリンを送達するように調整されたデバイスを含んでもよく、インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2の正確な形態はコントローラ24〜28に既知であり、かつ該コントローラの制御下にある。記載を容易にするために、一つ以上のインスリン送達デバイス14−2の集合は、下記でインスリン送達デバイス14−2として単数にて参照される。
【0013】
図2には、グルコースレベル信号19及びパラメータ20、並びに1セットのコントローラ間信号44を含む様々なコントローラの入力/出力信号も示されている。コントローラ間信号44は、情報が発生又は生成される一コントローラから、その情報を別のコントローラへ通信することを可能にし、その情報はその別のコントローラの制御機能に使用される。詳細を、下記の制御機能の記載にて提供する。
【0014】
補正コントローラ26は、MPC費用関数(cost function)を使用して、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0208113A1号に記載されている方法で、血糖レベルを調節する。
【0015】
上記に引用したClemens & Hough技術を参照すると、この手法は、静脈内インスリン注入の状況において実際的な有用性を有し得るが、おそらくインスリン注入が皮下に行われ、血液中へのインスリンの吸収が遅れる外来患者の状況では、インスリン投薬の無制御な増大を受けやすい。このような手法は、潜在的に、このような状況においてインスリン投薬の増大を制限するために、多くの場合、無効にされる必要がある。この方法の他の限界は、一つの時間スケール(固定数の連続した過去のグルコースレベルの獲得に関連した時間に等しい)のみを捕捉し;対象者の基礎インスリン要求における長期間の変動を計上しないことである。
【0016】
皮下インスリン投与が用いられた場合は常に、インスリン投薬の急激な増大を特に受けやすい、予め規定された基礎インスリン注入速度のみに依存するのではなく、代替的方法(本明細書で方法1と称される)は、(例えば、対象者の体重に基づいて、又は対象者の以前の開ループ若しくは閉ループ制御結果に基づいて)グルコース制御システムのオンライン操作を開始する前に決定された固定公称基礎注入速度の付近で、基礎インスリン注入速度を変更する。このことは、以下のように説明することができる:自動化インスリン注入をオンラインで制御し得る任意の方法を介して(例えば、モデル予測制御手順、比例積分微分制御手順、ファジー理論、神経回路網、又はいくつかの他の制御手順を介して)、他の方法ではインスリンの制御用量又は補正用量が示されない場合に、送達される基礎注入速度のインスリンを追加することができる。基礎速度での注入は、一般に、食事又はグルコース濃度レベルの高血糖可動域を処置するためのプライミング又は制御用量と比較して、より少量であるがより頻繁な用量を使用する。固定公称基礎注入速度が最初に(即ち、閉ループ制御のオンライン操作の開始直前に)規定され、次いでそれ自体の制御アルゴリズムにより変更されてもよく、又は固定公称基礎注入速度は、日々の(又は毎週の)の同一のパターンに従う固定基礎注入速度プロファイルの形態で予め規定された後、オンラインで変更されてもよい。基礎インスリン注入速度は、モデル予測制御、比例積分微分制御、ファジー理論、神経回路網等を含むがこれらに限定されない多様な制御手順のいずれかを使用して、固定公称注入速度の付近で自動的に変更される。
【0017】
Clemens & Houghにより記載された方法の他の相違点として、本明細書に記載した基礎インスリン注入速度の変更は、公称基礎注入速度の付近での最小値及び最大値の範囲内に収まるように抑制されて、インスリン投薬の急激な増大を防止するであろう。最大値は、例えば、固定公称基礎注入速度のある定数倍であり得る。
【0018】
方法1は、最大瞬間基礎注入速度の抑制を介して、インスリン投薬の急激な増大を防止することによるClemens & Houghの技術の改良を表すが、該方法は一つの時間スケール、即ちグルコース測定間のサンプリング間隔に関連した一つの時間スケールのみ捕捉する。方法1は、代替的方法(本明細書で方法2と称される)によって更に改良することができ、該方法では、公称基礎注入速度自体をある時間にわたって変動させることができ、これは次に、瞬間基礎注入速度が、より長い第2の時間スケールに引き継がれることを可能にし、対象者の基礎代謝インスリン要求の生理学的変動を捕捉することを可能にする。瞬間基礎注入速度は、グルコース測定間のサンプリング間隔に関連した非常に短い時間スケールに関して急速に変化し得る一方、瞬間基礎注入速度と比較してゆっくりとある時間にわたって変動する公称基礎注入速度の導入により、最大瞬間基礎注入速度を公称基礎注入速度のある定数倍にあるようにさらに抑制しながら、対象者の基礎代謝インスリン要求の生理学的ドリフトを捕捉できる第2の自由度が提供され、それによって基礎インスリン投薬の急激な増大が防止される。
