(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波診断システムがそれぞれバッテリを備える複数の装置によって構成される場合、個々の装置内の回路群に外部電力を供給するために、あるいは、個々の装置内のバッテリを充電するために、個々の装置に対して必要に応じてAC/DCアダプタ(以下、場合により単に「アダプタ」という。)が個別的に接続される。しかし、個々の装置は、自分に対してアダプタが接続されたことを容易に認識できるが、システム内に特別な仕組みを設けない限り、自分以外の装置にアダプタが接続されたのか否かを知ることはできない。
【0006】
例えば、生体から見て上流側の装置(フロントエンド装置)と生体から見て下流側の装置(バックエンド装置)とがドッキング状態にある場合であって、上流側の装置にアダプタが接続され、且つ、下流側の装置にアダプタが接続されていない場合、上流側の装置においてアダプタから得た電力の一部を下流側の装置に回し、それを下流側の装置における稼働用電力として及びバッテリ充電用電力として利用することが望まれる。しかしながら、その場合、上流側の装置においては、下流側の装置にアダプタが接続されているのか否か(つまり給電が必要か否か)を判断することはできず、また、下流側の装置においては、上流側の装置においてアダプタが接続されているのか否か(受電をして良いのか否か)を判断することができない。上流側の装置と下流側の装置との間で、アダプタの有無を含む情報の交換を行えば、個々の装置において給電要否又は受電可否を的確に判断できるが、その場合にはシステム全体として構成及び制御が複雑となってしまう。特にシステムが3つ以上の装置で構成される場合、更には任意数の装置が接続される場合、上記で指摘した問題はより顕著となる。
【0007】
本発明の目的は、複数の装置を含む超音波診断システムにおいて、複雑な構成や制御を用いることなく、外部から得た電力を複数の装置間で的確に融通できるようにすることにある。あるいは、給電側装置がバッテリの電力によって動作を行っている場合に受電側装置によってそのバッテリの電力が取り込まれないようにすることにある。あるいは、給電側装置が外部から得た電力によって動作を行っている場合に、給電側装置の動作の不安定を招くことなく、受電側装置において受電を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波診断システムは、超音波診断のために動作する第1装置及び第2装置を含む。前記第1装置は、第1バッテリと、給電端子と、第1アダプタが接続された状態において前記第1アダプタを介して取り込んだ外部電力を第1負荷へ供給し、前記第1アダプタが接続されていない状態において前記第1バッテリの電力を前記第1負荷へ供給する第1電源回路と、前記第1アダプタが接続された状態において前記給電端子への融通電力の供給を許容し、前記第1アダプタが接続されていない状態において前記給電端子への融通電力の供給を制限する第1制御回路と、を含む。前記第2装置は、第2バッテリと、前記給電端子に電気的に接続可能な受電端子と、第2アダプタが接続された状態において前記第2アダプタを介して取り込んだ外部電力を第2負荷へ供給し、前記第2アダプタが接続されておらず且つ前記受電端子に融通電力を受けていない状態において前記第2バッテリの電力を前記第2負荷へ供給し、前記第2アダプタが接続されておらず且つ前記受電端子に融通電力を受けている状態において前記融通電力を前記第2負荷へ供給する第2電源回路と、を含む。望ましくは、前記第2装置は、更に、前記第2アダプタが接続された状態において前記受電端子を介した融通電力の受電を制限する第2制御回路を含む。
【0009】
上記構成によれば、第1装置から第2装置へ電力を供給できる状況下において、たとえ第1装置が第2装置側の電源状況(特に第2アダプタの接続有無)を知らなくても、また、たとえ第2装置が第1装置側の電源状況(特に第1アダプタの接続有無)を知らなくても、第1装置で取得された外部電力の一部を融通電力として第2装置へ供給し、その融通電力を第2装置で利用することが可能である。第1装置に対して第1アダプタが接続されていない状態(第1アダプタ非接続状態)においては、第1制御回路が充電端子への融通電力の供給を制限する。これにより、有限な第1バッテリの電力が第2装置において不用意に消費されてしまう事態を回避できる。このように、第1装置に対して第1アダプタが接続されている状態(第1アダプタ接続状態)に限って、第1制御回路が充電端子への融通電力の供給を許容する。これにより、第2装置において、必要に応じて、融通電力を利用することが可能となる。第2装置に対して第2アダプタが接続されていない状態(第2アダプタ非接続状態)において、第1装置の給電端子に融通電力が現れたならば、第2装置において、その融通電力を受電端子を介して取り込むことが可能である。望ましくは、第2アダプタが接続されている状態(第2アダプタ接続状態)においては、第2装置において融通電力を必要としないために、第2制御回路が受電端子を介した融通電力の受電を制限する。すなわち、第1アダプタ接続状態かつ第2アダプタ接続状態では、第1装置の給電端子に融通電力が供給されるものの、第2装置自身が融通電力の取り込みを制限する。
【0010】
以上の構成により、第1装置においては、第2装置に対して第2アダプタが接続されているのか否かを監視する必要が無くなり、第2装置においては、第1装置に対して第1アダプタが接続されているか否かを監視する必要が無くなる。すなわち、個々の装置において、電力制御を簡素化することが可能である。第1アダプタ及び第2アダプタはそれぞれ外部電力取り込み用の器具であり、望ましくは、それらはAC/DC変換器である。
【0011】
望ましくは、前記第1装置及び前記第2装置はセパレート状態及びドッキング状態の内から選択された状態で使用可能であり、前記第1制御回路は、前記ドッキング状態且つ前記第1アダプタが接続された状態において前記給電端子に前記融通電力を供給し、前記第2制御回路は、前記ドッキング状態且つ前記第2アダプタが接続された状態において前記融通電力の受電を制限する。ドッキング状態には、第1装置と第2装置とが物理的に結合される態様の他、それらがケーブルを介して接続される態様も含まれる。
【0012】
望ましくは、前記第1装置は、前記給電端子に繋がる給電ライン上に設けられたスイッチ回路を含み、前記第1制御回路は、前記ドッキング状態且つ前記第1アダプタが接続された状態において前記スイッチ回路をオン状態にし、前記ドッキング状態且つ前記第1アダプタが接続されていない状態において前記スイッチ回路をオフ状態にする。第1負荷へ接続される電源ラインから給電ラインが引き出されている構成では、給電ライン上に外部電力の他、第1バッテリからの電力も現れてしまうが、第2装置側において給電端子に現れる電力の性質を自ら弁別することはできない。よって、外部電力だけが給電端子に供給されるようにするために、換言すれば、第1バッテリの電力が給電端子に不用意に現れないようにするために、スイッチ回路の動作が制御される。
【0013】
