特許第6047265号(P6047265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6047265
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】シート製造装置およびシート製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/88 20060101AFI20161212BHJP
   B29C 47/12 20060101ALI20161212BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   B29C47/88 Z
   B29C47/12
   B29L7:00
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-533219(P2016-533219)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050397
【審査請求日】2016年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-19865(P2015-19865)
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510157580
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 理
(72)【発明者】
【氏名】牧 晃久
(72)【発明者】
【氏名】野村 文保
(72)【発明者】
【氏名】君島 康太郎
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026416(WO,A1)
【文献】 特開2009−154518(JP,A)
【文献】 特開2002−355882(JP,A)
【文献】 特開平10−180847(JP,A)
【文献】 特開2000−043122(JP,A)
【文献】 実開平06−071116(JP,U)
【文献】 特開2012−152979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00−47/96
B29C 41/00−41/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂をシート状に吐出するための口金と、
前記口金から吐出されるシートを搬送しながら冷却し固化するためのキャスト冷却装置と、
前記口金よりも前記キャスト冷却装置の搬送方向上流側に設置され、前記口金から吐出される前記シートと前記キャスト冷却装置との間の空気を吸引し、前記シートの前記キャスト冷却装置に接触する面側に負圧領域を生成するための減圧チャンバと、を備えたシート製造装置であって、
前記口金のリップよりも前記キャスト冷却装置の搬送方向下流で、前記口金から吐出される前記シートの幅方向端部となる位置よりも両外側に、前記口金から吐出される前記シートとキャスト面との隙間を塞ぐように設置された2つの整流板をさらに備え、
前記2つの整流板間のシート幅方向の距離は、前記キャスト冷却装置の搬送方向下流側に向かって漸減しているシート製造装置。
【請求項2】
前記整流板のシート幅方向端部に面する側とは反対側の面を押すまたは引くことで、前記整流板のシート幅方向端部に面する側の形状を変化させる機構を備えた、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項3】
前記整流板の材質が、ゴム、金属、樹脂、紙および木材からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載のシート製造装置。
【請求項4】
前記整流板の材質がゴムであり、前記ゴムのJIS−A硬度が80度未満かつ伸び率が130%以上である、請求項3に記載のシート製造装置。
【請求項5】
前記整流板の材質がゴムであり、前記ゴムの耐熱温度が150℃以上である、請求項3または4に記載のシート製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート製造装置を用いた、シート製造方法。
【請求項7】
前記口金から吐出される前記シートの幅方向端部の任意の位置から前記整流板までのシート幅方向の距離Lを一定にする、請求項6に記載のシート製造方法。
【請求項8】
前記距離Lは、0.1〜50mmの範囲内である、請求項7に記載のシート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置およびシート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート製造装置の概略を図面を用いて説明する。図5は一般的なポリマーシートの製造装置の一部の概略模式図である。図6は従来のシート製造装置のキャスト工程部分の拡大図である。従来のシート製造装置では、図6に示すように、押出機10により溶融混練された樹脂が、口金1からシート状に押出成形された後、キャスト冷却装置2に引き取られ冷却固化される。口金1の背面側、つまりシート3のキャスト面への着地点よりもシート搬送方向上流側には、口金1に隣接してキャスト冷却装置2の外周面に沿う形状の減圧チャンバ4が設けられている。この減圧チャンバ4により、シート3の背面側、つまりキャスト冷却装置2に接触する面側に負圧領域が生成される。シート3がキャスト冷却装置2に引き取られる際に、減圧チャンバ4内の空気が吸引口とダクトホースを介して吸引されることにより、減圧チャンバ4の開口部からシート3とキャスト冷却装置2との間の空間が減圧される。