【実施例】
【0044】
以下、前処理工程の前・後に吸着促進工程及び/又は後処理工程を複合的に組み合わせて無電解メッキを行う本発明の無電解銅メッキ方法の実施例、樹脂基板に無電解メッキを施して得られた銅皮膜の外観評価と膜厚の試験例を順次説明する。実施例の「%」は重量基準である。
尚、本発明は上記実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0045】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
下記の実施例1〜23のうち、実施例1〜14は吸着促進処理→前処理→無電解銅メッキの例であり、実施例1と3は吸着促進剤にアニオン性界面活性剤を用いた例、実施例2は同じくノニオン性界面活性剤を用いた例、実施例4と6はカチオン性界面活性剤を用いた例、実施例5と7は両性界面活性剤を用いた例、実施例8〜9は還元剤を用いた例、実施例10〜11は5員縮合複素環式含窒素化合物を用いた例、実施例12はフタロシアニンを用いた例、実施例13〜14はチオ尿素系の含窒素化合物を用いた例である。
実施例15〜20は前処理→後処理→無電解銅メッキの例であり、実施例15は活性化剤に酸を用いた例、実施例16〜20は同じく還元剤を用いた例である。
実施例21〜23は吸着促進処理→前処理→後処理→無電解銅メッキの例であり、実施例21は吸着促進剤にノニオン性界面活性剤を用いて活性化剤に還元剤を用いた例、実施例22は吸着促進剤にアニオン性界面活性剤を用いて活性化剤に還元剤を用いた例、実施例23は吸着促進剤に5員縮合複素環式含窒素化合物を用いて活性化剤に還元剤を用いた例である。
【0046】
一方、基準例1は冒述の先行基本技術の通り、前処理液を樹脂基板に適用した前処理工程の前・後には特段の薬剤処理はせず、前処理の後に無電解銅メッキを直ちに行った例(即ち、前処理→無電解銅メッキの例)である。
また、比較例1〜2は上記基準例1を基本として、粒径が本発明の適正範囲より大きい銅ナノ粒子を用いて前処理した例であり、比較例1は粒径が500nmの例、比較例2は粒径が300nmの例である。
【0047】
(1)実施例1
樹脂基板に粗面化処理(デスミア処理)を予備的に施してから、下記の条件(a)で吸着促進処理を行い、次いで条件(b)で前処理を行った後、条件(d)で無電解銅メッキを行った。
(a)吸着促進工程
先ず、両面銅張りガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)において、35μmの銅箔を溶解除去したものを試料基板とした。
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 10g/L
(b)前処理工程
次の組成で溶媒(純水と有機溶媒の混合)中に銅ナノ粒子と分散剤を混合・撹拌して、前処理液を調製した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−180 1.0g
純水 2.6g
イソプロピルアルコール 2.5g
上記銅ナノ粒子の粒径は80nmであり、DISPERBYK−180はビックケミー・ジャパン社製の分散剤であり、酸基を含むブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩を主成分とする。
この場合、銅ナノ粒子の液全量に対する含有量は45%、分散剤の銅ナノ粒子に対する含有量は20%である。pHは6.5であった。
(d)無電解銅メッキ工程
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g
ホルムアルデヒド 5.0g
EDTA 30.0g
水酸化ナトリウム 9.6g
残余 純水
pH(20℃) 12.8
前記(a)の吸着促進剤の含有液に試料基板を25℃、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、吸着促進した基板を30℃、5分の条件で上記(b)の前処理液に浸漬し、純水で洗浄した後、上記(d)の無電解銅メッキ液中にて50℃、5分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.30μmであった。
【0048】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(EO23モル) 7g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.27μmであった。
【0049】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 5g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.32μmであった。
【0050】
(4)実施例4
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド 5g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.28μmであった。
【0051】
(5)実施例5
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0052】
(6)実施例6
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体 5g/L
尚、当該重合体は下記の構造式で表される。
【化1】
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.28μmであった。
【0053】
(7)実施例7
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルアミン塩酸塩・マレイン酸共重合体 3g/L
尚、当該共重合体は下記の構造式で表される。
【化2】
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.30μmであった。
