特許第6047586号(P6047586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6047586核酸シークエンシングを行うための回転可能なプラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047586
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】核酸シークエンシングを行うための回転可能なプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20161212BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C12Q1/68 Z
   C12N15/00 A
【請求項の数】25
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-555038(P2014-555038)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2015-506690(P2015-506690A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】AU2012000089
(87)【国際公開番号】WO2013113054
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514197979
【氏名又は名称】パイロベット ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】コーベット ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コーベット エスエヌアール ジョン
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/011823(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/046719(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの支持体表面を収納するための少なくとも1つのオープンウェルを有する回転可能なプラットフォームを供給する工程であって、前記オープンウェルは、その中に堆積した試薬が前記回転可能なプラットフォームの十分な回転によって前記オープンウェルから遠心力で除去され且つ前記回転可能なプラットフォームから離れるような形状または寸法である工程;
磁性粒子の形態の、少なくとも1つの前記支持体表面を、各前記オープンウェルに添加する工程であって、前記磁性粒子が、ポリヌクレオチド分子を固定するように構成されているか、又はその上にポリヌクレオチド分子が固定されている、工程;
所望により、前記磁性粒子にポリヌクレオチド分子を固定する工程;
前記ポリヌクレオチド分子の一本鎖にオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングさせる工程;
前記回転可能なプラットフォームの外部の地点から各前記オープンウェルに一連のパイロシークエンシング試薬を分注する分注工程であって、1または複数回の分注工程の後、残留しているまたは未反応の前記試薬が各前記オープンウェルから遠心力で除去されて前記回転可能なプラットフォームから離れるように前記回転可能なプラットフォームを充分に回転させ、回転中、前記磁性粒子は各前記オープンウェル内に磁気により維持される、工程;
各前記オープンウェル中のピロリン酸基の存在についてアッセイを行なうアッセイ工程;および
前記分注工程および前記アッセイ工程を繰り返すことにより前記ポリヌクレオチド分子をシークエンシングする工程
を含む、ポリヌクレオチド分子をパイロシークエンシングする方法。
【請求項2】
前記回転可能なプラットフォームの回転中に前記磁性粒子が前記オープンウェル内に磁気により維持されるように前記回転可能なプラットフォームの十分近くに磁石を配置する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁石が、プレートまたはリングの形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プレートまたはリングの形態である前記磁石が更に、前記オープンウェルを150℃まで加熱することにより前記磁性粒子を加熱するように構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記回転可能なプラットフォームの回転中、前記オープンウェル内に前記磁性粒子が磁気により維持されるように電磁石を係合させる工程を更に含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記回転可能なプラットフォームが円形であり、2〜500のオープンウェルが円形の前記回転可能なプラットフォームの外端近辺に分布している、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回転可能なプラットフォームの直径が50〜500mmであり、前記回転可能なプラットフォームの厚さが1〜6mmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オープンウェルは、容積が0.5〜100μLであるか深さが0.5〜5mmであるか、または前記オープンウェルは、1〜50個の磁性粒子を収容する寸法とされている、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記回転可能なプラットフォームが、ポリカーボナート、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群から選択されるプラスチック材料で形成されているか、またはガラスもしくは石英から形成されている、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリヌクレオチド分子が化学的吸着または共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により各前記磁性粒子に結合しているか、または前記ポリヌクレオチド分子がファンデルワールス力により各前記磁性粒子に固定される、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記一連のパイロシークエンシング試薬は、各々、酵素、基質、A、T、GおよびCヌクレオチドからなる群より選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチド、またはそれらのそれぞれのヌクレオチドアナログ、洗浄用の試薬、及びリンス用の試薬の一つ以上からなる群から選択される、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記回転可能なプラットフォームを前記回転させる工程が、前記オープンウェルから前記残留しているまたは未反応の前記試薬を遠心力で除去するために400〜1000rpmの速度で行われ、更に前記試薬を分注しながら前記回転可能なプラットフォームを10〜200rpmの速度で回転させる工程を含む、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試薬と前記磁性粒子を混合するために前記回転可能なプラットフォームを振動させる工程を更に含む、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチド分子が、DNAもしくはRNAまたはその修飾された形態である、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチド分子がビオチン化されており、前記磁性粒子が、ビオチン化ポリヌクレオチド分子に結合するためにアビジン、ストレプトアビジン、またはアナログを含む、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記一連のパイロシークエンシング試薬を分注する分注工程が、
a)各ヌクレオチドまたはそのアナログを別個に順次加えること、
b)A、T、G、およびCヌクレオチドの混合物、またはこれらのサブセットの混合物を加えること、
のいずれかを含む、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記b)加えることが、A、T、G、およびCヌクレオチドの混合物またはこれらのサブセットの混合物を加えることをさらに一回以上行うことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各前記オープンウェル中のピロリン酸基の存在についてアッセイを行なうアッセイ工程は、各前記オープンウェルにおいて光シグナルを検出することを含む、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチド分子は二本鎖ポリヌクレオチド分子であって、前記方法はアニーリングの前に前記二本鎖ポリヌクレオチド分子を変性させることをさらに含む、請求項1〜請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記変性は、前記二本鎖ポリヌクレオチド分子を加熱して変性させることまたは前記二本鎖ポリヌクレオチド分子を変性組成物に曝露することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記オープンウェルを洗浄用の試薬によって洗浄する工程を更に含む、請求項1〜請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記洗浄する工程が酵素処理をする工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記洗浄する工程は、1または複数回の分注工程の後に行なわれる、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記酵素は、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、およびアピラーゼの一つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記基質は、アデノシン5’ホスホ硫酸(APS)および/またはルシフェリンを含む、請求項11または請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイを行うための方法および装置に関する。特に、本発明は、アッセイ、特に多段階アッセイの実施に用いることができる回転可能なプラットフォームに関する。本発明は主にパイロシークエンシングによる核酸のシークエンシングに用いるために開発され、この用途との関連で以下に説明されるが、本発明はこの特定の使用分野に限定されないと理解される。
【背景技術】
【0002】
以下の先行技術の説明は、本発明を適切な技術的文脈の中でとらえるためおよび本発明の利点がより完全に理解できるようにするために提供されるものである。しかし、本明細書中の先行技術の説明は、そのような先行技術がその分野で広く知られているまたは共通する一般的な知識の一部を構成するという明示または暗黙の了解と見なされるべきではないと理解されるべきである。
【0003】
