特許第6047511号(P6047511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047511
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】信号判別装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20161212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20161212BHJP
   H03M 1/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03G21/00 370
   G03G15/00 550
   H03M1/18
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-39094(P2014-39094)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-161931(P2015-161931A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】小林 公彦
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−195769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B41J 29/38
H03M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の異なる複数の信号が入力されるポートと、
前記ポートに入力される前記信号をなす電圧をアナログ−ディジタル変換するA/D変換部と、
前記信号をなす電圧が前記A/D変換部によって変換された値が、予め定められた複数の範囲のいずれに属するかに応じて、当該信号の示す内容を判別する判別部と、
動作機構の動作状態が異なる複数の動作モードを電子機器に設定するモード設定部と、
前記モード設定部により前記各動作モードが設定されたそれぞれの状態のときに、前記ポートに入力される信号をなす電圧が前記A/D変換部により変換された各値の差分を算出する差分算出部と、
前記差分算出部によって算出された差分に応じて、前記判別部が前記判別に用いる前記各範囲を定義する閾値を変更する閾値変更部とを備え、
前記閾値変更部は前記差分算出部によって算出された複数の差分の平均値又は少なくとも一方の差分を、前記各範囲を定義する前記閾値に加算して前記閾値の変更を行う信号判別装置。
【請求項2】
前記モード設定部は、前記動作モードとして、前記動作機構をスリープ状態とするスリープモードと、前記動作機構を即座に動作可能な状態で待機させるレディモードと、前記動作機構が動作中である動作中モードとを有し、
前記差分算出部は、前記レディモード時又は前記動作中モード時に入力される前記信号を示す電圧が前記A/D変換部により変換された値に対する、前記スリープモード時に入力される前記信号を示す電圧が前記A/D変換部により変換された値の差分の少なくとも一方を算出し、
前記閾値変更部は、前記差分算出部によって算出された少なくとも一方の差分を、前記各範囲を定義する閾値に加算する請求項1に記載の信号判別装置。
【請求項3】
前記閾値変更部は、前記差分算出部によって算出された差分が、予め定められた値を超える場合には、前記閾値の変更を行わない請求項1又は請求項2に記載の信号判別装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号判別装置と、
記録媒体に画像形成を行う画像形成部と、
前記記録媒体が収容される給紙カセットとを備え、
前記ポートには、前記給紙カセットに収容される記録媒体サイズを示す記録紙サイズ信号が前記信号として入力される画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号判別装置及び画像形成装置に関し、特に、CPU等のポートに入力される信号を判別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、画像形成装置等には、複数の信号線がまとめてCPUの1つのADポートに接続され、当該CPUが、当該信号の示す電圧値をA/D変換して得たディジタル値に基づいて、信号の内容を判別する信号判別装置を備えたものがある。このような電子機器として、下記特許文献1には、ADポートから入力された制御信号としての電圧を、A/D変換器により高精度かつ高速でのアナログ−ディジタル変換を可能にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−335953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにCPUのADポートに対して信号線をまとめて接続して信号を入力する場合、各信号は、それらを示す電圧が異なる値に定められているが、ADポートに入力される電圧の値は、負荷の変動等の様々な要因により、電圧源からの距離に応じて電圧降下を生じることがある。このため、上記A/D変換器により変換されたディジタル値に基づいて各信号を判別するために用いる、各信号毎に定められたディジタル値の範囲を、上記電圧変動を考慮して拡げておく必要がある。