【0054】
(8)実施例8
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ジメチルアミンボラン 10g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0055】
(9)実施例9
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ホルムアルデヒド 10g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0056】
(10)実施例10
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ベンゾトリアゾール 5g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.30μmであった。
【0057】
(11)実施例11
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ベンゾイミダゾール 3g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.29μmであった。
【0058】
(12)実施例12
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
フタロシアニン(溶媒:ジメチルスルホキシド) 1g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0059】
(13)実施例13
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ポリアリルグアニジン塩酸塩(溶媒:ジメチルスルホキシド) 1g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.27μmであった。
【0060】
(14)実施例14
上記実施例1を基本として、吸着促進剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例1と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
チオ尿素 15g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0061】
(15)実施例15
樹脂基板に粗面化処理(デスミア処理)を予備的に施してから、下記の条件(b)で前処理を行い、次いで条件(c)で後処理を行った後、条件(d)で無電解銅メッキを行った。
(b)前処理工程
先ず、両面銅張りガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)において、35μmの銅箔を溶解除去したものを試料基板とした。
一方、次の組成で溶媒(純水)中に銅ナノ粒子と分散剤を混合・撹拌して、前処理液を調製した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−180 1.0g
純水 2.6g
イソプロピルアルコール 2.5g
上記銅ナノ粒子の粒径は80nmであり、DISPERBYK−180はビックケミー・ジャパン社製の分散剤であり、酸基を含むブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩を主成分とする。
この場合、銅ナノ粒子の液全量に対する含有量は45%、分散剤の銅ナノ粒子に対する含有量は20%である。pHは6.5であった。
(c)後処理工程
次の組成で活性化剤の含有液を調製した。
[活性化剤の含有液]
硫酸 70g/L
(d)無電解銅メッキ工程
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g
ホルムアルデヒド 5.0g
EDTA 30.0g
水酸化ナトリウム 9.6g
残余 純水
pH(20℃) 12.8
吸着促進した基板を30℃、5分の条件で上記(b)の前処理液に浸漬し、純水で洗浄した後、前処理をした基板を上記(c)の活性化剤の含有液に25℃、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、上記(d)の無電解銅メッキ液中にて50℃、5分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.26μmであった。
【0062】
(16)実施例16
上記実施例15を基本として、活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例15と同様の条件で処理した。
[活性化剤の含有液]
ジメチルアミンボラン 20g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.34μmであった。
【0063】
(17)実施例17
上記実施例15を基本として、活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例15と同様の条件で処理した。
[活性化剤の含有液]
ホルムアルデヒド 30g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.35μmであった。
【0064】
(18)実施例18
上記実施例15を基本として、活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例15と同様の条件で処理した。
[活性化剤の含有液]
アスコルビン酸 50g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.30μmであった。
【0065】
(19)実施例19
上記実施例15を基本として、活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例15と同様の条件で処理した。
[活性化剤の含有液]
