特許第6047419号(P6047419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047419
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】軌道回路用送信器
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/18 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   B61L1/18 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-29720(P2013-29720)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159185(P2014-159185A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英司
(72)【発明者】
【氏名】稲田 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】大塚 邦晃
(72)【発明者】
【氏名】菊池 健司
【審査官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274832(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00831006(EP,A1)
【文献】 特開2012−056447(JP,A)
【文献】 特開2007−028329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を軌道回路に送信する軌道回路用送信器において、
前記信号の出力レベルを検知し、当該出力レベルをもって軌道回路用送信器の故障有無を監視する監視部と、
前記監視部の出力信号を受け、前記軌道回路に出力する信号を制御する信号出力制御部と、
前記信号の出力レベルを調整するレベル調整部と、を有し、
前記信号出力制御部は、
前記軌道回路が列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、前記レベル調整部に対して、前記信号の出力レベルを調整する指示を行い、
前記レベル調整部は、
前記信号の出力レベルを調整する指示を受け、前記軌道回路に送信する前記信号の周波数を保ちながら、当該信号の出力レベルを徐々に下げ又は立ち上がるように変化させ、当該信号を停止又は開始する
ことを特徴とする軌道回路用送信器。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道回路用送信器であって、
前記信号は、ATC信号であり、更に、前記ATC信号を搬送するATC信号用キャリア波を生成するキャリア波生成器と、
前記ATC信号用キャリア波を選択、又は非選択する選択部と、を有し、
前記信号出力制御部は、前記選択部に対して前記ATC信号用キャリア波を選択、又は非選択かを指示し、当該ATC信号用キャリア波を選択した場合、当該ATC信号用キャリア波により搬送される前記ATC信号を出力することを特徴とする軌道回路用送信器。
【請求項3】
請求項2に記載の軌道回路用送信器であって、
前記レベル調整部は、前記信号出力制御部のレベル調整指示を受け、前記ATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整器からなり、当該電圧レベルがゼロクロス点にて前記ATC信号を停止し、またゼロレベルから前記ATC信号を出力開始することを特徴とする軌道回路用送信器。
【請求項4】
ATC論理部からの指示信号を受け、ATC信号用キャリア波を選択する選択信号、ATC信号、ATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整指示信号、を出力する信号出力制御部と、前記ATC信号用キャリア波を生成するキャリア波生成器と、前記信号出力制御部の選択信号を受け、前記キャリア波生成器のATC信号用キャリア波を出力するか非かを選択する選択器と、前記信号出力制御部のATC信号を受け、当該ATC信号を前記選択器のATC信号用キャリア波にて変調する変調器と、当該変調器の変調信号を増幅し、軌道回路側に出力する増幅器と、前記増幅器の出力信号を検知し、当該検知した出力信号を送信器故障監視用フィードバック情報として前記信号出力制御部に出力する監視部と、前記信号出力制御部のレベル調整指示信号を受け、前記変調器の変調信号の電圧レベルを調整するレベル調整器と、を有し、前記軌道回路側への列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、前記レベル調整器をもって、前記変調器の変調信号の周波数成分を保ちながら、当該変調信号の出力レベルを変化させ、前記ATC信号の前記軌道回路側への出力を停止又は出力を開始するように制御することを特徴とする軌道回路用送信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道回路用送信器に関する。