しかしながら、CPUにより判別可能とする信号数を多く確保するためには、一定のダイナミックレンジ内に信号判別用の上記範囲を多く設定する必要があり、この場合には、当該範囲の幅を狭くせざるを得ない。このため、上記要因による入力電圧の変動を吸収できるほどに、信号判別に用いる上記範囲の幅を拡げることができない。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ADポートに入力される信号の電圧値が変動する場合であっても、CPUで判別可能な信号の数を減少させることなく、精度のよい信号判別を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る信号判別装置は、電圧の異なる複数の信号が入力されるポートと、前記ポートに入力される前記信号をなす電圧をアナログ−ディジタル変換するA/D変換部と、前記信号をなす電圧が前記A/D変換部によって変換された値が、予め定められた複数の範囲のいずれに属するかに応じて、当該信号の示す内容を判別する判別部と、動作機構の動作状態が異なる複数の動作モードを電子機器に設定するモード設定部と、前記モード設定部により前記各動作モードが設定されたそれぞれの状態のときに、前記ポートに入力される信号をなす電圧が前記A/D変換部により変換された各値の差分を算出する差分算出部と、前記差分算出部によって算出された差分に応じて、前記判別部が前記判別に用いる前記各範囲を定義する閾値を変更する閾値変更部とを備え、前記閾値変更部は前記差分算出部によって算出された複数の差分の平均値又は少なくとも一方の差分を、前記各範囲を定義する前記閾値に加算して前記閾値の変更を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ADポートに入力される信号の電圧値が変動する場合であっても、CPUで判別可能な信号の数を減少させることなく、精度のよい信号判別が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る信号判別装置を備えた画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
図2】信号判別装置及びその周辺構成を示すブロック図である。
図3】A/D変換部によるA/D変換処理を概念的に示す図である。
図4】信号判別装置による閾値変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る信号判別装置及びこれを備えた画像形成装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号判別装置を備えた画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
【0010】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、およびファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置1は、装置本体11に、操作部47、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿給送部6、及び原稿読取部5等を備えて構成されている。
【0011】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者から画像形成動作実行指示や原稿読取動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。
【0012】
画像形成装置1が原稿読取動作を行う場合、原稿給送部6により給送されてくる原稿、又は原稿載置ガラス161に載置された原稿の画像を原稿読取部5が光学的に読み取り、画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは内蔵HDD又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0013】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、上記原稿読取動作により生成された画像データ、又はネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。カラー印刷を行う場合、画像形成部12のマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y、及びブラック用の画像形成ユニット12Bkは、それぞれに、上記画像データを構成するそれぞれの色成分からなる画像に基づいて、帯電、露光、及び現像の工程により感光体ドラム121上にトナー像を形成し、当該トナー像を一次転写ローラー126により中間転写ベルト125上に転写させる。
【0014】
中間転写ベルト125上に転写される上記各色のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成された当該カラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた記録紙Pに転写させる。この後、定着部13が、記録紙P上のトナー像を、熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0015】
