【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの支持体表面を各ウェル中にローディングする、回転可能なプラットフォームの使用方法に関する。支持体表面は、第1および第2結合パートナー対の、第1または第2結合パートナーを結合または固定するように構成されている。第1および第2結合対はアッセイの一部であり、アッセイは、好ましくは核酸のシークエンシング、より好ましくはパイロシークエンシングである。プラットフォームの外部の地点からアッセイの試薬をウェルに分注し、支持体表面と接触させる。使用済みまたは消費後の試薬は、プラットフォームの十分な回転により遠心力で除去され得、支持体表面は、遠心中、ウェル中に保持される。支持体表面を保持する如何なる方法は本発明の範囲内であり、ほんの一例として、支持体表面は好ましくは磁性ビーズであり、遠心中にウェル中に磁性ビーズを保持するために磁石が用いられる。パイロシークエンシングの状況で、好ましくは一本鎖DNA(ssDNA)が遠心洗浄アプローチにより単離される。試薬は、試薬を新たに添加した後、毎回、または複数回の添加後に除去されてもよい。遠心洗浄工程は、支持体表面を乾燥させ、後続する試薬に対して支持体表面を準備し、アッセイに由来する望ましくない副産物も除去する。本発明はまた、プラットフォームを回転させ且つ支持体表面を各ウェル内に維持する装置ならびにプラットフォームおよび支持体表面を含むキットに関する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は第1結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記第1結合パートナーを前記支持体表面に結合または固定する工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェル中に試薬を分注する工程であって、前記分注工程後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように前記プラットフォームを十分に回転させる工程
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸シークエンシングを行うための方法を提供する。
【0013】
好ましくは、核酸シークエンシングはパイロシークエンシングである。
【0014】
好ましくは、支持体表面は磁性粒子の形態であり、プラットフォームの回転中に前記磁性粒子が前記ウェル内に磁気により保持されるように前記プラットフォームの十分近くに磁石を配置することにより、前記磁性粒子は前記ウェル内に磁気により維持される。好ましくは、磁石は、プラットフォームの下に設けられているプレートまたはリングの形態である。好ましいいくつかの実施形態では、磁石プレートまたはリングは更に、約150℃まで前記ウェルを加熱することにより前記支持体表面を加熱するように構成されている。しかし、別の一つの実施形態では、前記プラットフォームの回転中に前記ウェル内に前記磁性粒子が磁気により維持されるように電磁石が係合(engaged)している。
【0015】
好ましいいくつかの実施形態では、プラットフォームは実質的に円形であり、前記ウェルは、前記円形プラットフォームの外縁近辺に分布されている。好ましくは、約2〜500個のウェルが前記プラットフォームの外縁近辺に分布されており、前記プラットフォームの直径は約50〜500mmであり、前記プラットフォームの厚さは約1〜6mmである。好ましくは、ウェルは、体積が約0.5〜100μLであるか、深さが約0.5〜5mmである。好ましくは、ウェルは約1〜約50個の別個の支持体表面を収容するような寸法である。
【0016】
別の一つの実施形態では、ウェルは、前記プラットフォームの回転中に前記支持体表面を受けるための凹部(recess)を含み、前記凹部は、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように前記プラットフォームの回転中に前記支持体表面は保持するが前記試薬は通過させるように構成されるフィルターを含む。
【0017】
好ましくは、プラットフォームは、ポリカーボナート、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリエチレン、およびポリプロピレンからなる群から選択されるプラスチック材料で形成されているか、またはガラスもしくは石英で形成されている。好ましくは、廃液を受けるために前記プラットフォームの周辺にトラフ(trough)が配置され、廃液は、回転中に前記プラットフォームから振り落とされるかまたは遠心除去される。
【0018】
好ましくは、第1結合パートナーは、化学的吸着または共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により前記支持体表面に結合しているか、または前記第1結合パートナーはファンデルワールス力により前記支持体表面に固定される。
【0019】
好ましくは、各前記ウェルに一連の試薬が分注され、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2結合パートナーを含み、その後の試薬は、洗浄および/またはリンス用の試薬ならびに検出可能なシグナルを現像するための試薬から選択される。好ましくは、本発明の方法は、各前記分注工程の最中および/または後に核酸シークエンシングを分析する工程を更に含む。
【0020】
好ましくは、本発明の方法は、前記試薬を分注しながら回転可能なプラットフォームを約10〜200rpmの速度で回転させる工程および回転可能なプラットフォームを400rpm超の速度で回転させて前記ウェルから前記試薬を遠心力で実質的に除去する工程を更に含む。好ましくは、プラットフォームは、分注工程中にウェルから試薬が遠心力で除去されないような、十分な低速で回転され、洗浄または乾燥工程中にウェルから試薬が遠心力で除去されるような、十分な高速で回転される。好ましくは、十分な高速は、400rpm超であり、1000、2000、3000、4000rpm、またはそれ以上であってもよい。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、前記試薬と前記支持体表面が完全に混合するようにプラットフォームを十分に振動させる。