DNAヌクレオチド配列を決定する能力は近年重要性を増してきている。以前には、DNAシークエンシングに最も一般的に用いられる2つの方法は、酵素的連鎖停止法および化学的切断技術であり、これらはどちらも、より大きなDNAセグメントから生成したDNA断片をそれらのサイズに従って分離するためのゲル電気泳動に頼っている。電気泳動工程および分離されたDNA断片の検出は手間のかかる手順である。しかし、自動化された電気泳動ユニットが市販されているものの、電気泳動は、ハイスループットで比較的費用対効果の高いユニットが必要な大規模ゲノムプロジェクトまたは臨床的シークエンシングにあまり適していない。したがって、シークエンシングのための非電気泳動的方法に対するニーズは大きい。
【0004】
ポリメラーゼ反応中に放出される無機ピロリン酸(PPi)を検出するというコンセプトに基づくシークエンシング法がこれまでに報告されており(国際公開第93/23564号パンフレットおよび国際公開第89/09283号パンフレット参照)、一般的にパイロシークエンシングと呼ばれる。ポリメラーゼ反応中に成長中の核酸鎖に各ヌクレオチドが添加されると、ピロリン酸分子が放出される。これらの条件下で放出されたピロリン酸は、例えばルシフェラーゼ−ルシフェリン反応における光の生成により、酵素的に検出可能であることが見出されている。そのような方法は、電気泳動および有害な放射性標識の使用の必要性を回避しつつ、標的位置の塩基の同定およびDNAの簡便且つ迅速なシークエンシングを可能にする。
【0005】
パイロシークエンシングを行うための初期の先行技術の方法では0.2mLの微小遠心チューブ(または類似物)を用い、チューブに試薬を順次加えてチューブに存在するDNAの配列を検出した。この方法は比較的簡便であるが、ヌクレオチド試薬の各添加により反応液が希釈され且つ/または反応副産物が蓄積されて、反応がそれ以上進行しないポイントに反応条件が達するため、リード長が短いという欠点がある。例えば、通常は、この方法で高い信頼性でシークエンシングできるのはたった約80塩基である。
【0006】
パイロシークエンシングを用いる市販の設備も開発されている。これらのシステムは、標的DNA/RNA分子のハイブリダイゼーションを行うためにフローセルを用いる。説明すると、一本鎖DNAが、典型的には二本鎖DNAの固定および相補鎖の変性によって、フローセル中に配置された静止ビーズに固定される。ヌクレオチド(A、G、C、またはT)を含む試薬がビーズを通過するように流され、ヌクレオチドが取り込まれると光が検出される。光のシグナル強度は、1回の反応で取り込まれたヌクレオチドの数に比例する。ビーズを種々のヌクレオチドに曝露する間に、洗浄工程も実施され、プロセスを繰り返して次のヌクレオチドの取込みを検出する。
【0007】
例えば蛍光標識ヌクレオチドを用いることによる、合成によるその他のシークエンシング方法も公知である。そのような方法では、DNAサンプルを最初に断片化し、DNA二重らせんを融解して一本鎖にする。一本鎖DNA分子はフローセル内の表面に捕捉され、合成によるシークエンシングのプロセス(sequencing−by−synthesis process)の鋳型として機能する。蛍光標識ヌクレオチドを一回につき1種類加え、DNAポリメラーゼ酵素により成長中の相補鎖に取り込ませる。未使用のヌクレオチドを洗い流す。レーザーで照射すると、取り込まれたヌクレオチドが発光し、それが検出される。次のヌクレオチドを加える前に蛍光標識を除去してサイクルを続ける。ヌクレオチド取込みの追跡により、各個々のDNA分子の正確な配列が決定される。
【0008】
ライゲーションによるシークエンシング(sequencing by ligation)も知られている。このDNAシークエンシング法では、酵素DNAリガーゼを用いて、DNA配列中の所定の位置に存在するヌクレオチドを同定する。DNAリガーゼ酵素のミスマッチ感受性を用いて標的DNA分子の基礎配列を決定する。例えば米国特許第5,750,341号明細書および米国特許第4,883,750号明細書を参照されたい。
【0009】
種々の化学および検出方法で用いることができる、アッセイおよび分析を行うための、特に核酸のシークエンシングで用いられるような複数の反応および洗浄工程を含むアッセイを行うための装置が必要である。更に、フロースルー環境が必要なアッセイの便利な代替物としてあるいは固定反応容器アッセイの代わりに用いることができる装置が必要である。固定反応容器アッセイでは、核酸シークエンシングの場合に副産物の蓄積がシークエンシングの最大リード長を制限し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記先行技術の不利な点の少なくとも1つを克服もしくは改善することまたは有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの支持体表面を各ウェル中にローディングする、回転可能なプラットフォームの使用方法に関する。支持体表面は、第1および第2結合パートナー対の、第1または第2結合パートナーを結合または固定するように構成されている。第1および第2結合対はアッセイの一部であり、アッセイは、好ましくは核酸のシークエンシング、より好ましくはパイロシークエンシングである。プラットフォームの外部の地点からアッセイの試薬をウェルに分注し、支持体表面と接触させる。使用済みまたは消費後の試薬は、プラットフォームの十分な回転により遠心力で除去され得、支持体表面は、遠心中、ウェル中に保持される。支持体表面を保持する如何なる方法は本発明の範囲内であり、ほんの一例として、支持体表面は好ましくは磁性ビーズであり、遠心中にウェル中に磁性ビーズを保持するために磁石が用いられる。パイロシークエンシングの状況で、好ましくは一本鎖DNA(ssDNA)が遠心洗浄アプローチにより単離される。試薬は、試薬を新たに添加した後、毎回、または複数回の添加後に除去されてもよい。遠心洗浄工程は、支持体表面を乾燥させ、後続する試薬に対して支持体表面を準備し、アッセイに由来する望ましくない副産物も除去する。本発明はまた、プラットフォームを回転させ且つ支持体表面を各ウェル内に維持する装置ならびにプラットフォームおよび支持体表面を含むキットに関する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は第1結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記第1結合パートナーを前記支持体表面に結合または固定する工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェル中に試薬を分注する工程であって、前記分注工程後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように前記プラットフォームを十分に回転させる工程
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸シークエンシングを行うための方法を提供する。
【0013】
好ましくは、核酸シークエンシングはパイロシークエンシングである。
【0014】
好ましくは、支持体表面は磁性粒子の形態であり、プラットフォームの回転中に前記磁性粒子が前記ウェル内に磁気により保持されるように前記プラットフォームの十分近くに磁石を配置することにより、前記磁性粒子は前記ウェル内に磁気により維持される。好ましくは、磁石は、プラットフォームの下に設けられているプレートまたはリングの形態である。好ましいいくつかの実施形態では、磁石プレートまたはリングは更に、約150℃まで前記ウェルを加熱することにより前記支持体表面を加熱するように構成されている。しかし、別の一つの実施形態では、前記プラットフォームの回転中に前記ウェル内に前記磁性粒子が磁気により維持されるように電磁石が係合(engaged)している。
【0015】
好ましいいくつかの実施形態では、プラットフォームは実質的に円形であり、前記ウェルは、前記円形プラットフォームの外縁近辺に分布されている。好ましくは、約2〜500個のウェルが前記プラットフォームの外縁近辺に分布されており、前記プラットフォームの直径は約50〜500mmであり、前記プラットフォームの厚さは約1〜6mmである。好ましくは、ウェルは、体積が約0.5〜100μLであるか、深さが約0.5〜5mmである。好ましくは、ウェルは約1〜約50個の別個の支持体表面を収容するような寸法である。
【0016】
別の一つの実施形態では、ウェルは、前記プラットフォームの回転中に前記支持体表面を受けるための凹部(recess)を含み、前記凹部は、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように前記プラットフォームの回転中に前記支持体表面は保持するが前記試薬は通過させるように構成されるフィルターを含む。
【0017】
好ましくは、プラットフォームは、ポリカーボナート、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群から選択されるプラスチック材料で形成されているか、またはガラスもしくは石英で形成されている。好ましくは、廃液を受けるために前記プラットフォームの周辺にトラフ(trough)が配置され、廃液は、回転中に前記プラットフォームから振り落とされるかまたは遠心除去される。
【0018】
好ましくは、第1結合パートナーは、化学的吸着または共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により前記支持体表面に結合しているか、または前記第1結合パートナーはファンデルワールス力により前記支持体表面に固定される。
【0019】
好ましくは、各前記ウェルに一連の試薬が分注され、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2結合パートナーを含み、その後の試薬は、洗浄および/またはリンス用の試薬ならびに検出可能なシグナルを現像するための試薬から選択される。好ましくは、本発明の方法は、各前記分注工程の最中および/または後に核酸シークエンシングを分析する工程を更に含む。
【0020】
好ましくは、本発明の方法は、前記試薬を分注しながら回転可能なプラットフォームを約10〜200rpmの速度で回転させる工程および回転可能なプラットフォームを400rpm超の速度で回転させて前記ウェルから前記試薬を遠心力で実質的に除去する工程を更に含む。好ましくは、プラットフォームは、分注工程中にウェルから試薬が遠心力で除去されないような、十分な低速で回転され、洗浄または乾燥工程中にウェルから試薬が遠心力で除去されるような、十分な高速で回転される。好ましくは、十分な高速は、400rpm超であり、1000、2000、3000、4000rpm、またはそれ以上であってもよい。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、前記試薬と前記支持体表面が完全に混合するようにプラットフォームを十分に振動させる。
【0022】
第2の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面をキット中に含むキットであって、前記支持体表面が第1結合パートナーを固定するように構成されているキットを提供する。好ましくは、支持体表面は、前記ウェル中に収容され、前記支持体表面を前記ウェルに保持するために前記プラットフォームの表面に着脱可能な使い捨てシートが付着している。好ましくは、キットは、核酸シークエンシングを行うための、特にパイロシークエンシングのための、1または複数の試薬を含む。
【0023】
第3の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記プラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、前記第1結合パートナーを前記磁性粒子に固定するために前記ウェルに第1結合パートナーを分注するための装置;
前記ウェルに試薬を分注するための装置;および
所望により、洗浄用の試薬を分注するための装置、