これにより、シート3とキャスト冷却装置2との間に流れ込む空気が排除され、溶融樹脂からなるシートをキャスト冷却装置2に密着させることができる。さらに減圧チャンバ4端部では、外気を吸い込むことによる特有の渦が生じるため、口金1のシート幅方向端部に、口金端部からシート幅方向に向けて流入する空気の流れを規制する整流板5を設けることで、より安定的にシートを密着させることができる。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−225627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シートとキャスト冷却装置2との間の空気を減圧チャンバ4で吸引するとき、シートとキャスト冷却装置2間の気流は一様ではなく様々な方向から空気が流れ込むため、気流の乱れが著しく生じやすくなる。そのため、シート端部の気流をコントロールすることが、シートを安定に成形する重要なポイントとなる。ところが、シートの端部では、図7に示すように口金とキャスト冷却装置面との間の距離(間隙)が広い場合、シートとキャスト冷却装置2間の距離(間隙)の増加と、それに伴うネックイン増加による隙間14の増加が生じるため、気流を整流化することがより困難になる。そのため、シートの端部では依然として振動が生じ、成形時のシートに横ダンなどの表面荒れやしわなどが生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、シート端部の気流を整流化することができるとともに、それによりシートの成形を安定化させることができるシート製造装置およびシート製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のシート製造装置は以下のとおりである。溶融樹脂をシート状に吐出するための口金と、前記口金から吐出されるシートを搬送しながら冷却し固化するためのキャスト冷却装置と、前記口金よりも前記キャスト冷却装置の搬送方向上流側に設置され、口金から吐出されるシートと前記キャスト冷却装置との間の空気を吸引し、前記シートの前記キャスト冷却装置に接触する面側に負圧領域を生成するための減圧チャンバと、を備えたシート製造装置であって、前記口金のリップよりも前記キャスト冷却装置の搬送方向下流側で、口金から吐出されるシートの幅方向端部となる位置よりも両外側に、口金から吐出されるシートとキャスト冷却装置との隙間を塞ぐように設置された2つの整流板をさらに備え、前記2つの整流板間のシート幅方向の距離がキャスト冷却装置の搬送方向下流側に向かって漸減している、シート製造装置。
【0007】
上記課題を解決する本発明のシート製造方法は、本発明のシート製造装置を用いてシートを製造するシート製造方法である。
【0008】
本発明において、「樹脂」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂;脂環族ポリオレフィン樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;アラミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリグリコール酸樹脂;ポリ乳酸樹脂などを希釈剤に溶かすか溶融するなどして流動化したものを用いることができる。また液体膜形成溶媒を含む希釈剤を使用することにより、比較的高い倍率で延伸を行うことをさほど困難ではないものにすることができる。これらの熱可塑性樹脂としてはホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。「希釈剤」は、例えば、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデセン等の脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素;流動パラフィン;上記の炭化水素と同程度の沸点を有する鉱油蒸留物;およびフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の室温で液体のフタル酸エステル等であってもよい。また、各熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0009】
本発明において、「リップ」とは、口金から溶融樹脂をシート状に押し出し成形するためのスリット開口部をいう。本発明において、「長手方向」とはシートの長手方向を指し、「幅方向」とはシートの幅方向を指し、「上流」とはキャストシートの搬送方向における上流を指し、「下流」とはキャストシートの搬送方向における下流をいう。本発明において、「耐熱温度」とは、連続使用が可能な使用安全耐熱温度をいう。本発明において、「横ダン」とは、口金から吐出されたシートはキャスト冷却装置に着地するまでに減圧チャンバでの吸引による周辺気流の影響による空気振動を受けるため、キャスト冷却装置上のシートの表面にはシート搬送方向で周期的な厚みムラが発生することをいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧チャンバによるシートとキャスト冷却装置間の密着部の吸引において、口金から吐出されるシートとキャスト冷却装置との隙間から流入する気流を整流化することができる。その結果、口金から吐出したシートを安定してキャスト冷却装置面上にキャスティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のシート製造装置の一実施形態の概略図である。
図2図1のシート製造装置の拡大図である。
図3図1のシート製造装置の側面図である。
図4図1のシート製造装置の上面図である。
図5】ポリマーシートの製造装置を示す概略図である。
