【文献】
DESIGNING WITH PLASTICS: A Practical Guide for Engineers High-temperature plastics- Can they really,DESIGN NEWS,03.07.05,p.29-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電気化学素子用セパレータとしてポリオレフィン多孔質フィルムが使用されている。電池を例にとると、高エネルギー密度、高起電力、自己放電の少ない非水電解液電池、特にリチウムイオン二次電池が開発、実用化されている。リチウムイオン二次電池の構成材料であるセパレータの役割は、正負両極の短絡を防止しつつ、非水電解液を保持することにある。現在以下のような種々のポリオレフィン多孔質フィルムが提案されている。
【0003】
ポリオレフィン多孔質フィルムの多孔化方法には大別して乾式法(延伸法)と湿式法(抽出法)とがある。湿式法は熱可塑性樹脂に充填剤や可塑剤を配合した樹脂組成物を押出してフィルムを製造し、その後フィルムから充填剤や可塑剤を抽出して多孔化して、多孔質フィルムを得る方法であるが、この方法では充填剤や可塑剤の配合や抽出を必要とし、微細で均一な孔径を有する多孔質フィルムにするためには操作工程が複雑化するだけでなく、抽出液の処理等の問題がある。これに対して乾式法は、熱可塑性樹脂を押出した後に延伸多孔化する方法で製造されるため、工程が簡素で抽出液処理を必要としない。
【0004】
前記方法により得られた多孔質フィルムを使用した電池用セパレータとして各種のものが提案されているが、近年では電気自動車や電力貯蔵用定置型電池に代表される大型のリチウムイオン二次電池用として、通常使用環境で高い物質透過性を有することはもちろんのこと、高温度環境下においてもメルトダウン及び短絡を起こさず、かつシャットダウン(SD)機能を持ち合わせたセパレータが求められている。
【0005】
特許文献1は、セルロース繊維を主成分とする紙にポリエチレン微粒子層を被着して形成した電池用セパレータが開示されている。該セパレータでは電池内部がポリエチレンの軟化温度以上となると、セルロース繊維を主成分とする紙は変化することがないものの、ポリエチレン微粒子層が軟化することでその空隙を閉塞し、電池内部の温度が上昇した場合でも、セパレータとしては破断することなく正極・負極間の絶縁状態を維持することが記載されている。
しかしながら、このセパレータにおいても、特許文献1の
図5に記載されているように、200℃におけるインピーダンスは、セパレータがシャットダウン直後のインピーダンスの1/3〜1/4程度まで低下しており、セパレータの温度環境が200℃の高温を維持された場合にはさらなるインピーダンスの低下が容易に推測される。特許文献1には、この低下を改善できる技術については何ら記載も示唆もない。
【0006】
特許文献2は混抄した抄紙シートからなる熱溶融しない微多孔層とポリオレフィン樹脂からなる熱溶融性の微多孔層とを重ねた積層構造のシートからなるセパレータが開示されている。該セパレータでは熱溶融しない微多孔層が分解せずに樹脂が溶解してシャットダウン機能を発現するため、正極と負極と間の内部短絡を防ぐことができることが記載されている。
しかしながら、特許文献2の
図2に記載のセパレータは、170℃を超えるとインピーダンスは急激に低下し、シャットダウン直後の抵抗の1/50〜1/20程度まで低下している。したがって、このセパレータでは高温状態が維持された際、十分な高抵抗維持効果の発現は期待できない。
また、前記特許文献1及び2は、微粒子の含有量及びMFRとの関係等については何ら記載されていない。
【0007】
特許文献3は混抄した抄紙シートからなる熱溶融しない微多孔層と200℃以下の融点を有する熱可塑性ポリマーの多孔質シート(ポリオレフィン製微多孔膜)層と複合化シートの作製方法が開示されている。 しかし、ポリオレフィン製微多孔膜がフレキシブル性に富む低融点材料であるため、加熱、圧着により、基材の多孔性が失われ、通気性が悪化することが多い。
【0008】
特許文献4は耐熱性繊維と熱溶融性樹脂材料からなるスラリーを乾燥することで作製される複合不織布が提示されているが、複合不織布の物性、SD機能はスラリー中の材料の分散性に大きく依存するため、安定的な性能を得るには困難を要する。
【0009】
