(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047907
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 3/54 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
H04B3/54
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-85805(P2012-85805)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-219431(P2013-219431A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年9月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】二井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 遼
【審査官】
高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−108933(JP,A)
【文献】
特開2008−067366(JP,A)
【文献】
実開平05−055302(JP,U)
【文献】
特開2010−123284(JP,A)
【文献】
特開2013−187691(JP,A)
【文献】
特開2003−209497(JP,A)
【文献】
特表平07−500463(JP,A)
【文献】
特開2009−253498(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/085318(WO,A2)
【文献】
特開2007−013812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54−3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電に用いる給電線に接続する信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わる通信装置において、
前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、
該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子と
を備え、
前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記通信信号の送信先の回路より小さい
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線及び基準電位に接続する基準電位線に夫々接続する2本の信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わる通信装置において、
前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、
該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子と
を備え、
前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記通信信号の送信先の回路より小さい
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載し、通信機能を有する車両とを、給電に用いる給電線にて接続し、該給電線を媒体として通信信号を送受信する通信システムにおいて、
前記給電装置及び車両の一方は、
前記給電線に接続する信号線と、
該信号線を介して通信信号を送信する送信回路と
を備え、
該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わるようにしてあり、
前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、
該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子と
を更に備え、
前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記受信回路より小さくしてあり、
前記給電装置及び車両の他方は、
前記送信回路から送信される通信信号を受信する受信回路を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載し、通信機能を有する車両とを、給電に用いる給電線、前記蓄電装置に対する給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線、及び基準電位に接続する基準電位線にて接続し、前記制御用線及び基準電位線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号を送受信する通信システムにおいて、
前記給電装置及び車両の一方は、
前記制御用線及び基準電位線に夫々接続する2本の信号線と、
該信号線を介して通信信号を送信する送信回路と
を備え、
該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わるようにしてあり、
前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、
該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子と
を更に備え、
前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記受信回路より小さくしてあり、
