(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スレンレス箔等の金属箔と鋼板等の金属板とを貼り合わせてなる金属箔ラミネート金属板は、剛性を有し加工性の良好な鋼板等の金属板の特性を備えながら、金属箔の優れた表面外観を呈し、かつ、そのような両者の特性を有する板材を安価に製造できるので、建物内装材や外装材等の建材、電子・電気機器、輸送機器、その他種々の分野で用いられている。
【0003】
この種の金属箔ラミネート金属板として、特許文献1の金属箔ラミネート金属板(接合鋼板)がある。この接合鋼板は、ステンレス等の表面板材とこれを支持する亜鉛メッキ鋼板等の支持板材とを相互接着させる接着樹脂層が0.02〜0.10mmの厚さを有し、2500〜4500cpsの粘性度を持つという接合鋼板である。
接着樹脂層が上記の所定の粘性度を維持することで、成型加工において接着樹脂層が割れないという効果を奏し、また、粘性度を有した接着樹脂層が制振性、断熱性、吸音性を増大させるという効果を奏するとされる。
【0004】
特許文献2の金属箔ラミネート金属板(化粧金属板)は、表面に凹凸模様を付与したアルミニウムやステンレススチールなどの金属箔と透明樹脂フィルムとを積層して化粧フィルムとし、この化粧フィルムを冷延鋼板などの金属板に積層した化粧金属板である。
金属箔を用いることで、基板が冷延鋼板などの安価な材料であっても、アルミニウム板やステンレス鋼板等の金属板表面と同等の外観が得られ、また、金属外観を得るために金属蒸着層を用いた化粧フィルムや化粧シートに比べて、金属層が腐食して色調が変化し外観が損なわれるということがない、等の効果が得られるとされる。
また、金属箔の裏面に樹脂フィルムによる裏打層を設けて、基板表面の凹凸が化粧フィルムの金属箔表面に出現することを防止している。また、金属箔の線膨張率に近い小さな線膨張率を有する樹脂フィルムを裏打層として用いた場合は、金属箔に裏打層を積層する際に金属箔にシワが生じにくいとされる。(段落番号[0012]等参照)
なお、この化粧金属板における金属箔は10〜15μmという極薄のもの(表1中の「金属箔」の「厚さ」参照)であり、化粧金属板の具体的な製造方法の記載はないが、仮にラミネートロールに通して連続的に製造する製造方法によるとすれば、それほど幅の広い化粧金属板を想定していないと思われる。
【0005】
特許文献3の金属箔ラミネート金属板(金属ラミネート鋼板)は、板厚0.2〜2.0mmの鋼板の片面もしくは両面に、防錆顔料を含有する2〜20μmの防錆合成樹脂層を有し、その上に5〜100μmの反応型ホットメルト系のナイロン樹脂接着剤層を有し、その上に板厚0.03〜0.5mmの金属箔層を有する、という金属ラミネート鋼板である。
防錆顔料の入った合成樹脂層と反応型ホットメルト系のナイロン樹脂接着剤との相乗効果により、優れた接着強度、加工性等が得られるとされる。金属箔と鋼板との接着強度は、特性試験結果によれば、常温180℃剥離試験で18〜34kg/25mmの接着強度が得られる(第3表、及び、第9頁左欄の「3.剥離試験」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記引用文献1の金属箔ラミネート金属板(接合鋼板)は、表面板材と支持板材を相互接合させる“接着樹脂層”が、両者を強固に接着接合するものではなく、所定の粘性度を持ついわゆる粘着剤による粘着剤層なので、経時劣化および粘着力の低下が生じる恐れがある。したがって、絞り等の加工をした際に、金属箔である表面板材に割れが生じる恐れがある。
【0008】
特許文献2の金属箔ラミネート金属板(化粧金属板)は、凹凸模様のある金属箔の上に透明樹脂フィルム層を設けた、特に外観に重点を置いた化粧板であるので、透明樹脂フィルムというコストアップとなる材料を用いている。
なお、特許文献2の発明の化粧板及び比較用化粧板の試料を作製して、両者を比較した特性評価(表2)において、100μm等の厚みのフィルムである裏打層を設けずに金属箔と金属板(電気亜鉛めっき鋼板)とを直接、接着剤で接着した試料(試料1、2)については、剥離が認められているので、接着強度が高いとは必ずしも言えない。
【0009】
