特許第6047412号(P6047412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047412
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20161212BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20161212BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20161212BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02K3/04 E
   H02K1/16 Z
   H02K21/16 M
   H02K1/18 B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-13340(P2013-13340)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-147174(P2014-147174A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 工
(72)【発明者】
【氏名】片井 宏史
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−015598(JP,A)
【文献】 特開2004−032882(JP,A)
【文献】 特開2011−211806(JP,A)
【文献】 特開2012−143065(JP,A)
【文献】 特開2001−211576(JP,A)
【文献】 特開2007−244004(JP,A)
【文献】 特開2012−029444(JP,A)
【文献】 特開2011−211804(JP,A)
【文献】 特開2010−011710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 1/16
H02K 1/18
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに電機子巻線が設けられてなるステータと、前記ステータコアと径方向に対向するロータとを備え、
前記電機子巻線は、前記ステータコアに軸方向に沿って形成された複数のスロットに挿入されるとともに該スロットから軸方向に突出する突出部が互いに電気的に接続された複数のセグメント導体よりなるモータであって、
前記ステータコアは、メインコア部と、該メインコア部の軸方向端部に設けられた磁性板とを備え、
前記磁性板は、前記メインコア部の前記ロータ側の端部から軸方向外側に延出されて前記ロータと径方向に対向するロータ対向部を有し、
前記セグメント導体の前記突出部は、前記ロータ対向部と径方向に間隙を介して対向しており、
前記電機子巻線は、前記各セグメント導体が少なくとも軸方向一方側の前記突出部で溶接接合されてなり、その突出部の溶接接合部は、前記ロータ対向部の軸方向先端よりも軸方向外側に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記セグメント導体の前記突出部は、前記スロットの前記ロータ対向部側の端部よりも反ロータ対向部側に位置するように構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記セグメント導体は、周方向位置の異なる前記スロットにそれぞれ挿入される一対の直線部と、軸方向一端側の前記突出部において前記一対の直線部同士を繋ぐ折り返し部とが一体に形成された線材よりなり、
前記折り返し部は、前記スロットの径方向中心に対して反ロータ対向部側に偏倚するように形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記電機子巻線は、前記各セグメント導体が軸方向両側の前記突出部でそれぞれ溶接接合されてなることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記磁性板は、前記メインコア部の軸方向端部に積層された積層部を備えることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項に記載のモータにおいて、
前記スロットの軸方向端を構成する前記積層部の角部には、面取り部が形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記メインコア部は、軸方向に積層された複数のコアシートよりなり、
前記磁性板の板厚は、前記コアシートの板厚よりも厚く設定されていることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ロータの界磁磁石は、フェライト磁石よりなることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのステータには、例えば特許文献1に示すように、複数のセグメント導体(セグメントコンダクタ)をステータコアのスロットに挿入し、所定のセグメント導体同士を接続することで電機子巻線(セグメント巻線)を構成したものがある。