望ましくは、前記第1装置は、前記第1アダプタを介して取り込んだ外部電力を利用して前記第1バッテリを充電する第1充電回路を含み、前記第2装置は、前記第2アダプタを介して取り込んだ外部電力及び前記第1装置からの融通電力を利用して前記第2バッテリを充電する第2充電回路を含み、前記ドッキング状態であって前記第1装置及び前記第2装置の内で前記第1装置だけに外部電力が供給されている場合に、当該外部電力が前記第1負荷、前記第1バッテリ、前記第2負荷及び前記第2バッテリに分配され、その場合において前記第2バッテリの充電よりも前記第1バッテリの充電が優先される。
【0014】
第1アダプタ接続状態かつ第2アダプタ非接続状態では、第1アダプタから得た外部電力が第1負荷に供給され、必要に応じて第1バッテリに供給される。この他、外部電力の一部が融通電力として第2装置へ送られ、それが第2負荷に供給され、必要に応じて第2バッテリにも供給される。第2バッテリの充電のために比較的大きな電力を使用してしまうと、第1装置で使用可能な電力が不足したり、第2負荷へ供給する電力が不足したりする事態が生じ得るので、第2バッテリの充電は後順位とされる。つまり、第1バッテリの充電が優先される。具体的には、第1バッテリの充電電流量(上限値又は定格値)に対して第2バッテリの充電電流量(上限値又は定格値)が低くなるように充電電流量が制御される。第2バッテリの充電電流量を低い値に固定的に設定しておいてもよい。第1バッテリの充電が完了状態あるいはそれに相当する状態になった場合に第2バッテリの充電電流量(上限値)を引き上げるようにしてもよい。一方の装置において他方の装置の充電状態を常時監視する場合、構成及び制御が複雑になるので、基本的に個々の装置において自己の充電量だけを監視するようにするのが望ましい。必要に応じて、一方の装置から他方の装置へ充電完了に相当する信号を与えるようにしてもよい。
【0015】
特に3つ以上の装置が直列に連なって上流から下流へ電力が配分されるようなシステムにおいては、個々の装置において他の複数の装置の電源状況を監視するためにはかなり複雑な制御が必要となるが、充電完了を示す信号を後段へ順次伝える構成であれば確実な電力分配制御を簡易な構成で実現できる。
【0016】
望ましくは、前記第2制御回路は、前記融通電力の受電量を抑制する機能を有する。上記構成においては、第1装置及び第2装置の全体を対象とした電力分配制御を実行する上位制御部は存在しない。よって、第2装置側において融通電力を多く取り込み過ぎると、第1装置に対する電力供給が不安定となったり第1装置での電力不足が生じたりしてしまう。そこで、第2装置自らが融通電力の受電量に上限を定め、つまり受電を自ら制限するのが望ましい。
【0017】
望ましくは、前記第2制御回路は、前記融通電力を利用して前記第2バッテリを充電する場合に前記第2バッテリにおける充電電流を抑制する機能を有する。この構成によれば第2バッテリの充電での消費電力を抑制して、第1装置側においてあるいは第2装置の負荷において電力が不足する問題を未然に回避することが可能である。第1装置がフロントエンド装置であり、第2装置がバックエンド装置である場合、第1装置においては超音波の送受信のために比較的に多大な電力を必要とする。よって、それを考慮して第1装置への電力供給が優先されるように構成するのが望ましい。第2装置においては、余剰電力が第2バッテリの充電に利用されるのが望ましい。余剰電力量を事前に固定的に設定しておくこともできるし、それを第2負荷での消費電力量に応じて適応的に設定することも可能である。
【0018】
望ましくは、前記第1装置は、前記第1バッテリが充電完了状態又はそれに近い状態になった場合に高充電状態信号を生成する信号生成回路を含み、前記第2制御回路は、前記高充電状態信号が生成された場合に前記第2バッテリの充電電流の抑制を緩和する機能を備える。第1装置側において第1バッテリの充電が完了あるいはほぼ完了した場合には第1装置上での消費電力量が小さくなるので、それを第2装置に対して信号として通知するものである。この通知により、第2装置において第2バッテリの充電で使用する電力量を引き上げることが可能となる。
【0019】
望ましくは、前記第2制御回路は、前記第2装置が電源オン状態にあるか電源オフ状態にあるかに基づいて前記第2バッテリの充電電流の抑制を行う。第1アダプタ接続状態かつ第2アダプタ非接続状態であって、第2装置が電源オン状態にある場合、第2負荷への電力供給を十分に確保するために、充電完了信号が生成されても、第2バッテリの充電電流量を引き上げないようにするのが望ましい。それとは逆に、第2装置が電源オフ状態にある場合、第2負荷における電力消費は小さくなるので(待機電力程度となるので)、第2バッテリの充電電流量を引き上げるのが望ましい。
【0020】
望ましくは、前記第1装置は送受信回路を備えたフロントエンド装置であり、前記第2装置は超音波画像を表示する表示器を備えたバックエンド装置である。望ましくは、前記フロントエンド装置と前記バックエンド装置とがドッキングした場合、前記給電端子と前記受電端子とが接続される。その場合、ドッキング状態が個々の装置において検出される。
【0021】
本発明に係る方法は、セパレート状態及びドッキング状態を選択的に取り得る第1装置及び第2装置を含む超音波診断システムにおける電力分配方法において、前記第1装置は、前記ドッキング状態であって当該第1装置に対して外部電力取り込み用の第1アダプタが接続されている場合に、当該第1装置が有する給電端子への融通電力の供給を許容し、前記ドッキング状態であって当該第1装置に対して前記第1アダプタが接続されていない場合に、前記給電端子への融通電力の供給を制限し、前記第2装置は、前記ドッキング状態であって当該第2装置に対して前記第2アダプタが接続されている場合に、当該第2装置が有する受電端子を介した前記融通電力の取り込みを制限する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の装置を含む超音波診断システムにおいて、複雑な構成や制御を採用することなく、外部から得た電力を複数の装置間で巧妙に融通できる。あるいは、給電側装置がバッテリの電力によって動作を行っている場合に、受電側装置において受電が確実に制限される。あるいは、給電側装置が外部から得た電力によって動作を行っている場合に、給電側装置の動作の不安定を招くことなく、受電側装置において受電を行える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(1)超音波診断システム
図1には、本発明に係る超音波診断システムの概略的構成が示されている。超音波診断システム10は、病院等の医療機関で使用される医療機器であり、被検者(生体)に対して超音波診断を行うためのものである。超音波診断システム10は、大別して、フロントエンド(FE)装置12、バックエンド(BE)装置14、及び、プローブ16により構成されている。FE装置12は生体から見て近い装置であり、BE装置14は生体から見て遠い装置である。FE装置12及びBE装置14は、別体化されており、それぞれが可搬型装置を構成している。FE装置12及びBE装置14は、それらが離れたセパレート状態において動作可能であり、また、それらが結合したドッキング状態で動作可能である。なお、
図1はセパレート状態を示している。
【0026】