【0019】
詳細には、
図3を参照すると、基礎インスリンコントローラ24は、グルコースレベル信号19に応答して、コントローラ24の出力信号36を介してインスリン用量制御信号42を生成する。46において、コントローラ24は、秒〜分のオーダーで生じるグルコースレベルの短期間の(以下にて「サンプリング間隔」と称される)変動に応答して、インスリンの基礎注入速度を、公称基礎注入速度に関して変更する。48において、コントローラ24は、変更された基礎注入速度と、公称基礎注入速度との間の数学的関係に基づいて、基礎注入速度の変更に関連した短期間(例えば、サンプリング間隔)よりも長い期間にわたって、公称基礎注入速度を連続的に調整する。
【0020】
方法2の一実施形態の一例として、インスリン(又はインスリン様薬剤)の公称基礎注入速度は、当初、t=0においてμ
0として規定され得る。次いで、下式のように、瞬間基礎注入速度、μ(t)≧0の移動積分平均値のスカラー倍として、時間間隔、Δtにわたって公称基礎注入速度、
のオンラインでの計算が開始され(そして各サンプリング間隔、δtにて更新され)てもよい。
【0022】
式中、αは、スケールパラメータである。代替的に、この手段は不連続時間にて行ってもよく、式中kは、現在の時間ステップのインデックスであり、δtは、不連続時間ステップのサイズであり(即ち、1のインデックス増分)、N=Δt/δtは、時間間隔のサイズであり、下式で示される、瞬間動的公称基礎注入速度の代替的形態を提供する。
【0024】
瞬間基礎注入速度、μ(t)、又は不連続時間でのμ
kは、瞬間動的公称値、
の付近で変更することができる。詳細には、μ(t)(又はμ
k)は、グルコースレベルが、グルコース値の設定値又設定範囲を上回り又は下回った場合、増大又は低下され得る。
の変更は、グルコースレベルの増大又は低下の速度によっても影響を受け得る。
の変更の決定には、例えば非限定的に、モデル予測制御手順、比例積分微分制御手順、ファジー理論、神経回路網、又はいくつかの他の制御手順の使用等、より高度な制御方法も使用し得る。
【0025】
図4及び5は、
図3の方法の効果の図を提供する。
図4は、固定した一定公称基礎注入速度51に関して変更された基礎注入速度49を示す。
図5は、連続的に変更された公称基礎注入速度51'に関して変更された基礎注入速度49'を示す。
【0026】
従って、方法2は、インスリン投薬の急激な増大を防止すること(最大瞬間基礎注入速度を動的公称基礎注入速度のある定数倍であるように抑制することによる)、及び適合のための多数の時間スケールを捕捉することの両方が可能な手法を提供する。詳細には、μ(t)(又はμ
k)は、時間スケールδt(これは、リアルタイムで分のオーダーにあり得、不連続時間でO(1)であり得る)にわたってオンラインで急速に変動することができ、それに対して、その付近でμ(t)(又はμ
k)が変更される
は、時間スケールΔt(これは、リアルタイムで時間のオーダーにあり得、不連続時間でO(N)であり得る)にわたってオンラインでよりゆっくりと変動する。
【0027】
方法2による手法は、ある後退時間間隔、Δt(又はN)にわたる平均公称値の定数倍に等しい瞬間動的公称基礎注入速度、
を設定する。代替的実施形態(本明細書で方法3と称される)では、瞬間動的公称基礎注入速度は、間隔Δt(又はN)にわたって、変更された瞬間基礎注入速度、μ(t)(又はμ
k)の全部と、それらの対応する移動平均動的公称基礎注入速度、
との間の一定の比を強制するようにオンラインで適合させ得る。換言すれば、βの一定の比を強制するには、
【0030】
方法2に関して上述したものと同一の方法にて、方法3では、瞬間基礎注入速度、μ(t)(又はμ
k)を、瞬間動的公称値、
の付近で変更することができる。
【0031】
いずれの手段でも、即ち、方法2(等式(1)及び(2))又は方法3(等式(3)及び(4))のいずれに従っても、決定された動的公称基礎注入速度は、
