(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、本発明の車両表面汚染モニタについて以下に説明する。この車両表面汚染モニタ1は、車両2の表面の放射線物質による汚染の有無を検査するというものである。
【0022】
この車両表面汚染モニタ1は、車両2の大きさに対応して大型、中型、普通(例えば
図19参照)というように複数車種に対応できるが、本形態では普通車両用の車両表面汚染モニタ1であるものとして説明する。なお、大型用および中型用の車両表面汚染モニタについては、普通の車両表面汚染モニタ1とサイズが異なるのみで構成や機能については同じであるため、重複する説明を省略する。
【0023】
車両表面汚染モニタ1は、
図1〜
図4に示すように、移動部10、車高センサ20、前面検出部30、後面検出部40、車両誘導部50を備える。これら移動部10、車高センサ20、前面検出部30、後面検出部40は、
図5でも示すように、管理装置60により制御駆動され、また、信号処理がなされる。
【0024】
続いて、各構成について説明する。
移動部10は、
図6の前面図で示すように、移動部本体11、上面検出部12、右側面検出部13、左側面検出部14、駆動輪15を備える。移動体本体11には駆動輪15が設けられており、車両誘導部50の誘導溝51に駆動輪15が配置されている。駆動輪15は図示しない駆動装置により駆動されるようになされ、車両誘導部50の誘導溝51に沿って移動部本体11が車両2の前後方向に移動する。移動部本体11の移動とともに上面検出部12、右側面検出部13、左側面検出部14も車両2の前後方向に移動する。図示しない駆動装置は、管理装置60からの位置指令を受けて駆動制御を行うため、移動部本体11は車両前後方向に位置制御がなされる。
【0025】
上面検出部12は、
図7(a),(b),(c)で示すように、i×j個(本形態では例示的に2×15個)の上面分割センサ121、シャフト122、駆動部123、上面距離センサ124を備える。この上面検出部12は、車両2の上面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である上面分割センサ121をi×jのマトリクス状に配置したものである。上面分割センサ121というように分割された小型のセンサとして個々のセンサに対するバックグラウンドによる影響を低減している。上面分割センサ121は上面検出信号を管理装置60へ出力する。
【0026】
図6のA−A線断面図である
図7(a)に示すように、駆動部123がシャフト122を回転駆動して上面検出部12の高さ制御を行う。上面検出部12には、
図7(c)で示すように上面距離センサ124が設けられている。これら駆動部123、シャフト122、上面距離センサ124で独立した制御系である上面位置決定部を構成する。車高センサ20で車両2の高さを計測して管理装置60が駆動部123を制御して、移動部本体11の位置に対する上面検出部12の高さを予め決定しておき、さらに上面距離センサ124が車両上面から所定距離離れた位置にあるように駆動部123が制御する。車両2の上面から上面検出部12の検出面までの距離が変わると、検出部の検出効率(後述)が変わるため、車両2の高さに合わせて、車両2の上面から上面検出部12の検出面までの距離が最適となるように一定に調整する。
【0027】
右側面検出部13は、
図6,
図7、
図8,
図9で示すように、k×l個(本形態では例示的に2×15個)の右側面分割センサ131、移動本体132、駆動輪133、右側面距離センサ134、右側面障害物センサ135を備える。この右側面検出部13は、車両2の右側面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である右側面分割センサ131をk×lのマトリクス状に配置したものである。右側面分割センサ131というように分割された小型のセンサとして個々のセンサに対するバックグラウンドによる影響を低減している。右側面分割センサ131は右側面検出信号を管理装置60へ出力する。
【0028】
移動体本体132は、
図8(a),(b)で示すように、移動体本体132が内蔵するモータが駆動する駆動輪133により、移動部本体11のレール111上を駆動される。右側面分割センサ131は、移動体本体132から吊設されており、移動体本体132の移動と共に移動する。右側面分割センサ131には、
図9で示すように右側面距離センサ134が配置されており、車両表面から所定距離離れた位置にあるように距離を維持する。移動体本体132、駆動輪133、右側面距離センサ134で独立した制御系である右側面位置決定部を構成する。
図8(a)では右側面分割センサ131を障害物となるサイドミラーから所定距離離れた位置とし、
