(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視した場合の前記複数の圧電素子の質量分布が、前記全ての対称軸に対して非対称となるように、前記複数の圧電素子の少なくとも1つの厚みが、他の前記圧電素子の厚みと異なっていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の音響発生器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する音響発生器、音響発生装置および電子機器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る音響発生器の構成について、
図1Aおよび
図1Bを用いて説明する。
図1Aは、本実施形態に係る音響発生器1の構成を示す模式的な平面図であり、
図1Bは、
図1AのA−A’線断面図である。
【0011】
なお、説明を分かりやすくするために、
図1Aおよび
図1Bには、3次元の直交座標系を示している。また、
図1Aにおいては、樹脂層7の図示を省略している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
【0012】
また、同じく説明を分かりやすくするために、
図1Bは、音響発生器1をZ軸方向に大きく誇張して示している。
【0013】
図1Aに示すように、本実施形態に係る音響発生器1は、枠体2と、振動板3と、複数個の圧電素子5と、樹脂層7とを備える。
【0014】
なお、
図1Aに示すように、本実施形態では、音響発生器1が2個の圧電素子5を備えた場合を主に例示するが、複数個であればよく、3個以上であってもよい。また、本実施形態では、2個の圧電素子5は、明記しない限り同一形状であるものとして説明を進める。
【0015】
枠体2は、矩形の枠状の同じ形状を有する2枚の枠部材2a,2bによって構成されており、振動板3の周縁部を挟み込んで振動板3を支持する支持体として機能している。枠体2の厚みや材質などは、特に限定されるものではない。金属や樹脂など種々の材料を用いて枠体2を形成することができる。例えば、機械的強度および耐食性に優れるという理由から、厚さ100〜1000μm程度のステンレス製のものなどを枠体2として好適に用いることができる。
【0016】
振動板3は、フィルム状の形状を有しており、張力が加えられた状態で、その周縁部が枠体2に挟まれて固定されている。なお、振動板3のうち、枠体2よりも内側に位置する部分、すなわち、振動板3のうち枠体2に挟まれておらず自由に振動することができる部分を振動体3aとする。したがって、振動体3aは、枠体2の内側の略矩形状をなす部分であり、枠体2の内側に振動可能に設けられている。
【0017】
また、振動板3は、樹脂や金属等の種々の材料を用いて形成することができる。例えば、厚さ10〜200μm程度のポリエチレン、ポリイミド等の樹脂フィルムで振動板3を構成することができる。なお、振動板3が充分な剛性を有する場合には、枠体2を有さなくても構わない。
【0018】
圧電素子5は、振動体3aの表面に複数個取り付けられており、電圧の印加を受けて振動することによって振動体3aを励振する励振器として機能している。圧電素子5は、上下の主面が矩形の板状の形状を有している。圧電素子5は、4層の圧電体層31(31a,31b,31c,31d)と3層の内部電極層32(32a,32b,32c)とを交互に積層してなる積層体33と、この積層体33の上下両面に形成された表面電極層34、35と、積層体33の長手方向(Y軸方向)の端部に設けられた、第1〜第3の外部電極とを含んでいる。
【0019】
第1の外部電極36は、積層体33の−Y方向の端部に配置されており、表面電極層34、35と、内部電極層32bとに接続されている。積層体33の+Y方向の端部には、第2の外部電極37と、第3の外部電極(図示せず)とが、X軸方向に間隔を開けて配置されている。第2の外部電極37は、内部電極層32aに接続されており、第3の外部電極(図示せず)は、内部電極層32cに接続されている。
【0020】
第2の外部電極37の上下端部は、積層体33の上下面まで延設されてそれぞれ折返外部電極37aが形成されており、これらの折返外部電極37aは、積層体33の表面に形成された表面電極層34、35に接触しないように、表面電極層34、35との間で所定の距離を隔てて延設されている。同様に、第3の外部電極(図示せず)の上下端部は、積層体33の上下面まで延設されてそれぞれ折返外部電極(図示せず)が形成されており、これらの折返外部電極(図示せず)は、積層体33の表面に形成された表面電極層34、35に接触しないように、表面電極層34、35との間で所定の距離を隔てて延設されている。
【0021】
そして、圧電体層31(31a,31b,31c,31d)は、
