(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体側から像面側に向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズと、正の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、絞りと、正の屈折力を有する第4レンズとを配置して構成され、
前記第1レンズは、曲率半径が正となる像面側の面を有し、
前記第2レンズは、曲率半径が負となる像面側の面を有し、
前記第3レンズは、曲率半径が負となる像面側の面を有し、
前記第4レンズは、曲率半径が正となる物体側の面および曲率半径が負となる像面側の面を有し、
レンズ系全体の焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第1レンズのアッベ数をνd1としたとき、
−75<f1/f<−5.0
45<νd1<70
を満足する撮像レンズ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の撮像レンズによれば、撮像レンズを構成するレンズ枚数が4枚と少ないながらも撮影画角が広く、加えて比較的良好に収差を補正することができる。しかし、こうした広角の撮像レンズに対する要求は年々多様化してきており、特に近年では、高解像度の撮像素子への対応や小型化への要求と並んで撮像レンズを安価に製造できること、すなわち組立てが容易で製造歩留りの高い撮像レンズに対する要求が強くなっている。
【0007】
ところで、特許文献1に記載の撮像レンズをはじめとする従来の広角の撮像レンズでは、広角化の実現のために第1レンズの負の屈折力が他のレンズに比較して非常に強くなっている。このため、第1レンズの像面側の面の曲率半径が小さくなり、いわゆる半球率が1.0(半球形状)に近づき、レンズの加工性の悪化を招いていた。この第1レンズの像面側の面には反射防止コート等をコートすることも多く、上述のような半球率が1.0に近いレンズにおいてはレンズ面周辺部におけるコート不良が大きな課題となっている。また、第1レンズの屈折力が強い上に半球率が1.0に近い撮像レンズにあっては、撮像レンズの製造に際して生じるディセンタ(偏芯)やチルト等に対する結像性能の劣化に対する敏感度、いわゆる製造誤差感度が高く、製造コストの低減には自ずと限界があった。
【0008】
なお、こうした課題は車載カメラに搭載される撮像レンズに固有のものではなく、携帯電話機、デジタルスティルカメラ、携帯情報端末、セキュリティカメラ、ネットワークカメラ、TV会議用カメラ、ファイバースコープ、カプセル内視鏡等の比較的小型のカメラに内蔵される撮像レンズに共通するものである。
【0009】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型でありながらも撮影画角が広く、製造コストを好適に低減することができる撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズと、正の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、絞りと、正の屈折力を有する第4レンズとを配置して構成される。第1レンズは、曲率半径が正となる像面側の面を有する。第2レンズは、曲率半径が負となる像面側の面を有する。第3レンズは、曲率半径が負となる像面側の面を有する。第4レンズは、曲率半径が正となる物体側の面および曲率半径が負となる像面側の面を有する。また、当該構成において本発明の撮像レンズは、レンズ系全体の焦点距離をf、第1レンズの焦点距離をf1、第1レンズのアッベ数をνd1としたとき、次の条件式(1)および(2)を満足する。
−75<f1/f<−5.0 (1)
45<νd1<70 (2)
【0011】
条件式(1)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、色収差、歪曲収差、非点収差、および像面湾曲のそれぞれを好ましい範囲内にバランスよく抑制するための条件である。上限値「−5.0」を超えると、第1レンズの負の屈折力がレンズ系全体に対して相対的に強くなり、歪曲収差、非点収差や倍率色収差等の補正には有利となる。しかし、軸上の色収差が補正不足(短波長の焦点位置が基準波長の焦点位置に対して物体側に移動)になるため、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、入射瞳が物体側に移動するためバックフォーカスが長くなり、撮像レンズの小型化が困難となる。
【0012】
一方、下限値「−75」を下回ると、第1レンズの負の屈折力がレンズ系全体に対して相対的に弱くなり、倍率色収差が補正不足になるとともに、負の歪曲収差が増大する。また、結像面の周辺部が物体側に湾曲するため、像面湾曲を良好な範囲内に抑制することが困難になる。したがってこの場合も、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0013】