【0022】
第2の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面をキット中に含むキットであって、前記支持体表面が第1結合パートナーを固定するように構成されているキットを提供する。好ましくは、支持体表面は、前記ウェル中に収容され、前記支持体表面を前記ウェルに保持するために前記プラットフォームの表面に着脱可能な使い捨てシートが付着している。好ましくは、キットは、核酸シークエンシングを行うための、特にパイロシークエンシングのための、1または複数の試薬を含む。
【0023】
第3の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記プラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、前記第1結合パートナーを前記磁性粒子に固定するために前記ウェルに第1結合パートナーを分注するための装置;
前記ウェルに試薬を分注するための装置;および
所望により、洗浄用の試薬を分注するための装置、
を含む核酸シークエンシングを行うための装置を提供する。
【0024】
第4の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は第2結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記第2結合パートナーを前記支持体領域に選択的に結合または固定する工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに試薬を分注する工程であって、前記分注工程後、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸シークエンシングを行うための方法を提供する。
【0025】
好ましくは、第1結合パートナーが既に、化学的吸着または共有結合、イオン結合、もしくは水素結合により前記支持体表面に結合しているか、または第1結合パートナーがファンデルワールス力により前記支持体表面に固定されており、前記第2結合パートナーは、前記支持体表面に既に結合している前記第1結合パートナーと結合可能または反応可能である。
【0026】
好ましくは、各前記ウェルに一連の試薬が分注され、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2結合パートナーを含み、その後の試薬は、洗浄用および/またはリンス用の試薬から選択される。
【0027】
第5の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームおよびに少なくとも1つの支持体表面を含むキットであって、前記支持体表面が第2結合パートナーを選択的に結合または固定するように構成されているキットを提供する。
【0028】
第6の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記プラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、第2結合パートナーを前記磁性粒子に選択的に固定するために前記ウェルに前記第2結合パートナーを分注するための装置;
前記ウェルに試薬を分注するための装置;および
所望により、洗浄用の試薬を分注するための装置、
を含む、パイロシークエンシング等の核酸シークエンシングを行うための装置を提供する。
【0029】
第7の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前記支持体表面は核酸鎖結合パートナーを固定するように構成されている工程;
前記核酸鎖結合パートナーを前記支持体表面に結合または固定し、次いで前記支持体表面に核酸鎖を選択的に結合または固定する工程;
所望により、相補的核酸鎖を変性および除去し、前記支持体表面にシークエンシングプライマーをアニーリングさせる工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに、A、T、G、および/もしくはCヌクレオチドまたはそれぞれの好適なヌクレオチドアナログを含む一連の試薬を順次分注する工程であって、前記分注工程のそれぞれまたはいずれかの後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、実質的に如何なる残留しているおよび/または未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程、
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸鎖のシークエンシングを行うための方法を提供する。
【0030】
好ましくは、核酸鎖はDNAもしくはRNAまたはその修飾された形態である。好ましくは、核酸鎖のシークエンシングはパイロシークエンシングである。
【0031】
好ましくは、核酸鎖はビオチン化されており、核酸鎖結合パートナーは、ビオチン化核酸鎖に結合するためにアビジン、ストレプトアビジン、またはアナログを含む。
【0032】
好ましくは、各前記支持体表面を、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを含む一連の試薬と順次接触させる。
【0033】
好ましくは、順次接触/分注工程は、
(a)各ヌクレオチドまたはそのアナログを所望のもしくは所定の順番で別個に順次加えること、
(b)A+T+G+Cヌクレオチドまたはこれらの所定のまたは所望のサブセットを混合物として加え、再度前記混合物を加える等、
のいずれかを含む。
【0034】