特許文献3の金属箔ラミネート金属板(金属ラミネート鋼板)は、良好な接着強度、加工性等を得ているが、防錆顔料を含有する防錆合成樹脂層と反応型ホットメルト系のナイロン樹脂接着剤との相乗効果が必要で、コスト高となる。また、防錆顔料を含有する防錆合成樹脂層を用いるので、その影響で表面鮮鋭性が低いものとなる。
また、使用する接着剤がホットメルト系の接着剤であり、また、明細書中に例えば実施例1では「ナイロン樹脂接着剤層の上に厚さ0.2mmのSUS304ステンレス箔を重ねた後180℃で1.0分間予熱し、・・・加熱・加圧しながらこれらを1体に貼り合わせを行い、」と記載し、実施例6では「・・・3.0分間余熱した後、」と記載し、実施例7では「・・・5.0分間余熱した後、」と記載しているように、その製造方法は、いわゆるバッチ式であって、鋼板及び金属箔を連続的に供給して貼り合わせる一貫連続製造方法を採用するものではなく、高い生産性は得られない。
【0010】
本願発明者は、上記背景のもとで、金属箔としてステンレス箔を採用した場合において、優れた表面鏡面性を有するとともに、成形加工等の際に金属箔の剥離等の生じない金属箔接着強度を備え、安価に製造可能、かつ例えば板幅600〜1300mm等のものも製造可能な金属箔ラミネート金属板を得るべく、種々条件を考察し、試作、試験するなかで、適切な条件を見出して本発明を得たものである。
本発明は、優れた表面鏡面性を有するとともに、成形加工等の際に金属箔の剥離等の生じない金属箔接着強度を備え、安価に製造可能、かつ幅が広くても製造可能な金属箔ラミネート金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1の発明の金属箔ラミネート金属板は、予め熱硬化性接着剤を1〜5μmの厚みで塗布し指蝕乾燥または半硬化乾燥させた、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔と、前記熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をコーターにて10〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱した金属板とを、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせてなり、
前記ステンレス箔と金属板との貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上であることを特徴とする。
ここで、「指蝕乾燥」とは、塗料の乾燥状態の一つとして、JIS K 5600-1-1で規定されている用語であり、塗った面の中央に触れてみて、試料で指先が汚れない状態(set-to-touch)になったときをいう。
【0012】
請求項2は、請求項1の金属箔ラミネート金属板において、 前記金属板の表面粗度が中心線平均粗さRa<0.5またはピークカウントPPI>50であり、前記ステンレス箔と金属板とを、表面温度を70〜200℃にした金属製のラミネートロールで貼り合わせたことを特徴とする。
なお、前記中心線平均粗さRaとは、JIS−B0610で規定されている表面粗さである。
PPIとは、1インチ当りのピークカウント数(Peak Per Inch )であり、SAE911(アメリカ自動車技術者協会の規格)で規定されている表面粗さである。
【0013】
請求項3の発明の金属箔ラミネート金属板は、予め熱硬化性接着剤を1〜10μmの厚みで塗布し指蝕乾燥または半硬化乾燥させた、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔と、前記熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をコーターにて1〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱した金属板とを、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせてなり、
前記ステンレス箔と金属板との貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上であり、
