(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被走査面に照射される第1光線及び第2光線を発する光源と、前記第1光線及び第2光線のための入射光学系とを含み、前記第1光線と前記第2光線とが副走査方向に並び、且つ、その副走査方向の間隔が前記被走査面に向かう方向において拡大するように、前記副走査方向に直交する基準線に対して傾きを持たせて前記第1光線及び前記第2光線を発する光源ユニットと、
前記光源ユニットから発せられる前記第1光線及び前記第2光線を反射して、前記被走査面を主走査方向に走査させる偏向体と、
前記偏向体と前記被走査面との間に配置され、光線の入射面と出射面とを有し、前記第1光線及び前記第2光線を前記被走査面上に結像させる走査レンズと、を備え、
前記入射面及び前記出射面の双方は、前記第1光線が通過する第1屈折面と、前記第2光線が通過する第2屈折面とが、前記副走査方向に並んで配置された光学屈折面であり、
前記入射面の前記第1屈折面が有する第1母線と、前記入射面の前記第2屈折面が有する第2母線との前記副走査方向における間隔が、前記主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなり、
前記出射面の前記第1屈折面が有する第3母線と、前記出射面の前記第2屈折面が有する第4母線との前記副走査方向における間隔が、前記主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなり、
前記走査レンズの前記副走査方向における中央部をレンズ中央部とするとき、前記第1母線の前記副走査方向における位置は前記第3母線よりもレンズ中央部側であり、前記第2母線の前記副走査方向における位置は前記第4母線よりもレンズ中央部側であることを特徴とする光走査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の独立した光学面を有する走査レンズが用いられる光走査装置においては、像面湾曲性能などの光学特性を良好なものとするのは困難である。とりわけ、光線をドラム周面に結像させる機能を有するレンズが上記の走査レンズのみである1枚走査レンズ構成の光学系では、良好な光学性能を得ることは難しくなる。
【0005】
本発明の目的は、複数の独立した光学面を有する走査レンズが用いられる光走査装置及び画像形成装置において、良好な光学性能を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に係る光走査装置は、被走査面に照射される第1光線及び第2光線を発する光源と、前記第1光線及び第2光線のための入射光学系とを含み、前記第1光線と前記第2光線とが副走査方向に並び、且つ、その副走査方向の間隔が前記被走査面に向かう方向において拡大するように、前記副走査方向に直交する基準線に対して傾きを持たせて前記第1光線及び前記第2光線を発する光源ユニットと、前記光源ユニットから発せられる前記第1光線及び前記第2光線を反射して、前記被走査面を主走査方向に走査させる偏向体と、前記偏向体と前記被走査面との間に配置され、光線の入射面と出射面とを有し、前記第1光線及び前記第2光線を前記被走査面上に結像させる走査レンズと、を備え、前記入射面及び前記出射面の
双方は、前記第1光線が通過する第1屈折面と、前記第2光線が通過する第2屈折面とが、前記副走査方向に並んで配置された光学屈折面であり、
前記入射面の前記第1屈折面が有する第1母線と、
前記入射面の前記第2屈折面が有する第2母線との前記副走査方向における間隔が、前記主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなり、
前記出射面の前記第1屈折面が有する第3母線と、前記出射面の前記第2屈折面が有する第4母線との前記副走査方向における間隔が、前記主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなり、前記走査レンズの前記副走査方向における中央部をレンズ中央部とするとき、前記第1母線の前記副走査方向における位置は前記第3母線よりもレンズ中央部側であり、前記第2母線の前記副走査方向における位置は前記第4母線よりもレンズ中央部側であることを特徴とする。
【0007】