ところで従来、広角の撮像レンズにおける第1レンズについては、その屈折力がレンズ系全体に対して強いものが殆どであった。本発明に係る撮像レンズにおいても、広角化を図るために第1レンズの屈折力は負である。しかし、上記条件式(1)に示されるように、第1レンズの屈折力はレンズ系全体の屈折力に対して弱くなっている。このため、第1レンズの像面側の面の曲率半径は大きくなり、いわゆる半球率は1.0から乖離する。よって、第1レンズの像面側の凹面は、光軸と直交する方向に潰れた半楕円状の形状になる。このため、本発明の撮像レンズによれば、反射防止コート等を均一にコートすることが容易となり、撮像レンズの製造上の歩留りを向上させることが可能となる。また、第1レンズの屈折力が比較的弱いことから、撮像レンズの製造に際して生じるディセンタ(偏芯)やチルト等に対する結像性能の劣化に対する敏感度(製造誤差感度)を好適に低減することができる。
【0014】
条件式(2)は、色収差の発生を有効に抑制するための条件である。第1レンズのアッベ数を下限値の「45」よりも大きな値にすることにより、第1レンズにおいて発生する色収差を有効に抑制することができる。また、一般に広角の撮像レンズでは、第1レンズの有効径が最も大きくなる。この第1レンズのアッベ数を上限値「75」よりも小さな値にすることにより、高価な材料を使用する必要がなくなり、撮像レンズの製造コストの低減が好適に図られる。
【0015】
上記構成の撮像レンズは、さらに次の条件式(1−A)を満足することが望ましい。条件式(1−A)を満足することにより、諸収差が良好に補正されるとともに、反射防止コート等のコート不良の低減および製造誤差感度の低減を通じて製造コストの抑制がより有効に図られる。
−50<f1/f<−10 (1−A)
【0016】
上記構成の撮像レンズにおいて第1レンズは、光軸から周辺部に向かうにつれて負の屈折力が強くなる非球面形状に形成されることが望ましい。上述のように、本発明においては第1レンズの屈折力が従来よりも弱くなっている。このため、像面湾曲の補正を如何に行うかが問題となる。この点、本発明の撮像レンズでは、第1レンズの周辺部の屈折力が光軸近傍の屈折力よりも強くなっているため、結像面周辺部の補正が良好に行われ、像面湾曲をはじめとする諸収差が良好に補正されることになる。
【0017】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの焦点距離、第2レンズの焦点距離、および第3レンズのそれぞれの焦点距離は、第4レンズの焦点距離の3倍よりも長いことが望ましい。
【0018】
周知のように、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子には、センサーに取り込むことのできる光線の入射角度の範囲、いわゆる主光線角度(CRA:Chief Ray Angle)が予め定められている。撮像レンズから出射した光線の像面への入射角度をCRAの範囲内に抑制することによって、画像の周辺部が暗くなる現象であるシェーディングの発生を好適に抑制することが可能となる。そこで、本発明の撮像レンズでは、像面に最も近い第4レンズの屈折力を最も強くすることによって、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度が好適に抑制される構成としている。光学シミュレーションの結果、第1レンズの焦点距離、第2レンズの焦点距離、および第3レンズのそれぞれの焦点距離を、第4レンズの焦点距離の3倍よりも長くすることにより、撮像レンズの小型化を図りつつ、広角化および諸収差の補正等がバランスよく実現できることが見出された。また、このように4枚のレンズのうち3枚のレンズの屈折力が弱いため、上記製造誤差感度はより有効に低減することになる。
【0019】
ところで、製造コストの低減を考慮した場合、各レンズを樹脂材料で形成することが望ましい。しかしながら、例えば自動車に搭載される車載カメラの撮像レンズでは、真夏の炎天下の車内温度が70℃を超えることも珍しくなく、温度変化による焦点距離の変動の抑制が重要な設計課題となっている。従来、このような過酷な環境下で使用される撮像レンズに対しては、全てのレンズをガラス材料で形成する必要があり、製造コストの上昇を招いていた。
【0020】
そこで、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズがガラス系の材料から形成されることが望ましい。上述のように、本発明の撮像レンズでは、第4レンズの屈折力のみが強くなっている。このため、屈折力の強い第4レンズをガラス系の材料から形成することにより、周辺環境の温度変化による撮像レンズの焦点距離の変動は最小限に抑制される。一方、第1〜第3レンズの3枚のレンズは屈折力が比較的弱いため、温度変化による焦点距離の変動が少ない。このため、これら3枚のレンズについては、ガラス系の材料から形成することはもちろんのこと、樹脂材料から形成することも可能である。
【0021】
上記構成の撮像レンズは、第4レンズの焦点距離をf4としたとき、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
1.0<f4/f<2.5 (3)
【0022】