を含む核酸シークエンシングを行うための装置を提供する。
【0024】
第4の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は第2結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記第2結合パートナーを前記支持体領域に選択的に結合または固定する工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに試薬を分注する工程であって、前記分注工程後、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸シークエンシングを行うための方法を提供する。
【0025】
好ましくは、第1結合パートナーが既に、化学的吸着または共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により前記支持体表面に結合しているか、または第1結合パートナーがファンデルワールス力により前記支持体表面に固定されており、前記第2結合パートナーは、前記支持体表面に既に結合している前記第1結合パートナーと結合可能または反応可能である。
【0026】
好ましくは、各前記ウェルに一連の試薬が分注され、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2結合パートナーを含み、その後の試薬は、洗浄用および/またはリンス用の試薬から選択される。
【0027】
第5の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームおよびに少なくとも1つの支持体表面を含むキットであって、前記支持体表面が第2結合パートナーを選択的に結合または固定するように構成されているキットを提供する。
【0028】
第6の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記プラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、第2結合パートナーを前記磁性粒子に選択的に固定するために前記ウェルに前記第2結合パートナーを分注するための装置;
前記ウェルに試薬を分注するための装置;および
所望により、洗浄用の試薬を分注するための装置、
を含む、パイロシークエンシング等の核酸シークエンシングを行うための装置を提供する。
【0029】
第7の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は核酸鎖結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記核酸鎖結合パートナーを前記支持体表面に結合または固定し、次いで前記支持体表面に核酸鎖を選択的に結合または固定する工程;
所望により、相補的核酸鎖を変性および除去し、前記支持体表面にシークエンシングプライマーをアニーリングさせる工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに、A、T、G、および/もしくはCヌクレオチドまたはそれぞれの好適なヌクレオチドアナログを含む一連の試薬を順次分注する工程であって、前記分注工程のそれぞれまたはいずれかの後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、実質的に如何なる残留しているおよび/または未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程、
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸鎖のシークエンシングを行うための方法を提供する。
【0030】
好ましくは、核酸鎖はDNAもしくはRNAまたはその修飾された形態である。好ましくは、核酸鎖のシークエンシングはパイロシークエンシングである。
【0031】
好ましくは、核酸鎖はビオチン化されており、核酸鎖結合パートナーは、ビオチン化核酸鎖に結合するためにアビジン、ストレプトアビジン、またはアナログを含む。
【0032】
好ましくは、各前記支持体表面を、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを含む一連の試薬と順次接触させる。
【0033】
好ましくは、順次接触/分注工程は、
(a)各ヌクレオチドまたはそのアナログを所望のもしくは所定の順番で別個に順次加えること、
(b)A+T+G+Cヌクレオチドまたはこれらの所定のまたは所望のサブセットを混合物として加え、再度前記混合物を加える等、
のいずれかを含む。
【0034】
好ましくは、各前記分注工程の最中および/または後に前記核酸鎖を分析する工程を更に含む。好ましくは、分析は、光のアウトプットを核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドの数と関連付けることにより前記核酸鎖中の次の塩基対を検出することを含む。
【0035】
好ましくは、変性工程は、核酸鎖を加熱して変性させることまたは核酸鎖を高pHに曝露することを含む。
【0036】
好ましくは、方法は、前記核酸鎖を変性させた後に、リンス用の試薬を用いたリンス工程により相補鎖を除去する工程を含む。
【0037】
好ましくは、前記支持体表面に試薬が実質的に混入しないように、前記プラットフォームを回転させて残留試薬を遠心力で実質的に除去することにより、前記支持体表面を実質的に乾燥させることによって、後続する各前記試薬に対して各前記支持体表面を準備する。
【0038】
第8の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うためのキットであって、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有する回転可能なプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面を含み、前記支持体表面が核酸鎖結合パートナーを固定するように構成されているキットを提供する。
【0039】
第9の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うための第8の態様に係るキットの使用を提供する。好ましくは、アッセイはパイロシークエンシングである。
【0040】
第10の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記回転可能なプラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、核酸鎖結合パートナーを前記磁性粒子に固定するために前記ウェルに核酸鎖結合パートナーを分注するための装置;
所望により、前記核酸鎖を前記磁性粒子に選択的に固定するために前記ウェルに核酸鎖を分注するための装置;
所望により、相補的核酸鎖を変性および所望により、除去するための装置;
A、T、G、および/もしくはCヌクレオチド、それらのそれぞれのアナログ、またはその組合せを前記ウェルに分注するための装置;
洗浄用の試薬を分注するための装置;および
所望により、1または複数の酵素溶液を分注するための装置、
を含む、核酸鎖をシークエンシングするための装置を提供する。
【0041】
第11の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前期支持体表面は核酸鎖を選択的に固定するように構成されている工程;
前記支持体表面に核酸鎖を選択的に結合または固定する工程;
所望により、相補鎖核酸鎖を変性および除去し、前記支持体表面にシークエンシングプライマーをアニーリングさせる工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに、A、T、G、および/もしくはCヌクレオチドまたはそれぞれの好適なヌクレオチドアナログを含む一連の試薬を順次分注する工程であって、前記分注工程のそれぞれまたはいずれかの後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程、
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸鎖のシークエンシングを行う方法を提供する。
【0042】
好ましくは、支持体表面に既に核酸鎖結合パートナーが固定されており、前記核酸鎖は前記核酸鎖結合パートナーに選択的に結合する。好ましくは、核酸鎖はDNAもしくはRNAまたはその修飾された形態である。好ましくは、核酸鎖はビオチン化されており、第1結合パートナーは、ビオチン化核酸鎖に結合するためにアビジン、ストレプトアビジン、またはアナログを含む。
【0043】
第12の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有する回転可能なプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面を含むキットであって、前記支持体表面が核酸鎖を選択的に固定するように構成されているキットを提供する。
【0044】
第13の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うための第12の態様に係るキットの使用を提供する。
【0045】
第14の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記回転可能なプラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために、前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、前記支持体表面に核酸鎖を固定するために前記ウェルに核酸鎖を分注するための装置;
所望により、相補的核酸鎖を変性および所望により、除去するための装置;
A、T、G、および/もしくはCヌクレオチド、それらのアナログ、またはその組合せを分注して前記支持体表面に接触させるための装置;
洗浄用の試薬を分注するための装置;および
所望により、1または複数の酵素溶液を分注するための装置、
を含む、核酸鎖をシークエンシングするための装置を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、回転可能なプラットフォームは、容積が約0.5〜100μLまたは深さが約0.5〜3mmである複数の比較的浅いウェルを含む。別のいくつかの実施形態では、ウェルは比較的深く、第1結合パートナーを固定するようにまたは第2結合パートナーを選択的に固定するように構成されている磁性ビーズを収容するために約5〜8mmである。この例では、ビーズは別個の領域と見なされ、各ウェルに1または複数のビーズが収容されてもよい。
【0047】
第1または第2結合パートナーは、好ましくは磁性ビーズであるビーズに好ましくは結合可能である。磁性ビーズが用いられる場合、ウェルは、ディスク/プラットフォームの回転中にビーズが遠心力で移動しない(displaced)ようにビーズを収容するのに十分な深さおよび容積であると理解される。好ましいいくつかの実施形態では、システムは、磁性環状ディスクをサンプルディスク/プラットフォームの下側で上昇させることによりまたは電磁石を作動させることにより、各ウェル内に磁性ビーズを捕捉することができる。この例では、磁性ビーズをウェル中に収容することができ、プラットフォームの回転により、周囲の試薬からビーズを実質的に乾燥させるのに十分な遠心力を加えることができる。また、プラットフォームは、複数の同心円状に配置された円状のアレイのウェルを含んでもよいと理解される。いくつかの実施形態では、第1結合パートナーをビーズまたは粒子の表面に化学的に吸着させる。別のいくつかの実施形態では、第1結合パートナーをビーズまたは粒子の表面に共有結合またはイオン結合、または水素結合により結合させ、更に別のいくつかの実施形態では、第1結合パートナーがファンデルワールス力によりビーズまたは粒子の表面に維持される。第2結合パートナーは、ビーズまたは粒子の表面に既に結合している第1結合パートナーと結合可能または反応可能であると理解される。