このようなステータは、巻線の占積率を高く構成できるため、径方向に小型化するのに有利な構成といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−239533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電機子巻線を用いたステータでは、セグメント巻線におけるスロットから軸方向に突出する突出部が周方向に屈曲されて互いに繋がっているが、セグメント導体の突出部をステータの軸方向端面に沿って略直角に屈曲することは難しいため、セグメント導体の突出部の軸方向への突出量が大きくなってしまい、その結果、ステータが軸方向に大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、出力を確保しつつも、セグメント導体を用いたステータの軸方向への大型化を抑えることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータは、ステータコアに電機子巻線が設けられてなるステータと、前記ステータコアと径方向に対向するロータとを備え、前記電機子巻線は、前記ステータコアに軸方向に沿って形成された複数のスロットに挿入されるとともに該スロットから軸方向に突出する突出部が互いに電気的に接続された複数のセグメント導体よりなるモータであって、前記ステータコアは、メインコア部と、該メインコア部の軸方向端部に設けられた磁性板とを備え、前記磁性板は、前記メインコア部の前記ロータ側の端部から軸方向外側に延出されて前記ロータと径方向に対向するロータ対向部を有し、前記セグメント導体の前記突出部は、前記ロータ対向部と径方向に間隙を介して対向しており、前記電機子巻線は、前記各セグメント導体が少なくとも軸方向一方側の前記突出部で溶接接合されてなり、その突出部の溶接接合部は、前記ロータ対向部の軸方向先端よりも軸方向外側に形成されている
【0007】
この構成によれば、ステータコアは、メインコア部から軸方向外側(反メインコア側)に延びるロータ対向部を有する磁性板を有し、そのロータ対向部は、スロットから突出するセグメント導体の突出部と径方向に対向するように構成される。このため、ステータコアのメインコア部の軸方向長さを小さく抑えることで、ステータの軸方向への大型化を抑えつつも、磁性板のロータ対向部によってステータコアのロータとの対向面を確保、つまり出力を確保することができる。また、セグメント導体の突出部とロータ対向部との間には径方向の間隙が形成されるため、セグメント導体の突出部とロータ対向部との干渉が抑制され、その結果、ロータ対向部とセグメント導体との絶縁性を好適に確保することができる。また、例えば、セグメント導体の突出部との干渉によってロータ対向部が変形することによるコギングトルクの増大や出力の低下が抑制される。
【0008】
また、セグメント導体の突出部の溶接接合部がロータ対向部の軸方向先端よりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成されるため、突出部の溶接作業においてロータ対向部が邪魔になりにくく、突出部を容易に溶接接合することができる。
上記モータにおいて、前記セグメント導体の前記突出部は、前記スロットの前記ロータ対向部側の端部よりも反ロータ対向部側に位置するように構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、スロットをロータ対向部から径方向に離した構成としなくても、セグメント導体の突出部とロータ対向部との間隙を確保することができる。このため、ステータコアの径方向への大型化を抑えつつも、セグメント導体の突出部とロータ対向部との干渉を抑えることができる。
【0010】
上記モータにおいて、前記セグメント導体は、周方向位置の異なる前記スロットにそれぞれ挿入される一対の直線部と、軸方向一端側の前記突出部において前記一対の直線部同士を繋ぐ折り返し部とが一体に形成された線材よりなり、前記折り返し部は、前記スロットの径方向中心に対して反ロータ対向部側に偏倚するように形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、軸方向一端側の突出部で折り返した形状のセグメント導体において、セグメント導体の突出部とロータ対向部との間隙を好適に確保することができる。
上記モータにおいて、前記電機子巻線は、前記各セグメント導体が軸方向両側の前記突出部でそれぞれ溶接接合されてなることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、セグメント導体を軸方向一端側の突出部で折り返した形状とする場合に、その折り返し部に生じうる径方向の膨らみが生じないため、セグメント導体の突出部とロータ対向部との間隙を好適に確保することができる。
【0015】
上記モータにおいて、前記磁性板は、前記メインコア部の軸方向端部に積層された積層部を備えていることが好ましい。
この構成によれば、例えば、磁性板の積層部を複数のコアシートと同様に積層固定することが可能となるため、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0016】
上記モータにおいて、前記スロットの軸方向端を構成する前記積層部の角部には、面取り部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、スロットの軸方向端から突出するセグメント導体を屈曲させる場合に、セグメント導体が磁性板の積層部の角部で損傷することを抑制することができる。
【0017】
上記モータにおいて、前記メインコア部は、軸方向に積層された複数のコアシートよりなり、前記磁性板の板厚は、前記コアシートの板厚よりも厚く設定されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、磁性板を介して磁気を取り込みやすくすることができるため、より一層の高出力化に寄与できる。また、スロットの軸方向端を構成する磁性板の積層部の角部に面取り部を形成する場合には、磁性板の板厚がコアシートの板厚よりも厚いことにより、磁性板の積層部に面取り部を形成しやすく、より好適である。
【0019】
上記モータにおいて、前記ロータの界磁磁石は、フェライト磁石よりなることが好ましい。
この構成によれば、ロータの界磁磁石は、比較的安価なフェライト磁石よりなるため、モータの低コスト化に寄与できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のモータによれば、出力を確保しつつも、セグメント導体を用いたステータの軸方向への大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態のモータの模式断面図である。
図2】同形態のステータの平面図である。
図3】同形態の磁性板のロータ対向部を説明するための正面図である。
