特許第6047897号(P6047897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6047897芳香族ポリアミド多孔質膜及び二次電池用セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047897
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】芳香族ポリアミド多孔質膜及び二次電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20161212BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C08J9/26CFG
   H01M2/16 P
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-58397(P2012-58397)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-207221(P2012-207221A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-58789(P2011-58789)
(32)【優先日】2011年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西原 健太
(72)【発明者】
【氏名】大島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/087859(WO,A1)
【文献】 特開平11−250890(JP,A)
【文献】 特開2008−056905(JP,A)
【文献】 特開2001−043842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/26
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造を含む芳香族ポリアミドであって、該芳香族ポリアミド1kg当たりに存在するアミド基数が5.7〜6.1molであり、250℃における少なくとも一方向の熱収縮率が−1〜1%であり、TMA引張試験において少なくとも一方向の250℃での伸長率が0.5%以上である芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法であって、芳香族ポリアミドの重合原液に対し、重合後、中和時に発生する中和塩を除去することなく、当該重合原液に親水性ポリマーを1〜30質量%含有せしめた溶液を用いて製膜する芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法。
−NH−Ar−NH−CO−Ar−CO− ・・・(1)
ただし、Ar、Arはいずれも芳香族基を示す。
【請求項2】
式(1)において、ArとArの合計モル数に対し25モル%以上が下記式で示される構造を有する、請求項1に記載の芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法
【化1】
ただし、X、Yは、−O−、−CH−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−のいずれかの基。
【請求項3】
式(1)においてArの20モル%〜75モル%が4,4’−ジフェニルエーテル基である、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリアミド多孔質膜、及びそれを用いた二次電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池用セパレータとしてはポリエチレンやポリプロピレンといったオレフィン系高分子多孔質膜が主に用いられてきた。しかしながら、特にリチウムイオン電池においては熱暴走によって電池内外が高温に晒される危険性があり、オレフィン系高分子のように低融点のセパレータは溶融して短絡を招く場合がある。そこで、より高温でも寸法変化の少ない、耐熱性の高いセパレータの必要性が高まっている。これに加えて、耐電界液性、電解液濡れ性に優れる芳香族ポリアミド多孔質膜はセパレータとして好ましい物性を備えるものと考えられる。
【0003】
芳香族ポリアミド多孔質膜としては、特許文献1に網目状または不織布状のフィブリルを有するパラ配向芳香族ポリアミド多孔質膜が開示されている。また特許文献2にはパラ配向芳香族ポリアミドに金属酸化物微粒子を分散させたものをキャストし膜を得た後、金属酸化物微粒子を溶解除去することによって製造されたパラ配向芳香族ポリアミド多孔質膜が開示されている。しかし、上記の文献で開示されているパラ配向芳香族ポリアミド多孔質膜は靭性が低く、もろいフィルムが得られやすい傾向がある。更に特許文献2では孔径によっては製造時に用いた金属酸化物が残留するために好ましくない。
【0004】
また特許文献3及び特許文献4にはメタ配向全芳香族ポリアミドからなる多孔質膜が開示されている。しかしながら、メタ配向全芳香族ポリアミドからなる多孔質膜は孔径が大きくなりやすく、突き刺し強度が小さくなる場合があり、セパレータとして用いた際、充放電時に短絡する恐れがある。また孔径の不均一性のために伸度も低くなりがちである。更に特許文献4では実施例にて不織布が用いられているが、これは厚みムラが現れやすく、電解液の保持性も良好でない。
【0005】
また、上記の芳香族ポリアミドは水素結合に基づく分子間凝集力が大きいために貫通孔が形成しにくく、製膜原液中のポリマー濃度を低く抑えざるを得なかった。さらに、そうして得られた多孔質膜においても、孔径の表裏差が大きいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−208736号公報
【特許文献2】特開2001−098106号公報
【特許文献3】特開2005−209989号公報
【特許文献4】特開平5−335005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、孔径の表裏差が小さく、破断強度や突き刺し強度に優れた多孔質膜及びそれを用いた二次電池用セパレータを生産性よく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は以下の特徴を有する。