図1Bに矢印で示す向きに分極されており、圧電体層31a、31bが縮む場合には圧電体層31c、31dが延びるように、そして、圧電体層31a、31bが延びる場合には圧電体層31c、31dが縮むように、第1の外部電極36、第2の外部電極37および第3の外部電極に電圧が印加される。このように、圧電素子5は、バイモルフ型の圧電素子であり、電気信号が入力されるとY軸方向に振幅が変化するようにZ軸方向に屈曲振動する。なお、図示せぬ配線導体の一方端が第1の外部電極36、第2の外部電極37および第3の外部電極に接続されているとともに、図示せぬ配線導体の他方端が樹脂層7の外側に引き出されており、この配線導体を介して、第1の外部電極36、第2の外部電極37および第3の外部電極に電気信号が入力される。
【0022】
圧電体層31としては、ジルコン酸鉛(PZ)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、Bi層状化合物、タングステンブロンズ構造化合物等の非鉛系圧電体材料等、既存の圧電セラミックスを用いることができる。圧電体層31の厚みは、所望の振動特性に応じて適宜設定することができるが、例えば、低電圧駆動という観点から、10〜100μmとすることができる。
【0023】
内部電極層32は、既存の種々の導体材料を用いて形成することができるが、例えば、銀とパラジウムからなる金属成分と圧電体層31を構成する材料成分を包含するものとすることができる。内部電極層32に圧電体層31を構成するセラミック成分を含有させることによって、圧電体層31と内部電極層32との熱膨張差による応力を低減することができる。なお、内部電極層32は、銀とパラジウムからなる金属成分を含まなくてもよく、また、圧電体層31を構成する材料成分を含まなくてもよい。
【0024】
表面電極層34、35および第1〜第3の外部電極は、既存の種々の導体材料を用いて形成することができるが、例えば、銀からなる金属成分およびガラス成分を含有するものとすることができる。このように、表面電極層34、35および第1〜第3の外部電極がガラス成分を含有することによって、表面電極層34、35および第1〜第3の外部電極と、圧電体層31および内部電極層32との間に強固な密着力を得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、圧電素子5の振動体3a側の主面と振動体3aとが接着剤層26で接合されている。接着剤層26の厚みは、20μm以下が望ましいが、10μm以下が更に望ましい。接着剤層26の厚みが20μm以下である場合には、積層体33の振動を振動体3aに伝えやすくなる。
【0026】
接着剤層26を形成するための接着剤としては、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル系樹脂などの公知のものを使用できる。接着剤に使用する樹脂の硬化方法は、熱硬化、光硬化や嫌気性硬化等のいずれの方法を用いても良い。
【0027】
さらに、本実施形態の音響発生器1は、振動体3aの表面の少なくとも一部が、樹脂層7からなる被覆層によって被覆されている。詳細には、本実施形態の音響発生器1は、振動体3aおよび圧電素子5を埋設するように、枠部材2aの内側に樹脂が充填されており、充填された樹脂によって樹脂層7が形成されている。
【0028】
樹脂層7には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂やゴムなどを採用できる。また、樹脂層7は、ピークやディップを抑制する観点から、圧電素子5を完全に覆うのが好ましいが、圧電素子5を完全に覆わなくても構わない。さらに、樹脂層7は、必ずしも振動体3aの全体を覆う必要はなく、場合によっては、振動体3aの一部を覆うように樹脂層7を設けても構わない。なお、樹脂層7の厚さは、適宜設定することができるが、例えば、0.1mm〜1mm程度に設定される。また、場合によっては、樹脂層7を設けなくても構わない。
【0029】
このように、樹脂層7を設けることによって、振動体3aの共振を適度にダンピングすることができる。これによって、共振現象に起因して発生する、音圧の周波数特性におけるピークやディップを小さく抑制することができ、周波数による音圧の変動を低減することができる。
【0030】
本実施形態の音響発生器1では、複数の励振器(圧電素子5)が、振動体3aの主面に垂直な方向(図のZ軸方向)から音響発生器1を平面視した場合に、振動体3aの輪郭が描く図形(枠体2の内側の輪郭が描く図形に同じ)が有する全ての対称軸に対して非対称となるように、振動体3aに取り付けられている。なお、音響発生器1(枠体2,振動体3a,圧電素子5を含む)を平面視する場合には、特に記載がない場合、振動体3aの厚み方向(振動体3aの主面に垂直な方向であり、図のZ軸方向)から平面視するものとする。
【0031】
図1Aに示す例では、平面視した場合、振動体3aの輪郭が描く図形は略矩形状であり、長さ方向(Y軸方向)に平行な対称軸Lと、幅方向(X軸方向)に平行な対称軸Wとの、2つの対称軸を有している。そして、2つの圧電素子5の一方を、破線の矩形で示した位置から、
