特許第6047881号(P6047881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6047881非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047881
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20161212BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20161212BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01M10/0525
   H01M10/0567
   H01M4/587
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-6537(P2012-6537)
(22)【出願日】2012年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-145724(P2013-145724A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 明彦
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−222193(JP,A)
【文献】 特開2005−340144(JP,A)
【文献】 特開2006−147288(JP,A)
【文献】 特開2007−035354(JP,A)
【文献】 特開2010−135190(JP,A)
【文献】 特開2005−285491(JP,A)
【文献】 特開2010−198832(JP,A)
【文献】 特開2011−238540(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/067549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00〜10/0587
H01M 4/36〜 4/62
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵及び放出する物質を含む正極及び負極活物質として難黒鉛化性炭素を含む負極と、溶媒及び電解質塩を含む非水電解液とを有する非水電解質二次電池であって、
前記非水電解液は、
下記の化学式(1)で表される第1の添加剤であるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートと、
下記の化学式(2)で表される第2の添加剤であるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートとを含み、
前記第1の添加剤の添加量は、前記非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、前記第2の添加剤の添加量は、前記第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である
非水電解質二次電池。
【化1】
【化2】
【請求項2】
リチウムイオンを吸蔵及び放出する物質を含む正極及び負極活物質として難黒鉛化性炭素を含む負極と、溶媒及び電解質塩を含む非水電解液とを有する非水電解質二次電池の製造方法であって、
下記の化学式(3)で表される第1の添加剤であるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートと下記の化学式(4)で表される第2の添加剤であるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートとが添加された非水電解液を前記非水電解質二次電池に注入する電解液注入工程と、
前記電解液注入工程において非水電解液が注入された前記非水電解質二次電池に対して、封止前に1回以上の予備充電を行う予備充電工程とを含み、
前記電解液注入工程では、前記非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下の前記第1の添加剤と、前記第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下の前記第2の添加剤とが添加された非水電解液を注入する
非水電解質二次電池の製造方法。
【化3】
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極及び負極と非水電解液とを有する非水電解質二次電池、非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境問題への取り組みとして、ガソリン自動車から電気自動車への転換が重要になってきている。このため、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池を電気自動車の電源として使用することが検討されている。ここで、非水電解質二次電池を効率良く使用するには、高温保存特性などの電池性能を向上させることが重要である。
【0003】
このため、従来、イオン性金属錯体を添加した非水電解液を使用する非水電解質二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この非水電解質二次電池では、特許文献1に開示された一般式で示されるイオン性金属錯体を添加して調製した非水電解液を使用することで、高温保存特性などの電池性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−285491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の非水電解質二次電池に使用されるイオン性金属錯体は、多くの種類の化合物を一般化した一般式で示されている。このため、従来の非水電解質二次電池では、当該一般式が示すいずれの化合物を使用するのが電池性能を効果的に向上させることができるのかが明確ではなく、使用する化合物の量についても明確ではない。
【0006】
したがって、従来の非水電解液を使用する非水電解質二次電池では、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させるために使用する化合物の種類及び量が明確ではなく、電池性能を効果的に向上させることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる非水電解質二次電池、非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する物質を含む正極及び負極活物質として難黒鉛化性炭素を含む負極と、溶媒及び電解質塩を含む非水電解液とを有する非水電解質二次電池であって、前記非水電解液は、下記の化学式(1)で表される第1の添加剤であるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートと、下記の化学式(2)で表される第2の添加剤であるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートとを含み、前記第1の添加剤の添加量は、前記非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、前記第2の添加剤の添加量は、前記第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