プローブ16は、生体表面に当接された状態において超音波の送受波を行う送受波器である。プローブ16は、直線状又は円弧状に配列された複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子を備えている。アレイ振動子によって超音波ビームが形成され、それが繰り返し電子走査される。電子走査ごとに生体内にビーム走査面が形成される。電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式、等が知られている。1Dアレイ振動子に代えて三次元エコーデータ取込空間を形成可能な2Dアレイ振動子を設けることも可能である。
図1に示す構成例では、プローブ16はケーブル28を介してFE装置12に接続されている。プローブ16が無線通信によってFE装置12に接続されてもよい。その場合にはワイヤレスプローブが利用される。複数のプローブがFE装置12に接続された状態において、それらの中から実際に使用するプローブが選択されてもよい。体腔内に挿入されるプローブがFE装置12に接続されてもよい。
【0027】
FE装置12とBE装置14は、
図1に示すセパレート状態において、無線通信方式により電気的に相互に接続される。本実施形態では、それら装置は第1無線通信方式及び第2無線通信方式により相互に接続されている。
図1においては、第1無線通信方式による無線通信経路18及び第2無線通信方式による無線通信経路20が明示されている。 第1無線通信方式は第2無線通信方式に比べて高速であり、本実施形態では、その方式を利用してFE装置12からBE装置14へ超音波受信データが伝送される。すなわち、第1無線通信方式がデータ伝送用として利用されている。第2無線通信方式は第1無線伝送方式よりも低速、簡易な通信方式であり、本実施形態では、その方式を利用してBE装置14からFE装置12へ制御信号が伝送される。すなわち、第2無線通信方式が制御用として利用されている。
【0028】
FE装置12とBE装置14とが物理的に結合されたドッキング状態においては、FE装置12とBE装置14とが有線通信方式により電気的に接続される。上記2つの無線通信方式に比べて、有線通信方式はかなり高速である。
図1においては、2つの装置12,14間に有線通信経路22が示されている。電源経路26は、ドッキング状態において、FE装置12からBE装置14内へ直流電力を供給するためのものである。その電力がBE装置14の稼働で用いられ、また、BE装置14内のバッテリの充電で用いられる。
【0029】
符号24はACアダプタ(AC/DCコンバータ)から供給されるDC電源ラインを示している。ACアダプタは必要に応じてFE装置12に接続される。FE装置もバッテリを内蔵しており、バッテリを電源としつつ稼働することが可能である。FE装置12は後に示すようにボックス状の形態を有している。FE装置12の構成及び動作については後に詳述する。
【0030】
一方、BE装置14は、本実施形態においてタブレット形態あるいは平板状の形態を有している。それは基本的には一般的なタブレットコンピュータと同様の構成を備えている。もっとも、BE装置14には、超音波診断用の各種の専用ソフトウエアが搭載されている。それには、動作制御プログラム、画像処理プログラム、等が含まれる。BE装置14は、タッチセンサ付きの表示パネル30を有している。それは入力器及び表示器を兼ねたユーザーインターフェイスとして機能する。
図1においては、表示パネル30上に超音波画像としてのBモード断層画像が表示されている。ユーザーは、表示パネル30上に表示されたアイコン群を利用して各種の入力を行う。表示パネル30上において、スライド操作や拡大操作等を行うことも可能である。
【0031】
診断用途、検査者の嗜好等に応じて、セパレート状態及びドッキング状態の内で選択された使用態様で、超音波診断システム10を動作させることが可能である。よって、使い勝手の良好な超音波診断システムを提供できる。
【0032】
状態変更に際して超音波診断システム10の動作が不安定あるいは不適正にならないように、本実施形態では、状態変更に際して超音波診断システム10を強制的にフリーズ状態とする制御が実行される。具体的には、セパレート状態からドッキング状態へ移行する過程で、両装置間の距離を指標する電波強度あるいは受信状態に基づいて、FE装置12及びBE装置14のそれぞれにおいてドッキング直前が判定され、その判定に従って個々の装置12,14において動作状態をフリーズ状態へ遷移させる制御が実行される。ドッキング状態の形成後かつ検査者によるフリーズ解除の操作後に、それらの装置12,14のフリーズ状態が解除される。ちなみに、ドッキング状態からセパレート状態へ移行する過程では、セパレート状態になったことが抜線検出その他の手法によりFE装置12及びBE装置14で個別的に検出され、それらがフリーズ状態となる。その後のフリーズ解除の操作後に、それらの装置12,14のフリーズ状態が解除される。
【0033】
なお、BE装置14は、病院内LANに対して無線通信方式及び有線通信方式によって別途接続され得る。それらの通信経路については図示省略されている。BE装置14(又はFE装置12)が、超音波診断のために機能する他の専用装置(例えばリモートコントローラ)に対して、無線通信方式又は有線通信方式により、別途接続されてもよい。
【0034】
図2にはセパレート状態が示されている。FE装置12は、例えば机の上に載置されている。FE装置12は、差込口(スロット)を有するホルダ34を有している。ホルダ34はヒンジ機構を有しており、水平軸周りにおいて回転可能である。FE装置12の特定側面にはプローブケーブル端部に設けられているコネクタが到着されている。FE装置12の内部にプローブ等を収容する部屋を形成してもよい。そのような構成によれば、超音波診断システムの運搬時において便利であり、またプローブを保護できる。
図2において、BE装置14は、FE装置12から分離されており、無線通信を行える限りにおいて、BE装置14をFE装置12から更に大きく離すことが可能である。
【0035】
図3にはドッキング状態が示されている。ホルダ34の差込口に対してBE装置の下端部が差し込まれている。その差込状態において、FE装置12とBE装置14とが有線接続状態となる。つまり、両者が有線LANで接続され、また両者が有線電源ラインで接続される。ドッキング状態においては、BE装置14の角度を任意に可変して、その姿勢を変えることが可能である。BE装置14を完全にその背面側(FE装置12の上面側)に倒すことも可能である。
【0036】
(2)フロントエンド装置
図4はFE装置12のブロック図である。図中の個々のブロックは、プロセッサ、電子回路等のハードウエアによって構成される。送信信号生成回路38は、ブローブ接続回路40を介して、プローブ内の複数の振動素子に対して並列的に複数の送信信号を供給する回路である。この供給によりプローブにおいて送信ビームが形成される。生体内からの反射波が複数の振動素子で受波されると、それらから複数の受信信号が出力され、複数の受信信号がプローブ接続回路40を介して受信信号処理回路42に入力される。受信信号処理回路42は、複数のプリアンプ、複数のアンプ、複数のA/D変換器、等を備える。受信信号処理回路42から出力された複数のデジタル受信信号が受信ビームフォーマ46に送られる。受信ビームフォーマ46は、複数のデジタル受信信号に対して整相加算を適用し、整相加算後の信号としてビームデータを出力する。そのビームデータは、受信ビームに対応するものであり、深さ方向に並ぶ複数のエコーデータからなるものである。なお、1つの電子走査で得られた複数のビームデータによって受信フレームデータが構成される。
【0037】