図8(b)では右側面分割センサ131を車両2の右側面から所定距離離れた位置としている。右側面障害物センサ135は、
図9(a)で示すように、ロープセンサであって、管理装置60に接続されており、障害物(アンテナやサイドミラー)が接触して障害物の存在を検出した管理装置60は移動体本体132が内蔵するモータが駆動輪133による駆動を停止するように制御して、移動部10の移動を停止するように制御する。なお、管理装置60を介在させないで、右側面障害物センサ135が接触により障害物の存在を検出した際に移動体本体132が内蔵する制御部へ検出信号を送り、内蔵するモータによる駆動輪133の駆動を停止するように制御しても良い。
【0029】
左側面検出部14は、
図6,
図7,
図8で示すように、k×l個(本形態では例示的に2×15個)の左側面分割センサ141,移動本体142、駆動輪143、左側面距離センサ、左側面障害物センサを備える。k×l個の左側面分割センサ141、左側面距離センサ、左側面障害物センサは
図9の右側面分割センサ131、右側面距離センサ134、右側面障害物センサ135と対称に設けられている。
【0030】
この左側面検出部14は、車両2の左側面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である左側面分割センサ141をk×lのマトリクス状に配置したものである。左側面分割センサ141というように分割された小型のセンサとして個々のセンサに対するバックグラウンドによる影響を低減している。左側面分割センサ141は左側面検出信号を管理装置60へ出力する。
【0031】
移動体本体142は、
図8(a),(b)で示すように、移動体本体142が内蔵するモータが駆動する駆動輪143により、移動部本体11のレール111上を駆動される。左側面分割センサ141は、移動体本体142から吊設されており、移動体本体142の移動と共に移動する。左側面分割センサ141には、左側面距離センサが配置されており、車両表面から所定距離離れた位置にあるように距離を維持する。移動本体142、駆動輪143、左側面距離センサで独立した制御系である左側面位置決定部を構成する。左側面障害物センサはロープセンサであって、管理装置60に接続されており、障害物(アンテナやサイドミラー)が接触して障害物の存在を検出した管理装置60は、移動体本体142に内蔵のモータが駆動輪143による駆動を停止させ、移動部10の移動を停止するように制御する。なお、管理装置60を介在させないで、左側面障害物センサが接触により障害物の存在を検出した際に移動体本体142が内蔵する制御部へ検出信号を送り、内蔵するモータによる駆動輪143の駆動を停止するように制御しても良い。
【0032】
車高センサ20は、車両2までの距離を計測するセンサであり、例えばレーザ測距センサなどである。
図3,
図4でも明らかなように車両誘導部50の入り口側に配置されている。
図12でも示すように、車高センサ20から車両2までの距離に基づいて管理装置60が演算を行い、車両2の前後方向別の車高データを取得する。
【0033】
前面検出部30は、車両の前面を検出するものであり、
図10で示すように、m×n個(本形態では例示的に2×15個)の前面分割センサ31、シャフト部32、昇降回転体33、前面距離センサ34を備える。この前面検出部30は、車両2の前面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である前面分割センサ31をm×nのマトリクス状に配置したものである。前面分割センサ31というように分割された小型のセンサとして個々のセンサに対するバックグラウンドによる影響を低減している。前面分割センサ31は前面検出信号を管理装置60へ出力する。
【0034】
前面検出部30は、昇降回転体33が内蔵する機構系によりシャフト部32に沿って昇降可能に構成されている。シャフト部32、昇降回転体33は前面距離センサ34を昇降させる独立した制御系である前面分割センサ昇降移動部を構成する。さらに昇降回転体33はシャフト部32を回転軸としてこの前面分割センサ31を開閉できるように構成されている。前面検出部30は、
図10(b)で示すように前面距離センサ34が配置されており、車両表面から所定距離離れた位置にあるように距離を維持する。シャフト部32、昇降回転体33、前面距離センサ34で独立した制御系である前面位置決定部を構成する。前面分割センサ31が開くと車両2が車両誘導部50から外へでることができる。管理装置60は、前面分割センサ31、昇降回転体33、前面距離センサ34に接続されており、これらの駆動制御および検出信号を取得して各種演算処理を行う。
【0035】