【0009】
(1)下記式(1)で示される構造を含む芳香族ポリアミドであって、該芳香族ポリアミド1kg当たりに存在するアミド基数が5.7〜6.1molであり、250℃における少なくとも一方向の熱収縮率が−1〜1%であり、TMA引張試験において少なくとも一方向の250℃での伸長率が0.5%以上である芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法であって、芳香族ポリアミドの重合原液に対し、重合後、中和時に発生する中和塩を除去することなく、当該重合原液に親水性ポリマーを1〜30質量%含有せしめた溶液を用いて製膜する芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法。
【0010】
−NH−Ar−NH−CO−Ar−CO− ・・・(1)
ただし、Ar、Arはいずれも芳香族基を示す。
【0012】
)式(1)において、ArとArの合計モル数に対し25モル%以上が下記式で示される構造を有する、上記(1)に記載の芳香族ポリアミド多孔質膜。
【0013】
【化1】
【0014】
ただし、X、Yは、−O−、−CH−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−のいずれかの基。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、芳香族ポリアミド多孔質膜は高耐熱性と高い突き刺し強度を有した多孔質膜を提供することが可能である。これをセパレータとして用いると、高温でも高い寸法安定性を有し、かつ荷重がかかった際にはそれに応じた変形が可能であることから、安全性に優れた電池を得ることができる。更に得られる多孔質膜の孔径は表裏差が殆どなく、出力特性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、芳香族ポリアミドとは下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドにおいて、ArおよびArのいずれもが芳香族基であるものをいう。本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、この芳香族ポリアミドを含んでいる。
【0020】
−NH−Ar−NH−CO−Ar−CO− ・・・(1)
また、本発明において用いる芳香族ポリアミドは、上記式(1)の芳香族ポリアミド1kg当たりに存在するアミド基数が3.8〜6.3molである。1kg当たりのアミド基数が3.8mol未満であると、水素結合に基づいた分子間凝集力が低下するため、破断強度やヤング率、突き刺し強度といった機械特性が低下し、またガラス転移点も低下するため耐熱性が悪化する傾向がある。また、6.3molを超えると分子間凝集力が高くなるために良好なガーレ透気度を有する多孔質膜を得られない場合があり、良好なガーレ透気度を得ようとするとポリマー濃度を低下させる必要があるなど生産性が低くなる。また孔径の表裏差が大きくなりやすい。孔径が制御しやすく、孔径にあまり表裏差がなく、機械特性に優れた多孔質膜を得る上で、好ましくは1kg当たりのアミド基数が4.0〜6.2molであり、より好ましくは4.8〜6.1molであり、更に好ましくは5.7〜6.1molである。上記の1kg当たりのアミド基数については、下記式で示される群より、式aで表される芳香族基を多くすることで、アミド基数は大きく、式b〜eで表される芳香族基を多くすることで、アミド基数は小さくすることができる。アミド基数の算出は、ポリマー合成反応が化学量論的に進行する場合は、その原料仕込み比率によって算出できる。また、成形体においては、NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定可能である。
【0021】
【化2】
【0022】
また、本発明において用いる芳香族ポリアミドは上記式(1)においてArとArの合計モル数に対し25モル%以上が下記式で示される構造を有していることが好ましい。
【0023】
【化3】
【0024】
ただし、X、Yは、−O−、−CH−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−のいずれかの基である。
【0025】
分子間凝集力が緩和されると共に、破断伸度に優れることから、ArとArの合計モル数に対し25モル%以上が下記式で示される構造を有していることがより好ましく、ArとArの合計モル数に対し25モル%以上が4,4’−ジフェニルエーテル基であることが更に好ましい。
【0026】
また、本発明において用いる芳香族ポリアミドは上記式(1)においてArの20モル%〜75モル%が4,4’−ジフェニルエーテル基であることが好ましい。20モル%未満であると、多孔質膜としたとき表裏の孔径差が大きく、変形に対し脆くなることがあり、75モル%を超えると、分子間凝集力が低すぎるために、多孔膜の生産性が著しく低下することがある。30モル%〜75モル%であるとより好ましく、40モル%〜70モル%が更に好ましい。
【0027】
ArおよびArには、上記列挙した各基を単一種選択することもできるし、それぞれにおいて、複数種を選択することもできる。また、上記列挙した各基の芳香環上の水素原子の一部が水素以外の置換基で置換されていてもよい。分子間凝集力を緩和することから、置換基はハロゲン基が好ましく、塩素基がより好ましい。
【0028】
また、本発明の芳香族ポリアミドは、ArとArに含まれるベンゼン環の50モル%以上が、ベンゼン環に対しパラ配向性となっていることが好ましい。50モル%未満では多孔質膜の破断強度が低くなり、生産工程での破れに繋がり、生産性が悪くなる場合がある。ベンゼン環に対するパラ配向性は60モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましい。
【0029】
次に芳香族ポリアミドの製造方法を以下に説明する。ただしこれに限定されるものではない。
【0030】