送受信コントローラ44は、BE装置から送られてきた送受信制御データに基づいて、送信信号生成及び受信信号処理を制御するものである。ビームプロセッサ50は、時系列順で入力される個々のビームデータに対して、検波処理、対数変換処理、相関処理等の各種のデータ処理を施す回路である。制御部52は、FE装置12の全体動作を制御している。この他、制御部52は、ビームプロセッサから順次送られてくるビームデータをBE装置へ有線伝送又は無線伝送するための制御を実行している。本実施形態では、制御部52は、有線通信器としても機能している。無線通信器54は第1無線通信方式で通信を行うためのモジュールである。無線通信器56は第2無線通信方式で通信を行うためのモジュールである。符号18は第1無線通信方式に従う無線通信経路を示しており、符号20は第2無線通信方式に従う無線通信経路を示している。それぞれは双方向伝送経路であるが、本実施形態では、前者を利用してFE装置12からBE装置へ大量の受信データが伝送され、後者を利用してBE装置からFE装置12へ制御信号が伝送される。符号64は有線通信用端子を示しており、そこには有線通信経路22が接続される。符号66は電源用端子を示しており、そこには電源ライン26が接続される。電源ライン26は上記のようにFE装置12からBE装置へ直流電力を供給するためのラインである。
【0038】
バッテリ60は例えばリチウムイオン型のバッテリであり、そこにおける充放電は電源コントローラ58によって制御される。バッテリ駆動時において、バッテリ60からの電力が電源コントローラ58を介して、FE装置12内の各回路へ供給される。符号62はACアダプタ接続時における電源ラインを示している。ACアダプタ接続時には電源コントローラ58の作用によって、外部電力がFE装置12内の各回路へ供給される。その際、バッテリ60の充電が100%未満であれば、外部電力を用いてバッテリ60が充電される。
【0039】
超音波診断動作時(送受信時)において、FE装置12は、BE装置側での制御に従い、プローブに対する複数の送信信号の供給と、その後に得られる複数の受信信号の処理と、を繰り返し実行する。これにより得られる時系列順のビームデータが、セパレート状態では無線通信により、ドッキング状態では有線通信により、BE装置へ順次伝送される。その際においては個々のビームデータが複数のパケットに変換され、いわゆるパケット伝送方式により、個々のビームデータが伝送される。
【0040】
なお、動作モードとしては、Bモードの他、CFMモード、Mモード、Dモード(PWモード、CWモード)等の各種のモードが知られている。高調波イメージングや弾性情報イメージング用の送受信処理が実行されてもよい。
図1においては生体信号入力回路等の回路が図示省略されている。
【0041】
(3)バックエンド装置
図5はBE装置14のブロック図である。図中、各ブロックはプロセッサ、回路、メモリ等のハードウエアを示している。CPUブロック68は、CPU70、内部メモリ72等を備えている。内部メモリ72はワーキングメモリ、あるいは、キャッシュメモリとして機能する。CPUブロック68に接続された外部メモリ80には、OS、各種の制御プログラム、各種の処理プログラム等が格納されている。後者にはスキャンコンバート処理プログラムが含まれる。その外部メモリ80は、リングバッファ構造を有するシネメモリとしても機能する。内部メモリ72上にシネメモリが構成されてもよい。
【0042】
CPUブロック68は、複数のビームデータに基づくスキャンコンバート処理により表示フレームデータを生成する。それは超音波画像(例えば断層画像)を構成するものである。その処理が順次実行され、動画像が生成される。CPUブロック68は、超音波画像表示のための各種の処理をビームデータ又は画像に施す。その他、BE装置14の動作を制御し、また、超音波診断システム全体を制御している。
【0043】
タッチパネルモニタ(表示パネル)78は、入力デバイス及び表示デバイスとして機能する。具体的には、タッチパネルモニタ78は、液晶表示器及びタッチセンサを備え、ユーザーインターフェイスとして機能する。タッチパネルモニタ78には超音波画像を含む表示画像が表示され、また、操作用の各種ボタン(アイコン)が表示される。
【0044】
無線通信器74は、第1無線通信方式に従って無線通信を行うためのモジュールである。その際の無線通信経路が符号18で示されている。無線通信器76は、第2無線通信方式に従って無線通信を行うためのモジュールである。その際の無線通信経路が符号20で示されている。CPUブロック68は有線通信方式に従って有線通信を行う機能も備えている。ドッキング状態においては、有線通信端子92に有線通信ラインが接続される。また、電源端子94に電源ライン26が接続される。
【0045】
CPUブロック68には、I/F回路82を介して、複数の検出器84〜90が接続されている。それには照度センサ、近接センサ、温度センサ等が含まれる。I/F回路82にGPS等のモジュールが接続されてもよい。I/F回路82はセンサコントローラとして機能する。
【0046】
バッテリ102はリチウムセラミック型のバッテリであり、その充放電は電源コントローラ100によって制御されている。電源コントローラ100は、バッテリ動作時においてバッテリ102からの電力をBE装置14内の各回路に供給する。非バッテリ動作時において、FE装置から供給された電力、又は、ACアダプタから供給された電力をBE装置14内の各回路に供給する。符号104はACアダプタを経由した電源ラインを示している。
【0047】
BE装置14は、FE装置を制御しつつ、FE装置から送られてくるビームデータを順次処理して超音波画像を生成し、それをタッチパネルモニタ78に表示する。その際においては超音波画像と共に操作用グラフィック画像も表示される。通常のリアルタイム動作においては、FE装置とBE装置14とが無線又は有線で電気的に接続され、両者の同期が図られつつ、超音波診断動作が継続的に実行される。フリーズ状態においては、FE装置において送信信号生成回路、受信信号生成回路の動作が停止され、電源コントローラにおける昇圧回路の動作も停止する。BE装置14においては、フリーズ時点で静止画像表示となり、その内容が維持される。BE装置14に外部表示器を接続できるように構成してもよい。
【0048】
(4)通信方式
図6には、ドッキング状態118及びセパレート状態120で利用される通信方式が整理されている。符号110は第1無線通信方式を示しており、符号112は第2無線通信方式を示している。符号114は有線通信方式を示している。符号116は無線通信方式の内容を示している。ドッキング状態118においては、有線通信が選択され、FE装置及びBE装置において、第1無線通信器及び第2無線通信器は動作休止状態となる。これにより省電力が図られる。一方、セパレート状態120においては、無線通信が選択され、FE装置及びBE装置において、第1無線通信器及び第2無線通信器が動作する。その際、有線通信系統は動作休止状態となる。なお、第1無線通信方式110は第2無線通信方式112に比べて高速である。逆に言えば、第2無線通信方式112は第1無線通信方式110に比べて低速であるが、簡易かつ安価であり、消費電力が低い。有線通信方式としてはEthernet(登録商標)上のTCP/IPプロトコルがあげられる。第1無線通信方式としてはIEEE802.11があげられ、第2無線通信方式としてはIEEE802.15.1があげられる。それらは例示であり、他の通信方式を利用可能である。いずれにしてもセキュアな通信方式を利用するのが望ましい。