例えば、鉄道用保安装置である自動列車制御装置(以下、ATC(Automatic Train Control)装置と称す。)に用いて適した軌道回路用送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010−274832号公報(特許文献1)がある。この公報には、課題として「未送信状態における故障の潜在を防ぐ」ことを挙げ、解決手段として「ATC信号出力制御部と、ATCキャリア波生成器及び検査信号波生成器と、ATCキャリア波生成器又は検査信号波生成器からの入力信号の出力、或いは未出力をATC信号出力制御部3からの指示により出力する選択器と、ATC信号出力制御部から伝達するATC情報にあわせて周波数変調する変調器と、変調器9の出力を電力増幅する増幅器と、出力信号の出力電圧を検知して電圧フィードバック情報として出力する電圧検知部と、出力信号の出力電流を検知して電流フィードバック情報として出力する電流検知部と、を含む軌道回路用送信器を構成し、列車在線時にはATC信号を出力し、列車非在線時には列車の在線状態に合わせて必要時に検査信号を出力する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、ATC装置及び軌道回路用送信器の仕組みが記載されている。例えば、ATC装置では、図2に示すように、軌道回路毎にTD信号送信器19、ATC信号送信器20、TD信号受信器21、を有する。
【0005】
TD信号送信器19は、ATC論理部2から通信網25を介して制御信号(TD信号出力指示及びTD信号出力停止指示)を受け、当該制御信号のTD信号出力指示に基づき列車検知信号(以下、TD(Train Detection)信号と言う)を出力し、軌道回路17に送信する。
【0006】
ATC信号送信器20は、ATC論理部2からの制御信号(ATC信号出力指示及びATC信号出力停止指示)を受け、自動列車制御信号(以下、ATC信号と言う)を出力し、軌道回路17に送信する。
【0007】
TD信号23は軌道回路17を介してTD信号受信器21へ送信され、ATC信号24は軌道回路17を介して列車22の車上装置へ送信される。
【0008】
軌道回路17には、隣接する軌道回路間に絶縁物を介入する有絶縁軌道回路と絶縁物を介入しない無絶縁軌道回路の2種類が存在する。
【0009】
有絶縁軌道回路は、各軌道回路間が電気的に絶縁されている。このため、TD信号送信器19、ATC信号送信器20から送信される信号が隣接する軌道回路に漏れない。従って、列車22の軌道回路17への在線状態によらず、TD信号23とATC信号24を常時送信することが可能となる。また、有絶縁軌道回路ではATC信号24とTD信号23を同一信号で構成することが可能となり、システム構成を簡素化することができる特長がある。
【0010】
一方、近年、有絶縁軌道回路における絶縁物の設置コスト及び保守コストが高いことから、無絶縁軌道回路を適用したATC装置が注目されている。
【0011】
無絶縁軌道回路は、軌道回路間の絶縁物が無いため、隣接する軌道回路間が電気的に接続されている。このため、常時送信しているTD信号23は隣接軌道回路での干渉を防ぐために、複数種類の異なる周波数を準備し、各軌道回路へ割り当てる必要がある。これに対し、ATC信号24は、列車22が在線している軌道回路のみに送信する。これにより、隣接軌道回路でのATC信号同士の干渉を防いでいる。
【0012】
列車22が軌道回路上にある在線状態から、隣接軌道回路へ移動し、非在線状態になった場合、ATC信号送信状態から非送信状態へ遷移する。その際、ATC信号用キャリア波を選択する選択器(図1の選択器1参照)は、ATC信号送信状態から、非送信状態へ切替えるよう動作する。しかし、選択器による送信状態の切替時にATC信号の送信状態に関係なく、ATC信号用キャリア波は切断されるため、軌道回路用送信器から軌道回路への送信信号(ATC信号)出力が突如切断され、停止することになる(図9参照)。この場合、過渡的に不要な周波数帯域の信号を短時間出力することになる。例えば、ATC信号の切断時にTD信号と同一の帯域の周波数成分が発生した場合、列車22に対して誤った制御を行う要因と成り得る可能性があり、列車保安上好ましくない。