条件式(3)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、歪曲収差を良好に補正するための条件である。また、条件式(3)は、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度をCRAの範囲内に好適に抑制するための条件でもある。上限値「2.5」を超えると、第4レンズの屈折力が相対的に弱くなるため、歪曲収差の補正には有効となるものの、軸上の色収差が補正不足となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度をCRAの範囲内に抑制することが困難となる。一方、下限値「1.0」を下回ると、第4レンズの屈折力が相対的に強くなるため、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度をCRAの範囲内に抑制し易くなる。しかし、歪曲収差が増大するとともに軸外の倍率色収差が補正不足となるため、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0023】
上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズの焦点距離をf4、第2レンズおよび第3レンズの合成焦点距離をf23としたとき、次の条件式(4)を満足することが望ましい。
0.2<f4/f23<1.0 (4)
【0024】
条件式(4)は、非点収差、色収差、および歪曲収差をバランスよく良好な範囲内に抑制するための条件である。上限値「1.0」を超えると、正の屈折力を有するレンズのうち第4レンズの屈折力が相対的に弱くなり、軸外の倍率色収差の補正には有効となるものの、軸上の色収差が補正不足になるとともに非点隔差が増大し、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「0.2」を下回ると、正の屈折力を有するレンズのうち第4レンズの屈折力が相対的に強くなり、軸外の倍率色収差が補正不足になるとともに、非点収差のサジタル像面が物体側に湾曲する。また、歪曲収差も増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0025】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズ〜第3レンズまでの合成焦点距離をf123としたとき、次の条件式(5)を満足することが望ましい。
2.0<f123/f<5.0 (5)
【0026】
条件式(5)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、色収差を良好に補正するための条件である。また、条件式(5)は、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度をCRAの範囲内に好適に抑制するための条件でもある。上限値「5.0」を超えると、絞りよりも物体側に配置された第1レンズ〜第3レンズの合成の屈折力が弱くなるため、バックフォーカスが長くなり、撮像レンズの小型化が困難となる。また、画像周辺部において倍率色収差が補正不足となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「2.0」を下回ると、撮像レンズの小型化および倍率色収差の良好な補正には有効となるものの、撮像レンズから出射した光線の撮像素子への入射角度をCRAの範囲内に抑制することが困難となる。
【0027】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズと第2レンズとの間の光軸上の距離をdAとしたとき、次の条件式(6)を満足することが望ましい。
0.3<dA/f<1.0 (6)
【0028】
条件式(6)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、歪曲収差および非点収差を良好に補正するための条件である。上限値「1.0」を超えると、第1レンズの大型化を招き、撮像レンズの小型化が困難となる。また、軸外の倍率色収差が補正不足になるとともに、タンジェンシャル像面の周辺部の補正が困難になり、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「0.3」を下回ると、撮像レンズの小型化には有効となるものの、非点収差のサジタル像面が物体側に湾曲し、非点隔差が増大することとなる。また、歪曲収差が増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0029】
上記構成の撮像レンズにおいては、第3レンズのアッベ数をνd3、第4レンズのアッベ数をνd4としたとき、次の条件式(7)および(8)を満足することが望ましい。
20<νd3<40 (7)
45<νd4<70 (8)
【0030】
条件式(7)および(8)は、色収差を良好な範囲内に好適に抑制するための条件である。絞りを挟んで配置される第3レンズおよび第4レンズを上記条件式(7)および(8)にて示される範囲内のアッベ数の材料で形成することにより、軸上および軸外の色収差が良好に補正される。
【0031】
上記構成の撮像レンズは、レンズ系の半画角をωとしたとき、「135°≦2ω」を満足することが望ましい。本発明の撮像レンズは、135°以上の画角が要求される撮像レンズに対して特に有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の撮像レンズによれば、撮像レンズの広角化と製造コストの低減が好適に図られた小型の撮像レンズを提供することができる。また、本発明の撮像レンズによれば、周辺環境の温度変化による焦点距離の変動が少ない撮像レンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1、
図4、
図7、
図10、
図13、および