【0049】
本実施形態において、第2無線通信方式112に従う無線通信器は、受信強度(つまり距離)に応じて送信パワーを自動的に可変する機能を備えている。つまり、BE装置へFE装置が近接した場合に両装置それぞれ送信パワーを下げる制御が自動的に実行される。よって、設定されている送信パワーから、両装置が近接したことを判定することが可能である。それに代えて、受信強度、受信エラーレート等から2つの装置が近接したことを判定することも可能である。更には近接センサを利用することも可能である。
【0050】
(5)電力制御
次に
図7〜
図14を用いて上記超音波診断システムにおける電力関連の構成及び制御について説明する。
【0051】
図7には、ドッキング状態にあるFE装置12及びBE装置14が示されている。但し、
図7には電力関連の構成だけが示されており、それ以外の構成については図示省略されている。FE装置12は、
図4に基づいて説明したように、電源コントローラ58、バッテリ60及び制御部52を有している。電源コントローラ58は、FE装置12が有する負荷200に対して電力を供給する回路である。電源コントローラ58は電源回路として機能する。電源コントローラ58はバッテリ60用の充電回路としても機能する。制御部52は、FE装置12の状態に応じて、電源コントローラ58の動作を制御する。符号62は外部電源ラインを示しており、FE装置12に対してAC/DCアダプタが接続された場合、外部電源ライン62を介して電源コントローラ58に対して外部電力が供給される。その場合、電源コントローラ58から負荷200に対して外部電力が供給され、また外部電力の一部が電源コントローラ58からスイッチ回路202を介してBE装置14側へ供給される。その一部の電力を融通電力と称することができる。
【0052】
FE装置12が外部電力を得ている場合、電源コントローラ58は、必要に応じて外部電力を利用してバッテリ60を充電する。一方、FE装置が外部電力を得ていない場合、電源コントローラ58はバッテリ60から得られる電力を負荷200へ供給する。電源コントローラ58と負荷200との間に設けられた電源ラインから給電ラインが引き出されており、その給電ライン上にはスイッチ回路202が設けられている。バッテリ60からの電力を負荷200に供給する場合、その電力がBE装置14側へも供給されないように、スイッチ回路202によって供給ラインによる給電が遮断される。符号26は
図1において示したように、電源経路を示しており、それは融通電力を装置間において分配するためのラインである。スイッチ回路202の動作は制御部52によって制御されている。
【0053】
制御部52は、FE装置12の状態を認識するために、コネクタ214からドッキング信号206を得ている。FE装置12とBE装置14とがドッキングした場合、コネクタ214とコネクタ216が物理的に且つ電気的に接続される。その場合において、コネクタ214からドッキング信号206が出力され、一方、コネクタ216からドッキング信号210が出力される。制御部52は、負荷200の状態を監視しており、その監視の内容にはFE装置12の電源のオン状態又はオフ状態が含まれる。また、制御部52は、電源コントローラ58を経由して、外部電力が供給されているか否かを認識している。電源コントローラ58はアダプタが接続されたことを検出する機能を備えている。また電源コントローラ58はバッテリ60の充電状態を検出する機能を備えており、制御部52においてバッテリ60の充電状態が常時監視される。バッテリ60が一定の閾値以上充電された場合、すなわち高充電状態となった場合、制御部52からBE装置14へ向けて高充電状態信号204が出力される。そのような信号に基づいてBE装置側において必要に応じてバッテリの充電電流量の制限の緩和等の制御が実行される。
【0054】
コネクタ214内には電源経路26を成立させるための給電端子が設けられており、一方、コネクタ216には給電端子に接続される受電端子が設けられている。これについては後に説明する。
【0055】
上述したように、制御部52は、FE装置12にAC/DCアダプタ(以下、FEアダプタと言う)が接続されている場合、すなわちFEアダプタ接続状態において、スイッチ回路202を導通状態とし、その一方、FEアダプタ非接続状態において、スイッチ回路202を遮断状態とする。このような制御により、バッテリ60の電力を利用してFE装置12が動作を行っている場合において、その電力がBE装置14において不用意に消費されてしまう事態を回避することが可能となる。ちなみに、負荷200に対しては互いに電圧の異なる複数の電源ラインが接続されている。その内の一部から給電ラインが引き出されている。
【0056】
次に、BE装置14について説明する。BE装置14は、
図5を用いて説明したように、電源コントローラ100、バッテリ102及び制御部(CPUブロック)68を備えている。電源コントローラ100は負荷200に対して電力を供給する電源回路として機能する。また電源コントローラ100はバッテリ102の充電回路としても機能する。
【0057】
制御部68により電源コントローラ100の動作が制御されている。制御部68はBE装置14における状態に応じて、特に、AC/DCアダプタ(以下、BEアダプタと言う)が接続されているか否か、及び、受電端子に対して融通電力が供給されているか否かに応じて、電源コントローラ100の動作を制御する。符号104はBEアダプタを経由して外部電力が供給される外部電源ラインを示している。
【0058】
BEアダプタ接続状態においては、外部電力が電源コントローラ100を介して負荷208へ供給される。BEアダプタ非接続状態且つ融通電力の非受電状態においては、バッテリ102からの電力が電源コントローラ100を介して負荷208へ供給される。BEアダプタ非接続状態且つ融通電力の受電状態においては、受電端子を介して取り込んだ融通電力が電源コントローラ100を介して負荷208へ供給される。電源コントローラ100は、外部電力及び融通電力を用いてバッテリ102の充電を行う機能も備えている。
【0059】
本実施形態においては、制御部68が、BEアダプタ接続状態において、融通電力の受電を制限(具体的には禁止)する制御を実行する。すなわち、FE装置12は、FEアダプタ接続状態において、融通電力を給電端子へ供給する動作を実行するが、BE装置14に対してBEアダプタが接続されている場合、融通電力は不要であるため、融通電力の入力が受取側の判断で遮断されている。本実施形態の構成によれば、FE装置12においてBE装置14に対してBEアダプタが接続されているか否かを監視する必要がなく、また、BE装置14においてFE装置12に対してFEアダプタが接続されているか否かを監視する必要がなくなる。
【0060】
上述したように、FE装置12及びBE装置14のドッキング状態においては、コネクタ216からドッキング信号210が制御部68に出力される。制御部68は負荷208の状態を監視しており、具体的には、BE装置14の電源がオン状態であるか否かを監視している。また、制御部68は電源コントローラ100を介してバッテリ102の充電状態を監視している。充電コントローラ100は、後に説明するように、融通電力の有無及びBEアダプタの接続有無を判定する機能、充電量を監視する機能、等を備えている。電源コントローラ100による監視結果は制御部68へ送られている。
