(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2白色基準板は、前記筐体上面の裏側であって前記第2ポジションにおいて前記主走査方向に前記コンタクトガラスより外側となる当該主走査方向における両端部の何れか一方又は両方に配置される請求項1に記載の画像読取装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術の場合、ゲイン調整やオフセット調整の実行中に何度も原稿押さえ板の開閉が行われると、毎回原稿のサイズ検出を実施して、その後にゲイン調整とオフセット調整によるシェーディング補正を行うため、画像読取装置の準備が完了するまでに時間がかかり、利便性が低下する。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、例えばゲイン調整やオフセット調整によるシェーディング補正といった光学調整処理の実行中に原稿押さえ板が閉じられても、光学調整処理を中止せずに原稿サイズを検出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像読取装置は、原稿を載置するためのコンタクトガラスと、
前記コンタクトガラスを収容する筐体と、
前記筐体に収容され、予め定められた主走査方向において前記コンタクトガラスの幅を超えて並設された複数の光源を持つスキャナーユニットを有し、前記コンタクトガラスに載置された原稿を含んで前記主走査方向において前記複数の光源の配設位置に対向する部分の画像を読み取るスキャナー部と、
前記スキャナーユニットを前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させる駆動部と、
前記コンタクトガラスに対して開閉自在であり、閉状態で前記コンタクトガラスに載置された原稿を当該コンタクトガラスに押しつける原稿押さえ板と、
前記原稿押さえ板の開閉状態を検知する開閉検知部と、
前記副走査方向に、前記スキャナーユニットによる前記コンタクトガラスにおける原稿読取領域より外側であって、原稿読取開始位置に隣接する第1ポジションにあるときに読み取り可能な位置に配置され、前記主走査方向には、前記複数の光源が並ぶ幅と同等以上の主走査方向長さを有する第1白色基準板と、
前記原稿読取領域内であって前記コンタクトガラスに載置された原稿のサイズを検出する際に前記スキャナーユニットが位置する前記副走査方向における第2ポジションに当該スキャナーユニットがあるときに読み取り可能な位置であって、前記主走査方向において前記コンタクトガラスに載置された原稿の読み取りを妨げない位置に配置された第2白色基準板と、
前記スキャナー部が前記第1白色基準板を読み取って取得した出力値を用いて当該スキャナー部の光学調整を行う光学調整部と、
前記光学調整部による光学調整時に前記スキャナーユニットが前記第1ポジションにある状態で前記スキャナー部に前記第1白色基準板を読み取らせ、当該光学調整又は読取時に前記開閉検知部により前記原稿押さえ板の開閉が検知されたときには、前記スキャナーユニットを前記第1ポジションから前記第2ポジションに移動させる制御を行って、前記原稿サイズの検出を行う制御部とを備え、
前記光学調整部は、前記スキャナーユニットが前記第1ポジションに位置しているときは当該状態で前記スキャナー部が読み取った前記第1白色基準板の読取画像を用いて光学調整を行い、前記スキャナーユニットが前記第2ポジションに移動した後は当該状態で前記スキャナー部が読み取った前記第2白色基準板の読取画像を用いて光学調整を行う。
【発明の効果】
【0007】
開閉検知部が原稿押さえ板の開閉を検知すると、駆動部はスキャナーユニットを第1ポジションから第2ポジションに移動させて原稿サイズを検出しなければならない。従来は第1ポジションにのみ白色基準板が配置されていたため、スキャナーユニットが第1ポジションでのみ可能なゲイン調整やオフセット調整等の光学調整処理は中止せざるを得なかった。しかし、本発明によれば、第1ポジションにある第1白色基準板だけでなく、第2ポジションにおいて読み取り可能な位置に第2白色基準板が設けられているので、光学調整処理中に開閉検知部が原稿押さえ部の開閉を検知し、駆動部がスキャナー部を第1ポジションから第2ポジションへ移動させても、スキャナー部は白色基準板の画像を読み取って光学調整を行うことが可能である。