図1Aに矢印101で示した方向へ、対称軸Lに沿ってずらした位置に配置している。これにより、複数の圧電素子5が、振動体3aの2つの対称軸(対称軸Lおよび対称軸W)に対して非対称に振動体3aに取り付けられている。なお、本明細書において、「振動体3aの対称軸」とは、平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形の対称軸のことを意味する。
【0032】
このように、複数の励振器(圧電素子5)を、振動体3aの対称軸に対して非対称となるように振動体3aに取り付けることにより、一体的に振動する振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させることができる。これにより、複合振動体の振動における共振モードの縮退を解いて、音圧の周波数特性における共振ピークを分散させることが可能となる。そして、これにより、音圧の周波数特性における共振ピークの高さを抑えるとともに、ピークの幅を広げることができるので、音圧の変動が小さい、より平坦で優れた音圧の周波数特性を有する高音質な音響を発生させることができる音響発生器1を得ることができる。なお、圧電素子5の位置を、対称軸に対して対称な状態からずらす程度については、所望する効果の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、圧電素子5の位置を0.5mm程度異ならせた場合でも相応の効果を得ることができるが、ある程度の効果を所望する場合には、圧電素子5の位置を5mm程度以上異ならせるのが望ましく、大きな効果を所望する場合には、圧電素子5の位置を10mm程度以上異ならせるのが望ましい。
【0033】
かかる点につき、
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
図2Aおよび
図2Bは、音圧の周波数特性を示す図である。なお、
図2Aは、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性が高い状態(圧電素子5の一方が
図1Aに破線の矩形で示す位置にある状態)における音圧の周波数特性を示しており、
図2Bは、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性が低い状態(圧電素子5の一方を
図1Aに矢印101で示した向きに移動させた後の状態)における音圧の周波数特性を示している。
【0034】
振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性が高い状態では、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体における複数の振動モードの縮退が生じ、
図2Aに示すように、音圧の周波数特性において、大きく急峻なピークやディップが生じやすい。
【0035】
これに対し、圧電素子5を含めた振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性が低い状態では、複数の振動モードの縮退が解かれて、
図2Bに示すように、音圧の周波数特性におけるピークやディップが小さくなる。このようにして、音圧の変動が少ない、良好な音圧の周波数特性を得ることができる。また、とりわけ、中音域の音圧の周波数特性をフラットに近づけることができるので、良好な音質を得ることができる。
【0036】
次に、本実施形態の音響発生器1の製造方法の一例について説明する。最初に、圧電素子5を準備する。まず、圧電材料の粉末にバインダー、分散剤、可塑材、溶剤を混練し、スラリーを作製する。圧電材料としては、鉛系、非鉛系のうちいずれでも使用することができる。
【0037】
次に、スラリーをシート状に成形してグリーンシートを作製する。そして、このグリーンシートに導体ペーストを印刷して、内部電極となる導体パターンを形成し、この電極パターンが形成されたグリーンシートを3枚積層し、その上には電極パターンが印刷されていないグリーンシートを積層して、積層成形体を作製する。そして、積層成形体を脱脂、焼成し、所定寸法にカットすることによって積層体33を得る。
【0038】
次に、必要に応じて積層体33の外周部を加工し、積層体33の積層方向の両主面に表面電極層34、35を形成するための導体ペーストを印刷し、引き続き、積層体33の長手方向(Y軸方向)の両端面に第1〜第3の外部電極を形成するための導体ペーストを印刷し、所定の温度で電極の焼付けを行う。
【0039】
次に、圧電素子5に圧電性を付与するために、第1〜第3の外部電極を通じて直流電圧を印加して、圧電素子5の圧電体層31の分極を行う。かかる分極は、
図1Bに矢印で示す方向となるように、DC電圧を印加して行う。このようにして、
図1A及び
図1Bに示す圧電素子5を得ることができる。
【0040】
次に、振動板3を準備し、この振動板3の外周部を、枠体2を構成する枠部材2a、2b間に挟み、振動板3に張力をかけた状態で固定する。この後、振動板3に接着剤層26となる接着剤を塗布して、その振動板3上に圧電素子5の表面電極層35側を押し当て、この後、接着剤を加熱や紫外線を照射することによって硬化させる。そして、硬化前の樹脂を枠部材2aの内側に流し込み、樹脂を硬化させることによって、樹脂層7を形成する。このようにして、本実施形態の音響発生器1を作製することができる。