これによれば、非水電解液は、化学式(1)で表される第1の添加剤と、化学式(2)で表される第2の添加剤とを含み、第1の添加剤の添加量は、非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、第2の添加剤の添加量は、第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である。ここで、本願発明者らは、鋭意研究と検討の結果、上記の第1の添加剤と第2の添加剤とを、上記の所定の量、非水電解液に添加することで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができることを見出した。このため、非水電解質二次電池は、上記の第1の添加剤と第2の添加剤とを、上記の所定の量、非水電解液に添加することで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池の製造方法は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する物質を含む正極及び負極活物質として難黒鉛化性炭素を含む負極と、溶媒及び電解質塩を含む非水電解液とを有する非水電解質二次電池の製造方法であって、下記の化学式(3)で表される第1の添加剤であるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートと下記の化学式(4)で表される第2の添加剤であるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートとが添加された非水電解液を前記非水電解質二次電池に注入する電解液注入工程と、前記電解液注入工程において非水電解液が注入された前記非水電解質二次電池に対して、封止前に1回以上の予備充電を行う予備充電工程とを含み、前記電解液注入工程では、前記非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下の前記第1の添加剤と、前記第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下の前記第2の添加剤とが添加された非水電解液を注入する。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
これによれば、非水電解質二次電池の製造方法は、第1の添加剤及び第2の添加剤が添加された非水電解液を有する非水電解質二次電池に対して、封止前に1回以上の予備充電を行う予備充電工程を含む。ここで、本願発明者らは、第1の添加剤及び第2の添加剤を非水電解液に添加した状態で、非水電解液の注入孔を封止する前に1回以上の予備充電を行うことにより、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができることを見出した。このため、当該非水電解質二次電池の製造方法によれば、封止前に1回以上の予備充電を行うことで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる非水電解質二次電池を製造することができる。
【0016】
なお、本発明は、このような非水電解質二次電池または非水電解質二次電池の製造方法として実現することができるだけでなく、当該第1の添加剤及び第2の添加剤が添加された非水電解液としても実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る非水電解質二次電池によれば、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池の外観斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量を変化させた場合の非水電解質二次電池の容量保持率を示す図である。
図4】第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量を変化させた場合の非水電解質二次電池の直流抵抗を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池及びその製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0020】
まず、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池の構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1の外観斜視図である。なお、同図は、電池ケース内部を透視した図となっている。
【0022】
非水電解質二次電池1は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池である。同図に示すように、非水電解質二次電池1は、発電要素2と、電池ケース3と、正極端子4と、負極端子5と、非水電解液6とを有している。
【0023】
発電要素2は、詳細な図示は省略するが、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。つまり、発電要素2は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する物質を含む正極板と負極板とがセパレータを介して渦巻状に捲回された電極群であり、電池ケース3内に収納されている。
【0024】
セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートであり、セパレータには、有機溶媒と電解質塩とを含む非水電解液6が含浸されている。正極板及び負極板は、例えば、金属製の集電体の表面に、活物質、結着剤、導電助剤などの粉末と有機溶剤とを混合した合剤ペーストを塗布し、乾燥し、ロールプレスなどでプレスして、合剤層の厚みを調整することにより形成される。
【0025】
なお、図1では、電極群の形状としては長円形状を示したが、円形状でもよい。また、電極群の形状は捲回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。
【0026】
ここで、本発明に係る非水電解質二次電池1に用いられる正極板、負極板及びセパレータなどは、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。
【0027】