好ましくは、各前記分注工程の最中および/または後に前記核酸鎖を分析する工程を更に含む。好ましくは、分析は、光のアウトプットを核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドの数と関連付けることにより前記核酸鎖中の次の塩基対を検出することを含む。
【0035】
好ましくは、変性工程は、核酸鎖を加熱して変性させることまたは核酸鎖を高pHに曝露することを含む。
【0036】
好ましくは、方法は、前記核酸鎖を変性させた後に、リンス用の試薬を用いたリンス工程により相補鎖を除去する工程を含む。
【0037】
好ましくは、前記支持体表面に試薬が実質的に混入しないように、前記プラットフォームを回転させて残留試薬を遠心力で実質的に除去することにより、前記支持体表面を実質的に乾燥させることによって、後続する各前記試薬に対して各前記支持体表面を準備する。
【0038】
第8の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うためのキットであって、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有する回転可能なプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面を含み、前記支持体表面が核酸鎖結合パートナーを固定するように構成されているキットを提供する。
【0039】
第9の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うための第8の態様に係るキットの使用を提供する。好ましくは、アッセイはパイロシークエンシングである。
【0040】
第10の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記回転可能なプラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、核酸鎖結合パートナーを前記磁性粒子に固定するために前記ウェルに核酸鎖結合パートナーを分注するための装置;
所望により、前記核酸鎖を前記磁性粒子に選択的に固定するために前記ウェルに核酸鎖を分注するための装置;
所望により、相補的核酸鎖を変性および所望により、除去するための装置;
A、T、G、および/もしくはCヌクレオチド、それらのそれぞれのアナログ、またはその組合せを前記ウェルに分注するための装置;
洗浄用の試薬を分注するための装置;および
所望により、1または複数の酵素溶液を分注するための装置、
を含む、核酸鎖をシークエンシングするための装置を提供する。
【0041】
第11の態様では、本発明は、
少なくとも1つの支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有するプラットフォームを供給する工程;
少なくとも1つの前記支持体表面を各前記ウェル内に供給する工程であって、前期支持体表面は核酸鎖を選択的に固定するように構成されている工程;
前記支持体表面に核酸鎖を選択的に結合または固定する工程;
所望により、相補鎖核酸鎖を変性および除去し、前記支持体表面にシークエンシングプライマーをアニーリングさせる工程;および
前記プラットフォームの外部の地点から各前記ウェルに、A、T、G、および/もしくはCヌクレオチドまたはそれぞれの好適なヌクレオチドアナログを含む一連の試薬を順次分注する工程であって、前記分注工程のそれぞれまたはいずれかの後に、各前記ウェルおよび/または各前記支持体表面から、残留しているまたは未反応の前記試薬が遠心力で実質的に除去されるように、前記プラットフォームを十分に回転させる工程、
を含み、
回転中、各前記支持体表面は各前記ウェル内に維持される、
核酸鎖のシークエンシングを行う方法を提供する。
【0042】
好ましくは、支持体表面に既に核酸鎖結合パートナーが固定されており、前記核酸鎖は前記核酸鎖結合パートナーに選択的に結合する。好ましくは、核酸鎖はDNAもしくはRNAまたはその修飾された形態である。好ましくは、核酸鎖はビオチン化されており、第1結合パートナーは、ビオチン化核酸鎖に結合するためにアビジン、ストレプトアビジン、またはアナログを含む。
【0043】
第12の態様では、本発明は、1または複数の支持体表面を収容するための少なくとも1つのウェルを有する回転可能なプラットフォームおよび少なくとも1つの支持体表面を含むキットであって、前記支持体表面が核酸鎖を選択的に固定するように構成されているキットを提供する。
【0044】
第13の態様では、本発明は、核酸鎖のシークエンシングを行うための第12の態様に係るキットの使用を提供する。
【0045】
第14の態様では、本発明は、
予め決められた、調節可能であり且つユーザーが選択可能である回転速度で、回転可能なプラットフォームを回転させるための装置;
前記回転可能なプラットフォームのウェル内に磁性粒子を保持するために、前記回転可能なプラットフォームに磁石を係合させるための装置;
所望により、前記支持体表面に核酸鎖を固定するために前記ウェルに核酸鎖を分注するための装置;
所望により、相補的核酸鎖を変性および所望により、除去するための装置;
A、T、G、および/もしくはCヌクレオチド、それらのアナログ、またはその組合せを分注して前記支持体表面に接触させるための装置;
洗浄用の試薬を分注するための装置;および
所望により、1または複数の酵素溶液を分注するための装置、
を含む、核酸鎖をシークエンシングするための装置を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、回転可能なプラットフォームは、容積が約0.5〜100μLまたは深さが約0.5〜3mmである複数の比較的浅いウェルを含む。別のいくつかの実施形態では、ウェルは比較的深く、第1結合パートナーを固定するようにまたは第2結合パートナーを選択的に固定するように構成されている磁性ビーズを収容するために約5〜8mmである。この例では、ビーズは別個の領域と見なされ、各ウェルに1または複数のビーズが収容されてもよい。
【0047】