図4】同形態のステータコアの分解斜視図である。
図5】同形態のステータコアを模式断面図である。
図6】同形態のステータを部分的に拡大して示す平面図である。
図7】同形態のセグメント導体の屈曲部位を示す模式断面図である。
図8】同形態のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図9】別例のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図10】別例のモータを部分的に拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、モータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、リヤフレーム11とフロントフレーム12によってモータ10の軸方向に挟持された環状のステータ13の内側にロータ14が配置されて構成されている。なお、モータ10の軸方向出力側(後述するジョイント63側)を保持するフレームをフロントフレーム12とし、軸方向反出力側を保持するフレームをリヤフレーム11としている。各フレーム11,12は、互いに離間しないようにステータ13の外周側の位置でスルーボルト15にて締結固定されている。
【0023】
[フレーム]
リヤフレーム11及びフロントフレーム12は、アルミニウムや鋼鉄等の金属材料にて形成されている。リヤフレーム11は、略円盤状の本体部11aと、本体部11aの外周縁からモータ10の軸方向に延出された円筒状のステータ保持部11bとを備えている。一方のフロントフレーム12も略同様の構成であり、略円盤状の本体部12aと、本体部12aの外周縁からモータ10の軸方向に延出された円環状のステータ保持部12bとを備えている。各フレーム11,12の本体部11a,12aの径方向中央には、同軸上に配置された軸受16,17が保持され、その軸受16,17には、ロータ14の回転軸18が軸支されている。
【0024】
各フレーム11,12の本体部11a,12aには、その外周縁の複数箇所(例えば2箇所)から径方向外側に延びる締結固定部11c,12cが形成されている。なお、図1では、周方向に複数設けられた締結固定部11c,12cをそれぞれ1つのみ図示している。リヤフレーム11側の締結固定部11cとフロントフレーム12側の締結固定部12cは互いに同数設けられるとともに、回転軸18の軸方向に互いに対向している。そして、それぞれ対をなす締結固定部11c,12cがスルーボルト15によって締結固定されることで、各フレーム11,12がステータ13を挟持する状態で互いに固定されるようになっている。
【0025】
[ステータ]
ステータ13は、各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bに挟持された円環状のステータコア21と、そのステータコア21に装着された電機子巻線22とを備える。
【0026】
図2及び図6に示すように、ステータコア21は、その外周を構成する円筒部23と、その円筒部23から径方向内側に延出された複数(本実施形態では60個)のティース24とからなる。各ティース24には、径方向内側に向かうにつれて周方向幅が狭くなるテーパ状をなす径方向延出部24aが形成され、その各径方向延出部24aの先端部(径方向内側端部)には、該径方向延出部24aよりも周方向幅が広い幅広部24bが形成されている。径方向延出部24aの周方向両端面は、回転軸18の軸線と平行な平面状をなすとともに、周方向に隣り合う周方向端面同士が平行をなしている。
【0027】
各ティース24の間の空間は、電機子巻線22を構成するセグメント導体25を収容する部位であるスロットSとして構成される。つまり、スロットSは、ティース24の周方向側面とティース24間における円筒部23の内周面とから構成されている。本実施形態では、ティース24は、周方向に隣り合う径方向延出部24aの周方向端面同士が平行となるように形成されるため、各スロットSが軸方向視で略矩形状をなすように構成されている。また、各スロットSは、ステータコア21を軸方向に沿って貫通するとともに、径方向内側に開口する形状をなしている。なお、ステータコア21に形成されたスロットSの個数は、ティース24と同数(本実施形態では60個)である。
【0028】
[ステータコア]
上記のような形状を有するステータコア21は、複数の鋼板を積層して一体化することによって成形されている。
【0029】
詳述すると、図4に示すように、ステータコア21は、鋼板をプレス加工により打ち抜いて形成した複数枚のコアシート30を軸方向に積層してかしめて一体化することにより形成されたメインコア部31と、メインコア部31の軸方向両端部にそれぞれ固定された磁性板40(補助コア部)とから構成されている。なお、本実施形態では、磁性板40は、同形状のものがメインコア部31の軸方向両側に1枚ずつ設けられている。
【0030】
メインコア部31の各コアシート30は同一形状をなし、板面が軸方向と直交するように配置されている。この各コアシート30は、円環状をなす環状部32と、その環状部32から径方向内側に延びる複数のティース構成部33を有している。また、各コアシート30は、ティース構成部33が軸方向沿って重なるように積層されている。
【0031】
図2図4及び図6に示すように、磁性板40は、プレス加工により成形されるものであり、メインコア部31の軸方向両端のコアシート30に積層された板状の積層部41を有している。積層部41は、メインコア部31のコアシート30に対して平行且つ同軸となるように積層されている。また、磁性板40は、その板厚T1がメインコア部31のコアシート30の板厚T2よりも厚く設定されている(図1参照)。
【0032】