【0013】
そこで、本発明は、軌道回路へ送信する信号の送信状態に変化がある場合、軌道回路の列車に対して誤制御の要因となる周波数帯域の成分を抑制しながら、送信信号の状態を遷移する軌道回路用送信器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題解決のために、本発明は、軌道回路用送信器に、例えば、軌道回路が列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、送信信号の周波数を保ちながら、当該送信信号の出力レベルを変化させ、当該送信信号を停止又は開始するように遷移制御する手段を有する。
【0015】
遷移制御する手段は、例えば、信号出力制御部からの指示に従って軌道回路へ出力する送信信号の電圧レベルを徐々に下降又は上昇するように調整するレベル調整器であり、又は送信信号の電圧レベルを検知し、当該レベルが0、若しくは0に近い値になったとき、送信信号を停止する回路である。
【0016】
更に具体例では、本発明の軌道回路用送信器は、軌道回路に送信する信号の出力レベルを検知し、当該出力レベルをもって軌道回路用送信器の故障有無を監視する監視部と、前記監視部の出力信号を受け、前記軌道回路に出力する信号を制御する信号出力制御部と、前記信号の出力レベルを調整するレベル調整部と、を有し、前記信号出力制御部は、前記軌道回路が列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、前記レベル調整器に対して、前記信号の出力レベルを調整する指示を行い、前記レベル調整部は、前記出力レベル調整指示を受け、前記軌道回路に送信する前記信号の周波数を保ちながら、当該信号の出力レベルを徐々に下げ又は立ち上がるように変化させ、当該信号を停止又は開始することを特徴とする。
【0017】
軌道回路用送信器であって、前記信号は、ATC信号であり、更に、前記ATC信号を搬送するATCキャリア波を生成するキャリア波生成器と、前記ATCキャリア波を選択、又は非選択する選択部と、を有し、前記信号出力制御部は、前記選択部に対して前記ATCキャリア波を選択、又は非選択かを指示し、当該ATCキャリア波を選択した場合、当該ATCキャリア波により搬送される前記ATC信号を出力することを特徴とする。
【0018】
軌道回路用送信器であって、前記レベル調整部は、前記信号出力制御部のレベル調整指示を受け、前記ATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整器からなり、当該電圧レベルがゼロクロス点にて前記ATC信号を停止し、またゼロレベルから前記ATC信号を出力開始することを特徴とする。
【0019】
本発明の軌道回路用送信器は、ATC信号を軌道回路に出力するATC信号用キャリア波を生成するキャリア波生成器と、前記ATC信号用キャリア波を選択、又は非選択する選択部と、前記選択部に対して前記ATC信号用キャリア波を選択、又は非選択かを指示し、当該ATC信号用キャリア波を選択した場合、当該ATC信号用キャリア波により搬送される前記ATC信号を出力する信号出力制御部と、前記ATC信号の出力レベルを検知し、当該出力レベルをもって軌道回路用送信器の故障有無を監視する監視部と、を有する軌道回路用送信器であって、前記軌道回路が列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、前記ATC信号用キャリア波の周波数を保ちながら、前記ATC信号用キャリア波の出力レベルを徐々に下げ又は上がるように変化させ、当該ATC信号を停止又は開始するように制御するレベル調整手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