例えば酸クロライドとジアミンから芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中、低温溶液重合で合成する方法や、水系媒体を使用する界面重合等で合成する方法をとることができる。単量体として酸クロライドとジアミンを使用するとポリマー溶液中で塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。また、イソシアネートとカルボン酸との反応から芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で合成することができる。これらの重合法のうち、低温溶液重合法が重合度を高くしやすいので好ましい。
【0031】
上記非プロトン性有機溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、好ましくはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0032】
上記重合法によって得られるポリマーの固有粘度ηinh(ポリマー0.5gを98質量%硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5〜5.0(dl/g)であることが好ましい。0.5(dl/g)未満では製膜性に難があることや、多孔質膜の破断伸度・強度に劣る場合がある。また5.0(dl/g)より高いと、多孔質膜として成形することが困難になることがある。
【0033】
次に本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜の製造方法について以下説明するが、これに限定されるものではない。
【0034】
製膜原液中に親水性ポリマーを添加すると、孔形成を誘起しやすいため、親水性ポリマーを製膜原液に含有せしめておくことが好ましい。この場合、上記重合後に得られた重合原液にペレット状あるいは溶媒に溶解した状態で添加する方法、重合原液から芳香族ポリアミドポリマーを単離後、芳香族ポリアミドポリマーとともに非プロトン性有機極性溶媒に溶解する方法などが挙げられる。中でも、重合原液にペレット状あるいは溶媒に溶解した状態で添加する方法は生産性に優れるものの、重合原液中に含有される中和塩によってアミド結合間に作用する分子間凝集力が増大した結果、好ましい範囲のガーレ透気度を有する多孔質膜が得られない場合があった。しかし、上記した本発明に用いる芳香族ポリアミドであれば分子間凝集力が適度に緩和された結果として、中和塩を含有していてもガーレ透気度を好適な範囲とすることが可能となるため、重合原液に対し、重合時に発生する中和塩を除去することなく、ペレット状あるいは溶媒に溶解した状態で親水性ポリマーを添加する方法を用いることが好ましい。
【0035】
親水性ポリマーとは、0〜100℃において、水に対する溶解度が1質量%以上である高分子重合体であり、特に限定されないが、製膜速度や孔構造の観点からポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸およびポリビニル硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーが好ましい。高い製膜速度が可能であることから、ポリビニルピロリドンがより好ましい。
【0036】
親水性ポリマーの濃度は、空孔率とガーレ透気度を後述の好ましい範囲とするために、1〜30質量%であることが好ましい。親水性ポリマーの濃度が1質量%未満であると、得られる多孔質膜の表面孔径が大きく、ガーレ透気度が小さすぎることがある。親水性ポリマーの濃度が30質量%よりも大きい場合には、製膜原液の溶液粘度が高くなり、製膜性に課題が生じる傾向がある。製膜性が良く、かつ好適なガーレ透気度を得る上で、親水性ポリマーの製膜原液中の濃度は2〜20質量%がより好ましく、3〜15%が更に好ましい。
【0037】
以上のように調製された製膜原液中の芳香族ポリアミドの濃度は6〜40質量%であることが好ましい。薄く、安定した多孔質膜を効率良く得られることから、より好ましくは7〜25質量%である。また、芳香族ポリアミドの濃度が高い場合には破断伸度及び破断強度に優れ、濃度が低い場合には表面の平均孔径が大きくなる傾向があることから、更に好ましくは8〜20質量%である。
【0038】
製膜原液中の芳香族ポリアミドは複数の種類を含む芳香族ポリアミド共重合体やブレンド体であってもよい。
【0039】
製膜原液の溶液粘度は、B型粘度計によって測定される値が10〜50,000ポイズであることが好ましい。10ポイズより低いと流動性が高すぎて製膜性が低く、50,000ポイズより高いと流動性が低すぎて製膜が困難となることがある。好適なガーレ透気度や表面孔径が得られることから、100ポイズ〜10,000ポイズがより好ましく、200ポイズ〜8,000ポイズが更に好ましい。
【0040】
得られた製膜溶液を多孔質膜とするためには、いわゆる溶液製膜法によって行われる。溶液製膜法には乾湿式法、湿式法、析出法などがあり、どの方法で製膜しても差し支えないが、多孔質膜の内部構造が均一となることから析出法がより好ましい。
【0041】
析出法で多孔質膜を製造する場合、溶液をガラス板や、フィルム、ドラム、エンドレスベルト等の支持体上に流延することによって膜形状とした後、冷却あるいは加熱する方法や、水を吸収させる方法をとることにより、ポリマーの溶解度を低下させて析出させる。生産性の観点から水を吸収させる方法が好ましい。
【0042】
水を吸収させる方法では、霧状の水を付着させる方法、水中に導入する方法、調湿空気中に導入する方法、いずれの方法でも差し支えないが、水の吸収速度、量を細かく制御可能であることから、調湿空気中へ導入する方法が好適に用いられる。膜形状としたポリマー溶液を調湿空気中へ導入する場合、相対湿度で50〜100%に調湿された空気中にて、ポリマーを析出させることが好ましい。この時の温度は0〜80℃であるとガーレ透気度を後述のごとく制御できるため好適である。ガーレ透気度及び表面の平均孔径は、温度が高ければ大きくなり、温度が低ければ小さくなる傾向がある。
【0043】
調湿時間は、1〜20分であることが好ましい。1分未満では孔の形成が十分でなく、イオン透過性が低下することがあり、20分を超えると孔が大きくなりすぎて、フィルムが脆くなり実用に耐えられなくなることがある。
【0044】