上記の光走査装置によれば、第1光線が第1屈折面を通過し、第2光線が第2屈折面を通過することで、これら光線が被走査面上に結像される。前記第1光線及び前記第2光線は、その副走査方向の間隔が前記被走査面に向かう方向において拡大するので、各光線をミラー等で反射させて独立的に所望の被走査面に向かわせ易くなる。この利点を得るため、前記第1光線及び前記第2光線は前記基準線に対して傾きを持たせて発せられるため、前記第1屈折面及び第2屈折面に対して、副走査方向において斜入射することになる。しかし、前記第1屈折面及び前記第2屈折面は、第1母線と第2母線との前記副走査方向における間隔
、及び第3母線と第4母線との前記副走査方向における間隔が、主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなる屈折面であるため、光走査装置の光学性能を良好なものとすることができる。
【0008】
上記の光走査装置において、前記光学屈折面が、前記入射面及び前記出射面の双方に形成されていることが望ましい。この構成によれば、2つの光学屈折面によって、光走査装置の光学性能を一層良好なものとすることができる。
【0009】
上記の光走査装置において、前記第1光線及び前記第2光線を前記被走査面上に結像させる機能を有するレンズが、前記走査レンズの1枚のみである構成とすることができる。本発明に係る走査レンズによれば、当該走査レンズ単体にて良好な光学性能を達成することができるので、上記の構成を採用することで、部品点数の削減、光走査装置のコンパクト化を図ることができる。
【0010】
上記の光走査装置において、前記走査レンズの前記副走査方向におけ
る端部をレンズ端部とし、前記第1屈折面及び前記第2屈折面の前記副走査方向における中央部をそれぞれ第1中央部及び第2中央部とするとき、前記第1母線
、第3母線の前記副走査方向における位置は、前記主走査方向の中央部においては、前記第1中央部よりも前記レンズ中央部側であり、前記主走査方向の端部においては、前記第1中央部よりも前記レンズ端部側であり、前記第2母線
、第4母線の前記副走査方向における位置は、前記主走査方向の中央部においては、前記第2中央部よりも前記レンズ中央部側であり、前記主走査方向の端部においては、前記第2中央部よりも前記レンズ端部側であることが望ましい。
【0011】
上記の光走査装置によれば、前記第1母線及び第2母線
、また前記第3母線及び第4母線が上記の通りに配置されるので、走査レンズの副走査方向の幅を抑制することができる。従って、走査レンズの生産性を向上させることができる。
【0012】
上記の光走査装置において、前記走査レンズは、前記主走査方向と平行な平面からなり、前記第1屈折面が配置される側の副走査方向の端面である第1端面と、前記第2屈折面が配置される側の副走査方向の端面である第2端面とを備え、前記第1屈折面を通過する前記第1光線の光線中心と前記第1端面との間の距離をW1、前記第2屈折面を通過する前記第2光線の光線中心と前記第2端面との間の距離をW2、前記第1端面と前記第2端面との間の距離をWとするとき、次式(1)を満足することが望ましい。
(W1+W2)×2>W ・・・(1)
【0013】
或いは、上記の光走査装置において、前記走査レンズは、前記主走査方向と平行な平面からなり、前記第1屈折面が配置される側の副走査方向の端面である第1端面と、前記第2屈折面が配置される側の副走査方向の端面である第2端面とを備え、前記第1屈折面を通過する前記第1光線の光線中心と前記第1端面との間の距離をW1、前記第2屈折面を通過する前記第2光線の光線中心と前記第2端面との間の距離をW2、前記第1光線の光線中心と前記第2光線の光線中心との間の距離をdとするとき、次式(2)を満足することが望ましい。
W1+W2>d ・・・(2)
【0014】
上記の式(1)若しくは式(2)を満足する光走査装置によれば、走査レンズの副走査方向の幅を抑制することができる。
【0015】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の周面を前記被走査面として光線を照射する上記の光走査装置とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の独立した光学面を有する走査レンズが用いられる光走査装置及び画像形成装置において、良好な光学性能を得ることができる。従って、高品質の静電潜像及びトナー像を形成する光走査装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す概略断面図である。画像形成装置1は、カラープリンターであって、略直方体のハウジングからなる本体ハウジング10を含む。
