【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に係るシステム構成図である。本システムは、連動装置(11)、保守装置(12)および地上機器(例えば、信号機、転てつ機、軌道回路等)で構成する。
連動装置(11)は、例えば、駅構内の機器室等に設置され、地上機器(例えば、信号機、転てつ機、軌道回路等)を制御することにより、列車進路の構成処理等を行う装置である。
【0010】
保守装置(12)は、連動装置(11)と相互に通信する機能を有し、連動装置(11)に対して、模擬モード、保守モードおよび停電エリアの指示設定等を行うことにより、連動装置(11)の状態を制御する装置である。
ここで、模擬モードとは、連動装置(11)や地上機器の試験のために、連動装置(11)内部における地上機器の状態データを連動装置(11)の制御に従い動作(シミュレーション)したように、連動装置(11)自身が編集を行うモードである。
【0011】
保守モードとは、地上機器の保守時に発生する異常(例えば、信号機交換での電球の断芯)による警報を抑える(これにより保守作業時の混乱を避ける)モードである。
停電エリアとは、駅構内の停電等による警報および進路設定を抑止するエリアのことである。
【0012】
図2は、保守装置(12)の内部構成の具体例である。保守装置(12)は、内部の処理部(100)により連動装置(11)と相互に通信を行う。
【0013】
連動装置(11)が制御する各地上機器のリスト情報は、地上機器リスト情報テーブル(104)として保持されており、地上機器リスト情報テーブル(104)には、各地上機器名と、各地上機器間の連動関係に基づく紐付け情報(リンク情報)とが格納されている。この地上機器リスト情報テーブル(104)は、データベースとして保安装置内にあってもよいし、保安装置の外部にあってもよい。
【0014】
入力手段(105)は、GUI(107)を介して、処理部(100)に対して機器選択、範囲指定等を行う。具体的には、例えば、マウスで代表されるポインティングデバイスを用いればよい。
【0015】
表示手段(106)は、GUI(107)を介して地上機器のリストの表示や地上機器を含む路線図の表示などを行い、処理部(100)からの指令を受けて地上機器の選択、操作範囲の指定等の状態表示も行う。具体的手段としては、例えば、ディスプレイで代表される表示器を用いればよい。
【0016】
処理部(100)は、通信手段(101)、連動機器抽出手段(102)および重複機器抽出手段(103)を有する。
通信手段(101)は、連動装置(11)に対して地上機器の選択データや通信状態などのデータ授受を行う。例えば、Ethernet(登録商標)を用いればよい。
【0017】
連動機器抽出手段(102)は、入力手段(105)で選択した地上機器をキーにし、地上機器リスト情報テーブル(104)を参照して、地上機器リスト情報テーブル(104)が保持している紐付け情報(リンク情報)に基づいて連動する地上機器を抽出する。
重複機器抽出手段(103)は、連動機器抽出手段(102)で抽出した紐付けされた地上機器と入力手段(105)で指定した範囲内の地上機器とから重複した地上機器を抽出する。
【0018】
図3は、地上機器リスト情報テーブル(104)に基づく地上機器のリスト情報の具体例である。GUIを介して、カーソル(21)によりこの地上機器のリストからテスト対象とする地上機器を選択する(図では、転てつ機11イを選択)。
図3に示す地上機器のリストの内で、1Rおよび2Rは信号機、11イおよび11ロは転てつ機、11イT、11ロT、1RATおよび2RBTは軌道回路、をそれぞれ示している。これまでは、オペレーターが路線図から地上機器の紐付け(リンク)を判断し、地上機器のリストから地上機器を1つ1つ選択していたことに替えて、テーブルとして格納・保持した地上機器のリスト情報とGUIを活用することにより、簡便かつスピーディに操作を行うことが可能になる。
【0019】