給紙部14は、複数の給紙カセット141,142,143を備える。制御部100(図2)は、操作者による指示で指定されたサイズの記録紙が収容された給紙カセットのピックアップローラー145を回転駆動させて、各給紙カセットに収容されている記録紙Pを上記ニップ部Nに向けて搬送させる。給紙カセット141,142,143には、収容する記録紙Pのサイズを通知する信号を制御部100に送信するための記録紙サイズ切換
スイッチを備える。
【0016】
なお、画像形成装置1において、両面印刷を行う場合は、画像形成部12より一方の面に画像が形成された記録紙Pを、排出ローラー対159にニップされた状態とした後、当該記録紙Pを排出ローラー対159によりスイッチバックさせて反転搬送路195に送り、搬送ローラー対19により、上記ニップ部N及び定着部13に対して記録紙Pの搬送方向上流域に再度搬送する。これにより、画像形成部12により当該記録紙の他方の面に画像が形成される。
【0017】
次に、画像形成装置1が備える信号判別装置を説明する。図2は信号判別装置及びその周辺構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に、画像形成装置1における、信号判別装置10と、給紙カセット141と、負荷30と、電圧源50とを示す。
【0019】
信号判別装置10は、本実施形態では、画像形成装置1の装置本体11に装備されている給紙カセット141,142,143のそれぞれから送られてくる記録紙サイズ信号に基づいて、各給紙カセット141,142,143に収容されている記録紙Pのサイズを検出する。なお、図2には、給紙カセット141のみを図示し、以下には、給紙カセット141を例にして説明する。
【0020】
信号判別装置10は、制御部100と、コネクターC1とを備える。信号判別装置10は、コネクターC1により、給紙カセット141側のコネクターC2と接続している。
【0021】
給紙カセット141は、コネクターC2と、記録紙サイズ切換スイッチSWと、抵抗R1,R2,R3を備えている。
【0022】
コネクターC2は、制御部100側のコネクターC1に接続して、給紙カセット141内で記録紙サイズ切換スイッチSWに接続している信号線L2を、信号判別装置10内でコネクターC1からADポート110までを繋ぐ信号線L1に導通させる。
【0023】
記録紙サイズ切換スイッチSWは、給紙カセット141に収容される記録紙Pのサイズに応じて異なる信号を信号判別装置10に対して出力するために設けられている。本実施形態では、記録紙サイズ切換スイッチSWは、3つのスイッチSW1,SW2,SW3を備えている。スイッチSW1はA4サイズの記録紙Pに対応付けられ、スイッチSW2はA3サイズの記録紙Pに対応付けられ、スイッチSW3はB5サイズの記録紙Pに対応付けられている。
【0024】
記録紙サイズ切換スイッチSWは、抵抗R1,R2,R3を介して、電圧源50に接続されている。スイッチSW1には抵抗R1が接続され、スイッチSW2には抵抗R2が接続され、スイッチSW3には抵抗R3が接続されている。抵抗R1,R2,R3は、それぞれ異なる抵抗値を有する。
【0025】
本実施形態では、電圧源50の電圧5(V)を、スイッチSW1〜SW3をオンとすることで接続される抵抗R1〜R3のいずれかと、信号判別装置10内で接地されて設けられている抵抗R4とにより分圧することにより、スイッチSW1オン時の信号の電圧は100(mV)、スイッチSW2オン時の信号の電圧は200(mV)、スイッチSW3オン時の信号の電圧は300(mV)となるように設定されている。
【0026】
これにより、給紙カセット141のスイッチSW1は、オン状態のときに、A4サイズを示す100(mV)電圧の記録紙サイズ信号を出力し、スイッチSW2は、オン状態のときに、A3サイズを示す200(mV)電圧の記録紙サイズ信号を出力し、スイッチSW3は、オン状態のときに、B5サイズを示す300(mV)電圧の記録紙サイズ信号を出力する。すなわち、記録紙サイズ切換スイッチSWは、操作者による操作に応じたスイッチSW1〜SW3のオン/オフ切換により、A4サイズ、A3サイズ、又はB5サイズの記録紙サイズの別に応じて異なる電圧値からなる記録紙サイズ信号を信号判別装置10に出力する。
【0027】
また、画像形成装置1には、画像形成部12、原稿読取部5、及び原稿給送部6等の負荷30と、当該負荷30と接続して負荷30に電力を供給する電圧源50とが備えられている。電圧源50と負荷30とを繋ぐ接続線L3には、給紙カセット141の記録紙サイズ切換スイッチSWに繋がる接続線L4が接続されている。
【0028】
信号判別装置10は、CPU、ROM、及びRAM等を備える制御部100と、コネクターC1とを備える。
【0029】
制御部100は、ADポート110を備えている。ADポート110は、制御部100に内蔵されるA/D変換器101に信号を入力するための入力ポートである。A/D変換器(A/D変換部)101は、ADポート110に入力された記録紙サイズ信号を示す電圧をディジタル値に変換し、この変換後のディジタル値を、後述する判別部102に出力する。以下、当該ディジタル値をAD値という。ADポート110は、特許請求の範囲におけるポートの一例である。
【0030】