【0019】
本体ハウジング10は、シートに対して画像形成処理を行う複数の処理ユニットを内部に収容する。本実施形態では、処理ユニットとして、画像形成ユニット2Y、2C、2M、2Bk、光走査装置23、中間転写ユニット28及び定着装置300を含む。本体ハウジング10の上面には排紙トレイ11が備えられている。排紙トレイ11に対向して、シート排出口12が開口している。本体ハウジング10の側壁には、手差し給紙トレイ13が開閉自在に取り付けられている。本体ハウジング10の下部には、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット14が、着脱自在に装着されている。
【0020】
画像形成ユニット2Y、2C、2M、2Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナー像を、コンピューター等の外部機器から伝送された画像情報に基づき形成するもので、水平方向に所定の間隔でタンデムに配置されている。各画像形成ユニット2Y、2C、2M、2Bkは、静電潜像及びトナー像を担持する感光体ドラム21(像担持体)、感光体ドラム21の周面を帯電させる帯電器22、前記静電潜像に現像剤を付着させてトナー像を形成する現像器24、この現像器24に各色のトナーを供給するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各トナーコンテナ25Y、25C、25M、25Bk、感光体ドラム21上に形成されたトナー像を一次転写させる一次転写ローラー26、及び感光体ドラム21の周面の残留トナーを除去するクリーニング装置27を含む。
【0021】
光走査装置23は、各色の感光体ドラム21の周面上に静電潜像を形成する。本実施形態の光走査装置23は、1つの筐体内に各色用に準備された複数の光源と、これら光源から発せられた光線を各色の感光体ドラム21の周面21S(被走査面)に結像及び走査させる結像光学系とを含む。各色の結像光学系は互いに独立した光学系ではなく、一部の光学系が共用されている。この光走査装置23については、後記で詳述する。
【0022】
中間転写ユニット28は、感光体ドラム21上に形成されたトナー像を一次転写させる。中間転写ユニット28は、各感光体ドラム21の周面に接触しつつ周回する転写ベルト281と、転写ベルト281が架け渡される駆動ローラー282および従動ローラー283とを含む。転写ベルト281は、一次転写ローラー26によって各感光体ドラム21の周面に押し付けられている。各色の感光体ドラム21上のトナー像は転写ベルト281上の同一箇所に重ね合わせて一次転写される。これにより、フルカラーのトナー像が転写ベルト281上に形成される。
【0023】
駆動ローラー282に対向して、転写ベルト281を挟んで二次転写ニップ部Tを形成する二次転写ローラー29が配置されている。転写ベルト281上のフルカラートナー像は、二次転写ニップ部Tにおいてシート上に二次転写される。シート上に転写されずに転写ベルト281の周面に残留したトナーは、従動ローラー283に対向して配置されたベルトクリーニング装置284によって回収される。
【0024】
定着装置300は、熱源が内蔵された定着ローラー301と、定着ローラー301と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラー302とを含む。定着装置300は、二次転写ニップ部Tにおいてトナー像が転写されたシートを、定着ニップ部Nにおいて加熱及び加圧することで、トナーをシートに溶着させる定着処理を施す。定着処理が施されたシートは、シート排出口12から排紙トレイ11に向けて排出される。
【0025】
本体ハウジング10の内部には、シートを搬送するためのシート搬送路が設けられている。シート搬送路は、本体ハウジング10の下部付近から上部付近まで、二次転写ニップ部T及び定着装置300を経由して、上下方向に延びるメイン搬送路P1を含む。メイン搬送路P1の下流端は、シート排出口12に接続されている。両面印刷の際にシートを反転搬送する反転搬送路P2が、メイン搬送路P1の最下流端から上流端付近まで延設されている。また、手差しトレイ13からメイン搬送路P1に至る手差しシート用搬送路P3が、給紙カセット14の上方に配置されている。
【0026】
