(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<包装体の全体構造>
まず、本発明の一実施形態である包装体1を例として、本発明に係る包装体の全体構造について説明する。
図1及び
図2に示すように、包装体1は、スリーブ形状の保護部材10と、遮光性を有するガセット袋であるフィルム包装袋20と、可撓性を有するシート状製品である微生物培養シート30と、を備える。
図1に示す通り、保護部材10は、フィルム包装袋20内に密封収容されている。そして、
図2に示す通り、微生物培養シート30は、保護部材10内の底面11の上に積層された状態で収容されている。
【0022】
保護部材10は、底面11、天面12、側壁13と、開口面14の4つの面によって構成されるスリーブ形状の部材である。開口面14はヒンジ部140からなり、ヒンジ部140は第1ヒンジ部140a及び第2ヒンジ部140bとからなる。開口面14は、更に詳しくは、第1ヒンジ部140a及び第2ヒンジ部140bとを重ね合わせてなる面である。又、フィルム包装袋20は、左右の一対の側面21と、側面21と直交する上下一対のヒートシール部22とを備えるガゼット袋であり、一方のヒートシール部22には開口予定部221が形成されている。
図1に示す通り、包装体1においては、保護部材10は、その開口面14がフィルム包装袋20の開口予定部221側となるように、フィルム包装袋20内に配置されている。このような配置とすることにより、開口予定部221においてヒートシール部22を開口した際に、保護部材10の開口面14が開口部から露出するため、包装体1から微生物培養シート30をスムーズに出し入れすることができる。
【0023】
尚、本実施形態における保護部材10は、上述したようにスリーブ形状であるが、上述した4面の他に更にもう一対の側面を加えた6面によって構成される箱状(6面体)の保護部材であってもよい。保護部材10を箱状とした場合は、開口面の方向とフィルム包装袋20の開口予定部221の方向は必ずしも一致しなくてもよい。これらの方向が一致しない場合は、上述した収容物の出し入れ時の操作性の向上効果が一部損なわれることなるが、例えば、すでに既製品として使用可能な箱状の部材が存在する場合には、当該箱状の部材を本発明の包装体にそのまま流用することによるコスト削減が可能となるというメリットがある。
【0024】
<保護部材>
次に、保護部材10について詳しく説明する。保護部材10の主たる使用目的は、微生物培養シート30を外圧から保護することである。後に詳しく説明する微生物培養シート30の構造上、特にその底面及び天面方向からの外圧を防ぐことが重要である。側面方向からの外圧については、フィルム包装袋20の側面21による保護のみとしても特に問題は生じない。本実施形態の保護部材10を一対の側面が開放されている4面体であるスリーブ形状としたのは、そのような構造によっても十分に微生物培養シート30を外圧から保護することが可能であるからである。このように保護部材10を構成する面数を最小限に減らして構造を簡易化することにより、製造コストを下げることができる。
【0025】
保護部材10は
図3の展開図に示した略矩形状のシート(以下、矩形状シートという)を切り出す切り出し工程、続いて切り出した矩形状シートをスリーブ状に折り曲げる折り曲げ工程により製造することができる。矩形状シートの材料は、従来公知の技術によって容易に切り出しと折り曲げができて、且つ、スリーブ状に成形後に、外圧からの保護が可能な一定の強度を有する素材であれば、紙、合成樹脂等、特に限定されずに用いることができる。ただし、製造コスト、生産性、環境対応性等の観点から、紙製であることが好ましい。特に、坪量230〜350g/m
2、厚さ0.2mm〜0.4mmのカード紙を保護部材10の材料として好適に用いることができる。このような紙の具体例として、JETエース(三菱製紙社製)がある。
【0026】
切り出し工程及び同工程において切り出す矩形状シートの形状について説明する。切り出し工程において材料紙より矩形状のシートを切り出す方法は特に限定されない。従来公知の方法により切り出せばよい。例えばトムソン刃タイプの打ち抜き刃で一度に打ち抜く方法を好ましく用いることができる。
【0027】
切り出し工程において切り出す矩形状シートの短手方向の幅X(