特許文献5は熱溶融層としてポリエチレン樹脂組成物のMFRを明示したポリプロピレンとの積層シートが提示されている。その効果としては融点以上に加熱した際、流動性のよいポリエチレンを使用することで、速やかにシャットダウン効果を発揮することにある。しかしながら、高抵抗を維持することに関する課題解決については何ら記載や示唆はない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のセパレータは、前述のとおり、220℃以下に融点を有さない不織布と、融点が80〜150℃であるSD材料を含む熱溶融性の層を積層した材料である。
【0019】
不織布基材としては220℃以下に融点を有さない不織布であればよく、例えばセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、全芳香族ポリエステル、ガラス等から適宜選択して用いることができる。前記不織布基材は単独で用いることが簡便で好ましいが、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
不織布としては、目付質量が5g/m
2以上が好ましい。目付質量がこの範囲より外れると後加工や電池組立工程におけるハンドリングが難しくなるため、上記範囲が好適である。また、目付質量は、通常、30g/m
2以下が好適である。
本発明における不織布は、ウェブを構成する繊維として短繊維あるいは長繊維のいずれを用いてもよく、汎用的な製造方法にて形成される。
前記不織布の製造方法としては、例えば、カード機等を用いて合成樹脂等を解繊してシート状にするカーディングや、解繊した繊維を空気流によりシート状にするエアレイ等、あるいは、繊維を水中に均一に分散しこれをワイヤー上に流してシート状にしてから脱水・乾燥する抄紙法等、更に、紡糸した連続糸を拡げて集積してウェブ状にするスパンボンド法や、紡糸機から出た連続糸を熱風により吹き飛ばした後コンベア上に集めてウェブ状にするメルトブロー法等が挙げられる。また上記方法を組み合わせた方法等のいずれの方法でもよく、複数の製法により製造された不織布が複合されたものであってもよい。さらに、ウェブを接着あるいは絡み合わせる方法としても、接着剤又は熱融着繊維を混合してウェブ中の繊維を接着させる化学的接着法、カレンダー法、エアースルーヒーティング法等の熱的接着法、ニードルパンチ法、水流交絡法、ステッチボンド法等の機械的接着法等のいずれの方法を用いても良い。
また、本発明の不織布の繊維には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の常用の各種添加成分、例えば、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、あるいは無機粉末等の添加剤を添加することができる。さらに、不織布の繊維の断面は、円形や楕円形、三角や四角等の多角形、扁平や中空等の異型断面形状でもよい。
【0020】
SD材料とは当該積層材料が高温環境下に置かれた際、溶融し、当該材料の貫通孔を閉塞させるものである。
SD材料としては融点が80〜150℃であればよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類から適宜選択して用いることができる。特に当該範囲に融点を有し、電気化学的に安定であるポリエチレンが好適である。
【0021】
融点以上の環境下に長時間置かれた際のSD材料の溶融による流動、脱落を考慮して、下記式(I)の関係が成り立つように該積層材料を作製した。
【0022】
A>−2.8×10
−4×F+150 (I)
(ただし、Aは、単位面積あたりの前記不織布の空隙体積に対する前記熱溶融性の層中のSD材料の体積比率(体積充填率)を示し、Fは、SD材料のメルトフローレート(MFR)を示す。)
上記式(I)のようにA及びFを設定することで、例えばSD材料としてポリエチレンを用いた場合は125℃以上で該積層材料が閉塞し高抵抗化することが出来る。また200℃20分後の抵抗低下率を30%以下に抑えることができる。
【0023】
上記式(I)は、高温度環境下ではSD材料は流動・流出するものという思想に基づき、所望の温度で速やかにSD材料が流動して閉塞状態に移行する事で高抵抗化して、かつ200℃20分後において、SD材料による閉塞が維持されるようにSD材料の量を規定している。
【0024】
前記熱溶融性の層の形成に関しては、該SD材料とバインダを含みこれらを水や有機溶剤等の媒体に分散(バインダは媒体に溶解していてもよい)させたスラリーを塗工することによって作製できる。このことから熱溶融層におけるSD材料の好適上限値は、例えば熱溶融層の構成成分の全質量中、99質量%である。
