特許第6047571号(P6047571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047571
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】拡張可能な移植片
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   A61F2/44
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-526201(P2014-526201)
(86)(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公表番号】特表2014-531921(P2014-531921A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】US2012051083
(87)【国際公開番号】WO2013025876
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】61/523,981
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520330
【氏名又は名称】ストライカー・スピン
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】アルハイト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ,ブライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ボルジョニス,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ドロー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,クリスティン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0276899(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0253201(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/047230(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0140207(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0145455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な椎間移植片において、
各々が内面と外面とを有する上下プレートであって、細長開口が前記内面および前記外面を貫通しており前記上下プレートの前記内面は、互いに向き合っており、各々、傾斜面を有している上下プレートと、
前記上下プレートの前記内面間に位置するアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結され、前記上下プレートの前記内面間に位置する第1および第2の拡張部材であって、各々、そこから外方に延在する少なくとも1つの垂直突起を有している第1および第2の拡張部材と、
を備えており、
前記アクチュエータの第1の方向の回転によって、前記第1および第2の拡張部材を前記アクチュエータの長軸に沿って互いに向かう方移動させ、前記アクチュエータの第2の反対の方向の回転によって、前記第1および第2の拡張部材を前記アクチュエータの前記長軸に沿って互いに離れる方に移動させ、前記第1および第2の拡張部材が互いに向かう方または互いに離れる方に移動し、その結果、前記上下プレートの前記外面と直交する垂直軸に沿って互いに向かう方または互いに離れる方への前記上下プレートの移動をもたらすようになっており、前記上下プレートが前記垂直軸に沿って移動している間に、前記第1および第2の拡張部材の前記少なくとも1つの垂直突起は、前記上プレートまたは前記下プレートの前記細長開口の1つ内に少なくとも部分的に受け入れられ、かつ案内されるようになっていることを特徴とする、拡張可能な椎間移植片。
【請求項2】
前記第1および第2の拡張部材は、各々、少なくとも1つの横方向突起を備えており、前記横方向突起は、前記上下プレートの各々の前記傾斜面に隣接して位置する対応する横方向長孔内に受け入れられるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項3】
前記上下プレートは、各々、その前記内外面を貫通する開口を有していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項4】
第1および第2のポスト部材をさらに備えており、前記ポスト部材は、前記上下プレートの前記開口内に少なくとも部分的に受け入れられるようになっていることを特徴とする、請求項3に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項5】
第1および第2のナットをさらに備えており、前記第1のナットは、前記第1のポストを前記上プレートの1つの開口内に固定するために、前記第1のポストの遠位端に連結されており、前記第2のナットは、前記第2のポストを前記上プレートの他の開口内に固定するために、前記第2のポストの遠位端に連結されていることを特徴とする、請求項4に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項6】
前記上下プレートの少なくとも1つの前記内面は、前記アクチュエータの中間部分を収容するための第1の凹部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項7】
前記上下プレートの前記少なくとも1つの前記内面は、第2の凹部を有しており、前記第2の凹部は、前記アクチュエータの互いに向き合った第1および第2のディスクを収容するために、前記第1の凹部よりも大きい直径を有していることを特徴とする、請求項6に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項8】
前記アクチュエータは、第1および第2のネジ付き部分を備えており、前記第1および第2のネジ付き部分は、前記第1および第2の拡張部材のネジ山に係合するように構成された互いに逆向きのネジ山を有しており、これによって、前記アクチュエータが回転すると、前記第1および第2の拡張部材は、前記アクチュエータの長軸に沿って互いに反対の方向に移動するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項9】