また、制御部100は、判別部102と、モード設定部103と、差分算出部104と、閾値変更部105とを備える。
【0031】
判別部102は、A/D変換器101によって変換されたAD値が、信号判別用に予め定められた複数の範囲(後述)のいずれに属するかに応じて、上記記録紙サイズ信号がA4サイズ、A3サイズ、又はB5サイズのいずれの記録紙サイズを示す信号であるかを判別する。
【0032】
モード設定部103は、画像形成装置1において動作可能な動作機構が異なる複数の動作モードを当該画像形成装置1に設定する。モード設定部103は、当該動作モードとして、画像形成装置1の負荷30としての画像形成部12,原稿読取部5、原稿給送部6等の動作機構をスリープ状態とするスリープモードと、当該各動作機構を即座に動作可能な状態で待機させるレディモードと、当該各動作機構を動作させている動作中モードとを有する。
【0033】
差分算出部104は、モード設定部103により各動作モードが設定されたそれぞれの状態のときに、ADポート110に入力される記録紙サイズ信号を示す電圧がA/D変換器101により変換されてなる各AD値の差分を算出する。例えば、差分算出部104は、(1)レディモード時にA/D変換部101により変換されたAD値に対する、スリープモード時にA/D変換器101により変換されたAD値の差分と、(2)動作中モード時にA/D変換器101により変換されたAD値に対する、スリープモード時にA/D変換器101により変換されたAD値の差分と、を算出する。
【0034】
閾値変更部105は、差分算出部104によって算出された差分に応じて、判別部102が上記信号判別に用いる上記各範囲を定義する閾値を変更する。閾値変更部105による当該閾値変更処理の詳細は後述する。
【0035】
制御部100は、接続線L5により、負荷30及び電圧源50間の接続線L3と接続されている。この接続線L5により、制御部100には、A/D変換器101のA/D変換に用いられるリファレンス電圧が入力される。
【0036】
ここで、図3を用いて、A/D変換器101によるA/D変換処理を説明する。図3は、A/D変換器101によるA/D変換処理を概念的に示す図である。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では、A/D変換器101が、リファレンス電圧+5(V)で(以下、単に5(V)とする)、10ビットでのA/D変換を行う場合を例にして説明する。リファレンス電圧5(V)で、すなわち、電圧フルレンジが5(V)の場合、1ビットの分解能は5/1024≒約4.48(mV)となる。従って、A/D変換器101は、A/D変換のための閾値として、0(mV)から4.48(mV)毎に1024個の閾値を有する。
【0038】
ここで、上述したように、A4サイズの記録紙サイズ信号は100(mV)電圧、A3サイズ
の記録紙サイズ信号は200(mV)電圧、B5サイズの記録紙サイズ信号は300(mV)電圧である。このため、A/D変換器101は、A4サイズの記録紙サイズ信号がADポート110に入力されると、当該信号を示す100(mV)電圧を、98.56(mV)〜103.04(mV)のレンジに入るとして、AD値22に変換する。同様に、A/D変換器101は、A3サイズの記録紙サイズ信号の200(mV)電圧を、197.12(mV)〜201.6(mV)のレンジに入るとして、AD値44に変換する。また、A/D変換器101は、B5サイズの記録紙サイズ信号の300(mV)電圧を、95.68(mV)〜300.16(mV)のレンジに入るとして、AD値66に変換する。
【0039】
続いて、判別部102による信号判別処理を説明する。上記の例の場合、判別部102は、A4サイズ=AD値17〜27の範囲(この場合、AD値17が下限の閾値、AD値27が上限の閾値)、A3サイズ=AD値39〜49の範囲(この場合、AD値39が下限の閾値、AD値49が上限の閾値)、B5サイズ=AD値61〜71の範囲(この場合、AD値61が下限の閾値、AD値71が上限の閾値)、…として、記録紙サイズとAD値の対応関係を記憶している。判別部102は、A/D変換器101により変換されたAD値が、当該記憶している各範囲のいずれに属するかに応じて、記録紙サイズ信号が、A4サイズ、A3サイズ、又はB5サイズのいずれを示す信号であるかを判別する。
【0040】
給紙カセット141は、接続線L4により、接点cn1において、電圧源50と負荷30とを繋ぐ接続線L3と接続されている。また、信号判別装置10は、接続線L5により、接点cn2において、接続線L3と接続されている。
【0041】
図2のように画像形成部12等の大きな負荷30がある場合、パターンやハーネスなどの導体抵抗と負荷(電流)の積により電圧源50からの電源電圧が降下する。電圧降下は導体抵抗値に比例するため、負荷30に近い方が電圧降下は大きくなる。図2に示す構成の場合、制御部100に接続線L5により入力されるA/D変換用のリファレンス電圧(AVREF:ADポートリファレンス電圧)の電源の方が、給紙カセット141に接続線L4により入力される電圧よりも電圧降下が大きい。そして、負荷(電流)の大きさが変われば降下する電圧も変わるため、当該リファレンス電圧を用いてA/D変換器101によりA/D変換されたAD値は、当該負荷変動により変動することになる。このため、判別部102が、上記AD値が上記各範囲のいずれに属するかを判断しても、当該判断結果によっては、記録紙サイズ信号がどの記録紙サイズを示すかを正確に判別できない事態が生じ得る。