給紙カセット14は、シートの束を収容するシート収容部を備える。給紙カセット14の右上付近には、シート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すピックアップローラー151と、そのシートをメイン搬送路P1の上流端に送り出す給紙ローラー対152とが備えられている。手差しトレイ13に載置されたシートも、手差しシート用搬送路P3を通して、メイン搬送路P1の上流端に送り出される。メイン搬送路P1の二次転写ニップ部Tよりも上流側には、所定のタイミングでシートを転写ニップ部に送り出すレジストローラー対153が配置されている。
【0027】
シートに片面印刷(画像形成)処理が行われる場合、給紙カセット14又は手差しトレイ13からシートがメイン搬送路P1に送り出され、該シートに二次転写ニップ部Tにおいてトナー像の転写処理が、定着装置30において転写されたトナーをシートに定着させる定着処理が、各々施される。その後、該シートは、シート排出口12から排紙トレイ11上に排紙される。一方、シートに両面印刷処理が行われる場合、シートの片面に対して転写処理及び定着処理が施された後、該シートは、シート排出口12から排紙トレイ11上に一部が排紙される。その後、該シートはスイッチバック搬送され、反転搬送路P2を経て、メイン搬送路P1の上流端付近に戻される。しかる後、シートの他面に対して転写処理及び定着処理が施され、該シートは、シート排出口12から排紙トレイ11上に排紙される。
【0028】
続いて、光走査装置23の詳細について説明する。
図3は、光走査装置23の主走査断面の構成を示す図、
図4は、その副走査断面の構成を示す図である。光走査装置23は、ハウジング(図略)と、このハウジング内に収容された各色用のレーザーユニット30(光源;光源ユニットの一部)と、走査光学系とを含む。前記走査光学系は、コリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32を含む入射光学系(光源ユニットの一部)と、ポリゴンミラー33(偏向体)と、1枚の走査レンズ40とを含む。
【0029】
本実施形態では、イエロー及びシアン用の走査光学系と、マゼンタ及びブラック用の走査光学系とが、主走査平面においてポリゴンミラー33を挟んで対向して配置されている。つまり、本実施形態の光走査装置23は、1つのポリゴンミラー33を、互いに対向して配置された2つの走査光学系で共用する対向走査方式の装置である。
図2では、この2つの走査光学系のうちの一方の主走査断面の構成だけを示している。さらに、各走査光学系において、ポリゴンミラー33だけでなく走査レンズ40も、2色の走査光学系で共用されている。
図3では、イエロー及びシアン用の走査光学系についての副走査断面の構成を示している。
【0030】
図2を参照して、レーザーユニット30は、感光体ドラム21の周面21S(被走査面)に照射されるレーザー光線Lを発する。レーザー光線Lは、コリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32を順次通過した後、ポリゴンミラー33の反射面33Rで反射され、走査レンズ40を通過して周面21Sに照射される。本実施形態では斜入射の光学系が採用されている。軸上のレーザー光線が周面21Sに照射される軸上点LAを基準として、ポリゴンミラー33の回転方向(
図2に矢印で表示)の上流側の方向をマイナス側の像高領域と、下流側の方向をプラス側と区分するとき、レーザーユニット30と、レーザー光線Lのためのコリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32を含む入射光学系とは、マイナス側の像高領域の側に配置されている。
【0031】
コリメータレンズ31は、レーザーユニット30から発せられ拡散するレーザー光線Lを平行光若しくは平行に近い光に変換する。シリンドリカルレンズ32は、前記平行光を主走査方向に長い線状光に変換してポリゴンミラー33の反射面33Rに結像させる。
【0032】
ポリゴンミラー33は、正六角形の各辺に沿って平坦な反射面33Rが形成された多面鏡である。ポリゴンミラー33の中心位置には、回転軸33Sが取り付けられている。回転軸33Sには、ポリゴンモーター34(
図3)の出力軸が連結されている。ポリゴンミラー33は、ポリゴンモーター34が回転駆動されることによって、回転軸33Sの軸回りに回転しつつ、レーザーユニット30から発せられ、コリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32を経て結像されたレーザー光線Lを反射(偏向)すると共に、該レーザー光線Lにて感光体ドラム21の周面21Sを走査させる。