図16は、本実施の形態の数値実施例1〜6に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。いずれの数値実施例も基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは数値実施例1の概略断面図を参照しながら、本実施の形態に係る撮像レンズのレンズ構成について説明する。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、負の屈折力を有する第1レンズL1と、正の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、開口絞りSTと、正の屈折力を有する第4レンズL4とを配置して構成される。なお、第4レンズL4と像面IMとの間には、赤外線カットフィルタやカバーガラス等を配置するようにしてもよい。
【0037】
第1レンズL1は、物体側の面の曲率半径r1および像面側の面の曲率半径r2が共に正となる形状であって、光軸Xの近傍において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状に形成される。また、この第1レンズL1は、光軸Xから周辺部に向かうにつれて負の屈折力が強くなる非球面形状に形成されている。詳しくは、当該第1レンズL1は、最大有効径の70%近傍から周辺部に向かうにつれて負の屈折力が強くなっている。なお、第1レンズL1の形状は、光軸Xの近傍において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状に限定されない。第1レンズL1は、像面側の面の曲率半径r2が正となる形状であればよく、曲率半径r1が負となる形状、すなわち光軸Xの近傍において両凹レンズとなる形状に形成されてもよい。数値実施例1および2は、第1レンズL1の形状が、光軸Xの近傍において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状の例であり、数値実施例3〜6は、第1レンズL1の形状が、光軸Xの近傍において両凹レンズとなる形状の例である。
【0038】
第2レンズL2は、物体側の面の曲率半径r3および像面側の面の曲率半径r4が共に負となる形状であって、光軸Xの近傍において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状に形成される。このうち第2レンズL2の像面側の面は、光軸Xの近傍では物体側に凹面を向け、レンズ周辺部においては物体側に凸面を向けた形状となる非球面形状に形成される。換言すれば、本実施の形態の第2レンズL2は、その像面側の面が変曲点を有する非球面形状に形成されており、光軸Xの近傍では物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなり、光軸Xから離れたレンズ周辺部では両凹レンズとなる形状となっている。
【0039】
本発明のような広角の撮像レンズにおいては、撮影画角が広くなった分、良好な収差を得る上で像面周辺部の湾曲を如何に補正するかが重要となる。この点、第2レンズL2のこのような非球面形状によれば、像面周辺部の湾曲が好適に抑制されるため、像面湾曲が良好に補正されるようになる。なお、第2レンズL2の形状は、光軸Xの近傍において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状に限定されるものではない。第2レンズL2は、像面側の面の曲率半径r4が負となる形状であればよく、曲率半径r3が正となる形状、すなわち光軸Xの近傍において両凸レンズとなる形状に形成されてもよい。
【0040】
第3レンズL3は、物体側の面の曲率半径r5が正となり、像面側の面の曲率半径r6が負となる形状であって、光軸Xの近傍において両凸レンズとなる形状に形成される。この第3レンズL3の形状は、光軸Xの近傍において両凸レンズとなる形状に限定されない。第3レンズL3は、像面側の面の曲率半径r6が負となる形状であればよく、曲率半径r5が負となる形状、すなわち光軸Xの近傍において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状に形成されてもよい。数値実施例1〜4は、第3レンズL3の形状が、光軸Xの近傍において両凸レンズとなる形状の例であり、数値実施例5および6は、第3レンズL3の形状が、光軸Xの近傍において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状の例である。
【0041】
本実施の形態の撮像レンズでは、第1レンズL1の焦点距離、第2レンズL2の焦点距離、および第3レンズL3の焦点距離はそれぞれ、第4レンズL4の焦点距離の3倍よりも長くなっている。すなわち、本実施の形態に係る撮像レンズは、第1レンズL1の焦点距離をf1、第2レンズL2の焦点距離をf2、第3レンズL3の焦点距離をf3、第4レンズL4の焦点距離をf4としたとき、次の条件式を満足する。
f1>3×f4、f2>3×f4、およびf3>3×f4
【0042】
第4レンズL4は、物体側の面の曲率半径r8が正となり、像面側の面の曲率半径r9が負となる形状であって、光軸Xの近傍において両凸レンズとなる形状に形成される。
【0043】
また、本実施の形態に係る撮像レンズは、以下に示す各条件式を満足する。このため、本実施の形態に係る撮像レンズによれば、撮像レンズの広角化と製造コストの低減が好適に図られるとともに、小型でありながらも収差が良好に補正される。