後面検出部40は、車両の後面を検出するものであり、
図11で示すように、m×n個(本形態では例示的に2×15個)の後面分割センサ41、シャフト部42、昇降回転体43、前後移動体44、誘導レール45、後面距離センサ46を備える。この後面検出部40は、車両2の後面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である後面分割センサ41をm×nのマトリクス状に配置したものである。後面分割センサ41というように分割された小型のセンサとして個々のセンサに対するバックグラウンドによる影響を低減している。後面分割センサ41は後面検出信号を管理装置60へ出力する。
【0036】
後面検出部40は、昇降回転体43が内蔵する機構系によりシャフト部42に沿って昇降可能に構成されている。シャフト部42、昇降回転体43は後面距離センサ46を昇降させる独立した制御系である後面分割センサ昇降移動部を構成する。さらに昇降回転体43はシャフト部42を回転軸としてこの後面分割センサ41を開閉できるように構成されている。シャフト部42は前後移動体44に取り付けられている。
【0037】
前後移動体44は誘導レール45上を移動するものであり、シャフト部42、昇降回転体43、後面分割センサ41とともに前後方向へ移動する。前後移動体44、誘導レール45で独立した制御系である後面検出部用移動部を構成する。後面検出部40は、
図11(b)で示すように距離センサ46が配置されており、車両後面から所定距離離れた位置にあるように距離を維持する。シャフト部42、昇降回転体43、後面距離センサ46で独立した制御系である後面位置決定部を構成する。後面分割センサ41が開くと車両2が車両誘導部50内へ進入することができる。管理装置60は、後面分割センサ41、昇降回転体43、前後移動体44、後面距離センサ46に接続されており、これらの駆動制御および検出信号を取得して各種演算処理を行う。
【0038】
車両誘導部50は車両をモニタリング位置へ誘導する機能を有している。車両誘導部50には、先に説明したように移動体本体11を誘導する溝部51が形成されている。さらに、車両誘導部50には、
図4で示すように、白線により誘導マーカ52が設けられており、車両2が誘導マーカ52により誘導され、停止位置で停止する。なお、誘導マーカ52も溝状にして車両2を確実に誘導停止させるようにしても良い。
【0039】
管理装置60は、これら移動部10、車高センサ20、前面検出部30、後面検出部40に接続され、各種駆動制御を行うコンピュータ装置である。この管理装置60は遠隔箇所に配置されている。管理装置60の操作パネルには、操作手順を画面と音声で説明をするカラー液晶ディスプレイとスピーカや、車両2の種類等を設定入力するキー、測定開始スイッチなどが設けられる。
【0040】
管理装置60は、操作ガイドとともに、検査結果や異常内容を表示する。また、管理装置60には報知部が接続されており、放射性物質による汚染についての警報を発する。報知部は、ブザーやスピーカなどの音声出力を行うものである。報知部は、例えば車両2の運転席付近に設けられる。管理装置60は、前面、後面、右側面、左側面、および、上面の全ての面で汚染の検出を行い、何れか一つでも放射能濃度が所定値を超えるときに報知部に対して警報を発するように制御する。運転手は基準を超える放射能濃度を車両表面から発していることを報知により認識する。なお、報知部は音声のみに限定するものではなく、例えば、周知の回転灯を用いて視覚による報知を加えても良い。
車両表面汚染モニタ1の基本構成はこのようなものである。
【0041】
続いて、各部のセンサに共通に使用されている単体の分割センサの性能について説明する。分割センサは、β線を検出する汚染モニタ用第面積プラスチックシンチレーション検出器である。分割センサは、所定時間にわたり停止した状態で検出される。感度評価式は次式のようになる。
【0043】
この検出限界計数率はバックグラウンド計数率に対して有意な差を出すための下限値である。この検出限界計数率が低いということはより低い放射能が測定できるということであり性能が高いことを表す。評価条件は以下のようになる。
【0044】
(1)評価面積:100cm2
(2)BG線量率:20μSv/h
(3)距離:15cm
(4)測定時間:15秒
【0045】
このうち測定時間Tsを15秒と比較的長くしており、分割センサの検出感度を低くしている。また、バックグラウンド計数率Nbを下げると、より低い検出感度(より低い放射能が測定できる)となり性能が向上する。具体的には、検出部から放射性物までの距離を15cmと短くし、また、分割センサとして車両表面を分割して検査する。これら工夫により、分割センサの検出限界計数率を改善する。上記評価条件で約10Bq/cm2 の検出限界計数率を確保している。
