【実施例】
【0032】
実施例
実施例1. 選択方法
1.1 世代時間の決定
試験された細胞株は、それぞれ10% FCS添加DMEMまたは10% FSC添加RPMI 1640中に1 mlあたり0.1〜5 x 10
5細胞、好ましくは1 mlあたり0.5〜2 x 10
5細胞の濃度で培養ディッシュに播種し、例えばATCCによりその特定の細胞に推奨される培地中で、適切な条件下で培養し、細胞数は、例えばNeubauerのような計数チャンバーを用いて、トリプシン処理ありまたは処理なしで2〜3日ごとに決定した。培養後1週間以内に細胞数が16〜256
倍に倍加した細胞、好ましくは64〜128
倍に倍加した細胞は、陽性(+、++または+++)と評価された。
【0033】
1.2. 浮遊培養の可能性
浮遊培養の可能性を決定するために、細胞を対応する付属装置を装着したBelico Spinner中で、37℃および7% CO
2として、培地(1.1参照、例えばウシ胎仔血清のような血清の添加ありまたはなし)中で、連続的に撹拌しながら14日間培養した。この間に少なくとも5回の倍加をした細胞は、浮遊培養に適する(+)と評価された。
【0034】
1.3. 無血清培地での培養可能性
無血清培地での細胞の培養可能性を決定するために、細胞を1.1と同じ条件下で、ATCCによってその特定の細胞に推奨される基礎培地(すなわち血清の添加なし)およびITS(Boehringer Mannheim社、カタログ番号1074547)添加で、培養器中で1〜10 x 10
5細胞/mlの密度で14日間培養した。この間に少なくとも5回の倍加(細胞の計数によって決定)をした細胞は、無血清培養に適すると評価された。
【0035】
1.4. 標的遺伝子の内因性発現の決定
標的蛋白質が選択された細胞株中で内在的に生産されるかどうかを決定するために、細胞を0.01〜2 x 10
6細胞/ml培地、好ましくは0.5〜1 x 10
6細胞/mlの密度で24時間まいた。24時間後に細胞上清を取り出し、細胞を破棄し、例えば特定の蛋白質に特異的な免疫アッセイのような既知の試験方法によって、細胞上清中の細胞蛋白質の含有量を決定した。
【0036】
EPOの場合、含有量はELISAによって決定された。このためにストレプトアビジンでコートしたマイクロタイタープレートをビオチン化抗EPO抗体(Boehringer Mannheim)でコートし、蛋白質を含む溶液(1% w/v)とインキュベートして非特異的結合をブロックした。その後、培養上清0.1 mlを添加し、一晩インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ結合抗EPOモノクローナル抗体(Boehringer Mannheim)を2時間添加した。ペルオキシダーゼ反応は基質としてABTS(登録商標)を用いてPerkin-Elmerフォトメーターで405 nmで測定した。
【0037】
この試験におけるEPOの検出限界は10 pg EPO/mlだった。10
6細胞/mlの播種で10 pg EPO/ml未満しか生産しない細胞は、非生産であり、適する(+)と評価された。
【0038】
1.5. 標的遺伝子のコピー数の決定
細胞株中の標的遺伝子のコピー数を決定するため、約10
8細胞からヒトゲノムDNAを単離し、定量した(Sambrookら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)。それぞれ例えばAgeIおよびAscIまたはBamHI、HindIIIおよびSalIのような制限酵素でDNAを切断した後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片をサイズによって分別し、最後にナイロンメンブレンに移して固定した。
【0039】
固定したDNAに、標的遺伝子座または標的遺伝子が存在する染色体に特異的なジゴキシゲニン標識DNAプローブをハイブリダイズさせ、厳密な条件下で洗浄した。特異的なハイブリダイゼーションシグナルは、感光性フィルムを用いて化学ルミネセンスを用いて検出した。
【0040】
1.6. 標的遺伝子の核酸配列の決定
ゲノムDNAは、DNA単離キット(例、QIAGEN血液および細胞培養DNAキット)を用いて約10
7細胞から単離された。
【0041】
標的遺伝子の増幅には、1対のPCRプライマーが使用された。プライマーの配列は、標的遺伝子のコード領域に隣接する配列に相補的だった。したがって、標的遺伝子のコード領域全体を増幅することができた。
【0042】