との間に制限され得、即ち、等式(1)及び(3)で
、又は等式(2)及び(4)で
に制限され得る。上述した方法2又は方法3の手段はまた、t=0(又はk=0)から間隔サイズ、Δt(又はN)がオンラインで到達される迄、徐々にオンラインでの発効を(例えば、線状に)開始し得る。
【0032】
方法2又は3は、一日内の異なる期間、又は異なる日、又は両方のために規定され得る1セットの異なる公称基礎−速度レベルを含む公称基礎−速度プロファイルをオンラインで適合させるように等しく適用され得る。(一日又は半日)プロファイル内の個々の公称基礎速度レベルは、異なる持続時間のものであり得、それらの持続時間又はそれらの開始及び終了時間も、日によって変動し得る。個々の公称基礎速度レベルは、全個人について全体的に規定されてもよく、又は異なる個人について異なるように規定されてもよく、また、以前の制御結果(例えば、個々の対象者のそれぞれに関する開ループ又は閉ループ状況)に基づいてもよい。
【0033】
この実施形態の一例は、上記の方法を使用して、区分的関数として表すことができる最初に規定されたμ
0:=μ
0(t)(又は不連続時間でのμ
0k)を適合させることである。そのようなものとして、リアルタイムでの等式(1)又は(3)(又は不連続時間での等式(2)及び(4))は、区分的関数内での個々の公称基礎速度レベルのそれぞれに適用され得る。連続する公称基礎速度レベル間の時間接合点において、経過期間の公称基礎速度レベルから、進入した期間の公称基礎速度レベルへの不連続ジャンプとして、遷移が生じ得る。代替的に、遷移は、固定又は変動であり得る所定の期間にわたって徐々に(例えば、線状に)生じ得る。また、個々の公称基礎速度レベルの以前の適合履歴が、次に同一の又は重なり合う期間又は時間接合点(例えば、翌日又は数日後)に遭遇すると引き継がれ得る。次いで、オンライン瞬間基礎注入速度は、オンラインでの現在の期間に係わる現在の公称基礎速度レベルに基づいて、又はオンラインでの公称基礎速度レベル間の遷移中の隣接した公称基礎速度レベルに基づいて、変更され得る。
【0034】
上述した方法の全部は、入院患者(例えば、重症管理室又は一般病棟)又は外来患者の状況にて使用することができ、また自律的又は半自律的閉ループ血糖制御システムの状況にて使用することができる。本方法は、基礎注入速度のみが自動的に制御され、他の全部の用量は、手動で投与される開ループシステムに使用することもできる。いずれの場合でも、瞬間基礎注入速度、μ(t)(又はμ
k)の変更、及びそれら変更の移動平均動的公称基礎注入速度、
の付近での長時間の適合は、連続的グルコースモニター又は他のグルコース測定デバイスからの頻繁な(一般に、5〜15分毎)グルコース測定値に応答することが可能なセンサ補強型注入システムに関与するであろう。他の有用性は、センサ補強型注入システム内でこれらの方法のいずれかによりオンラインで得られた基礎注入速度を使用して、例えばグルコースセンサ信号の一時的中断又は脱落中等、システムが(一時的又は永久に)グルコースセンサにより駆動されていない場合、対象者に規定し得る開ループ基礎速度プロファイル状況を通知することを含み、又は開ループインスリン注入療法のために使用することを含む。
【0035】
別の態様では、(皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内のいずれかに)注入されたインスリン又はインスリン様薬剤の用量を自動的に適合させるための方法を示し、ここで用量は、食物(炭水化物)消費を部分的に又は完全に補償することが意図される。用量は、食物摂取の前、間若しくは後に投与されてもよく、又はこれらの間に分割されてもよい。オンライン適合方法は、これらの食事時間インスリン用量を個々に自動的に調整し得、またある時間にわたって自動的にそれらを調整して、例えば発達上の変化に起因して(例えば、思春期又は閉経期中に生じるホルモンの変化に起因して)週、月又は年の期間にわたって生じ得る、又は(例えば、日周ホルモン変動、併発疾患、身体活動又は情緒状態に起因して)時間、日又は週の期間にわたって生じ得る、個々のインスリン要求の長時間変化に応答することができる。
【0036】