【0042】
このため、差分算出部104によって算出された差分、すなわち、画像形成装置1の各動作モード時に得られたAD値の差分に応じて、判別部102が上記信号判別に用いる各範囲を定義する閾値を変更することで、判別部102による正確な記録紙サイズの判別を担保する。以下、図4のフローチャートを用いて当該閾値変更処理を説明する。
【0043】
図4は、信号判別装置10による閾値変更処理を示すフローチャートである。なお、給紙カセット141について説明する。なお、画像形成装置1の操作者は、記録紙サイズ切換スイッチSWのスイッチSW1をオンの状態にしているものとする。
【0044】
閾値変更処理は、画像形成装置1の主電源が投入されて、画像形成装置1が起動したときに開始される。モード設定部103は、画像形成装置1の起動後に(S1)、画像形成装置1の動作モードをスリープモードに設定する(S2)。
【0045】
当該スリープモード状態で、A/D変換器101は、ADポート110に給紙カセット141から入力される記録紙サイズ信号の電圧をA/D変換する(S3)。
【0046】
続いて、モード設定部103は、画像形成装置1の動作モードをレディモードに設定する(S4)。
【0047】
このレディモード状態で、A/D変換器101は、ADポート110に入力される記録紙サイズ信号の電圧をA/D変換する(S5)。
【0048】
ここで、判別部102は、レディモード状態で得た上記AD値が、スリープモード状態で得た上記AD値から予め定められた範囲以内かを判定する(S6)。ここで、予め定められた範囲とは、それまでオン状態とされていたスイッチSW1〜SW3のいずれかを、別のスイッチに切り換えた場合に変動する電圧に相当する範囲であり、本実施形態では当該電圧をA/D変換器101により変換したAD値により示す。S6の処理は、スイッチSW1〜SW3のいずれかを別のスイッチに切り換えたか否かを判断するために行うため、当該スイッチ切換時に変動し得る電圧100(mA)に相当するAD値22〜23を若干下回るAD値20を用い、AD値±20の範囲を上記予め定められた範囲とする。
【0049】
ここで、判別部102が、レディモード状態で得られた上記AD値が、スリープモード状態で得られた上記AD値から上記予め定められた範囲以内にないと判断した場合は(S6でNO)、S2においてスリープモード状態でAD値を得た時点から、S5においてレディモード状態でAD値を得た時点までの間に、スイッチSW1〜SW3が別のスイッチに切り換えられたとして、当該閾値変更処理を中断する(S13)。本実施形態の場合、スイッチSW1が別のスイッチSW2又はスイッチSW3に切り換えられた状態である。
【0050】
また、S6において、判別部102が、レディモード状態で得られた上記AD値が、スリープモード状態で得られた上記AD値から上記予め定められた範囲内にあると判断した場合は(S6でYES)、モード設定部103は、画像形成装置1の動作モードを動作中モードに設定する(S7)。例えば、モード設定部103は、画像形成部12等の画像形成動作を行う各動作機構に、画像形成時と同様の動作を行わせる。
【0051】
この動作中モード状態で、A/D変換器101は、ADポート110に入力される記録紙サイズ信号の電圧をA/D変換する(S8)。
【0052】
そして、判別部102は、動作中モード状態で得た上記AD値が、スリープモード状態で得た上記AD値から上記予め定められた範囲以内にあるかを判定する(S9)。
【0053】
ここで、判別部102により、動作中モード状態で得られた上記AD値が、スリープモード状態で得られた上記AD値から上記予め定められた範囲内にないと判断された場合は(S9でNO)、S2においてスリープモード状態でAD値を得た時点から、S8において動作中モード状態でAD値を得た時点までのいずれかの時点で、スイッチSW1〜SW3が別のスイッチに切り換えられたとして、当該閾値値変更処理を中断する(S13)。
【0054】
また、S9において、判別部102が、動作中モード状態で得られた上記AD値が、スリープモード状態で得られた上記AD値から上記予め定められた範囲内にあると判断した場合は(S9でYES)、差分算出部104が、スリープモード状態、レディモード状態、動作中モード状態のそれぞれで得られた上記AD値に差異があるかを判断する(S10)。
【0055】
差分算出部104が、スリープモード状態、レディモード状態、動作中モード状態のそれぞれで得られた上記AD値に差異がないと判断した場合は(S10でNO)、差分算出部104による差分算出、及び閾値変更部105による閾値変更を行うことなく、閾値変更処理を中断する(S14)。
【0056】
一方、差分算出部104が、スリープモード状態、レディモード状態、動作中モード状態のそれそれで得た上記AD値に差異があると判断した場合、すなわち、スリープモード状態、レディモード状態、動作中モード状態のそれそれで得た上記AD値のいずれか1つでも他に対して差異を生じている場合は(S10でYES)、差分算出部104は、(1)レディモード状態で得た上記AD値に対するスリープモード状態で得た上記AD値の差分と、(2)動作中モード状態で得た上記AD値に対するスリープモード状態で得た上記AD値の差分と、を算出する(S11)。
【0057】