積層部41には、コアシート30の環状部32と軸方向に重なる円環状をなす環状部42と、その環状部42から径方向内側に延びる複数のティース構成部43とが形成されている。積層部41のティース構成部43は、軸方向視においてコアシート30のティース構成部33と同形状をなしている。磁性板40は、積層部41の環状部42及びティース構成部43が、コアシート30の環状部32及びティース構成部33とそれぞれ軸方向に重なるように設けられている。このコアシート30と磁性板40の各環状部32,42がステータコア21の円筒部23を構成し、各ティース構成部33,43がステータコア21のティース24を構成している。また、積層部41の環状部42の外径は、コアシート30の環状部32の外径よりも小さく形成されている(図2参照)。これにより、軸方向視においてコアシート30の環状部32の外周縁全体が露出するように構成されている。
【0033】
磁性板40のティース構成部43の径方向内側端部(ロータ14側端部)には、軸方向外側(反メインコア部側)に延出されたロータ対向部44が形成されている。ロータ対向部44は、ティース構成部43の径方向内側端部を軸方向外側に直角に屈曲することで形成されている。つまり、磁性板40は、軸方向外側に屈曲形成されたロータ対向部44で板面が径方向を向くように形成されている。なお、ロータ対向部44の内径面は、メインコア部31(コアシート30)の内径と同径となるように曲面形成されている。また、積層部41の軸方向厚みとロータ対向部44の径方向厚みは、磁性板40の板厚T1によって決まり、それらは互いに等しい厚みとなっている。また、ロータ対向部44とティース構成部43との間の折曲部位(ティース構成部43とロータ対向部44のなす角部)の肉厚は、ロータ対向部44の板厚(つまり、磁性板40の板厚T1)よりも厚くなるように形成されている。
【0034】
図3に示すように、ロータ対向部44は、周方向両側に周方向側部としての側縁部44aを有する。この側縁部44aは、回転軸18の軸線方向に対して周方向に傾斜する形状とされる。側縁部44aは、先端側(反メインコア部側)ほどロータ対向部44の周方向中央側に近づくように傾斜されている。また、各側縁部44aは、ロータ対向部44を径方向から見たときに、ロータ対向部44の周方向の中心線に対して左右対称となるように形成されている。このため、ロータ対向部44は、軸方向基端側(軸方向内側)の周方向幅がティース構成部43の先端部(幅広部24b)の周方向幅と等しく形成されるとともに、軸方向先端側(軸方向外側)ほど周方向幅が狭く、径方向視で台形形状をなすように形成される。なお、本実施形態の各ロータ対向部44は全て同形状をなすように形成される。
【0035】
図5に示すように、コアシート30と磁性板の積層部41の各環状部32,42には、板厚方向に突出する凸部45(ダボ)がプレス加工にて形成されている。各環状部32,42において、凸部45は周方向に複数(本実施形態では4つ)形成されている。また、各環状部32,42は、各凸部45の裏側において凸部45の成形時に形成された凹部46を有している。そして、各凸部45は、軸方向に隣り合うコアシート30の凹部46に圧入固定(かしめ固定)されている。これにより、各コアシート30が一体化されてメインコア部31を構成するとともに、そのメインコア部31の軸方向両側に磁性板40が固定される。
【0036】
図6に示すように、ステータコア21の各スロットS内には、絶縁性の樹脂材料から形成されたシート状の絶縁部材47が装着されている。各絶縁部材47は、スロットSの径方向外側端部で折り返された状態で設けられ、スロットSの内周面に沿うように形成されている。また、各絶縁部材47はスロットSに軸方向に挿入されるものであり、絶縁部材47の軸方向長さは、スロットSの軸方向長さよりも長く設定されている。つまり、絶縁部材47の軸方向両端部は、スロットSの軸方向両端部から外部に突出している(図7参照)。
【0037】
[電機子巻線]
図6及び図8に示すように、上記したステータコア21に装着された電機子巻線22は、複数のセグメント導体25(セグメントコンダクタ)にて構成されている。各セグメント導体25は、所定のもの同士で接続されて、3相(U相、V相、W相)Y結線の電機子巻線22を構成している。また、各セグメント導体25は、同一断面形状(断面矩形状)の線材から形成されるものである。
【0038】
各セグメント導体25は、スロットS内に挿通される部位である一対の直線部51と、スロットSから軸方向一方側(リヤフレーム11側)に突出する第1突出部52と、スロットSから軸方向他方側(フロントフレーム12側)に突出する第2突出部53とを有し、第1突出部52側で折り返される略U字状をなしている。第1及び第2突出部52,53は、軸方向両側のロータ対向部44と径方向に間隙D1,D2を介してそれぞれ対向している。
【0039】
一対の直線部51は、径方向位置が互いにずれるように形成されるとともに、周方向位置の異なるスロットSにそれぞれ挿入される。また、直線部51はスロットS内において絶縁部材47の内側に配置されている(図6参照)。この絶縁部材47によってセグメント導体25とステータコア21とが電気的に絶縁されている。
【0040】
セグメント導体25は、各スロットS内において直線部51が径方向に4つ並ぶように配置されている。そして、セグメント導体25には、2つの直線部51が径方向内側から1つ目と4つ目に配置されるもの(図8において外側に図示されたセグメント導体25x)と、2つの直線部51が径方向内側から2つ目と3つ目に配置されるもの(図8において内側に図示されたセグメント導体25y)の2種類が用いられている。なお、主にこの2種類のセグメント導体25x,25yから電機子巻線22が構成されるが、例えば電機子巻線22の端部(電源接続端子や中性点接続端子等)を構成するセグメント導体には、別種類のもの(例えば、直線部が1つだけのセグメント導体)が用いられる。
【0041】
各直線部51は、スロットSを軸方向に貫通してフロントフレーム12側に突出した第2突出部53が、周方向に屈曲されて他のセグメント導体25の第2突出部53や、特殊な種類のセグメント導体と溶接等により電気的に接続され、これにより、各セグメント導体25によって電機子巻線22が構成される。なお、図8には、周方向位置の異なるスロットSに挿入されたセグメント導体25の第2突出部53同士を溶接接合した部位を、溶接接合部54として模式的に示している。
【0042】