【0025】
バインダとしてはSD材料同士や、熱溶融層と不織布とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、二次電池用セパレータに使用する場合には有機電解液に対して安定であれば特に制限は無い。
具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンーエチルアクリレート共重合体等エチレン−アクリル酸共重合体(EVA)、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及びポリイミド等が好適に挙げられる。これらバインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記例示の有機バインダの中でも、150℃以上の耐熱性を有する耐熱樹脂が好ましい。これらの具体例としては三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックスシリーズ(EVA、製品名)」、日本ユニカー社製のEVA、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体、商品名)」、日本ユニカー社製のEEA、ダイキン工業社製の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム、商品名)」、JSR社製の「TRD−2001(SBR、商品名)」、日本ゼオン社製の「EM−400B(SBR、商品名)」等が好適に挙げられる。
【0027】
塗工液の媒体として用いる有機溶剤としては、不織布にダメージを与えないものであり、バインダを使用する場合にあってはバインダを均一に溶解可能であるものであれば特に制限はないが、テトラヒドロフラン(THF)等のフラン類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;等が好適である。なお、高沸点の有機溶剤は熱溶融層形成用の組成物を不織布に塗工した後に、乾燥等によって有機溶剤を除去する際に、SD材料、ひいては熱溶融層にダメージを与えるため、好ましくない。
【0028】
また、塗工液の媒体に水を用いることもでき、その場合にもアルコール(エタノール、イソプロパノール等の炭素数が6以下のアルコール等)を加えてもよい。
【0029】
前記SD材料のMFRの下限は、5g/10分以上であると電気化学素子用セパレータとして用いる場合に十分なシャットダウン機能を付与することができ、大きな空孔を持つ不織布を用いた際にも、融点以上における流動性が高いため、空孔を閉塞させることができるため好ましく、より好ましくは15g/10分以上であり、30g/10分以上がさらに好ましく、40g/10分以上が特に好ましい。
また、前記SD材料のMFRの上限は、100g/10分以下であるとSD機能を安定して発現できるため好ましく、90g/10分以下がより好ましく、80g/10分以下がさらに好ましい。
【0030】
前記式1を満たす前記MFRの好適な範囲内において好ましい体積充填率は15%〜400%であり、より好ましくは30%〜200%である。
MFRが上記範囲内であると不織布の多孔構造を閉塞でき、目的の効果を得られる。
【0031】
前記積層材料の膜厚は、使用される電池の種類にもよるが、一般的には10〜300μmが好ましく、さらに好ましくは12〜90μmであり、最も好ましくは15〜60μmである。
【0032】
前記熱溶融性の層の細孔における平均孔径が0.05μm以上である必要がある。これは0.05μm未満では物質易動性が損なわれる場合があり、通常使用時に高い物質透過性をもつという本願目的から逸脱する。また、一般に平均孔径の上限は100μm以下が好ましい。
【0033】
また、多孔質フィルムは、製造条件によっても多少異なるが、適切な通気度(ガス透過速度)を有することが必要であり、通常、ガーレー値0.1〜1000秒/100cc、好ましくは0.1〜300秒/100ccの範囲を有することが好ましい。ガーレー値が高すぎると電池用セパレ−タとして使用したときの機能が十分でなく、ガーレー値が低いフィルムは生産速度が低下する。
【0034】