前記上下プレートは、各々、前記上プレートまたは下プレートの端から外方に延在する突起を備えており、前記突起は、前記プレートの前記内外面間に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項10】
前記アクチュエータは、その端に係合ナットを備えており、前記係合ナットは、前記上下プレートの前記突起間に位置していることを特徴とする、請求項9に記載の拡張可能な椎間移植片。
【請求項11】
前記突起および前記係合ナットは、挿入器具の遠位端に係合するように適合されていることを特徴とする、請求項10に記載の拡張可能な椎間移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2011年8月16日に出願された米国仮特許出願第61/523,981号の出願日の利得を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、拡張可能な移植片およびこのような移植片の挿入のための工具に関する。さらに詳細には、本発明は、互いに向き合ったプレートを有する拡張可能な脊椎移植片であって、これらのプレートが楔部材および該プレートに設けられた隆起面によって拡張可能になっている、拡張可能な脊椎移植片に関する。移植片の移植に用いられる挿入器具、および該挿入器具を利用する方法も開示されている。
【背景技術】
【0003】
一般的な変性脊椎疾患、例えば、脊椎の椎間板の慢性変性は、患者にかなりの苦痛および不快さをもたらすことがある。場合によっては、この種の疾患は、外科的介入によって治療される必要がある。このような外科的介入の例として、移植片または他の同様の装置を用いることによって、疾患した椎間板を置換し、可能であれば、関連する椎体を融合させる手術が含まれる。特定の用途では、互いに隣接する椎体は、それらの椎体を固定した状態で保つために、移植片を介して、ネジ配置によって、および/または骨グラフト材料を用いることによって、融合される場合がある。このような装置が用いられる例示的な兆候として、制限されるものではないが、例えば、脊髄狭窄、椎間板の高さが不十分な変性椎間板疾患、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、後方すべり症、および椎間板性背痛が挙げられる。
【0004】
疾患した椎間板を置換し、かつ融合をもたらす場合、適切な間隔が椎体間に保持されることを確実にする必要がある。換言すれば、いったん移植片または同様の装置が互いに隣接する椎体間に配置されたなら、該移植片または装置は、切除された椎間板を介してすでに維持されている(例えば、その自然な状態にある)間隔を十分再現するべきである。この目的を果たすために、種々の拡張可能な移植片が設計されてきている。従って、外科医は、特定の椎間移植片の高さを調整することによって、椎体間の自然の間隔または任意の所望の移植片高さと一致するように、移植片の高さを手術中に適合させることが可能である。これによって、様々な患者の多様な解剖学的制約に適合させるのに必要な異なる移植片の数を減らすことができる。
【0005】
しかし、拡張可能な移植片のいくつかの部品、例えば、その一部をなすプレートは、伸張または移植時に、捻じれ力および/または圧縮力を受けることがある。場合によっては、移植片の拡張部材が、これらの力に対抗するためにプレートを互いに整合して保つのに役立つことがある。加えて、プレートに作用する捻じれ力の影響を阻止するために、ロッドまたは支持バーが用いられてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
拡張可能な椎間移植片の種々の形態が知られているが、改良された拡張可能な移植片であって、移植中に拡張可能であると共に、拡張可能な移植片のプレートを互いに整合させて保つための構造をもたらす、改良された拡張可能な移植片が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、内外面を備える上下プレートを有する拡張可能な椎間移植片であって、内面は、互いに向き合っており、各々、隆起面および隆起面に隣接して配置された凹部を有している拡張可能な椎間移植片を提供している。アクチュエータが、上下プレートの内面間に位置しており、第1および第2の拡張部材が、アクチュエータに連結され、上下プレートの内面間に位置している。一部の例では、第1および第2の拡張部材は、各々、そこから外方に延在する少なくとも1つの垂直突起を有している。アクチュエータの互いに反対の方向の回転によって、第1および第2の拡張部材をアクチュエータの長軸に沿って互いに向かう方および互いに離れる方に移動させ、その結果、長軸と直交する垂直軸に沿って互いに向かう方および互いに離れる方への上下プレートの移動をもたらすようになっているとよい。また、上下プレートが垂直軸に沿って移動している間に、第1および第2の拡張部材の少なくとも1つの垂直突起は、上プレートまたは下プレートの隆起面に隣接する凹部の1つ内に少なくとも部分的に受け入れられ、かつ案内されるようになっているとよい。
【0008】
第1の態様の実施形態では、第1および第2の拡張部材は、各々、少なくとも1つの横方向突起を備えていてもよく、横方向突起は、上下プレートの各々の隆起面に隣接して位置する対応する横方向長孔内に受け入れられるようになっているとよい。アクチュエータは、第1および第2のネジ付き部分を備えていてもよく、第1および第2のネジ付き部分は、第1および第2の拡張部材のネジ山に係合するように構成された互いに逆向きのネジ山を有しているとよく、これによって、アクチュエータが回転すると、第1および第2の拡張部材は、アクチュエータの長軸に沿って互いに反対の方向に移動するようになっているとよい。
【0009】
本発明の第2の態様では、内外面を有する上下プレートを備える拡張可能な椎間移植片であって、内面は、互いに向き合っており、各々、隆起面を有している拡張可能な椎間移植片が提供されている。アクチュエータが、上下プレートの内面間に位置しているとよく、第1および第2の拡張部材が、アクチュエータに連結され、上下プレートの内面間に位置しているとよい。第1および第2の拡張部材は、各々、外方に延在する少なくとも1つの突起を有する水平部分を有しているとよい。アクチュエータの互いに反対の方向の回転によって、第1および第2の拡張部材の水平部分を、アクチュエータの長軸に沿って互いに向き合う方および互いに離れる方に隆起面に沿って直線移動させ、その結果、長軸と直交する垂直軸に沿って互いに向き合う方および互いに離れる方への上下プレートの移動をもたらすようになっているとよく、水平部分の突起は、上下プレートが垂直軸に沿って移動するとき、各隆起面に隣接して位置する少なくとも1つの横方向長孔内に受け入れられるようになっているとよい。
【0010】