【0061】
以上の説明においては、FE装置12とBE装置14がドッキング状態にあったが、それらがセパレート状態にある場合、それぞれの装置において独立して電力制御が実行される。すなわち、セパレート状態においては装置間で融通電力の伝送はなされない。物理的にFE装置12とBE装置14とが離れていても両者がケーブルで接続された場合、それをドッキング状態の一態様とみなすことが可能である。
【0062】
本実施形態においては、BE装置14が融通電力を受電している場合において、BE装置14は受電電力を一定値に制限する制御を実行している。特に、バッテリ102の充電電流量について上限が設けられている。このような条件付けにより、BE装置14において融通電力の過剰消費を回避して、FE装置12用の電力を十分に確保することが可能である。FE装置12においては、負荷200における電力消費とBE装置14による電力消費とが横並びの関係に立つ。制御部68は、上述した高充電状態信号204が得られた場合、FE装置12における消費電力量が下がったものと認識し、必要に応じて、バッテリ102における充電電流量の制限を緩和する制御を実行する。これについては後に詳述する。ちなみに、融通電力によりBE装置14が動作している場合、負荷208に対して電力供給を行った結果、残った電力(余剰電力)がバッテリ102の充電のために利用される。負荷208とバッテリ102との関係でみた場合、負荷208に対する電力供給が優先される。また、FE装置12からBE装置14へ融通電力が供給されている状態においては、バッテリ60に対する充電がバッテリ102に対する充電よりも優先される。これについても後に詳述する。
【0063】
図8には、FE装置12に対してFEアダプタが接続され、BE装置14に対してはBEアダプタが接続されていない状態が示されている。このような状態では、外部電源ライン62を介して取られる外部電力が、符号290Bで示されるように、負荷200へ供給され、また、必要に応じて、符号290Aで示されるように、バッテリ60へ供給される。更に、符号290Cで示されるように、外部電力の一部がBE装置14側へ融通電力として供給される。具体的には、BE装置14内において、融通電力が符号290Eで示されるように負荷208へ供給され、また必要に応じて、符号290Dで示されるように、バッテリ102へ供給される。このように、
図8に示す状態では、単一のAC/DCアダプタを経由して受け入れた外部電力がシステム全体に分配されることになる。但し、FE装置12の電力消費量の方がBE装置14の電力消費量よりも大きく、電力分配にあたっては、結果として、BE装置14よりもFE装置12の方が優先される。優先関係を構築するために、本実施形態では、BE装置14における制御部68が必要な受電制限を実行している。したがって、本実施形態では、FE装置12において、自己の後段に接続されている1又は複数の装置における電力消費量を監視する必要はない。
【0064】
図9には、FE装置12における電力関連構成の一例が示されている。電源コントローラ58は、図示されるように、アダプタ検出回路220、充電回路228、充電量検出回路230及び電源回路232を有している。アダプタ検出回路220は、端子224aに対してAC/DCアダプタ(すなわちFEアダプタ)222が接続されたか否かを監視する回路である。例えば、端子電圧を監視することにより、FEアダプタの接続有無が判定される。符号224は外部電力ラインを示している。検出回路220の検出結果は制御回路238に伝えられる。符号226は内部電源ラインを示しており、そのライン226を経由して外部電力が電源回路232へ送られ、また充電回路228へ送られる。
【0065】
充電回路228は、外部電力が得られている場合に、その外部電力を用いてバッテリ60の充電を行うものである。もちろん、バッテリ60が充電完了状態にある場合には、そのような充電動作は行われない。充電回路228の動作は制御回路238によって制御されている。充電量検出回路230は、バッテリ60における充電量を検出する回路であり、その検出結果は制御部52へ送られている。電源回路232は、外部電力又はバッテリ電力60を負荷200に対して供給する回路である。必要に応じて複数の電源電圧が生成される。そのうちの主な電源電圧がスイッチ回路202を介してコネクタ214内の給電端子214bに与えられる。スイッチ回路202は給電ライン上に設けられおり、その動作は制御部52によって制御されている。上述したように、外部電力が得られている場合に限り、スイッチ回路202が導通動作を行う。すなわち、そのような場合に限り、給電端子214bに融通電力が供給される。
【0066】
制御部52は、図示されるように、制御回路238、判定回路234及び信号生成回路240を有している。制御回路238は、状況を判定する機能、充電を制御する機能及び給電を制限する機能を有している。具体的には、制御回路238によって電源コントローラ58及びスイッチ回路202の動作が制御されている。判定回路234は、充電量が所定の閾値に到達した場合に高充電状態を判定し、その判定結果を制御回路238及び信号生成回路に出力する。信号生成回路240は、高充電状態が判定された場合に、それを表す高充電状態信号242を生成する。その信号が端子214aに出力されている。コネクタ214はドッキング検出機能を備えており、符号206はドッキング検出信号を表している。その信号206は制御回路238に与えられている。制御回路238は、上述したように、FE装置12における状態を認識し、その状態に応じて適切な電源制御を実行する。その制御内容については後に
図11を用いて詳述する。
【0067】
図10には、BE装置14における電源関連構成の一例が示されている。電源コントローラ100は、検出回路250、充電量検出回路260及び電源回路262を有している。検出回路250は、AC/DCアダプタ(すなわちBEアダプタ)252が接続されたか否かを検出する第1の検出機能を有する。符号254は外部電源経路を示しており、符号254aはBEアダプタが接続される端子を示している。検出回路250は、内部電力ライン256aを監視しており、受電端子216bに融通電力が与えられた場合に、それを検出する第2の検出機能を有する。すなわち、検出回路250は、BEアダプタの接続の有無及び融通電力の受電の有無を検出している。その検出結果は制御回路268に送られている。BEアダプタ252が接続された場合、そこを介して得られる外部電力が内部電力ライン256bを介して電源回路262に与えられる。そのような場合、仮にFE装置から融通電力を受電しても、その融通電力の取り込み及び消費は禁止される。すなわち受電制限がかけられる。なお、コネクタ216内には、上記の受電端子216bが設けられ、また高充電状態信号が入力される端子216aが設けられている。ドッキング状態において、給電端子と受電端子216bとが物理的に且つ電気的に接続される。
【0068】