ポリマー析出を終えた溶液は、次に湿式浴に導入され、脱溶媒が行われる。この時、支持体から剥離し湿式浴へ導入してもよいし、支持体と共に湿式浴へ導入した後、剥離を行っても構わない。浴組成は、芳香族ポリアミドに対する溶解度が低ければ特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることが、経済性、取扱いの容易さから好ましい。また、湿式浴中には無機塩が含まれていてもよく、湿式浴の温度は0〜80℃が好ましい。
【0045】
脱溶媒後、多孔質膜の熱処理が行われる。このときの温度は、高温時の寸法安定性が向上するため、より高温にて行われることが好ましいが、用いた親水性ポリマーの熱分解温度以下で行う必要があり、120〜350℃であることが好ましい。この際に、延伸が行われても構わない。更に、高温での熱処理によって破断伸度が低下する可能性があるため、180℃〜280℃がより好ましい。また、本発明の多孔質膜は熱処理温度を超えた温度での熱収縮率も十分低く保たれることから、200℃〜250℃が更に好ましい。
【0046】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、250℃における少なくとも一方向の熱収縮率が−1〜1%であることが好ましい。絶対値が1%を超えると、セパレータとして熱暴走時に短絡を防ぐことができない恐れがある。高い耐熱性を備えるために、250℃における熱収縮率が−0.8〜0.8%であることがより好ましく、−0.6〜0.6%であることが更に好ましい。
【0047】
上記範囲を達成するための方法として熱処理時の延伸倍率によって制御する方法が挙げられ、特に延伸倍率を0.5〜1.5倍とすることによって上記範囲を達成することが可能であり、また後述する伸長率の範囲も同時に達成可能であるため好ましい。
【0048】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、20mNの荷重をかけてTMA引っ張り試験を行った際に、250℃における少なくとも一方向の伸長率が0.5%以上であることが好ましい。伸長率が0.5%未満であると、異常発熱によって変形が生じた際に、負荷された応力によって破膜する可能性がある。高温での安全性を保持するために、伸長率は0.7%以上であることがより好ましく、1%以上であることが更に好ましい。なお、伸長率の上限は100%である。
【0049】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、上記の熱収縮率が−1〜1%であり、かつ伸長率が0.5%以上であることを同時に満たすことが好ましい。これは即ち、無荷重である場合には収縮せず、一定の荷重が掛かった状態では伸長する特性を備えることで、高温での安定性を著しく高めることが可能となる。
【0050】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜のガーレ透気度は、0.5〜1,000sec/100ccであることが好ましい。ガーレ透気度が0.5sec/100ccより小さいと、強度が著しく低下し、ガーレ透気度が1,000sec/100ccより大きい場合、通液の抵抗が大きすぎて現実的には使用が困難である。通液抵抗が低く、高い強度を備えるために、5〜500sec/100ccがより好ましく、10〜250sec/100ccが更に好ましい。
【0051】
ガーレ透気度を上記範囲に制御するには、相対湿度0〜50%、温度0〜80℃の条件下で製膜することによって可能である。
【0052】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、厚みが2〜100μmであることが好ましい。厚みが100μmを超える場合、電池としたときのイオン伝導度が低下し、厚みが2μm未満の場合、多孔質膜の強度が低いために破断する可能性がある。強度とイオン伝導度を兼ね揃えるために、厚みは4〜50μmがより好ましく、6〜30μmが更に好ましい。
【0053】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、電池を組んだ際に高いイオン伝導度を持つように、空孔率が40〜90%であることが好ましい。空孔率が40%未満では電池内部の抵抗が大きくなる場合があり、90%を超える場合、多孔質膜の強度が極端に低くなることがある。特に空孔率としては50〜85%であることがより好ましい。
【0054】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、少なくとも一方向の破断強度が15MPa以上であることが好ましい。15MPa未満であると、セパレータとして巻回時に破れが生じることがある。巻回時にかかる張力によって多孔質膜特性の変化が小さくなるよう、少なくとも一方の破断強度は25MPa以上がより好ましく、35MPa以上であることが更に好ましい。
【0055】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、少なくとも一方向の破断伸度が15%以上であることが好ましい。破断伸度が15%未満であると、セパレータとして用いた際に製造工程での破れが生じやすく、歩留まりが悪くなり、更には電池内部での短絡を招く場合がある。電池の安全性を確保するために少なくとも一方向の破断伸度は20%以上であることが好ましく、25%以上であることが更に好ましい。上限については特に規定しないが、現実的には300%である。
【0056】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、表裏のうち、少なくとも一方の面から測定した突き刺し強度が50N/mm以上であることが好ましい。50N/mm未満であると、電池を組んだ際に、デンドライトなどによって破膜・短絡する恐れがある。破膜しないように80N/mm以上であることがより好ましく、100N/mm以上であることが更に好ましい。
【0057】
上述した各範囲の破断強度、破断伸度、突き刺し強度は、製膜原液中のポリマー濃度や固有粘度の制御によって達成することができる。製膜原液中の芳香族ポリアミドの濃度が高いほど、また親水ポリマーの濃度が低いほど、破断強度、破断伸度、突き刺し強度の高い多孔質膜が得られやすい。また、芳香族ポリアミドの固有粘度が高いほど、破断強度、破断伸度、突き刺し強度の高い多孔質膜が得られやすい。