第2の態様のいくつかの実施形態では、上下プレートの内面は、各々、それぞれの隆起面に隣接する凹部を備えていてもよく、第1および第2の拡張部材は、各々、垂直軸に沿った上下プレートの移動中に凹部内において直線運動するように構成された垂直部分を備えていてもよい。他の実施形態では、第1および第2の拡張部材の水平部分は、そこから延在する少なくとも第1および第2の突起を有しており、第1の突起は、上プレートの隆起面に隣接して位置する横方向長孔内に受け入れられるようになっており、第2の突起は、下プレートの隆起面に隣接して位置する横方向長孔内に受け入れられるようになっている。横方向長孔は、各々、端末部分を備えていてもよく、第1および第2の突起は、第1および第2の拡張部材の互いに離れる方への移動を妨げるために、端末部分と相互作用するように構成されているとよい。
【0011】
本発明の主題およびその種々の利点は、添付の詳細な図面を参照して以下の説明を読むことによって、より十分に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-1B】本発明の一実施形態による拡張可能な移植片の収縮形態(図1A)および拡張形態(図1B)を示す、該移植片の斜視図である。
図2A-2B】図1Aおよび図1Bの移植片の断面図である。
図3A-3B】図1Aおよび図1Bの移植片の露出した状態にある上プレートおよび下プレートを、それぞれ、関連するプレートと並んで示される伸張機構と共に示す図である。
図4A-4B】拡張可能な移植片の移植、取外し、および伸張に用いられる器具の斜視図である。
図5A-5B】移植片に取り付けられた状態にある図4Aおよび図4Bの器具の斜視図である。
図6A-6B】移植片を移植するように設定された図4Aおよび図4Bの器具の斜視図である。
図7A-7B】移植片を伸張するように設定された図4Aおよび図4Bの器具の斜視図である。
図8A-8B】移植片から取り外されるように設定された図4Aおよび図4Bの器具の斜視図である。
図9】本発明による拡張可能な移植片の他の実施形態の分解図である。
図10A-10B】それぞれ、収縮した配置および拡張した配置にある図9の移植片の斜視図である。
図11A-11B】図10A−10Bの移植片の断面図である。
図12A-12B】それぞれ、図9の移植片の下プレートおよび上プレートの分解図である。
図13A-13B】本発明の一実施形態による代替的な拡張可能な移植片の斜視図(図13A)および該移植片と共に用いられる伸張機構の分解図(図13B)である。
図14図13Aの移植片の断面図である。
図15図13Aの移植片のプレートの1つの分解図である(他のプレートは、図示されているプレートと鏡面対象になっている)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に関して説明する際、明瞭にするために、専門用語が用いられることになる。しかし、本発明は、本明細書に用いられるどのような特定用語にも制限されることを意図しておらず、各特定用語は、同様の目的を果たすために同様に機能する全ての技術的な同意語を含んでいることを理解されたい。例えば、「上(top)」および「下(bottom)」という用語が本明細書に用いられるが、このような用語は、単に便宜的に用いられているにすぎず、開示される種々の移植片は、いくつかの方位に配置されてもよいことが見込まれており、このような空間的な用語が当てはまらない場合がある(例えば、逆になる場合がある)。
【0014】
図1A図3Bを参照すると、一部の例では椎間移植片として用いられる拡張可能な移植片10の一実施形態が示されている。拡張可能な移植片10は、概して、(1)互いに向き合って位置する上下プレート20,50と、(2)上下プレート20,50間に配置されたロッドまたは軸80と、(3)(例えば、移植中に)上下プレート20,50の傾斜面22,52のそれぞれに接触し、移植片10を拡張するための拡張部材100,102と、を有している。使用中、移植片10は、例えば、図4Aおよび図4Bに示されている器具120のような器具を用いることによって、互いに隣接する椎体間に挿入され、拡張されるようになっている。このシステムは、外科医、看護婦、または他の熟練の施術者(以下、ユーザーと呼ぶ)に対して、例えば、種々の変性疾患に有効となるように意図された介入手術に用いられる改良された拡張可能な移植片10をもたらすことになる。
【0015】
図1Aおよび図1Bを参照すると、上下プレート20,50は、外側骨接触面24,54およびこれらの外面24,54と反対側の内面26,56を備えている。一実施形態では、外側骨接触面24,54は、使用中に骨と係合するための歯、ノッチ、鋸歯、キール、または他の骨貫通特徴部28,58を備えている。上下プレート30,50の端は、一実施形態において、移植片10の移植を容易にするために、テーパ31,61が付されている。上プレート20は、図1Aに示されているように、例えば、骨内成長を容易にするためにまたは他の生体適合性材料を受け入れるために、多数の細長開口30も備えている。一部の例では、図3Aおよび図3Bにそれぞれ示されているように、上プレート20は、4つの細長開口30を備える一方、下プレート50は、2つの細長開口30しか備えていなくてもよい。また、図2Aおよび図2Bに示されているように、別の組の開口34,64が、ポスト36とナット38との構造体を受け入れるために、プレート20,50に形成されている。一実施形態では、上プレート20の開口34は、下プレート50の開口64の細長の特徴と比較して、略細くなっており、これによって、開口64におけるポスト36の運動を案内し、この運動を容易にすることができる。プレート20,50の各々は、一実施形態において鳩尾状に形作られた突起40,70も備えている。
【0016】
図3Aおよび図3Bにそれぞれ示されている上下プレート20,50の内面26,56は、各々、プレート20,50の中心の各側に傾斜面22,52を備えている。具体的には、図3Bを参照すると、下プレート50は、開口64を有する隆起中心72を備えており、該隆起中心72の両側が傾斜面52になっている。このような面52は、プレート50のそれぞれの端から隆起中心72に延在する方向に傾斜している。同様に、図3Aを参照すると、上プレート20は、開口34を有する凹部中心42を備えており、該凹部中心42の両側が傾斜面22になっている。さらに、このような面22は、プレート20のそれぞれの端から凹部中心42に延在する方向に傾斜している。従って、プレート20,50の傾斜面22,52は、一実施形態では、図3Aおよび図3Bに示されているように、互いに向かって収束している。
【0017】
プレート20,50の傾斜面22,52は、以下に詳細に説明するように、拡張部材100,102を案内するために、隣接する側壁44,74によって囲まれている。さらに、(1)隆起中心部72は、砂時計状構造82を収容するための切欠き78を備えており、(2)各プレート20,50の一端は、軸80の一部を収容するための半円筒状切欠き29,59を備えており、(3)鳩尾状突起40,70は、各々、軸80の他の部分を受け入れるための半円筒状開口25,55を備えている。また、プレート20,50の内面26,56は、軸80を収容するための溝27,57も備えている。