図6】従来のシート製造装置の概略図である。
図7図6のシート製造装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本実施形態について詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であって、シートキャスティング装置の概略断面図である。図1に示すように、押出機により溶融された樹脂をシート状に吐出するための口金1と、この口金1から吐出されるシート3を引き取り搬送しながら冷却し固化するためのキャスト冷却装置2とを備えており、吐出されたシートは走行するキャスト冷却装置面上にキャストされる。このときキャスト冷却装置はロールでもよく、またベルトであってもよい。
【0014】
口金1の背面側、つまりシート3のキャスト面への着地点よりもシート搬送方向上流側には、口金1に隣接してキャスト冷却装置2の外周面に沿う形状の減圧チャンバ4が設けられている。この減圧チャンバ4により、シート3の背面側、つまりキャスト冷却装置2に接触する面側に負圧領域が生成される。減圧チャンバ4は開口部と減圧室を有しており、開口部はシート3がキャスト冷却装置2の外周面に密着を開始する部分の直近において、シートの全幅にわたって形成されている。また、減圧室内の空気は減圧チャンバ4の開口部から吸引され、シートとキャスト冷却装置2との間の密着部の空気が排出される。これにより密着部が減圧されて、シートとキャスト冷却装置2との間に巻き込まれる空気が排除される。また、減圧度を所定圧力に制御することで、溶融樹脂からなるシート3をキャスト冷却装置2に安定的に密着させることができる。この減圧チャンバが密着手段を構成している。
【0015】
このとき、減圧チャンバ4内の減圧度は溶融ポリマーの粘度、シートの厚み、キャスト冷却装置のシート搬送速度など、製膜条件に応じて所定の値に制御することが好ましい。減圧チャンバ4内の大気圧に対する吸引圧力は−2500Pa以上−20Pa以下の範囲が好ましい。減圧チャンバ4内の大気圧に対する吸引圧力の下限は−1500Pa以上がさらに好ましく、上限は−50Pa以下がさらに好ましい。
【0016】
図2は、本発明における減圧チャンバの一構成および一取付け状態を示す拡大図である。また、図3図2の側面図であり、図4図2の上面図である。
【0017】
図2〜4に示すように、本実施形態では、口金1のリップよりもキャスト冷却装置2の搬送方向下流側で、口金1から吐出されるシート3の両端の位置よりもシート幅方向外側に、口金1から吐出されるシート3とキャスト冷却装置2との隙間を塞ぐように設置された整流板を口金の幅方向の両端部に備えている。整流板5は、押し引き可能な調整機構に接着かつボルトで固定され取り付けられている。また、口金1のサイドプレートにはネジ穴が設けられている。そして、整流板5は、ブラケット6に把持されており、ブラケット6に設けられた穴にボルトを通し、口金サイドプレートのネジ穴に締め付けることにより口金1に取り付けられている。なお、この取付方法は一例であり、この取付方法と異なる方法を採用してもよい。例えば、ブラケット6は減圧チャンバ本体に取り付けられていてもよい。または、減圧チャンバ4、もしくは口金1と一体のブラケットで構成されていてもよい。
【0018】
調整機構は図4に示すように、押し引きは位置調整ボルト7による回転でなされ、整流板5と接着またはボルトなどで固定される先端板と位置調整ボルト7の間は共回りの防止のジョイントを有している。この位置調整ボルト7で整流板5のシート端部に面する側とは反対側の面をシート幅方向に押し引きすることで、整流板5のシート端部に面する側の表面形状を変化させることができる。調整機構は、シートのネックインにおける変曲点数に合わせ、整流板5のシート端部に面する側の面をキャスト冷却装置2の搬送方向に沿った少なくとも2箇所以上で屈曲させることが好ましい。また、口金1と減圧チャンバ4との間には弾性シール部材が設けられており、この弾性シール部材により口金1と減圧チャンバ4との隙間がシールされている。さらに、キャスト冷却装置2と減圧チャンバ4との間も同様に弾性シール部材が設けられており、キャスト冷却装置2と減圧チャンバ4との隙間がシールされている。
【0019】
本実施形態の整流板5の構成を説明する。口金の幅方向両端部に配された整流板間のシート幅方向の間隔はキャスト冷却装置2の搬送方向下流側に向かって漸減しており、口金1から吐出されるシート3の幅方向端部の任意の位置から整流板5までのシート幅方向の距離Lが一定である。これにより、口金1から吐出されるシート3の端部ネックイン形状に沿わせることができる。特に、シート3の幅方向端部の任意の位置から整流板5までのシート幅方向の距離Lを一定とすることで、整流板5とシート3端部から流入するエアの流速を一定とし、膜振動の抑制効果をより得ることができる。また、図4に示すように整流板のシート搬送方向上流側の端部は減圧チャンバの側面板4bの延長上に連なるよう配されることが好ましく、これにより、整流板と減圧チャンバの繋ぎ目からのエア流入を最小限に抑制することができる。なお、距離Lが「一定」であるとは言っても、整流板5までの距離がシートの幅方向端部のどの位置から測定しても厳密に同じ値である必要はなく、±10%の誤差は許容するものとする。
【0020】