【0048】
本発明は特に、核酸シークエンシング法、例えばパイロシークエンシング等の方法およびアッセイに関する。例えば、第1および第2結合パートナーは、好ましくはアビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン(streptactin)、またはアナログおよびビオチンまたはアナログから選択される、結合パートナー対(所望により、その一方が検出できるように標識されていてよい)である。
【0049】
しかし、以下に更に説明するように、本発明の利点は、相対的に迅速かつ相対的に簡便な洗浄工程を提供することおよび関連した洗浄用の溶液および試薬の廃棄体積が少ないことである。
【0050】
ここで本発明をパイロシークエンシングとの関連で説明するが、本発明はこのアッセイに限定されるものではないと理解される。
【0051】
第1の実施形態では、ウェル内に維持される支持体表面が第1結合パートナーを固定するように構成されており、それは例えばアビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン、またはアナログであってもよく、その後、アビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン、またはアナログは続いて、後続の処理工程において、例えばビオチン化DNAと反応させることができると理解される。更に、第2の実施形態では、支持体表面が第1結合パートナーを既に含んでおり、表面は第2結合パートナーを選択的に固定するように構成されていると理解される。したがって、第1の実施形態に係る支持体表面は「機能化されていない(unfunctionalised)」と見なすことができ、第2の実施形態に係る支持体表面は「機能化されている」または「予め機能化されている(pre−functionalised)」と見なすことができると理解される。
【0052】
好ましくは、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2のまたは相補的な結合パートナーを含み、その後、後続する試薬は、例えば、洗浄用またはリンス用の試薬から以下に更に説明されるように選択される。
【0053】
好ましくは、本発明の方法は更に、各前記接触または分注工程の最中および/または後に核酸シークエンシングアッセイを分析する工程を含む。好ましいいくつかの実施形態では、支持体表面を後続する試薬と接触させる前に、洗浄用の試薬を用いる洗浄またはリンス工程を各前記支持体表面に実施する。洗浄用の試薬は、前の接触工程に由来する残留溶液を実質的に洗い流すことができるまたは残留溶液および前記溶液中に存在する成分の量を低減することができる、いかなる試薬(副産物を分解するかまたは副産物の濃度を低減する例えばアピラーゼ等の活性剤または他の好適な酵素)であってよい。
【0054】
洗浄用の試薬は、前の接触/分注工程に由来する残留溶液を実質的に洗い流すことができるまたは残留溶液および前記溶液中に存在する成分の量を低減することができる如何なる試薬であってもよく、アピラーゼ等の活性剤であってもよいが、別のいくつかの実施形態では、好ましくは、過剰なヌクレオチドを除去するための洗浄工程は、その全体を参照により本明細書に援用するMashayekhi F., and Ronaghi M., Analysis of read−length limiting factors in pyrosequencing chemistry, Anal. Biochem. (2007), 363(2): 275−287に詳細に説明されているようにアピラーゼを含まない。Mashayekhi et alに詳細に説明されているように、アピラーゼを含まない洗浄工程で洗浄工程を置換するとパイロシークエンシングのリード長が改善されることが示されている。
【0055】
好ましくは、回転可能なプラットフォームは、試薬分注中、標的部位に添加された試薬が除去されないように例えば約10〜200rpmの低速で回転され、プラットフォームは、試薬分注中、例えば約400〜2000rpmの高速で回転される。しかし、他の回転速度も可能であると理解される。
【0056】
好ましいいくつかの実施形態では、前の工程に由来する試薬の前記支持体表面への混入が実質的に低減するようにまたは好ましくは実質的にないように、前記プラットフォームを回転させて残留試薬を遠心力で除去することによって、前記支持体表面を実質的に「乾燥」させることにより、後続する各前記試薬に対して各前記支持体表面の準備が整えられる。
【0057】
別のひとつの態様では、本発明は、アッセイを行うためのプラットフォームおよび支持体表面の組合せの使用を提供する。更なるひとつの態様では、本発明は、本明細書に記載のプラットフォームと、1または複数の支持体表面と、所望により、前記アッセイ用の1または複数の試薬とを含むキットを提供する。
【0058】
好ましくは、プラットフォームを回転させるための装置はモーターであり、予め決められた回転速度はユーザーが選択可能であり、約10〜5000rpmである。装置はまた、好ましくは、回転可能なプラットフォームから振り落とされる廃試薬を抽出するための吸引抽出システムを具備している。
【0059】
ここで本発明をパイロシークエンシングとの関連で説明するが、本発明はこのアッセイに限定されるものではないと理解される。
【0060】
パイロシークエンシング
好ましくは、用いられる核酸シークエンシング法はパイロシークエンシングである。しかし、以下に更に説明するように他の核酸鎖シークエンシング法は用いられ得ると理解されるだろう。
【0061】
好ましくは、前記核酸鎖は、DNAもしくはRNAであるか、または、例えば亜硫酸水素塩処理後の、もしくは天然核酸中に存在しない追加的塩基を含む、修飾された形態である。1または複数の別個の領域のそれぞれの上に核酸鎖のコピーが保持されると理解される。
【0062】
好ましくは、回転可能なプラットフォームは実質的に円形であり、直径が約50〜500mmである。好ましくは、回転可能なプラットフォームは、回転可能なプラットフォームの中心から等距離に配置された約2〜500個のウェルを含む。直径は如何なる直径でもよいと理解され、直径は、1または複数でもよいウェルの数が収まるように選択され得る。いくつかの好ましい実施形態では、ウェルは、回転可能なプラットフォームの外縁に実質的に均等に分布または配置されて実質的に円状のアレイを形成している。
【0063】
好ましくは、ウェルは支持体表面を含み、支持体表面はビーズの形態であり、ビーズは好ましくは、核酸鎖(例えば、シークエンシング鋳型またはシークエンシングプライマー)を選択的に結合、捕捉、または固定するように構成されている磁性ビーズである。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、核酸鎖はビオチン化されており、別個の領域が、ビオチン化核酸鎖に結合するためのアビジン、好ましくはストレプトアビジンまたはアナログを含む。あるいは、支持体表面またはビーズは、アビジン、好ましくはストレプトアビジンを結合、捕捉、または固定するように構成されており、その後の工程で、ビオチン化核酸鎖が、支持体表面に結合しているアビジン/ストレプトアビジンに選択的に固定される。しかし、核酸鎖を別個領域に固定するために別の化学(chemistries)を利用することもできると理解される。本発明は、核酸鎖を別個領域に固定するために用いることができる化学に限定されない。別の実施形態では、鋳型結合剤は、リガンド結合、ユニバーサルプライマー/プローブ、または抗体によるものであり得る。
【0064】
一実施形態では、ウェルは、容積が約0.5〜100μLの浅いウェルであってもよい。浅いウェルは如何なる形状であってもよく、ウェルは如何なる容積であってよいと理解される。いくつかの実施形態では、ウェルの直径は約1〜5mmである。しかし、ウェルは如何なる直径または形状であってもよいと理解され得る。
【0065】
好ましくは、回転可能なプラットフォームはプラスチック材料で形成されていることが好都合であるが、ガラスまたは石英等のその他の材料も可能であることが当業者には理解されよう。好ましくは、プラスチック材料は、ポリカーボナート、ポリスチレン、またはポリプロピレンからなる群から選択される。また、回転可能なプラットフォームは積層構造であり得ると考えられる。回転可能なプラットフォームが如何なる材料から形成されていようとも、プラットフォームは変形せずに回転に耐えることができなければならず、潜在的に、以下に更に記載する核酸変性のための熱的効果に耐えられなければならならい。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態では、実質的に円形のディスクでもよい回転可能なプラットフォームは、回転可能なプラットフォームの表面から回転中に振り落とされる(spun off)または遠心除去される廃液を受けるための、プラットフォームの周辺に配置されたトラフを更に含む。パイロシークエンシング反応の各工程または複数の工程が完了するとすぐに、長いリード長を達成するために、ウェル中の未使用の試薬または廃試薬は除去されるべきであると理解される。回転可能なプラットフォームの回転による遠心力の発生によりプラットフォームから廃液が振り落とされ、廃液の取り扱い性を向上させるためにトラフが設けられている。あるいは、例えば20、30、40、または50サイクルのヌクレオチド添加毎にまたは反応が阻害されるのに十分なほどに試薬が希釈される直前に、プラットフォームから廃試薬が振り落とされ得る。
【0067】
この実施形態では、追加のパイロシークエンシング試薬がウェルに添加され、各パイロシークエンシング反応完了後にプラットフォームから振り落とされるにつれて、回転可能なプラットフォームの総質量は増加すると理解される。したがって、別のひとつの実施形態では、回転可能なプラットフォームはトラフを含まず、回転可能なプラットフォームを収容する筐体を、プラットフォームの周辺に隣接してトラフが配置されるように構成して、回転可能なプラットフォームの表面から回転中に振り落とされた廃液がこの「静止した」トラフに捕らえられるようにすることが望ましいことがあり得る。
【0068】
パイロシークエンシングの背景となる技術および化学に精通した当業者には、支持体表面に固定された核酸鎖を変性させて相補的核酸鎖を除去することが必要になり得ることが理解されよう。変性は如何なる方法で達成されてもよいが、好ましくは、ウェルおよび支持体表面または更には回転可能なプラットフォーム全体を変性に十分な温度、例えば94〜99℃に加熱すること、あるいは、94℃を超える温度に加熱した溶媒、例えばバッファーに支持体表面を曝露することによることを含む。あるいは、支持体表面を変性組成物(例えば、NaOHを含む組成物)に曝露してもよい。他の方法としては、赤外線または同等な放射線照射による加熱が含まれる。回転可能なプラットフォームは、そのような変性条件下に耐えられる材料で形成されているべきであると理解される。
【0069】
回転可能なプラットフォームはまた、捕捉された核酸標的または捕捉されたシークエンシングプライマーに対してDNAをハイブリダイズさせるか融解させるために加熱および冷却することも可能である。パイロシークエンシングの場合、ひとたびdsDNA標的が捕捉および変性されると、シークエンシングプライマーを添加してssDNAにハイブリダイズさせるか、捕捉されたシークエンシングプライマーにssDNAをハイブリダイズさせる。この場合、回転可能なプラットフォームを加熱してssDNA中の三次構造を除去し、次いで冷却して固定化された標的にシークエンシングプライマーをハイブリダイズさせてよい。