充電回路258は、外部電力又は融通電力を用いてバッテリ102を充電する回路である。バッテリ102が所定の充電量以下になった場合、充電回路258が充電動作を行う。充電回路208の動作は実際のところ制御回路268によって制御されている。充電量検出回路260は、バッテリ102の充電量を検出しており、その検出結果が判定回路264へ送られている。判定回路264は、充電量が所定の閾値を超えた場合に、高充電状態を判定する。その判定結果が制御回路268へ送られている。電源回路262は、外部電力、融通電力、又は、バッテリ102の電力を負荷208に供給する回路である。電源回路262は必要な複数の電源電圧を生成している。その動作は制御部68によって制御されている。
【0069】
BEアダプタ接続状態においては、電源回路262は外部電力を負荷208へ供給する。BEアダプタ非接続状態且つ融通電力非受電状態においては、電源回路262はバッテリ102の電力を負荷208へ供給する。BEアダプタ非接続状態且つ融通電力の受電状態においては、電源回路262は、受け取った融通電力を負荷208へ供給する。
【0070】
制御部68は、制御回路268及び判定回路264を有している。制御回路268は、BE装置14の状況を判定する機能、受電を制限する機能、充電を制限する機能、等を有している。制御回路268には、高充電状態信号242、ドッキング検出信号210、判定回路264の判定信号が入力されている。検出回路250からの検出信号も入力されている。制御回路268はそれらの信号に基づいてBE装置14における電力制御を実行する。上述したように、融通電力を受電及び消費している状態においては、制御回路268は、電源コントローラ100を制御し、融通電力を一定以上受け入れないように受電制限を行う。また、その場合には、負荷208への融通電力の供給を優先し、余剰分をバッテリ102の充電に当てる制御を実行する。更に、制御回路268は、所定状態(本実施形態ではBE装置14の電源オン状態)において、高充電状態信号242が得られた場合、バッテリ102における充電電流量の上限値を緩和する制御を実行する。
【0071】
次に、
図11に基づいて、FE装置及びBE装置における電源関連の動作を説明する。
図11には個々の装置における電源制御内容が一覧として示されている。符号292で示す欄は各種の状態を示しており、具体的には、状態1から状態8までがある。符号294で示す欄はFE装置の動作内容を示している。符号296で示す欄はBE装置の動作内容を示している。
【0072】
状態1及び状態2は、FE装置にFEアダプタが接続され、且つ、BE装置にもBEアダプタが接続されている場合である。状態1においてはFE装置及びBE装置が電源スイッチオフの状況にあり、状態2においてはそれらの装置が電源スイッチオンの状況にある。
【0073】
状態1においては、FEアダプタの電力が必要に応じてFE内のバッテリに供給され、バッテリが充電される。また、BE装置において、BEアダプタからの電力が必要に応じてBE装置内のバッテリに供給され、そのバッテリが充電される。BE装置においては、BEアダプタが接続されている場合、受電制限が実行される。これが符号302で示されている。すなわち、FE装置においては、FEアダプタが接続されている場合にスイッチ回路がオン状態となるが(符号300参照)、一方、BE装置において受電制限の制御が実行されるため、結果として、受け取り側の機能により融通電力の取り込みが制限される。このように、個々の装置においては他の装置の状況を認識できないものの、両装置が協働することにより、結果として無用な融通電力の供給が回避される。状態2においては、状態1と同様に、必要に応じてそれぞれの装置においてバッテリに対してアダプタからの外部電力が供給され、また個々の装置内における負荷に対して外部電力が供給される。状態1及び状態2においては、個々の装置において独立して電力が消費される。
【0074】
状態3及び状態4は、FE装置及びBE装置のいずれにもアダプタが接続されていない場合である。FE装置においては、FEアダプタが接続されていないために、スイッチ回路がオフ状態(遮断状態)となり、一方、BE装置側においてはBEアダプタが接続されていないので、受電制限は行われない。結果として、供給側の機能により、融通電力の供給が制限される。スイッチ回路が切断状態となるため、FE装置内のバッテリの電力が不必要にBE装置側へ供給されてしまうという問題は回避される。状態3においては、FE装置及びBE装置の電源スイッチオフの状況にあり、その場合においてはそれぞれの装置においてバッテリの自然放電により必要な回路に電力が与えられる。それは待機電力である。一方、状態4においては、それぞれの装置が電源スイッチオンの状況にあり、その場合においては、個々の装置においてバッテリからの電力がそれぞれの装置内の負荷へ供給される。
【0075】
状態5及び状態6は、FE装置にFEアダプタが接続され、一方、BE装置にはBEアダプタが接続されていない場合である。状態5は各装置の電源スイッチオフの状況にあり、状態6においては各装置の電源スイッチオンの状態にある。まず状態5に着目すると、FE装置においては、FEアダプタからの電力が必要に応じてFE装置内のバッテリに供給される。それと共に、その電力の一部が融通電力としてBE装置側へ供給される。その電力により必要に応じてBE装置内のバッテリに対する充電が実行される
(符号304参照)。但し、FE装置内のバッテリの充電がBE装置内のバッテリの充電よりも優先される。BE装置においては、高充電状態信号が得られるまで、BE装置内のバッテリの充電電流量の上限値を第1の値に制限し、高充電状態信号が得られた場合に、その充電電流量の上限値を第2の値に引き上げる。このように、両装置の電源スイッチがオフ状態にある場合には、負荷における電力消費が待機電力程度であるので、FE装置内のバッテリの充電を優先しつつも、その条件が満たされる限りにおいて、BE装置内のバッテリの充電が促進される。
【0076】
状態6においては、FE装置内では、FEアダプタからの外部電力が、FE装置内の負荷に供給されると共に、必要に応じて、その電力の一部を使ってFE装置内のバッテリが充電され
る。また、外部電力の一部が融通電力としてBE装置へ供給される。その電力がBE装置内の負荷に供給され、また必要に応じてバッテリへ供給される(符号306参照)。この状態6においても、FE装置内のバッテリの充電が優先される。すなわち、BE装置内において、バッテリの充電電流量が一定の値に抑制される。実際のところ、負荷に与える電力以外の余剰電力を利用してBE装置内のバッテリが充電される。
【0077】
本実施形態においては、状態6において、高充電状態信号が生成されても、BE装置内のバッテリの充電電流量の上限値を引き上げる制御は行われていない。これはBE装置内の負荷に十分な電力を供給する状態を確保するためである。しかしながら、融通電力に余裕があるような場合、高充電状態信号が得られた時点で、充電電流量の上限値を引き上げるようにしてもよい。
【0078】
状態7及び状態8は、FE装置にFEアダプタが接続されておらず、BE装置にBEアダプタが接続されている場合である。その場合において、FE装置においては、FEアダプタが接続されていないために、スイッチ回路が遮断動作する。それによりFE装置のバッテリからの電力が外部に供給されてしまう事態が回避される。一方、BE装置においては、BEアダプタが接続されているため、受電制限の制御が実行される。よって、BE装置それ自体の機能によって融通電力の取り込みが禁止される。
【0079】