【0033】
走査レンズ40は、ポリゴンミラー33と周面21Sとの間に配置され、入射光の角度と像高とが比例関係となる歪曲収差(fθ特性)を有するレンズであって、主走査方向に長尺のレンズである。走査レンズ40は、ポリゴンミラー33によって反射されたレーザー光線Lを集光し、周面21S上に結像させる。本実施形態では、レーザー光線Lを周面21S上に結像させる機能を有するレンズが、1枚の走査レンズ40のみである。従って、光走査装置23の部品点数の削減、コンパクト化を図ることができる。
【0034】
図3を参照して、レーザーユニット30は、所定波長のレーザー光線(第1光線L1)を発する第1半導体レーザー素子30Aと、所定波長のレーザー光線(第2光線L2)を発する第2半導体レーザー素子30Bとを備えている。第1光線L1は、シアン(C)の感光体ドラム21の周面21Sに、第2光線L2は、イエロー(Y)の感光体ドラム21の周面21Sに各々照射される。第1、第2半導体レーザー素子30A、30Bは、第1光線L1と第2光線L2とが副走査方向に並び、且つ、その副走査方向の間隔が各々の周面21Sに向かう方向において拡大するように、光走査装置23の前記ハウジングに組み付けられている。
【0035】
ここで、ポリゴンミラー33の反射面33Rに対して垂直な線を基準線Gとする。この基準線Gは、副走査方向に直交する線である。第1光線L1及び第2光線L2は、基準線Gに対して傾きを持って反射面33Rに入射する。第1光線L1は、基準線Gに対して上方に角度θAの傾き角で反射面33Rに斜入射し、第2光線L2は、基準線Gに対して下方に角度θBの傾き角で反射面33Rに斜入射する。θA=θBであり、第1光線L1と第2光線L2とは基準線Gを挟んで対称な関係にある。第1光線L1と第2光線L2とは、反射面33Rに至るまでは徐々に接近するが、反射面33Rで反射された後には徐々に離間する。
【0036】
なお、
図3では第1、第2半導体レーザー素子30A、30Bの傾きのみで第1光線L1、第2光線L2に傾きを持たせている例を示しているが、これら光線の傾きは、第1、第2半導体レーザー素子30A、30B(光源)とコリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32を含む入射光学系とからなる光源ユニットにおいて実現されれば良い。例えば、コリメータレンズ31及びシリンドリカルレンズ32の配置によって光線を傾けたり、傾きを発生させる光学素子を入射光学系に追加したり、或いは光源と入射光学系の双方に光線を傾かせるための工夫を施したりすることによって、光線の傾きを実現させても良い。
【0037】
つまり、第1、第2光線L1、L2の副走査方向の間隔が各々の被走査面(周面21S)に向かう方向において拡大するので、各光線L1、L2をミラーで反射させて独立的に各々の周面21Sに向かわせ易くなる。第1光線L1の光路上には、第1ミラー35及び第2ミラー36が配置されている。反射面33Rで反射され、走査レンズ40を通過した第1光線L1は、第1ミラー35及び第2ミラー36で反射されて、シアンの感光体ドラム21の周面21Sに照射される。また、第2光線L2の光路上には、第3ミラー37が配置されている。反射面33Rで反射され、走査レンズ40を通過した第2光線L2は、第3ミラー37で反射されて、イエローの感光体ドラム21の周面21Sに照射される。
【0038】
走査レンズ40は、第1光線L1、第2光線L2に各々対応して、副走査方向(
図3では上下方向)に並ぶ第1レンズ部A1、第2レンズ部A2を備えている。すなわち、第1光線L1は、第2レンズ部A2を通過し、シアンの感光体ドラム21の周面21Sに結像される。一方、第2光線L2は、第1レンズ部A1を通過し、イエローの感光体ドラム21の周面21Sに結像される。
【0039】
図4は、走査レンズ40の副走査断面及びレーザー光線L(第1、第2光線L1、L2)の通過状況を示す図、
図5は、走査レンズ40の斜視図である。走査レンズ40は、ポリゴンミラー33と対向しレーザー光線Lが入射される入射面R1と、入射面R1と反対側の面であってレーザー光線Lが出射される出射面R2とを備えている。なお、
図4では簡略化のために、第1、第2光線L1、L2の光路を、反射面33Rにおいて副走査方向に離間した反射点で反射され、入射面R1に分離して進行し、