【0058】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は貫通孔を有しているため、その表面には表裏とも開孔部が観察される。本発明においては、この表面の開孔部の平均孔径は0.01〜3μmであることが好ましい。平均孔径が0.01μm未満では通液抵抗が大きすぎることがあり、また3μmより大きいとセパレータとして短絡する恐れがある。
【0059】
平均孔径を上述した範囲とするためには、製膜原液の溶液粘度あるいは固有粘度を制御することによって可能である。製膜原液の溶液粘度あるいは固有粘度を高くすると平均孔径が小さくなる傾向がある。
【0060】
なお、多孔質膜の孔径はその厚み方向において変化していてもよく、また厚み方向に沿って一様に増減していてもよい。後者の場合は、表面の開孔部の平均孔径が表裏で異なることとなるが、いずれの表面についてもその平均孔径が0.01〜3μmであることが好ましい。セパレータとして適切な特性を持つために、より好ましくは平均孔径の値は少なくとも一方の表面において、さらに好ましくはいずれの表面においても0.01〜2μmである。
【0061】
上記において、平均孔径の大きい方の表面を大孔径表面、平均孔径の小さい方の表面を小孔径表面としたとき、[(大孔径表面の平均孔径)/(小孔径表面の平均孔径)]の値が1〜5であることが好ましい。5より大きい場合は、孔径差が大きすぎるために、多孔質膜の破断伸度が低くなることがある。高い破断伸度の多孔質膜を得るために、[(大孔径表面の平均孔径)/(小孔径表面の平均孔径)]の値は1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。なお、[(大孔径表面の平均孔径)/(小孔径表面の平均孔径)]の値が1の場合は、表裏において開孔部の平均孔径の差が認められないことを意味する。
【0062】
上記範囲は、製膜原液中のポリマー濃度を制御することによって達成することができ、特にポリマー濃度は12質量%以下であると好ましい。また、製膜原液中に貧溶媒、特に水を混合させておくことによっても、[(大孔径表面の平均孔径)/(小孔径表面の平均孔径)]の値を小さくせしめることが可能である。
【0063】
本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜は、上記のように良好な耐熱性を有し、破断強度や突き刺し強度といった機械特性にも優れ、電解液に対しても安定であることから、二次電池用セパレータとして好適に用いられる。また、本発明の芳香族ポリアミド多孔質膜をセパレータとして用いた二次電池は、デンドライト析出などによる短絡を抑えることが可能で、また熱暴走によって高温に達したとしても高い安全性が保持された電池を組むことが可能である。従って、小型の電子機器を始め、EV、HEVといった電気自動車用蓄電池や、太陽電池・風力発電などにおけるエネルギー平準化用の蓄電池としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明の詳細を記すが、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。本発明における測定・評価は以下の方法に従って行った。
【0065】
(1)ガーレ透気度
測定はJIS−P8117(1998年)に規定された方法に則った。試料の多孔質膜を直径28.6cm、面積645mmの円孔に締め付け、内筒により(内筒質量567g)、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させた際に、空気100ccが通過する時間を測定し、ガーレ値とした。測定装置として、B型ガーレデンソメーター(安田精機製作所製)を使用した。
【0066】
(2)破断伸度及び破断強度
JIS−K7127(1999年)に規定された方法に従って測定を行った。ロボットテンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて25℃、相対湿度65%において測定した。フィルムの幅方向が長辺となるように幅10mm、長さ100mmに切り出したものを試料片とし、引っ張り速度は300mm/分とした。測定回数は5回とし、平均値を算出した。
【0067】
破断伸度=(伸び)×100/(試長)(%)
破断強度=(最高応力)/(厚さ×試幅) (kg/mm
(3)平均孔径および孔径比
電界放射型走査型顕微鏡(UHR−FE−SEM)によって、多孔質膜の幅方向中心部分の表面を観察した。加速電圧3kV、倍率10,000倍の条件で観察を行った。開孔部の長径と短径を測定し、平均したものを一つの開孔部の孔径とした。5cm間隔で5ヶ所とり、1カ所につき10個の開孔部の孔径を測定し、その平均値を算出した。また、この操作を大孔径表面、小孔径表面のそれぞれにおいて行ない、[(大孔径表面の平均孔径)/(小孔径表面の平均孔径)]から孔径比を算出した。
【0068】
(4)熱収縮率
フィルムの幅方向が長辺となるように、幅10mm、長さ150mmの短冊状として切り出したものを試料とした。切り出した試料の長手方向に対して、両端から10mmの位置にペンで印をつけて、印の間隔を測定した。その後、試料に対して実質的に荷重が掛からない状態で、250℃の熱風オーブン中にて10分間熱処理を行い、十分に空冷した後に再び印の間隔を測定した。測定した値から下記式に従って計算し、同様の操作5回の平均値を取ることで熱収縮率を求めた。
【0069】
熱収縮率(%)=((熱処理前の間隔−熱処理後の間隔)/熱処理前の間隔)×100
(5)伸長率
セイコーインスツルメンツ(株)製の熱・応用・歪み測定装置TMA/SS6000を用いて以下の条件で測定し、250℃での伸長率を求めた。
【0070】
試料サイズ:幅4mm、長さ20mm(フィルムの幅方向が長辺)
昇温範囲:25〜300℃
昇温速度:5℃/分
測定荷重:20mN
測定環境:温度25℃、相対湿度65%、大気中
伸長率は、温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL、温度250℃におけるフィルム長さをLとし、以下の式で求めた。
【0071】