前記給電装置及び車両の他方は、
前記送信回路から送信される通信信号を受信する受信回路を備える
ことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、給電線に接続する信号線、又は給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線及び基準電位に接続する基準電位線に夫々接続する信号線を介して通信する通信装置、及び該通信装置を備える通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ及びバッテリ等の装置を搭載し、バッテリに蓄積した電力にてモータを駆動することで走行する電気自動車及びハイブリッド自動車が普及し始めている。電気自動車は外部の給電装置からの給電によりバッテリに対する充電を行う。また、ハイブリッド自動車であっても、外部の給電装置からバッテリへの充電を可能としたプラグインハイブリッド自動車が実用化されている。なお、外部の給電装置とは、一般家屋、商用の給電ステーション等の施設に設置された給電装置である。給電装置から車両への給電に際しては、給電装置に接続されている充電ケーブルの先端のプラグを、受電コネクタとして車両に配設された給電口に接続する。そして、充電ケーブルに内包された給電線を介して給電装置から車両への給電が行われ、バッテリが充電される。
【0003】
なお、充電ケーブルには、給電線だけでなく、接地線、制御用線等の他の配線も内包されている。制御用線とは、蓄電装置の給電制御に用いるコントロールパイロット信号等の制御信号の伝送に用いられる配線である。制御用線を介して、制御信号を給電装置及び車両間で送受信することにより、充電ケーブルの接続状態、充電可否の状態、充電の状態等の様々な状態を検知し、検知した状態に応じた充電制御が行われる。
【0004】
さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の外部からの給電を要する自動車の実用化に際しては、充電制御のための情報、及び、充電量又は課金の管理等を行うための通信情報を、車両及び給電装置の間で送受信する通信機能が求められる。
【0005】
そこで、給電線を媒体として通信信号を重畳することにより、車両及び給電装置の間で通信を行う電力線通信等の通信の規格化が進められている。また、通信信号の送受信方法としては電力線通信だけでなく、制御用線を媒体として制御信号に通信信号を重畳して、車両及び給電装置間で送受信するinband通信等の通信についても規格化が進められている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
電力線通信、inband通信等の通信においては、給電線、接地線、制御用線等の配線に対して一次コイル及び二次コイルを備えるトランスを用いた重畳分離器が接続されている。重畳分離器は、信号線にて接続されている通信装置から入出力される通信信号を、配線に対して重畳し、また、分離することにより、車両及び給電装置間で通信を行うことができる。
【0007】
図5は、従来の通信システムにおける通信装置が備える送信回路に関する構成を示す回路図である。
図5中1000は、通信装置が備える送信回路であり、送信回路1000は、通信信号を出力する2つのラインドライバ1001、1001を備えている。ラインドライバ1001、1001は、通信信号を伝送する2本の信号線1002、1002により重畳分離器1003に接続されている。また、2本の信号線1002、1002には、夫々抵抗素子1004、1004及び容量素子1005、1005が介装されている。抵抗素子1004、1004は、ピーク電流の抑制機能を有する電流制限抵抗である。容量素子1005、1005は、直流成分遮断機能を有するコンデンサである。ラインドライバ1001、1001には、図示しない制御回路からハイレベル又はローレベルのドライバ作動信号(Driver Enable )が入力される。ラインドライバ1001、1001は、通信信号を送信する場合にのみ作動するように設計されており、ドライバ作動信号をローレベルからハイレベルに切り替えることにより、通信信号を送信不可能な休止状態から送信可能な作動状態へと切り替わる。また、ドライバ作動信号をハイレベルからローレベルに切り替えることにより、作動状態から休止状態へと切り替わる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「SURFACE VEHICLE RECOMMENDED PRACTICE」、J1772 JAN2010、ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ・インク(Society of Automotive Engineers, Inc. ),1996年10月(2010年1月改訂)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ドライバ作動信号が入力され、ラインドライバ1001、1001が休止状態から通信信号を送信可能な作動状態に切り替わった場合、ローインピーダンスの信号線1002、1002に急激に電流が注入されることになる。このような場合、抵抗素子1004、1004の抵抗値によっては送信出力波形にリンギングが発生することになる。リンギングが発生すると、出力される通信信号に高調波歪みが重畳するという問題が生じる。作動状態から休止状態に切り替わった場合も同様の問題が生じる。
【0010】
そして、リンギングの発生に基づく高調波歪み等のノイズ成分が送信回路1000、更には通信装置の外部へ出力されることにより、ユニットEMCが悪化するという問題にも繋がる。
【0011】