PCR産物は、直接に配列分析を行なうか、ベクターにクローニングしてから配列決定をした。標的遺伝子のイントロン領域の配列に相補的な配列を持つシーケンシングプライマーを使用し、標的遺伝子のエクソン領域の配列が完全に得られるようにした。配列決定は、例えば「プリズム・レディ・リアクション・ダイ・ターミネーター・サイクル・シークエンス(Prism(登録商標) Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing)」キット(PE/ABI、米国フォレストシティ)を用いて、製造元の指示にしたがって、PE/ABI自動シーケンサーで行なった。
【0043】
1.7. グリコシル化パターンの決定
EPOのグリコシル化パターンを決定するために、試験する細胞株に、ヒトEPO遺伝子配列の4 kbのHindIII/EcoRI断片をSV40プロモーターの制御下に含むプラスミドpEPO227をトランスフェクトした(Jacobsら、Nature 313 (1985), 806; Lee-Huangら、Gene 128 (1993), 272)。細胞は、市販の試薬キットを用いて、製造元の指示に従って、リポフェクタミンの存在下でトランスフェクトした。2〜5日後に得られた細胞上清のEPO含有量をELISAで決定した。
【0044】
細胞上清を濃縮し、等電点電気泳動法によって既知のEPO産物と比較した(Righetti, P.G., 「等電点電気泳動:理論、方法および応用(Isoelectric Focusing: Theory, Methodology and Applications)」Work, T.S., Burdon, R.H.編、Elsevier Biomedical Press, Amsterdam (1983))。尿EPOのような既知のEPO産物に匹敵するグリコシル化を示したヒト細胞は、適する(+)と評価された。
【0045】
1.8. ウイルス汚染の決定
1.8.1. 細胞培養による分析
試験するヒト細胞株の感染性ウイルス汚染を検出するため、細胞溶解物を、細胞変性効果を検出するために検出細胞株とインキュベートした。さらに、血球吸着分析も行なった。
【0046】
溶解物を調製するために、1 mlの緩衝液に10
6細胞を入れた懸濁液を、急速な凍結融解によって溶解させた。細胞残渣を遠心によって分離し、上清を検出細胞株に加えた。使用した検出細胞株はHepG2 (ATCC HB-8065; Nature 282 (1979), 615-616)、MRC-5 (ATCC-1587)およびVero (ATCC CCL-171; Jacobs, Nature 227 (1970), 168-170)だった。ポリオSVおよびインフルエンザタイプのウイルスが、陽性対照として使用された。陰性対照は、溶解物なしで培養した検出細胞株だった。細胞変性効果を検出するために、検出細胞株は少なくとも14日間、定期的に調べた。
【0047】
血球吸着分析のためには、細胞溶解物および対照とインキュベートされていたVero細胞を、7日後にニワトリ、ブタ、ヒトの赤血球で処理した。培養細胞の単層に赤血球が接着すれば、培養物にウイルス汚染があることを示す。
【0048】
1.8.2. インビボ分析
試験する細胞株の溶解物を1.8.1.のようにして調製し、0.1 mlを新生マウスの腹腔内または大脳半球間に注射した。14日間にわたり、マウスの罹患率と死亡率を観察した。
【0049】
1.8.3. ウイルス蛋白質の特異的検出
エプスタイン・バーウイルス蛋白質(核蛋白質またはキャプシド抗原)のような特定のウイルス蛋白質の存在は、EBV陽性バンドのヒト血清を、試験する細胞株の固定化細胞に与えて試験した。その後、補体および対応する抗ヒト補体C3フルオレセイン結合体(核抗原の検出用)および抗ヒトグロブリンフルオレセイン(キャプシド抗原の検出用)を投与して、ウイルス抗原の検出を行なった。
【0050】
実施例2. 選択結果
第1項に述べた方法によって、ヒト細胞株HepG2、HT1080、Namalwa、HeLaおよびHeLaS3が試験された。結果は以下の表1に示されている。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から、細胞株HT1080、NamalwaおよびHeLaS3は、EPOの内因性遺伝子活性化に適すると考えられることが分かる。NamalwaおよびHeLaS3は特に適している。
【0053】
実施例3. EPO相同性領域のクローニング
EPO遺伝子の相同性領域は、胎盤のゲノムDNA(Boehringer Mannheim)を用いてPCRによって、増幅された。EPO遺伝子の5'非翻訳配列、エクソン1およびイントロン1の領域からの長さ6.3 kbの相同性領域から、2つのPCR産物が調製された(