非水電解質二次電池1に用いる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、LiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiCo(1−y)、LiNiMnCo(1−y−z)、LiNiMn(2−y)など)、あるいは、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOFなど)から選択することができる。また、これらの化合物中の元素又はポリアニオンは一部他の元素又はアニオン種で置換されていてもよく、表面にZrO、MgO、Alなどの金属酸化物や炭素を被覆されていてもよい。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料などの導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また、非水電解質二次電池1に用いる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金などのリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボンなど)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12など)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。この中でも、特に黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素が好ましい。
【0029】
上記正極活物質及び負極活物質を、それぞれバインダーや導電助剤などと混合し、上記集電体の表面に塗布してプレス及び乾燥することで、正極と負極とが形成される。
【0030】
上記集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などを用いることができる。さらに、これらの材質からなる集電体表面を、接着性、導電性、耐還元性の目的で、多糖類高分子ポリマーであるキトサン、キチンなどを架橋剤で架橋したもの、カーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理してもよい。
【0031】
上記正極活物質及び負極活物質と混合する導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバーなどの導電性粉末材料が好ましく用いられる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末などが好ましい。導電材は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。正極合材及び負極合材に含まれる導電材の量は、正極活物質及び負極活物質の種類や量に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
また、導電材を使用する代わりに、あるいは導電材の使用と併せて、上記正極活物質の粒子表面に導電性を高める処理を施したものを用いてもよい。
【0033】
上記結着剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリビニルピロリドン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
また、非水電解質二次電池1に用いるセパレータとしては、有機溶剤に不溶な織布、不織布、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂微多孔膜が用いられ、材料、重量平均分子量や空孔率の異なる複数の微多孔膜が積層してなるものや、これらの微多孔膜に各種の可塑剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤を適量含有しているものや片面及び両面にシリカなどの無機酸化物を塗布したものであってもよい。特に、合成樹脂微多孔膜を好適に用いることができる。中でもポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、アラミドやポリイミドと複合化させたポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、または、これらを複合した微多孔膜などのポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗などの面で好適に用いられる。
【0035】
さらに、高分子固体電解質などの固体電解質を用いることで、セパレータを兼ねさせることもできる。さらに、合成樹脂微多孔膜と高分子固体電解質などを組み合わせて使用してもよい。この場合、高分子固体電解質として有孔性高分子固体電解質膜を用い、高分子固体電解質にさらに電解液を含有させることで良い。ただしこの場合、電池出力が低下する原因となるので、高分子固体電解質を最小限の量にとどめるほうが好ましい。
【0036】
正極端子4は、電池ケース3の上部に配設され、正極リードを介して正極板と接続されている。
【0037】
負極端子5は、電池ケース3の上部に配設され、負極リードを介して負極板と接続されている。
【0038】
また、電池ケース3の上部には、電解液注入孔31が配設されている。
【0039】
なお、正極端子4、負極端子5、電池ケース3、及び、正極端子4及び負極端子5と発電要素2とを繋ぐ集電体などについても、従来用いられてきたものをそのまま用いることができる。
【0040】
非水電解液6としては、電解質二次電池としての性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。非水電解液6の有機溶媒には、特に制限はなく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、ジオキソラン、フルオロエチルメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールジプロピオネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、アセトニトリル、フルオロアセトニトリル、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンなどのアルコキシ及びハロゲン置換環状ホスファゼン類または鎖状ホスファゼン類、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、リン酸トリオクチルなどのリン酸エステル類、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチルなどのホウ酸エステル類、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノンなどの非水溶媒が挙げられる。また、固体電解質を用いる場合は、高分子固体電解質として有孔性高分子固体電解質膜を用い、高分子固体電解質にさらに電解液を含有させることで良い。また、ゲル状の高分子固体電解質を用いる場合には、ゲルを構成する電解液と、細孔中などに含有されている電解液とは異なっていてもよい。ただし、HEV用途のように高い出力が要求される場合は、固体電解質や高分子固体電解質を用いるよりも電解質として非水電解液を単独で用いるほうがより好ましい。
【0041】