糖尿病における血糖調節のための標準治療インスリン療法は、一般に、毎日の複数回の皮下注射、又はインスリンポンプを用いた皮下注入のいずれかを含む。一般に、「基礎及びボーラス」インスリンの組み合わせは、対象者の基礎代謝インスリン要求を満たし、また、高血糖を調節するように投与され;追加の「食事ボーラス」用量(本明細書で「プライミング用量」とも称される)は、食物摂取用のインスリンを提供するよう追加される。食事の補償が意図されるインスリン用量は、通常、食物の量及び内容物(炭水化物及びその他)と共に、例えば1日内の時間、身体活動、健康状態、情緒状態等の他の因子の中でも、個人の所謂「インスリン−対−炭水化物比」の推定に基づいて個々に推定される。従って、正確な食事−ボーラスインスリン量は、個人間で、また個人内で有意に変動し得る。また、食事−ボーラスインスリン量は、多くの場合、個人が該個人の血糖をどのくらい良好に制御できるかの主な決定物である。本発明者らは、以前の食事時間用量に対する個人の応答に基づいて、インスリンの食事時間用量(食物摂取を部分的に又は完全に補償することが意図される)を自動的かつ連続的に調整する方法を提供する。
【0037】
詳細には、
図6を参照すると、50において、プライミングインスリンコントローラ28は、インスリンのプライミング用量をそれぞれの時間にて連続的に投与し、各プライミング用量は、それぞれの量であり、かつ規定された作用間隔を有する。52において、コントローラ28は、規定された作用間隔中に投与されたインスリンの総量に関する情報を(例えば、他のコントローラ24〜26から信号44を介して)受信し、各総量は、グルコースレベル信号に応答して投与された総用量の総計を含む。54において、コントローラ28は、数学的関係に応答して、プライミング用量の量と、規定された作用間隔中に投与されたインスリンの総量との間で、それぞれが多数の規定された作用間隔にまたがるそれぞれの期間にわたるプライミング用量の量を自動的に適合させる。
【0038】
図6の方法の一実施形態の一例として、任意の所定の日t(又は不連続時間でのk)の食事mに対応する(又時間間隔mに対応する)有効な瞬間動的食事時間ボーラス(多数の用量に分割され得る)B
m(t)(又は不連続時間でのB
km)は、オンラインで適合させて、平均で、Δt(又は不連続時間でのN)日(例えば、1週間又は1ヶ月の間)の時間ホライズン(time horizon)にわたって、B
m(t)(又はB
km)の規模の間の所定の目標比、β
mを、及びその食事前後のそれらの対応する全体的なインスリン量、P
m(t)(又はP
km)を強制し得、ここでP
m(t)=B
m(t)+C
m(t)(又はP
km=B
km+C
kmであり、ここでC
m(t)(又はC
km)は、所定の食事及び食後時間間隔であるδt時間(例えば、5時間)にわたって算出された、その食事(又は時間間隔に対応する)mのために制御システムにより付与された全部の食事及び食後インスリン(B
m(t)(又はB
km)以外)を含む。換言すれば、日t+1の食事(又は時間間隔)mの付近で、B
m(t)間のβ
m(例えば、50〜75%)及び全体的な投薬P
m(t)を強制する(平均で)ためには、
【0041】
目標比、β
mは、ある時間にわたって変動してもよく、即ちβ
m:=β
m(t)(又はβ
km)である。更に、異なる時間間隔δtを、その日の異なる食事m(又は異なる時間間隔m)に関するC
m(τ)(又はC
jm)の算出に使用することができる。更に、この手段は、t=1(又はk=1)の最初の日から、間隔サイズΔt(又はN)がオンラインで到達される迄、徐々にオンラインでの発効を(例えば、線状に又は段階的に)開始し得る。代替的に、方法は、nがNに到達する迄、意図される完全間隔サイズNの代わりにn=1,2,3,...を一時的に使用する間に、最初から完全に発効されてもよく、その後、この手段は、その完全「後退ホライズン(receding horizon)」Nにわたって「移動平均」の安定形態を採用する。最終的に、間隔長さΔt(又はN)も、m及び/又は時間t(又はk)によって可変となり得る。
【0042】
上述した方法は、入院患者(例えば、重症管理室又は一般病棟)又は外来患者の状況にて使用することができ、また自律的又は半自律的閉ループ血糖制御システムの状況にて使用することができる。自律的又は半自律的制御中におけるこの方法の使用によるフィードバックも、オンライングルコースセンサにより補強され得又はされ得ない開ループシステムに通知するのに使用することができる。
【0043】