図1)。PCR産物1の作製に使用されたプライマーは、以下の配列を持っていた:5'-CGC GGC GGA TCC CAG GGA GCT GGG TTG ACC GG-3'(配列番号:1)および5'-GGC CGC GAA TTC TCC GCG CCT GGC CGG GGT CCC TCA GC-3'(配列番号:2)。PCR産物2の調製に使用されたプライマーは、以下の配列を持っていた:5'-CGC GGC GGA TCC TCT CCT CCC TCC CAA GCT GCA ATC-3'(配列番号:3)および5'-GGC CGC GAA TTC TAG AAC AGA TAG CCA GGC TGA GAG-3'(配列番号:4)。
【0054】
望ましい部分は、制限切断(PCR産物1:HindIII、PCR産物2:HindIIIおよびEcoRV)によってPCR産物1および2から切り出し、HindIIIおよびEcoRVで切断されたベクターpCRII (Invitrogen) にクローニングした。このようにして得られた組換えベクターは、5epopcr1000と呼ばれた(
図2参照)。
【0055】
実施例4. EPO遺伝子ターゲッティングベクターの作製
4.1. NEO遺伝子、DHFR遺伝子およびCMVプロモーター/エンハンサーを含む遺伝子活性化配列(
図3参照)が、EPO相同性領域を含むプラスミド5epocr1000のAgeI部位に挿入され、プラスミドp176が得られた(
図4a参照)。CMVプロモーターをEPO遺伝子の翻訳出発部位にできるだけ近付けるために、制限部位AscIおよびAgeIの間の長さ963 bpの部分が除去され(部分切断)、プラスミドp179が得られた(
図4b)。
【0056】
4.2. 発現を最適化するために、EPOリーダー配列の出発Met-Gly-Val-Hisをコードするエクソン1のヌクレオチドが、合成配列Met-Ser-Ala-Hisによって置換された。この配列は、例えばSV40の制御下にヒトEPO遺伝子配列(Jacobsら、Nature 313 (1985), 806、およびLee-Huangら、Gene 128 (1993), 227)の3.5 kbのBstEII/EcoRI断片(エクソン1〜5を含む)を含むプラスミドpEPO148のようなゲノムEPO DNA配列を鋳型として、対応するプライマーを用いて、増幅して得られた。このようにして、プラスミドp187が得られた(
図4b)。
【0057】
4.3. プラスミドp189は、Psvtk-1 (PvuII/NarI断片)から得られた単純ヘルペスウ
イルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)を、プラスミド-187に挿入して、調製された(
図4c)。HSV-TK遺伝子は、CMVプロモーターに対して逆方向で、イントロン1(EcoRV/ClaI)の3'末端にあるSV40プロモーターの制御下にあり、相同組換えのネガティブ選択になるはずである。
【0058】
4.4. プラスミドp190の作製のために、Simonsenら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983) 2495)に記述されたDHFRのアルギニン変異のcDNAを含むプラスミドpHEAVYのSfiI/BglII断片が、SfiIおよびBglIIで切断されたプラスミドpGenak-1にサブクローニングされた。pGenak-1は、RSVプロモーターおよびターミネーターとしてSV40後期ポリアデニル化部位の制御下にあるNEO遺伝子、SV40初期プロモーターおよびターミネーターとしてSV40初期ポリアデニル化部位の制御下にあるマウスDHFR遺伝子(Kaufmannら、Mol. Cell. Bio.. 2 (1982), 1304;Okayamaら、Mol. Cell. Biol. 3 (1983), 280、およびSchimke, J. Biol. Chem. 263 (1988), 5989)、およびCMVプロモーター(Boshartら、Cell 41(1995) 521)を含む。その後、DHFRアルギニン変異をコードするcDNAを含むHpaI断片が、HpaIで切断されたプラスミドp189に連結され、プラスミドp190が得られた(
図4d)。
【0059】
4.5. HSV-TK遺伝子を持たないトランスフェクションベクターを得るために、遺伝子活性化配列を含むプラスミドp190のAscI/NheI断片が、エクソン1を含むプラスミドp187のAscI/NheI断片に連結された。得られたプラスミドはp192と命名された(
図4e)。
【0060】
実施例5. 細胞のトランスフェクション
EPOの生産のために種々の細胞株が選択され、ターゲッティングベクターでトランスフェクトされた。
【0061】
5.1. Namalwa細胞