−75<f1/f<−5.0 (1)
45<νd1<70 (2)
1.0<f4/f<2.5 (3)
0.2<f4/f23<1.0 (4)
2.0<f123/f<5.0 (5)
0.3<dA/f<1.0 (6)
20<νd3<40 (7)
45<νd4<70 (8)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f23:第2レンズL2および第3レンズL3の合成焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
f123:第1レンズL1〜第3レンズL3までの合成焦点距離
dA:第1レンズL1と第2レンズL2との間の光軸上の距離
νd1:第1レンズL1のアッベ数
νd3:第3レンズL3のアッベ数
νd4:第4レンズL4のアッベ数
【0044】
本実施の形態の撮像レンズは、さらに下記条件式(1−A)を満足することが望ましい。
−50<f1/f<−10 (1−A)
条件式(1−A)を満足することにより、第1レンズL1の屈折力がより弱くなるため、第1レンズL1は、光軸上の厚さと周辺部の厚さとの差が小さい形状、すなわちレンズ中心部から周辺部にかけて厚さの変化が少ない形状に形成される。これにより、第1レンズL1の加工性が向上するとともに、反射防止コート等をレンズ中心部から周辺部にわたって均一にコートすることが容易となる。なお、数値実施例1および数値実施例3〜6は上記条件式(1−A)を満足する撮像レンズの例であり、数値実施例2は上記条件式(1−A)を満足しない撮像レンズの例である。
【0045】
なお、上記各条件式の全てを満足する必要はなく、それぞれを単独に満足することにより、各条件式に対応する作用効果をそれぞれ得ることができる。
【0046】
本実施の形態では各レンズのレンズ面を非球面で形成している。これらレンズ面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA
4、A
6、A
8、A
10、A
12としたとき、次式により表される。
【数1】
【0047】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの数値実施例を示す。各数値実施例において、fはレンズ系全体の焦点距離を、FnoはFナンバーを、2ωは画角をそれぞれ示す。また、iは物体側より数えた面番号を示し、rは曲率半径を示し、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)を示し、ndはd線に対する屈折率を、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面の面には、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示すこととする。また参考までに、第1レンズL1の物体側の面から像面IMまでの光軸上の面間隔の和をL14として示す。
【0048】
数値実施例1
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.13mm、Fno=2.8、2ω=161.4°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* 77.022 0.900 1.544 55.5(=νd1)
2* 36.316 2.150(=dA)
3* -13.337 1.000 1.544 55.5(=νd2)
4* -7.152 0.090
5* 14.685 1.000 1.636 23.9(=νd3)
6* -37.790 0.350
7 (絞り) ∞ 0.500
8* 3.751 0.850 1.544 55.5(=νd4)
9* -4.549 2.480
(像面) ∞
f1=-127.35mm
f2=26.83mm
f3=16.77mm
f4=3.92mm
f123=10.86mm
f23=10.21mm
L14=9.32mm
【0049】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-3.528E-04,A
6=2.507E-06,A
8=-3.053E-08,A
10=-1.320E-09
第2面
k=0.000,A
4=5.781E-03,A
6=-9.955E-05,A
8=1.217E-05,A
10=8.349E-06,
A
12=1.168E-09
第3面
k=0.000,A
4=7.208E-04,A
6=-6.424E-04
第4面
k=0.000,A
4=9.683E-03,A
6=8.629E-03
第5面
k=0.000,A
4=1.927E-02,A
6=1.505E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=1.860E-02,A
6=5.481E-03
第8面
k=0.000,A
4=-8.159E-03,A
6=6.618E-03
第9面
k=0.000,A
4=-2.319E-02,A
6=1.532E-02
【0050】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.26
f1/f=−40.75
f4/f23=0.38
dA/f=0.69
f123/f=3.47