状態7は個々の装置の電源スイッチがオフの場合を示しており、状態8は個々の装置の電源スイッチがオンの場合を示している。状態7においては、FE装置内において、バッテリからの電力が待機電力として負荷に供給され、BE装置においては外部電力が待機電力として負荷に供給されると共にバッテリにも供給される。
【0080】
状態8においては、FE装置内において、バッテリからの電力が負荷に供給される。BE装置側においては、外部電力が負荷に供給されると共に必要に応じてバッテリに供給される。
【0081】
以上のように、個々の装置においては、他の装置の状態、具体的にはアダプタ接続の有無及び充電量を監視しなくても、FE装置側でスイッチ回路の動作を切り替え、またBE装置側で受電制限の有無を切り替えることにより、結果として、装置間において融通電力を適正に授受することが可能となる。また、FE装置内のバッテリの電力を不用意にBE装置側へ供給してしまうという問題も防止される。
【0082】
図12には、状態5及び状態6における、充電電流量の変化及び負荷電流量の変化が示されている。T1において状態5が開始される。符号218は、FE装置内のバッテリの充電電流量の変化を示しており、符号220はBE装置内のバッテリの充電電流量の変化を示している。期間T12においては、FE装置内のバッテリに対して充電電流量a1が与えられる。その際、BE装置内のバッテリに対しては充電電流量a3が与えられる。すなわち、BE装置内のバッテリに対する充電電流量がかなり制限される。
【0083】
T2はFEバッテリの充電が完了したタイミングを示している。その場合においては、上述した高充電状態信号が生成される。その信号生成が契機となり、期間T23において、BE装置内のバッテリに対する充電電流量がa3からa2へ引き上げられている。すなわち、充電電流量に制限がかかっているのは同じであるが、その制限値が引き上げられている。これによりBE装置内のバッテリの充電を促進することができる。T3はBE装置内の充電完了を示している。ちなみに、
図12に示す例では、a1>a2>a3の関係が成り立っている。
【0084】
T4は状態6の開始タイミングを示している。符号222はFE装置内における負荷電流量の変化を示しており、符号226はBE装置内における負荷電流量の変化を示している。また、符号228はFE装置内における充電電流量の変化を示しており、符号230はBE装置内における充電電流量の変化を示している。期間T45においては、FE装置内のバッテリが充電電流量a1をもって充電される。それと同時に、BE装置内におけるバッテリが充電電流量a4をもって充電される。すなわち、極めて制限された充電電流量によりBE装置内のバッテリが充電される。状態6においては、システムが稼働しているため、それぞれの装置内の負荷への電力供給が十分に確保される限りにおいて、余剰電力を用いてBE装置内のバッテリが充電される。T5はFE装置内におけるバッテリの充電完了を示している。
【0085】
期間T56において、本実施形態では、BE装置内のバッテリの充電電流量a4が維持されている。上述したように、高充電状態信号が得られたタイミングをもって、充電電流の制限値を引き上げるようにしてもよい。T6はBE装置内におけるバッテリの充電完了を示している。ちなみに、a4はa3と同等あるいはそれ以下である。
【0086】
図12に示されるように、FE装置内のバッテリの充電とBE装置内のバッテリの充電とを対比した場合、前者が優先されている。また、バッテリの充電と負荷への電力供給を対比した場合、負荷への電力供給が優先されている。より広くBE装置とFE装置との関係でみた場合、FE装置への電力供給が優先されている。本実施形態においては、FE装置内には通信回路が含まれ、そこにおける電力消費量は比較的大きいため、FE装置への電力供給がBE装置への電力供給よりも優先されている。BE装置にもバッテリが備わっているため、上記のような優先的な電力供給制御を実行したとしても、基本的にBE装置の動作に障害は生じない。BE装置におけるバッテリ充電量が低下したような場合にはそれに対してアダプタを接続すればよい。
図2及び
図3に示したように、FE装置12は比較的大型の装置であり、それに対し、BE装置14は比較的小型の電力消費の小さい装置であるため、上記のようなEF装置に対する優先的な電力供給を行うのが合理的である。
【0087】
(6)変形例
図13には、BE装置の変形例が示されている。BE装置14Aにおいて、
図10に示した構成と同一の構成には同一符号を付しその説明を省略する。BE装置14Aは制御部68A及び電源コントローラ100Aを有している。電源コントローラ100Aは、検出回路250、充電回路258、充電量検出回路260及び電源回路262Aを有している。電源回路262Aは、
図9において説明した構成と同様に、後段の装置に対して融通電力を供給する給電ラインを備えており、その給電ライン上にスイッチ回路278が設けられている。コネクタ272内には給電端子272b及び端子272aが含まれる。BE装置14Aの後段には必要に応じて他の装置が接続される。例えば他のBE装置が接続される。
【0088】
制御部68Aは、制御回路268、判定回路264及び信号生成回路270を有している。信号生成回路270は、高充電状態が判定された場合に、それを示す高充電状態信号279を生成し、それを端子272aに出力する。
【0089】
したがって、後段に接続された他の装置は、そこから見て上流側装置であるBE装置14Aから融通電力を得ることが可能であり、その融通電力を利用して動作を行うことが可能である。また、当該他の装置は、BE装置14Aから得られる高充電状態信号に基づいて制御を実行することが可能である。上述した信号生成回路270は、FE装置から供給される高充電状態信号を監視しており、FE装置からの高充電状態信号が得られ、且つ、自己の装置において高充電状態が判定された場合にのみ高充電状態信号279を生成している。したがって、複数の装置を上流から下流にかけて直列に接続した場合において、より上流側の装置における電力消費及びバッテリ充電が優先されることになる。
【0090】
図14には、直列接続された複数の装置が示されている。具体的には、第1装置280、第2装置282及び第3装置284が接続されており、更に必要に応じて第3装置284の後段に1又は複数の装置が接続される。個々の装置に対してはアダプタを接続することが可能であり、
図14に示す例では、第1装置280にAC/DCアダプタが接続されている。すなわち、第1装置280に対して外部電力が供給されている。その外部電力が供給ライン288を介して第2装置282へ供給され、更にその外部電力が更なる融通電力として第3装置284へ供給される。第2装置においては、受け入れた融通電力を後段の装置に融通電力として供給する。このようなディジーチェーン接続を行う場合においては、個々の装置が自律的に受電制限を行うのが望ましい。例えば、個々の装置において受電電力量の上限値を設定しておくのが望ましい。これにより第1装置280等において電力不足が生じてしまう問題を回避することが可能である。また上流から下流にかけて高充電状態信号
286を供給することにより、上流側から下流側にかけて段階的にバッテリを優先充電することが可能である。
【0091】
図14に示したシステム構成においては、システム全体として電力分配を統括管理する部分は不要であり、個々の装置において給電制御及び受電制限を行うだけで、全体として合理的な電力分配を実現することが可能である。