別の態様では、体外から(皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内のいずれかに)注入されたインスリンの推定蓄積に関する情報、及び/又はインスリンがグルコースレベル(血糖濃度又は間質液グルコース濃度のいずれか)に対して有し得る効果に部分的に依存した、(皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内のいずれかに)注入されるグルカゴンの用量を自動的に変更するための方法を示す。自動化グルカゴン注入をオンラインで制御し得る任意の方法(例えば、モデル予測制御手順、比例微分制御手順、又はいくつかの他の制御手順)を介して数学的定式化を誘導することができ、該数学的定式化によって、グルカゴンの制御用量が、ある方法で体外から注入されたインスリンの推定蓄積に依存する。詳細には、使用される特定の数学的定式化は、注入されたインスリンの蓄積が比較的低いときと比較して、注入されたインスリンの蓄積が比較的高いときに、グルカゴン注入速度(又は送達量)をより高くするであろう。
【0044】
特に、
図7を参照すると、56において、グルカゴンコントローラ24は、(1)グルコースレベル信号に基づいた生の用量制御値を生成する計算を行うことにより、逆調節剤用量制御信号34を生成し、58において、(2)体外から注入されたインスリンの効果の推定値に基づいた生の用量制御値の変更物としての逆調節剤用量制御信号を生成する。
【0045】
図7の方法の一実施形態の一例として、グルカゴンは比例微分(PD)制御手順を用いて制御することができ、ここでこのように決定された制御用量は、体外から注入されたインスリンの推定蓄積に比例する(「線形に」又は「非線形に」)倍率を使用してスケーリングされるであろう。グルコース濃度が、十分に急速な降下により、ある設定値を下回った場合は常に、又はグルコース濃度がある閾値、βを下回った場合は常に、グルカゴン用量、G
dose(t)が以下のように誘導され得る:
【0047】
式中、G
maxは、許容できる最大グルカゴン用量(無限であり得る)であり、tは、不連続時間にあり、k
pは、比例ゲインであり、k
dは、微分ゲインであり、T
sは、サンプリング周期であり、i
e(t)は、体外から注入されたインスリンの推定蓄積であり、f(i
e(t))は、G
dose(t)の単位を有する、i
e(t)のある特定の関数である。一例f(i
e(t))はS字状関数であり得、該関数は、i
e(t)が、ある因数×血漿インスリンレベルのある推定された公称又はベースライン値を下回る場合は常に、1(unity)に近く、次いでi
e(t)がこの公称値を超えたときに有意に増大を開始する。代替的に、別の実施形態では、G
dose(t)のi
e(t)に対する依存は、追加の利得パラメータ、k
iの導入によって追加的に現れ得、従って、
【0049】
式中、k
iは、i
e(t)が、ある因数×血漿インスリンレベルのある推定された公称又はベースライン値を下回る場合は常に、消滅し得る。
【0050】
上記の例に関する変形物は、付加項、G
pending(t)を含んでもよく、これはG
dose(t)から引かれ、また、最近の用量からの保留(pending)皮下グルカゴンの推定を表す。これは、例えば、以下のような関数を用いて算出することができる。
【0052】
式中、G
1/2は、グルカゴンの皮下用量の平均半減期の推定である。推定G
pending(t)は、グルカゴンの不必要な皮下蓄積を制限することに留意されたい。それ故、G
pending(t)を等式(7)及び(8)に含めることによって、以下により提供される代替的形態が提供され得る。
【0055】
代替的に、G
pending(t)は、追加の利得パラメータ、k
gの導入によって追加的に現れ得、従って等式(10)及び(11)のG
pending(t)は、k
gg
e(t)により代替されてもよく、式中、g
e(t)は、体外から注入されたグルカゴンの推定蓄積である。
【0056】
更なる別の実施形態では、グルカゴンの制御用量、G
dose(t)は、モデル予測制御(MPC)手順を使用してもよく、ここで体外から注入されたインスリンの推定蓄積、i
e(t)に起因するグルカゴン用量の変更は、外部スケーリング関数(outer scaling function)(式(7)の関数f(i
e(t))と同様)を使用して達成されてもよい。例えば、グルカゴンの制御用量は、
【0058】
として算出されてもよく、式中、u
tは、MPCグルカゴン用量信号であり、g(i
e(t))は、i
