特許第6047516号(P6047516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047516
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】凍結破損防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/38 20060101AFI20161212BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20161212BHJP
   F16K 17/06 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   F16K17/38 Z
   F16K17/04 A
   !F16K17/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-62433(P2014-62433)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183806(P2015-183806A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 聡
(72)【発明者】
【氏名】大森 政幸
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−88658(JP,A)
【文献】 実開昭55−85167(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/38
F16K 17/04
F16K 17/06
E03B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過度な圧力上昇を防止すべき流路に設けられ、前記流路の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して圧力を低下させる凍結破損防止装置であって、
前記流路と連通するように設けられる筒状部と、
前記筒状部の内面から外面にかけて貫通する貫通孔と、
前記筒状部内において前記筒状部に対して摺動自在に設けられ且つ前記貫通孔からの放水と止水とを切り替える栓体部と、
前記栓体部に対して前記筒状部内の水に対抗する方向に押圧力を付与する弾性体と、
前記栓体部とともに移動し且つ先端側が前記貫通孔に挿入されている延出部と、
を備え
前記貫通孔は、前記筒状部の長手方向に延びた長孔であり、
前記弾性体はコイルバネであり、当該コイルバネは前記筒状部の外側に配置され、当該コイルバネの一方の端部が前記延出部に当接することによって前記栓体部に対して押圧力が付与される凍結破損防止装置。
【請求項2】
過度な圧力上昇を防止すべき流路に設けられ、前記流路の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して圧力を低下させる凍結破損防止装置であって、
前記流路と連通するように設けられる筒状部と、
前記筒状部の内面から外面にかけて貫通する貫通孔と、
前記筒状部内において前記筒状部に対して摺動自在に設けられ且つ前記貫通孔からの放水と止水とを切り替える栓体部と、
前記栓体部に対して前記筒状部内の水に対抗する方向に押圧力を付与する弾性体と、
前記栓体部とともに移動し且つ先端側が前記貫通孔に挿入されている延出部と、
を備え
前記貫通孔は、前記筒状部の長手方向に延びた長孔であり、
前記延出部は、前記弾性体によって前記貫通孔の内周面の方向に押し当てられる第一の面と、前記内周面から遠ざかる方向に前記第一の面から傾斜した第二の面とを有する凍結破損防止装置。
【請求項3】
前記貫通孔の幅は0.5〜6mmである、請求項1又は2に記載の凍結破損防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の凍結による過度な圧力上昇を防止すべき配管に設けられ、配管内の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して配管内の圧力を低下させる凍結破損防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地などにあっては、配管内の水が凍結して体積膨張することによって配管が破損するという問題がある。この問題を解決するための装置として、例えば特許文献1に記載の水抜き栓が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4919018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の水抜き栓では放出された水が放水用の孔付近に付着し、これが凍結することによって当該孔が塞がってしまうことがある。