図3参照)は、包装体1に収容する微生物培養シート30の幅に併せて適宜決定すればよい。一般的な微生物培養シート30は縦横の幅が6cm〜10cm程度の方形である。幅Xは、保護部材10内に配置した微生物培養シート30の矩形状シートの短手方向に沿った幅より0.5mm〜5mm程度大きい幅であることが好ましい。このような幅にすることによって、微生物培養シート30を底面11上に配置し、且つ、輸送時の振動等による包装体1の内部での微生物培養シート30の不要な位置ずれに起因する損傷や変形を防止することができる。
【0028】
矩形状シートの長手方向の長さY(
図3参照)は、スリーブ状に形成後の保護部材10の底面11、天面12、側壁13、開口面14の4つの各面を所定の大きさに形成するために必要な長さとすればよい。底面11及び天面12のY方向に沿う辺の長さは、保護部材10内に配置した微生物培養シート30の同方向に沿う辺の長さより0.5mm〜5mm程度長い幅であることが好ましい。側壁13、開口面14の矩形状シートのY方向に沿う辺の長さは、保護部材10の内部に積層して収容する微生物培養シート30の枚数に併せて適宜調整すればよい。即ち、
図2に示す積層された微生物培養シート30の積層物全体の高さより0.5mm〜5mm程度大きい長さであることが好ましい。以上述べた4つの各面のY方向に沿う辺の好ましい長さの合計が、即ち矩形状シートのY方向の長さとなる。このような長さにすることによって、微生物培養シート30を底面11上に配置し、且つ、包装体1の内部で不要な位置ずれを防止し、且つ、微生物培養シート30を特にその上下方向からの外圧から適切に保護することができる。
【0029】
尚、開口面14とは、本実施形態の包装体1においては、保護部材10の4つの面のうち、側壁13と平行に対面する位置において、天面12から立設される第1ヒンジ部140aと底面11から立設される第2ヒンジ部140bとが重ね合わされて構成される面である。開口面14は、開口前の状態において側壁13とともにスリーブ状の保護部材10の高さh1(
図6参照)を保持するための面である。本実施形態の保護部材10においては、第1ヒンジ部140a及び第2ヒンジ部140bのY方向に沿う辺の長さはいずれもh1であるが、ヒンジ部140の長さはこれに限られない。本発明の包装体に係る保護部材においては、ヒンジ部140のうちの少なくともいずれか一方の長さがh1であればよく、他の一方のヒンジ部140はそれより短かくてもよい。又、保護部材を第1ヒンジ部140a又は第2ヒンジ部140bのうちいずれか一方のみを設けたものとしてもよく、その場合は設けられた一方のヒンジ部がヒンジ部140として開口面14を形成する。
【0030】
矩形状シートは略矩形状であるが、
図3に示す通り、第1ヒンジ部140a、及び第2ヒンジ部140bとなる両端の角部については、丸みをおびたラインとなるように切り出してもよい。角部をこのような形状にすることにより包装体の意匠性を高めることができる。又、矩形状シートの第1ヒンジ部140aの先端部には開口のきっかけとなる指掛け部141を設ける。この指掛け部141の形状は半円の凹部であることが好ましいが、これに限られない。例えば第1ヒンジ部140aが開口面14より短い場合は、第一ヒンジ部140aの先端部に半円の凸部を設けてもよく、指先をひっかけて開口のきっかけとするために必要充分な大きさ及び形状であればいずれであってもよい。指掛け部141を設けることにより、第1ヒンジ部140aの開口時に指掛け部141に指先をひっかけられるようになり、開口がより容易となる。尚、この指掛け部141は、第2ヒンジ部140bに設けることもできる。本実施形態の保護部材10においては、
図2に示すように、第2ヒンジ部140bの外側に第1ヒンジ部140aを重ね合わせることにより、開口面14を形成しているが、他の実施形態において、第2ヒンジ部に指掛け部141を設ける場合は、第2ヒンジ部140bが外側になるようにヒンジ部140を重ね合わせればよい。
【0031】
次に折り曲げ工程及び同工程を経て形成されるスリーブ形状の保護部材10の詳細な構成について説明する。折り曲げ工程において、矩形状シートを折り曲げる方法は特に限定されず、従来公知の方法により折り曲げればよい。例えば、折り曲げに先行して筋押し加工により折り曲げ線を形成してからプレス機により折り曲げる方法を好ましく用いることができる。