図3とは異なり第1光線L1が第1レンズ部A1を通過し、第2光線L2が第2レンズ部A2を通過するように、模式的に描いている(以下の説明では、この光線通過態様に基づき説明する)。実際は、第1光線L1と第2光線L2とが反射面33Rの同じ点において反射されたり、反射面33Rで反射後の光路が第1光線L1と第2光線L2とで交差したりする場合がある。
【0040】
本実施形態では、入射面R1及び出射面R2の双方が光学屈折面とされている。入射面R1は、第1光線L1が通過する第1屈折面41と第2光線L2が通過する第2屈折面41とが、副走査方向に並んで配置された光学屈折面である。第1屈折面41及び第2屈折面42は、副走査断面において凹の曲面である。出射面R2は、第1光線L1が通過する第3屈折面43と第2光線L2が通過する第4屈折面44とが、副走査方向に並んで配置された光学屈折面である。第3屈折面43及び第4屈折面44は、副走査断面において凸の曲面である。第1屈折面41と第3屈折面43とが第1レンズ部A1を構成する屈折面であり、第2屈折面42と第4屈折面44とが第2レンズ部A2を構成する屈折面である。他の実施形態では、入射面R1及び出射面R2のいずれか一面に、上記光学屈折面が形成される。
【0041】
第1屈折面41及び第2屈折面42は、主走査方向に延びる凹型のトーリック面であり、第3屈折面43及び第4屈折面44は、主走査方向に延びる凸型のトーリック面である。これら第1屈折面41、第2屈折面42、第3屈折面43及び第4屈折面44は、それぞれ第1母線、第2母線、第3母線及び第4母線を有している。トーリック面は、半円柱型の形状を有し、前記半円柱が延びる方向が母線方向、この母線と直交する方向が子線方向である。子線は、前記半円柱の各断面の曲面を示す線であり、この子線の頂点を結ぶ線が母線である。本実施形態では、第1屈折面41の第1母線と第2屈折面42の第2母線との副走査方向における間隔、並びに、
図5に示されているように、第3屈折面43の第3母線43Mと第4屈折面44の第4母線44Mとの副走査方向における間隔が、走査レンズ40の主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなるように、各屈折面の形状が設定されている。
【0042】
図6及び
図7に基づき、母線に関して詳述する。
図6は、
図5のVI−VI線断面図、
図7は、
図5のVII−VII線断面図である。
図6及び
図7では、走査レンズ40の副走査方向における中央部をレンズ中央部C、及び、副走査方向における端部をレンズ上端部401、レンズ下端部402として表示している。また、第1レンズ部A1(第1屈折面41及び第3屈折面43)の副走査方向における中央部を第1中央部C1、第2レンズ部A2(第2屈折面42及び第4屈折面44)の副走査方向における中央部を第2中央部C2として表示している。
【0043】
第1屈折面41の第1母線41Mの副走査方向における位置は、主走査方向の中央部(
図6)においては、第1中央部C1よりもレンズ中央部C側の位置であり、主走査方向の端部(
図7)においては、第1中央部C1よりもレンズ上端部401側の位置である。第2屈折面42の第2母線42Mの副走査方向における位置は、主走査方向の中央部においては、第2中央部C2よりもレンズ中央部C側の位置であり、主走査方向の端部においては、第2中央部C2よりもレンズ下端部402側の位置である。
【0044】
図8(A)は比較例に係る走査レンズ40Aの入射面R1Aを示す平面図、
図8(B)は本実施形態に係る走査レンズ40の入射面R1を示す平面図である。比較例の入射面R1Aにおいては、第1屈折面41Aの第1母線410Mは、第1レンズ部A1の第1中央部C1のラインと一致し、また、第2屈折面42Aの第2母線420Mは、第2レンズ部A2の第2中央部C2のラインと一致している。
【0045】
これに対し、本実施形態の入射面R1においては、第1母線41M、第2母線42Mは、第1中央部C1、第2中央部C2のラインとは一致していない。第1母線41M及び第2母線42Mは、主走査方向の中央部Bにおいて、第1母線41Mと第2母線42Mとは副走査方向において最も接近し、主走査方向の中央部Bから主走査方向の両端に向うに連れて両者の副走査方向の間隔が徐々に広くなるような曲線である。これにより、第1光線L1及び第2光線L2が副走査方向において基準線Gに対して傾きを持って入射する斜入射光学系において、第1母線41M、第2母線42Mが、それぞれ第1光線L1、第2光線L2による主走査方向の走査軌跡に沿うようになる。従って、後記の実施例にて実証する通り、光走査装置23の像面湾曲等の光学性能を良好なものとすることができる。