このため、光学調整部は、光学調整処理を中止する必要がなく、スキャン開始のための準備動作にかかる時間が延びることが防止され、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る画像読取装置及び画像形成装置について、図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施の形態では、説明を簡単にするために、画像読取装置を例に挙げて説明する。そして、本発明における画像形成装置は、以下で説明する画像読取装置に、電子写真方式やインクジェット方式等の画像形成装置を組み合わせたものである。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の構造を示す正面断面図である。本発明の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置1は、装置本体11に、操作部47、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿搬送部6、及び画像読取部5等を備えて構成されている。
【0011】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者から画像形成動作実行指示や原稿読取動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。
【0012】
画像形成装置1が原稿読取動作を行う場合、原稿搬送部6により給送されてくる原稿、又はコンタクトガラス161に載置された原稿の画像を画像読取部5が光学的に読み取り、画像データを生成する。画像読取部5により生成された画像データは内蔵HDD又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0013】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、上記原稿読取動作により生成された画像データ、又はネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。カラー印刷を行う場合、画像形成部12のマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y、及びブラック用の画像形成ユニット12Bkは、それぞれに、上記画像データを構成するそれぞれの色成分からなる画像に基づいて、帯電、露光、及び現像の工程により感光体ドラム121上にトナー像を形成し、当該トナー像を一次転写ローラー126により中間転写ベルト125上に転写させる。
【0014】
中間転写ベルト125上に転写される上記各色のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成された当該カラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた記録紙Pに転写させる。この後、定着部13が、記録紙P上のトナー像を、熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0015】
給紙部14は、複数の給紙カセットを備える。図示しない制御部は、操作者による指示で指定されたサイズの記録紙が収容された給紙カセットのピックアップローラー145を回転駆動させて、各給紙カセットに収容されている記録紙Pを上記ニップ部Nに向けて搬送させる。
【0016】
なお、画像形成装置1において、両面印刷を行う場合は、画像形成部12より一方の面に画像が形成された記録紙Pを、排出ローラー対159にニップされた状態とした後、当該記録紙Pを排出ローラー対159によりスイッチバックさせて反転搬送路195に送り、搬送ローラー対19により、上記ニップ部N及び定着部13に対して記録紙Pの搬送方向上流域に再度搬送する。これにより、画像形成部12により当該記録紙の他方の面に画像が形成される。
【0017】
上記構成の画像形成装置1は、画像形成部12の各回転部材や搬送ローラー対19等のさまざまな部材に回転駆動力を付与するために、本発明の一実施形態に係る駆動装置を備えている。
【0018】
図2は、画像読取部5の全体構成を示す概略断面図である。尚、本実施形態では、画像読取部5は、原稿搬送部6(ADF:Auto Document Feeder)を備えたものを例にして説明するが、画像読取部5は原稿搬送部6を備えないものであってもよい。
【0019】