前記ステンレス箔に塗布する前記熱硬化性接着剤の厚み、及び前記金属板に塗布する前記熱硬化性接着剤の厚みの合計は、11μm以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項4の金属箔ラミネート金属板の製造方法は、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔に、予め熱硬化性接着剤を1〜5μmの厚みで塗布し指蝕乾燥または半硬化乾燥させる工程と、金属板に、前記熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をコーターにて10〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱する工程と、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせる工程と、を有し、前記ステンレス箔と金属板との貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の金属箔ラミネート金属板の製造方法は、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔に、予め熱硬化性接着剤を1〜10μmの厚みで塗布し指蝕乾燥または半硬化乾燥させる工程と、金属板に、前記熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をコーターにて1〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱する工程と、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせる工程と、を有し、前記ステンレス箔と金属板との貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上であり、前記ステンレス箔に塗布する前記熱硬化性接着剤の厚み、及び前記金属板に塗布する前記熱硬化性接着剤の厚みの合計は、11μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステンレス箔の厚みが0.1〜0.2mmであること、金属板に接着剤を10〜20μmの厚みで塗布すること、金属板に塗布した接着剤と同成分の接着剤をステンレス箔の裏面に1〜5μmの厚みで塗布すること、接着剤を塗布した前記金属板を加熱する温度が150〜250℃であること、ラミネートロールで貼り合わせること、という諸条件が極めて適切な条件となっており、ステンレス箔と金属板とが十分高い接着強度で接着された金属箔ラミネート金属板が得られる。すなわち、貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上の金属箔ラミネート金属板が得られる。
厚い金属板だけでなく薄いステンレス箔の裏面にも同成分の接着剤を塗布するとともに、それぞれに適切な接着剤層の厚みを設定して両者を接合するので、上記のような高い接着強度が得られる。
両者が高い接着強度で接合されるので、曲げ加工や絞り加工、張出し加工等の成形加工において、ステンレス箔の剥離が生じることは少ない。
また、金属板とステンレス箔とをラミネートロールに連続的に供給して製造されるものなので、高い生産性で製造することができ、安価な金属箔ラミネート金属板が得られる。
また、ステンレス箔の厚みが0.1〜0.2mmの範囲であれば、例えば600〜1300mm等の幅の広いものであっても、金属板とともにラミネートロールに円滑に供給することができ、所望の金属箔接着強度及び表面鏡面性を有する金属箔ラミネート金属板を得ることができる。
【0017】
また、ステンレス箔は、金属板の表面の微細な凹凸の隠蔽性、及び、ラミネートロールに巻きつく適度なしなやかさを有しているので、例えば亜鉛メッキ鋼板等の金属板の表面粗度が中心線平均粗さRa<0.5またはPPI>50で、そして、請求項1の諸条件、及び、表面温度を50〜200℃にした金属製のラミネートロールで貼り合わせるという条件と相俟って、優れた表面鏡面性の金属箔ラミネート金属板が得られる。
すなわち、ステンレス箔の厚みが0.1mm未満であれば、金属板の表面の微細な凹凸を隠蔽することができず、金属箔ラミネート金属板の表面鏡面性が損なわれる。また、例えば、600〜1300mm等の幅の広いものをラミネートロールで金属板に円滑に貼り合わせることが容易でなくなる。