【0070】
比較的小さい体積の試薬を用いる場合にチャンバーは好適な手段で封止されるので、チャンバーの加熱はデバイスを幾分複雑にすると理解され得る。あるいは、加熱段階中の蒸発を低減するために油状の覆い(overlay)を用いてもよい。他の好適な手段は当業者に周知である。あるいは、捕捉されたssDNAおよびシークエンシングプライマーに変性試薬を加えた後、よりpHの低いバッファーを加えてpHを低減させてシークエンシングプライマーをDNA標的にアニーリングさせてもよい。ひとたびアニーリングすると、pHバッファーは振り落とされて廃棄され得る。
【0071】
当業者には、種々の実施形態において、本発明が提供できる多くの利点が理解されよう。例えば、本発明は、先行技術のデバイスおよび方法と比べてさらに長い塩基リード長を可能にする。説明すると、先行技術の方法では、0.2mLの微小遠心チューブ(または類似物)中でパイロシークエンシングを行い、チューブに試薬を順次添加して、チューブ中に存在するDNAの配列を検出する。反応バッファー中に含まれるDNA、全酵素、および基質を含む反応物に、ヌクレオチドを順次加える。96または24ウェルプレートにおいて反応を行う。プレートを加熱し(28℃)、反応中、振とうする。したがって、添加されたヌクレオチドの体積は蒸発する体積とほぼ同等であり、そのため、反応混合物は希釈されないが副産物は蓄積される。先行技術の方法は、リード長が比較的短いという欠点があり、これは、例えばアピラーゼの活性により生じる分解産物の蓄積による可能性が最も大きい。本発明は、固定された核酸鎖をヌクレオチドと接触させ、前述したように残っているヌクレオチドおよび全ての反応産物および副産物がその後ウェルから実質的に除去され、所望により、その後のヌクレオチド試薬と接触させる前に支持体表面をも洗浄するので、当該技術分野の水準で知られている欠点がない。300または400塩基を超える塩基リード長、更には化学の改良により潜在的には1000塩基を超える塩基リード長、が可能であると考えられる。
【0072】
更なる利点は当業者に明らかであるが、明確にすると、本発明は先行技術のフロースルーセルよりも相対的に簡便な装置を提供する。更なる利点は、先行技術の方法およびデバイスと比べて潜在的で相対的に速いシークエンシングに関し、先行技術と比べて必要な試薬の体積が潜在的に少ない。いくつかの先行技術の方法、特にパイロシークエンシングの実施方法における更なる制約は、1回の反応サイクル、すなわち1ヌクレオチドの添加に必要な時間が非常に長いことである。場合によっては、1反応サイクルに必要な時間は通常、約60秒またはそれ以上であり、これは前の反応サイクルの残っているヌクレオチドを全て分解するのに必要な時間に基づく。前の反応サイクルの実質的に全ての残留ヌクレオチドが完全に分解された後にのみ、次のヌクレオチドが加えられる。本明細書に記載したような装置は、残留ヌクレオチドをはるかに速い速度で除去できる(すなわち、遠心工程、洗浄工程によって)と理解される。これにより、1塩基の取込みにかかるサイクル時間がはるかに短縮される。本発明を理論により束縛するものではないが、サイクル時間は約15秒に短縮され得、これにより、ランタイムが少なくともおよそ4分の1に短縮されると理解される。しかし、サイクル時間は更に短縮できると予想される。
【0073】
本発明はまた、いくつかの先行技術のデバイスと比べて、流体の取り扱い性を改善することが可能である。また、CCDアレイの代わりに高速光電子増倍管を用いることができることから、本発明は先行技術のデバイスより高い感度を実現することができる。
【0074】
パイロシークエンシングは、「合成によるシークエンシング(sequencing by synthesis)」の原理に基づくDNAシークエンシング法であり、ジデオキシヌクレオチドを用いた連鎖停止ではなくヌクレオチド取込み時のピロリン酸放出の検出に依存する。「合成によるシークエンシング」では、シークエンシングされるDNA一本鎖を利用して、その後、その相補鎖を酵素的に合成する。「合成によるシークエンシング」法は、DNAポリメラーゼのヌクレオチド付加反応(DNA+xdNTP→DNA+1+PPiまたはxに応じて異なる副産物。xはATPでもあり得る)の反応副産物を検出することによるDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)活性の検出に基づく。パイロシークエンシング反応では、光を生成する酵素カスケードを利用してPPiが定量される。
1.スルフリラーゼ:APS+PPi→ATP+SO
2.ルシフェラーゼ:ルシフェリン+ATP→オキソルシフェリン+PPi+光
3.アピラーゼ:残留dNTPおよびATPの分解
【0075】
更に、例えば、PPi+PEP+AMPをピルビン酸+ATP+Piに変換するPPDK(ホスホエノールピルビン酸ジキナーゼ)の使用のような、副産物の定量に用いられ得る複数の反応が当該技術分野で知られている。更に、副産物は、例えばpH変化または他の検出可能なパラメーターの変化により検出し得る。あるいは、「合成によるシークエンシング」法は、DNAリガーゼのプライマー付加反応の反応副産物を検出する、DNAリガーゼの活性の検出に基づいてもよい。好適な方法は当業者に周知である。
【0076】
本質的に、本方法は、DNAの一本鎖に沿って1回に1塩基対ずつ相補鎖を合成し、どの塩基が各工程で実際に付加されたかを検出することによってDNAの一本鎖のシークエンシングを可能にする。鋳型DNAまたはシークエンシングプライマーが固定され、順番に、A、C、G、および/またはTヌクレオチドの溶液が添加され、反応後に除去される。添加されたヌクレオチドが鋳型の第1の不対塩基(1または複数)を補完した場合にのみ光が発生する。検出可能なシグナル、例えば化学発光シグナルを生じさせる添加されたヌクレオチドの配列により、鋳型の配列を決定することができる。ssDNA鋳型をシークエンシングプライマーにハイブリダイズさせるかまたはその逆を行い、酵素DNAポリメラーゼならびに所望により、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、および/またはアピラーゼと、ならびに例えば基質アデノシン5’ホスホ硫酸(APS)およびルシフェリンとインキュベートする。検出可能なシグナルを提供する他の反応カスケードも当業者に周知である。
【0077】
概観として、パイロシークエンシングは以下の一般的工程に従う:
1.4種類のデオキシヌクレオチド3リン酸(dNTP)またはその好適な誘導体のうちの1つを核酸鎖鋳型に添加する。DNAポリメラーゼが正確に相補的dNTPまたはその誘導体を鋳型に取り込ませ、ピロリン酸(PPi)を化学量論的に放出させる。
2.ATPスルフリラーゼが定量的にPPiをATPに変換する。このATPが、ルシフェラーゼにより仲介されるルシフェリンからオキシルシフェリンへの変換を引き起こし、ATPの量に比例する量の可視光を発生させる。ルシフェラーゼ触媒反応において発生した光を検出および分析する。
3.その後、取り込まれなかったヌクレオチドおよびATPは、アピラーゼまたは他の好適な酵素により分解される。
【0078】
古典的なパイロシークエンシングプロトコールに対するいくつかの改変が当該技術分野で周知であり、本発明に係る装置において実施されるのに良く適している。1回のヌクレオチド取込み工程毎に発生する光は取り込まれたヌクレオチドの量に比例するので、好適なソフトウェアにより、発生した光情報を具体的なヌクレオチド配列パターンに変換することができる。古典的なパイロシークエンシングでは、この光パターンを「パイログラム」と呼ぶ。更に、前記ソフトウェアは、好ましくは、特定の位置における混合集団の取込み比率を定量することができる。
【0079】
本発明は、配列決定される核酸鋳型もしくは標的またはシークエンシングプライマーを固定する工程および段階的なヌクレオチド添加サイクルを含むシークエンシング法を意図する。本発明をパイロシークエンシングに関して例示したが、本発明は他の核酸シークエンシング化学、特にフロースルー環境および固相から利益を受ける化学にも有用であると理解される。本発明はまた、前述の工程のいくつかを避けることができ、あるいはそれらを少なくともより簡便にすることができる。パイロシークエンシングにはssDNA鋳型の存在が必要である。所望により、支持体表面がdsDNAを捕捉し、前記dsDNAを変性させて、例えばパイロシークエンシング用に準備されたアニーリングしたシークエンシングプライマーを用いてssDNAを残す役割も果たし、これにより別個の単離工程が不要になる。
【0080】
具体的には、当業者は、「フロースルーDNAシークエンシング」という用語を、例えば、核酸鋳型またはシークエンシングプライマーを固定し、プライマーを鋳型にハイブリダイズさせるまたはその逆を行ない、ヌクレオチドの存在下で段階的にプライマーを介した合成を行う方法を含み、ヌクレオチドは、例えば、所望により、ジデオキシ部位等の鎖伸長終結部位および所望により、検出可能な標識(例えば、サンガーシークエンシング)を含む、と理解するだろう。更なる核酸シークエンシング法の実施形態の一つは、標識されたヌクレオチドを伸長中のプライマー鎖に取り込ませる工程;取り込まれたヌクレオチドを同定する工程;ならびに次に続くのヌクレオチドの取込みに対して伸長鎖の準備を準備するように鎖伸長終結部位および標識を除去する工程、を含む。
【0081】
また、当業者は、「フロースルーDNAシークエンシング」という用語が、例えば、ライゲーションによる核酸シークエンシングを含むことを理解するだろう。「ライゲーションによる核酸シークエンシング」という用語が、核酸鋳型またはシークエンシングプライマーを固定すること、プライマーを鋳型ハイブリダイズさせることまたその逆を行なうこと、その後に続く、例えば標識ヌクレオチドまたは短い標識プローブの、DNAライゲーションの一連のラウンドを含むことは明白であろう。
【0082】
核酸固定工程および段階的なヌクレオチドの添加および検出工程を含む、DNAシークエンシング法が本発明の想定内であることは当業者には明らかであろう。
【0083】
本発明の方法はまた、所望により、洗浄工程を含んでもよく、あるいは、酵素処理により残留または未反応試薬の除去が改善され得る。
【0084】
一実施形態では、順次接触または分注工程は、
a)A、次いでT、次いでG、次いでCヌクレオチド、次いで再度A、等;または
b)A+T+G+Cヌクレオチドを混合物として添加し、混合物を再度添加する等、
のいずれかを含む。
【0085】
別の一つの実施形態では、各前記支持体領域を、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを含む一連の試薬と順次接触させる。順次接触工程は以下のいずれかを含んでもよい:
a)各ヌクレオチドまたはそのアナログを所望のまたは所定の順番で別個に順次加えること、
b)A+T+G+Cヌクレオチドまたはこれらの所定のもしくは所望のサブセットを混合物として加え、混合物を再度加える等。
【0086】
順次接触工程 a)はパイロシークエンシング法に特に有用であり、順次接触工程 b)は、それぞれが異なる色素で標識された蛍光標識ヌクレオチド等の標識ヌクレオチドを用いる場合に特に有用である。
【0087】
ヌクレオチドの配列は所定の順番および/または所定の組合せで添加されてもよく、シークエンシングは核酸鋳型の配列決定に必要とされる十分な回数が繰り返されるという点で、方法全体は反復性であると理解される。例えば、A、T、G、およびCは公知の変異部位においてのみ添加され得る。この実施形態の利点は、必要な塩基添加数がより少ないため、この手法によって既知の変異の検出が迅速化されることである。