画像読取部5は、上面に設けられた原稿を載置するためのコンタクトガラス161、スキャナー部2、原稿読取スリット53及び白色基準板91を有する。スキャナー部2は、スキャナーユニット20を備える。スキャナーユニット20は、コンタクトガラス161に載置された原稿に光を照射する光源部26と、原稿からの反射光を第2ミラー22に反射する第1ミラー21とを有する。スキャナー部2は、当該スキャナーユニット20と、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーで構成された撮像素子25と、スキャナーユニット20からの反射光を撮像素子25へ導く第2ミラー22、第3ミラー23及びレンズ系24のミラー群とを備える。
【0020】
光源部26は、スキャナーユニット20の主走査方向(
図2では紙面奥行方向)に複数の光源(LED)が並設されて構成されている。光源部26は、当該光源は、当該主走査方向においてコンタクトガラス161の幅を超えて並設されている。当該光源の配設と、当該光源の配列に対応して設けられている後述の撮像素子25とにより、スキャナーユニット20は、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を読み取ると共に、当該主走査方向において複数の光源の配設位置に対向する部分の画像を読み取る。
【0021】
原稿搬送部6は、給紙ローラー及び搬送ローラーの駆動により、原稿載置部61に載置された原稿束Sを1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿読取スリット53を介して画像読取部5による読取を可能とした後、原稿排出部66へと排出する。また原稿搬送部6は、画像読取部5の上面にあるコンタクトガラス161に対して開閉自在であり、原稿搬送部6が閉状態にあるときに画像読取部5の上面と対向する面には原稿押さえ板162を有する。原稿押さえ板162は、コンタクトガラス161に載置された原稿を押さえるためのものであり、一般的に原稿を押さえる側の面は白色となっている。
【0022】
まず、ユーザーが原稿搬送部6を開状態とし、原稿をコンタクトガラス161上に載置し、原稿搬送部6を閉状態とすることで原稿がコンタクトガラス161に押し付けられた状態となる。そして後述する開閉検知部81が原稿搬送部6の開閉を検知することで、後述する制御部100は原稿がコンタクトガラス161上に載置されたことを認識する。
【0023】
この後、制御部100の制御に従って光源部26が発光し、この光源部26の光がコンタクトガラス161を透過して原稿に照射される。その結果、原稿の反射光がコンタクトガラス161を通して第1ミラー21に入射する。この入射光は、第2ミラー22、第3ミラー23及びレンズ系24を通過した後、撮像素子25へ入射する。
【0024】
撮像素子25は、制御部100の制御に従って動作し、入射光を電気信号へ変換する。撮像素子25は、主走査方向に上述した光源の配列に対応して配列しており、主走査方向の1ライン分の出力値を得る。尚、撮像素子25は、上記複数の光源が並設されてなるライン複数分の画像データを同時に取得可能なように、複数列が配置されていてもよい。
【0025】
更に、光源部26と第1ミラー21で構成されたスキャナーユニット20は、後述する駆動部7によって副走査方向(矢印Y方向)に一定速度で移動する。こうすることで、画像読取部5は原稿の主走査方向1ライン分の出力値を副走査方向に連続して取得し、結果として原稿全体の画像を読み取ることができる。
【0026】
図3は、画像読取部5を上方から見た時の概略図である。開閉検知部81は、原稿搬送部6の開閉状態を検知する。原稿サイズ検出部82は、複数の検出部(センサー)で構成されており、各原稿サイズ検出部82に対向するコンタクトガラス161上の領域の反射の有無を検知して、検知結果を制御部100へ出力する。
【0027】
白色基準板91は、ゲイン調整やシェーディング補正を実施する際に用いる予め定められた色調の板であり、白色が用いられる。白色基準板91は、長辺が主走査方向に延びる長方形(第1白色基準板)とされる。この第1白色基準板部分をなす長方形部分は、副走査方向において、スキャナーユニット20によるコンタクトガラス16における原稿読取領域より外側に配置されている。本実施形態では、第1白色基準板部分をなす長方形部分は、その長辺の長さがスキャナー部2の主走査方向の読み取り範囲に相当する長さ以上とされている。すなわち、第1白色基準板部分をなす長方形部分は、光源部26を構成する上記複数の光源が主走査方向に並ぶ幅と同等以上の主走査方向長さを有する。
【0028】