第1または第2結合パートナーは、好ましくは磁性ビーズであるビーズに好ましくは結合可能である。磁性ビーズが用いられる場合、ウェルは、ディスク/プラットフォームの回転中にビーズが遠心力で移動しない(displaced)ようにビーズを収容するのに十分な深さおよび容積であると理解される。好ましいいくつかの実施形態では、システムは、磁性環状ディスクをサンプルディスク/プラットフォームの下側で上昇させることによりまたは電磁石を作動させることにより、各ウェル内に磁性ビーズを捕捉することができる。この例では、磁性ビーズをウェル中に収容することができ、プラットフォームの回転により、周囲の試薬からビーズを実質的に乾燥させるのに十分な遠心力を加えることができる。また、プラットフォームは、複数の同心円状に配置された円状のアレイのウェルを含んでもよいと理解される。いくつかの実施形態では、第1結合パートナーをビーズまたは粒子の表面に化学的に吸着させる。別のいくつかの実施形態では、第1結合パートナーをビーズまたは粒子の表面に共有結合またはイオン結合、または水素結合により結合させ、更に別のいくつかの実施形態では、第1結合パートナーがファンデルワールス力によりビーズまたは粒子の表面に維持される。第2結合パートナーは、ビーズまたは粒子の表面に既に結合している第1結合パートナーと結合可能または反応可能であると理解される。
【0048】
本発明は特に、核酸シークエンシング法、例えばパイロシークエンシング等の方法およびアッセイに関する。例えば、第1および第2結合パートナーは、好ましくはアビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン(streptactin)、またはアナログおよびビオチンまたはアナログから選択される、結合パートナー対(所望により、その一方が検出できるように標識されていてよい)である。
【0049】
しかし、以下に更に説明するように、本発明の利点は、相対的に迅速かつ相対的に簡便な洗浄工程を提供することおよび関連した洗浄用の溶液および試薬の廃棄体積が少ないことである。
【0050】
ここで本発明をパイロシークエンシングとの関連で説明するが、本発明はこのアッセイに限定されるものではないと理解される。
【0051】
第1の実施形態では、ウェル内に維持される支持体表面が第1結合パートナーを固定するように構成されており、それは例えばアビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン、またはアナログであってもよく、その後、アビジン、ストレプトアビジン、ストレプタクチン、またはアナログは続いて、後続の処理工程において、例えばビオチン化DNAと反応させることができると理解される。更に、第2の実施形態では、支持体表面が第1結合パートナーを既に含んでおり、表面は第2結合パートナーを選択的に固定するように構成されていると理解される。したがって、第1の実施形態に係る支持体表面は「機能化されていない(unfunctionalised)」と見なすことができ、第2の実施形態に係る支持体表面は「機能化されている」または「予め機能化されている(pre−functionalised)」と見なすことができると理解される。
【0052】
好ましくは、一連の試薬の最初の試薬は、第1結合パートナーに対する第2のまたは相補的な結合パートナーを含み、その後、後続する試薬は、例えば、洗浄用またはリンス用の試薬から以下に更に説明されるように選択される。
【0053】
好ましくは、本発明の方法は更に、各前記接触または分注工程の最中および/または後に核酸シークエンシングアッセイを分析する工程を含む。好ましいいくつかの実施形態では、支持体表面を後続する試薬と接触させる前に、洗浄用の試薬を用いる洗浄またはリンス工程を各前記支持体表面に実施する。洗浄用の試薬は、前の接触工程に由来する残留溶液を実質的に洗い流すことができるまたは残留溶液および前記溶液中に存在する成分の量を低減することができる、いかなる試薬(副産物を分解するかまたは副産物の濃度を低減する例えばアピラーゼ等の活性剤または他の好適な酵素)であってよい。
【0054】
洗浄用の試薬は、前の接触/分注工程に由来する残留溶液を実質的に洗い流すことができるまたは残留溶液および前記溶液中に存在する成分の量を低減することができる如何なる試薬であってもよく、アピラーゼ等の活性剤であってもよいが、別のいくつかの実施形態では、好ましくは、過剰なヌクレオチドを除去するための洗浄工程は、その全体を参照により本明細書に援用するMashayekhi F., and Ronaghi M., Analysis of read−length limiting factors in pyrosequencing chemistry, Anal. Biochem. (2007), 363(2): 275−287に詳細に説明されているようにアピラーゼを含まない。Mashayekhi et alに詳細に説明されているように、アピラーゼを含まない洗浄工程で洗浄工程を置換するとパイロシークエンシングのリード長が改善されることが示されている。
【0055】
好ましくは、回転可能なプラットフォームは、試薬分注中、標的部位に添加された試薬が除去されないように例えば約10〜200rpmの低速で回転され、プラットフォームは、試薬分注中、例えば約400〜2000rpmの高速で回転される。しかし、他の回転速度も可能であると理解される。
【0056】
好ましいいくつかの実施形態では、前の工程に由来する試薬の前記支持体表面への混入が実質的に低減するようにまたは好ましくは実質的にないように、前記プラットフォームを回転させて残留試薬を遠心力で除去することによって、前記支持体表面を実質的に「乾燥」させることにより、後続する各前記試薬に対して各前記支持体表面の準備が整えられる。
【0057】
別のひとつの態様では、本発明は、アッセイを行うためのプラットフォームおよび支持体表面の組合せの使用を提供する。更なるひとつの態様では、本発明は、本明細書に記載のプラットフォームと、1または複数の支持体表面と、所望により、前記アッセイ用の1または複数の試薬とを含むキットを提供する。