高分子材料から形成される不織布製造法として、エレクトロスピニング法が、知られている。エレクトロスピニング法による不織布の製造は以下の原理に従ったものである。エレクトロスピニング装置はノズルとノズル噴射方向に対面する導電性コレクタを備えるものであり、両者の間に電圧を負荷できるものである。高分子材料の融点以上に加熱したノズルに高分子溶融物を供給し、ノズルと導電性コレクタの間に高電圧を負荷する。ノズル先端から線状に突出する高分子溶融物に電荷が帯電され導電性コレクタとの間にクーロン力を生じる。高分子溶融物の表面張力より当クーロン力が勝った段階で、高分子溶融物は延伸され、当現象が爆発連鎖的に進行することにより、繊維が形成される。
このように形成される繊維を導電性コレクタに堆積させることにより、不織布を得ることができる。
【0035】
本発明のセパレータは、少なくとも1層の熱溶融層と1枚の不織布が積層されていればよいが、用途によっては、1層の熱溶融層の両面に不織布が積層された構造、不織布の両面に多孔質フィルムが積層された構造等であってもよい。
【0036】
熱溶融性の層と不織布の積層方法は、特に限定されず、使用されるSD材料、バインダ及び繊維の材料に合わせて、適宜選択することができる。ポリエチレン粒子とPVBを含む熱溶融性の層と、セルロース繊維を主体とする不織布とを積層する場合には、例えば、熱溶融性の層の材料を分散したスラリーを、ドクターブレードを用いて使用して塗工し、積層することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
本発明において、MFR、平均膜厚、体積充填率、SD特性、抵抗維持率、及びガーレー値は以下の方法によって評価を行った。
【0038】
[MFR]
JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。前記SD材料7g用いて、メルトインデクサー〔東洋精機製作所製〕を用いて190℃で5分保持した後に3回測定し、その平均値を当該材料のMFRとした。
【0039】
[平均膜厚]
膜厚測定器として、接触式厚み計〔ピーコック製〕により測定した。試験片膜厚を9点測定して、9点の平均値を平均膜厚とした。
【0040】
[体積充填率の算出]
前記不織布材料を巾120mm、長さ150mmで切り取り、質量を測定し、塗工前質量とした。次いで平均膜厚を測定し、塗工前膜厚とした。切り出した材料の塗工前質量、密度(ポリエステル:1.38g/cm
3)から算出される物質体積V
1と巾、長さ、塗工前膜厚から算出される実体積V
2とを用いて、V
2−V
1を被塗工材料の空隙体積V
3とした。
作製したセパレータの質量を測定し、塗工後質量とした。算出した塗工後質量から塗工前質量を減じ、塗工層質量を算出した。塗工層質量とスラリー組成比から算出される塗工層中のSD材料の質量を算出し、SD材料の密度(ポリエチレン:0.94g/cm
3)からSD材料の体積を算出し、充填体積V
4とした。算出した空隙体積V
3と充填体積V
4を用いて、下記式(II)より体積充填率とした。
体積充填率 = V
4/V
3 ×100 (%) (II)
【0041】
[SD特性、及び抵抗維持率の評価]
プロピレンカーボネート/ジエチルカーボネートを質量比で8:2で混合した溶媒に1mol/LのEt
4NBF
4を溶解させた非水電解液と、SD材料積層不織布を2枚のアルミニウム〔ニラコ社製〕集電体の間に接触、介在させたユニット(
図2)を準備し、フラットセル〔タクミ技研製、フラットセル〕に装填して評価セルを作製した。
【0042】
上記評価セルを熱風炉中に静置し、温度30℃から200℃まで5℃/分の速度で昇温させ、200℃で15分保持した。この過程で、50℃、160℃、200℃到達時及び200℃20分保持後の1Hzでの抵抗をLCRメータ〔日置電機社製、LCRHiTESTER〕測定し、それぞれ50℃内部抵抗、160℃内部抵抗、200℃内部抵抗、及び20分保持内部抵抗とした(表1)。 また、20分保持内部抵抗を200℃内部抵抗で除し、100を掛けたものを抵抗維持率(単位:%)とした。
160℃内部抵抗が100Ω以上であればSD特性が発現したと評価し、抵抗維持率は70%以上であれば合格とした。
【0043】
[ガーレー値]
JIS P8117に準じて測定した。測定装置として、B型ガーレーデンソメーター〔東洋精機社製〕を使用した。試料片を直径28.6mm、面積645mm
2の円孔に締め付ける。内筒質量567gにより、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させる。空気100ccが通過する時間を測定しガーレー値とした。
【0044】
[参考例1:不織布の作製]