【0018】
図3Aおよび図3Bをさらに参照すると、軸80は、プレート20,50間に位置するようになっており、砂時計状部材82を備えている。また、第1および第2のネジ付き区域84,86は、砂時計状部材82の両側に配置されている。これらの区域84,86は、互いに逆向きの右ネジ山および左ネジ山を有している。換言すれば、一例として、ネジ付き区域84は、砂時計状部材82の一方の側に位置し、左ネジ山を備えており、ネジ付き区域86は、砂時計状部材82の反対の側に位置し、右ネジ山を備えているとよい。
【0019】
また、拡張部材100,102が、軸80に配置されている。このような部材100,102は、各々、ネジ付き区域84,86の1つを受け入れるための雌ネジ付き孔(図示せず)を備えている。いくつかの実施形態では、拡張部材100,102は、上下面108,110を備えている。これらの上下面108,110は、傾斜面22,52と反対に傾斜すると共に、互いに反対に傾斜している。換言すれば、図2Aおよび図2Bに詳細に示されているように、拡張部材100,102の上面108は、上プレート20の傾斜面22に同一平面をなして着座するように傾斜しており、拡張部材100,102の下面110は、下プレート50の傾斜面52に同一平面をなして着座するように傾斜しているとよい。従って、拡張部材100,102の上下面108,110は、楔を形成することになる。
【0020】
軸80の一端には、係合ナット90が設けられており、軸80の他端には、停止ナット94が設けられている。係合ナット90および/または停止ナット94は、いずれも、軸80にねじ込まれた別の部品であってもよいし、またはいくつかの実施形態では、軸80と一体に形成されていてもよい。係合ナット90は、器具120の一部への取付けのために、その外面に隆線または鋸歯96を備えており、停止ナット94は、拡張部材100,102の一部と相互作用するための滑らかな拡大外面を備えている。一実施形態では、係合ナット90の隆線は、トルクス(Torx)構造をもたらすものであるとよい。
【0021】
移植片10を組み立てるために、まず、上下プレート20,50が、内面26,56を互いに向き合わせて、互いに対向して配置されるとよい。拡張部材100,102、係合ナット90、および停止ナット94を備えるように予め組み立てられた軸80が、プレート20,50間において溝27,57内に配置されるとよい。この配置構成において、図2Aおよび図2Bに示されているように、拡張部材100,102の上面108は、上プレート20の傾斜面22に係合し、拡張部材100,102の下面110は、下プレート50の傾斜面52に係合する。さらに、係合ナット90は、鳩尾状突起40,70の半円筒上開口25,55によって包囲され、停止ナット94は、半円筒状開口29,59によって包囲される。(一部の例では、拡大ヘッド32を備える)ポスト36の端が下プレート50の開口64内に収容されるとよく、各開口64の停止面65によって、ヘッド32が開口64を完全に通り抜けるのが妨げられることになる(図2B)。ポスト36の(一部の例では、ネジ山を備える)他端が、上プレート20の開口34内に配置され、開口34内に収容されたナット38に係合されるとよい。従って、プレート20,50は、ポスト36を介して互いに接続されており、これによって、図2Aおよび図2Bの進行過程に詳細に示されているように、下プレート50の開口64内のヘッド32の運動を介する移植片10の拡張が可能になる。
【0022】
プレート20,50が前述のように一緒に接続され、かつ非拡張状態にある場合(図1A図2A)、下プレート50の隆起中心区域72は、上プレート20の凹部中心区域42内に収容されており、内面26,56の周囲が互いに接触している。さらに、軸80の砂時計状部材82は、下プレート50の切欠き78内に位置している。さらに、切欠き78内に延在する突起77が、砂時計状部材82の一部と係合しており、これによって、軸80をプレート20,50の長軸に沿って安定にしている(図3B)。
【0023】
この配向において、軸80の一方向の回転によって、(例えば、軸80の両端に向かう)拡張部材100,102の対応する外方移動が生じ、軸80の反対方向の回転によって、(例えば、砂時計状部材82に向かう)拡張部材100,102の内方移動が生じることになる。拡張部材100,102のこのような移動は、プレート20,50の傾斜面22,52と相互作用し、図2Aおよび図2Bに示されているように、(例えば、椎間腔内における)移植片10の対応する拡張または収縮をもたらすことになる。具体的には、概して、軸80の両端に向かう拡張部材100,102の移動によって、このような部材100,102がプレート20,50の傾斜面22,52上をずり上がり、これによって、移植片10の拡張をもたらすことになる。さらに、拡張部材100,102の上下面108,110が前述したように傾斜しているので、プレート20,50の移動は、略均一である。換言すれば、移植片10の拡張時に、それぞれの面がプレート20,50の外側骨接触面24,54に沿って引き込まれても、このような面は、(傾斜面22,52に対して同一平面をなす拡張部材100,102の上下面108,110によって)、互いに対して略同一方位を保つことになる。また、一実施形態では、前述の面(従って、外側の骨接触面24,54)は、互いに前湾角度で配置されることも考慮されている。これによって、もし互いに隣接する椎体の前湾が存在したとしても、該前湾に適切に対応することができる。このような前湾角度は、移植片10の拡張時にも維持されることになる。
【0024】
移植片10の前述の拡張中に、軸80が溝27,57内において回転し、具体的には、(1)砂時計状部材82が切欠き78内において回転し、(2)係合ナット90が半円開口25,55内において回転し、(3)停止ナット94が半円状開口29,59内において回転することになる。さらに、前述したように、軸80の回転時におけるネジ付き区域84,86の互いに逆向きのネジ山によって、拡張部材100,102は、互いに向かう方または互いに離れる方(すなわち、互いに反対の方向)に移動することになる。拡張部材100,102のこのような移動は、係合ナット90および停止ナット94、および砂時計状部材82によって制限されるようになっている。加えて、移植片10の拡張中、拡張部材100,102は、内面26,76の側壁44,74によって安定にされ、ポスト36が、移植片10の過剰な拡張を制限し、および/または阻止することになる。実際、拡張部材100,102がプレート20,50を互いに離れる方に移動させると、図2Bに示されているように、ポスト36のヘッド32が停止面65に接触するまで、ヘッド32がプレート50の細長開口64内において摺動することになる。従って、ポスト36は、移植片10の過剰な伸張を防ぐように作用する。さらに、ポスト36は、拡張時に移植片10を安定にするように機能する。何故なら、拡張中、ポスト36の区域が上下プレート20,50と係合しているからである。換言すれば、ポスト36は、一実施形態において、プレート20,50に対して捻じれ安定性および/または圧縮安定性をもたらすように機能することになる。