【0032】
図2に示す通り、折り曲げ工程を経てスリーブ状に形成された保護部材10において、底面11と天面12は、側壁13及び開口面14を介して平行に向かい合う一対の合同な方形の面である。底面11及び天面12の要する具体的な長さ及び幅は、上述の切り出し工程において説明した通りである。又、側壁13及び開口面14は、底面11及び天面12を介して平行に向かい合う合同な方形の面である。側壁13及び開口面14の要する具体的な長さ及び幅も上述した通りである。
【0033】
折り曲げ工程においては、まず、矩形状シートに当該シートの短手方向に対して平行な複数の折り曲げ線を形成する。当該折り曲げ線は、折り曲げ工程後のスリーブ状の保護部材10において、底面11、天面12、側壁13、開口面14が、それぞれ前述した必要な大きさ、形状、位置関係となるように所定の間隔で矩形状シート上に設ける。
【0034】
折り曲げ線を形成した後、底面11から側壁13及び第2ヒンジ部140bが、そして天面12から第1ヒンジ部140aが、それぞれ垂直に立設されるように、又、底面11と天面12が平行に向かい合う位置に配置されるように、矩形状シートをそれぞれの折り曲げ線に沿って直角に折り曲げて保護部材10を形成する
【0035】
尚、上記形成後に、第1ヒンジ部140aと第2ヒンジ部140bをそれらの重なり合う部分において、ホットメルト剤等により仮留めしてもよい。そのようにすることによって、輸送中に開口面14が開口し、微生物培養シート30がフィルム包装袋20内で散逸することを防止できる。
【0036】
底面11は、包装体1の使用状態において、下方側の面となることが想定されている面でありこの面の上に収容物である微生物培養シート30が積層される。又、底面11は、包装体1において、収容物をその底面側からの外圧から保護する作用を果たす。
【0037】
天面12は、包装体1の使用状態において、上方側の面となることが想定されている面であり、収容物をその天面側からの外圧から保護する作用を果たす。
【0038】
側壁13は、包装体1の使用状態において、一方の側面となることが想定されている面であり、底面11と天面12を連接することにより、両面の間に形成される保護部材10の高さh1を保持する作用を果たす。
【0039】
開口面14は、包装体1の使用状態において、一方の側面となることが想定されている面であり、第1ヒンジ部140a及び第2ヒンジ部140bとを重ね合わせて形成することにより、側壁13と同様、保護部材10の内部空間の高さh1を保持する。又、開口面14は、微生物培養シート30を保護部材10から出し入れする際の出し入れ口となる。
【0040】
ここで、
図4及び
図5を参照しながら、本発明の包装体の他の実施形態(以下「第2実施形態」とも言う。)について説明する。第2実施形態は、包装体1において、保護部材10を保護部材10Aとしたものである。保護部材10Aは、
図4に示す通り、側壁13及び開口面14の両側端部近傍に配置される保護片部15を更に備えることを特徴とするものである。その他については保護部材10と同様の構成を備えるものである。
【0041】
先に説明した通り、微生物培養シート30を外圧から保護する上では、包装体1における保護部材を保護部材10のように一対の側面が開放されているスリーブ形状としても充分に保護できる。但し、微生物培養シート30の角部35がフィルム包装袋20の側面21の内側面に継続的に接触することによって、側面21に微細な損傷が生じる場合がある。そのような損傷は外観状好ましくなく、又、フィルム包装袋20の素材として膜厚が薄いものを用いた場合には、そのような損傷が微細な貫通孔の形成につながる危険性もある。
【0042】
よって、保護部材をスリーブ状とする場合には、
図4に示す通り、保護部材を保護片部15を更に備える保護部材10Aとすることが更に好ましい。このようにすることにより、フィルム包装袋20の素材にかかわらず、微生物培養シート30の角部35によるフィルム包装袋20の上記のような損傷を回避することができる。
【0043】
保護片部15は、保護部材10における他の構成部分と同様に保護部材10Aの一部に立設される片部である。保護片部15は、