さらに、白色基準板91は、第1白色基準板部分をなす長方形部分の両端部(主走査方向においてコンタクトガラス161よりも外側の領域)に、副走査方向に延びる基準板(第2白色基準板)が合体した形になっている。このため、白色基準板91は、画像読取部5の上面から見て、副走査方向下流側(紙面に向かって右側)に開口部を持つコの字型の形をしている。白色基準板91の副走査方向の長さは、後述する光学調整位置から原稿サイズ検出位置までの範囲に相当する長さ(矢印Wの範囲)となっている。すなわち、副走査方向に延びる基準板(第2白色基準板)は、副走査方向において、第1白色基準板部分をなす長方形部分の端部から原稿サイズ検出位置までに及ぶ。
【0029】
尚、この白色基準板91は、画像読取部5の上面から視認することはできず、画像読取部5を構成する筐体内部に配置されている。つまり、白色基準板91は、画像読取部5の上面の裏側面に貼り付けられて固定されている。
【0030】
光学調整位置(第1ポジション)とは、画像読取部5の光学調整処理(ゲイン調整、オフセット調整及びシェーディング補正サンプリング)が行われる際にスキャナーユニット20が配置される位置のことであり、スキャナーユニット20の原稿読取開始位置に隣接する。この光学調整位置(副走査方向において、スキャナーユニット20によるコンタクトガラス161における原稿読取領域より外側の位置)に、白色基準板91の第1白色基準板部分をなす長方形部分が配置される。光学調整処理が行われる際、駆動部7はスキャナーユニット20を光学調整位置に移動させ、光源部26が点灯することで、スキャナー部2は白色基準板91(第1白色基準板部分をなす長方形部分)の表面を読み取る。そしてこの読み取り結果に基づいて、後述する光学調整部101が光学調整処理を行う。
【0031】
スキャナーユニット20の画像読取により撮像素子25から出力される値は周囲環境や装置性能の経時変化等に応じて異なるため、主走査方向に並ぶ各素子からの出力にはばらつきが生じる。このばらつきは、例えば、白一色や黒一色の対象物を読み取った場合に主走査方向における色むらとなる。このため、シェーディング補正が行われる。シェーディング補正は、ゲイン調整及びオフセット調整により撮像素子25の出力を適正レンジに調整し、素子毎の出力バラツキを補正する処理である。
【0032】
このシェーディング補正では、撮像素子25により白色基準板91を読み取って現状の撮像素子25からの素子毎の出力を取得して、白データのサンプリングを行う。そして、主走査方向における撮像素子25全体でほぼ一様な白データが得られるように、撮像素子25の画像信号出力に対する増幅率を適正化するゲイン調整が行われる。更に、主走査方向における撮像素子25全体でほぼ一様な黒データが得られるように、撮像素子25の画像信号出力に対する増幅率を適正化するオフセット調整が行われる。これにより、撮像素子25から出力される値は主走査方向においてその出力にばらつきをなくすことができ、例えば、白画像(又は黒画像)の読み取りを実行したときに、撮像素子25からの出力が一様な白データ(黒画像読取時は黒データ)として取得される。
【0033】
光学調整処理は、画像読取部5の電源投入直後、スリープ状態からの復帰直後等に行われる。そして、光学調整処理の最中に開閉検知部81が原稿搬送部6の開閉を検知すると、駆動部7はスキャナーユニット20を光学調整位置より副走査方向下流側であって原稿読取開始位置の近傍にある原稿サイズ検出位置に移動させる。
【0034】
原稿サイズ検出位置(第2ポジション)は、コンタクトガラス161の下、つまり副走査方向において原稿読み取り領域内に位置する。画像読取部5が原稿サイズ検出位置に位置することで、コンタクトガラス161上に原稿が載置されたか否かを判別することができる。
【0035】
コンタクトガラス161上に原稿がセットされる際、原稿搬送部6はユーザーによって上方へ移動させられて開かれ、開閉検知部81が開状態を検知する。その状態で原稿がセットされた場合は、スキャナーユニット20のうち、原稿読取領域に原稿が存在していない位置にある撮像素子25部分からは黒データが出力される。
【0036】
その後、原稿搬送部6が閉じられると、開閉検知部81が閉状態を検知する。このとき、原稿押さえ部162は白色であることから、原稿読取領域において原稿が載置されていない領域に位置するスキャナーユニット20の撮像素子25部分からは白データが出力される。従って、原稿搬送部6が開状態から閉状態となったときに、出力が黒データから白データに変化した素子位置には原稿がないことになる。
【0037】