【0025】
従って、使用中、移植片10は、外側骨接触面24,54が隣接する椎体と係合するように、患者の椎間腔内に挿入され、次いで、このような移植片10は、前述したように拡張されることになる。この拡張の方法および椎間腔内への移植片10の挿入に関するさらなる詳細について、以下に述べることにする。
【0026】
図4Aおよび図4Bを参照すると、前述の移植片10と係合可能な器具120が示されている。器具120は、移植片10を治療部位(例えば、椎間腔内)に配置するために用いられるものである。器具120は、概して、(1)スリーブ128によって覆われているシャフト122と、(2)遠位端124および近位端126と、(3)係合ナット90に係合するためのソケット130と、(4)ソケット130に接続された回転可能なハンドル132であって、(例えば、器具120が係合ナット90に係合されたとき)、ハンドル132の回転によって、ソケット130の回転および移植片10の拡張がもたらされるようになっているハンドル132と、を備えている。器具120の遠位端124は、フィンガー134,136も備えている。これらのフィンガー134,136は、鳩尾状突起40,70と係合可能であり、器具120の近位端126に隣接して位置するノブ138を介して作動されるようになっている。従って、器具120は、以下にさらに詳細に説明するように、移植片10の挿入および/または拡張に有用な工具をユーザーにもたらすことになる。
【0027】
図4Aを参照すると、器具120のハンドル132は、概して器具120のシャフト122内において該シャフト122に沿って延在するロッド(図示せず)に接続されているとよい。ロッドは、器具120の遠位端124まで延在しており、ソケット130内で終端するようになっているとよい。ソケット130は、一実施形態では、係合ナット90に係合するように構成されている。場合によっては、ソケット130は、トルクス構造を有する係合ナット90に係合するために、トルクス式ソケットであってもよい。また、別のハンドル142が近位端126に隣接して設けられていてもよい。このようなハンドル142は、器具120から略外方に延在している。器具120は、グリップ144も備えている。ハンドル142およびグリップ144によって、ユーザーは、椎間腔内への移植片10の挿入中、器具120を効果的に把持することができる。
【0028】
図4Aは、近位端126に隣接するノブ138をさらに示している。ノブ138は、シャフト122の長軸を中心として回転可能になっている。ノブ138の内部は、スリーブ128に接続されたアクチュエータ(図示せず)と協働するための雌ネジ山を備えている。ノブ138内の雌ネジ山は、ノブ138の一方向の回転時にアクチュエータおよびスリーブ128が遠位端124に向かって長手方向に移動するように、かつノブ138の反対方向の回転時にアクチュエータおよびスリーブ128が近位端126に向かって長手方向に移動するように、構成されているとよい。
【0029】
工具120が位置する特定のモード(例えば、「移植」モード、「伸延」モード、または「取外し」モード)を器具120のユーザーに示すために、図4Bに拡大して示されているように、観察窓148が器具120に設けられている。指針150が観察窓148内に収容されており、一連のマーク153が窓148に隣接して位置している。さらに、一実施形態では、器具120が位置するモードをユーザーを示すために、語句または他の情報が、観察窓148およびマーク152に近接して設けられていてもよい。
【0030】
図5Aおよび図5Bを参照すると、器具120のシャフト122の遠位端124は、弾性フィンガー134,136を備えている。弾性フィンガー134,136は、シャフト122の両側に沿って延在しており、シャフト122の溝(図示せず)内に位置している。各フィンガー134,136は、移植片10の突起40,70に係合するために、略傾斜面154を有する端を備えている。一実施形態では、フィンガー134,136は、突起40,70の鳩尾形状に適合するように形作られているとよい。
【0031】
図5Aおよび図5Bをさらに参照すると、使用中、器具120の遠位端124は、器具120のソケット130が係合ナット90に取り付けられるように、移植片10の鳩尾状突起40,70に隣接して配置されるとよい。詳細には、図5Aおよび図5B間の進行過程に示されているように、スリーブ128が後退位置にある状態で、弾性フィンガー134,136が突起40,70の周りに挿入されるとよい。スリーブ128のこのような位置は、一実施形態では、図8Aに示されている「取外し」モードに対応する。フィンガー134,136が突起40,70の周りに挿入されるとき、これらのフィンガー134,136は、突起40,70の形状を包み込むように、外方に直線移動する。フィンガー134,136が突起の周りに完全に挿入された後、傾斜面154は、突起40,70の形状内に着座するかまたは該形状を包み込むことになる。換言すれば、フィンガー134,136がシャフト122の溝内にとどまるように付勢されているので、フィンガー134,136が突起40,70の周りに挿入された後、フィンガー134,136は、それらの移動前の通常の状態に戻り、突起40,70の形状に適合することになる。これは、図5Bに詳細に示されている。
【0032】
次いで、ソケット130が係合ナット90に接続され、かつフィンガー134,136が突起の周りに位置した状態で、図6Aおよび図6Bに示されているように、器具120のスリーブ128が移植片10に接触するまで、スリーブ128がノブ138によって長手方向に直線移動されるとよい。スリーブ128のこの位置は、器具120の「移植」モードに対応し、これは、観察窓148内の指標150の移動によって表示されることになる。具体的には、スリーブ128の移動によって、指標150が窓148内において移動し、これによって、指標150が、図6Aに示されているように、器具120の「移植」モードに対応するマーク152と真っ直ぐに並ぶことになる。さらに、スリーブ128が前述したように長手方向に移動すると、フィンガー134,136が突起40,70に対して圧縮され、これによって、器具120を移植片10に固定することになる。次いで、移植片10が器具120によって椎間腔内に挿入され、外側骨接触面24,25が上下椎体に係合することになる。移植片10の移植のアプローチは、一部の例では、後方アプローチまたは後側方アプローチであるとよいが、他のアプローチも考慮されている。いくつかの実施形態では、椎体は、移植片10の移植の前に、従来の脊椎手術に従って、(例えば、切除器具によって)前処理されてもよい。また、移植片10の移植中、プレート20,50のテーパ端31,61が、挿入器具120による移植片10の椎間腔内への挿入をより容易にすることも見込まれている。加えて、一実施形態において、もし隣接する椎体の前湾が存在するなら、プレート20,50間の前湾角が、この前湾を調整するようになっていてもよい。