本発明の軌道回路用送信器は、ATC論理部からの指示信号を受け、ATC信号用キャリア波を選択する選択信号、ATC信号、ATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整指示信号、を出力する信号出力制御部と、前記ATC信号用キャリア波を生成するキャリア波生成器と、前記信号出力制御部の選択信号を受け、前記キャリア波生成器のATC信号用キャリア波を出力するか非かを選択する選択器と、前記信号出力制御部のATC信号を受け、当該ATC信号を前記選択器のATC信号用キャリア波にて変調する変調器と、当該変調器の変調信号を増幅し、軌道回路側に出力する増幅器と、前記増幅器の出力信号を検知し、当該検知した出力信号を送信器故障監視用フィードバック情報として前記信号出力制御部に出力する監視部と、前記信号出力制御部のレベル調整指示信号を受け、前記変調器の変調信号の電圧レベルを調整するレベル調整器と、を有し、前記軌道回路への列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合、前記レベル調整器をもって、前記変調器の変調信号の周波数成分を保ちながら、当該変調信号の出力レベルを変化させ、前記ATC信号の前記軌道回路への出力を停止又は出力を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、送信信号の出力を停止、又は送信信号の出力を開始する際に、当該信号の周波数成分を保ちながら、当該信号のレベルを滑らかに変化させることにより、軌道回路の列車に対して誤制御の要因となる周波数帯域の不要な周波数成分の出力を防ぎ、安全に列車制御の継続が可能となる。
【0022】
例えば、ATC信号及び/又はTD信号の出力を停止、又は出力を開始する際に、ATC信号用キャリア波及び/又はTD信号用キャリア波の周波数成分を保ちながら、当該キャリア波レベルを滑らかに変化させ、停止、又は開始することにより、不要な周波数成分の出力を防ぎ、安全に列車制御の継続が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の軌道回路用送信器の一例を示すATC信号送信器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明のATC信号送信器およびTD信号送信器を適用したATCシステムの概略構成図である。
図3】ATC信号送信器において、列車が軌道回路から隣接軌道回路へ移動した場合における、ATC信号の軌道回路への送信が停止し、またATC信号の隣接軌道回路への送信を開始する様子を示す図である。
図4】ATC信号送信器において、ATC信号送信を停止した時の送信信号の電圧レベルの挙動を模式的に示す信号波形図である。
図5】ATC信号送信器において、送信信号をゼロクロス点(0V)にて停止する様子を示す電圧レベルの信号波形図である。
図6】ATC信号送信器において、ATC信号送信を開始した時の送信信号の電圧レベルの挙動を摸式的に示す信号波形図である。
図7】本発明の軌道回路用送信器の他の例を示すTD信号送信器の構成を示すブロック図である。
図8】ATC信号送信器におけるレベル調整器の一具体例を示す回路図である。
図9】レベル調整器の他の例を示す回路図である。
図10】本発明のレベル調整器を適用しない場合において、ATC信号送信を停止した時の電圧レベルの挙動を模式的に示す信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明は、ATC信号送信器、TD信号送信器、或いはその他の信号、例えば、地上側の機器が正常に動作しているか非かを確認するための信号を送信する信号送信器に対しても適用できるが、本例では、主として本発明の軌道回路用送信器の一つであるATC信号送信器について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、軌道回路用送信器の一例を示すATC信号送信器の構成を示すブロック図である。同図において、軌道回路用送信器のATC信号送信器1は、ATC信号出力制御部3と、ATCキャリア波生成器4と、選択器6と、変調器8と、監視部13、15と、レベル調整器10と、増幅器11、を有する。
【0026】
ATC信号出力制御部3は、ATC論理部2からの制御信号18を受け、ATC信号用キャリア波選択信号(選択指示)5、ATC信号7、ATC送信信号レベル調整指示9、を出力する。
【0027】
ATCキャリア波生成器4は、所望の周波数を有し、前記ATC信号用キャリア波を生成する。
【0028】
選択器6は、ATC信号出力制御部3の選択指示5を受け、当該指示に基づきATCキャリア波生成器4のATC信号用キャリア波を変調器8に出力するか非かを選択する。
【0029】
変調器8は、ATC信号出力制御部3のATC信号7を受け、当該ATC信号を選択器6から出力されるATC信号用キャリア波にて周波数変調し、当該変調信号を後段に出力する。
増幅器11は、変調器8にて変調されたATC信号を電力増幅し、送信信号として軌道回路17側に出力する。
【0030】