【0046】
続いて、車両表面汚染モニタ1の動作について
図13〜
図16を参照しつつ説明する。まず、予めバックグラウンド計数率Nbを測定する。例えば、車両表面汚染モニタ1を起動する時に必ずバックグラウンド計数率を測定するものであり、少なくとも1日1回は測定する。管理装置60は、検査対象である車両2がない状態で検出を行ってバックグラウンド計数率Nbを測定し、管理装置60がこのバックグラウンド計数率を内蔵する記憶部に記憶させる。このような初期処理を行った後にモニタを開始する。
【0047】
まず、
図13(a)の(1)初期状態では、車両誘導部50には車両2が存在しない状態である。このような状況下で車両2が車両誘導部50の誘導マーカ52に沿ってモニタリング位置53へ進入してくる。この進入時に、
図12(a),(b)で示すように車高センサ20の下を通過する。車高センサ20の検出信号は管理装置60へ入力される。管理装置60は車両2の前後位置データに対応する車高データを多数前後位置に関して登録する。これにより車両の前後位置別に対応した車高を得ることができるようになる。そして、
図13(b)の(2)車両進入で示すように、車両誘導部50のモニタリング位置53で停車した状態となる。
【0048】
続いて、
図13(c)の(3)測定開始で示すように測定が開始される。車両2の上面、右側面、左側面、前面、後面という五面のモニタリングを行う。この際、管理装置60は検出データから放射能濃度が基準を超えるか否かを判定している。基準(例えば40Bq/cm2)以下であるならば、基準を満たすと判定される。基準を超えるならば、汚染ありと判定される。そして、これ以上の検出は不要であるとして検出を終了する。これにより全検査時間(車両2が車両誘導部50の上にある時間)の短縮を図ることができる。また、上面検出部12の検出時の上下方向位置決めを適正に定めて、検査の正確度を向上させることができる。本形態では汚染なしとして検出が続くものとする。
【0049】
まず、移動時の距離制御について説明する。特に上面検出部12、右側面検出部13、左側面検出部14は移動体本体11とともに前後方向(本形態では前から後ろへ)移動しながらモニタリングを行うことになる。
上面検出部12は、登録される先端の車高に基づいて駆動部123が上面分割センサ121を先端の上面から15cm上側の位置まで下降させる。そして上面距離センサ124の検出信号を入力する駆動部123が上面分割センサ121を所定高さとなるように制御維持する。この垂直距離は、上面分割センサ121が適正感度をとりうる最適位置となるような距離である。
【0050】
また、右側面検出部13も車両との距離を所定距離となるように維持される。右側面距離センサ134が車両2と右側面との間の距離を計測して、この距離に基づいて移動体本体132が内蔵する駆動制御部が駆動輪133を駆動制御して移動体本体132を移動させ、右側面距離センサ134も車両2の右側面から検出面までの距離が15cmという一定距離となるように維持される。また、サイドミラーやアンテナなど突起箇所である障害物があるときはサイドミラーをよけつつサイドミラーから15cmという一定距離となるように維持される。仮にサイドミラーやアンテナなど突起箇所が右側面障害物センサ135に接触したらモニタリングを即時停止する。
【0051】
また、左側面検出部14も車両との距離を所定距離となるように維持される。左側面距離センサが車両2と左側面との間の距離を計測して、この計測データに基づいて移動体本体142が内蔵する駆動制御部が駆動輪143を駆動制御して移動体本体142を移動させ、左側面距離センサも車両2の左側面から検出面までの距離が15cmという一定距離となるように維持される。また、サイドミラーやアンテナなど突起箇所である障害物があるときはサイドミラーをよけつつサイドミラーから15cmという一定距離となるように維持される。仮にサイドミラーやアンテナなど突起箇所が左側面障害物センサに接触したらモニタリングを即時停止する。
【0052】
続いて、移動部10が移動を開始する。先に右側面検出部13、左側面検出部14が測定ポイントへ移動して車両2に近接し、15秒間固定位置で測定する。測定後はさらに次のポイントに移動して、繰り返し移動・測定を行っていく。この右側面検出部13、左側面検出部14の挙動は
図15(a)で示すような波状の移動となる。離れた箇所から車両表面へ近づいていって最適位置(15cm)で停止してモニタリングし、計測終了後に次ぎのポイントへ離れながら移動していき、再び車両表面へ近づいていって最適位置(15cm)で停止してモニタリングし、以下同様の動作を繰り返すというものである。以下車両前側から後側までステップ移動でありかつ固定位置測定で全面を測定する。