細胞はT150組織培養ボトル中で増殖させ、エレクトロポレーション(1 x 10
7細胞/800μlエレクトロポレーション緩衝液20 mM Hepes、138 mM NaCl、5 mM KCl、0.7 mM Na
2HPO
4、6 mM D-グルコース1水和物pH 7.0、10μg線状DNA、960μF、260 V BioRad Gene Pulser)によってトランスフェクトした。エレクトロポレーション後、RPMI 1640、10% (v/v)ウシ胎仔血清(FCS)、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム中で、40枚の96ウェルプレート中で細胞を培養した。2日後に、G-418を含む培地1 mg/ml中で細胞を10〜20日間培養した。上清は、固相ELISAによってEPOの生産を試験した(実施例1.4参照)。EPOを生産するクローンは24ウェルプレートおよびT-25組織培養ボトルで増殖させた。一部を凍結し、細胞はFACSによってサブクローニングされた(Ventage、Becton Dickinson)。サブクローンは、EPO生産について試験を繰り返した。
【0062】
5.2. HT 1080細胞
HT 1080細胞はDMEM、10% (v/v) FCS、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム中で培養されたという以外は、条件はNamalwa細胞で記述されたとおりである。エレクトロポレーションによるトランスフェクションのために、細胞をトリプシン処理によって培養器の壁からはがした。エレクトロポレーション後、1 x 10
7細胞は、5枚の96ウェルプレート上で、DMEM、10% (v/v) FCS、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム中で培養された。
【0063】
5.3. HeLa S3細胞
HeLaS3細胞はRPMI 1640、10% (v/v) FCS、2 mM L-グルタミン、1% (v/v) NEM非必須アミノ酸(Sigma社)、および1 mMピルビン酸ナトリウム中で培養されたという以外は、条件はNamalwa細胞で記述されたとおりである。エレクトロポレーションによるトランスフェクションのために、細胞をトリプシン処理によって培養器の壁からはがした。エレクトロポレーションの条件は960μF/250 Vだった。エレクトロポレーション後、細胞は、RPMI 1640、10% (v/v) FCS、2 mM L-グルタミン、1% (v/v) NEM、および1 mMピルビン酸ナトリウム中で、T75組織培養ボトルで培養された。エレクトロポレーションの24時間後、細胞をトリプシン処理して、10枚の96ウェルプレート上で、600μg/mlのG-418を含む培地中で10〜15日培養した。
【0064】
実施例6. EPO遺伝子増幅
EPO発現を増加させるために、EPO生産クローンは、メトトレキセート(MTX)の濃度を上昇させながら(100 pM〜100 nM)、培養した。各MTX濃度で、クローンのEPO生産はELISAによって確認された(実施例1.4参照)。強い生産細胞は、限界希釈によってサブクローニングした。
【0065】
実施例7. EPO生産細胞株の解析
EPO遺伝子の活性化には、3つの細胞株(Namalwa、HeLa S3、およびHT 1080)が選択された。EPO生産クローンは、プラスミドp179、p187、p189、p190またはp192のトランスフェクションによって得られた(実施例2および3参照)。
【0066】
約160,000のNEO耐性クローンのEPO生産が試験され、そのうち12から15が細胞上清にかなりの収量でEPOを繰り返し分泌していた。
【0067】
これらのうち、7つのEPOクローンが、驚くべきことにMTXによる遺伝子増幅なしに同定され、大量の産業用生産に十分な量のEPOを生産していた。これらのクローンのEPO生産は、24時間で10
6細胞あたり、200 ng/mlから1000 ng/ml以上までの範囲だった。
【0068】
500 nMのMTXによる遺伝子増幅後、同定されたEPOクローンのEPO生産は、24時間で10
6細胞あたり3000 ng/ml以上に増加した。MTX濃度を1000 nMまでさらに増加させると、生産は24時間で10
6細胞あたり7000 ng/ml以上に増加した。
【0069】
得られたクローンは、無血清培養条件およびMTXの非存在下でも、EPO生産を示した。
【0070】
[配列番号:1および配列番号:2]
PCR産物1の作製に使用したプライマーのヌクレオチド配列(
図1)。
[配列番号:3および配列番号:4]
PCR産物2の作製に使用したプライマーの配列(
図1)。