なお、抵抗素子1004、1004の抵抗値を高くすることにより、リンギングの発生を抑制することも可能であるが、その場合、送信出力インピーダンスが一様に増加することになるため、通信信号が減衰するという問題が生じることになる。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信号線にインダクタンス素子を介装させることにより、通信信号に対して大きな影響を与えることなく、不要なリンギングの発生を効果的に抑制することが可能な通信装置及び通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る通信装置は、
給電に用いる給電線に接続する信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わる通信装置において、前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子
とを備え、前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記通信信号の送信先の回路より小さいことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る通信
装置は、給電
制御に用いる制御信号を伝送する制御用線及び基準電位に接続する基準電位線に夫々接続する2本の信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わる
通信装置において、前記信号線に介装されたインダクタンス素子
と、該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子とを備え
、前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記通信信号の送信先の回路より小さいことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る通信システムは、給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載し、通信機能を有する車両とを、給電に用いる給電
線にて接続し、
該給電線を媒体とし
て通信信号を送受信する通信システムにおいて、前記給電装置及び車両の一方は、前記
給電線
に接続す
る信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わるようにしてあり、前記信号
線に介装されたインダクタンス素子
と、該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子とを更に備え、
前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記受信回路より小さくしてあり、前記給電装置及び車両の他方は、前記送信回路から送信される通信信号を受信する受信回路を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る通信システムは、
給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載し、通信機能を有する車両とを、給電に用いる給電線、前記蓄電装置に対する給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線、及び基準電位に接続する基準電位線にて接続し、前記制御用線及び基準電位線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号を送受信する通信システムにおいて、前記給電装置及び車両の一方は、前記制御用線及び基準電位線に夫々接続する2本の信号線と、該信号線を介して通信信号を送信する送信回路とを備え、該送信回路は、通信信号を送信する場合に送信不可能な状態から送信可能な状態に切り替わるようにしてあり、前記信号線に介装されたインダクタンス素子と、該インダクタンス素子と直列になるように前記信号線に介装された抵抗素子
とを更に備え、前記通信信号に用いられる通信帯域において、前記インダクタンス素子及び抵抗素子によるインピーダンスの絶対値は、前記受信回路より小さ
くしてあり、前記給電装置及び車両の他方は、前記送信回路から送信される通信信号を受信する受信回路を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明では、信号線に介装させたインダクタンス素子により、周波数に比例してインピーダンスが高くなる回路構成となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る通信装置及び通信システムでは、信号線にインダクタンス素子を介装させることにより、周波数に比例してインピーダンスが高くなる回路構成となる。これにより、通信信号に対して大きな影響を与えることなく、不要なリンギングの発生による通信信号への高調波歪みの重畳を抑制することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る通信システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る通信システムにて用いられる車両の通信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る通信システムにて用いられる車両の通信装置の送信回路の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る通信システムの構成例を示す説明図である。
【
図5】従来の通信システムにおける通信装置が備える送信回路に関する構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0023】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信システムの構成例を示す説明図である。