【0046】
さらに、第1母線41M、第2母線42Mが、主走査方向の中央部Bでは第1中央部C1、第2中央部C2よりも副走査方向においてレンズ中央部C側にあり、中程の主走査方向位置において第1中央部C1、第2中央部C2をそれぞれ跨ぎ、主走査方向の両端部では副走査方向のレンズ端部側に位置する。すなわち、第1、第2レンズ部A1、A2の副走査幅を有効に利用して、第1、第2母線41M、42Mを設定している。このため、走査レンズ40の副走査方向の幅を抑制しつつ、上述の良好な光学特性を得ることができる。従って、走査レンズ40の生産性を向上させることができる。
【0047】
出射面R2についても同様である。第3屈折面43の第3母線43Mの副走査方向における位置は、主走査方向の中央部(
図6)においては、第1中央部C1よりもレンズ中央部C側の位置であり、主走査方向の両端部(
図7)においては、第1中央部C1よりもレンズ上端部401側の位置である。第4屈折面44の第4母線44Mの副走査方向における位置は、主走査方向の中央部においては、第2中央部C2よりもレンズ中央部C側の位置であり、主走査方向の両端部においては、第2中央部C2よりもレンズ下端部402側の位置である。従って、出射面R2も上述の良好な光学特性の達成、並びに、走査レンズ40の副走査方向の幅の抑制に寄与する。
【0048】
走査レンズ40の副走査方向の幅の抑制のための好ましい態様について、
図9を参照して説明する。走査レンズ40の、第1屈折面41が配置される側の副走査方向の端面であるレンズ上端部401(第1端面)と、第2屈折面42が配置される側の副走査方向の端面であるレンズ下端部402(第2端面)とは、主走査方向と平行な平面からなる。第1屈折面41及び第3屈折面43を通過する第1光線L1の光線中心L1Aとレンズ上端部401との間の距離をW1、第2屈折面42及び第4屈折面44を通過する第2光線L2の光線中心L2Aとレンズ下端部402との間の距離をW2、レンズ上端部401とレンズ下端部402との間の距離をWとする。なお、本実施形態では斜入射光学系が採用されているので、光線中心L1A、LA2は、第1、第2レンズ部A1、A2の光軸AX1、AX2とは重なっていない。このような条件下において、走査レンズ40は、次式(1)を満足することが望ましい。
(W1+W2)×2>W ・・・(1)
【0049】
或いは、上記のW1、W2に加えて、第1光線L1の光線中心L1Aと第2光線L2の光線中心L2Aとの間の距離をdとするとき、走査レンズ40は、次式(2)を満足することが望ましい。
W1+W2>d ・・・(2)
【0050】
上記の式(1)若しくは式(2)を満足することにより、第1レンズ部A1と第2レンズ部A2とが副走査方向に離間しない構成とすることができる。従って、走査レンズ40の副走査方向の幅を抑制することができる。
【0051】
<実施例1>
次に、上記実施形態に係る光走査装置23の要件を満たす結像光学系の構成を表1に示す。長さ及び距離の単位はmmである。実施例1の結像光学系は、
図3に示す通り、レーザーユニット30側から順に、コリメータレンズ31、シリンドリカルレンズ32、ポリゴンミラー33及び走査レンズ40が配置された構成である。
【0053】
走査レンズ40の入射面R1及び出射面R2の面形状は、xを副走査方向、yを主走査方向,zを光軸方向とし、面頂点を原点、感光体ドラム21に向かう向きをz軸の正の方向とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用い、以下のサグ量を示す数式により定義する。但し、Zm(主走査方向)、Zs(副走査方向)は、高さyの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)である。
【数1】
【0054】
上記の数式において、Y;主走査方向の位置、X;副走査方向の位置、An及びBn(nは整数);面形状の高次の係数、Cm;主走査方向の曲率、Cs;副走査方向の曲率、Sn;副走査非球面係数、Kx;副走査コーニック係数、Lx;母線の湾曲、をそれぞれ示す。
【0055】
表2に、走査レンズ40の入射面R1及び出射面R2の面形状を示す。なお、入射面R1は第1屈折面41の面形状を、出射面R2は第3屈折面43の面形状を示している。第2屈折面42、第4屈折面44は、レンズ中央部Cを挟んで第1屈折面41、第3屈折面43と対称な面である。
【0057】