【0088】
好ましくは、本発明の方法は更に、各前記接触工程の最中および/または後に核酸鎖を分析する工程を含む。分析は如何なる分析であってもよいが、パイロシークエンシングという状況において、分析工程は、前記分析の各工程中に光のアウトプットを核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドの数と関連付けることにより核酸鎖中の次の塩基対を同定することを含むと理解される。ヌクレオチドの取込みを検出するための全ての適切且つ好適な技術的方法が当業者により採用され得る。例えば、反応により発生した光を検出するための好適な検出器は光電子増倍管(PMT)である。回転可能なプラットフォームが回転すると、サンプルが検出器を通過する、好ましくは全てのサンプルが検出器を通過すると理解される。
【0089】
好ましいいくつかの実施形態では、別個の領域を後続する試薬と接触させる前に、各前記支持体表面について洗浄用の試薬を用いた洗浄またはリンス工程を実施する。洗浄用の試薬は、前の接触工程に由来する残留溶液を洗い流すのに適した、好ましくは前の接触工程に由来する実質的に全ての残留溶液を洗い流すのに適した、試薬であり得る。しかし、好ましいいくつかの実施形態では、洗浄用の試薬は、次の反応工程が行われるバッファーである。また、洗浄用の試薬は、例えばアピラーゼ、ホスファターゼ等の洗浄促進物質を含んでもよい。好適な洗浄用の試薬は当業者に周知である。
【0090】
前述したように、変性工程は、核酸鎖を加熱して変性させること、核酸鎖を高pHに曝露すること、または核酸鎖を好適な酵素または酵素混合物に曝露することを含んでもよい。
【0091】
好ましいいくつかの実施形態では、本発明の方法は、核酸鎖を変性させた後に、リンス用の試薬を用いたリンス工程により相補鎖を除去する工程を含む。
【0092】
前記核酸鎖を分注するための、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを分注するための、ならびに洗浄用の試薬を分注するための装置は、如何なる装置であってもよいが、好ましくは、装置は、インクジェットタイプの技術と類似のもの、圧電作動、またはエアパルスにより駆動するものである。また、装置は、回転可能なプラットフォームから振り落とされる廃試薬を抽出するための真空抽出システムを具備することが好ましい。装置はまた、パイロシークエンシング反応により発生する光を検出するための好適な検出手段を具備する。好適な検出器、例えば回転可能なプラットフォームの上に取り付けられてもよい光電子増倍管は当業者に公知である。
【0093】
変性及び所望により、相補的核酸鎖を除去するための装置は、プラットフォームを約94℃に加熱するための装置、または加熱された試薬もしくは他の変性化学物質を分注する、シリンジもしくはぜん動ディスペンサーをさらに含み得る。
【0094】
別のひとつの検出方法では、プラットフォームの各ウェルの下に1または複数の固体pHメーターが取り付けられている。したがって、配列検出のための結合DNAの担持に磁性ビーズを用いることができ、各シークエンシングサイクルの間に前述したようにウェルを洗浄することができるので、プラットフォームは再利用可能である。シークエンシング終了後、プラットフォームの下から磁石を取ることによりビーズを外すことができ、プラットフォームを完全に洗浄し、次いで分析用の新たなサンプルをロードすることができる。ISFET(51)のコストは、プラットフォームに合わせてカスタマイズされた場合には、使用後のISFET検知プラットフォームを使い捨てることができるのに十分である程度に安くなり得るので(すなわち、半導体チップのように)、本出願人は、プラットフォームを使い捨てにすることもできると考える。
【0095】
当業者には、ポリメラーゼがヌクレオチドを付加する時にH+イオンが放出され、これにより局所的pHが変化し、これは例えば固体pHメーターで検出できることが理解されよう。例えば、本発明者らは、参照により本明細書に取り込まれるDNAエレクトロニクス社(DNA Electronics Ltd.)の米国特許出願公開第2010/0151479号を参照し、これにおいて、トランジスタの表面またはその近傍におけるイオン電荷の局所的変動に応じて電気的アウトプットシグナルを発生させるように配置されたイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を含む検知装置が開示されている。この例では、絶対値ではなくイオン電荷の変動が測定される。このアプローチは、天然ヌクレオチドを順次添加できるので化学を簡便にし、pH変化が検出された場合、ビーズを捕捉し、ウェルを洗浄し、新たなラウンドのヌクレオチドを添加する。
【0096】
好ましくは、再利用可能なプラットフォーム上でISFET検出システムを用いる場合、ssDNAの捕捉に磁性ビーズが用いられる。使い捨てISFET検出プラットフォームを用いる場合、ssDNAを捕捉するためにISFETのゲートの表面をコーティングしてもよく、磁性ビーズを用いてもよい。
【0097】
更なる一つの態様では、本発明は、本発明の回転可能なプラットフォームと組み合せた且つ別個の着脱可能な支持体表面を各ウェル中に用いた、ISFET検出器の使用を提供する。好ましくは、ISFET検出部品は各ウェルの底部を形成する。
【0098】
当業界の知識を有する読み手は、本発明が本明細書に開示されている実施形態および特徴、ならびに開示されている実施形態および特徴のあらゆる組合せおよび/または派生形態(permeation)を含むことを理解するだろう。
【0099】
添付の図面を参照して以下に本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1A図1Aは、本発明の回転可能なプラットフォームの平面図である。
図1B図1Bは、図1Aに示す回転可能なプラットフォームの側面図である。
図1C図1Cは、図1Bの線1C−1Cにおける断面図である。
図2A図2Aは、図1に示す回転可能なプラットフォームの一つの実施形態の斜視図である。
図2B図2Bは、図1に示す回転可能なプラットフォームの一つの実施形態の断面斜視図である。
図3図3は、図1Aに示す回転可能なプラットフォームが中に設置された装置の断面図である。
図4図4は、反応をモニタリングするための集束光学部品を用いた光学的検出装置を示す図である。
図5図5は、反応をモニタリングするための直接イメージングを用いた光学的検出装置を示す図である。
図6A図6Aは、(A)Streptavidin Mag Sepharoseのパイロシークエンシングのピーク高さを示す図である。
図6B図6Bは、(B)MyOne Streptavidin C1のパイロシークエンシングのピーク高さを示す図である。
図6C図6Cは、(C)Sera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinのパイロシークエンシングのピーク高さを示す図である。
図7図7は、より高い振動数での混合を用いてStreptavidin Mag Sepharoseビーズで達成されたパイロシークエンシングのピークを示す図である。
図8図8は、1500rpmの遠心速度で洗浄したSera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinに固定されたPCR増幅産物に、酵素および基質のミックスを添加した後の高いピークを示す図である。
図9図9は、Dynabeads MyOne Streptavidin C1ビーズに固定されたDNA標的を用いたパイロシークエンシング中に観察された移相およびより広いピークシグナルを示す図である。
図10図10は、ウェル1〜3にロードされた磁性ビーズを示すプラットフォームの実際の製品の写真である。
図11図11は、プラットフォームを回転させるためのモーター(50)が係合した本発明に係るプラットフォームの斜視図であり、プラットフォームに磁力がほとんどまたは全く加わらない第1の位置の環状周囲磁石リング(20)を示している。
図12図12は、プラットフォームを回転させるためのモーター(50)が係合した本発明に係るプラットフォームの斜視図であり、プラットフォームに磁力がほとんどまたは全く加わらない第1の位置の環状周囲磁石リング(20)を示している。
図13図13は、第1の位置の磁石リング(20)を示す断面側面図である。
図14図14は、第2の位置の磁石リング(20)を示す断面側面図である。
図15】本発明の別の一つの実施形態であり、回転下でビーズが回転して穴(cavity)の中に入り且つフリットまたは類似のフィルター(60)を介して遠心力により廃液が運ばれるように形成および配置されたウェルを有するプラットフォームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
定義
本発明の説明および特許請求の範囲において、次の用語は以下の定義に従って用いる。また、本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明することを意図しており、限定することを意図しないと理解される。特に断りのない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の知識を有する当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0102】
文脈で明確に定めない限り、明細書および請求項の全てにおいて、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」等の語は、排他的または網羅的な意味とは半体の包括的な意味、すなわち「を含むが、これらに限定されない」という意味で解釈されるものとする。
【0103】
以下、または特に明記されていない限り、「%」は「重量%」、「比」は「重量比」、「部」は「重量部」を意味する。
【0104】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターは近似値(approximation)であるが、具体例中で記載される数値は可能な限り正確に記載する。しかし、如何なる数値も、各試験測定値に見られる標準偏差に必然的に起因するいくらかの誤差を内在的に含む。
【0105】
より簡潔な説明のため、本明細書中で用いられる定量的表現の一部は「約」という用語で限定されていない。「約」という用語が明示的に使用されているかどうかに関わらず、本明細書中に示されているあらゆる量は、実際に記載されている値を指すことを意味し、また、所定の値の実験および/または測定条件を加味した近似値を含む、当該所定の値の、当該技術分野の通常の能力に基づいて合理的に推量される近似値を指すことを意味すると理解される。
【0106】
本明細書において用いられている、「主に」および「実質的に」という用語は、特に断りのない限り、50重量%超を含むことを意味する。
【0107】
端点を用いた数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0108】
「好ましい」および「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じまたは他の状況下で、別の実施形態が好ましいこともある。また、1または複数の好ましい実施形態の記載とは、他の実施形態が有用でないことを暗示しているのではなく、本発明の範囲から別の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0109】
列挙された項目のリストは、項目のいずれかまたは全部が相互に排他的であることを暗示していない。列挙された項目のリストは、特に明示されていない限り、項目のいずれかまたは全部が集合的に何かを網羅していることを暗示していない。列挙された項目のリストは、それらが列挙されている順番に何らかの様式で項目が順序づけられることを暗示していない。