図4に示す通り、側壁13及び開口面14の両側端部近傍付近に配置される。又、保護片部15は、そのような位置において、全ての微生物培養シート30の4つの角部35を覆うことができる態様で配置される。このように保護片部15を設けることにより、角部35のフィルム包装袋20の側面21への接触を防止することができ、よってフィルム包装袋20の上記損傷を防ぐことができる。
【0044】
保護片部15は、例えば、
図5に示すように、第1ヒンジ部140aと側壁13の両側辺から立設するようにして計4箇所に形成することができる。但し、上記の通りに角部35を覆うことのできる態様であればこれに限らず、例えば、天面12又は底面11の端部近傍に立設することによって第1ヒンジ部140aと側壁13の近傍に配置されるものとしてもよい。
【0045】
保護片部15の形状についても、上記態様を実現できるものであれば特に限定されないが、好ましい一例として
図4、
図5に示すような略矩形状の保護片部15を例示することができる。このような形状は、製造が比較的容易でありながら、確実に全ての角部35を覆うことができるためである。保護片部15が略矩形状である場合の幅w(
図4、
図5に図示)は、保護部材10A内の全ての微生物培養シート30の4隅の角部35を全て覆うことのできるに足りる幅であればよい。又、その場合の高さh(
図4、
図5に図示)については、5mm以上20mm以下であることが好ましい。但し、包装体1内に配置される微生物培養シート30の形状や大きさ及び枚数に応じて、その角部35のフィルム包装袋20の側面21への接触を防止するために必要充分な範囲あればよく、その限りにおいて幅w及び高さhは必ずしも上記範囲に限定されるものではない。
【0046】
保護片部15の先端角部151の形状については、面取りされていることが好ましい。先端角部151が、このように面取りをされて丸みを帯びた形状、即ち半円形状又は半楕円形状であることにより、保護片部15の先端角部151の角部の継続的な接触によるフィルム包装袋20の損傷を防止することができる。
【0047】
尚、保護部材10Aは、保護部材10と同様に、上述した切り出し工程、折り曲げ工程を経る製造方法によって、保護片部15を形成して製造することができる。
【0048】
<フィルム包装袋>
次に、フィルム包装袋20について詳しく説明する。フィルム包装袋20の主たる使用目的は、微生物培養シート30の露光を防ぐことである。後に詳しく説明する微生物培養シート30の性質上、使用前の露光は製品として好ましくない変質をもたらしてしまう場合がある。よって、包装体1には高い遮光性が求められる。このような要請を満たすために、本発明の包装体1においては、遮光性を有する素材からなるガセット袋をフィルム包装袋20として用いることにより、必要な遮光性を実現している。
【0049】
フィルム包装袋20に、上記遮光性以外にも、防湿性、耐熱性、耐化学薬品性等の様々な特性を付加することもできる。フィルム包装袋20をそのような特性のものとすることにより、微生物培養シート30に限らず、他の異なる性質を有する様々なシート状製品の梱包を好適に行うことも可能である。
【0050】
図1に示すフィルム包装袋20は、連接した4つの面によってなる中空のチューブ状の素材であるガセットチューブ(図示せず)の両端を貼着してヒートシール部22を形成することにより製造することができる。フィルム包装袋20において、ガセットチューブの4つの面は、それぞれ底面、天面、及び一対の側面21となる。又貼着された両端部はヒートシール部22となる。
【0051】
フィルム包装袋20を形成するガセットチューブの素材については、遮光性を有し、且つ上記加工によりガセット袋を形成することが可能な可撓性のあるフィルム素材であれば、特に限定されず従来公知のフィルム素材を用いることができる。そのようなフィルム素材としては、例えば、特許文献1に記載されているように、一般の包装材料として使用されている、例えば、基材/遮光層/シーラント層構成の、ヒートシール可能な多層フィルムを用いることができる。基材層としては二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム)や二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が例示でき、遮光層としてはアルミニウム等の金属箔又は金属蒸着層が例示でき、シーラント層としてはポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが例示できる。