伸長率(%)=((L−L)/L)×100
(6)突き刺し強度
試料として多孔質膜を6cm×6cmにサンプリングしたものを使用した。中央に直径3cmの穴のあいた治具を多孔質膜に取り付け、治具の穴部には多孔質膜のみが固定されている状態とし、穴のちょうど中央部の多孔質膜に、面に対し垂直な方向から針を突き刺して試験を行った。針先端の曲率半径1.5mm、速度0.3m/minの条件とし、測定回数は3回とした。破膜時にかかった最大荷重を多孔質膜の膜厚で除すことで、突き刺し強度(N/mm)を求めた(3回の平均値)。
【0072】
参考例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロ−パラフェニレンジアミンを75モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを25モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が10質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0073】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー8質量%、NMP84質量%、ポリビニルピロリドン8質量%となるように調製した。これをダイコーターで厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み約50μmの膜状に塗布し、温度35℃、相対湿度70%RHの調湿空気中で10分間処理した。調湿空気は風速1.5m/分で膜表面に吹き付けた。次に、失透した多孔質層を剥離後、25℃の水浴に10分間導入し、溶媒の抽出を行った。続いて、オーブン中で230℃にて1分間の熱処理を行い、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。
【0074】
得られたそれぞれの膜の物性について表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった
【0075】
参考例2)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロ−パラフェニレンジアミンを75モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを25モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が10質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0076】
この溶液を水中にドープすることでポリマーを単離した後、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドン及びポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)と混合し、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。それぞれの添加量は、ポリマー8質量%、NMP84質量%、ポリビニルピロリドン8質量%となるように調製した。
【0077】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0078】
(実施例3)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを60モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを40モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が14質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0079】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー10質量%、NMP87質量%、ポリビニルピロリドン3質量%となるように調製した。
【0080】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0081】
(実施例4)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを50モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が14質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0082】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー10質量%、NMP86質量%、ポリビニルピロリドン4質量%となるように調製した。
【0083】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0084】
(実施例5)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを30モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを70モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が14質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0085】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー10質量%、NMP86質量%、ポリビニルピロリドン4質量%となるように調製した。
【0086】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0087】
参考例6)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを100モル%溶解させ、100モル%のイソフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が12質量%の全芳香族ポリアミドを得た。