ギ酸 20g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.28μmであった。
【0066】
(20)実施例20
上記実施例15を基本として、活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例15と同様の条件で処理した。
[活性化剤の含有液]
次亜リン酸 15g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.27μmであった。
【0067】
(21)実施例21
樹脂基板に粗面化処理(デスミア処理)を予備的に施してから、下記の条件(a)で吸着促進処理を行い、次いで条件(b)で前処理を行い、さらに続けて条件(c)で後処理を行った後、条件(d)で無電解銅メッキを行った。
(a)吸着促進工程
先ず、両面銅張りガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)において、35μmの銅箔を溶解除去したものを試料基板とした。
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(EO23モル) 7g/L
(b)前処理工程
次の組成で溶媒(純水)中に銅ナノ粒子と分散剤を混合・撹拌して、前処理液を調製した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−180 1.0g
純水 2.6g
イソプロピルアルコール 2.5g
上記銅ナノ粒子の粒径は80nmであり、DISPERBYK−180はビックケミー・ジャパン社製の分散剤であり、酸基を含むブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩を主成分とする。
この場合、銅ナノ粒子の液全量に対する含有量は45%、分散剤の銅ナノ粒子に対する含有量は20%である。pHは6.5であった。
(c)後処理工程
次の組成で活性化剤の含有液を調製した。
[活性化剤の含有液]
ホルムアルデヒド 10g/L
(d)無電解銅メッキ工程
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g
ホルムアルデヒド 5.0g
EDTA 30.0g
水酸化ナトリウム 9.6g
残余 純水
pH(20℃) 12.8
前記(a)の吸着促進剤の含有液に試料基板を25℃、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、吸着促進した基板を30℃、5分の条件で上記(b)の前処理液に浸漬し、純水で洗浄し、次いで、前処理をした基板を上記(c)の活性化剤の含有液に25℃、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、上記(d)の無電解銅メッキ液中にて50℃、5分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.30μmであった。
【0068】
(22)実施例22
上記実施例21を基本として、吸着促進剤の含有液、並びに活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例21と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 5g/L
[活性化剤の含有液]
次亜リン酸 10g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.28μmであった。
【0069】
(23)実施例23
上記実施例21を基本として、吸着促進剤の含有液、並びに活性化剤の含有液を次の組成で調製した外は、実施例21と同様の条件で処理した。
[吸着促進剤の含有液]
ベンゾトリアゾール 1g/L
[活性化剤の含有液]
ジメチルアミンボラン 10g/L
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.38μmであった。
【0070】
(24)基準例1
樹脂基板に粗面化処理(デスミア処理)を予備的に施してから、下記の条件(b)で前処理を行った後、条件(d)で無電解銅メッキを行った。
(b)前処理工程
先ず、両面銅張りガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)において、35μmの銅箔を溶解除去したものを試料基板とした。
一方、次の組成で溶媒(純水)中に銅ナノ粒子と分散剤を混合・撹拌して、前処理液を調製した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−180 1.0g
純水 2.6g
イソプロピルアルコール 2.5g
上記銅ナノ粒子の粒径は80nmであり、DISPERBYK−180はビックケミー・ジャパン社製の分散剤であり、酸基を含むブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩を主成分とする。
この場合、銅ナノ粒子の液全量に対する含有量は45%、分散剤の銅ナノ粒子に対する含有量は20%である。pHは6.5であった。
(d)無電解銅メッキ工程
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g
ホルムアルデヒド 5.0g
EDTA 30.0g
水酸化ナトリウム 9.6g
残余 純水
pH(20℃) 12.8
前記前処理液に試料基板を30℃、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、上記無電解銅メッキ液中に50℃、5分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
得られた銅メッキ皮膜の膜厚は0.25μmであった。
【0071】
(25)比較例1
上記基準例1を基本として、前処理液を次の組成で調製した外は、基準例1と同様の条件で処理した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−111 0.2g