【0033】
いったん挿入された移植片を伸張させるために、器具120は、「伸張」モードに配置されるとよい。図7Aおよび図7Bを参照すると、これは、ノブ138を一方向に回転させ、アクチュエータおよびスリーブ128を器具120の近位端126に向かって移動させることを含んでいる。スリーブ128が近位端126に向かって移動すると、指標150も観察窓148内において移動し、「伸張」モードに対応する特定マークと真っ直ぐに並ぶことになる。従って、ユーザーは、ノブ138の回転によっていつ器具120が「伸張」モードに配置されたかを知ることができる。スリーブが近位端126に向かって十分な距離だけ後退すると、フィンガー134,136と突起40,70との間からいくらかの圧力が除かれ、これによって、フィンガー134,136によって妨げられるとなく、プレート20,50を互いに離れる方に移動させることができる。換言すれば、移植片10の伸張を可能にするために、フィンガー134,136が突起40,70および移植片10を依然として保持する状態を保ちながら、それらの間の圧力がいくらか弱められるように、スリーブ128が近位端126に向かって後退されることになる。このような伸張を達成するために、ユーザーは、簡単にハンドル132(図4A)を回転させ、ソケット130を係合ナット90内において回転させればよい。前述のように、係合ナット90のこの回転によって、拡張部材100,102がプレート20,50の隆起面22,52と相互作用し、プレート20,50を互いに離れる方に押すことになる。このようなプレート20,50の伸張によって、隣接する椎体の伸張がもたらされることになる。従って、移植片10は、種々の手術中にまたは様々な患者に対して、必要に応じて、異なる程度の椎間間隔に適応することができる。前述したような拡張状態にある移植片10は、図7Bに示されている。
【0034】
図8Aおよび図8Bを参照すると、移植片10が椎間腔内に挿入された状態で、器具120は、ここでも観察窓148内における指標150の移動によって示される「取外し」モードに配置されるとよい。具体的には、ノブ138が一方向に回転され、スリーブ128を器具120の近位端126に向かって移動させ、それに応じて、指標150を移動させることになる。さらに、近位端126に向かうスリーブ128の移動中、フィンガー134,136は、完全に離脱され、これによって、器具120が突起40,70の周りから取り外されるとき、弾性的に外方に変形することが可能になる。次いで、器具120は、手術部位から取り外され、移植片10は、残留し、隣接する椎体の融合をもたらすことになる、改良された融合を達成するために、骨片、合成グラフト材料、または他の生体適合性材料が、移植片10の移植前または移植中に椎間腔内に挿入されることも考慮されている。このような材料は、内部成長のために設けられたプレート20,50の開口(例えば、開口30)に付着されてもよい。
【0035】
代替的な実施形態の移植片210が、図9に示されている。移植片10,210のそれぞれの構造は、互いに類似しているので、同様の番号が同様の要素を指すものとし、主に移植片10,210の構造的な違いのみに限って説明する。従って、以下に述べる顕著な特徴を除けば、移植片10,210は、同一の構造を有しており、同じ目的を果たすために同じように(例えば、前述したように)機能することが意図されている。
【0036】
図9を参照すると、移植片210は、上下プレート220、250を備えている。このようなプレートは、とりわけ、(1)外側骨接触面224,254および反対側の内面226,256と、(2)一実施形態では鳩尾状である突起240,270と、(3)ポスト236およびナット238を受け入れるための開口234,264と、(4)凹部中心部242および隆起中心部272と、(5)拡張部材300,302に係合するための傾斜面222,252と、を備えている。移植片10と同様の他の特徴部が、移植片210内に存在していてもよく、ここでは詳細に説明しないが、このような特徴部は、図において同様の参照番号によって示されている。
【0037】
以下、移植片210のいくつかの際立った特徴について説明する。このような特徴は、拡張可能な移植片210の作動を改良するものである。図9を参照すると、移植片210は、上下プレート220,250間に配置された軸280を備えている。軸280は、移植片10の砂時計状部材80といくらか形状が異なる中心部材282を備えている。この場合も、軸280の中心部材282は、図12Aに詳細に示されているように、下プレート250に形成された切欠き402に係合するための互いに向き合ったディスク400と、切欠き278内に着座するために縮小径を有する中心部分を備えている。中心部材282が前述のように下プレート250に配置されると、軸280は、移植片10の軸80と同じように、(例えば、互いに向き合ったディスク400および切欠き402の相互作用によって)、プレート250に対して長手方向に安定にされることになる。
【0038】
移植片210は、拡張部材300,302も備えている。拡張部材300,302は、図11Aおよび図11Bに示されているように、拡張部材100,102を参照して説明したように傾斜した上下面308,310を有している。しかし、拡張部材300,302は、そこから外方に延在する垂直突起312,314も備えている。また、拡張部材300,302は、該部材300,302の両側から延在するある組(一組または複数組)のピン316も備えている。拡張部材300,302の垂直突起312,314は、上下プレート220,250に形成された細長開口230内に受け入れられるようになっている。このような開口230は、移植片210の拡張中、垂直突起312,314の直線移動を可能にするように構成されている。拡張部材300,302のピン316は、図9図12Aおよび図12Bに詳細に示されているように、移植片210の拡張中、拡張部材300,302を案内するために、傾斜面222,252に隣接して位置する側壁244,274内に形成された長孔318に沿って移動するようになっている。
【0039】