また、非水電解液6の電解質塩としては、特に制限はなく、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li210Cl10、NaClO4、NaI、NaSCN、NaBr、KClO4、KSCNなどのイオン性化合物及びそれらの2種類以上の混合物などが挙げられる。
【0042】
非水電解質二次電池1においては、これらの有機溶媒と電解質塩とを組み合わせて、電解液として使用する。なお、これらの電解液の中では、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートを混合して使用すると、リチウムイオンの伝導度が極大となるために好ましい。
【0043】
ここで、非水電解液6には、電極での皮膜形成によるリチウムイオンの透過促進を目的として、第1の添加剤と第2の添加剤とが含まれている。
【0044】
第1の添加剤は、下記の化学式(5)で表されるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiPF(Ox))である。
【0045】
【化5】
【0046】
また、第2の添加剤は、下記の化学式(6)で表されるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiPF(Ox))である。
【0047】
【化6】
【0048】
ここで、第1の添加剤の添加量は、非水電解液6の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、第2の添加剤の添加量は、第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である。
【0049】
さらに、非水電解液6には、第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量が上述の関係を満たしていれば、第3の添加剤が添加されていてもよい。第3の添加剤としては、例えば、ジフルオロリン酸リチウム、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどのカーボネート類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ジアリルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、アリルビニルスルフィド、アリルエチルスルフィド、プロピルスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルエチルジスルフィド、アリルプロピルジスルフィド、アリルフェニルジスルフィドなどのスルフィド類、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロぺンスルトン、1,4−ブテンスルトンなどの環状スルホン酸エステル類、メチルジスルホン酸メチル、メチルジスルホン酸エチル、メチルジスルホン酸プロピル、エチルジスルホン酸エチル、エチルジスルホン酸プロピルなどの環状ジスルホン酸エステル類、ビス(ビニルスルホニル)メタン、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル.ベンゼンスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸フェニル、エタンスルホン酸フェニル、プロパンスルホン酸フェニル、ベンジルスルホン酸メチル、ベンジルスルホン酸エチル、ベンジルスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸ベンジル、エタンスルホン酸ベンジル、プロパンスルホン酸ベンジルなどの鎖状スルホン酸エステル類、ジメチルサルファイト、ジエチルサルファイト、エチルメチルサルファイト、メチルプロピルサルファイト、エチルプロピルサルファイト、ジフェニルサルファイト、メチルフェニルサルファイト、エチルメチルサルファイト、ビニルエチレンサルファイト、ジビニルエチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ビニルプロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ビニルブチレンサルファイト、ビニレンサルファイト、フェニルエチレンサルファイトなどの亜硫酸エステル類、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジイソプロピル、硫酸ジブチル、エチレングリコール硫酸エステル、プロピレングリコール硫酸エステル、ブチレングリコール硫酸エステル、ペンテングリコール硫酸エステルなどの硫酸エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、2−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、ジフェニルエーテル、tert−ブチルベンゼン、オルトターフェニル、メタターフェニル、ナフタレン、フルオロナフタレン、クメン、フルオロベンゼン、2,4−ジフルオロアニソールなどの芳香族化合物、パーフルオロオクタンなどのハロゲン置換アルカン、ホウ酸トリストリメチルシリル、硫酸ビストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリルなどのシリルエステル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
なお、第3の添加剤は、上記に例示される化合物を単独もしくは2種以上併用してもよい。
【0051】
次に、非水電解質二次電池1の製造方法について説明する。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、同図に示されたフローチャートは、非水電解質二次電池1の製造工程のうち、添加剤を添加する工程から電解液注入孔31を封止する工程までを説明するものである。以下では、添加剤を添加する工程より前の工程、及び、電解液注入孔31を封止する工程より後の工程は、特に従来用いられてきた工程と異なるところはなく通常用いられている工程と同様なので、その説明を省略する。
【0053】
同図に示すように、まず、添加剤の添加工程として、非水電解液6に、上記の化学式(5)で表される第1の添加剤であるリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートと上記の化学式(6)で表される第2の添加剤であるリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートとを添加する(S102)。
【0054】
具体的には、非水電解液6の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下の第1の添加剤と、当該第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下の第2の添加剤とを添加する。なお、当該非水電解液6には、上記の第3の添加剤が添加されてもよい。
【0055】
そして、電解液注入工程として、添加剤が添加された非水電解液6を、電解液注入孔31から非水電解質二次電池1に注入する(S104)。