このように、本数値実施例1に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。
【0051】
図2は、数値実施例1の撮像レンズについて、最大像高に対する各像高の比H(以下、「像高比H」という)に対応する横収差をタンジェンシャル方向とサジタル方向に分けて示したものである(
図5、
図8、
図11、
図14、および
図17においても同じ)。また、
図3は、数値実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。これら収差図において、横収差図および球面収差図には、g線(435.84nm)、e線(546.07nm)、C線(656.27nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図には、サジタル像面Sの収差量とタンジェンシャル像面Tの収差量とをそれぞれ示す(
図6、
図9、
図12、
図15、および
図18においても同じ)。
図2および
図3に示されるように、本数値実施例1に係る撮像レンズによれば、諸収差が良好に補正される。
【0052】
数値実施例2
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.00mm、Fno=2.8、2ω=141.0°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* 30.000 0.893 1.544 55.5(=νd1)
2* 6.386 2.608(=dA)
3* -3.553 0.704 1.636 23.9(=νd2)
4* -2.919 0.097
5* 16.822 1.314 1.636 23.9(=νd3)
6* -34.079 0.750
7 (絞り) ∞ 0.630
8* 5.272 0.998 1.544 55.5(=νd4)
9* -3.897 3.021
(像面) ∞
f1=-15.12mm
f2=17.98mm
f3=17.90mm
f4=4.29mm
f123=13.14mm
f23=8.72mm
L14=11.02mm
【0053】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-8.666E-05,A
6=1.504E-05,A
8=1.574E-07,A
10=-8.510E-10
第2面
k=0.000,A
4=4.166E-03,A
6=2.556E-03,A
8=-4.986E-04,A
10=8.632E-05,
A
12=6.831E-10
第3面
k=0.000,A
4=-2.552E-03,A
6=1.391E-04
第4面
k=0.000,A
4=1.052E-02,A
6=3.650E-03
第5面
k=0.000,A
4=1.341E-02,A
6=1.219E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=-5.766E-03,A
6=2.322E-02
第8面
k=0.000,A
4=-2.203E-02,A
6=1.284E-03
第9面
k=0.000,A
4=-2.123E-02,A
6=-3.270E-04
【0054】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.43
f1/f=−5.04
f4/f23=0.49
dA/f=0.87
f123/f=4.38
このように、本数値実施例2に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。
【0055】
図5は、数値実施例2の撮像レンズについて、像高比Hに対応する横収差を示したものであり、
図6は、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。
図5および
図6に示されるように、本数値実施例2に係る撮像レンズによっても諸収差が良好に補正される。
【0056】
数値実施例3
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.02mm、Fno=2.8、2ω=135.0°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* -248.850 0.800 1.544 55.5(=νd1)
2* 25.000 2.848(=dA)
3* -3.930 1.158 1.636 23.9(=νd2)
4* -3.239 0.097
5* 18.267 1.057 1.536 23.9(=νd3)
6* -33.373 0.419
7 (絞り) ∞ 0.630
8* 6.930 0.998 1.544 55.5(=νd4)
9* -3.312 2.839
(像面) ∞
f1=-41.73mm
f2=17.56mm
f3=22.20mm
f4=4.27mm
f123=10.63mm
f23=9.41mm
L14=10.84mm
【0057】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-1.289E-04,A
6=1.462E-05,A
8=-1.105E-07,A
10=-8.510E-10
第2面
k=0.000,A
4=3.253E-03,A
6=-6.480E-05,A
8=-6.984E-06,A
10=2.641E-06,
A
12=6.831E-10
第3面
k=0.000,A