使用中、移植片210は、移植片10と全く同じように、移植され、および/または拡張されるようになっている。具体的には、移植片210と共に適切に操作し、かつ移植片210に係合するために、また移植の後にこのような移植片2102を伸張するために、挿入器具120は、いくらか修正されることが意図されている。例えば、移植片210の係合ナット290は、図では、六角ナット290(図9図11Aおよび図11B)として示されているが、トルクス構造を備えていてもよいことも考慮されている。従って、器具120のソケット130は、移植片10に関連して説明したように、このトルクス構造に対応し、係合ナット290に係合するように修正されるとよい。厳密にいえば、このように修正されたソケット130は、係合ナット290の周りに挿入され、次いで、移植片210を拡張するために、ハンドル132によって回転されることになる。また、器具120は、前述したように、係合時、伸張時、および/または移植片210からの分離時に、種々のモード(例えば、「移植」モード、「伸張」モード、および/または「取外し」モード)に配置されることも意図されている。しかし、重要なことは、器具120を用いる移植片210の拡張中に、移植片210のいくつかの構造は、より安定にするように改良された伸張手順をもたらすように、異なって作動することである。
【0040】
一実施形態では、図9図12Aおよび図12Bを参照すると、ソケット130と係合ナット290との間の相互作用による移植片210の拡張中、拡張部材300,302は、傾斜面222,252に係合するが、ネジ付き区域284,286の互いに逆向きのネジ山による拡張部材300,302の分離中、拡張部材300,302から延在するピン316が、上下プレート220,250のそれぞれの側壁244,274に形成された長孔318に沿って移動することになる。ピン316と長孔318との係合は、拡張部材300,302の移動を安定にするように作用し、また移植片210の拡張を制限するようにも働く。実際、長孔318は、側壁244,274の一区域において終端し、ピン316は、移植片316が完全に拡張したとき、この区域に当接し、拡張部材300,302の(例えば、互いに離れる方向における)さらなる移動を妨げることになる。一実施形態では、ピン316は、拡張部材300,302のそれぞれの両側の対角線上の位置に配置されている。しかし、追加的なピン316が、(例えば、拡張部材300,302の4つのコーナの全て)に用いられることも考慮されている。また、ピン516と長孔518との係合は、伸長中に、プレート220,250を互いに整合させるように機能する。
【0041】
細長開口230の形態にある追加的な安定化特徴部および/または拡張制限特徴部が移植片210内に設けられている。具体的には、図10A図11Bを参照すると、器具120を用いる移植片210の拡張中に、拡張部材300,302の垂直突起312,314が、上下プレート220,250の細長開口230と相互作用し、このような部材300,302およびプレート220,250を安定にする。図10Aおよび図10B図11Aおよび図11Bの進行過程に示されているように、垂直突起312,314は、プレート220,250の細長開口230内に配置されており、移植片210の拡張時に、垂直突起312,314は、開口230内において直線運動し、これによって、伸長中に、プレート220,250および拡張部材300,302が安定化されることになる。開口230の端に達したとき、拡張部材300,302は、さらなる外方移動が制限されることになる。また、開口230は、移植片10の開口30と同様、移植片210の移植時に隣接する椎体の融合を容易にするために、骨グラフトまたは他の骨誘導性材料を受け入れるようになっているとよい。ここでは詳細に説明しないが、移植片210の移植および/または拡張に関するステップの残り、および器具120との相互作用は、移植片10に関して前述したものと実質的に同じである。
【0042】
拡張可能な移植片の他の実施形態である移植片410が、図13A図15に示されている。ここでは、同様の番号は、同様の要素を指すものとし、移植片10,210,410の構造的な違いについて説明する。従って、前述したように、以下に説明する際立った特徴を除けば、移植片10,210,410は、同じ構造を有しており、同じ目的を果たすために同じように機能することが意図されている。ここでは、図15が上プレート420しか示していないが、下プレート450は、上プレート420に対して鏡面対称になってので、図15は、両プレート420,450を正確に表していることになる(例えば、同様の参照番号は、同様の要素を指している)ことに留意されたい。
【0043】
図13Aおよび図15を参照すると、移植片410は、上下プレート420,450を備えている。上下プレート420,450は、移植片10,210と全く同様に、拡張部材500,502に係合するための傾斜内面422,452を有している。さらに、移植片410の拡張部材500,502は、プレート420,450の細長開口430に係合するための垂直突起512,514も備えており、これによって、移植片410の拡張時に、垂直突起512,514は、開口430内において直線運動することになる。移植片10,210と同様の他の特徴部、例えば、(1)歯または鋸歯428,458を有する外側骨接触面424,454と、(2)プレート420,450のテーパ端431,461と、(3)鳩尾状突起440,470と、(4)プレート420,450の側壁444,474の長孔518と、5)長孔518に係合するためのピン516を備える拡張部材500,502と、が移植片410に設けられている。さらに、移植片410の伸張機構のような他の特徴部は、移植片10,210とは異なるように作動するようになっている。
【0044】
図13Bを参照すると、移植片410の伸張機構は、ロッドまたは軸480と、捕捉機構530と、閉込めリング532とを備えている。軸480は、軸80,280と同様、一実施形態ではネジが切られており、左ネジ山および右ネジ山を有する分離した区域484,486を備えている。係合ナット490の構造体が、軸480の一端に配置されており、軸の中心は、半径方向に延在するフランジ534および圧入領域536を備えている。
【0045】
捕捉機構530は、軸480の一部を受け入れるための一組の開口538,540および閉込めリング532を受け入れるための長孔542を備えている。長孔542は、該長孔内にいったん配置された閉込めリング532および軸480の自由な運動を可能にするように寸法決めされている。一実施形態では、捕捉機構530の開口538は、フランジ534が開口538内に受け入れられることを可能にするために、開口540よりも大きい直径を有している。さらに、各開口538,540は、閉込めリング532の外径よりも小さい直径を有している。特定の実施形態では、閉込めリング532は、圧入領域536が閉込めリング532内に挿入されたとき、それらの間に寸法的干渉が生じるような内径を備えているとよい。
【0046】