【0056】
なお、非水電解質二次電池1に非水電解液6を注入してから、当該非水電解液6に第1の添加剤及び第2の添加剤を添加してもよい。この場合、第1の添加剤と第2の添加剤とを添加する順序は限定されず、2つの添加剤を同時に添加してもよいし、いずれかの添加剤から順番に添加してもよい。
【0057】
次に、予備充電工程として、第1の添加剤及び第2の添加剤が添加された非水電解液6を有する非水電解質二次電池1に対して、1回以上の予備充電を行う(S106)。
【0058】
このとき、発電要素2内に浸透した非水電解液6に含まれる第1の添加剤及び第2の添加剤により、電極に皮膜が形成され、皮膜形成時に発生するガスは、未だ封止されていない電解液注入孔31を経由して、電池外部へ排出される。
【0059】
最後に、電解液注入孔31を封止する(S108)。つまり、電解液注入孔31を閉止して、電池ケース3を密閉状態にする。
【0060】
以上のように、第1の添加剤及び第2の添加剤を添加して予備充電を行うことにより、第1の添加剤と第2の添加剤との混合被膜の機能が向上し、充放電サイクルに対する容量保持率が向上するとともに、直流抵抗が減少する。
【0061】
以下、これらの第1の添加剤及び第2の添加剤を添加することによる効果について、詳細に説明する。
【実施例】
【0062】
非水電解質二次電池1及びその製造方法についての実施例について説明する。なお、以下の実施例1〜15は、いずれも、上述した実施の形態に係る非水電解質二次電池1及びその製造方法に関するものである。また、以下で説明する実施例1〜15及び比較例1〜37では、非水電解液6に添加する添加剤の種類及び添加量以外は、全て同じ条件下で行ったものである。
【0063】
具体的には、以下のようにして、実施例1における非水電解質二次電池の作製を行った。
【0064】
(1)正極板の作製
結着剤であるポリフッ化ビニリデン5質量%と、導電剤であるアセチレンブラック5質量%と、正極活物質としてLiNi0.17Co0.66Mn0.17を90質量%とを混合したものに、N−メチル−2−ピロリドンを加えてペースト状に調製した後、これを、厚さが20μmのアルミニウム箔製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥することによって正極板を作製し、正極リードを備え付けた。
【0065】
(2)負極板の作製
負極活物質として島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200を用いてレーザ回折法により測定したd50が9μmの難黒鉛化性炭素を92質量%と、結着剤のポリフッ化ビニリデン8質量%とを、N−メチル−2−ピロリドンに加えてペースト状に調製した後、これを、厚さが10μmの銅箔製の負極集電体の両面に塗布し、乾燥することによって負極板を製作し、負極リードを備え付けた。
【0066】
(3)電池の作製
セパレータとしては、ポリエチレン微多孔膜を用いた。また、非水電解質としては、以下の方法で調製した非水電解液を用いた。つまり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(体積比)の混合溶媒に、LiPFを調製後に1mol/Lとなるように溶解し、さらに、非水電解液の総質量に対して、化学式(5)で表わされる第1の添加剤を0.30質量%と、化学式(6)で表わされる第2の添加剤を0.02質量%とを添加して非水電解液を調製した。
【0067】
以上により、これらの材料を用いて、図2に示す順に従って、公称容量が450mAhの実施例1の非水電解質二次電池を作製した。
【0068】
また、以下のようにして、比較例1における非水電解質二次電池の作製を行った。
【0069】
非水電解液として、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(体積比)の混合溶媒に、LiPFを調製後に1mol/Lとなるように溶解したものを適用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1における非水電解質二次電池を作製した。
【0070】
また、以下のようにして、実施例2〜15、比較例2〜19における非水電解質二次電池の作製を行った。
【0071】
非水電解液として、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(体積比)の混合溶媒に、LiPFを調製後に1mol/Lとなるように溶解し、さらに、非水電解液の総質量に対して、化学式(5)で表わされる第1の添加剤及び化学式(6)で表わされる第2の添加剤を、表1に示す濃度で添加したものを適用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜15、比較例2〜19における非水電解質二次電池を作製した。
【0072】
また、以下のようにして、比較例20〜37における非水電解質二次電池の作製を行った。
【0073】
非水電解液として、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(体積比)の混合溶媒に、LiPFを調製後に1mol/Lとなるように溶解し、さらに、非水電解液の総質量に対して、化学式(5)で表わされる第1の添加剤、化学式(6)で表わされる第2の添加剤、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiBF(Ox))、及び、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(Ox))からなる群から選ばれる2種類の添加剤を、表2に示す濃度で添加したものを適用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例20〜37における非水電解質二次電池を作製した。
【0074】
(4)評価試験
次に、以下のようにして、評価試験(高温保存後の電池性能試験)を行った。
【0075】
実施例1〜15及び比較例1〜37の各電池を用いて、以下の方法により初期放電容量確認試験を行った。各電池を、25℃において450mA定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で、合計3時間充電した後、450mA定電流で終止電圧2.5Vの条件で放電を行うことにより初期放電容量を測定した。
【0076】
初期放電容量測定後の各電池について、60℃での放置試験を以下の方法により行った。450mA定電流で4.03Vまで、さらに4.03V定電圧で、合計3時間充電して電池のSOC(State Of Charge)を80%に設定し、60℃の恒温槽中において30日間(1ヶ月間)保管した。25℃に冷却した後、各電池を、450mA定電流、終止電圧2.5Vの条件で放電した後、上記初期放電容量確認試験と同様の条件で充放電を行った。この60℃での保存試験を6ヶ月間繰り返した。ここで、「SOCを80%に」とは、電池の容量に対して、充電電気量が80%であることを表す。
【0077】
そして、60℃での保存試験を6ヶ月間繰り返した後に、各電池について初期に実施した放電容量の測定と同じ条件で保存後の放電容量を測定した。これにより得られた保存後の放電容量の初期に対する比率を保存後容量保持率とした。