また、原稿サイズ検出部82は、コンタクトガラス161上に原稿が載置されている領域に設置されたセンサーからは用紙有を示す信号が出力され、コンタクトガラス161上に原稿が載置されていない領域に設置されたセンサーからは用紙無を示す信号が出力される。制御部100は、スキャナー部2と各原稿サイズ検出部82の検知結果に基づいて、原稿サイズを割り出す。このような原稿サイズ検出に必要な、スキャナーユニット20の撮像素子25からの上記白データ及び黒データ、原稿サイズ検出部82からの用紙有無を示す信号を得るには、原稿搬送部6が開いた状態から閉じた状態に変化する、又は開いた状態から閉じた状態に変化することを要する。このため、画像読取部5では、原稿搬送部6がこのような状態変化を生じた場合には、原稿サイズ検出が実行されるように設定されている。
【0038】
このため、原稿搬送部6が閉じられた状態でスキャナーユニット20が上記光学調整位置(第1ポジション)において上記光学調整処理を行っている最中に、原稿搬送部6が開かれると、駆動部7は画像読取部5のスキャナーユニット20を上記光学調整位置から原稿サイズ検出位置に移動させることなる。
【0039】
なお、一般的な画像形成装置では、白色基準板は光学調整位置にのみ配置されていたために、制御部は上記光学調整処理を中止させていた。そして、原稿サイズ検出後に、再度光学調整処理が行われていた。従って、一般的な画像形成装置では、光学調整処理中に何度も原稿搬送部が開閉されると、毎回光学調整処理が中断され、原稿サイズの検出後に光学調整処理が行われるため、スキャナー部2のスキャン開始準備が完了するまでに時間がかかり、利便性が悪かった。
【0040】
そこで、本発明の実施形態に係る画像読取部5では、その白色基準板91は、例えば、光学調整位置に配置されている長方形状に加え、主走査方向において原稿読取領域より外側(つまりコンタクトガラス161の外側)において副走査方向に延びて光学調整位置(第1ポジション)と原稿サイズ検出位置(第2ポジション)の間の領域にも白色基準部材を配置することで、
図3に示すような上方から見てコの字型の白色基準板91とする。こうすることで、駆動部7がスキャナーユニット20を光学調整位置から原稿サイズ検出位置に移動する間、又はスキャナーユニット20を原稿サイズ検出位置に移動させた後であっても、スキャナーユニット20の両端部の上部に白色基準板91が存在するため、この両端部が取得した反射光を用いて光学調整処理を続行することができる。
【0041】
なお、当該白色基準板91の形状は単なる一例であり、この形状に限定するものではない。例えば、白色基準板91は、光学調整位置から原稿サイズ検出位置に至るまでの領域の全てには存在せず、スキャナーユニット20が原稿サイズ検出位置に移動したときに、スキャナーユニット20の主走査方向における両端部又は一端部の上部となる位置に存在するものとしてもよい。
【0042】
図4に他の例を示す。
図4は当該他の例に係る画像読取部5を上方から見た時の概略図である。上記
図3では、コの字型の白色基準板91としたが、
図4に示すように、白色基準板を、光学調整位置に配置された白色基準板91a(第1白色基準板)と、副走査方向において原稿サイズ検出位置に配置され、かつ、当該原稿サイズ検出位置において主走査方向で原稿読取領域よりも外側に配置された白色基準板91b(第2白色基準板)の組み合わせとしてもよい。白色基準板91aは、その長辺の長さがスキャナー部2の主走査方向の読み取り範囲に相当する長さ以上とされている。この構成では、光学調整位置と原稿サイズ検出位置の間には白色基準板がない区間が存在する。このため、駆動部7がスキャナーユニット20を原稿サイズ検出位置に移動させた後に、光学調整部101が光学調整処理を行う。
【0043】
尚、本実施の形態では、原稿サイズ検出位置において、原稿読取領域より外側の主走査方向両端部に白色基準板が配置される形状又は構成としたが、少なくとも主走査方向両端部の何れか一方の端部に白色基準板が配置されていればよい。つまり、
図3の場合、白色基準板91はコの字型だが、L字型であってもよい。
図4の場合は、2つの白色基準板91bのうち何れか1つが配置されていればよい。
【0044】
また、スキャナーユニット20が光学調整位置に配置されて行なわれる光学調整処理を第1光学調整モード、スキャナーユニット20が光学調整位置から原稿サイズ検出位置へ移動する途中、又は移動した後に行われる光学調整処理を第2光学調整モードという。
【0045】