【0041】
次に、本実施形態の音響発生器1における、圧電素子5の他の配置例について、
図3〜
図6Bを用いて順次説明する。なお、
図3〜
図6Bでは、
図1Aと同様に、圧電素子5をはじめとする音響発生器1の各部材を、ごく簡略化して図示するとともに、樹脂層7の図示を省略している。また、
図3〜
図6Bにおいては、
図1Aと異なる部分についてのみ説明し、同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、
図3〜
図6Bにおいては、
図1Aと同様に、平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形は、略矩形状であり、長さ方向(Y軸方向)に平行な対称軸Lと、幅方向(X軸方向)に平行な対称軸Wとの、2つの対称軸を有している。
【0042】
図3は、本実施形態の音響発生器1における、圧電素子5の配置例を示す模式的な平面図(その1)である。
図3に示す例では、2個の圧電素子5で構成される2次元図形の対称の中心(対称点)C2が、振動体3aの重心C1(対称軸Lと対称軸Wの交点であり、振動体3aの対称点)からずらして配置されている。これにより、振動体3aを平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の2本の対称軸L,Wおよび重心C1に対して非対称となるように、複数の圧電素子5が振動体3aに取り付けられている。このような圧電素子5の配置によっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させて、音圧の変動が小さい良好な音圧の周波数特性を有する音響発生器1を得ることができる。
【0043】
つづいて、
図4Aおよび
図4Bに示す配置例を説明する。
図4Aおよび
図4Bは、圧電素子5の配置例を示す模式的な平面図(その2)および(その3)である。
【0044】
図4Aに示す例では、2個の圧電素子5の一方を長さ方向の中央に配置し、2個の圧電素子5の他方を長さ方向の中央と異なる位置に配置している。これにより、平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の2本の対称軸L,Wおよび重心C1に対して非対称となるように、2個の圧電素子5が振動体3aに取り付けられている。このような圧電素子5の配置によっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させることができる。
【0045】
図4Bに示す例では、2個の圧電素子5の一方を幅方向の中央に配置し、2個の圧電素子5の他方を幅方向の中央と異なる位置に配置している。これにより、平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の2本の対称軸L,Wおよび重心C1に対して非対称となるように、2個の圧電素子5が振動体3aに取り付けられている。このような圧電素子5の配置によっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させることができる。
【0046】
つづいて、
図5Aおよび
図5Bに示す配置例を説明する。
図5Aおよび
図5Bは、圧電素子5の配置例を示す模式的な平面図(その4)および(その5)である。
【0047】
図5Aに示す例では、2個の圧電素子5のうちの一方の圧電素子5Aを平面視した場合の面積が、他方の圧電素子5を平面視した場合の面積よりも小さくされている。これにより、平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の2本の対称軸L,Wおよび重心C1に対して非対称となるように、2個の圧電素子5が振動体3aに取り付けられている。このような圧電素子5の配置によっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させることができる。
【0048】
図5Bに示す例では、2個の圧電素子5のうちの一方の圧電素子5Bを平面視した時の形状を、他方の圧電素子5を平面視したときの形状と異ならせている。すなわち、複数の励振器(圧電素子5)の少なくとも1つを平面視した場合の形状が、他の励振器を平面視した場合の形状と異なっている。これにより、平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の2本の対称軸L,Wおよび重心C1に対して非対称となるように、2個の圧電素子5が振動体3aに取り付けられている。このような圧電素子5の配置によっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させて、良好な音圧の周波数特性を得ることができる。
【0049】
また、