【0078】
次に、以下の方法により保存後直流抵抗の測定を行った。各電池を、25℃において450mA定電流で3.73Vまで、さらに3.73V定電圧で、合計3時間充電することにより電池のSOCを50%に設定し、−20℃で5時間保持した後、90mA(I1)で10秒間放電したときの電圧(E1)、225mA(I2)で10秒間放電したときの電圧(E2)をそれぞれ測定した。
【0079】
上記の測定値を用いて、−20℃における直流抵抗値Rxを、Rx=|(E1−E2)/放電電流(I1−I2)|により算出した。
【0080】
以上のようにして算出した容量保持率及び直流抵抗の値を、以下の表1に示す。
【0081】
つまり、以下の表1では、実施例1〜15及び比較例1〜19について、第1の添加剤(LiPF(Ox))と第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量を変化させた場合の非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を比較している。
【0082】
【表1】
【0083】
ここで、実施例1〜4は、第1の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、実施例1は、第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、実施例2は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.17倍であり、実施例3は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.23倍であり、実施例4は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0084】
また、実施例5〜7は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、実施例5は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、実施例6は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.17倍であり、実施例7は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0085】
また、実施例8〜11は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.9重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、実施例8は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、実施例9は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.11倍であり、実施例10は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.22倍であり、実施例11は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0086】
また、実施例12〜15は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、実施例12は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、実施例13は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.10倍であり、実施例14は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.20倍であり、実施例15は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0087】
また、比較例1は、第1の添加剤及び第2の添加剤を添加しない場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0088】
また、比較例2〜4は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.2重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例2は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例3は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、比較例4は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0089】
また、比較例5〜7は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例5は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例6は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.03倍であり、比較例7は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.33倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0090】
また、比較例8〜10は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例8は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例9は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.03倍であり、比較例10は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.33倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0091】
また、比較例11〜13は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.9重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例11は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例12は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.03倍であり、比較例13は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.33倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0092】