【0110】
本発明において、「結合パートナー」という用語は、如何なるリガンド/受容体対であり得る結合パートナー対の1つを意味すると理解される。結合パートナー対の一方は「第1結合パートナー」と呼ばれ、結合パートナー対の他方は「第2結合パートナー」と呼ばれる。例えば、結合パートナー対は、ストレプトアビジン/アビジンおよびビオチンであり得る。結合パートナー対は、例えばストレプトアビジンおよびビオチン化核酸を含み得る。
【0111】
本発明において、「回転可能」という用語は、回転されるように構成されていることを意味することが意図される。また、「ビーズ」、「粒子」、および「固体支持体」という用語は相互に交換可能に用いられており、「プラットフォーム」および「ディスク」も同様であると理解されるべきである。
【0112】
発明の好ましい実施形態
多くの実施形態が本特許出願中に記載されており、例示を目的として提示されているにすぎない。記載されている実施形態は如何なる意味においても限定することを意図してしない。本発明は、本明細書の開示から容易に明らかであるように、多くの実施形態に広く応用可能である。これらの実施形態は、当業者が発明を実施できるように十分詳細に説明されており、他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱せずに他の変更を加えてもよいと理解されるべきである。したがって、当業者には、種々の改変および変更をと共に本発明を実施し得ることが理解されよう。ここで、図面を参照するが、全体として同様の参照符号が同様の部材を指す。
【0113】
ここで、パイロシークエンシングに関連して本発明の好ましい一つの実施形態を説明する。パイロシークエンシングに関連する好ましい一つの実施形態の説明は、本発明をパイロシークエンシングアッセイに限定するものとして解釈されるべきではない。
【0114】
図1に関して、核酸のシークエンシングを行うために核酸鎖を選択的に保持するためのビーズの形態の、少なくとも1つの支持体表面を収容するように構成されている2つ以上のウェル2を含むポリカーボナートディスク1の形態の、回転可能なプラットフォーム(またはディスク)が提供される。ウェル2は、好ましくは直径2〜3mmであり、ディスク1の外周近辺に等間隔で配置されている。例えば、直径120mmのディスク1は円周が377mmであり、6mm(別個領域/標的部位2の中心間)間隔で配置された直径3mmの別個領域2を、ディスク1の中心から半径55mmの場所に形成することにより、ディスク1の外縁近辺に約57個のウェルが設けられる。しかし、より大きなディスク1またはより小さな別個領域(例えば直径0.5mmで間隔が例えば1mm)のいずれかまたはその組合せを用いることにより、ウェルの数はこれより少なくてもよく、多くてもよい。好ましくは、ウェル2は浅いウェルであり、容積が約0.5〜100μLである。
【0115】
別の一つの実施形態が図2に示されており、図中、同様の構成物には同様の参照符号が与えられている。この例では、回転可能なプラットフォームは直径120mmであり、50個のウェルが外縁近辺に等間隔に配置されている。ウェルは、直径が約3mmであり、ポリカーボナート、透明ポリスチレン、および白色の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む材料から作製することができる。プラットフォームの厚さは典型的には1〜5mmであり、ウェルの深さは約4mmである。
【0116】
好ましく用いられるシークエンシング法はパイロシークエンシングである。しかし、前述したように、他の核酸鎖シークエンシング法も用いられ得ると考えられる。好ましくは、ウェル2は核酸鎖を選択的に固定するように構成されている支持体表面を含む。例えば、核酸鎖はビオチン化されていてよく、支持体表面は、ビオチン化核酸鎖を支持体表面に結合させるためのストレプトアビジンを含む。しかし、核酸鎖を支持体表面に固定するために他の化学も利用可能であると理解される。
【0117】
核酸鎖のシークエンシングを行うための本発明の方法によると、回転可能なプラットフォーム1が提供され、ウェル2に含まれる支持体表面に核酸鎖が固定される。次いで、例えばプラットフォーム1を、したがって支持体表面を、約/およそ94℃に加熱することにより、相補的核酸鎖を変性および除去する。次いで、ウェル2に好適な試薬を分注することにより支持体表面をA、T、G、およびCヌクレオチドに順次接触させ、各接触工程間に、残留または未反応ヌクレオチドがウェル2から遠心力で実質的に除去されるように、プラットフォーム1を回転させる。
【0118】
本発明の方法は更に、各前記接触工程の最中および/または後に核酸鎖を分析する工程を含む。分析工程は、ヌクレオチドの取込みにより生じる光のアウトプットを核酸鎖に結合したヌクレオチドの数と関連付けることにより、核酸鎖中の次の塩基対を検出することを含む。反応により発生する光を検出するための好適な検出器は光電子増倍管である。回転可能なプラットフォーム1が回転すると全てのサンプルが検出器を通過すると理解される。ヌクレオチドが取り込まれなかった場合、光シグナルはなく、遠心力を用いて反応混合物が振り落とされ(サイクル毎または第10〜第50サイクル毎(例えば)のいずれか、ただし第80サイクル未満)、次のヌクレオチドで別のラウンドが開始される。
【0119】
好ましいいくつかの実施形態では、ウェル2を次のヌクレオチドと接触させる前に、洗浄用の試薬を用いる洗浄またはリンス工程を、各支持体表面2に実施する。洗浄用の試薬は、前の接触工程に由来する残留溶液を実質的に洗い流すことが可能な如何なる試薬であってもよく、好ましくはPCRバッファーである。
【0120】
好ましくは、ヌクレオチド試薬および酵素を分注する間は、回転可能なプラットフォーム1を、例えば約10〜200rpmの低速で回転させ、洗浄用の試薬を分注する間は、プラットフォーム1を、例えば約400〜4000rpmの高速で回転させる。
【0121】
図3に関して、本発明はまた、核酸鎖をシークエンシングするための回転可能なプラットフォーム1と共に用いる装置を提供する。装置は、予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、プラットフォーム1を回転させるためのモーター50、例えば約10〜4000rpmの回転速度を与えることができるモーターを含む。また、支持体表面に核酸鎖を固定するためにウェル2に核酸鎖を分注するための装置が提供される。そのような装置は、インクジェットタイプの技術またはシリンジポンプ等の好適なディスペンサー7の形態を取ってもよい。また、A、T、G、および、Cヌクレオチドを分注して支持体表面と接触させるためかつ洗浄用の試薬を分注するための装置が提供される。やはり、そのような装置はインクジェットタイプの技術の形態を取ってもよい。また、相補的核酸鎖を変性および除去する装置が提供され、そのような装置は、筐体4内に配置された加熱コイル(この図には示されていない)の形態を取ってもよい。
【0122】
パイロシークエンシング反応により発生した光を検出するための好適な検出器8も提供される。例えば、回転可能なプラットフォーム1の上に取り付けてもよい光電子増倍管等の好適な検出器は当業者に公知である。ここで、本発明で使用するための光電子増倍管検出器の種々の実施形態を示す図4および5を具体的に参照する。光学的配置の1つでは集束光学部品(図4)を用い、第2の光学的配置では直接イメージングを用いる(図5)。図4は、集束レンズ10、開口部11、感光性表面12、光電子増倍管13、および検出用電子機器14を示す。図5は、開口部15、感光性表面16、光電子増倍管検出器17、および検出用電子機器18を示す。
【0123】
遠心力がウェル2から混合物が移動せず、反応の進行および光学的検出の完了が可能となるのに十分に低くなるよう、回転可能なプラットフォーム1は、酵素およびヌクレオチド混合物を分注するために低速(すなわち、200rpm以下)で回転させることができる。洗浄によって、ウェル2から全ての試薬が除去され且つウェル2の間が実質的に汚染されないように、洗浄用の試薬を高回転速度(すなわち、400+rpm)で添加することができる。
【実施例】
【0124】
磁性ビーズを用いたパイロシークエンシング
DNA標的のヌクレオチド配列を決定するためのパイロシークエンシングの使用では、DNA標的を固体支持体に固定する必要がある。パイロシークエンシングプロトコールの簡単な説明は以下の通りである:
(1)ビオチン化二本鎖DNAを固体支持体に固定:
(2)化学的変性と通して非ビオチン化鎖を分離;
(3)洗浄による非ビオチン化鎖の除去;
(4)シークエンシングプロセスの開始を促進するための、オリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング;
(5)パイロシークエンシングを可能にするための酵素および基質の混合物の添加;
(6)DNAポリメラーゼ(両方のヌクレオチドが相補的であることを確実にする)により標的DNAに取り込まれる第1のデオキシリボヌクレオチド(dNTP)を添加(dispensation);
(7)相補的塩基の取込み後、ピロリン酸分子が放出され、それは酵素反応カスケードを介して光シグナルに変換される。シグナルの強度を用いて1または複数のヌクレオチドが連続して存在するかどうかを決定する;
(8)取り込まれなかった過剰なdNTPを分解して、確実にそれらがシークエンシング反応の次の部分で取り込まれないようにする。これにより、全ての標的鋳型間で配列の同調を維持することを確実にする;
(9)次の相補的塩基を加えることによりシークエンシング反応を続ける。
【0125】
パイロシークエンシング反応に用いられるビオチン化DNAの固定は、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンでコーティングされた磁性ビーズ55を用いて達成することができる。磁性粒子55は、より大きな表面積を提供し、反応溶液内での移動を可能にし、結合能およびビオチン化DNA標的の固定確率を高める。
【0126】
この例では、プラットフォーム/ディスク1のウェル2中で結合バッファーと共に磁性ビーズ粒子55とビオチン化DNA標的を一定期間(例えば10分間)混合することによりDNA鋳型を固定した。固定期間後、パイロシークエンシング反応に望ましくない非結合鋳型と種々の他の試薬を含む上清とを遠心力で除去した。遠心の前に、磁石リング20を上昇させてプラットフォームに接触させ、磁性粒子をウェルの底に固定した。磁石リングをプラットフォーム表面の1mm未満下に下げて、2000rpm超の速度でプラットフォームをスピンさせて上清を遠心除去できるようにしつつ、ウェル内に磁性ビーズ粒子が保持されるのに十分な磁場を提供した。上清の十分な除去を確実にするために、洗剤を含むバッファーを用いた洗浄工程を適用した。同じ遠心工程を用いて洗浄バッファーを除去した。
【0127】
非ビオチン化DNA鎖の変性は、水酸化ナトリウム変性剤を20秒以下適用したことにより実現した。遠心により変性剤を除去し、最大限に除去を行なうために洗浄バッファーを加えた。再度、磁性ビーズ粒子をウェル内に保持しつつ上清の遠心ができるように磁石リングを適用した。
【0128】
パイロシークエンシング反応を促進するために、シークエンシングプライマーを加え、サンプルを80℃超に加熱して30℃未満の温度に冷却するアニーリングプロセスを介してDNA標的にハイブリダイズさせた。
【0129】
アニーリングプロセス完了後、パイロシークエンシング酵素ミックスを、APSおよびルシフェリンを含む基質ミックスと共にウェルに分注した。反応が確実にランダムに起こるように磁性ビーズ粒子を反応溶液中で振動させた。説明すると、プラットフォームを十分に振動させることにより、ビーズが撹拌され、それによって溶液およびビーズ粒子が十分に混合されるようにした。