また、0.2mm超であれば、ステンレス箔がラミネートロールに巻き付くしなやかさを確保できず、ステンレス箔の表面性状を損なわずに金属板に円滑に貼り合わることが困難となる。このようにステンレス箔の厚み範囲0.1〜0.2mmは適切である。
また、この金属箔ラミネート金属板では、ステンレス単一材と同様にエッジングや研磨といった意匠性付与も可能であり、種々の製品におけるステンレス単一材使用部分に替えて使用して、外観品質を低下させることなくコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の金属箔ラミネート金属板を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)に本発明の金属箔ラミネート金属板10の断面構造を示す。本発明の金属箔ラミネート金属板10は、予め熱硬化性接着剤3(3a)を1〜5μmの厚みで塗布し指蝕乾燥させた、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔2と、前記熱硬化性接着剤3aと同成分の熱硬化性接着剤3(3b)をコーターにて10〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱した金属板1とを、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせた構造を有する。
図1(b)は(a)における接着剤塗布ステンレス箔2Aと接着剤塗布金属板1Aとを貼り合わせていない状態で示した図である。そして、前記ステンレス箔2と金属板1との貼り合せ密着強度は、25mm幅180℃ピール試験で50N以上である。なお、ステンレス箔2と金属板1との貼り合せ密着強度は、25mm幅180℃ピール試験で70N以上としてよい。
なお、金属板1には、必要があれば図示のように、主として接着剤との親和性のために予めクロメート処理等の化成処理(化成処理層5)をする。
【0021】
前記金属板1として、亜鉛めっき鋼板、冷延鋼板、アルミ合金板、ティンフリースチール、ステンレス板を用いることができる。金属板1は、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、0.4〜6.0mm程度の厚みaのものを適用することが好適である。
【0022】
金属板1に塗布する接着剤3(3a)及びステンレス箔2に塗布する接着剤3(3b)として、同成分の接着剤を用いる。例えば、分子鎖末端ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)を有する線状飽和熱可塑ポリエステル樹脂100質量部に対して、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物1〜25質量部を配して硬化させる、言わば熱硬化性ポリエステル樹脂を用いることができる。その他、接着剤としてアクリル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂接着剤を用いてよい。
【0023】
図2に本発明の金属箔ラミネート金属板を製造する工程を模式的に示す。
本発明の金属箔ラミネート金属板10を製造する場合、熱硬化性接着剤3(3a)を10〜20μmの厚みで塗布した金属板1(1A)をオーブン13を通して150〜250℃に加熱し、回転する上下一対のラミネートロール14(14a、14b)に供給する。なお、金属板1へ塗布する熱硬化性接着剤3の厚みは、10〜15μmの範囲としてよく、160〜210℃、より好ましくは170〜200℃で加熱してよい。これにより、より効果が顕著となる。
一方、予め、金属板1に塗布した前記熱硬化性接着剤3(3a)と同成分の熱硬化性接着剤3(3b)を1〜5μmの厚みで塗布し指蝕乾燥、または半硬化乾燥させた、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔2Aを同じくラミネートロール14に供給する。なお、ステンレス箔2Aへ塗布する熱硬化性接着剤3の厚みは、2〜4μmの範囲としてよく、これによってより効果が顕著となる。