図5Bに示す例では、一方の圧電素子5Bを平面視した時の形状が、等脚ではない台形であり、非点対称な図形である。このように、複数の励振器(圧電素子5)の少なくとも1つが、平面視した場合に非点対称である形状を有するようにすることによっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させて、良好な音圧の周波数特性を得ることができる。
【0050】
つづいて、
図6Aおよび
図6Bに示す配置例を説明する。
図6Aは、圧電素子5の配置例を示す模式的な平面図(その6)であり、
図6Bは、
図6AのB−B’線断面図である。
【0051】
本配置例では、
図6Bに示すように、一方の圧電素子5Cの厚みh1と、他方の圧電素子5の厚みh2とが異なっている。これにより、一方の圧電素子5Cの質量と、他方の圧電素子5の質量とが異なっている。そして、これにより、平面視した場合の、複数の圧電素子5,5Cの質量分布が、2つの対称軸L,Wに対して非対称となっている。このように、平面視した場合の複数の励振器(圧電素子5,5C)の質量分布が、平面視したときに振動体3aの輪郭が描く図形の全ての対称軸に対して非対称となるように、複数の励振器の少なくとも1つの厚みが、他の励振器の厚みと異なっているようにすることによっても、振動体3aおよび複数の圧電素子5によって構成される複合振動体の対称性を低下させて、良好な音圧の周波数特性を有する音響発生器1を得ることができる。このとき、複数の圧電素子5の平面的な配置が対称性を有していても構わない。
【0052】
このように、「平面視した場合に、振動体(振動体3a)の輪郭が描く図形が有する全ての対称軸に対して非対称となるように、複数の励振器(圧電素子5)が振動体に取り付けられている」とは、次の第1の場合および第2の場合のどちらかに該当することを意味する。第1の場合は、複数の励振器の平面形状や配置が非対称であることによって、複数の励振器が振動体に取り付けられた状態が、2次元図形として、全ての対称軸に対して非対称になっている場合である。そして、第2の場合は、複数の励振器が振動体に取り付けられた状態が、2次元図形としては全ての対称軸に対して非対称になっていないが、複数の励振器の質量が異なることによって、複数の励振器の2次元的な質量分布が、全ての対称軸に対して非対称になっている場合である。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る音響発生装置70の構成について説明する。
図7Aは、上述した第1の実施形態の音響発生器1を用いて構成した音響発生装置70の構成の一例を示す図である。なお、
図7Aにおいては、説明に必要となる構成要素のみを示しており、音響発生器1の詳細な構成や一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0054】
本実施形態の音響発生装置70は、いわゆるスピーカーのような発音装置であり、
図7Aに示すように、たとえば、筐体71と、筐体71に取り付けられた音響発生器1とを備える。筐体71は、直方体の箱状の形状を有しており、1つの表面に開口71aを有している。このような筐体71は、例えば、プラスチック、金属、木材などの既知の材料を用いて形成することができる。また、筐体71の形状は、直方体の箱状に限定されるものではなく、例えば、円筒状や錐台状など、種々の形状とすることができる。
【0055】
そして、筐体71の開口71aに音響発生器1が取り付けられている。音響発生器1は、前述した第1の実施形態の音響発生器であり、音響発生器1についての説明は省略する。このような構成を有する音響発生装置70は、音質が高い音響を発生させる音響発生器1を用いて音響を発生させるので、音質が高い音響を発生させることができる。また、音響発生装置70は、音響発生器1から発生する音を筐体71の内部で共鳴させることができるので、例えば低周波数帯域における音圧を高めることができる。なお、音響発生器1が取り付けられる場所は自由に設定することができる。また、音響発生器1が他の物を介して筐体71に取り付けられるようにしても構わない。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電子機器の構成について説明する。
図7Bは、前述した第1の実施形態の音響発生器1を用いて構成した電子機器50の構成の一例を示す図である。なお、
図7Bにおいては、説明に必要となる構成要素のみを示しており、音響発生器1の詳細な構成や一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0057】
図7Bに示すように、電子機器50は、電子回路60を備える。電子回路60は、たとえば、コントローラ50aと、送受信部50bと、キー入力部50cと、マイク入力部50dとから構成される。電子回路60は、音響発生器1に接続されており、音響発生器1へ音声信号を出力する機能を有している。音響発生器1は電子回路から入力された音声信号に基づいて音響を発生させる。
【0058】
また、電子機器50は、表示部50eと、アンテナ50fと、音響発生器1とを備える。また、電子機器50は、これら各デバイスを収容する筐体40を備える。
【0059】
なお、