【0052】
ここで、特にフィルム包装袋20のシーラント層については、その膜厚が薄いものを用いた場合に、上述した内容物の接触による損傷がフィルム包装袋20側面の微細な貫通孔の形成につながる危険性が高まるが、保護部材を、
図4に示す通り、スリーブ状の保護部材に保護片部15を備えさせた保護部材10Aとする場合においては、そのような危険性を回避しつつシーラント層の膜厚を従来品よりも薄くすることが可能になるため、製造コストを更に削減することが可能である。
【0053】
フィルム包装袋20は、ガセット折部211を備える左右の一対の側面と、前記側面21と直交する上下一対のヒートシール部22とを備えるガセット袋である。一対のヒートシール部22のうち一方のヒートシール部22には開口予定部221、ノッチ部222、再封止部223が形成されている。
【0054】
フィルム包装袋20の内部空間の大きさは保護部材10を収容するために必要十分な大きさであればよく、厳密に特定される必要はない。ただし、必要以上に大きいと輸送時にフィルム包装袋20内で保護部材10が不要に位置ずれを起こし、又資材にも無駄が生じるため好ましくない。尚、
図6に示す通り、フィルム包装袋20の内のりにおける高さh2と保護部材10の高さh1との差については、h2の方がh1より2.0mm〜5mm程度大きい長さであることが好ましい。この範囲の高さの差とすることにより、保護部材10をフィルム包装袋20から円滑に出し入れすることができる。この高さの差が2mm未満であると保護部材10をフィルム包装袋20からの出し入れを円滑に行うことができない。この高さの差が5mmより大きい場合は、フィルム包装袋20は必要以上の大きさとなり、上述のような不都合が生じる。
【0055】
側面21にはガセット折部211を形成してもよい。ガセット折部211を形成することにより、使用後にフィルム包装袋20を簡易に折り畳むことが可能となり廃棄時に嵩張りにくいという効果がある。
【0056】
ヒートシール部22は、適切な長さに裁断されたガゼットチューブの両端を接着することにより形成される。接着方法としては、フィルム包装袋20の素材により、それぞれ適した方法を用いることができる。例えば、熱圧着加工、ホットメルト加工等により接着することができる。ヒートシール部22の幅(
図1のフィルム包装袋20の長手方向における幅)は、開口予定部221、ノッチ部222、及び再封止部223を設けるために必要十分な幅であり、後に詳しく説明する開口、再封止の操作が行い易いような幅であればよく、具体的には1cm〜2cm程度の幅であることが好ましい。尚、本実施形態の包装体1においては、開口予定部を設ける一方のヒートシール部22については、開口予定部221より端部よりの外側部分が接着の範囲となる。
【0057】
開口予定部221は、包装体1の開口を容易にする加工が施された部分であり、フィルム包装袋20の一対のヒートシール部22のうちの一方にのみ設けられる。包装体1の使用者は当該部分に沿ってのみ、はさみ等の道具を使わずにフィルム包装袋20を容易に開口することができる。フィルム包装袋20の開口時には、この開口予定部221が、保護部材10及び微生物培養シート30を出し入れするための開口部となる。本実施例の包装体1においては、くさび型の切り込みであるノッチ部222を開口予定部221の一端に設ける方法を用いることにより、開口予定部221における開口を容易にしている。開口予定部221は、フィルム包装袋20の遮光性等必要な特性を損なわない限り、従来公知のその他の方法によって設けてもよい。例えばヒートシール部22の所定の位置に、ハーフカットの切り込みを形成することによって開口予定部221を設けることもできる。
【0058】
開口予定部221を一方のヒートシール部22のみに設けることにより、包装体1の使用者は常に特定のヒートシール部22の側からフィルム包装袋20を開口することになる。一方、前述した通り、フィルム包装袋20内に収容された保護部材10は、この開口予定部221側に常に開口面14が向くように配置されている。このような配置とすることにより、フィルム包装袋20から微生物培養シート30を極めてスムーズに出し入れすることが可能となっている。
【0059】