【0058】
好ましくは、プラットフォームを回転させるための装置はモーターであり、予め決められた回転速度はユーザーが選択可能であり、約10〜5000rpmである。装置はまた、好ましくは、回転可能なプラットフォームから振り落とされる廃試薬を抽出するための吸引抽出システムを具備している。
【0059】
ここで本発明をパイロシークエンシングとの関連で説明するが、本発明はこのアッセイに限定されるものではないと理解される。
【0060】
パイロシークエンシング
好ましくは、用いられる核酸シークエンシング法はパイロシークエンシングである。しかし、以下に更に説明するように他の核酸鎖シークエンシング法は用いられ得ると理解されるだろう。
【0061】
好ましくは、前記核酸鎖は、DNAもしくはRNAであるか、または、例えば亜硫酸水素塩処理後の、もしくは天然核酸中に存在しない追加的塩基を含む、修飾された形態である。1または複数の別個の領域のそれぞれの上に核酸鎖のコピーが保持されると理解される。
【0062】
好ましくは、回転可能なプラットフォームは実質的に円形であり、直径が約50〜500mmである。好ましくは、回転可能なプラットフォームは、回転可能なプラットフォームの中心から等距離に配置された約2〜500個のウェルを含む。直径は如何なる直径でもよいと理解され、直径は、1または複数でもよいウェルの数が収まるように選択され得る。いくつかの好ましい実施形態では、ウェルは、回転可能なプラットフォームの外縁に実質的に均等に分布または配置されて実質的に円状のアレイを形成している。
【0063】
好ましくは、ウェルは支持体表面を含み、支持体表面はビーズの形態であり、ビーズは好ましくは、核酸鎖(例えば、シークエンシング鋳型またはシークエンシングプライマー)を選択的に結合、捕捉、または固定するように構成されている磁性ビーズである。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、核酸鎖はビオチン化されており、別個の領域が、ビオチン化核酸鎖に結合するためのアビジン、好ましくはストレプトアビジンまたはアナログを含む。あるいは、支持体表面またはビーズは、アビジン、好ましくはストレプトアビジンを結合、捕捉、または固定するように構成されており、その後の工程で、ビオチン化核酸鎖が、支持体表面に結合しているアビジン/ストレプトアビジンに選択的に固定される。しかし、核酸鎖を別個領域に固定するために別の化学(chemistries)を利用することもできると理解される。本発明は、核酸鎖を別個領域に固定するために用いることができる化学に限定されない。別の実施形態では、鋳型結合剤は、リガンド結合、ユニバーサルプライマー/プローブ、または抗体によるものであり得る。
【0064】
一実施形態では、ウェルは、容積が約0.5〜100μLの浅いウェルであってもよい。浅いウェルは如何なる形状であってもよく、ウェルは如何なる容積であってよいと理解される。いくつかの実施形態では、ウェルの直径は約1〜5mmである。しかし、ウェルは如何なる直径または形状であってもよいと理解され得る。
【0065】
好ましくは、回転可能なプラットフォームはプラスチック材料で形成されていることが好都合であるが、ガラスまたは石英等のその他の材料も可能であることが当業者には理解されよう。好ましくは、プラスチック材料は、ポリカーボナート、ポリスチレン、またはポリプロピレンからなる群から選択される。また、回転可能なプラットフォームは積層構造であり得ると考えられる。回転可能なプラットフォームが如何なる材料から形成されていようとも、プラットフォームは変形せずに回転に耐えることができなければならず、潜在的に、以下に更に記載する核酸変性のための熱的効果に耐えられなければならならい。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態では、実質的に円形のディスクでもよい回転可能なプラットフォームは、回転可能なプラットフォームの表面から回転中に振り落とされる(spun off)または遠心除去される廃液を受けるための、プラットフォームの周辺に配置されたトラフを更に含む。パイロシークエンシング反応の各工程または複数の工程が完了するとすぐに、長いリード長を達成するために、ウェル中の未使用の試薬または廃試薬は除去されるべきであると理解される。回転可能なプラットフォームの回転による遠心力の発生によりプラットフォームから廃液が振り落とされ、廃液の取り扱い性を向上させるためにトラフが設けられている。あるいは、例えば20、30、40、または50サイクルのヌクレオチド添加毎にまたは反応が阻害されるのに十分なほどに試薬が希釈される直前に、プラットフォームから廃試薬が振り落とされ得る。
【0067】
この実施形態では、追加のパイロシークエンシング試薬がウェルに添加され、各パイロシークエンシング反応完了後にプラットフォームから振り落とされるにつれて、回転可能なプラットフォームの総質量は増加すると理解される。したがって、別のひとつの実施形態では、回転可能なプラットフォームはトラフを含まず、回転可能なプラットフォームを収容する筐体を、プラットフォームの周辺に隣接してトラフが配置されるように構成して、回転可能なプラットフォームの表面から回転中に振り落とされた廃液がこの「静止した」トラフに捕らえられるようにすることが望ましいことがあり得る。
【0068】
パイロシークエンシングの背景となる技術および化学に精通した当業者には、支持体表面に固定された核酸鎖を変性させて相補的核酸鎖を除去することが必要になり得ることが理解されよう。変性は如何なる方法で達成されてもよいが、好ましくは、ウェルおよび支持体表面または更には回転可能なプラットフォーム全体を変性に十分な温度、例えば94〜99℃に加熱すること、あるいは、94℃を超える温度に加熱した溶媒、例えばバッファーに支持体表面を曝露することによることを含む。あるいは、支持体表面を変性組成物(例えば、NaOHを含む組成物)に曝露してもよい。他の方法としては、赤外線または同等な放射線照射による加熱が含まれる。回転可能なプラットフォームは、そのような変性条件下に耐えられる材料で形成されているべきであると理解される。