この場合、配管内の圧力が上昇して再度、水を放出すべきときに当該孔から水を適切に放出することができず、配管内の圧力が過度の上昇するおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水の凍結による配管内の過度な圧力上昇を十分確実に防止できる凍結破損防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一の態様に係る凍結破損防止装置を提供する。第一の態様に係る装置は、過度な圧力上昇を防止すべき流路に設けられ、流路の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して圧力を低下させるためのものであり、流路と連通するように設けられる筒状部と、筒状部の内面から外面にかけて貫通する貫通孔と、筒状部内において筒状部に対して摺動自在に設けられ且つ貫通孔からの放水と止水とを切り替える栓体部と、栓体部に対して筒状部内の水に対抗する方向に押圧力を付与する弾性体と、栓体部とともに移動し且つ先端側が貫通孔に挿入されている延出部とを備える。
【0007】
上記第一の態様に係る装置においては、筒状部内の圧力が所定値未満であるときは筒状部内の流路と貫通孔とは導通しない状態(止水状態)であり、他方、筒状部内の圧力が所定値以上に上昇したときに筒状部内の流路と貫通孔とが導通した状態となり貫通孔から水が放出される。貫通孔内を摺動自在に設けられた栓体部が水圧又は弾性体の押圧力によって移動することによって切り替えられる。
【0008】
上記第一の態様に係る装置は栓体部とともに移動する延出部を備える。すなわち、筒状部内の圧力上昇によって栓体部が移動すると、これに伴って延出部が貫通孔内を移動する。貫通孔から水が放出された後であって弾性体の押圧力によって栓体部が移動して止水状態に移行する際、放出された水が凍結して貫通孔付近に氷が付着していても、これを延出部が掻き落とすことができる。これにより、放水用の貫通孔が閉塞されることを十分に抑制でき、配管内の圧力が上昇して再度、水を放出すべきときにも貫通孔から水を適切に放出することができる。
【0009】
上記第一の態様に係る装置において、貫通孔は筒状部の長手方向に延びた長孔であることが好ましい。かかる構成を採用することで、仮に貫通孔に氷が付着しても貫通孔全体が閉塞されることをより確実に防止できる。
【0010】
上記弾性体はコイルバネであり、当該コイルバネは筒状部材の外側に配置され、当該コイルバネの一方の端部が延出部に当接することによって栓体部に対して押圧力が付与される構成であってもよい。コイルバネを採用することで、上記第一の態様に係る装置のコンパクト化が図れ、また栓体部に付与する押圧力の強さを比較的容易に設定できる。
【0011】
上記延出部は、弾性体によって貫通孔の内周面の方向に押し当てられる第一の面と、貫通孔の内周面から遠ざかる方向に上記第一の面から傾斜した第二の面とを有してもよい。延出部に第二の面(傾斜面)を設けることで、貫通孔内から水又は氷を取り除く機能をより高めることができる。
【0012】
本発明は第二の態様に係る凍結破損防止装置を提供する。第二の態様に係る装置は、過度な圧力上昇を防止すべき流路に設けられ、流路の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して圧力を低下させるためのものであり、流路と連通するように設けられる筒状部と、筒状部の内面から外面にかけて貫通し且つ筒状部の長手方向に延びた長孔である貫通孔と、筒状部内において筒状部に対して摺動自在に設けられ且つ貫通孔からの放水と止水とを切り替える栓体部と、栓体部に対して筒状部内の水に対抗する方向に押圧力を付与する弾性体とを備える。
【0013】
上記第二の態様に係る装置においても、筒状部内の圧力が所定値未満であるときは筒状部内の流路と貫通孔とは導通しない状態(止水状態)であり、他方、筒状部内の圧力が所定値以上に上昇したときに筒状部内の流路と貫通孔とが導通した状態となり貫通孔から水が放出される。貫通孔からの放水と止水は筒状部内を摺動自在に設けられた栓体部が水圧又は弾性体の押圧力によって移動することによって切り替えられる。
【0014】
上記第二の態様に係る装置は放水用の貫通孔が長孔で構成されている。かかる構成を採用することで、仮に貫通孔に氷が付着しても貫通孔全体が閉塞されることをより確実に防止できる。これにより、配管内の圧力が上昇して再度、水を放出すべきときにも貫通孔から水を適切に放出することができる。
【0015】
本発明において、貫通孔の幅は0.5〜3mmとすることができる。貫通孔の幅をこの範囲とすることで、止水状態から放水状態に切り替わった際に貫通孔から水を勢いよく放出することができる。これにより、放出した水が貫通孔付近に付着することを十分に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水の凍結による配管内の過度な圧力上昇を十分確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る凍結破損防止装置を備えた水栓システムを示す斜視図である。