図4は、GUIを用いることにより表示する全体画面の例である。例えば、信号機は(31)、転てつ機は(32)、軌道回路は(33)の記号で示す。全体画面には、路線図が示されており、地上機器の信号機1Rおよび2R、転てつ機11イおよび11ロ、軌道回路11イT、11ロT、1RATおよび2RBTを併せて表示する。これにより、路線図上の地上機器の選択が簡便に行える。
【0020】
図5は、信号機1RをGUIを介してカーソル(41)で選択した例である。地上機器の1つを選択すると、保守装置(12)は、選択した地上機器に紐付けられた(リンクした)地上機器を連動機器抽出手段(102)により抽出し、この紐付けられた地上機器を選択した地上機器と共にGUIを介して画面上に強調するなどして表示する。
【0021】
強調表示の方法としては、異なる色、異なる線種、異なる線の太さで表示したり、アニメーション表示をさせたり、文字を伴う場合はそのフォントなどを変更させればよい。また、この強調表示に替えて、その対象外の地上機器の表示を薄くまたは暗く表示するなどして、対象となる地上機器と明暗表示で区別する表示態様を採ることもできる。
【0022】
図5の例では、信号機1Rの選択により、この信号機1Rと連動する路線図上の地上機器として、転てつ機11イおよび11ロ、軌道回路11イT、11ロT、1RATおよび2RBTを強調表示(この場合は、異なる色と太さで)させている。
【0023】
また、模擬モードまたは保守モードの対象とする範囲を指定する場合や停電エリアの設定のための範囲を指定する場合にも、GUIを介して操作することができる。
図6は、
図5で強調表示させた信号機1Rとそれに紐付けられた地上機器に対して、模擬モードでシミュレーション等のテストのために、GUIを介してテスト範囲を指定する例である。テスト範囲の指定は、入力手段(105)により、表示手段(106)に表示された路線図上で行う。
【0024】
指定範囲(51)の指示方法としては、図のように長方形状で指定する場合には、入力手段(105)を用いて、例えば左上の点と右下の点の2点を指示することにより、所要の範囲を取り囲むようにすればよい。この操作により、指定範囲内にある地上機器および先の信号機1Rとそれに紐付けられた地上機器から、重複機器抽出手段(103)により重複する地上機器が抽出され、
図6のように強調表示(この場合は、異なる色と太さで)させている。勿論、強調表示に替えて先に示したように明暗表示させてもよい。
【0025】
また、円を指定領域(図示しない)にする場合は、その中心点と半径の他端の少なくとも2点を指示すればよい。その他、2点を指示して線分を出力し、その線分上にある軌道回路を指定するなど、対象とする路線図上の地上機器の配置や指定領域の範囲などに応じて種々の範囲指定パターンから適当なパターンを採用するようにしてもよい。
【0026】
そしてまた、地上機器によっては、それが広範な他の地上機器に紐付けられていることもあるため、上述の範囲指定の方法を用いて、逆に広範な領域を除外させる範囲として指定するようにしてもよい。
保守装置(12)は、テストとして用いたい地上機器を表示させ、実際に選択した地上機器に対して連動装置によるテストを行うところ、以上のような選択および表示の態様を採用することにより、簡便で誤りを回避させる優れた操作性を提供することができる。
【0027】
図7は、地上機器のリストと各地上機器間の紐付けデータの例である。矢印(61)で示す地上機器同士が紐付けられたデータである。紐付け方法は、軌道回路上でつながっている経路に基づいて行う。
例えば、
図7に示すように、信号機1Rに関しては、転てつ機11イおよび11ロ、軌道回路11イT、11ロT、1RATおよび2RBTが紐付けられ、また、信号機2Rに関しては、転てつ機11ロ、軌道回路11ロTおよび2RBTが紐付けられることになる。
【0028】
図8は、GUIを介して地上機器を選択しシミュレーション等のテストをする場合の処理フロー図である。
まず、ステップ(71)で、GUIを介してシミュレーション等のテスト対象とする地上機器を選択する。選択方法は、入力手段(105)を用いて、表示手段(106)上の少なくとも1つの地上機器を選択すればよい。
【0029】
次に、ステップ(72)で、選択した地上機器について、連動機器抽出手段(102)により、保安装置(12)が保持している地上機器リスト情報テーブル(104)と照合して、選択した地上機器に紐付けられた地上機器を紐付けデータ(