ここで、「指蝕乾燥」とは、塗料の乾燥状態の一つとして、JIS K 5600-1-1で規定されている用語であり、塗った面の中央に触れてみて、試料で指先が汚れない状態(set-to-touch)になったときをいう。また。「半硬化乾燥」とは、同じく、塗料の乾燥状態の一つとして、JISK 5600-1-1で規定されている用語であり、塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態を言う。
前記接着剤付き金属板1Aと接着剤付きステンレス箔2Aとは、重ね合わせされた状態でラミネートロール14に供給され、ラミネートロール14で連続的に熱圧着され送り出されて金属箔ラミネート金属板10が得られる。
【0024】
金属板1への接着剤3(3a)の塗布は、例えば
図2に示したコーター15により行なうことができる。このコーター15は、接着剤3(3a)を収容した接着剤槽16と、この接着剤槽16内の接着剤に下部を浸漬させたピックアップロール17と、このピックアップロール17に接触する塗布ロール18と、塗布ロール18に対向するバックアップロール19とからなる。
金属板コイル1’から繰り出される金属板1が、対向するバックアップロール19と塗布ロール18との間を通過する際に、ピックアップロール17から接着剤3(3a)を受け取った塗布ロール18が金属板1を押し付けることで、塗布ロール18に付着した接着剤を金属板1に塗布する。
【0025】
ラミネートロール14の上側のロール14aは金属ロールとし、50〜200℃に加熱して、重ね合わせたステンレス箔2と金属板1とを熱圧着する。下側のロール14bは金属ロール又は樹脂ロールで、特に加熱する必要はない。
【0026】
本発明の金属箔ラミネート金属板は、ステンレス箔2の厚みが0.1〜0.2mmであること、金属板1に熱硬化性接着剤を10〜20μmの厚みで塗布すること、金属板に塗布した熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をステンレス箔2の裏面に1〜5μmの厚みで塗布すること、接着剤を塗布した前記金属板(接着剤塗布金属板1A)を加熱する温度が150〜250℃であること、ラミネートロール14による熱圧着で貼り合わせること、という諸条件が極めて適切な条件となっており、ステンレス箔2と金属板1とが十分高い接着強度で接着された金属箔ラミネート金属板10が得られる。
すなわち、貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上の金属箔ラミネート金属板が得られる。
厚い金属板1だけでなく薄いステンレス箔2の裏面にも同成分の熱硬化性接着剤を塗布するとともに、それぞれに適切な接着剤層の厚みを設定して両者を接合するので、上記のような高い接着強度が得られる。
両者が高い接着強度で接合されるので、曲げ加工や絞り加工、張出し加工等の成形加工において、ステンレス箔の剥離が生じることは少ない。
また、金属板とステンレス箔とを回転するラミネートロールに連続的に供給して製造されるものなので、高い生産性で製造することができ、安価な金属箔ラミネート金属板が得られる。
また、ステンレス箔2の厚みが0.1〜0.2mmの範囲であれば、例えば600〜1300mm等の幅の広いものであっても、金属板とともにラミネートロールに円滑に供給することができ、所望の金属箔接着強度及び表面鏡面性を有する金属箔ラミネート金属板を得ることができる。
【0027】
金属板1として、特に表面粗度が中心線平均粗さRa<0.5またはPPI>50のものを用いた場合、上述した条件の上で、ステンレス箔と前記表面粗度の金属板とを、表面温度を50〜200℃にした金属製のラミネートロールで貼り合わせると、表面平滑性の良好な金属箔ラミネート金属板を得ることができた。
ステンレス箔は、金属板の表面の微細な凹凸の隠蔽性、及び、ラミネートロールに巻きつく適度なしなやかさを有しているので、例えば亜鉛メッキ鋼板等で表面粗度が中心線平均粗さRa<0.5またはPPI>50のものを用いた場合、ステンレス箔の厚みが0.1mm未満であれば、金属板の表面の微細な凹凸を隠蔽することができず、金属箔ラミネート金属板の表面鏡面性が損なわれ、また、例えば、600〜1300mm等の幅の広いものをラミネートロールで金属板に円滑に貼り合わせることが容易でなくなる。また、0.2mm超であれば、金属箔がラミネートロールに巻き付くしなやかさを確保できず、ステンレス箔の表面性状を損なわずに金属板に円滑に貼り合わることが困難となる。しかし、ステンレス箔の厚み範囲0.1〜0.2mmであれば、その他の上述した条件と相俟って、そのような問題は発生せず、高い接着剤強度とともに、優れた表面鏡面性の金属箔ラミネート金属板が得られ、また、600〜1300mm等の幅の広い金属箔ラミネート金属板を得ることができる。