図5は、本実施の形態における画像読取部5を含む画像形成装置1の電気的構成を示したブロック図である。尚、上記で説明した構成要素と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0046】
駆動部7は、スキャナーユニット20を副走査方向に移動させるものであり、モーター等で構成される。記憶部8は、第1光学調整モード時に画像読取部5が読み取った直近の画像を記憶する。画像処理部9は、画像読取部5が読み取った画像に対して、画像圧縮、画質調整、拡大・縮小等の画像処理を施す。
【0047】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等によって構成され、入力された指示信号等に応じて所定のプログラムに基づいた処理を実行し、各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行って画像読取部5等を統括的に制御する。また本実施の形態では、制御ユニット10は、制御部100と、光学調整部101と出力値補完部102を備えている。
【0048】
上述した画像形成部12、定着部13、及び搬送ローラー19は、制御部100によって制御される。特許請求の範囲における画像形成部は、例えば、画像形成部12、定着部13、及び搬送ローラー19やその駆動モーター17といった画像形成に必要な各機構を備えてなる。
【0049】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、光学調整部101による光学調整時に上記第1ポジションにおいてスキャナー部2に第1白色基準板を読み取らせ、当該光学調整又は読取時に開閉検知部81により原稿搬送部6(原稿押さえ板162)の開閉が検知されたときには、スキャナー部2を上記第1ポジションから上記第2ポジションに移動させる制御を行って、原稿サイズの検出を行う。
【0050】
光学調整部101は、ゲイン調整、オフセット調整及びシェーディング補正サンプリングといったシェーディング補正等の光学調整処理を行う。この光学調整処理とは、画像読取部5の光学系の調整処理である。
【0051】
出力値補完部102について説明する。光学調整部101が第2光学調整モードで光学調整を行う場合、スキャナー部2は原稿読取領域より外側にある白色基準板91の画像、つまり領域Wの幅の画像しか取得しない。しかし、光学調整処理は主走査方向における原稿読取領域全域に渡って行われることが望ましい。そこで、出力値補完部102は、白色基準板91の領域Wから取得した出力値と、記憶部8に記憶された直近の第1光学調整モード時における主走査方向に亘る出力値を用いて、主走査方向における原稿読取領域の出力値を補完する。
【0052】
なお、特許請求の範囲における画像読取装置は、実施形態における画像読取部5と、原稿搬送部6と、光学調整部101と、出力値補完部102と、駆動部7と、記憶部8と、開閉検知部81と、画像処理部9とを備えてなる。但し、当該画像読取装置は、少なくともコンタクトガラス161と、画像読取部5と、駆動部7と、原稿押さえ板162と、開閉検知部81と、第1白色基準板としての白色基準板91aと、第2白色基準板としての白色基準板91bと、光学調整部101とを備えていればよい。
【0053】
補完方法について説明する。
図6は、ゲイン調整時に取得した出力値のグラフの一例を示した図である。縦軸は撮像素子25を構成する各素子の出力値、横軸は撮像素子25の各素子の位置を示している。そしてグラフG1は第1光学調整モード時に取得した出力値、グラフG2は第2光学調整モード時に取得した出力値である。
【0054】
光学調整処理は画像読取部5の稼働中に頻繁に行われるため、直近の出力値と大きく変化することは少ない。出力値補完部102は、第2光学調整モード時に読み取った出力値(G2)と記憶部8が記憶する第1光学調整モード時に取得した直近の出力値(G1)とを比較し、領域Wにおける出力値の変化量を算出する。そしてその変化量を第1光学調整モード時に取得した直近の出力値の中の原稿読取領域の出力値に当てはめて、現在の出力値とする。
【0055】
具体的に説明すると、記憶部8が記憶する直近の出力値に対する第2光学調整モード時に取得した出力値の変化量がSである場合、出力値補完部102はグラフG1の原稿読取領域における出力値に対して変化量Sを減算した値を、現在の原稿読取領域の出力値(G3)として補完する。出力値補完部102は、シェーディング補正時も同様にして出力値の補完を行う。このように原稿読取領域の出力値が補完された後に、光学調整部101はゲイン係数及びシェーディング補正係数を求める。尚、オフセット調整は光源部26を消灯して行う処理であるため、この補完処理は必要ない。