図7)に基づいて抽出する。
ステップ(73)で、ステップ(72)で抽出した地上機器を、GUIを介して表示手段(106)の画面上に選択した地上機器と共に表示する。
【0030】
ステップ(74)で、必要とする範囲を入力手段(105)を用いて指定すると、重複機器抽出手段(103)により、選択した地上機器およびそれに紐付けられた地上機器の内、指定した範囲内に存在する地上機器が抽出される。
ステップ(75)で、抽出した地上機器を連動装置(11)へ通知する。
【0031】
最後に、ステップ(76)で、通知した地上機器についてシミュレーション等のテストを行う。ここで、シミュレーションのテスト実行により、連動装置の制御に異常が発覚した場合には、異常となった地上機器を強調表示等により他の機器等と区別するような表示態様とすることができる。
【0032】
なお、ステップ(73)の時点で抽出した地上機器の表示を画面上で確認し、その時点でもし紐付けデータとして誤りを発見した場合には、その誤りである本来紐付けられるべきでない地上機器を入力手段(105)などで選択し、地上機器リスト情報テーブル(104)へフィードバックさせて適宜に修正(削除、変更)してもよい。
【0033】
以上のように、実施例1では、連動装置に係る地上機器を、GUIを活用して、従来のような手間がかからず、簡便でかつ誤りを回避して操作性良く選択できると共に、選択した地上機器に連動する地上機器やテスト実行により異常が認められた地上機器を他と区別して表示できることから、保守作業の効率を高めることが可能となる。
【実施例2】
【0034】
本発明の実施例2では、地上機器を、GUIを介して軌道回路から選択するだけでなく、地上機器のリスト情報からも選択可能にする例を説明する。
図9は、地上機器のリストから、GUIを介してカーソル(81)で所要の地上機器を選択した例である。
【0035】
地上機器リスト情報テーブル(104)に格納する地上機器のリスト情報から、GUIを介してカーソル(81)で所要の地上機器を選択すると、保守装置(12)は、選択した地上機器およびそれと紐付けられた地上機器を、画面上に強調表示等により区別して表示する。
【0036】
図9では、信号機1Rを選択することにより、画面上の路線図において、信号機1Rを含め、それに紐付けられた、転てつ機11イおよび11ロ、軌道回路11イT、11ロT、1RATおよび2RBTを強調表示(この場合は、異なる色および太さで)している。
【0037】
図10は、シミュレーション等のテストのために、地上機器のリストから地上機器を選択する場合の処理フロー図である。
まず、ステップ(91)で、地上機器のリストからシミュレーション等のテストをする地上機器を選択する。
【0038】
ステップ(92)で、選択した地上機器について、連動機器抽出手段(102)により、地上機器リスト情報テーブル(104)と照合して、選択した地上機器に紐付けられた地上機器を紐付けデータ(
図7)に基づいて抽出する。
ステップ(93)で、ステップ(92)で抽出した地上機器を、GUIを介して表示手段(106)の画面上に選択した地上機器と共に表示する。
【0039】
ステップ(94)で、必要とする範囲を入力手段(105)を用いて指定すると、重複機器抽出手段(103)により、選択した地上機器およびそれに紐付けられた地上機器の内、指定した範囲内に存在する地上機器が抽出される。
ステップ(95)で、抽出した地上機器を連動装置(11)へ通知する。
【0040】
最後に、ステップ(96)で、通知した地上機器についてシミュレーション等のテストを行う。ここで、シミュレーションのテスト実行により、連動装置の制御に異常が発覚した場合には、異常となった地上機器を強調表示等により他の機器等と区別するような表示態様とすることができる。
【0041】
以上のように、実施例2では、軌道回路上に配置された地上機器の構成のみならず地上機器のリストからもその選択を可能にすることから、入り組んだ配置構成に対しても、簡便でかつ誤りを回避して操作性の良い保守作業を進めることが可能になる。