【0069】
回転可能なプラットフォームはまた、捕捉された核酸標的または捕捉されたシークエンシングプライマーに対してDNAをハイブリダイズさせるか融解させるために加熱および冷却することも可能である。パイロシークエンシングの場合、ひとたびdsDNA標的が捕捉および変性されると、シークエンシングプライマーを添加してssDNAにハイブリダイズさせるか、捕捉されたシークエンシングプライマーにssDNAをハイブリダイズさせる。この場合、回転可能なプラットフォームを加熱してssDNA中の三次構造を除去し、次いで冷却して固定化された標的にシークエンシングプライマーをハイブリダイズさせてよい。
【0070】
比較的小さい体積の試薬を用いる場合にチャンバーは好適な手段で封止されるので、チャンバーの加熱はデバイスを幾分複雑にすると理解され得る。あるいは、加熱段階中の蒸発を低減するために油状の覆い(overlay)を用いてもよい。他の好適な手段は当業者に周知である。あるいは、捕捉されたssDNAおよびシークエンシングプライマーに変性試薬を加えた後、よりpHの低いバッファーを加えてpHを低減させてシークエンシングプライマーをDNA標的にアニーリングさせてもよい。ひとたびアニーリングすると、pHバッファーは振り落とされて廃棄され得る。
【0071】
当業者には、種々の実施形態において、本発明が提供できる多くの利点が理解されよう。例えば、本発明は、先行技術のデバイスおよび方法と比べてさらに長い塩基リード長を可能にする。説明すると、先行技術の方法では、0.2mLの微小遠心チューブ(または類似物)中でパイロシークエンシングを行い、チューブに試薬を順次添加して、チューブ中に存在するDNAの配列を検出する。反応バッファー中に含まれるDNA、全酵素、および基質を含む反応物に、ヌクレオチドを順次加える。96または24ウェルプレートにおいて反応を行う。プレートを加熱し(28℃)、反応中、振とうする。したがって、添加されたヌクレオチドの体積は蒸発する体積とほぼ同等であり、そのため、反応混合物は希釈されないが副産物は蓄積される。先行技術の方法は、リード長が比較的短いという欠点があり、これは、例えばアピラーゼの活性により生じる分解産物の蓄積による可能性が最も大きい。本発明は、固定された核酸鎖をヌクレオチドと接触させ、前述したように残っているヌクレオチドおよび全ての反応産物および副産物がその後ウェルから実質的に除去され、所望により、その後のヌクレオチド試薬と接触させる前に支持体表面をも洗浄するので、当該技術分野の水準で知られている欠点がない。300または400塩基を超える塩基リード長、更には化学の改良により潜在的には1000塩基を超える塩基リード長、が可能であると考えられる。
【0072】
更なる利点は当業者に明らかであるが、明確にすると、本発明は先行技術のフロースルーセルよりも相対的に簡便な装置を提供する。更なる利点は、先行技術の方法およびデバイスと比べて潜在的で相対的に速いシークエンシングに関し、先行技術と比べて必要な試薬の体積が潜在的に少ない。いくつかの先行技術の方法、特にパイロシークエンシングの実施方法における更なる制約は、1回の反応サイクル、すなわち1ヌクレオチドの添加に必要な時間が非常に長いことである。場合によっては、1反応サイクルに必要な時間は通常、約60秒またはそれ以上であり、これは前の反応サイクルの残っているヌクレオチドを全て分解するのに必要な時間に基づく。前の反応サイクルの実質的に全ての残留ヌクレオチドが完全に分解された後にのみ、次のヌクレオチドが加えられる。本明細書に記載したような装置は、残留ヌクレオチドをはるかに速い速度で除去できる(すなわち、遠心工程、洗浄工程によって)と理解される。これにより、1塩基の取込みにかかるサイクル時間がはるかに短縮される。本発明を理論により束縛するものではないが、サイクル時間は約15秒に短縮され得、これにより、ランタイムが少なくともおよそ4分の1に短縮されると理解される。しかし、サイクル時間は更に短縮できると予想される。
【0073】
本発明はまた、いくつかの先行技術のデバイスと比べて、流体の取り扱い性を改善することが可能である。また、CCDアレイの代わりに高速光電子増倍管を用いることができることから、本発明は先行技術のデバイスより高い感度を実現することができる。
【0074】
パイロシークエンシングは、「合成によるシークエンシング(sequencing by synthesis)」の原理に基づくDNAシークエンシング法であり、ジデオキシヌクレオチドを用いた連鎖停止ではなくヌクレオチド取込み時のピロリン酸放出の検出に依存する。「合成によるシークエンシング」では、シークエンシングされるDNA一本鎖を利用して、その後、その相補鎖を酵素的に合成する。「合成によるシークエンシング」法は、DNAポリメラーゼのヌクレオチド付加反応(DNA+xdNTP→DNA
+1+PPiまたはxに応じて異なる副産物。xはATPでもあり得る)の反応副産物を検出することによるDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)活性の検出に基づく。パイロシークエンシング反応では、光を生成する酵素カスケードを利用してPPiが定量される。
1.スルフリラーゼ:APS+PPi→ATP+SO
4
2.ルシフェラーゼ:ルシフェリン+ATP→オキソルシフェリン+PPi+光
3.アピラーゼ:残留dNTPおよびATPの分解
【0075】
更に、例えば、PPi+PEP+AMPをピルビン酸+ATP+Piに変換するPPDK(ホスホエノールピルビン酸ジキナーゼ)の使用のような、副産物の定量に用いられ得る複数の反応が当該技術分野で知られている。更に、副産物は、例えばpH変化または他の検出可能なパラメーターの変化により検出し得る。あるいは、「合成によるシークエンシング」法は、DNAリガーゼのプライマー付加反応の反応副産物を検出する、DNAリガーゼの活性の検出に基づいてもよい。好適な方法は当業者に周知である。
【0076】