【0053】
続いて、上面検出部12が測定ポイントに移動して車両2に近接し、15秒間固定位置で測定する。上面検出部12では
図14で示すようにフロントガラスが検出され、続いて
図15の(5)測定中で示すようにルーフパネルの検出が行われる。例えば、
図15(c)で示すように長時間かけて車両上面の全ての面を計測している。この際、この上面検出部12の挙動は、
図15で示す右側面検出部13、左側面検出部14の挙動と同様の波状の挙動となる。離れた箇所から車両上面へ近づいていって最適位置(15cm)で停止してモニタリングし、計測終了後に次ぎのポイントへ離れながら移動していき、再び車両上面へ近づいていって最適位置(15cm)で停止してモニタリングし、以下同様の動作を繰り返すというものである。以下車両前側から後側までステップ移動でありかつ固定位置測定で全面を測定する。
【0054】
さて移動部10が移動して干渉するおそれがなくなった後に、
図13(c)で示すように、前面検出部30、後面検出部40が閉じられ、
図14で示すような状態となる。この際、後面検出部40は前後方向に移動して最適位置で停止する。そして前面検出部30、後面検出部40の検出が開始される。前面検出部30、後面検出部40共に検出を行う。前面検出部30、後面検出部40は、
図14,
図15でも明らかなように上側に上昇していく。車両前面や車両後面の高さは車高センサの計測により予め判別しており、必要な高さまで上昇することができる。また、前面検出部30と車両前面との距離は前面距離センサ34により最適な検出位置であり、また、後面検出部40と車両後面との距離は後面距離センサ46により最適な検出位置である。
【0055】
図16(a)の(6)前面・後面・側面測定終了で示すように、前面検出部30、後面検出部40が終了し、移動部10と干渉しないように前面検出部30、後面検出部40が開かれる。続いて右側面検出部13および左側面検出部14による検出が終了し、最後に
図16(b)の(7)上面測定終了で示すように、上面検出部12による検出が終了する。これにより、車両2の上面、右側面、左側面、前面、後面という五面のモニタリングが完了する。
【0056】
そして、管理装置60は前面、後面、右側面、左側面、および、上面の全ての面で汚染を不検出の車両は汚染が無いと判断した場合に退出可能であるとして報知部を通じて通知する。この報知を受けて、
図16(c)の(8)車両退場で示すように車両2は退出する。そして、
図13(a)の初期状態に戻った後に
図13(b)で示すように次の車両が誘導され、以下同様の汚染のモニタリングが行われていく。モニタリングはこのようなものである。
【0057】
なお、この説明では放射能汚染がない場合についての説明であるが、モニタリング途中で放射能濃度が基準を超えるならば、汚染ありと判定される。そして、これ以上の検出は不要であるとして検出を終了し、直ちに車両表面汚染モニタ1から退場となり、
図13(a)の初期状態に戻って他の車両について同様のモニタリングが繰り返される。このようにすることで時間的に効率良くモニタリングを行うことができる。
【0058】
このような車両表面汚染モニタ1は、車両2の上面、右側面、左側面、前面、後面という汚染されやすい五面のモニタリングを行うため、安価な構成で汚染を検知することができる車両表面汚染モニタとした。
【0059】
このような車両表面汚染モニタ1では以下のような利点がある。
(1)全体のモニタリング時間として5分程度という高速化を実現したため多数の検査対象車両を扱うことができる。
(2)分割センサをスキャニングする方式を採用したので、センサの個数を少なくしてコスト抑制を実現した。
【0060】
(3)上面検出部、右側面検出部、左側面検出部、前面検出部、後面検出部を最適位置まで近づけるため、最適な検出効率による測定で前後左右上の五面の微弱な放射能でも検出できる。
(4)何れの検出部も分割センサとして検出面積を少なくしてバックグラウンドノイズの検出を低減し、さらに信号強度の高い検出信号のみ選択することでバックグラウンドノイズによる影響の低減を実現する。
【0061】
(5)前処理無しで、車両のままでの測定を可能とした。このため円滑な車両の良否判定に寄与する。
(6)高感度の検出部及び測定方式により短時間測定を可能とした。加えて機械制御による高速測定を可能とした。
【0062】
これら効果が相乗的に相俟って高速で検出能力を高めた車両表面汚染モニタを実現している。
【0063】
続いて本発明の他の形態について図を参照しつつ説明する。本形態の車両表面汚染モニタ1’は、
図1〜