閾値変更部105は、上記差分算出部104により算出された上記(1)(2)の差分の平均値を、判別部102が信号判別用に記録紙サイズとAD値の対応関係として記憶している、A4サイズ=AD値17〜27の範囲、A3サイズ=AD値39〜49の範囲、及びB5サイズ=AD値61〜71の範囲を定義しているそれぞれの上限及び下限の閾値に加算して(S12)、当該各記録紙サイズのAD値範囲を定義する閾値を変更する。なお、上記差分算出部104により算出された上記(1)(2)の差分の平均値がマイナスの値になる場合は、閾値変更部105は、当該マイナスの値を加算する。
【0058】
例えば、差分算出部104により算出された上記(1)(2)の差分の平均値がAD値+10である場合、閾値変更部105は、上記各範囲を、A4サイズ=AD値27〜37の範囲、A3サイズ=AD値49〜59の範囲、及びB5サイズ=AD値71〜81の範囲に変更する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、差分算出部104が、モード設定部103により設定される上記各動作モード状態のときに、ADポート110に入力される記録紙サイズ信号としての電圧がA/D変換器101により変換されたAD値の差分を算出し、閾値変更部105が、当該差分に応じて、判別部102が信号判別に用いる上記各範囲を定義する閾値を変更するので、上述した電圧降下により、A/D変換器101により変換されるAD値が変動する場合であっても、当該電圧降下に伴うAD値の変動に拘わらず、記録紙サイズが正確に判別できる適切な上記閾値が再設定される。
【0060】
このため、信号判別装置10によれば、1つの記録紙サイズ信号を判別するための上記AD値範囲を、上記電圧降下に伴う電圧変動を考慮した広い範囲に拡げなくても、記録紙サイズを正確に判別できる。これにより、一定のダイナミックレンジ内(上記実施形態の場合、電源電圧5(V)内)に信号判別用の上記範囲を多く設定可能となるため、制御部100により判別可能な信号数を減少させることなく、電圧降下に拘わらずに信号判別を正確に行える状態を確保できる。すなわち、信号判別装置10によれば、ADポート110に入力される各信号の電圧値が変動する場合であっても、制御部100で判別可能な信号の数を減少させることなく、精度のよい信号判別が可能である。
【0061】
また、差分算出部104は、最も負荷が小さいスリープモード時に得られる上記AD値を基準にして、レディモード状態で得られるAD値の差分、及び動作中モード状態で得られるAD値の差分を元に、信号判別用の上記範囲を定義する閾値の変更を行うので、上記電圧降下による電圧変動を要因とするAD値の変化量を的確に検出して、当該閾値の変更に反映させることができる。
【0062】
また、閾値変更部105は、差分算出部104によって算出された上記差分が、上記予め定められた範囲に収まらない場合には(S6でNO,S9でNO)、信号判別用の上記範囲を定義する閾値の変更を行わないので(S13)、スイッチSW1〜SW3が別のスイッチに切り換えられたことを要因として大幅にAD値に差異が生じている場合には、これを的確に検出して、上記閾値を変更しない。このため、信号判別装置10は、より正確に信号判別を行って、記録紙サイズを的確に判別可能になる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、図4のフローチャートに示したS12では、閾値変更部105は、上記差分算出部104により算出された上記(1)(2)の差分の平均値を、信号判別用の上記範囲を定義する閾値に加算するものとしているが(S12)、これに限定されず、閾値変更部105は、上記(1)(2)のいずれか一方のみの差分、上記(1)(2)の大きい方の差分、又は、上記(1)(2)の小さい方の差分を、上記閾値に加算するものとしてもよい。
【0064】
また、画像形成装置1がレディモードで動作中に記録紙サイズを検出する場合には上記(1)の差分を閾値に加算して動作(記録紙サイズを検出)させ、画像形成装置1が動作中モードで動作中に記録紙サイズを検出する場合には上記(2)の差分を閾値に加算して動作(記録紙サイズを検出)させるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、判別部102による信号判別処理の対象として、制御部100のADポート110に入力される記録紙サイズ信号を例にして説明しているが、本発明は、これに限定されず、ADポート110に入力される信号は、他の信号、例えば、給紙カセットや後処理装置等のオプション装置が画像形成装置1に接続されているか否かを示す信号や、画像形成装置1の各動作機構の動作状態を示す信号等の他の信号であっても構わない。
【0066】
また、上記に図1乃至図4を用いて示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の構成及び処理はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置
10 信号判別装置
50 電圧源
100 制御部
101 A/D変換器
102 判別部
103 モード設定部
104 差分算出部
105 閾値変更部
110 ADポート
141〜143 給紙カセット
SW 記録紙サイズ切換スイッチ
SW1,SW2,SW3 スイッチ
図1
図2
図3
図4