レベル調整器10は、選択器6がATCキャリア波を選択している状態から非選択状態に切り替わったとき、つまりATCキャリア波の変調器8、レベル調整器10への出力を停止状態としたとき、ATC信号出力制御部3のレベル調整指示9を受け、変調器8から出力されるATC信号(ATC信号用キャリア波)の電圧レベルを調整する機能を有する。
【0031】
本例では、変調器8と増幅器11との間にレベル調整器10を配置したものであるが、レベル調整器10は、変調器8の直前や増幅器11の後段に配置してもよい。また、レベル調整器10は、例えば平滑フィルタで構成する。要するに、ATC信号用キャリア波の電圧レベルが徐々に、又は滑らかに下降するように変化させる機能を有するように構成したものであればよい。
【0032】
係る構成により、軌道回路17への列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合には、変調器8の出力信号(ATC信号用キャリア波)の周波数成分を保ちながら、当該出力信号の電圧レベルが徐々に、又は滑らかに下降するように変化させ、ATC信号7の軌道回路17への出力を停止する(図4参照)。
【0033】
監視部13、15は、ATC信号送信器1の増幅器11の出力信号を監視し、当該出力信号をもって送信器1の故障状態を監視するものであって、電圧検知部13、電流検知部15、を有する。
【0034】
電圧検知部13は、増幅器11の出力信号の電圧を検知し、当該検知電圧を電圧フィードバック情報12としてATC信号出力制御部3に出力する。電流検知部15は、増幅器11の出力電流を検知し、当該検知電流を電流フィードバック情報14としてATC信号出力制御部3に出力する。
【0035】
ATC論理部2は、TD受信器21(図2参照)からのTD信号23を受け、当該TD信号に基づき、列車22の在線状態を判定し、在線時にATC信号出力制御部3に対して、ATC信号出力指示を、前記制御信号18をもって行う。
【0036】
ATC論理部2からATC信号出力指示を受けたATC信号出力制御部3は、上述したATC信号用キャリア波選択信号(選択指示)5を選択器6に対して出力し、ATC信号7を変調器8に対して出力する。
これにより、ATCキャリア波生成器4からのATC信号用キャリア波は、変調器6に入力され、ATC信号7を変調し、当該変調信号を、増幅器11を介して送信信号として送出することができる。
【0037】
また、列車22(図2参照)が隣接軌道回路へ侵入した際には、当該隣接軌道回路へ送信するATC信号送信器20(図2参照)からのATC信号と干渉しないように、当該ATC信号を即座に停止する必要がある。従って、列車22が隣接軌道回路へ侵入した場合には、ATC論理部2からATC信号出力制御部3に対して、ATC信号停止指示を、制御信号18をもって行う。
【0038】
ATC信号停止指示を受けたATC信号出力制御部3は、選択器6を介して、ATC信号用キャリア波を選択しない未出力(ATC信号用キャリア波切断)側を選択指示する。このとき、レベル調整器10がない場合、変調器8の出力レベルは、図8に示すように挙動する。このような挙動信号を、増幅器11を介して軌道回路17へ出力した場合は、上述した如く、不要な周波数帯域の成分が含まれるため、列車22に対して誤った制御を行う可能性がある。
【0039】
本発明は、係る課題を是正するため、例えばレベル調整器10を設け、当該レベル調整器をもって、軌道回路17への送信信号の出力電圧レベルを調整するように構成したものである。
すなわち、ATC信号出力制御部3は、ATC信号停止指示を受けたとき、選択器6に対して、選択指示5をもってATC信号用キャリア波を選択しないよう指示すると共に、レベル調整器10に対して、レベル調整指示9をもってATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整する指示を行う。
【0040】
レベル調整指示9を受けたレベル調整器10は、変調器8からの出力信号(ATC信号用キャリア波)の電圧レベルを徐々に下降するように、つまり電圧レベルを滑らかに減少するように変化させ、0レベルとなるように調整する。このレベル調整により、ATC信号送信器1から不要な周波数成分を軌道回路17に出力しないようすることができる。
電圧レベルを滑らかに0レベルへ変化させるレベル調整器10として、例えば平滑フィルタを用いる。
【0041】
図8は、レベル調整器10として、平滑フィルタ101を用いた場合の一例を示す回路図である。
【0042】
同図において、平滑フィルタ101は、例えば、スイッチ部102により、レベル調整指示9を受け、オン・オフ切り替える。
【0043】
平滑フィルタ101は、例えば、図9に示す如く、移動平均を使用した平滑フィルタ、所謂ディジタルフィルタにより、構成する。そして、レベル調整指示9に従い、平滑フィルタの出力か否かを選択する。