e(t)がある因数×血漿インスリンレベルのある推定された公称又はベースライン値を下回る場合は常に1に近い、ある関数であり、i
e(t)がこの公称値を超える場合、有意により高い点で、f(i
e(t))と同様又は同一である外部スケーリングである。u
t算出のための一例は、以下のようなMPC費用関数を使用する。
【0060】
式中、u
tは、MPCグルカゴン用量信号、y
tはグルコース濃度信号、r
tは参照設定値信号、N
d及びN
mは、それぞれ最小及び最大(出力)予測費用ホライズン限界(prediction costing horizon limits)、N
uは制御ホライズン境界(control horizon bound)、mは、予測エラーの加重、λ
nは、制御信号の加重を表す。グルコース濃度、y
t、及びグルカゴン用量信号、u
tは、対象者モデルによっても関連付けられ得る。MPCグルカゴン用量信号u
tに関する等式(13)を解いた後、g(i
e(t))を用いた外部スケーリングが、等式(12)について適用されて、グルカゴンの制御用量G
dose(t)が算出され得る。代替的に、グルカゴンの制御用量、G
dose(t)は、MPCグルカゴン用量信号、u
tと、利得パラメータ、k
iの導入によりi
e(t)の効果を追加的に組み込むことに基づいてもよく、従って、
【0062】
式中、k
iは、i
e(t)が、ある因数×血漿インスリンレベルのある推定された公称又はベースライン値を下回る場合は常に、消滅し得る。
【0063】
更に、グルカゴンの制御用量、G
dose(t)は、過去のグルカゴン用量からのグルカゴンの蓄積も考慮に入れ得る。これは、等式(9)に記載されたものと同様の量G
pending(t)を算出し、以下のようにグルカゴンの制御用量を算出することによって処理することができる。
【0066】
代替的に、G
pending(t)は、追加の利得パラメータ、k
gの導入によって追加的に現れ得、従って等式(15)及び(16)のG
pending(t)は、k
gg
e(t)により代替されてもよく、式中、g
e(t)は、体外から注入されたグルカゴンの推定蓄積である。
【0067】
過去の用量からのグルカゴンの蓄積を計上する別の選択肢は、等式(13)のMPC費用関数を、外因性グルカゴンの蓄積を推定する数学的定式化を用いて、米国特許出願公開第2008/0208113A1号に記載されているものと同様の方法で、補強することによる。そのような補強は、投与部位(一つ又は複数)中及び血漿中のグルカゴンの蓄積の両方を考慮に入れてもよく、投与方法又は投与経路に関係する投与されたグルカゴン、及び、グルカゴン又はグルカゴン類似体自体のタイプを含む、グルカゴン溶液中に存在する特定の構成成分の薬物動態に基づくものであり得る。そのような補強が実行されて、MPCグルカゴン用量信号、u
tは、補強されたMPCグルカゴン用量信号、μ
t’となる。補強されたMPCグルカゴン用量信号、μ
t’は、等式(12)及び(14)の両方においてMPCグルカゴン用量信号、μ
tを代替して、グルカゴンの制御用量、G
dose(t)を提供し得る。
【0068】
他の制御信号は、等式(12)、(14)、(15)、又は(16)においてMPCグルカゴン用量信号、u
t、を代替し得、神経回路網、又はファジー理論、又は標準最適化アルゴリズム等の他のアルゴリズムに基づくものであり得る。
【0069】
上記の全定式化において、関数i
e(t)は、体外から注入されたインスリンを推定できる任意の方法により算出され得る。
【0070】
本発明は、
図1に示したような全体的なシステムとして、全体的な方法として、
図2に示したようなコントローラとして、及び
図3〜5に示したようなコントローラにより実行される方法として、具体化され得ることを認識するであろう。コントローラにより実行される方法に関連して、本方法は、メモリ、処理又は実行ユニット、及び入力/出力回路を含む一般的なコントローラハードウェアにより実行されるコンピュータプログラム命令によって実行されてもよい。命令は、半導体メモリ、磁気メモリ(例えば、磁気ディスク)、光学メモリ(例えば、CD、DVD等の光学ディスク)等のコンピュータ読み取り可能な媒体からコントローラに提供されてもよい。
【0071】
本発明の様々な実施形態を特に示し、記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の形態及び詳細に様々な変更を為し得ることを理解するであろう。