本発明の不織布は、エレクトロスピニング法で作製した。ポリエステル樹脂をエレクトロスピニング装置〔カトーテック社製、溶融型エレクトロスピニングユニット(商品名)〕内の280℃に加熱したノズルに供給し、1時間過熱した。次いでノズルと導電性コレクタの間に30kVの直流電圧を印加し、紡糸を行った。導電性コレクタ上に堆積したウェブを加熱プレス機でプレスしてシート化することにより、不織布を得た。
不織布の厚みは34μm、ガーレー値は0.1秒/100ml、目付質量は20g/m
2であった。
【0045】
[実施例1]
SD材料としてPE粒子〔住友精化社製、HE−3040(商品名)、MFR4
7g/10分〕とPVB(ポリビニルブチラール)水溶液〔積水化学社製、KW−3(商品名)〕、イオン交換水をPE:PVB:水が95:5:95の質量比率で混合し、スラリーを調製した。
参考例1で作製した不織布を巾120mm、長さ150mmのサイズに切り取り、ガラス板に上端を張り付け、固定した。次いで不織布の両側にスペーサーとして膜厚50μmのポリイミドフィルム〔宇部興産製:ユーピレックス50S〕を貼り付けた後に、前記スラリーをドクターブレードを用いて塗工した。
塗工物をガラス板より取り外し、80℃にて真空乾燥し、SD材料積層不織布1を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0046】
[実施例2〜3]
スペーサーの厚みを変える以外は実施例1と同様の方法でSD材料積層不織布2〜3を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
SD材料としてPE粒子〔住友精化社製、CL−2080(商品名)、MFR7
4g/10分〕を、スペーサーとして膜厚25μmのポリイミドフィルム〔宇部興産製:ユーピレックス25S〕を使用したこと以外は実施例1と同様にしてSD材料積層不織布4を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0048】
[実施例5〜7]
スペーサーの厚みを変える以外は実施例4と同様の方法でSD材料積層不織布5〜7を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0049】
[実施例8]
SD材料としてPE短繊維〔フルオロシール社製、インヘンス(商品名)、MFR4.6g/10分〕を、スペーサーとして膜厚50μmのポリイミドフィルム〔宇部興産製:ユーピレックス50S〕を使用したこと以外は実施例1と同様にしてSD材料積層不織布8を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0050】
〔実施例9〕
スペーサーの厚みを変える以外は実施例8と同様の方法でSD材料積層不織布9を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
スペーサーを25μmのポリイミドフィルム〔宇部興産製:ユーピレックス25S〕と7.5μmのポリイミドフィルムを積層したもの〔宇部興産製:ユーピレックス75S〕にした以外は実施例1と同様の操作を行い、SD材料積層不織布10を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
スペーサーの厚みを12.5μmにした以外は実施例4と同様の操作を行い、SD材料積層不織布11を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
スペーサーを25μmのポリイミドフィルム〔宇部興産製:ユーピレックス25S〕と7.5μmのポリイミドフィルムを積層したもの〔宇部興産製:ユーピレックス75S〕にした以外は実施例8と同様の操作を行い、SD材料積層不織布12を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0054】
前記実施例及び比較例で作製したSD材料積層不織布の内部抵抗を測定した。結果を表2に示す。
また、SD特性と抵抗維持率の合否と、MFR、体積充填率との関係を
図3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1,2及び
図1〜3から分かる通り、MFRの値に併せて体積充填率を適切に設計する事で、良好なSD特性と抵抗維持率を有するSD材料積層不織布が得られる事が明らかである。また、同じ充填率であってもMFRの値が異なれば、異なるSD挙動や抵抗維持挙動になるケースがあることが明確に示された。