本質的に、本方法は、DNAの一本鎖に沿って1回に1塩基対ずつ相補鎖を合成し、どの塩基が各工程で実際に付加されたかを検出することによってDNAの一本鎖のシークエンシングを可能にする。鋳型DNAまたはシークエンシングプライマーが固定され、順番に、A、C、G、および/またはTヌクレオチドの溶液が添加され、反応後に除去される。添加されたヌクレオチドが鋳型の第1の不対塩基(1または複数)を補完した場合にのみ光が発生する。検出可能なシグナル、例えば化学発光シグナルを生じさせる添加されたヌクレオチドの配列により、鋳型の配列を決定することができる。ssDNA鋳型をシークエンシングプライマーにハイブリダイズさせるかまたはその逆を行い、酵素DNAポリメラーゼならびに所望により、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、および/またはアピラーゼと、ならびに例えば基質アデノシン5’ホスホ硫酸(APS)およびルシフェリンとインキュベートする。検出可能なシグナルを提供する他の反応カスケードも当業者に周知である。
【0077】
概観として、パイロシークエンシングは以下の一般的工程に従う:
1.4種類のデオキシヌクレオチド3リン酸(dNTP)またはその好適な誘導体のうちの1つを核酸鎖鋳型に添加する。DNAポリメラーゼが正確に相補的dNTPまたはその誘導体を鋳型に取り込ませ、ピロリン酸(PPi)を化学量論的に放出させる。
2.ATPスルフリラーゼが定量的にPPiをATPに変換する。このATPが、ルシフェラーゼにより仲介されるルシフェリンからオキシルシフェリンへの変換を引き起こし、ATPの量に比例する量の可視光を発生させる。ルシフェラーゼ触媒反応において発生した光を検出および分析する。
3.その後、取り込まれなかったヌクレオチドおよびATPは、アピラーゼまたは他の好適な酵素により分解される。
【0078】
古典的なパイロシークエンシングプロトコールに対するいくつかの改変が当該技術分野で周知であり、本発明に係る装置において実施されるのに良く適している。1回のヌクレオチド取込み工程毎に発生する光は取り込まれたヌクレオチドの量に比例するので、好適なソフトウェアにより、発生した光情報を具体的なヌクレオチド配列パターンに変換することができる。古典的なパイロシークエンシングでは、この光パターンを「パイログラム」と呼ぶ。更に、前記ソフトウェアは、好ましくは、特定の位置における混合集団の取込み比率を定量することができる。
【0079】
本発明は、配列決定される核酸鋳型もしくは標的またはシークエンシングプライマーを固定する工程および段階的なヌクレオチド添加サイクルを含むシークエンシング法を意図する。本発明をパイロシークエンシングに関して例示したが、本発明は他の核酸シークエンシング化学、特にフロースルー環境および固相から利益を受ける化学にも有用であると理解される。本発明はまた、前述の工程のいくつかを避けることができ、あるいはそれらを少なくともより簡便にすることができる。パイロシークエンシングにはssDNA鋳型の存在が必要である。所望により、支持体表面がdsDNAを捕捉し、前記dsDNAを変性させて、例えばパイロシークエンシング用に準備されたアニーリングしたシークエンシングプライマーを用いてssDNAを残す役割も果たし、これにより別個の単離工程が不要になる。
【0080】
具体的には、当業者は、「フロースルーDNAシークエンシング」という用語を、例えば、核酸鋳型またはシークエンシングプライマーを固定し、プライマーを鋳型にハイブリダイズさせるまたはその逆を行ない、ヌクレオチドの存在下で段階的にプライマーを介した合成を行う方法を含み、ヌクレオチドは、例えば、所望により、ジデオキシ部位等の鎖伸長終結部位および所望により、検出可能な標識(例えば、サンガーシークエンシング)を含む、と理解するだろう。更なる核酸シークエンシング法の実施形態の一つは、標識されたヌクレオチドを伸長中のプライマー鎖に取り込ませる工程;取り込まれたヌクレオチドを同定する工程;ならびに次に続くのヌクレオチドの取込みに対して伸長鎖の準備を準備するように鎖伸長終結部位および標識を除去する工程、を含む。
【0081】
また、当業者は、「フロースルーDNAシークエンシング」という用語が、例えば、ライゲーションによる核酸シークエンシングを含むことを理解するだろう。「ライゲーションによる核酸シークエンシング」という用語が、核酸鋳型またはシークエンシングプライマーを固定すること、プライマーを鋳型ハイブリダイズさせることまたその逆を行なうこと、その後に続く、例えば標識ヌクレオチドまたは短い標識プローブの、DNAライゲーションの一連のラウンドを含むことは明白であろう。
【0082】
核酸固定工程および段階的なヌクレオチドの添加および検出工程を含む、DNAシークエンシング法が本発明の想定内であることは当業者には明らかであろう。
【0083】
本発明の方法はまた、所望により、洗浄工程を含んでもよく、あるいは、酵素処理により残留または未反応試薬の除去が改善され得る。
【0084】
一実施形態では、順次接触または分注工程は、
a)A、次いでT、次いでG、次いでCヌクレオチド、次いで再度A、等;または
b)A+T+G+Cヌクレオチドを混合物として添加し、混合物を再度添加する等、
のいずれかを含む。
【0085】
別の一つの実施形態では、各前記支持体領域を、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを含む一連の試薬と順次接触させる。順次接触工程は以下のいずれかを含んでもよい:
a)各ヌクレオチドまたはそのアナログを所望のまたは所定の順番で別個に順次加えること、
b)A+T+G+Cヌクレオチドまたはこれらの所定のもしくは所望のサブセットを混合物として加え、混合物を再度加える等。
【0086】
順次接触工程 a)はパイロシークエンシング法に特に有用であり、順次接触工程 b)は、それぞれが異なる色素で標識された蛍光標識ヌクレオチド等の標識ヌクレオチドを用いる場合に特に有用である。
【0087】