図2図1に示す凍結破損防止装置の内部の構造を示す断面図である。
図3図1に示す凍結破損防止装置を拡大して示す正面図である。
図4図1に示す凍結破損防止装置の分解図である。
図5図1に示す凍結破損防止装置のV−V線断面図である。
図6】(a)〜(d)は栓体部と延在部とを備えるパーツのバリエーションを示す斜視図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る凍結破損防止装置の分解図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る凍結破損防止装置を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。ここでは水の流れる方向に基づいて構成の位置を表記するものとし、例えば上流側の位置する箇所について「上端」及び「上面」などと表記し、下流側の位置する箇所について「下端」及び「下面」などと表記する。
【0019】
<第一実施形態>
図1〜6を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。図1に示す水栓システム50は、流路1と、流路1の開閉を切り替える電磁弁5と、流路1に連通した凍結破損防止装置10Aとを備える。水栓システム50は、図1に示す上端2がジョイント(不図示)を介して蛇口に接続され、下端3が他のジョイント(不図示)を介して例えば灌水用のホースに接続される。蛇口に水栓システム50を接続した後に蛇口の栓を開けた状態とし、電磁弁5の開閉をタイマーで制御することで、タイマーセットした時刻に自動で芝生や植木に水やりをすることができる。仮に、水栓システム50内の流路1の圧力が過度に上昇して蛇口から水栓システム50が外れたり、破損したりしてシール性が不十分になったりすると、水が出っぱなしになるというトラブルを招来する。
【0020】
凍結破損防止装置10A(以下、場合により単に「装置10A」という。)は、流路1の圧力が所定値以上に上昇した際に水を放出して流路1の圧力を低下させるためのものである。水栓システム50の本体部(装置10Aを含む)は、断熱性の観点から主に樹脂材料(例えばポリオキシメチレンPOM(ポリアセタール樹脂))によって構成されている。水栓システム50の使用態様の一つとして金属製の蛇口に装着されることが想定される。金属製の蛇口は外気によって冷えやすい。このため、蛇口内の水は、主に樹脂材料によって構成される水栓システム50内の水よりも先に凍結しやすい。蛇口内の流路が氷で閉塞された状態で蛇口と電磁弁5の間の流路1内の水の凍結が進行すると、電磁弁5よりも上流側の流路1内の圧力が上昇する。流路1において電磁弁5よりも上流側に装置10Aを設けることで、流路1の過度な圧力上昇を防止できる。
【0021】
水栓システム50内の水及び装置10A内の水が金属製の蛇口内の水よりも先に凍結しないように、流路1及びこれに連通する後述の筒状部12内の流路12aの内面をそれぞれ断熱材(例えば発泡材)で構成してもよい。断熱材を使用する場合、水栓システム50の本体部(装置10Aを含む)を主に金属材料で構成してもよい。水栓システム50内の水が先に凍結しないように、水栓システム50を発泡材からなるケースに収容したり、外気が直接あたらないように周囲に空気層を設けるなどの対策を施してもよい。
【0022】
図2は装置10Aの内部構造を示す部分断面図であり、図3は装置10Aを拡大して示す図であり、図4は装置10Aの分解図である。装置10Aは、流路1と連通する流路12aを有する筒状部12と、筒状部12の内面12bから外面12cにかけて貫通するスリットSと、筒状部12に対して摺動自在に設けられた栓体部15と、栓体部15と一体的に設けられた延出部17と、栓体部15に対して押圧力を付与するコイルバネ(弾性体)18と、筒状部12の先端側に装着されるキャップCとを備える。本実施形態においては、スリットSと、キャップCとによって長孔(貫通孔)Hが構成されている。
【0023】
流路1と流路12aとのなす角度のうち小さい方の角度をα(例えば、流路1と流路12aとが60°で交差する場合、120°でも交差するともいえるが、この場合、αは60°である。)とすると、角度αは装置10Aのコンパクト化の点からは小さい方がよく、好ましくは70°以下であり、より好ましくは60°以下であり、更に好ましくは50°以下である。角度αが小さすぎると流路1を構成する部材と流路12aを構成する部材が近接しすぎて設計が困難となりやすい。角度αの下限は好ましくは20°であり、より好ましくは30°である。なお、図2は、流路12aが流路1に対して斜め下方向に延びた構成を図示しているが、流路12aが流路1に対して斜め上方向に延びた構成を採用してもよい。
【0024】