【0044】
図4は、ATC信号送信を停止した時の出力信号(ATC信号用キャリア波の電圧レベルV)の挙動を示す図であって、出力信号の電圧レベルVが時間Tと共に減少し、0まで変化する様子を示した図である。
【0045】
これにより、図10に示す如く、高いレベルから急激に突如0レベルへと大きく変化することが無くなるため、ATC信号の送信出力停止時に不要な周波数成分を含んだ信号を軌道回路17側に出力することは無くなる。
【0046】
また、実施例では、レベル調整器10として、平滑フィルタを挙げたが、信号のゼロクロス点を検知し、レベルが0、又は小さい状態で、信号を停止する方法でも良い。
例えば、図9に示す如く、変調器8の出力電圧を検知する回路103、当該出力電圧が0、又は0に近い値になったとき、軌道回路17への送信信号を停止する回路102を含む回路手段104を設け、当該回路手段により、信号を停止するようにしてもよい。
【0047】
この場合は、電圧レベルが、例えば、図5に示す如く挙動となる。図5は、ATC信号送信器において、ゼロクロス点(0V)にてATC信号送信を停止する電圧レベルの挙動を模式的に示す信号波形図である。このような方法においても、不要な周波数成分の出力を防ぐことができる。
【0048】
レベル調整器10は、上述したように変調器8の後段に配置する必要はない。例えば、選択器6の前段や選択器6の後段や、増幅器11の後段に配置しても良い。
【0049】
また、本実施例では、信号停止時におけるレベル調整について説明したが、信号出力開始時にも適用することが可能である。信号出力開始時においても、選択器6が未出力の状態から出力の状態へ変化するため、不要な周波数成分を出力する可能性があり、出力開始時にレベル調整することで、0レベルから滑らかに信号出力を開始することが可能となる。
【0050】
図6は、ATC信号送信器において、ATC信号送信を開始した時の送信信号の電圧レベルの挙動を摸式的に示す信号波形図である。
【実施例2】
【0051】
実施例1では、ATC信号を例として説明したが、TD信号など他の信号においても、同様に使用でき、不要なノイズ成分の出力を防ぐことができる。
【0052】
図7は、本発明の軌道回路用送信器の他の例を示すTD信号送信器の構成を示すブロック図である。
【0053】
同図において、TD信号送信器19(図2参照)は、ATC信号送信器20と同様にTD信号出力制御部3’と、TDキャリア波生成器4’と、選択器6’と、変調器8’と、監視部13’、15’と、レベル調整器10’と、増幅器11’、を有する。
【0054】
TD信号出力制御部3’は、ATC論理部2からの制御信号18を受け、TD信号出力を行い、選択器6’に対してTD信号用キャリア波を選択する選択信号(選択指示)5’を出力し、変調器6に対してTD信号7’を出力し、レベル調整器10’に対してTD信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整信号(レベル調整指示)9’を出力する。
【0055】
TD信号受信器21(図2参照)は、TD信号を受信し、ATC論理部2に出力するTD信号受信部を有する。
【0056】
レベル調整器は10’、実施例1のレベル調整器10と同様にTD信号7’の出力レベル(TD信号用キャリア波の電圧レベル)を調整する機能を有する。その他は、実施例1と同様故、説明は省略する。
【0057】
また、上述した実施例では、ATC信号、TD信号をそれぞれ変調した例を説明しているが、本発明は、変調しない信号、いわゆる無変調の信号(キャリア波のレベル調整)についても、適用することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 軌道回路用送信器
2 ATC論理部
3 ATC信号出力制御部
4 ATCキャリア波生成器
5 ATC信号出力制御部から選択器への選択信号
6 選択器
7 ATC信号出力制御部から変調器へのATC情報
8 変調器
9 ATC信号出力制御部からレベル調整器へのレベル調整指示
10 レベル調整器
11 増幅器
12 電圧フィードバック情報
13 電圧検知部
14 電流フィードバック情報
15 電流検知部
16 出力信号
17 軌道回路
18 ATC論理部から軌道回路用送信器への出力指示
19 TD信号送信器
20 ATC信号送信器
21 TD受信器
22 走行列車
23 TD信号
24 ATC信号
25 通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10