また、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53は、スロットSの軸方向両端で直線部51に対して周方向に屈曲されている。ここで、第1突出部52が周方向に屈曲されたスロットSの軸方向端部付近の拡大図を図7に示す。同図に示すように、スロットSの軸方向一端を構成する磁性板40(積層部41)のティース構成部43の角部には、円弧状に面取りされた面取り部43aが形成されている。また、第2突出部53側の磁性板40にも同様に、スロットSの軸方向他端を構成するティース構成部43の角部に面取り部43aが形成されている。面取り部43aは、第1及び第2突出部52,53の周方向への屈曲形状に沿う円弧状をなし、その屈曲部位に対して広い面積で接触するようになっている。これにより、第1及び第2突出部52,53の周方向の屈曲部位に対して、ティース構成部43の角部から局所的に力が加わることが抑制され、その屈曲部位の損傷が抑制されるようになっている。また同様に、第1及び第2突出部52,53の屈曲部位と面取り部43aとに挟まれた絶縁部材47の損傷も抑制されている。また、本実施形態では、磁性板40の板厚T1(ティース構成部43の板厚)がコアシート30の板厚T2よりも厚いため、面取り部43aの曲率半径Rmをコアシート30の板厚T2よりも大きく設定可能となっている。これにより、曲率半径Rmが大きい面取り部43aによってセグメント導体25の屈曲部位の損傷がより好適に抑制されるようになっている。
【0043】
また、図8に示すように、セグメント導体25の折り返し部25aが形成された第1突出部52は、径方向外側に傾く(膨らむ)ように形成されている。これにより、折り返し部25aがスロットSの径方向中央よりも径方向外側に偏倚するとともに、第1突出部52の径方向内側端部52aがスロットSの径方向内側端部Saよりも径方向外側に位置するように構成される。これにより、第1突出部52と磁性板40のロータ対向部44との径方向間の間隙D1が広く構成されるため、第1突出部52とロータ対向部44との干渉がより好適に抑制されている。その結果、セグメント導体25とロータ対向部44との絶縁性がより好適に確保されるだけでなく、第1突出部52との干渉によってロータ対向部44が変形することによるコギングトルクの増大や出力の低下が抑制されている。
【0044】
一方、セグメント導体25の第2突出部53には、折り返し部が形成されず、その第2突出部53同士が溶接接合される構成のため、第2突出部53とロータ対向部44との間隙D2を容易に確保できるようになっている。また、第2突出部53の溶接接合部54は、フロントフレーム12側のロータ対向部44の軸方向先端部44bよりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成されている。これにより、第2突出部53の溶接作業においてロータ対向部44が邪魔になりにくく、第2突出部53を容易に溶接接合することができ、作業性が向上されるようになっている。
【0045】
[ステータコアの保持構成]
図1に示すように、上記構成のステータ13を保持する各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、各フレーム11,12の本体部11a,12aから軸方向に延出する円筒状をなしている。ステータ保持部11b,12bの外径は、ステータ保持部11b,12bのメインコア部31の外径よりも大きく形成されている。また、ステータ保持部11b,12bの内径は、メインコア部31の外径よりも小さく、且つ、磁性板40(積層部41)の外径よりも大きく形成されている。
【0046】
図8に示すように、ステータ保持部11b,12bの先端部(軸方向内側端部)には、外嵌部11d,12dがそれぞれ形成されている。各外嵌部11d,12dは、ステータ保持部11b,12bの内径を大きくすることにより径方向の厚さが薄く形成された部分であり、円環状をなしている。外嵌部11d,12dの内径は、メインコア部31の外径と略等しく形成されており、外嵌部11d,12dの径方向内側には、軸方向と直交する平面状をなす当接面11e,12eがそれぞれ形成されている。
【0047】
ステータコア21において、磁性板40の積層部41の外周側でメインコア部31の外周縁が軸方向両側に露出された部位(露出面31a)が各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bに挟持されている。詳しくは、ステータ保持部11b,12bは、外嵌部11d,12dがメインコア部31の軸方向両端の外周縁にそれぞれ外嵌されるとともに、当接面11e,12eがメインコア部31の軸方向両側の露出面31aにそれぞれ軸方向に当接している。この状態で、各フレーム11,12が前記スルーボルト15によって互いに連結固定されることで、メインコア部31がステータ保持部11b,12bによって軸方向に挟持される。また、ステータ保持部11b,12bの先端部の間からは、ステータコア21のメインコア部31の外周面が外部に露出されている。
【0048】
[ロータ]
図1に示すように、ロータ14は、軸受16,17に軸支された回転軸18と、回転軸18に一体回転可能に固定された円筒状のロータコア61と、ロータコア61の外周面に固着された複数(本実施形態では10個)の界磁磁石62とから構成されている。各界磁磁石62は、フェライト磁石よりなり、磁極(N極とS極)が周方向で交互に異なるように配置されている。ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さは、ステータコア21の内周端部の軸方向長さ(即ち、一方の磁性板40のロータ対向部44の先端から他方の磁性板40のロータ対向部44の先端までの長さ)と略等しく設定されている。即ち、界磁磁石62は、ステータコア21のメインコア部31の内周面と各磁性板40のロータ対向部44に対して径方向に対向している。
【0049】