4=1.680E-03,A
6=1.677E-03
第4面
k=0.000,A
4=1.600E-02,A
6=5.051E-03
第5面
k=0.000,A
4=6.517E-03,A
6=1.653E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=-1.276E-02,A
6=3.172E-02
第8面
k=0.000,A
4=2.268E-03,A
6=3.209E-04
第9面
k=0.000,A
4=-2.291E-03,A
6=3.967E-03
【0058】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.41
f1/f=−13.82
f4/f23=0.45
dA/f=0.94
f123/f=3.52
このように、本数値実施例3に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。
【0059】
図8は、数値実施例3の撮像レンズについて、像高比Hに対応する横収差を示したものであり、
図9は、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。
図8および
図9に示されるように、本数値実施例3に係る撮像レンズによっても諸収差が良好に補正される。
【0060】
数値実施例4
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.30mm、Fno=2.8、2ω=168.0°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* -248.850 0.890 1.544 55.5(=νd1)
2* 96.273 2.800(=dA)
3* -10.597 1.150 1.636 23.9(=νd2)
4* -6.482 0.090
5* 24.205 1.050 1.636 23.9(=νd3)
6* -21.063 0.400
7 (絞り) ∞ 0.600
8* 5.528 1.000 1.544 55.5(=νd4)
9* -3.791 2.678
(像面) ∞
f1=-127.54mm
f2=23.69mm
f3=17.88mm
f4=4.30mm
f123=10.53mm
f23=10.06mm
L14=10.66mm
【0061】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-2.979E-04,A
6=1.105E-05,A
8=9.195E-08,A
10=-8.510E-10
第2面
k=0.000,A
4=4.338E-03,A
6=-6.372E-05,A
8=-3.828E-06,A
10=2.961E-06,
A
12=6.831E-10
第3面
k=0.000,A
4=8.486E-04,A
6=-5.634E-04
第4面
k=0.000,A
4=9.508E-03,A
6=7.337E-03
第5面
k=0.000,A
4=1.738E-02,A
6=1.307E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=1.037E-02,A
6=2.811E-03
第8面
k=0.000,A
4=-2.094E-02,A
6=3.381E-03
第9面
k=0.000,A
4=-2.488E-02,A
6=2.038E-03
【0062】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.30
f1/f=−38.66
f4/f23=0.43
dA/f=0.85
f123/f=3.19
このように、本数値実施例4に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。
【0063】
図11は、数値実施例4の撮像レンズについて、像高比Hに対応する横収差を示したものであり、
図12は、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。
図11および
図12に示されるように、本数値実施例4に係る撮像レンズによっても諸収差が良好に補正される。
【0064】
数値実施例5
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.30mm、Fno=2.8、2ω=146.7°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* -248.850 0.893 1.544 55.5(=νd1)
2* 115.367 2.814(=dA)
3* -16.119 1.155 1.636 23.9(=νd2)
4* -8.116 0.097
5* -63.307 1.050 1.636 23.9(=νd3)
6* -9.562 0.420
7 (絞り) ∞ 0.630
8* 7.276 0.998 1.544 55.5(=νd4)
9* -3.238 2.741
(像面) ∞
f1=-144.83mm
f2=24.36mm
f3=17.59mm
f4=4.26mm
f123=10.68mm
f23=10.26mm
L14=10.80mm
【0065】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-2.576E-04,A
6=1.094E-05,A