また、比較例14〜16は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例14は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例15は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.04倍であり、比較例16は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.35倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0093】
また、比較例17〜19は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.1重量%である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。具体的には、比較例17は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0倍であり、比較例18は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍であり、比較例19は、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.30倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0094】
図3は、第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量を変化させた場合の非水電解質二次電池の容量保持率を示す図である。具体的には、同図は、非水電解質二次電池の容量保持率を比較するために、実施例1〜15及び比較例1〜19における容量保持率の値をグラフ化したものである。
【0095】
ここで、同図に示すグラフの横軸は、第1の添加剤(LiPF(Ox))の添加量に対する第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量の比率を示しており、縦軸は、容量保持率を示している。
【0096】
上記の表1と同図に示すように、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である場合に、容量保持率が顕著に高い値になっている。これにより、非水電解質二次電池の蓄電容量の低下抑制を図ることができる。
【0097】
図4は、第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量を変化させた場合の非水電解質二次電池の直流抵抗を示す図である。具体的には、同図は、非水電解質二次電池の直流抵抗を比較するために、実施例1〜15及び比較例1〜19における直流抵抗の値をグラフ化したものである。
【0098】
ここで、同図に示すグラフの横軸は、第1の添加剤(LiPF(Ox))の添加量に対する第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量の比率を示しており、縦軸は、直流抵抗を示している。
【0099】
上記の表1と同図に示すように、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、第2の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である場合に、直流抵抗が顕著に低い値になっている。これにより、非水電解質二次電池の高出力化を図ることができる。
【0100】
次に、以下の表2では、上記で説明した実施例1〜15及び以下に説明する比較例20〜37について、添加剤の種類を変更した場合の非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を比較している。
【0101】
【表2】
【0102】
ここで、比較例20、21、24、26、27、30、32、33、36は、第4の添加剤であるLiBF(Ox)を添加した場合の非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。つまり、第4の添加剤は、上記の第1または第2の添加剤の代替として添加されている。
【0103】
具体的には、比較例20は、第4の添加剤のみ非水電解液の総重量の0.3重量%添加した場合であり、比較例21は、第4の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%であり、第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が第4の添加剤の添加量の0.23倍であり、比較例24は、第1の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%であり、第4の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.23倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0104】
また、比較例26は、第4の添加剤のみ非水電解液の総重量の0.6重量%添加した場合であり、比較例27は、第4の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%であり、第2の添加剤の添加量が第4の添加剤の添加量の0.17倍であり、比較例30は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%であり、第4の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.17倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0105】
また、比較例32は、第4の添加剤のみ非水電解液の総重量の1.0重量%添加した場合であり、比較例33は、第4の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%であり、第2の添加剤の添加量が第4の添加剤の添加量の0.10倍であり、比較例36は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%であり、第4の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.10倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0106】
また、比較例22、23、25、28、29、31、34、35、37は、第5の添加剤であるLiB(Ox)を添加した場合の非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。つまり、第5の添加剤は、上記の第1または第2の添加剤の代替として添加されている。
【0107】
