【実施例1】
【0020】
図1ないし
図4に示す本発明の実施例1において1は
双極子電極プラズマ発生装置であって、この
双極子電極プラズマ発生装置1は次のような構成となっている。
電位0状態で接地された導通性部材からなるチャンバー2と、このチャンバー2内に該チャンバー2とは絶縁状態に設けられてプラズマを発生させる電極A、電極Bからなる双極子電極(対称電極)であるプラズマ発生電極3と、直流を概2MHzの高周波に変えて前記プラズマ発生電極3に供給する、発振器4とトランス5を有する自励式の高周波発振部6と、前記チャンバー2に導通形態で一体化されて前記高周波発振部6を覆うように設けられた、導通性部材からなる高周波発振部シールドカバー7と、前記トランス5の中位点と前記チャンバー2を電位0状態で接地してなる中位点接続部8と、前記高周波発振部6およ
び該チャンバー2内で生ずる高周波によるノイズ輻射を生じなくさせるための、前記チャンバー2と前記高周波発振部シールドカバー7とによって形成されてなるシールド体9と、このシールド体9と絶縁状態で前記発振器4に直流電力を供給するDC電源である発振用電源10と、前記チャンバー2内に該チャンバー2と絶縁状態で設けられた、鉄鋼からなるワーク14をバイアス電極状態にするためのワーク電極形成部11と、このワーク電極形成部11にバイアス直流電圧を供給する、前記シールド体9と絶縁状態とされ且つ該シールド体9と電位0状態で接地されたバイアス形成用直流電源12(交流電源でもよい)と、ワーク電極形成部11の下部に設置されたヒータ17とからなっている。
チャンバー2の内壁はガラス製部材、セラミックス製部材などの耐蝕壁13となっていてもよい。
チャンバー2内は真空引きにより減圧でき、窒素ガス(N2)、水素ガス(H2)、アルゴンガスなどのガスを注入できるようになっている。
【0021】
高周波電力は、同一形状の電極Aおよび電極Bを介して、プラズマに平衡給電される。電極A,Bは同一形状であるので、自己バイアス現象は生じない。プラズマは直流電位的にはシールド体9(金属などの導体)と同電位にある。プラズマのバイアス電圧が必要な時は、ワーク電極形成部11との間にトランス5の中位点15からバイアス電位(直流)を与えるようになっている。高周波は平衡給電し、シールド体9には高周波電流は流れない。それゆえシールド体9の電位変動は起こらないので、アースされたシールド体9全体の電位は常に”0“となりシールドされた状態、即ちコモンモードの発生が低減されノイズ輻射は起こりにくい。
【0022】
自励発振とは、プラズマの電気的諸条件を発振に必要な”共振回路(コイルとコンデンサ、抵抗で構成)に含めて設計しておくと、プラズマの負荷状態により発振周波数が決定され”自ら”(自動とか手動とかでなく“自発的に”の意)共振条件に追随し発振することをいう。
このしくみでは、プラズマの状態変化は、すなわち共振回路の定数変化と同等であり、自励発振の応答、すなわち周波数変化への俊敏な応答が“自ずから”なされ、よって、安定したプラズマ状態が維持される。
【0023】
<
双極子電極プラズマ発生装置1のメリット>
1)原理的に不要輻射が放射されにくい
国際条約で決められたISMバンドを使わずともプラズマ発生ができる
2)プラズマ発生に適した周波数選択が可能
プラズマはその発生させる面積や分布状態、電子密度などで、電気的条件がかわる。周波数や注入パワーをその用途に応じて自由に選択できることになる。
【0024】
3)製作する装置に適した周波数選択が可能
用途からの要求される周波数もさることながら、放電電力や制御のし易さ、部品の調達など装置を製作する上で、周波数を選択できることも、コストやシステム構築にとって重要な要素である。
【0025】
4)周波数(可変)による整合が可能となるので、
・コンデンサやコイルの値を機械的に動かす従来の方法より、電気的な整合となるのではるかに高速、精密制御ができる、
・自励発振であるので周波数自動調整手法が使えるものであり、電気的な周波数(可変)整合による高速、精密な制御がシンプルな制御構成により実現できる、
・反射電力検知装置、インピーダンス整合回路(マッチングBOX)が不要、ローコストになる。
【0026】
5)チャンバーを電極としない、即ちプラズマとチャンバーが同電位であるので、プラズマ洗浄(クリーニング)や蒸着などを行うとき、チャンバー内壁が汚れにくい
【0027】
6)別にダミー電極を設けることができる。ダミー電極とは、ワーク電極と同じようにこの電極にバイアスを与え、何の処理も行わず、専らチャンバー内のプラスイオンを吸着させる電極の事である。例えばワーク電極上でのプラズマ処理を行う前に、プラスイオンを引き付けチャンバー内に存在するプラスイオンを吸着させ、高減圧操作を実行せずにチャンバー内の清浄化を行うことができる。
【0028】
7)高周波電力でプラズマを発生させた状態にして、バイアス形成用直流電源をON/OFFとすることにより、直流プラズマもON/OFFできる。これによって、
[a]高周波プラズマをONとしバイアス形成用直流電源をOFFとした状態での高周波プラズマのみの使用、
[b]高周波発振部をONとして高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用直流電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波プラズマと直流プラズマの混合プラズマ状態を形成しての使用、