【0056】
図7は、本実施の形態における光学調整処理の流れを示したフローチャートである。尚、本実施の形態においては、ゲイン調整、オフセット調整及びシェーディング補正の流れの順で説明するが、シェーディング補正は独立して行われる場合もあり、この場合、光学調整処理はゲイン調整及びオフセット調整のみであってもよい。
【0057】
画像読取部5の電源投入直後、又はスリープ状態からの復帰時に光学調整部101はシェーディング補正(光学調整処理)を行う。まず光学調整部101は駆動部7に対してスキャナーユニット20を光学調整位置に移動させ(ステップS11)、画像読取部5に対して、シェーディング補正サンプリングのためにスキャナーユニット20に、光源部26を点灯させて白色基準板91の読取を行わせ、更に光源部26を消灯させて読取動作を行わせ、これにより得た白データ及び黒データと白基準値及び黒基準値との比較により、ゲイン調整及びオフセット調整を行うというシェーディング補正(光学調整処理)を開始する(ステップS12)。このシェーディング補正の最中に開閉検知部81が原稿搬送部6の開閉を検知すると(ステップS13;YES)、光学調整部101は駆動部7に対してスキャナーユニット20を原稿サイズ検出位置へ移動させる(ステップS15)。このとき、原稿サイズ検出位置への移動後、光学調整部101は、スキャナーユニット20にシェーディング補正サンプリングを行わせ、ゲイン調整、及びオフセット調整を続行する(ステップS16)。白色基準板91が上述したコの字状をなす場合は、光学調整部101は、原稿サイズ検出位置への移動中であっても、スキャナーユニット20にシェーディング補正サンプリングを行わせ、ゲイン調整、及びオフセット調整を続行する。なお、この際に行われるシェーディング補正サンプリングのためにスキャナー部2が取得する白色基準板91の読取画像である白データについては、上述したように、出力値補完部102が原稿読取領域の出力値を補完することが好ましい。
【0058】
その後、スキャナー部2と原稿サイズ検出部82の検出結果を用いて制御部100が原稿サイズの検出を行う(ステップS17)。このとき、必要であれば、光学調整部101は、シェーディング補正を並行して実行する。この原稿サイズ検出及びシェーディング補正後、制御部100は駆動部7に対してスキャナーユニット20を原稿読取開始位置(ホームポジション)に移動させる(ステップS18)。原稿読取開始位置は、例えば
図3及び
図4に示すように、副走査方向において光学調整位置と原稿サイズ検出位置の間の位置に設定されている。
【0059】
一方、シェーディング補正中に開閉検知部81が原稿搬送部6の開閉を検知せず(ステップS13;NO)、シェーディング補正が終了した場合は(ステップS14;YES)、光学調整処理を終了する。
【0060】
以上、説明したように、白色基準板91を光学調整位置のみでなく、原稿サイズ検出位置においてもスキャナー部2が読取可能な位置に配置することで、コンタクトガラス161に原稿を載置又は差し替えのために光学調整処理中に原稿搬送部6が開閉されて開閉検知部81により当該開閉が検知され、これに基づいて、スキャナーユニット20が原稿サイズ検出位置まで移動して原稿サイズ検出が開始される場合であっても、当該原稿サイズ検出位置への移動後も、上記光学調整処理を引き続き行うことを可能としている。また、白色基準板91を原稿読取領域よりも外側であって光学調整位置から原稿サイズ検出位置までの間の領域にも配置した場合には、スキャナーユニット20が原稿サイズ検出位置に向けて移動している間であっても、シェーディング補正サンプリングを行うことが可能である。
【0061】
これにより、原稿サイズ検出の為の動作と、シェーディング補正のような光学調整処理を同時に行うことも可能であるため、光学調整部は、光学調整処理を中止する必要がなく原稿サイズ検出と並行して行うことも可能になり、スキャン開始のための準備動作にかかる時間が延びることが防止され、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0062】
更に、第2光学調整モードで光学調整処理が行われた場合、出力値補完部102が原稿読取領域の出力値を補完することで、第2光学調整モードでは、主走査方向における一部領域でしか白色基準板91の読取画像(白データ)を得られなくても、第1光学調整モードで得られる白色基準板91の読取画像に品質を近付けた読取画像を用いて光学調整を行うことが可能である。