シート3の幅方向端部の任意の位置から整流板5までのシート幅方向の距離Lは、シート端部からのエア流入方向が乱れることを防ぎ、シートのバタつきを低減することにより、横ダンなどの表面荒れやしわなどが発生することを抑制する観点から50mm以下であることが好ましい。そのため、距離Lは理想的には0mmにし、密閉度を高くすることで減圧チャンバ4内を安定して減圧することが良い。しかし、この場合、シート端部が整流版と接触するため、シートが整流板に張り付くことを抑制する観点から、整流板の材質としてテフロン(登録商標)シートなど滑り性の高い材質を使用することが好ましい。より好ましくはシート端部が整流板と接触することを避け、シート端部の成形性の安定性を確保するために距離Lを0.1〜50mmに設定することである。シートのバタつきをさらに抑制するために距離Lの上限は10mm以下がより好ましい。また、距離Lが前記範囲であれば整流板5のシート端部に面する側の表面形状はシート端部に沿う形状でも、平面形状であっても良い。
【0021】
整流板5はシート端部に面する側の表面形状をキャスト冷却装置2のシート搬送方向に沿って変えることができる。本実施形態では、シート端部の形状に沿って整流板全体が湾曲しているが、必ずしも整流板全体が湾曲する必要はない。シート端部の形状に沿えるように、整流板5のシート端部に面する側の表面形状のみが変形できれば十分である。
【0022】
整流板5の材質としては、好ましくはゴム、金属、樹脂、紙および木材からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくはゴムである。
【0023】
整流板5の材質にゴムを用いた場合、ゴムのJIS−A硬度は80度未満かつ伸び率は130%以上が好ましい。このような硬度と伸び率のゴムを用いることで剛性により板としての形状を維持しつつ、この整流板5のシート端部に面する側の表面形状をシート端部に沿って変化させる容易となる。また、ゴムの耐熱温度は150℃以上が好ましい。耐熱温度が150℃以上であると、口金など周囲高温部から受ける熱による材質の劣化を防止できる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
以上のシート製造装置を用いて、シートを製造した結果を説明する。本実施形態における具体的なシート製造装置の構成および製造条件は以下のとおりである。
(1)シート材料:
高密度ポリエチレン(HDPE)、粘度1000Pa・s。ここで、粘度は、せん断速度100/s、温度200℃の条件で、JIS K7117−2の方法で測定した。
(2)仕込み:
シート材料を乾燥後、押出機に供給、ギアポンプ、フィルターを介した後、シート成形口金に供給した。また、口金に至るまでの装置温度は200℃に設定した。
(3)シート成形口金:
スリット幅300mm、上記樹脂を流量250kg/hrで吐出させた。
(4)キャスト冷却装置:
キャスト冷却装置として、シート成形ロールを使用し、シート成形口金からシート状に押出した後、冷却ロールでロール温度を35℃に設定した上で、成形した。
(5)減圧チャンバ:
シート成形口金とシート成形ロール間のクリアランスを40mm、また口金のリップ位置をロールの頂上に配した上で、減圧チャンバを設置した。また、シートの端の任意の位置から整流板までのシート幅方向の距離Lは50mmになるよう調整した。さらに、整流板はJIS K6251に基づき、シリコンゴム:硬度ショアA75、伸び400%、耐熱温度200℃のものを使用した。また減圧度は大気圧に対して−1200Paになるように設定した。
【0025】
製膜を実施した結果、シートのキャスト面への安定した運転状態が得られ、厚みムラR2.5%、膜振動による横ダンなどの外観欠点などなく、良好な品質のシートが得られた。
ここで「厚みムラR」とは、シート搬送方向での最大シート厚みから最小シート厚みを引いたものを平均シート厚みで除した割合のことである。
【0026】
(実施例2)
整流板のシリコンゴムを、硬度ショアA50、伸び330%、耐熱温度150℃のものを用いた以外は実施例1と同じシート製造装置を用い、シートの端の任意の位置から整流板までのシート幅方向の距離Lを10mmになるよう調整した以外は実施例1と同じ製造条件でシートを製造した。製膜を実施した結果、シートのキャスト面への安定した運転状態が得られ、厚みムラR1.0%、また膜振動による横ダンなどの外観欠点などなく、良好な品質のシートが得られた。
【0027】
(比較例1)
実施例1のシート製造装置から整流板を取り外し、実施例1と同じ製造条件でシートを製造した。
製膜を実施した結果、口金とキャスト面間のシートの端部において大きな膜振動が発生し、厚みムラR10%と大きくなり、またシート全体にシート搬送方向にピッチのある横ダンが見られ、安定してシートの製造を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、シートキャスティング装置に限らず、ダイコーティング装置などにも応用することができるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 口金
2 キャスト冷却装置
3 シート
4 減圧チャンバ
4a 上部板
4b 側面板
5 整流板
6 ブラケット
7 位置調整ボルト
8 シート端部から整流板までのシート幅方向の距離L
9 口金リップ
10 押出機
11 ギアポンプ
12 フィルター
13 隔壁
14 シートとキャスト冷却装置間の隙間
【要約】
口金から吐出されるシートとキャスト冷却装置との隙間から流入する気流を整流化することができるとともに、それによりシートの成形を安定化、平面性を良化させることができるシート製造装置を提供する。
本発明のシート製造装置は、口金と、キャスト冷却装置と、減圧チャンバとを備えており、さらに、口金のリップよりもキャスト冷却装置の搬送方向下流で、口金から吐出されるシートの幅方向端部となる位置よりも両外側に、口金から吐出されるシートとキャスト面との隙間を塞ぐように設置され、シート幅方向の距離がキャスト冷却装置の搬送方向下流側に向かって漸減している整流板を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7