8=-6.006E-08,A
10=-8.510E-10
第2面
k=0.000,A
4=4.090E-03,A
6=-6.675E-05,A
8=-8.552E-07,A
10=2.301E-06,
A
12=6.831E-10
第3面
k=0.000,A
4=1.670E-03,A
6=-2.059E-04
第4面
k=0.000,A
4=8.602E-03,A
6=8.250E-03
第5面
k=0.000,A
4=1.921E-02,A
6=1.172E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=1.169E-02,A
6=2.427E-03
第8面
k=0.000,A
4=-1.509E-02,A
6=4.174E-03
第9面
k=0.000,A
4=-2.029E-02,A
6=3.808E-03
【0066】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.29
f1/f=−43.89
f4/f23=0.42
dA/f=0.85
f123/f=3.24
このように、本数値実施例5に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。
【0067】
図14は、数値実施例5の撮像レンズについて、像高比Hに対応する横収差を示したものであり、
図15は、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。
図14および
図15に示されるように、本数値実施例5に係る撮像レンズによっても諸収差が良好に補正される。
【0068】
次に、数値実施例6に係る撮像レンズについて説明する。数値実施例6の撮像レンズでは、第4レンズL4がガラス系の材料から形成されている。このため、本数値実施例6の撮像レンズによれば、周辺環境の温度変化による焦点距離の変動が好適に抑制される。
【0069】
数値実施例6
基本的なレンズデータを以下に示す。
f=3.29mm、Fno=2.8、2ω=146.0°
単位 mm
面データ
面番号i r d nd νd
(物面) ∞ ∞
1* -248.850 0.893 1.544 55.5(=νd1)
2* 122.072 1.500(=dA)
3* -23.343 1.000 1.636 23.9(=νd2)
4* -7.926 0.097
5* -149.695 1.000 1.636 23.9(=νd3)
6* -7.011 0.200
7 (絞り) ∞ 0.800
8* 8.308 0.998 1.619 63.9(=νd4)
9* -4.392 2.445
(像面) ∞
f1=-150.48mm
f2=18.42mm
f3=11.54mm
f4=4.79mm
f123=7.41mm
f23=7.20mm
L14=8.93mm
【0070】
非球面データ
第1面
k=0.000,A
4=-2.576E-04,A
6=1.094E-05,A
8=-6.006E-08,A
10=-8.510E-10
第2面
k=0.000,A
4=1.196E-02,A
6=-3.436E-04,A
8=1.043E-05,A
10=4.409E-05,
A
12=6.831E-10
第3面
k=0.000,A
4=1.068E-03,A
6=-8.122E-04
第4面
k=0.000,A
4=9.022E-03,A
6=9.202E-03
第5面
k=0.000,A
4=2.915E-02,A
6=1.310E-02
第6面
k=-4.226E+01,A
4=-1.975E-03,A
6=1.276E-02
第8面
k=0.000,A
4=-1.941E-02,A
6=3.219E-03
第9面
k=0.000,A
4=-3.233E-02,A
6=2.626E-03
【0071】
各条件式の値を以下に示す。
f4/f=1.46
f1/f=−45.71
f4/f23=0.67
dA/f=0.46
f123/f=2.25
このように、本数値実施例6に係る撮像レンズは上記各条件式を満足する。したがって、当該撮像レンズによれば、広角でありながらも良好に収差を補正することができる。
【0072】
図17は、数値実施例6の撮像レンズについて、像高比Hに対応する横収差を示したものであり、
図18は、球面収差(mm)、非点収差(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。
図17および
図18に示されるように、本数値実施例6に係る撮像レンズによっても諸収差が良好に補正される。
【0073】
以上説明した本実施の形態に係る撮像レンズによれば、135°以上の画角(2ω)を実現することができる。ちなみに数値実施例1〜6の撮像レンズの画角は135.0°〜168.0°の広い画角を実現している。
【0074】
なお、上記各数値実施例では各レンズの面を非球面で形成したが、撮像レンズの全長や要求される光学性能に余裕があるのであれば、撮像レンズを構成する全てのレンズの面あるいは一部のレンズの面を球面で形成するようにしてもよい。
【0075】
したがって、本実施の形態に係る撮像レンズを、携帯電話機、デジタルスティルカメラ、携帯情報端末、セキュリティカメラ、車載カメラ、ネットワークカメラ、TV会議用カメラ、ファイバースコープ、カプセル内視鏡等のカメラに内蔵される撮像光学系に適用した場合、当該カメラの高機能化と小型の両立を図ることができる。