【0130】
最後に、少量のdNTPを反応ミックスに添加(dispensing)し、配列のその部分に相補的塩基が存在したかどうか光シグナルを測定することにより、配列を決定した。アピラーゼによる過剰な非結合dNTPの分解が確実にされるように1分間の時間を与えた。dNTPのいずれかひとつを添加すること(dispensing)により配列を決定した。また、反応中にプラットフォームを回転させながら、磁性ビーズが一定の運動を維持するように且つ更に互いに凝集または付着するのを防ぐように、プラットフォームを振動させる。
【0131】
磁性ビーズ粒子
様々な種類の磁性ビーズ粒子の性能を評価した:
・Dynabeads MyOne Streptavidin C1(インビトロジェン社製):親水性ビーズ表面に共有結合によりコーティングされたストレプトアビジンの単分子層を有する直径1μmの超常磁性ビーズ;
・Sera−Mag Magnetic SpeedBeads(サーモサイエンティフィック社製):ニュートラビジンで共有結合によりコーティングされた、コア−シェルプロセスにより作製された1μmの磁性カルボキシラート改変ベース粒子;
・Streptavidin Mag Sepharose(GEライフサイエンス社製):マグネタイト含有セファロースビーズにカップリングしたストレプトアビジン。
【0132】
磁性ビーズ粒子を以下について評価した:
(1)ビオチン化DNA標的を固定する能力;
(2)遠心プロセス中にウェル内に残るかどうか;
(3)パイロシークエンシング反応中のタンパク質の非特異的結合の回避。
【0133】
結果
固定
3種類のビーズ全てがビオチン化DNAを固定できたことが見出された。最も高いパイロシークエンシングピークシグナルの高さはSera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinで観察され、次いでDynabeads MyOne Streptavidin C1、次いでStreptavidin Mag Sepharoseであった(図6A〜C参照)。Streptavidin Mag Sepharoseビーズでのシグナルは他の2種類のビーズより有意に低かった。2つの理由が見つかった。第1に、ビーズのサイズおよび重量のために、これらは標準的な振動条件下でよく混合されなかった。第2に、ビーズの暗い色により、吸収による光シグナルが弱められた。第1の問題に対する解決方法は、より高い振動数で振動させることであった。実際、より高い振動数によりより良く混合され、そのためシグナルピーク高さが向上した(図7参照)。
【0134】
遠心
固定されたDNAから望ましくない反応分子を、最適に除去することを実現するために、遠心の回転速度は2000rpm超である必要があると決定された。1500rpmの洗浄遠心を用いてポリメラーゼ連鎖反応液から単離されたDNAを用いた結果から、酵素および基質ミックスの添加によって高いピークが示された(図8参照)。得られたシークエンシングピークは有意に減衰していた。酵素および基質を添加した後の高いピークの原因は、磁性ビーズ粒子にDNAを固定した後の洗浄工程中のPCR成分の除去が不十分であったことで説明できる。PCRに由来する残留dNTPの全てが酵素および基質ミックスの添加によって取り込まれて即座に配列を完成するため、取り込まなかった鋳型がほとんど残らないため、その後の残りのシークエンシング反応が減衰して、単一の高いピークが生じる。データから、上清の完全な除去を達成するためには2000rpm超の回転速度が必要であることが示された。
【0135】
2000rpm超の遠心速度を適用すると、streptavidin mag sepharoseビーズ以外は全てウェルから除去された。これらのビーズはサイズがより大きいため、2000rpm超の速度でウェル内に残った。
【0136】
非特異的結合
ビーズの一部の外側シェルの組成のため、パイロシークエンシング反応で用いられる酵素の非特異的結合が、得られるピークおよび配列に悪影響を与え得る。この現象の特徴の1つはピークの広がりである。これは、過剰な非結合ヌクレオチドを分解する酵素アピラーゼの減少に起因する。また、アピラーゼの量の減少により、過剰なヌクレオチドが非同期的に取り込まれ、シークエンスの位相がずれる。そのため、シグナルを有することが予想されないヌクレオチド注入でピークが観察されるので、得られた配列は解釈不可能になる。
【0137】
このような問題がDynabeads MyOne Streptavidin C1ビーズで観察された(図9参照)。実際、ピークの幅および非特異的ピーク高さの両方が他の2つのビーズと比べて最大であった。最も影響の少なかったビーズはStreptavidin Mag Sepharoseビーズ粒子であった。理論により束縛されるものではないが、セファロースシェルは不活性であり、そのため非特異的結合が回避されると考えられる。逆に、Dynabeads MyOne Streptavidin C1ビーズ粒子のビーズ表面は、逆帯電したアピラーゼを引き付ける電荷を含むので、それをビーズに結合させる。結合したアピラーゼはもはや過剰ヌクレオチドの分解に用いることができず、シークエンスに移相を生じさせる。
【0138】
結論
様々な種類のビーズについての観察結果に基づき、使用に最適なビーズはStreptavidin Mag Sepharoseビーズであると結論付けたが、他のビーズも依然として本発明の方法に用いることができると理解されるべきである。磁性粒子は、シークエンシングのためによりクリーンな鋳型を確保するために、特定の速度で洗浄遠心を行うことによってDNA標的を固定することができた。また、不活性な外側シェルは、パイロシークエンシング酵素の非特異的結合がdNTPの非同期取込みを介してシークエンシング性能に影響を与える問題ではないことを意味した。
【0139】
図6A〜Cは、A)Streptavidin Mag Sepharose、B)MyOne Streptavidin C1、およびC)Sera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinのパイロシークエンシングピーク高さを示す。1ピコモルのDNA鋳型を10μLの結合バッファー溶液に加え、10分間インキュベーションした。NaOHを用いた変性の前後に、固定されたビーズをバッファー溶液中で洗浄した。シークエンシングプライマーを濃度400nMで加え、80℃で60秒間加熱し、次いで30℃に冷却することによりアニーリングさせた。酵素および基質を加え、15サイクルのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTPを用いてパイロシークエンシング反応を新規に行った。Sera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinで最も高いピークが観察された。
【0140】
図7は、高振動数の混合を用いてStreptavidin Mag Sepharoseビーズで達成されたパイロシークエンシングのピークを示している。シグナルピークは平均単一ピーク高さが5から40単位超に増加した。しかし、磁性ビーズ粒子の色がより暗いことによるシグナルの減弱のため、ピーク高さは他の2つのビーズで観察されたものを超えなかった。
【0141】
図8は、遠心速度1500rpmで洗浄したSera−Mag Magnetic SpeedBeads Neutravidinに固定したPCR増幅産物に酵素および基質ミックスを添加した後の高いピークを示している。それに続く、酵素および基質ミックス添加後のシークエンシング反応ピークは有意に減衰した。同じビーズは、2000rpm超での遠心後にはウェル内に残らなかった。
【0142】
図9は、Dynabeads MyOne Streptavidin C1ビーズに固定したDNA標的を用いたパイロシークエンシング中に観察された移相およびより広いピークシグナルを示している。図25は、ウェル1〜3にローディングされた磁性ビーズを示すプラットフォームの実際の製品の写真である。図26および27は、プラットフォームを回転させるモーターが係合した本発明に係るプラットフォームの斜視図であり、プラットフォームに磁力がほとんどまたは全く適用されていない第1の位置にある環状周囲磁石リングを示している。図28および29は、それぞれ第1および第2の位置にある磁石リングを示す断面側面図である。第2の位置では、リングは、ウェルに含まれている磁性ビーズに磁力が作用するようにプラットフォームの十分近く配置されている。
【0143】
図15は本発明の別の一つの実施形態であり、回転下でビーズが回転して穴の中へ入るるように且つフリットまたは類似のフィルターを介して遠心力により廃液が運ばれるように形成および配置された、ウェルを有するプラットフォームを示している。
【0144】
前述したように、DNA配列の決定は、パイロシークエンシングアプリケーションを用いることによって達成可能である(Agah A., Aghajan M., Mashayekhi F., Amini S., Davis R., Plummer J.D., Ronaghi M., Griffin P.B., A multi−enzyme model for pyrosequencing, Nucleic Acids Res., 2004; 32: e166参照)。シークエンシングは、DNAポリメラーゼ酵素により一本鎖鋳型に相補的な3’デオキシリボヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)が取り込まれた後のピロリン酸の放出を検出することにより達成される。まず、ピロリン酸はスルフリラーゼ酵素によってアデノシン三リン酸(ATP)に変換されなければならない。これは、光シグナルを生成するルシフェラーゼ酵素を介したATPとルシフェリンの反応であり、ヌクレオチドの取込み、したがって鋳型鎖の配列を示す。前に添加したヌクレオチドからの干渉を受けずに次のヌクレオチドの取込みおよび検出が可能となるように、アピラーゼ酵素を用いる。アピラーゼは、次のヌクレオチドが添加される前に過剰なヌクレオチドを分解する。
【0145】
パイロシークエンシングのプロセス中、硫酸塩およびヌクレオチド二リン酸等の副産物が蓄積する。これらの副産物は酵素を阻害し、長いシークエンスの実行(a long sequence run)中のシグナルの質を低下させる。例えば、アピラーゼの阻害により、非取込みヌクレオチドの除去が減少し、これにより塩基の非同期的取込みが起こるのでシグナル検出が不良になる。その結果、パイロシークエンシングアプリケーションを用いたシークエンシングの長さは現在60ヌクレオチド以下に限定される(Mashayekhi F., Ronaghi M., Analysis of read−length limiting factors in pyrosequencing chemistry, Anal. Biochem., 2007; 363: 275−287参照)。
【0146】
したがって、副産物阻害の影響を低減してリード長を伸ばすために、本発明は、複数回のヌクレオチド暴露後に反応成分を洗い流すことを可能にし、支持体への鋳型の結合を確実に維持しつつ、新鮮な試薬を加えて次のシークエンスセクションを続けることを可能にしている。
【0147】
本発明を実際に実施するための形態または最良の形態であると現時点で考えられる実施形態を参照して本発明を図解および説明しているが、本明細書に開示されているおよび以下に続く請求項に包含されているより広い発明の概念から逸脱することなく様々な実施形態へ本発明を適応させる上で種々の変更が行われ得ると理解されるべきである。
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