【実施例1】
【0025】
図1は、軌道回路用送信器の一例を示すATC信号送信器の構成を示すブロック図である。同図において、軌道回路用送信器のATC信号送信器1は、ATC信号出力制御部3と、ATCキャリア波生成器4と、選択器6と、変調器8と、監視部13、15と、レベル調整器10と、増幅器11、を有する。
【0026】
ATC信号出力制御部3は、ATC論理部2からの制御信号18を受け、ATC信号用キャリア波選択信号(選択指示)5、ATC信号7、ATC送信信号レベル調整指示9、を出力する。
【0027】
ATCキャリア波生成器4は、所望の周波数を有し、前記ATC信号用キャリア波を生成する。
【0028】
選択器6は、ATC信号出力制御部3の選択指示5を受け、当該指示に基づきATCキャリア波生成器4のATC信号用キャリア波を変調器8に出力するか非かを選択する。
【0029】
変調器8は、ATC信号出力制御部3のATC信号7を受け、当該ATC信号を選択器6から出力されるATC信号用キャリア波にて周波数変調し、当該変調信号を後段に出力する。
増幅器11は、変調器8にて変調されたATC信号を電力増幅し、送信信号として軌道回路17側に出力する。
【0030】
レベル調整器10は、選択器6がATCキャリア波を選択している状態から非選択状態に切り替わったとき、つまりATCキャリア波の変調器8、レベル調整器10への出力を停止状態としたとき、ATC信号出力制御部3のレベル調整指示9を受け、変調器8から出力されるATC信号(ATC信号用キャリア波)の電圧レベルを調整する機能を有する。
【0031】
本例では、変調器8と増幅器11との間にレベル調整器10を配置したものであるが、レベル調整器10は、変調器8の直前や増幅器11の後段に配置してもよい。また、レベル調整器10は、例えば平滑フィルタで構成する。要するに、ATC信号用キャリア波の電圧レベルが徐々に、又は滑らかに下降するように変化させる機能を有するように構成したものであればよい。
【0032】
係る構成により、軌道回路17への列車在線から非在線へ、又は列車非在線から在線へ遷移した場合には、変調器8の出力信号(ATC信号用キャリア波)の周波数成分を保ちながら、当該出力信号の電圧レベルが徐々に、又は滑らかに下降するように変化させ、ATC信号7の軌道回路17への出力を停止する(
図4参照)。
【0033】
監視部13、15は、ATC信号送信器1の増幅器11の出力信号を監視し、当該出力信号をもって送信器1の故障状態を監視するものであって、電圧検知部13、電流検知部15、を有する。
【0034】
電圧検知部13は、増幅器11の出力信号の電圧を検知し、当該検知電圧を電圧フィードバック情報12としてATC信号出力制御部3に出力する。電流検知部15は、増幅器11の出力電流を検知し、当該検知電流を電流フィードバック情報14としてATC信号出力制御部3に出力する。
【0035】
ATC論理部2は、TD受信器21(
図2参照)からのTD信号23を受け、当該TD信号に基づき、列車22の在線状態を判定し、在線時にATC信号出力制御部3に対して、ATC信号出力指示を、前記制御信号18をもって行う。
【0036】
ATC論理部2からATC信号出力指示を受けたATC信号出力制御部3は、上述したATC信号用キャリア波選択信号(選択指示)5を選択器6に対して出力し、ATC信号7を変調器8に対して出力する。
これにより、ATCキャリア波生成器4からのATC信号用キャリア波は、変調器6に入力され、ATC信号7を変調し、当該変調信号を、増幅器11を介して送信信号として送出することができる。
【0037】
また、列車22(
図2参照)が隣接軌道回路へ侵入した際には、当該隣接軌道回路へ送信するATC信号送信器20(
図2参照)からのATC信号と干渉しないように、当該ATC信号を即座に停止する必要がある。従って、列車22が隣接軌道回路へ侵入した場合には、ATC論理部2からATC信号出力制御部3に対して、ATC信号停止指示を、制御信号18をもって行う。
【0038】
ATC信号停止指示を受けたATC信号出力制御部3は、選択器6を介して、ATC信号用キャリア波を選択しない未出力(ATC信号用キャリア波切断)側を選択指示する。このとき、レベル調整器10がない場合、変調器8の出力レベルは、
図8に示すように挙動する。このような挙動信号を、増幅器11を介して軌道回路17へ出力した場合は、上述した如く、不要な周波数帯域の成分が含まれるため、列車22に対して誤った制御を行う可能性がある。
【0039】
本発明は、係る課題を是正するため、例えばレベル調整器10を設け、当該レベル調整器をもって、軌道回路17への送信信号の出力電圧レベルを調整するように構成したものである。