図1は、本発明を、電気自動車、プラグインハイブリッド車等の車両1が備えるバッテリ(蓄電装置)10に対し、充電スタンド等の給電装置2から給電する形態に適用する例を示している。
【0024】
車両1及び給電装置2の間は、充電ケーブル3により接続することが可能である。充電ケーブル3は、電力供給線として用いられる2本の給電線31、32、充電制御に用いるコントロールパイロット信号(CPLT)等の制御信号を伝送する制御用線33、及び基準電位に接続する基準電位線34を内包している。なお、本実施の形態においては、基準電位として、接地電位に接続する形態を説明する。従って、以降では、接地電位に接続する接地用の導線である接地線34として説明する。但し、接地電位以外の電位を基準電位として接続する形態に展開することも可能である。充電ケーブル3の一端は、給電装置2側に接続されており、他端側を車両1側の車載給電口として配設されている受電コネクタ11に接続することができる。充電ケーブル3の他端を受電コネクタ11に接続することにより、
図1に例示する回路構成となる。
【0025】
給電線31、32は、交流電圧が印加されるAC線である。制御用線33は、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信する信号線であり、給電装置2及び充電制御装置13間が接続された場合に送受信されるコントロールパイロット信号に基づいて充電制御が行われる。また、給電線31、32は、車両認証、充電管理、課金管理等の管理を行うための情報、その他各種情報を伝送する媒体として用いることも可能である。即ち、車両1は、給電線31、32に対し、通信信号を重畳及び分離することにより給電装置2と通信を行うことが可能である。
【0026】
給電装置2は、交流電力を供給する電力供給部20と、充電制御に係る通信を行う充電制御部21と、通信信号の入出力を行う通信部(通信装置)22と、通信部22から入出力される通信信号を給電線31、32に重畳分離する重畳分離部23とを備えている。
【0027】
電力供給部20には、給電線31、32の一端が接続されている。充電制御部21には、制御用線33の一端が接続されている。給電装置2内の配線は、給電装置2外部の充電ケーブル3に内包された給電線31、32、制御用線33及び接地線34に接続された延長線として機能する内部導線ということになるが、以降の説明では、便宜上、内部導線として配設された延長線部分も含めて、給電線31、32、制御用線33及び接地線34として説明する。
【0028】
充電制御部21は、例えば、充電制御に関する国際規格に準拠した出力側の回路であり、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信することにより、接続確認、通電開始等の様々な状態における充電制御を行う。
【0029】
通信部22は、2本の給電線31、32に夫々接続する2本の信号線24、24を介して通信信号を送受信することにより通信する通信装置である。通信部22は、信号線24、24を介して通信信号を送信する送信回路220と、信号線24、24を介して通信信号を受信する受信回路221とを備えている。2本の信号線24、24には、重畳分離部23が介装されている。
【0030】
重畳分離部23は、カップリングトランス(電磁誘導式の信号変換器等の回路)等の回路及びコンデンサ等の素子を用いて構成される。カップリングトランスは、給電線31、32側の信号線24、24にコンデンサを介して両端が接続される一次コイルと、一次コイルに電磁的に結合され、通信部22側の信号線24、24に両端が接続される二次コイルとを備えている。コンデンサは、給電線31、32を介して供給される交流電力に対してはハイインピーダンスとなり、数十〜数百kHzの低速通信用の通信帯域又は数MHz〜数十MHzの高速通信用の通信帯域を用いる通信信号に対してはローインピーダンスとなる。即ち、コンデンサは、給電線31、32から分岐する伝送経路において、通信信号に用いられる周波数帯域の信号を透過し、交流電力に用いられる周波数帯域の信号を遮断する。
【0031】
重畳分離部23が、通信部22から出力される各種通信信号を信号線24、24から給電線31、32に対して重畳し、また、給電線31、32から分離した各種通信信号を通信部22に入力することにより、給電線31、32を媒体とした電力線通信が行われる。即ち、給電装置2は、通信装置として機能する通信部22を備えているが、自らが電力線通信を行う通信装置として機能すると見なすことも可能である。
【0032】
車両1は、バッテリ10及び受電コネクタ11の他、バッテリ10に対する充電を行う充電装置12と、充電制御に係る通信を行う充電制御装置13と、通信信号の送受信を行う通信装置14と、2本の給電線31、32に対して通信信号の重畳及び分離を行う重畳分離器15とを備えている。
【0033】
車両1内には、給電線31、32、制御用線33及び接地線34に接続される車両内配線が配設されている。給電線31、32に接続される車両内配線は、充電装置12に接続されるAC線であり、充電装置12によりバッテリ10に対する充電が行われる。制御用線33に接続される車両内配線は、延長線を介して充電制御装置13に接続されている。接地線34に接続される車両内配線は、車体接地(body earth)されている。なお、以降の説明において、特に区分する必要がない場合、便宜上、各車内配線、AC線、延長線をも含めて、給電線31、32、制御用線33及び接地線34として説明する。
【0034】
充電制御装置13は、例えば、充電制御に関する国際規格に準拠した入力側の回路であり、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信することにより、接続確認、通信開始等の様々な状態における充電制御を行う。
【0035】