回転軸18の先端部(図1において左側の端部)は、フロントフレーム12を貫通してモータ10の外部に突出している。そして、この回転軸18の先端部には、該回転軸18と一体回転するジョイント63が設けられている。このジョイント63は図示しない外部装置に連結され、その外部装置に回転軸18の回転を伝達する。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ステータ13の電機子巻線22への通電により発生した磁界とロータ14の界磁磁石62の磁界とが、メインコア部31の内周面と各磁性板40のロータ対向部44を介して作用し合い、ロータ14が回転する。なお、本実施形態では、磁性板40の板厚T1がコアシート30の板厚T2よりも厚く設定されているため、磁性板40での磁気飽和が生じにくく、磁性板40を介して磁気を取り込みやすくなっている。
【0051】
ここで、各磁性板40のロータ対向部44は、ステータコア21のティース24のロータ14側端部(径方向内側端部)から軸方向に延びるように形成されている。これにより、ステータコア21のロータ14との対向面(ステータコア21の内周面)の軸方向長さを確保して高出力化を図ることが可能となっている。そして、各ロータ対向部44の外周側の空間には、スロットSから軸方向両側に突出するセグメント導体25の第1及び第2突出部52,53を配置されており、その第1及び第2突出部52,53が軸方向両側のロータ対向部44と径方向にそれぞれ対向するように構成されている。このため、磁性板40のロータ対向部44によって出力を確保しつつも、ステータ13の軸方向長さ(本実施形態では、第1突出部52の軸端から第2突出部53までの長さ)を抑えることが可能となっている。
【0052】
また、ロータ対向部44によって出力を確保しつつも、ステータコア21のメインコア部31の積厚が抑えられるため、メインコア部31の積厚の変動(公差)が少なく抑えられる。これにより、メインコア部31を挟む各フレーム11,12の軸方向の間隔の変動が抑えられ、ひいては、モータ10全体の軸方向寸法の変動が抑えられるようになっている。なお、磁性板40は、その板厚T1が厚いほどその変動(公差)が大きくなるが、本実施形態のように、各フレーム11,12がメインコア部31のみを挟持して磁性板40とは軸方向に当接しないように構成することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動がより抑えられるようになっている。
【0053】
また、セグメント導体25は、溶接接合された第2突出部53だけでなく、湾曲成形された折り返し部25aを有する第1突出部52も、スロットSの径方向内側端部Saよりも径方向外側(反ロータ対向部側)に位置するように構成されている。このため、スロットSをロータ対向部44から径方向外側に離した構成としなくても、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との間隙D1,D2を確保することができるようになっている。これにより、ステータコア21の径方向への大型化を抑えつつも、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との干渉を抑えることが可能となっている。
【0054】
また、電機子巻線22にセグメント導体25を用いた構成では、セグメント導体25を収容するスロットSの数(ティース24の数)が多く、ティース24の周方向幅が狭くなる傾向がある。このため、ティース24におけるロータ14との対向面(径方向内側端面)の面積を広くして出力を向上させるためには、本実施形態のように、ロータ対向部44によってティース24の径方向内側端面を軸方向に延ばす構成が適している。また、本実施形態のティース24は、内周側ほど周方向幅が狭くなる径方向延出部24aと幅広部24bの境界部分で磁気集中しやすい構成であるが、その境界部位に磁性板40の積層部41が重なっているため、磁気集中が緩和されるようになっている。
【0055】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)メインコア部31の軸方向両端部にそれぞれ設けられた磁性板40は、メインコア部31の径方向内側端部(ロータ14側端部)から軸方向外側に延出されてロータ14と径方向に対向するロータ対向部44を有する。そして、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53は、ロータ対向部44と径方向に間隙D1,D2を介してそれぞれ対向する。これにより、メインコア部31の軸方向長さを小さく抑えることで、ステータ13の軸方向への大型化を抑えつつも、磁性板40のロータ対向部44によってステータコア21のロータ14との対向面を確保、つまり出力を確保することができる。
【0056】
また、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との間には径方向の間隙D1,D2がそれぞれ形成されるため、第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との干渉が抑制され、その結果、ロータ対向部44とセグメント導体25との絶縁性を好適に確保することができる。また、例えば、第1及び第2突出部52,53との干渉によってロータ対向部44が変形することによるコギングトルクの増大や出力の低下を抑制することができる。
【0057】
また、ロータ対向部44によって出力を確保しつつも、ステータコア21の積厚を抑えることも可能となるため、積厚を抑えることでステータコア21の傾きを抑えることができる。これにより、各フレーム11,12同士の傾きが抑えられるため、各軸受16,17の同軸性の悪化が抑えられ、その結果、ロータ14の軸ずれによって生じる騒音や振動を抑制することが可能となる。
【0058】