具体的には、比較例22は、第5の添加剤のみ非水電解液の総重量の0.3重量%添加した場合であり、比較例23は、第5の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%であり、第2の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が第5の添加剤の添加量の0.23倍であり、比較例25は、第1の添加剤(LiPF(Ox))の添加量が非水電解液の総重量の0.3重量%であり、第5の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.23倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0108】
また、比較例28は、第5の添加剤のみ非水電解液の総重量の0.6重量%添加した場合であり、比較例29は、第5の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%であり、第2の添加剤の添加量が第5の添加剤の添加量の0.17倍であり、比較例31は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の0.6重量%であり、第5の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.17倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0109】
また、比較例34は、第5の添加剤のみ非水電解液の総重量の1.0重量%添加した場合であり、比較例35は、第5の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%であり、第2の添加剤の添加量が第5の添加剤の添加量の0.10倍であり、比較例37は、第1の添加剤の添加量が非水電解液の総重量の1.0重量%であり、第5の添加剤の添加量が第1の添加剤の添加量の0.10倍である場合の、非水電解質二次電池の容量保持率及び直流抵抗の値を示している。
【0110】
なお、表2の実施例1〜15は、表1に示した実施例1〜15と同じデータである。
【0111】
そして、比較例20〜37においては、容量保持率が68〜83%であるのに対して、実施例1〜15においては、容量保持率が82〜91%と高い値を示している。つまり、実施例1〜15のように第1の添加剤及び第2の添加剤を添加する場合の方が、比較例20〜37のように第4の添加剤や第5の添加剤を添加する場合よりも、容量保持率が顕著に高い値になっている。これにより、非水電解質二次電池の蓄電容量の低下抑制を図ることができる。
【0112】
また、比較例20〜37においては、直流抵抗が528〜671mΩであるのに対して、実施例1〜15においては、直流抵抗が387〜498mΩと低い値を示している。つまり、実施例1〜15のように第1の添加剤及び第2の添加剤を添加する場合の方が、比較例20〜37のように第4の添加剤や第5の添加剤を添加する場合よりも、直流抵抗が顕著に低い値になっている。これにより、非水電解質二次電池の高出力化を図ることができる。
【0113】
このように、添加剤として第1の添加剤と第2の添加剤とを組み合わせたことで、容量保持率を向上させ、直流抵抗を低下させることができ、電池性能を向上させる顕著な効果を奏する。
【0114】
以上のように、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1によれば、非水電解液6は、化学式(5)で表される第1の添加剤と、化学式(6)で表される第2の添加剤とを含み、第1の添加剤の添加量は、非水電解液6の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下であり、かつ、第2の添加剤の添加量は、第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下である。ここで、本願発明者らは、鋭意研究と検討の結果、上記の第1の添加剤と第2の添加剤とを、上記の所定の量、非水電解液6に添加することで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができることを見出した。このため、非水電解質二次電池1は、上記の第1の添加剤と第2の添加剤とを、上記の所定の量、非水電解液6に添加することで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる。
【0115】
また、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1の製造方法によれば、非水電解液6に第1の添加剤及び第2の添加剤を添加する添加工程と、添加剤が添加された非水電解液6を非水電解質二次電池1に注入する電解液注入工程とを含み、添加工程では、非水電解液6の総重量の0.3重量%以上1.0重量%以下の第1の添加剤と、第1の添加剤の添加量の0.05倍以上0.3倍以下の第2の添加剤とを添加する。このように、非水電解質二次電池1の製造方法によれば、上記の第1の添加剤と第2の添加剤とを、上記の所定の量、非水電解液6に添加することで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる非水電解質二次電池を製造することができる。
【0116】
また、非水電解質二次電池1の製造方法は、第1の添加剤及び第2の添加剤が添加された非水電解液6を有する非水電解質二次電池1に対して、封止前に1回以上の予備充電を行う予備充電工程を含む。ここで、本願発明者らは、第1の添加剤及び第2の添加剤を非水電解液6に添加した状態で、電解液注入孔31を封止する前に1回以上の予備充電を行うことにより、第1の添加剤及び第2の添加剤を添加することで発生するガスを電池外部へ放出することができるため、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができることを見出した。このため、非水電解質二次電池1の製造方法によれば、封止前に1回以上の予備充電を行うことで、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができる非水電解質二次電池1を製造することができる。
【0117】
なお、本発明は、このような非水電解質二次電池1または非水電解質二次電池1の製造方法として実現することができるだけでなく、当該第1の添加剤及び第2の添加剤が添加された非水電解液6としても実現することができる。
【0118】
以上、本発明の実施の形態に係る非水電解質二次電池1及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されるものではない。
【0119】
つまり、今回開示された実施の形態及び実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、高温保存特性などの電池性能を効果的に向上させることができるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池などに適用できる。
【符号の説明】
【0121】
1 非水電解質二次電池
2 発電要素
3 電池ケース
4 正極端子
5 負極端子
6 非水電解液
31 電解液注入孔
図1
図2
図3
図4