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 5.9g
上記銅ナノ粒子として平均粒径500nmの粒子を使用した。また、DISPERBYK−111はビックケミー・ジャパン社製の分散剤であり、酸基を含む共重合物を主成分とする。
但し、本比較例1では、無電解メッキに際して銅皮膜の析出はなかった。
【0072】
(26)比較例2
上記基準例1を基本として、前処理液を次の組成で調製した外は、基準例1と同様の条件で処理した。
[前処理液]
銅ナノ粒子 5.0g
DISPERBYK−111 0.2g
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール 5.9g
上記銅ナノ粒子として平均粒径300nmの粒子を使用した。
但し、本比較例2では、無電解メッキの結果、銅皮膜は基板上に部分的にしか析出しなかった。
【0073】
《樹脂基板上の銅皮膜の外観評価試験例》
次いで、上記実施例1〜23、基準例1並びに比較例1〜2について、前処理の前・後に吸着促進処理及び/又は活性化処理をした樹脂基板に対する無電解メッキで得られた銅皮膜の外観を目視観察し、次の基準でその優劣を評価した。
〇:無電解メッキにより均質、平滑で美麗な銅皮膜が得られた。
△:銅皮膜が部分析出した。
×:銅皮膜が析出しなかった。
【0074】
《銅皮膜の外観評価並びに膜厚の試験結果》
上記銅皮膜の外観評価試験の結果は下表Aの通りである。尚、下表Aには無電解メッキで得られた銅皮膜の膜厚(μm)を併記した。当該膜厚については、上記実施例1〜23並びに基準例1の各末尾に記載したものを転記した。
尚、前述したように、比較例1では銅皮膜が析出せず、もって膜厚は測定不能であった。また、比較例2では銅皮膜は部分析出にとどまり、実用的な皮膜を得るという見地から不充分であったので、膜厚の測定は実施しなかった。比較例1〜2について、膜厚の欄の「−−」はこれらのことを示す。
【0075】
[表A] メッキ外観 膜厚(μm) メッキ外観 膜厚(μm)
実施例1 〇 0.30 実施例14 〇 0.26
実施例2 〇 0.27 実施例15 〇 0.26
実施例3 〇 0.32 実施例16 〇 0.34
実施例4 〇 0.28 実施例17 〇 0.35
実施例5 〇 0.26 実施例18 〇 0.30
実施例6 〇 0.28 実施例19 〇 0.28
実施例7 〇 0.30 実施例20 〇 0.27
実施例8 〇 0.26 実施例21 〇 0.30
実施例9 〇 0.26 実施例22 〇 0.28
実施例10 〇 0.30 実施例23 〇 0.38
実施例11 〇 0.29 基準例1 〇 0.25
実施例12 〇 0.26 比較例1 × −−
実施例13 〇 0.27 比較例2 △ −−
【0076】
《試験結果の総合評価》
(1)本発明の適正範囲より大きい粒径の銅ナノ粒子を用いて樹脂基板を前処理した比較例1〜2では、銅皮膜がまったく析出しないか、部分的にしか析出しなかった。
一方、250μm以下にまで適正に微細化された銅ナノ粒子を用いて樹脂基板を前処理し、無電解銅メッキを施した基準例1では、基板全体に均一な皮膜が得られ、その膜厚は0.25μmであった。
これに対して、前処理と無電解メッキ処理を前提に、当該前処理に先立って吸着促進処理を組み合わせた実施例1〜14では、基板全体に均一な皮膜が得られるとともに、銅皮膜は全てに亘り基準例1より厚く形成された。
同じく、前処理の後に活性化剤による後処理を組み合わせた実施例15〜20では、やはり銅皮膜は基板全体に均一に析出し、基準例1より厚く形成された。
次いで、前処理の前・後に吸着促進処理と後処理の両工程を組み合わせた実施例21〜23でも、当然に銅皮膜は基板全体に均一に析出し、基準例1より厚く形成された。
これにより、前処理の前・後に吸着促進処理及び/又は後処理を複合的に組み合わせると、これらの処理なしで前処理と無電解銅メッキ処理のみを行った場合(つまり基準例1)よりも、皮膜の析出速度を増速でき、もって得られた銅皮膜の膜厚が増したことが確認された。
【0077】
(2)そこで、先ず、吸着促進処理を組み合わせた実施例1〜14を詳細に見ると、実施例1〜7は吸着促進剤として各種の界面活性剤を用いた例であるが、界面活性剤の種類を問わず、同様な増膜効果が得られたことが分かる。吸着促進剤として還元剤を用いた実施例8〜9では、基準例1に比べて一応の増膜効果が確認できた。吸着促進剤として所定の含窒素化合物、並びにフタロシアニンを用いた実施例10〜14では界面活性剤の使用例と同程度の増膜効果が確認できた。
これにより、縮合複素環式やチオ尿素系の所定の含窒素化合物、フタロシアニン、還元剤、界面活性剤という特性の異なるように見える化合物を前処理に先立って基板に接触させると、共通の吸着促進作用があることが確認できた。例えば、基板に付着した縮合複素環式やチオ尿素系の所定の含窒素化合物は、各分子が有する複数個の窒素原子のローンペアに起因した、次工程で用いる銅ナノ粒子への配位機能により、基板に銅ナノ粒子を吸着促進することが期待できる。
上表Aの膜厚に鑑みると、縮合複素環式の含窒素化合物、チオ尿素系の含窒素化合物、或いはフタロシアニンの中では、縮合複素環式の含窒素化合物が相対的に増膜効果に優れることがうかがわれる。
次いで、後処理を組み合わせた実施例15〜20では、活性化剤に酸を用いるより、還元剤を用いた方が増膜効果に優れることがうかがわれ、ジメチルアミンボランやホルムアルデヒドを還元剤に用いた場合に相対的に良好な結果が得られた。従って、酸と還元剤という一見異なる作用をするように見える化合物に、共通の活性化作用があることが確認できた。
また、吸着促進処理と後処理の両方を前処理の前・後に組み合わせた実施例21〜23では、当然ながら増膜効果に優れ、特に、縮合複素環式含窒素化合物による吸着促進処理と、還元剤による後処理を組み合わせると、相対的により良好な増膜効果が得られることが推定される。
尚、上記実施例で注目すべきは、還元剤は吸着促進と活性化のいずれの作用をも奏する点である。