図16を用いて説明した先の形態に加えて、さらに車両の下側であって車両誘導部50内に配置され、放射性物質からの放射線を検出して検出信号を出力する下面検出部70を追加して設けたものであり、車両の下側の放射性物質の汚染の有無を検査するようにした。なお、先の形態で説明したものは、同じ構成・機能であるものとして重複する説明を省略する。
【0064】
先の形態では、車両の下面は放射性物質が比較的付着しにくいという傾向に配慮したものであり、下面の検出部を省略したものであるが、本形態では下面側検出部70も設け、上面、下面、前面、後面、右側面、左側面の全面についてのモニタリングを行うようにして、全面を対象とする漏れのないモニタリングを行うようにしたものである。
【0065】
下面検出部70は、
図17,
図18で示すように、o×pの下面分割センサ71、移動本体72、駆動輪73を、備える。この下面検出部70は、車両2の下面の表面汚染を測定するものであり、たとえばβ線用プラスチックシンチレーション式の検出部である分割センサをo×pのマトリクス状に配置したものである。下面分割センサ71とすることで個々のセンサのバックグラウンドによる影響を低減している。
【0066】
移動体本体72は、移動体本体72が内蔵するモータにより駆動される駆動輪73により誘導部内の溝55上を駆動される。下面分割センサ71は、移動体本体72の上面に取り付けられており、移動体本体72の移動に共に移動する。検出距離であるが車両2の下面から下面分割センサ71までの距離を最適距離(15cm)とするように設定すれば良い。さらに例えば下面から検出面までの距離を一定にするため、下面分割センサ71を昇降部により持ち上げて下面距離センサにより、車両表面から所定距離離れた位置にあるように距離を維持するようにしても良い。この場合には移動本体72、駆動輪73、下面距離センサで下面位置決定部を構成する。この状態で前後方向に移動させて検出する。このようにすることで下面の検出が可能となる。
【0067】
このような車両表面汚染モニタ1’は、車両2の上面、下面、右側面、左側面、前面、後面という全六面のモニタリングを行うため、正確に汚染を検知することができる車両表面汚染モニタとした。
【0068】
続いて、先に説明した車両表面汚染モニタ1あるいは車両表面汚染モニタ1’を用いる車両表面汚染モニタリング施設について説明する。この車両表面汚染モニタリング施設では先に説明した車両表面汚染モニタ1,1’を車両の大きさ別に複数配置する。本形態では、例えば、
図20で示すように、大型用の車両表面汚染モニタ1(または1’)を2台、中型用の車両表面汚染モニタ1(または1’)を1台、普通用の車両表面汚染モニタ1(または1’)を1台、合計4台設置し、大型車両と普通車両とに分けてモニタリングを行えるようにした施設である。しかしながら、設置個数等は適宜設計により選択される事項である。
【0069】
実際の運用について説明する。車両の大きさの判別は
図19,
図20で示すように車両判別部80を設ける。判別部80は、
図19で示すように、第1車高センサ81、第2車高センサ82、車両センサ83、報知部(スピーカ)84を備え、車両センサ83が車両の存在を確認したときに管理装置60が車両判別を開始する。車両高さを判定する第1車高センサ81、第2車高センサ82により高さを検出し、高さにより車種判定を行う。例えば、第1車高センサ81、第2車高センサ82が共に検出できない車両A,Bについて管理装置60は普通と判定する。第1車高センサ81は検出できるが第2車高センサ82が検出できない車両Cについて管理装置60は中型と判定する。第1車高センサ81,第2車高センサ82が共に検出する車両Dについて管理装置60は大型と判定する。なお、
図19では複数判定であるが本来は一台のみ判定を行う。そして管理装置60は報知部(スピーカ)84を介して車両のドライバに対し普通か、中型、大型のいずれであるかを報知し、いずれの車両表面汚染モニタへ行けば良いかを通知する。また、音声や回転灯などの報知部84として誘導しても良い。
【0070】
高さに応じた車両2を車両表面汚染モニタ1,1’内に移動した後に上記したようなモニタリングを行い、車両2に汚染がない場合には放射線の管理区域から非管理区域へ誘導し、一方、車両に汚染がある場合には放射線の管理区域内へ車両を移動させ除染後に再検査を行うというものである。これにより、大きさが異なる車両に対処でき、効率的にモニタリングを行うことができる。
【0071】
なお、本発明の車両表面汚染モニタリング施設では、個々の管理装置60にさらに他のパーソナルコンピュータとLANで接続した総合管理装置を設け、この総合管理装置から全ての管理装置を遠隔操作することが可能である。このような構成を採用しても良い。
【0072】
このような車両表面汚染モニタリング施設では、全ての車種を検査対象に対するモニタリングを可能とし、信頼性の向上に寄与する。