ヌクレオチドの配列は所定の順番および/または所定の組合せで添加されてもよく、シークエンシングは核酸鋳型の配列決定に必要とされる十分な回数が繰り返されるという点で、方法全体は反復性であると理解される。例えば、A、T、G、およびCは公知の変異部位においてのみ添加され得る。この実施形態の利点は、必要な塩基添加数がより少ないため、この手法によって既知の変異の検出が迅速化されることである。
【0088】
好ましくは、本発明の方法は更に、各前記接触工程の最中および/または後に核酸鎖を分析する工程を含む。分析は如何なる分析であってもよいが、パイロシークエンシングという状況において、分析工程は、前記分析の各工程中に光のアウトプットを核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドの数と関連付けることにより核酸鎖中の次の塩基対を同定することを含むと理解される。ヌクレオチドの取込みを検出するための全ての適切且つ好適な技術的方法が当業者により採用され得る。例えば、反応により発生した光を検出するための好適な検出器は光電子増倍管(PMT)である。回転可能なプラットフォームが回転すると、サンプルが検出器を通過する、好ましくは全てのサンプルが検出器を通過すると理解される。
【0089】
好ましいいくつかの実施形態では、別個の領域を後続する試薬と接触させる前に、各前記支持体表面について洗浄用の試薬を用いた洗浄またはリンス工程を実施する。洗浄用の試薬は、前の接触工程に由来する残留溶液を洗い流すのに適した、好ましくは前の接触工程に由来する実質的に全ての残留溶液を洗い流すのに適した、試薬であり得る。しかし、好ましいいくつかの実施形態では、洗浄用の試薬は、次の反応工程が行われるバッファーである。また、洗浄用の試薬は、例えばアピラーゼ、ホスファターゼ等の洗浄促進物質を含んでもよい。好適な洗浄用の試薬は当業者に周知である。
【0090】
前述したように、変性工程は、核酸鎖を加熱して変性させること、核酸鎖を高pHに曝露すること、または核酸鎖を好適な酵素または酵素混合物に曝露することを含んでもよい。
【0091】
好ましいいくつかの実施形態では、本発明の方法は、核酸鎖を変性させた後に、リンス用の試薬を用いたリンス工程により相補鎖を除去する工程を含む。
【0092】
前記核酸鎖を分注するための、A、T、G、および/またはCヌクレオチドを分注するための、ならびに洗浄用の試薬を分注するための装置は、如何なる装置であってもよいが、好ましくは、装置は、インクジェットタイプの技術と類似のもの、圧電作動、またはエアパルスにより駆動するものである。また、装置は、回転可能なプラットフォームから振り落とされる廃試薬を抽出するための真空抽出システムを具備することが好ましい。装置はまた、パイロシークエンシング反応により発生する光を検出するための好適な検出手段を具備する。好適な検出器、例えば回転可能なプラットフォームの上に取り付けられてもよい光電子増倍管は当業者に公知である。
【0093】
変性及び所望により、相補的核酸鎖を除去するための装置は、プラットフォームを約94℃に加熱するための装置、または加熱された試薬もしくは他の変性化学物質を分注する、シリンジもしくはぜん動ディスペンサーをさらに含み得る。
【0094】
別のひとつの検出方法では、プラットフォームの各ウェルの下に1または複数の固体pHメーターが取り付けられている。したがって、配列検出のための結合DNAの担持に磁性ビーズを用いることができ、各シークエンシングサイクルの間に前述したようにウェルを洗浄することができるので、プラットフォームは再利用可能である。シークエンシング終了後、プラットフォームの下から磁石を取ることによりビーズを外すことができ、プラットフォームを完全に洗浄し、次いで分析用の新たなサンプルをロードすることができる。ISFET(51)のコストは、プラットフォームに合わせてカスタマイズされた場合には、使用後のISFET検知プラットフォームを使い捨てることができるのに十分である程度に安くなり得るので(すなわち、半導体チップのように)、本出願人は、プラットフォームを使い捨てにすることもできると考える。
【0095】
当業者には、ポリメラーゼがヌクレオチドを付加する時にH+イオンが放出され、これにより局所的pHが変化し、これは例えば固体pHメーターで検出できることが理解されよう。例えば、本発明者らは、参照により本明細書に取り込まれるDNAエレクトロニクス社(DNA Electronics Ltd.)の米国特許出願公開第2010/0151479号を参照し、これにおいて、トランジスタの表面またはその近傍におけるイオン電荷の局所的変動に応じて電気的アウトプットシグナルを発生させるように配置されたイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を含む検知装置が開示されている。この例では、絶対値ではなくイオン電荷の変動が測定される。このアプローチは、天然ヌクレオチドを順次添加できるので化学を簡便にし、pH変化が検出された場合、ビーズを捕捉し、ウェルを洗浄し、新たなラウンドのヌクレオチドを添加する。
【0096】
好ましくは、再利用可能なプラットフォーム上でISFET検出システムを用いる場合、ssDNAの捕捉に磁性ビーズが用いられる。使い捨てISFET検出プラットフォームを用いる場合、ssDNAを捕捉するためにISFETのゲートの表面をコーティングしてもよく、磁性ビーズを用いてもよい。
【0097】
更なる一つの態様では、本発明は、本発明の回転可能なプラットフォームと組み合せた且つ別個の着脱可能な支持体表面を各ウェル中に用いた、ISFET検出器の使用を提供する。好ましくは、ISFET検出部品は各ウェルの底部を形成する。
【0098】
当業界の知識を有する読み手は、本発明が本明細書に開示されている実施形態および特徴、ならびに開示されている実施形態および特徴のあらゆる組合せおよび/または派生形態(permeation)を含むことを理解するだろう。
【0099】
添付の図面を参照して以下に本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明する。