図7Bでは、1つの筐体40にコントローラ50aをはじめとする各デバイスがすべて収容されている状態をあらわしているが、各デバイスの収容形態を限定するものではない。本実施形態では、少なくとも電子回路60と音響発生器1とが、1つの筐体40に収容されていればよい。
【0060】
コントローラ50aは、電子機器50の制御部である。送受信部50bは、コントローラ50aの制御に基づき、アンテナ50fを介してデータの送受信などを行う。
【0061】
キー入力部50cは、電子機器50の入力デバイスであり、操作者によるキー入力操作を受け付ける。マイク入力部50dは、同じく電子機器50の入力デバイスであり、操作者による音声入力操作などを受け付ける。
【0062】
表示部50eは、電子機器50の表示出力デバイスであり、コントローラ50aの制御に基づき、表示情報の出力を行う。
【0063】
そして、音響発生器1は、電子機器50における音響出力デバイスとして動作する。なお、音響発生器1は、電子回路60のコントローラ50aに接続されており、コントローラ50aによって制御された電圧の印加を受けて音響を発することとなる。
【0064】
ところで、
図7Bでは、電子機器50が携帯用端末装置であるものとして説明を行ったが、電子機器50は、音響を発する機能を有する様々な電子機器であっても構わない。電子機器50は、例えば、テレビやオーディオ機器は無論のこと、音響を発生する機能を有する他の電気製品、例を挙げれば、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどといった種々の電気製品に用いられてよい。
【0065】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更および改良が可能である。
【0066】
例えば、上述した実施形態においては、平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形が矩形状である場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、二等辺三角形,正n角形(nは3以上の正数),菱形,等脚台形,扇形,楕円,円など、対称軸を有する種々の形状であって構わない。
【0067】
また、上述した実施形態では、枠体2の枠内に圧電素子5を埋設するように樹脂層7を形成する場合を例に挙げたが、かかる樹脂層を必ずしも形成しなくともよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、振動体3aを支持する支持体が枠体2であり、振動体3aの周縁を支持する場合を例に挙げたが、これに限られるものではなく、たとえば、振動体3aの長手方向あるいは短手方向の両端のみで支持することとしてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、励振器がバイモルフ型の圧電素子5である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、バイモルフ型の圧電素子に代えて、面方向に伸縮振動する圧電素子の一方主面に金属等の板を貼り付けて構成したユニモルフ型の圧電素子を用いても、同様の効果を得ることができる。また、面方向に伸縮振動する圧電素子を振動板3の両面に設けるようにしても良く、振動板3の両面にユニモルフ型やバイモルフ型の圧電素子を設けるようにしても良い。
【0070】
また、励振器としては、圧電素子に限定されるものではなく、電気信号が入力されて振動する機能を有しているものであれば良い。例えば、スピーカーを振動させる励振器としてよく知られた、動電型の励振器や、静電型の励振器や、電磁型の励振器であっても構わない。なお、動電型の励振器は、永久磁石の磁極の間に配置されたコイルに電流を流してコイルを振動させるようなものであり、静電型の励振器は、向き合わせた2つの金属板にバイアスと電気信号とを流して金属板を振動させるようなものであり、電磁型の励振器は、電気信号をコイルに流して薄い鉄板を振動させるようなものである。
【0071】
また、上述した実施形態では、平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形が有する全ての対称軸に対して非対称であり、且つ平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形の重心に対して非対称であるように、複数の励振器(圧電素子5)が振動体3aに取り付けられた場合を示したが、これに限定されるものではない。平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形の重心に対して対称に配置されている場合であっても、平面視した場合に振動体3aの輪郭が描く図形が有する全ての対称軸に対して非対称であれば、それだけでも効果を奏することができる。
【0072】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。なお、本発明は、可聴音よりも周波数が高い音響を発生させる音響発生装置にも適用可能であることは言うまでもない。