【0088】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー8質量%、NMP84質量%、ポリビニルピロリドン8質量%となるように調製した。
【0089】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0090】
参考例7)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを80モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを20モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が10質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0091】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー8質量%、NMP84質量%、ポリビニルピロリドン8質量%となるように調製した。
【0092】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0093】
(実施例8)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを25モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを75モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が14質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0094】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー10質量%、NMP86質量%、ポリビニルピロリドン4質量%となるように調製した。
【0095】
以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0096】
参考例9)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロロパラフェニレンジアミンを20モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを80モル%とを溶解させ、100モル%の2−クロロテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が14質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0097】
この溶液を濾過した後、ポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)を加え、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。このときポリマーの単離を行わず、中和塩の除去は行わなかった。それぞれの添加量は、ポリマー10質量%、NMP86質量%、ポリビニルピロリドン4質量%となるように調製した。これをダイコーターで厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み約50μmの膜状に塗布し、温度35℃、相対湿度70%RHの調湿空気中で10分間処理した。調湿空気は風速1.5m/分で膜表面に吹き付けた。次に、失透した多孔質層の剥離を行ったが、多孔質層に自己支持性がなく、剥離できなかった。
【0098】
(比較例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに2−クロルパラフェニレンジアミンを85モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを15モル%溶解させ、100モル%の2−クロルテレフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が10質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0099】
以下、参考例1と同様に製膜を行い、物性を測定した結果を表1に示す。ガーレ透気度が2000秒を超えており、実質的に貫通孔を有した多孔膜が得られなかったため、評価を中止した。
【0100】
(比較例2)
比較例1と同様に重合を行い、得られた溶液を水中にドープすることでポリマーを単離した。
【0101】
以下、参考例2と同様に溶液を調製・製膜し、物性を測定した結果を表1に示す。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。実施例に比べて、孔径比率及び熱収縮率が大きかった。また、突き刺し強度も悪化していた。
【0102】
(比較例3)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンにビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを100モル%溶解させ、100モル%のイソフタル酸クロライドを添加し、3時間攪拌し重合を行い、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が10質量%の全芳香族ポリアミドを得た。
【0103】
この溶液を水中にドープすることでポリマーを単離した後、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドン及びポリビニルピロリドン(粘性特性値K90)と混合し、均一に完全相溶させることで製膜原液とした。以下、参考例1と同様に製膜し、測定した物性は表1に示した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムに面していない面が大孔径表面であった。
【0104】
実施例と比較して、破断強度及び突き刺し強度が低かった。また、熱収縮率については、熱処理後に著しいカールが見られたために測定困難であり、伸長率についても測定中に破断が生じた。
【0105】
【表1】