(2)セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53は、スロットSの径方向内側端部Sa(ロータ対向部44側の端部)よりも径方向外側(反ロータ対向部側)に位置するように構成される。このため、スロットSをロータ対向部44から径方向外側に離した構成としなくても、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との間隙を確保することができる。このため、ステータコア21の径方向への大型化を抑えつつも、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53とロータ対向部44との干渉を抑えることができる。
【0059】
(3)セグメント導体25は、周方向位置の異なるスロットSにそれぞれ挿入される一対の直線部51と、第1突出部52において一対の直線部51同士を繋ぐ折り返し部25aとが一体に形成された線材よりなる。そして、その折り返し部25aは、スロットSの径方向中心に対して反ロータ対向部側に偏倚するように形成される。このため、略U字状に折り返した形状のセグメント導体25において、折り返し部25aを有する第1突出部52とロータ対向部44との間隙D1を好適に確保することができる。
【0060】
(4)電機子巻線22は、各セグメント導体25がフロントフレーム12側の第2突出部53で溶接接合されてなり、その第2突出部53の溶接接合部54は、ロータ対向部44の軸方向先端部44bよりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成される。このため、第2突出部53の溶接作業においてロータ対向部44が邪魔になりにくく、第2突出部53を容易に溶接接合することができる。
【0061】
(5)磁性板40は、メインコア部31の軸方向端部に積層された積層部41を備えるため、積層部41をメインコア部31の各コアシート30と同様に固定(本実施形態ではかしめ固定)することが可能となり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0062】
(6)スロットSの軸方向両端を構成する各磁性板40のティース構成部43の角部には、面取り部43aが形成される。このため、セグメント導体25の第1及び第2突出部52,53の周方向の屈曲部位に対して、ティース構成部43の角部から局所的に力が加わることが抑制され、その屈曲部位の損傷を抑制することができる。
【0063】
(7)磁性板40の板厚T1は、コアシート30の板厚T2よりも厚く設定されるため、磁性板40を介して磁気を取り込みやすくすることができ、その結果、より一層の高出力化に寄与できる。また、磁性板40の板厚T1がコアシート30の板厚T2よりも厚いため、磁性板40のティース構成部43の角部に大きな面取り部43a(例えば、コアシート30の板厚T2よりも大きな曲率半径Rmを有する断面弧状の面取り部)を形成しやすく、その結果、セグメント導体25の屈曲部位の損傷を好適に抑制することが可能となる。
【0064】
(8)ロータ14の界磁磁石62が比較的安価なフェライト磁石よりなるため、モータ10の低コスト化に寄与できる。
(9)電機子巻線22がセグメント導体25にて構成されるため、電機子巻線22の占積率を向上させることが可能となる。また、電機子巻線22をセグメント導体25で構成すると、セグメント導体25がスロットS内において径方向に並ぶことから特に径方向に発熱しやすくもなるが、ステータコア21(メインコア部31)の外周面が各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bの間から外部に露出されるため、ステータ13で生じた熱を外部に逃がしやすく好適である。
【0065】
(10)各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、メインコア部31の外周縁(露出面31a)を軸方向に直接的に挟むように構成され、磁性板40に対しては軸方向に当接しないように構成される。このため、メインコア部31を挟む各フレーム11,12の軸方向の間隔の変動(公差)を抑えることができ、その結果、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑えることが可能となる。また、本実施形態のように、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚くして出力向上を図る場合には、磁性板40の板厚変動が大きくなる。このため、各フレーム11,12が磁性板40とは軸方向に当接しないように構成することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑える効果がより顕著となる。
【0066】
(11)磁性板40の積層部41は、メインコア部31における軸方向端部のコアシート30にかしめ固定されるため、凸部45(ダボ)及び凹部46からなる簡素な構成で磁性板40の積層部41とコアシート30とを固定することができる。
【0067】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bは、メインコア部31の外周縁(露出面31a)を軸方向に直接的に挟み、磁性板40に対しては軸方向に当接しないように構成されたが、これに特に限定されるものではなく、例えば図9に示すように、磁性板40の環状部42(積層部41)を介してメインコア部31を軸方向に挟むように構成してもよい。この図9に示すような構成によれば、磁性板40の積層部41をステータ保持部11b,12bに対して軸方向に干渉しないように径方向に小さくする必要がないため、出力の低下を抑えることができる。また、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚くして出力向上を図る場合には、磁性板40よりも板厚が薄いコアシート30の枚数を調整することで、モータ10全体の軸方向寸法の変動を抑えることが可能である。
【0068】
