特許第6047963号(P6047963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047963
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】転がり軸受の予圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 25/06 20060101AFI20161212BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20161212BHJP
   F16C 33/38 20060101ALI20161212BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20161212BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F16C25/06
   F16C33/32
   F16C33/38
   F16C33/58
   G01L5/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-155424(P2012-155424)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-16012(P2014-16012A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(72)【発明者】
【氏名】辻井 哲也
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−206925(JP,A)
【文献】 特開2008−180346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 25/06
F16C 33/32
F16C 33/38
F16C 33/58
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止輪と回転輪との間に、非導電性転動体と導電性転動体とを保持している保持器を配置している予圧を受ける転がり軸受を用意する工程と、
上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記静止輪と、回転輪と、導電性転動体とを含む電流経路の電気特性値を測定する工程と、
上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角を上記転がり軸受の周方向の1箇所にて直接または間接に検出する工程と
を備えて、上記位相角に応じた上記電気特性値を測定して、上記転がり軸受の周方向の全ての位相角における予圧を測定することを特徴とする転がり軸受の予圧測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受の予圧測定方法において、上記転がり軸受の1列の軌道について上記導電性転動体は一つであることを特徴とする転がり軸受の予圧測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転がり軸受の予圧測定方法において、上記の位相角を検出する工程は、上記保持器に軸方向に対向するセンサを有し、上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記センサが上記保持器の端面に形成されたパターンを検出して、上記保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角を直接検出する工程であることを特徴とする転がり軸受の予圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受の予圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受の予圧測定方法としては、特開2003−206925号公報(特許文献1)に記載のものがある。この転がり軸受の予圧測定方法は、静止輪と回転輪との間に導電性転動体を配置し、この静止輪と回転輪と導電性転動体を経由する電流経路の抵抗値を測定して、軸方向の予圧荷重を大小に応じて油膜の厚さが変化して、抵抗値が変化することを利用して、軸受の予圧を測定するものである。
【0003】
ところで、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受、深溝玉軸受等の軸方向の予圧をかける転がり軸受においては、全位相角において、予圧が均一でないと、軸がすりこぎ運動をするという問題がある。特に、工作機械の主軸がこのようなすりこぎ運動をすると、加工精度が著しく悪くなって、重大な問題となる。
【0004】
しかるに、上記従来の転がり軸受の予圧測定方法は、軸方向の全体の予圧を測定できても、位相角毎に予圧を測定できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−206925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、位相角毎に予圧を測定できる転がり軸受の予圧測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の転がり軸受の予圧測定方法は、
静止輪と回転輪との間に、非導電性転動体と導電性転動体とを保持している保持器を配置している予圧を受ける転がり軸受を用意する工程と、
上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記静止輪と、回転輪と、導電性転動体とを含む電流経路の電気特性値を測定する工程と、
上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角を上記転がり軸受の周方向の1箇所にて直接または間接に検出する工程と
を備えて、上記位相角に応じた上記電気特性値を測定して、上記転がり軸受の周方向の全ての位相角における予圧を測定することを特徴としている。