また、この金属箔ラミネート金属板は、ステンレス単一材と同様にエッジングや研磨といった意匠性付与も可能であり、種々の製品におけるステンレス単一材使用部分に替えて使用して、外観品質を低下させることなくコスト低減を図ることができる。
【0028】
変形例に係る金属箔ラミネート金属板においては、予め熱硬化性接着剤を1〜10μmの厚みで塗布し指蝕乾燥または半硬化乾燥させた、厚み0.1〜0.2mmのステンレス箔と、熱硬化性接着剤と同成分の熱硬化性接着剤をコーターにて1〜20μmの厚みで塗布し150〜250℃に加熱した金属板とを、それぞれの熱硬化性接着剤塗布面側を向かい合わせてラミネートロールに供給することで連続的に貼り合わせてなり、ステンレス箔と金属板との貼り合せ密着強度が、25mm幅180℃ピール試験で50N以上であってよい。また、この金属箔ラミネート金属板においては、ステンレス箔に塗布する熱硬化性接着剤の厚み、及び金属板に塗布する熱硬化性接着剤の厚みの合計は、11μm以上である。なお、ステンレス箔に塗布する熱硬化性接着剤の厚み、及び金属板に塗布する熱硬化性接着剤の厚みの合計は、15μm以上であってもよい。
[実施例1]
【0029】
上述した本発明の金属箔ラミネート金属板を得るために、種々の条件で製造した試料(金属箔ラミネート金属板)の特性を表1〜表6に示す。
各試料の金属板はいずれも、表面処理としてクロメート処理を施した溶融亜鉛めっき鋼板である。金属箔はステンレス箔である。
使用した接着剤は段落番号[0019]に記載の熱硬化性ポリエステル樹脂である。
接着強度試験はいずれも、JISZ0237に準拠した25mm幅180℃ピール試験で行なった。
接着強度を確認するために行なった張出し加工は、JIS Z 2247 エリクセン試験方法による6mm押し出しにて行ない、ステンレス箔に剥離が生じないかどうかを確認した。
【0030】
表1は、ラミネート温度の影響を調べた実験結果を示す。すなわち、金属板加熱温度をパラメータとして140℃〜255℃の範囲で種々変え、他の条件は概ね一定にして金属板(溶融亜鉛めっき鋼板)とステンレス箔とを貼り合わせた各種試料についてのものである。
この場合、金属板については、金属板の厚さが主として厚さ0.4mm(他の厚さは0.8〜2.3の試料が6つ)、接着剤厚みが10μmである。ステンレス箔については、板厚が0.1mm、接着剤厚みが1μmである。ラミネートロール温度は70℃である。
表1の接着強度の欄に記載の通り、金属板加熱温度が150℃未満の場合は、接着強度が40Nを大幅に下まわっており接着強度不足であり、また、250℃超の場合は、接着剤が固化し、接着不可であった。150℃〜250℃の範囲内の場合は、50N以上の接着強度が得られている。
張出し加工結果は150℃〜250℃の範囲内で良好な結果(○印)が得られ、その範囲より低温側及び高温側の場合に不良(×印し)となっている。
【表1】
[実施例2]
【0031】
表2は、ラミネートロール温度の影響を調べた実験結果を示す。すなわち、ラミネートロール温度をパラメータとして25℃〜200℃の範囲で種々変え、他の条件は概ね一定にして金属板とステンレス箔とを貼り合わせた各種試料についてのものである。
この場合、金属板については、金属板の板厚が主として0.4mm(他の厚さは0.6〜1.2mmの試料が4つ)、接着剤厚みが10μm、加熱温度が主として150℃(他の温度は160℃と180℃と190℃とが各1つ)である。ステンレス箔については、板厚が0.1mm、接着剤厚みが1μmである。
表2の接着強度の欄に記載の通り、ラミネートロール温度が70℃未満の場合は、ピール試験の接着強度が40Nを下まわっており接着強度不足である。200℃超とした場合、接着強度が低下する訳ではないが、上限が200℃の温度範囲とすれば、確実にかつ安定した接着強度を確保できるので、そしてそれ以上の高温は無駄なので、200℃超は採用しない。70℃〜200℃の範囲内の場合は、50N以上の接着強度が得られている。張出し加工結果は70℃以上で良好な結果(○印)が得られている。