図10は、実施例1に係る走査レンズ40の入射面R1の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフ、
図11は、出射面R2の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフである。これらグラフに示す通り、母線(第1母線41M、第3母線43M)のプラス方向の高さは、主走査方向(レンズ長手方向)の中央部が低く、端部に向かうに連れて高くなっている。図示はしていないが、これらのグラフとは対称に、第2屈折面42、第4屈折面44の母線(第2母線42M、第4母線44M)の高さを示すグラフは、マイナス方向に現れる。従って、第1母線41Mと第2母線42Mとの副走査方向における間隔は、主走査方向の中央部から端部に向かうに連れて大きくなっている。
【0058】
図12は、実施例1に係る走査レンズ40を用いた光走査装置23の像面湾曲性能を示すグラフである。主走査方向及び副走査方向の像面湾曲性能を示す結像深度位置のバラツキは、いずれも全像高にわたって±2mm以下の範囲内であり、良好な光学特性を有している。
【0059】
<実施例2>
走査レンズ40が異なる他は実施例1と同じ結像光学系を用い、実施例2に係る光走査装置を作成した。表3に、実施例2で用いた走査レンズ40の入射面R1及び出射面R2の面形状を示す。同様に、入射面R1は第1屈折面41の面形状を、出射面R2は第3屈折面43の面形状を示し、第2屈折面42、第4屈折面44は、レンズ中央部Cを挟んで第1屈折面41、第3屈折面43と対称な面である。また、
図13は、実施例2に係る走査レンズ40の入射面R1の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフ、
図14は、出射面R2の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフである。
【0061】
図15は、実施例2に係る走査レンズ40を用いた光走査装置23の像面湾曲性能を示すグラフである。主走査方向及び副走査方向の像面湾曲性能を示す結像深度位置のバラツキは、いずれも全像高にわたって±2mm以下の範囲内であり、良好な光学特性を有している。
【0062】
<実施例3>
走査レンズ40が異なる他は実施例1と同じ結像光学系を用い、実施例2に係る光走査装置を作成した。表4に、実施例3で用いた走査レンズ40の入射面R1及び出射面R2の面形状を示す。同様に、入射面R1は第1屈折面41の面形状を、出射面R2は第3屈折面43の面形状を示し、第2屈折面42、第4屈折面44は、レンズ中央部Cを挟んで第1屈折面41、第3屈折面43と対称な面である。また、
図16は、実施例3に係る走査レンズ40の入射面R1の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフ、
図17は、出射面R2の、主走査方向における母線高さ位置の変化を示すグラフである。なお、実施例1,2とは異なり、この実施例3では出射面R2において母線は湾曲を持たず、入射面R1だけが母線湾曲を持っている。
【0064】
図18は、実施例3に係る走査レンズ40を用いた光走査装置23の像面湾曲性能を示すグラフである。主走査方向及び副走査方向の像面湾曲性能を示す結像深度位置のバラツキは、実施例1、2よりは落ちるものの、いずれも全像高にわたって±2.5mm程度以下の範囲内であり、良好な光学特性を有している。
【0065】
<比較例>
走査レンズ40が異なる他は実施例1と同じ結像光学系を用い、比較例に係る光走査装置を作成した。表5に、比較例で用いた走査レンズ40の入射面R1及び出射面R2の面形状を示す。この比較例では、
図8(A)に例示した如く、入射面R1及び出射面R2の双方において母線は湾曲を持たない。
【0067】
図19は、比較例に係る走査レンズを用いた光走査装置の像面湾曲性能を示すグラフである。主走査方向及び副走査方向の像面湾曲性能を示す結像深度位置のバラツキは、いずれも±3mm程度を超過しており、良好な光学特性を有すると言うことはできない。
【0068】
以上説明した本実施形態に係る光走査装置23によれば、副走査方向に複数の独立した光学面(第1屈折面41と第2屈折面42、第3屈折面43と第4屈折面44)を有する走査レンズ40が用いられる光走査装置23及び画像形成装置1において、良好な光学性能を得ることができる。従って、高品質の静電潜像及びトナー像を形成する光走査装置23及び画像形成装置1を提供することができる。