ノッチ部222は、開口予定部221の一端に設けられるくさび形の切り込みであり、包装体1の使用者がフィルム包装袋20を開口する際に、開口操作を容易にするきっかけとなる部分である。ノッチ部222は、開口予定部221を認識するための目印となり、又開口の起点となる。尚、本発明における開口予定部とは保護部材の開口面14側からの開封を意図しているので、必ずしもノッチやハーフカット等のような易開封手段に限らず、開口面14側からの開封を示唆する印刷等の単なる表示であってもよい。
【0060】
再封止部223は、一度開口されたフィルム包装袋20を再封止することができる機構を備える部分であり、開口予定部221を備えるヒートシール部22の開口予定部221より内側に設けられる。微生物培養シート30は、必ずしも開口後、一時に全てを使い切るとは限らないため、使い残しの微生物培養シート30を遮光性が保たれた状態で再度保存する必要が生じる。再封止部223によって、一度開口されたフィルム包装袋20を再封止することにより、使い残しの微生物培養シート30を包装体1を用いて適切に保存することが可能となっている。
【0061】
再封止部223は、ヒートシール部22の内部に係止機構となる線状ファスナーを設けることにより形成することができる。再封止部223を構成する係止機構としては、フィルム包装袋20の再封止後に一定の遮光性を保てる機構であれば、その他の従来公知の機構を用いることもできる。
【0062】
以上、遮光性を有するフィルム包装袋として、ガゼット袋を用いた場合の実施例について説明したが、本発明におけるフィルム包装袋はこれに限られない。遮光性を有するフィルム包装袋である限り、ボトムシール袋、サイドシール袋、三方シール袋等、他の形態の袋を用いてもよい。
【0063】
ここで、フィルム包装袋20の素材については、遮光性を有し、且つ製造コストも低く抑えられるものとするために、樹脂素材等、可撓性を有する素材とせざるをえない。このような素材からなるフィルム包装袋20は、それ自体においては、微生物培養シート30を外圧から十分に保護することはできない。一方、保護部材10は、微生物培養シート30を外圧から保護するために必要最低限の簡易な構成であるため、外圧保護以外の作用効果はほとんど奏しえない。しかし、そのような保護部材10とフィルム包装袋20の組み合わせにより、微生物培養シート30の包装に必要とされる遮光性と外圧からの保護を低コストで両立させた点に本発明に係る包装体の特徴がある。更に、本発明に係る包装体においては、フィルム包装袋20に開口予定部221を設けた上で、フィルム包装袋20と保護部材10を最適に配置することにより、収容物の出し入れ時の操作性を極めて高いものとすることをも可能としている。
【0064】
<微生物培養シート>
次に、微生物培養シート30について簡単に説明する。バイオテクノロジー分野等の研究や試験の過程では微生物を適宜培養する必要がある。耐水性を有する基材上に乾燥した培養層を備えることにより、簡便に微生物を培養することのできるツールとして開発されたのがこの微生物培養シートである。
【0065】
図7(A)(B)(C)に示す通り、微生物培養シート30は、方形の基材シート31上に微生物を培養するための培養層33を備える。培養層33の外周には疎水性樹脂からなる円形の凸状枠部34が形成されており、培養層33は、凸状枠部34に囲まれた凹部領域に形成されている。そして、凸状枠部34と培養層33とを被覆するように、方形の透明カバーシート32が設けられている。
【0066】
基材シート31は、耐水性及び耐熱性を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートを好適に使用することができる。これらはいずれも可撓性を有するフィルム素材である。
【0067】
培養層33は、高価な微生物培養材料の無駄を低減するために、又、迅速な接種作業を可能とするために、基材シート31上の所定の領域に限定して形成されている。又、培養層33は、その厚みを微生物の発育に必要十分なものとしている。尚、培養層33には紫外線等に露光すると変質する成分が含まれている場合がある。包装体1においては、遮光性を有するフィルム包装袋20を用いることにより、このような微生物培養シート30の変質を防止することができる。
【0068】