筒状部12の上流側(止水状態において後述のOリング15aが位置する領域)は内径3〜20mm程度の円筒形状を有する。筒状部12の内径は、流路1の流路断面の大きさに応じて決定すればよい。筒状部12の下流側(放水状態において後述のOリング15aが位置する領域)は上流側の内径と同じであってもよいし、上流側の内径よりも拡大又は縮径していてもよく、その内径は3〜20mm程度であればよい。
【0025】
筒状部12の下流側の内径と栓体部15の外径との差は、筒状部12のサイズにもよるが、0.1〜3mm程度とすればよい。この差を0.1mm以上とすることで筒状部12の内面と栓体部15の外面との間にクリアランスができ、部品寸法がバラついても摺動抵抗が増加することを十分に抑制できる。この差を3mm以下とすることで、栓体部15の摺動時のガタつきを防止できる。
【0026】
図5に示すとおり、筒状部12は互いに対向する位置に一対のスリットSを有する。スリットSとキャップCの上側とによって構成される長孔Hの長さ(筒状部12の長手方向)は好ましくは10〜30mmであり、より好ましくは15〜20mmである。この長さを10mm以上とすることで長孔Hに付着した水が凍結しても長孔Hの閉塞を十分に抑制でき、他方、30mm以下とすることで装置10Aを十分にコンパクトなサイズとすることができる。長孔Hの幅は好ましくは0.5〜6mmであり、より好ましくは2〜4mmである。この幅を0.5mm以上とすることで水の表面張力によって長孔Hに水が付着するのを抑制しやすく、他方、6mm以下とすることで長孔Hから勢いよく水を放出でき長孔Hに水が付着するのを抑制しやすい。長孔Hの長さと幅の比(長さ/幅)は好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。
【0027】
栓体部15は、筒状部12内において筒状部12に対して摺動自在に設けられており、長孔Hからの放水と止水とを切り替えるためのものである。栓体部15は、円柱状の形状を有し、その途中にOリング15aが装着されている。筒状部12の内面12bに対して栓体部15の外周が接触する面積を極力小さくすることで(図6参照)、内面12bに対する栓体部15の摺動抵抗を十分に小さくすることができる。なお、栓体部15の上流側外周の隆起部は内面12bとの接触面をなし、かかる隆起部は栓体部15が筒状部12内を摺動する際に栓体部15の姿勢を保持する役割を果たす。
【0028】
Oリング15aが長孔Hよりも上流側に位置している状態(止水状態)にあっては、Oリング15aが流路12aと長孔Hとの間を遮断している。他方、流路1内の圧力が所定値以上となったときに、栓体部15が下流側に移動し、Oリング15aが長孔Hの上端よりも下流側に位置する状態となると、長孔Hの上端側から水が放出される状態となる。放水によって流路12a内の圧力が低下すると、コイルバネ18の押圧力によって栓体部15が上流側に移動し、再び、止水状態となる。
【0029】
図6の(a)に示すように、栓体部15はOリング15aが装着された位置よりも下流側に相当する位置に2つの延出部17を有する。2つの延出部17は、栓体部15の側面から側方に互いに反対の向きに延びており、それぞれスリットS内を摺動するように構成されている。止水状態にあっては、延出部17の上面(第一の面)17aは長孔Hの上流側内周面H1に接している(図5参照)。他方、2つの延出部17のうち少なくとも一方の下面17bにコイルバネ18の上端が接している。
【0030】
延出部17は更に、放出された水が長孔Hに付着するのを防止するとともに、その水が瞬時のうちに凍結してもこれを取り除いたり押し潰したりする役割を果たす。すなわち、放水状態から止水状態に移行する際、長孔H内を延出部17が移動することで、長孔Hに付着した水や氷を取り除くことができる。あるいは、付着した氷を完全には取り除くことができないとしても、長孔Hの上流側内周面H1側に氷を移動させて押し潰すことができる。
【0031】
栓体部15及び延出部17において、Oリング15aの位置と延出部17の上面17aとの距離はなるべく近いことが好ましい。これにより、水圧によって栓体部15の移動し始めた後、短時間のうちに長孔Hから水を放出させることができる。
【0032】
コイルバネ18は図3,4に示すとおり、筒状部12の外側、すなわち外面12cに沿って配置される。コイルバネ18のストロークはなるべく長いことが好ましく、コイルバネ18の長さにもよるが、好ましくは1〜20mmであり、より好ましくは5〜15mmである。なお、コイルバネ18の条件は、上記ストローク以外に、水圧が所定の圧力になるまで動かない反力を有すること、装置全体の省スペース化に寄与することなどの観点から設定すればよい。
【0033】