・上記実施形態では、各セグメント導体25は、スロットSに挿通された一対の直線部51を繋ぐ第1突出部52側で折り返されるように形成し、第2突出部53側で溶接等により接合するように構成されたが、これに特に限定されるものではない。例えば図10に示すように、一対の直線部51をそれぞれ別体とし、各セグメント導体25が軸方向両側の第1及び第2突出部52,53でそれぞれ溶接接合されるように構成してもよい。なお、図10には、周方向位置の異なるスロットSに挿入されたセグメント導体25の各突出部52,53同士を溶接接合した部位を溶接接合部54として模式的に示している。この構成によれば、セグメント導体を略U字状に折り返した形状とする場合に、その折り返し部に生じうる径方向内側への膨らみが生じないため、各突出部52,53とロータ対向部44との間隙D1,D2を好適に確保することができる。なお、各溶接接合部54は、ロータ対向部44の軸方向先端部44bよりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成されることが好ましく、これによれば、各突出部52,53の溶接作業においてロータ対向部44が邪魔になりにくく、各突出部52,53を容易に溶接接合することができる。また、セグメント導体25同士の接続は、溶接以外に例えば、バスバー等の別部材を用いた接続構造としてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、第2突出部53の溶接接合部54を、フロントフレーム12側のロータ対向部44の軸方向先端部44bよりも軸方向外側(反メインコア部側)に形成したが、これに限らず、第2突出部53の溶接部位をロータ対向部44の軸方向先端部44bよりも軸方向内側(メインコア部31側)に形成してもよい。この構成によれば、第2突出部53がロータ対向部44よりも軸方向外側に突出しないように構成できるため、ステータ13の軸方向の小型化に寄与できる。
【0070】
・上記実施形態では、磁性板40の積層部41の外径をコアシート30の外径よりも小さくすることで、メインコア部31の軸方向端面の外周縁全体に亘って露出面31aを形成し、その露出面31aを各フレーム11,12のステータ保持部11b,12bで挟むように構成したが、これに特に限定されるものではない。例えば、メインコア部31(コアシート30)の外周面から径方向外側に突出する突出部を形成し、その突出部をステータ保持部11b,12bで挟むように構成してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、ロータ対向部44を径方向視で台形形状に形成したが、これ以外に例えば、径方向視で矩形状に形成してもよく、磁気の取り込みが可能な形状であればよい。
【0072】
・上記実施形態では、磁性板40の積層部41は、環状部42とティース構成部43とを有するが、これ以外に例えば、積層部41をティース構成部43のみで構成してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、磁性板40はメインコア部31(コアシート30)にかしめ固定されたが、これ以外に例えば、接着や溶接によって固定してもよい。
・上記実施形態では、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2よりも厚く設定したが、これに特に限定されるものではなく、磁性板40の板厚T1をコアシート30の板厚T2に対して等しく、又は薄く設定してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、磁性板40をメインコア部31の軸方向両側にそれぞれ設けたが、これに特に限定されるものではなく、磁性板40をメインコア部31の軸方向一方側のみに設けてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、ステータコア21のメインコア部31を複数のコアシート30よりなる積層構造としたが、これ以外に例えば、メインコア部31を鋳造等により成形される一体成形品としてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、セグメント導体25にて構成される電機子巻線22を用いたが、これ以外に例えば、銅線等をティースに巻回してなる電機子巻線を用いてもよい。
・上記実施形態では、ロータ14の界磁磁石62にフェライト磁石を用いたが、これ以外に例えば、ネオジム磁石等を用いてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、界磁磁石62をロータコア61の外周面に設けたが、これ以外に例えば、ロータコア61の内部に埋設してもよい。
・上記実施形態において、ロータコア61及びロータ14の界磁磁石62の軸方向長さを、ステータコア21の内周端部の軸方向長さ(即ち、一方の磁性板40のロータ対向部44の先端から他方の磁性板40のロータ対向部44の先端までの長さ)に対して異なるように設定してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、ステータコア21を一対のフレーム11,12で挟持する構成としたが、これ以外に例えば、ステータコア21を円筒状の金属製のハウジングに圧入や焼嵌め等により固定する構成としてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、ロータ14をステータ13の内周側に配置したインナロータ型のモータ10に具体化したが、これに特に限定されるものではなく、ロータをステータの外周側に配置したアウタロータ型のモータに具体化してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…モータ、11…リヤフレーム、12…フロントフレーム、13…ステータ、14…ロータ、18…回転軸、21…ステータコア、22…電機子巻線、25,25x,25y…セグメント導体、25a…折り返し部、30…コアシート、31…メインコア部、40…磁性板、41…積層部、43a…面取り部、44…ロータ対向部、51…直線部、52,53…第1及び第2突出部(突出部)、54…溶接接合部、62…界磁磁石、S…スロット、D1,D2…間隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10