通信装置14は、2本の給電線31、32に夫々接続する2本の信号線16、16を介して通信信号を送受信することにより通信する装置である。通信装置14は、信号線16、16を介して通信信号を送信する送信回路140と、信号線16、16を介して通信信号を受信する受信回路141とを備えている。2本の信号線16、16には、重畳分離器15が介装されている。
【0036】
重畳分離器15は、カップリングトランス等の回路及びコンデンサ等の素子を用いて構成される。カップリングトランスは、給電線31、32側の信号線16、16にコンデンサを介して両端が接続される一次コイルと、一次コイルに電磁的に結合され、通信装置14側の信号線16、16に両端が接続される二次コイルとを備えている。コンデンサは、給電線31、32を介して供給される交流電力に対してはハイインピーダンスとなり、数十〜数百kHzの低速通信用の帯域又は数MHz〜数十MHzの高速通信用の帯域を用いる通信信号に対してはローインピーダンスとなる。即ち、コンデンサは、給電線31、32から分岐する伝送経路において、通信信号に用いられる周波数帯域の信号を透過し、交流電力に用いられる周波数帯域の信号を遮断する。
【0037】
重畳分離器15が、通信装置14から出力される各種通信信号を信号線16、16から給電線31、32に対して重畳し、また、給電線31、32から分離した各種通信信号を通信装置14に入力することにより、給電線31、32を媒体とした電力線通信が行われる。
【0038】
図1に示す形態の例では、重畳分離器15、信号線16、16、給電線31、32、信号線24、24、重畳分離部23及びその他の配線、素子、回路により通信信号を伝送するループ回路が形成される。これにより、車両1内の通信装置14及び給電装置2の通信部22間で、給電線31、32に対して通信信号を重畳する電力線通信を実現することが可能となる。
【0039】
図2は、本発明の実施の形態1に係る通信システムにて用いられる車両1の通信装置14の構成例を示すブロック図である。前述のように、通信装置14は、2本の給電線31、32に夫々接続される2本の信号線16、16に接続されている。車両1が備える通信装置14は、2本の給電線31、32に夫々接続される2本の信号線16、16を介して通信信号を送受信することにより通信する装置である。2本の信号線16、16には、重畳分離器15が介装されており、重畳分離器15及び通信装置14を接続する信号線16、16は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)線として用いられる。なお、通信装置14に接続する信号線16、16は、通信装置14外部の信号線と、内部信号線とに区分されるが、ここでは説明の便宜上、外部の信号線及び内部信号線も含めて信号線16、16として示す。
【0040】
通信装置14は、少なくとも送信回路140及び受信回路141と、送信回路140及び受信回路141を制御するマイコン等の制御回路142と、送信する通信信号の出力電圧を調整するオペアンプ等のアンプ回路143とを備えている。通信装置14内で信号線16、16は夫々分岐しており、分岐した信号線16、16は、夫々送信回路140及び受信回路141に接続されている。
【0041】
送信回路140は、2つのラインドライバ140a、140aを備えており、ラインドライバ140a、140aは、2本の信号線16、16を介して通信信号を送信する。また、送信回路140から重畳分離器15に接続する2本の信号線16、16には、夫々インダクタンス素子140b、140b、抵抗素子140c、140c及び容量素子140d、140dが送信回路140側からこの順で直列に介装されている。インダクタンス素子140b、140bは、通信信号の周波数に比例してインピーダンスが増加するコイルである。抵抗素子140c、140cは、ピーク電流の抑制機能を有する電流制限抵抗である。容量素子140d、140dは、直流成分遮断機能を有するコンデンサである。信号線16、16に介装されたインダクタンス素子140b、140b及び抵抗素子140c、140cによるインピーダンスの絶対値は、通信信号に用いられる通信帯域において、終端となる通信信号の送信先の回路より小さくなるように設定されている。ここでいう通信信号の送信先の回路とは、給電装置2が備える通信部22の受信回路221であり、例えば、受信回路221のインピーダンスが300Ωである場合には、その値より小さい値に設定されることになる。
【0042】
ラインドライバ140a、140aには、制御回路142からドライバ作動信号(Driver Enable )が入力される。入力されるドライバ作動信号は、ハイレベル又はローレベルの信号であり、例えばハイアクティブに設定されている場合、ハイレベルのドライバ作動信号の入力時に作動状態となり、ローレベルのドライバ作動信号の入力時に休止状態となる。ラインドライバ140a、140aは、通信信号を送信する場合にのみ作動状態となるように設計されている。従って、通信信号を送信する場合、ラインドライバ140a、140aに入力するドライバ作動信号をローレベルからハイレベルに切り替える。これにより、ラインドライバ140a、140aは、通信信号を送信不可能な休止状態から送信可能な作動状態へと切り替わる。また、ドライバ作動信号をハイレベルからローレベルに切り替えることにより、作動状態から休止状態へと切り替わる。
【0043】
ドライバ作動信号が入力され、ラインドライバ140a、140aが通信信号を送信可能な状態に切り替わった場合、ローインピーダンスの信号線16、16に急激に電流が注入されることになる。このとき、リンギングによる高調波が発生する可能性もあるが、インダクタンス素子140b、140bは、高調波に対してハイインピーダンスとなるため、インダクタンス素子140b、140bにより高調波が減衰することになる。
【0044】