凸状枠部34は、微生物を培養するための被検液を遺漏させることなく、所定の範囲に確実に拡げるために形成されている。凸状枠部34の高さは、培養層の厚みにも依存するが、好ましくは基材シート31を基点として600〜1200μmである。培養層33との間に高さの差がないと、被検液を滴下した際に凸状枠部34からはみ出し、漏れる場合がある。又、高さの差が大きいと、被検液の接種後に、培養層33と透明カバーシート32との間に空間が生じ易く、培養中に培養層が乾燥する場合がある。微生物培養シート30においては、凸状枠部34の高さを好ましい高さとすることが必要であるが、そのような基材シート31と凸状枠部34との高低差に起因して、例えば
図2に示すような積層された状態において、微生物培養シート30は、上下方向から外圧がかかると、たとえ微細な圧力であっても変形し易いという問題があった。包装体1の保護部材10はそのような微生物培養シート30の変形を防止することができる。
【0069】
透明カバーシート32は、培養中の落下菌等による汚染を防止するとともに、培養層の水分蒸発を防止する作用を有する。透明カバーシート32は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムを使用することができる。透明カバーシート32は、どのような形状であってもよいが、雑菌の進入を防ぐため、培養層33を被覆できるように培養層33よりも大きいサイズとする必要がある。
【0070】
本発明に係る包装体は、可撓性を有するシート状製品を複数枚重ねた収容物をその内部に収容するものであるが、包装体1に収容されるシート状製品の代表的な一例として、具体的には、この微生物培養シート30が想定されている。包装体1は、保護部材10及びフィルム包装袋20を備えることにより、露光によって変質し易く、又外圧によって変形し易いという性質を有する微生物培養シート30の包装に好適に用いることができる。又、これに限らず、微生物培養シート30と同様の性質を有するその他のあらゆるシート状製品の包装体として好適に用いることができることをその特徴とする。
【0071】
<包装体の梱包形態>
次に、包装体1の輸送時等における具体的な使用態様である梱包形態について説明する。
図8、
図9は、実際の流通過程における包装体1の梱包形態の一例を表した斜視図である。微生物培養シート30を収納した包装体1は、
図8に示す通り、まず、例えば、4袋ずつカートン箱40に梱包される。そして更に、カートン箱40は、
図9に示す通り、例えば、8箱ずつ段ボール箱50に梱包される。通常、実際の流通過程において、包装体1は、この
図9の梱包形態、若しくは、カートン箱毎の梱包数を変更した形態等これに準ずるその他の梱包形態で輸送される。いずれにしても、上述した通り、包装体1は、その容積を微生物培養シート30の出し入れの操作性を確保するための最低限の容積に止めているため、最終的な梱包形態のサイズを無駄に大きくすることがなく輸送コストを節約することができる。
【0072】
<包装体の使用方法>
次に、包装体1に収容された微生物培養シート30の使用者が、包装体1を使用する場合の使用方法について説明する。使用者は、フィルム包装袋20を開口し、保護部材10を引き出し、微生物培養シート30の取り出し、更にフィルム包装袋20を再封止することにより、使い残した微生物培養シート30を包装体1内に保存することができる。このような使用方法について、以下、
図6及び
図10〜13を適宜参照しながら説明する。
【0073】
図10に示すように、包装体1から微生物培養シート30を取り出すために、使用者は、まずフィルム包装袋20を開口する。ノッチ部222を起点に開口予定部221に沿ってフィルム包装袋20を開口することができる。使用者は、例えば、ノッチ部222の左右を指でつまんで捻ることにより、特に、はさみ等の道具を使わずに、容易に切断のきっかけを得ることができる。そして、その切断のきっかけを契機として、開口予定部221に沿ってフィルム包装袋20を開口することができる。これにより、開口予定部221は開口部となり、該開口部から保護部材10を引き出すことが可能となる。
【0074】
図11は、フィルム包装袋20から保護部材10の一部を引き出した状態を示している。上述した通り、保護部材10の高さh1とフィルム包装袋20の内のりの高さh2との間に適切な差を設けてあるため(
図6参照)、使用者は、フィルム包装袋20の開口部から保護部材10を円滑に引き出すことができる。