[c]高周波発振部をONとして高周波プラズマを発生した後でバイアス形成用直流電源をONとして直流プラズマを発生させ、高周波発振部をOFFにして直流プラズマのみでの使用という、三つの使用パターンの安定したプラズマ発生を可能とする。
【0029】
8)高周波電力(RF電力)と、加速するバイアス電圧が別々に調節できる。高周波電力(RF電力)によってプラズマ密度を調節することができるとともに、ワークに衝突するイオンの加速度をバイアス電圧により調節することができる。
【0030】
窒素(N2)と水素(H2)の体積比を70(N2):30(H2)と、窒素(N2)と水素(H2)の体積比を500(N2):20(H2)=1(H2)/25(N2)の図
3に示す硬さ分布データを取得した。
【0031】
*硬度分布表
窒化層の表面 本実施例 従来技術 差
からの距離 (N2:H2=500:20) (N2:H2=70:30)
10μm 1260Hv 1160Hv 100Hv
20μm 1240Hv 1050Hv 190Hv
30μm 1030Hv 800Hv 230Hv
40μm 720Hv 630Hv 90Hv
50μm 650Hv 600Hv 50Hv
【0032】
*窒化処理条件
処理時間 2時間
窒化材料 大同特殊鋼DHAI(SKD61改良材)
焼き入れ・焼き戻し済み HRS48
圧力 80Pa
温度 500℃
プラズマ 概2MHzRFプラズマ(入力 230V 0.8A)
バイアス DC500V
【0033】
図
3に示す、窒化処理時間2時間の窒化サンプルの硬度分布表から次のことが明らかである。
窒素(N2)と水素(H2)の体積比を70(N2):30(H2)という、従来条件の鉄鋼のプラズマ窒化方法と比べて、本発明の条件の範囲である窒素(N2)と水素(H2)の体積比を500(N2):20(H2)という、プラズマ窒化が硬さ(Hv)と窒化層の深さ(μm)のいずれもが、従来技術の条件によるものよりも本発明の条件によるものが格段に優れているものであることが明らかである。
すなわち、水素(H2)ガスの量を窒素(N2)ガスの量の1/25未満という条件でのプラズマ窒化処理により、表面に従来技術よりも良好な窒素拡散層を形成してなる鉄鋼を実現している。
図
3の窒化処理材の硬度分布グラフおよび該グラフの上記データ表から、20μm〜30μmで190Hv〜230Hv高い硬度の本実施例の方が、従来技術よりも優れた顕著な高硬度を実現するものであることが明らかである。
【0034】
このことは、従来技術と同程度の窒化層深さの同程度の硬さ(Hv)の窒化層を形成する場合、本発明ではより短時間で形成できることを示しており、生産性の著しい向上を実現するものでもある。
概2MHzの
双極子電極プラズマ発生装置1によるプラズマ窒化処理にあっては、自励発振による俊敏なプラズマ状態変化への対応と、プラズマの安定状態の維持がなされるので、NHラジカルなどの微細な変化や短時間の変化の分光スペクトルも安定明瞭、精密に分光器に現れ、よって測定可能であり、これを用いて制御可能である。
図
3に示す硬さ分布データは、特定のチャンバー容積、窒素ガスの注入装置、水素ガスの注入装置、真空装置に限定されて窒化処理を行ったものである。
【0035】
しかるに、
双極子電極プラズマ発生装置1では、500cc毎分の窒素ガスをチャンバーに注入し続け、圧力80Paを維持しながら水素ガス20cc毎分を注入するのが今回の装置の限界であり、水素ガス20cc毎分以下の水素ガス量を注入することができないものである。
したがって、図
4に示す分光器によるNHラジカルの測定結果にあっては、窒素ガス(N2)を500cc毎分にして、その後水素ガス20cc毎分を注入してからのNHラジカルのスペクトルの測定を行っているが、NHラジカルのスペクトル強度は、水素ガスの注入を停止(0cc毎分)してからの後に上昇し最高値に達しており、このときの水素ガス量の正確な数値は特定されていない。
よって、窒素(N2)と水素(H2)のガスの体積比(混合比)を、500(N2):20(H2)が最適値ではなく、最適値は窒素(N2)と水素(H2)のガスの体積比(混合比)を、500(N2):20(H2)未満、すなわち、水素(H2)ガスの量を窒素(N2)ガスの量の1/25未満としたところにあるとするのが相当である。
【0036】
概2MHzの
双極子電極プラズマ発生装置1によるプラズマ窒化処理にあっては、プラズマ状態の変化への俊敏な対応とそれらの安定状態の維持がなされる。
このことが、窒化層の短時間での形成に寄与していると考えられるものであり、500(N2):20(H2)未満(水素(H2)ガスの量を窒素(N2)ガスの量の1/25未満)の体積比とによって、良質な窒化層の短時間での形成がなされていると考えられる。
【0037】
鉄鋼材としては、主としてS15CK等の肌焼鋼、S45C等の構造用鋼、SUP10等のばね鋼、SUJ2等の軸受鋼、SACM1等の窒化鋼、SKD61等の熱間加工用鋼、SKD11等の冷間加工用鋼、SKH51等の高速度鋼、SUS301等の耐熱鋼、SCr20等の機械部品鋼、SUS410等の耐熱耐酸鋼等、各種ある。