従って、リンギングの発生に基づく高調波歪み等のノイズ成分が送信回路140、更には通信装置14の外部へ出力されることを防止することができ、ユニットEMCの悪化を防止する。特に、通信信号に用いられる通信帯域におけるインピーダンスの絶対値を、回路の他方の終端となる受信回路221より小さくすることで、この効果が顕著になる。しかも、高調波成分のみを効果的に減衰させることができるので、通信信号自体に対しては大きな影響を与えることなく優れた効果を得ることができる。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態1に係る通信システムにて用いられる車両1の通信装置14の送信回路140の構成例を示すブロック図である。
図3A及び
図3Bは、
図2を用いて示した送信回路140の他の構成例を示している。
図3Aは、送信回路140に接続する2本の信号線16、16に、ラインドライバ140a、140a側から、抵抗素子140c、140c、インダクタンス素子140b、140b及び容量素子140d、140dの順で直列に介装された構成例を示している。
図3Bは、送信回路140に接続する2本の信号線16、16に、ラインドライバ140a、140a側から、抵抗素子140c、140c、容量素子140d、140d及びインダクタンス素子140b、140bの順で直列に介装された構成例を示している。
図3A及び
図3Bに例示する様な構成とした場合であっても、
図2に示す構成例を同様の効果を奏する。
【0046】
図2及び
図3では、車両1の通信装置14の構成例として示しているが、給電装置2が備える通信部22も同様の構成となるので、給電装置2の通信部22の構成については、
図2及び
図3並びにそれらの説明を参照するものとし、その詳細な説明を省略する。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1において、inband通信に係る通信システムに適用する形態である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1と同様の符号を付し、実施の形態1を参照するものとし、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図4は、本発明の実施の形態2に係る通信システムの構成例を示す説明図である。実施の形態2において、給電装置2が備える通信部22は、制御用線33及び接地線34に夫々接続する2本の信号線24、24を介して通信信号を送受信することにより通信する通信装置である。通信部22は、信号線24、24を介して通信信号を送信する送信回路220と、信号線24、24を介して通信信号を受信する受信回路221とを備えている。2本の信号線24、24には、重畳分離部23が介装されている。
【0049】
重畳分離部23が、通信部22から出力される各種通信信号を信号線24、24から制御用線33及び接地線34に対して重畳し、また、制御用線33及び接地線34から分離した各種通信信号を通信部22に入力することにより、制御用線33及び接地線34を媒体としたinband通信が行われる。即ち、給電装置2は、通信装置として機能する通信部22を備えているが、自らが電力線通信を行う通信装置としても機能すると見なすことも可能である。
【0050】
車両1が備える通信装置14は、制御用線33及び接地線34に夫々接続される2本の信号線16、16を介して通信信号を送受信することにより通信する装置である。通信装置14は、信号線16、16を介して通信信号を送信する送信回路140と、信号線16、16を介して通信信号を受信する受信回路141とを備えている。2本の信号線16、16には、重畳分離器15が介装されている。
【0051】
重畳分離器15が、通信装置14から出力される各種通信信号を信号線16、16から制御用線33及び接地線34に対して重畳し、また、制御用線33及び接地線34から分離した各種通信信号を通信装置14に入力することにより、制御用線33及び接地線34を媒体としたinband通信が行われる。
【0052】
実施の形態2では、重畳分離器15、信号線16、16、制御用線33、接地線34、信号線24、24、重畳分離部23及びその他の配線、素子、回路により通信信号を伝送するループ回路が形成される。これにより、車両1内の通信装置14及び給電装置2の通信部22間で、制御用線33及び接地線34に対して通信信号を重畳するinband通信を実現することが可能となる。
【0053】
実施の形態2における車両1の通信装置14及び給電装置2の通信部22の内部の構成例は、実施の形態1と同様であるので、実施の形態1を参照するものとし、その詳細な説明を省略する。
【0054】
前記実施の形態は、本発明の無数に存在する形態の一部を開示したに過ぎず、目的、用途、仕様等の様々な要因を加味して適宜設計することが可能である。例えば、車両において、重畳分離器を通信装置内に設けさせる形態でも良く、また、インダクタンス素子、抵抗素子及び容量素子の一部又は全部を、通信装置内ではなく、通信装置の筐体外に配線された信号線部分に介装させるようにしても良い。
【0055】
また、給電線、又は制御用線及び接地線から通信装置を接続する信号線を分岐させるのではなく、給電線又は制御用線に重畳分離器を介装し、介装された重畳分離器を介して給電線又は制御用線に信号線が接続する形態に展開することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 バッテリ(蓄電装置)
11 受電コネクタ
12 充電装置
13 充電制御装置
14 通信装置
140 送信回路
140a ラインドライバ
140b インダクタンス素子
140c 抵抗素子
140d 容量素子
141 受信回路
142 制御回路
143 アンプ回路
15 重畳分離器
16 信号線
2 給電装置(通信装置)
20 電力供給部
21 充電制御部
22 通信部(通信装置)
220 送信回路
221 受信回路
23 重畳分離部
24 信号線
3 充電ケーブル
31、32 給電線
33 制御用線
34 接地線(基準電位線)