【0075】
図12は、フィルム包装袋20から保護部材10の一部が引き出された状態において、保護部材10から一枚の微生物培養シート30を取り出す過程を示している。包装体1においては、保護部材10は、フィルム包装袋20の開口時には、常にその開口部からヒンジ部140が露出するように配置されているため、保護部材10の一部を引き出した使用者は、更に保護部材の全体を引き出すことなく、保護部材10のヒンジ部140を開いて、その内部に収容された微生物培養シート30を取り出すことができる。ヒンジ部140を開く際には、指掛け部141に指をひっかけて開口のきっかけとすることができる。又、
図12に示す状態において、一度取り出した微生物培養シート30を、再度、保護部材10の中に戻すことも可能である。このように保護部材10の一部がフィルム包装袋20内に一部収容されたままの状態で、微生物培養シート30を容易に出し入れできるため、不用意にフィルム包装袋20を滅失したり、スリーブ状の保護部材10から微生物培養シート30が散逸することを防止できる。
【0076】
図13は、使い残した微生物培養シート30を収容した保護部材10をフィルム包装袋20内に戻して、フィルム包装袋20を再封止した状態を示している。包装体1は再封止部223を備えるため、このように、最初の開口時に使いきらなかった微生物培養シート30を遮光性を保った状態で再保存することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
図3に示す形状の紙製シートを、
図2に示す形状に折り曲げてなる四面体のスリーブを保護部材とし、微生物培養シート25枚を、その保護部材内に、
図2に示す態様において配置し、更にその保護部材を、
図1、
図6に示す態様において、フィルム包装袋内に配置した包装体を実施例1の包装体とした。包装体の各構成部材の詳細は下記の通りとした。
紙製シート:材料紙として「JETエース」(三菱製紙社製)を用い、
図3におけるXの長さを74mm、同Yの長さを276mm、
図6におけるh1の長さを28mmとなるように形成した。
微生物培養シート:(大日本印刷(株)社製)
フィルム包装袋:厚さ9mmのアルミ製のガセット袋(大日本印刷(株)社製)
【0079】
[実施例2]
保護部材について、
図5に示すように更に保護片部を備えたこと以外は実施例1と全く同じ条件で作成した包装体を実施例2とした。保護片部の高さhは9mmとした。
【0080】
実施例1及び2の包装体を下記の通りに梱包し、梱包した状態で下記の通り、輸送試験を行い、更に輸送試験後の各実施例について、下記の通り落下試験を行った。そして、各包装体の損傷等の発生の有無を確認した。
梱包形態:実施例1及び2の包装体各16袋、計32袋を段ボール箱に梱包。
輸送試験:上記梱包状態のまま、1200キロの距離を貨物トラックにて冷蔵(10℃以下)輸送。
落下試験:JIS Z 0202による包装貨物落下試験を上記輸送試験後に実施。
落下方法:人手にて落下(落下面:コンクリート)
落下高さ:60cm(流通条件:レベル2、総重量:10kg未満)
落下順序・回数:下記表1に記載の通り
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1の包装体については、ほぼ全ての包装体において、フィルム包装袋の側面に微生物培養シートの角部の衝突による傷が確認された。但し、包装袋を貫通する微細な孔や、そのような貫通につながる恐れのあるような深い傷は皆無であり、微生物培養シート自体の損傷や変形は発生しておらず、製品保護の観点からは、実用上問題のない範囲の傷であった。但し、微細な傷の多発によるフィルム包装袋の外観の不良については、改善の余地があった。
【0083】
実施例2の包装体については、ごく一部の包装体において、極微細な傷や折れが確認されたものの、ほとんどの包装体において目視できる傷は確認されなかった。
【0084】
以上より、本発明の包装体は、いずれも、簡易な構造によって、可撓性を有するフィルム状の収容物を外圧から保護できるものであることが分かる。又、実施例2のように保護片部を更に備えさせることにより、収容物の角部との接触による包装袋の微細な傷の発生をも抑制可能となり、保護性能における信頼性と外観の美観において、更に、好ましい包装体とすることができることが分かる。