延出部17の構成は、図6(a)に示したものに限定されず、例えば図6の(b)〜(d)に示した構成であってよい。図6の(b)〜(d)に示した延出部17はいずれも長孔Hの上流側内周面H1(図5参照)から遠ざかる方向に傾いた傾斜面17cを有する。図6の(b)に示す延出部17は延出部17の先端面と上面17aとの間に略矩形の傾斜面17cを有する。図6の(c)に示す延出部17はスリットSに対向する面と上面17aとの間に略矩形の傾斜面17cを有する。図6の(d)に示す延出部17はスリットSに対向する面と上面17aとの間に略直角三角形の傾斜面17cを有する。延出部17に傾斜面17cを設けることで長孔Hから水又は氷を取り除く機能をより高めることができる。上面17aと傾斜面17cとのなす角は好ましくは30〜60°であり、より好ましくは40〜50°である。
【0034】
キャップCは、上述のとおり、スリットSとともに長孔Hを構成している。キャップCは内面にネジ溝が形成されており、筒状部12の先端側に設けられたネジ山に嵌め込むことができるようになっている。キャップCは、コイルバネ18の下端のバネ座としての役割も果たしている。キャップCの締め具合を調節することで、コイルバネ18の押圧力を調節できるようにしてもよい。
【0035】
<第二実施形態>
上述の第一実施態様に係る装置10Aは、栓体部15と一体的に延出部17が設けられ且つ筒状部12の外側にコイルバネ18が配置された態様である。これに対し、第二実施形態に係る凍結破損防止装置10B(以下、場合により単に「装置10B」という。)は、栓体部15に延出部17が設けられておらず(図7参照)且つコイルバネ18が筒状部12の内部に収容された態様である(図8参照)。これらの事項以外については、装置10Bは上述の装置10Aと同様の構成を有する。図7及び図8を参照しながら、装置Bにおける装置Aと相違する構成について主に説明する。
【0036】
栓体部15は、延出部17が設けられておらず且つ底面に突起15cを備えることの他は装置10Aにおける栓体部15と同様の構成である。装置10Bにおいては、筒状部12内であって栓体部15の下流側にコイルバネ18が収容されている。すなわち、栓体部15の下端面にコイルバネ18の上端が当接し、他方、キャップCの内面にコイルバネの下端が当接し、栓体部15に対して押圧力が付与される。筒状部12内においてコイルバネ18の位置ずれを防止するため、栓体部15の下端面の中心部に突起15bが設けられ、またキャップCの棒状部材C1が設けられている。
【0037】
上述の装置10A,10Bによれば、水の凍結による流路1内の過度な圧力上昇を十分確実に防止できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第一実施形態においては、栓体部15と一体的に設けられた樹脂製の延出部17を例示したが、栓体部15に例えば金属製のピンを固定し、これを延出部としてもよい。延出部の材質としては、金属、樹脂、ゴム等を挙げることができ、氷を取り除くという機能を充分に発揮するためにはある程度の硬度を有する金属又は樹脂が好ましい。なお、金属は樹脂と比較して熱伝導が高く、周囲の水を凍結しやすい傾向にある。加工性等も考慮に入れると、延出部の材質としては熱可塑性樹脂が好ましく、その好適例としてPOMを挙げることができる。POMは摺動抵抗が低く、耐薬品性(耐塩素性)に優れるという利点がある。
【0039】
上記実施形態においては、筒状部12の先端にまで至るスリットSとキャップCとによって長孔Hが構成される場合を例示したが、筒状部12の先端にまで至らないスリットSを設け、これが長孔Hとして機能する態様であってもよい。また、弾性体はコイルバネに限られず、装置の構成に応じてコイルバネ以外の弾性体を採用してもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、凍結破損防止装置が備える水栓システムとして灌水システムを例示したが、凍結破損防止装置の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、通常の水道管や立水栓に適用してもよい。更に上記実施形態においては、円筒形状の筒状部12を例示したが、筒状部12の断面形状は楕円形状や、四角形、五角形などの多角形であってもよい。
【0041】
本明細書には、独立形式請求項に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成を備えなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0042】
1…流路(過度な圧力上昇を防止すべき流路)、2…上端、3…下端、5…電磁弁、10A,10B…凍結破損防止装置、12…筒状部、12a…流路、12b…内面、12c…外面、12d…隆起部、15…栓体部、15a…Oリング、15b…突起、17…延出部、17a…上面、17b…下面、17c…傾斜面、18…コイルバネ、50…水栓システム、C…キャップ、C1…棒状部材、H…長孔、H1…上流側内周面、S…スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8