【表2】
[実施例3]
【0032】
表3は、金属板接着剤厚みの影響を調べた実験結果を示す。すなわち、金属板に塗布する接着剤の厚みをパラメータとして
4μm〜20μmの範囲で種々変え、他の条件は概ね一定にして金属板とステンレス箔とを貼り合わせた各種試料についてのものである。
この場合、金属板については、金属板の厚さが主として厚さ0.4mm(他の厚さは0.8〜2.3の試料が5つ)、金属板加熱温度が150℃である。ステンレス箔については、板厚が0.1mm、接着剤厚みが1μmである。ラミネートロール温度は70℃である。
表3の接着強度の欄に記載の通り、金属板接着剤厚みが10μm未満の場合は、接着強度が40Nを下回っており接着強度不足であり、かつ、張出し加工結果も不良(×印)である。なお、20μmを越える接着は、接着強度には問題はないが、オーバースペックで無駄であり、採用しない。
張出し加工結果は10μm以下では不良(×印)であり、10μm〜20μmの範囲内で良好な結果(○印)が得られている。
【表3】
[実施例4]
【0033】
表4は、箔接着剤厚みの影響を調べた実験結果を示す。すなわち、ステンレス箔に塗布する接着剤の厚みをパラメータとして0〜5μmの範囲で種々変え、他の条件は概ね一定にして金属板とステンレス箔とを貼り合わせた各種試料についてのものである。
この場合、金属板については、金属板の厚さが主として厚さ0.4mm(他の厚さは0.8〜2.3の試料が5つ)、接着剤厚みが10μm、加熱温度が150℃である。ステンレス箔については、板厚が0.1mmである。ラミネートロール温度は70℃である。
表4の接着強度の欄に記載の通り、箔接着剤厚みが1μm未満の場合は接着不可であった。当然、張出し加工結果も不良(×印)である。箔接着剤厚みが1μm以上の場合に50N以上の接着強度が得られている。また、張出し加工結果も1μm以上で良好な結果(○印)が得られている。
なお、なお、箔接着剤厚みが5μmを越える接着は、接着強度には問題はないが、オーバースペックで無駄であり、採用しない。
【表4】
[実施例5]
【0034】
表5は、金属板表面粗度の影響を調べた実験結果を示す。すなわち、表1〜表4の表面粗度の欄にも記載している通り、それら実験におけるすべての試料について、金属板の表面粗度(Ra及びPPI)を測定しており、それらを一覧の表にまとめたものである。
表面粗度は前述のように、中心線平均粗さRaと、ピークカウントPPIとの両方を測定している。
表5の外観評価の欄に記載の通り、中心線平均粗さRa<0.5またはピークカウントPPI>50である場合に、表面平滑性が良好(○印)である。不良(×印)は表面性状がいわゆる“ユズ肌”となっている場合である。なお、結果としては、ピークカウントPPI>50という条件だけで表面平滑性が良否を判断できている。
【表5】
[実施例6]
【0035】
表6は、金属板接着剤厚みの影響及び箔接着剤厚みの影響を調べた実験結果を示す。すなわち、金属板に塗布する接着剤の厚みをパラメータとして1μm〜8μmの範囲で種々変えると共に、ステンレス箔に塗布する接着剤の厚みをパラメータとして4〜10μmの範囲で種々変えることによって金属板接着剤厚み及びステンレス箔接着剤厚みの合計を8〜13μmの範囲で種々変え、他の条件は概ね一定にして金属板とステンレス箔とを貼り合わせた各種試料についてのものである。
この場合、金属板については、金属板の厚さが厚さ0.4mm、金属板加熱温度が150℃または180℃である。ステンレス箔については、板厚が0.1mmである。ラミネートロール温度は70℃である。
表6の接着強度の欄に記載の通り、金属板接着剤厚み及びステンレス箔接着剤厚みの合計が11μm未満の場合は、接着強度が40Nを下回っており接着強度不足(あるいは接着しない)であり、かつ、張出し加工結果も不良(×印)である。一方、金属板接着剤厚み及びステンレス箔接着剤厚みの合計が11μm以上(且つ、金属板接着剤厚みは1〜10μm、ステンレス箔接着剤厚みは1〜20μm)の場合は、50N以上の接着強度が得られ、張出し加工結果も良好な結果(○印)が得られている。
【表6】