すなわち、ATC信号出力制御部3は、ATC信号停止指示を受けたとき、選択器6に対して、選択指示5をもってATC信号用キャリア波を選択しないよう指示すると共に、レベル調整器10に対して、レベル調整指示9をもってATC信号用キャリア波の電圧レベルを調整する指示を行う。
【0040】
レベル調整指示9を受けたレベル調整器10は、変調器8からの出力信号(ATC信号用キャリア波)の電圧レベルを徐々に下降するように、つまり電圧レベルを滑らかに減少するように変化させ、0レベルとなるように調整する。このレベル調整により、ATC信号送信器1から不要な周波数成分を軌道回路17に出力しないようすることができる。
電圧レベルを滑らかに0レベルへ変化させるレベル調整器10として、例えば平滑フィルタを用いる。
【0041】
図8は、レベル調整器10として、平滑フィルタ101を用いた場合の一例を示す回路図である。
【0042】
同図において、平滑フィルタ101は、例えば、スイッチ部102により、レベル調整指示9を受け、オン・オフ切り替える。
【0043】
平滑フィルタ101は、例えば、
図9に示す如く、移動平均を使用した平滑フィルタ、所謂ディジタルフィルタにより、構成する。そして、レベル調整指示9に従い、平滑フィルタの出力か否かを選択する。
【0044】
図4は、ATC信号送信を停止した時の出力信号(ATC信号用キャリア波の電圧レベルV)の挙動を示す図であって、出力信号の電圧レベルVが時間Tと共に減少し、0まで変化する様子を示した図である。
【0045】
これにより、
図10に示す如く、高いレベルから急激に突如0レベルへと大きく変化することが無くなるため、ATC信号の送信出力停止時に不要な周波数成分を含んだ信号を軌道回路17側に出力することは無くなる。
【0046】
また、実施例では、レベル調整器10として、平滑フィルタを挙げたが、信号のゼロクロス点を検知し、レベルが0、又は小さい状態で、信号を停止する方法でも良い。
例えば、
図9に示す如く、変調器8の出力電圧を検知する回路103、当該出力電圧が0、又は0に近い値になったとき、軌道回路17への送信信号を停止する回路102を含む回路手段104を設け、当該回路手段により、信号を停止するようにしてもよい。
【0047】
この場合は、電圧レベルが、例えば、
図5に示す如く挙動となる。
図5は、ATC信号送信器において、ゼロクロス点(0V)にてATC信号送信を停止する電圧レベルの挙動を模式的に示す信号波形図である。このような方法においても、不要な周波数成分の出力を防ぐことができる。
【0048】
レベル調整器10は、上述したように変調器8の後段に配置する必要はない。例えば、選択器6の前段や選択器6の後段や、増幅器11の後段に配置しても良い。
【0049】
また、本実施例では、信号停止時におけるレベル調整について説明したが、信号出力開始時にも適用することが可能である。信号出力開始時においても、選択器6が未出力の状態から出力の状態へ変化するため、不要な周波数成分を出力する可能性があり、出力開始時にレベル調整することで、0レベルから滑らかに信号出力を開始することが可能となる。
【0050】
図6は、ATC信号送信器において、ATC信号送信を開始した時の送信信号の電圧レベルの挙動を摸式的に示す信号波形図である。
【実施例2】
【0051】
実施例1では、ATC信号を例として説明したが、TD信号など他の信号においても、同様に使用でき、不要なノイズ成分の出力を防ぐことができる。
【0052】
図7は、本発明の軌道回路用送信器の他の例を示すTD信号送信器の構成を示すブロック図である。
【0053】
同図において、TD信号送信器19(
図2参照)は、ATC信号送信器20と同様にTD信号出力制御部3’と、TDキャリア波生成器4’と、選択器6’と、変調器8’と、監視部13’、15’と、レベル調整器10’と、増幅器11’、を有する。
【0054】
TD信号出力制御部3’は、ATC論理部2からの制御信号18を受け、TD信号出力を行い、選択器6’に対してTD信号用キャリア波を選択する選択信号(選択指示)5’を出力し、変調器6に対してTD信号7’を出力し、レベル調整器10’に対してTD信号用キャリア波の電圧レベルを調整するレベル調整信号(レベル調整指示)9’を出力する。
【0055】
TD信号受信器21(
図2参照)は、TD信号を受信し、ATC論理部2に出力するTD信号受信部を有する。
【0056】
レベル調整器は10’、実施例1のレベル調整器10と同様にTD信号7’の出力レベル(TD信号用キャリア波の電圧レベル)を調整する機能を有する。その他は、実施例1と同様故、説明は省略する。
【0057】
また、上述した実施例では、ATC信号、TD信号をそれぞれ変調した例を説明しているが、本発明は、変調しない信号、いわゆる無変調の信号(キャリア波のレベル調整)についても、適用することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。