移植片10,210,410のそれぞれの伸張機構間の違いを別として、移植片410は、図14に示されているように、捕捉機構530の一部を受け入れるための開口550を有するプレート420,450を備えている。プレート420,450の内面426,456は、図15に示されているように、長手方向において捕捉機構530(従って、軸480)を安定にするための構造(例えば、ハウジング560)を備えている。一実施形態では、プレート420,450は、ピン516が挿入される開口520も備えている。同様に、拡張部材500,502は、ピン516を受け入れるための開口522を備えている。
【0047】
使用中、移植片410の伸張機構は、軸480が、図14で示されているように、捕捉機構530内の閉込めリング532を貫通するように、プレート420,450間に配置されることになる。具体的には、閉込めリング532は、捕捉機構530の長孔542内に配置され、軸480は、開口538,540を貫通することになる。厳密にいえば、圧入領域536が閉込めリング532内に位置し、かつフランジ534が開口538内に収容されて閉込めリング532に当接するまで、軸480は、閉込めリング532を通して挿入されることになる。この配向において、圧入領域536は、閉込めリング532と相互作用し、このような構造間に寸法的干渉をもたらし、これによって、軸480は、捕捉機構530内にしっかりと保持されることになる。厳密にいえば、フランジ534と閉込めリング532との間の相互作用によって、軸480の一方向の運動が妨げられ、圧入領域536、閉込めリング532、および長孔542の協働によって、軸80の反対方向の運動が妨げられることになる。前述したように軸が捕捉機構530内に配置されたあと、捕捉機構530がプレート420,450の開口550内に挿入されることになる。
【0048】
捕捉機構530、軸480、および拡張部材500,502は、前述したように、プレート420,450の内面426,456を互いに向け合って、プレート420,450間に配置されるとよく、ピン516がプレート420,450の開口520を通って、拡張部材500,502の開口522内に挿入されるとよい、実際には、ピン516は、拡張部材500,502の開口522内に圧入され、これによって、ピン516は、拡張部材500,502内にしっかりと保持されることになる。また、ピン516は、長孔518内において移動し、拡張部500,502の移動を制限するように設計されていると共に、このようなピン516は、プレート420,450を互いにしっかりと接続させるように機能する。換言すれば、各拡張部材500,502の少なくとも1つのピン516が上プレート420の長孔518に係合し、少なくとも1つのピン516が下プレート450の長孔518に係合すると、このようなプレート420,450は、ピン516と長孔518との相互作用によって、一緒にしっかりと保持されることになる。長孔518の端末部分は、移植片210に関して前述したように、移植片410の過剰な拡張を妨げるように機能する。
【0049】
移植片410は、(例えば、移植および/または伸張を目的として)移植片10,210と同じように、器具120と相互作用する。例えば、係合ナット490に対するハンドル132の一方向の回転によって、拡張部材500,502が外方に移動し、ピン516が長孔518に係合する。拡張部材500,502のこのような移動によって、移植片10,210と同じように、プレート420,450の外方移動または伸張がもたらされることになる。ハンドル132をさらに回転させると、拡張部材500,502のピン516が長孔518の端末部分と係合し、拡張部材500,502のさらなる外方運動が阻止されることになる。
【0050】
さらに、拡張部材500,502の前述の運動中、垂直突起512,514は、プレート420,450の開口430内において直線移動し、プレート420,450の開口550は、捕捉機構530と相互作用している。換言すれば、(例えば、器具120を用いることによって)、拡張部材500,502が傾斜面422,522と係合し、移植片410を伸張させると、プレート420,450の開口550が、捕捉機構530の部分に沿って摺動し、垂直突起512,514が開口430内において直線運動し、ピン516が長孔518内において移動することになる。従って、拡張部材500,502のこのような移動は、伸張中、移植片410を安定にするように作用する。例えば、垂直突起512,514と開口430との相互作用、および開口550と捕捉機構530との相互作用によって、伸張中に捻じれ安定性および/または圧縮安定性を移植片410にもたらし、ピン516は、伸張制限特徴部として作用する。従って、移植片10,210と同じように、移植片410は、椎間板の置換中に、安定性を維持するための改良された特徴および/または伸張を制御するための改良された特徴を拡張可能な移植片にもたらすことになる。
【0051】
図面に示されている装置では、特定の構造が、本発明による拡張可能な移植片の移植、伸張、および/または取外しに用いられるように適合されたものとして、図示されている。しかし、本発明は、このような目的を果たすためのどのような代替的構造、例えば、種々の長さ、形状、および/または構成を有する構造の使用も考慮している。例えば、前にも示唆されているように、いくつかの構造は、ソケット130および係合ナット90,290,490(例えば、トルクスまたは六角形)に対して用いられているが、様々の異なるソケット/ナットの組合せ、例えば、正方形、三角形、などが用いられることも考慮されている。
【0052】
加えて、傾斜面22,52,222,252,422,452は、主に平坦なものとして図面に示されているが、移植片10,210,410の拡張を容易にするために、傾斜面22,52,222,252,422,452は、一実施形態では湾曲したものであってもよいことも考慮されている。拡張部材100,102,300,302,500,502の上下面108,110,308,310,508,510は、同様に、移植片10,210,410に関して前述したように、傾斜面22,52,222,252,422,452の湾曲に適合するように形作られていてもよい。
【0053】
本発明を特定の実施形態を参照してここに説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、例示的実施形態に対して多くの修正がなされてもよいこと、および添付の請求項に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。
【0054】
種々の従属請求項および該請求項に記載されている特徴は、元の請求項に記載されているのと異なる方法によって組み合わされてもよいことを理解されたい。また、個々の実施形態と関連して記載されている特徴は、記載されている実施形態の他の特徴と共有されてもよいことも理解されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15