【0008】
上記構成の転がり軸受の予圧測定方法によれば、上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角が直接または間接に測定されるから、導電性転動体の位相角が一意的に定まる。
【0009】
一方、上記転がり軸受に軸方向の予圧をかけた状態で、上記静止輪と、回転輪と、導電性転動体とを含む電流経路の電気特性値(例えば、抵抗値、電流値、電圧値)は、導電性転動体の油膜の厚さに応じて変化し、この油膜の厚さが予圧の大きさに応じて一意的に定まるから、上記電気特性値は予圧の大きさに応じて一意的に定まることになる。
【0010】
したがって、この発明によれば、上記保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角と上記電気特性値を測定しているので、転がり軸受の位相角毎の予圧を測定することができる。
【0011】
ここで、保持器の導電性転動体を保持している箇所の位相角を間接に測定するとは、保持器の位相角を直接測定しないで、保持器が等速回転しているとして、保持器の基準位置からの経過時間を測定して、保持器の位相角を測定することを言う。
【0012】
なお、上記導電性転動体は、静止輪の一列の軌道について、一個または複数個設けてもよい。例えば、一列の軌道について、複数個の導電性転動体を一定の角度範囲内、あるいは、隣接して設けてもよい。
【0013】
1実施形態では、上記転がり軸受の1列の軌道について上記導電性転動体は一つである。
【0014】
上記実施形態によれば、上記導電性転動体は1列の軌道について一つであるから、位相角毎の予圧の測定の分解能を高くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、位相角毎に予圧を測定できる転がり軸受の予圧測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の1実施形態の転がり軸受の予圧測定方法を説明する図である。
図2】上記実施形態の保持器と玉との関係を示す斜視図である。
図3】上記実施形態のアキシャル荷重と抵抗値比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0018】
図1は、軸方向に予圧を受ける転がり軸受の一例としてのアンギュラ玉軸受の予圧測定方法を説明する図である。
【0019】
図1に示すように、このアンギュラ玉軸受は、静止輪の一例としての外輪1,2,3,4と、回転輪の一例としての内輪11,12,13,14と、転動体の一例としての玉21a,21bと、この玉21a,21bを保持する保持器22,22,22,22とを備えている。
【0020】
上記外輪1,2,3,4は、図示しないハウジングに固定し、上記内輪11,12,13,14は、金属製の軸8に固定している。上記外輪2と外輪3との間には、間座5を配置し、内輪12と内輪13との間に間座15を配置している。
【0021】
上記軸8のネジ部にナット18を螺合して、内輪11,12を軸8の鍔19に向けて押圧することによって、内輪11,12と外輪1,2の間の玉21a、21bに予圧を与えると共に、外輪1,2および間座5を介して、外輪3,4を押圧して、外輪3,4と内輪13,14との間の玉21bに予圧を与えるようにしている。
【0022】
上記外輪2,3,4と内輪12,13,14との間の玉21bは、全て、非導電性の玉であり、例えば、非導電性セラミックス(絶縁性セラミックス)からなる。
【0023】
一方、上記外輪1と内輪11との間の一列の軌道において、図2に示すように、一つの玉21aは、導電性の玉であり、他の玉21bは全て非導電性の玉である。上記導電性の玉21aは、例えば、窒化珪素等の導電性セラミックスで作製したり、あるいは、非導電性のセラミックス製の玉の表面に、銅やアルミニウム等の導電性の材料を、メッキ、蒸着、スパターリング等で1μm以下の厚さで被覆することによって作製される。尤も、導電性の玉として、鋼球を用いてもよい。上記導電性の玉21aおよび非導電性の玉21bは、同じ寸法で、いずれも、玉径の精度は、G5(JIS)以上にしている。
【0024】
上記外輪1,2,3,4と内輪11,12,13,14とは、全て鋼等の導電性金属材料からなり、保持器22は、例えば、金属または樹脂からなる。
【0025】
一方、上記軸8は、駆動装置30によって回転駆動する。また、図1において左端の保持器22の位相角は、この保持器22に軸方向に対向するセンサ41で検出するようにしている。このセンサ41は、上記保持器22の端面に形成されたパターン(図示せず)を検出して、保持器22の導電性の玉21aを保持している箇所の位相角を検出する。このセンサ41と保持器22の端面のパターンで、エンコーダを形成していることになる。
【0026】
また、上記外輪1にテスター43を接続すると共に、軸8を例えばカーボンブラシやスリップリング等の電気接続手段44を介してテスター43を接続している。上記テスター43,外輪1,導電性の玉21a,内輪11,軸8,電気接続手段44およびテスター43は、電流経路を形成し、上記テスター43は、この電流経路(閉回路)の電気特性値の一例としての抵抗値を検出する。この抵抗値は、導電性の玉21aの油膜の厚さが薄い程、小さくなり、また、その油膜の厚さは、アキシャル荷重が大きい程、小さくなる。したがって、アキシャル荷重(予圧)が大きい程、抵抗値が小さくなる。
【0027】
なお、この転がり軸受装置には、図示しないオイルエア潤滑装置で、オイルが供給されており、予圧がかかっていない状態で、内外輪の軌道面および玉の表面に薄い油膜が形成される。
【0028】
一方、上記センサ41およびテスター43の出力は、パーソナルコンピュータ45に入力している。上記パーソナルコンピュータ45には、図3に示すようなアキシャル荷重(N)に対する抵抗値比の関係を示すデータを予めメモリに記憶している。ここで、抵抗値比とは、アキシャル荷重が10Nのときの抵抗値で、他の荷重をかけたときの抵抗値を除算したものである。図3の曲線Rから分かるように、アキシャル荷重が増大する程、抵抗値比が小さくなる。
【0029】
上記構成のアンギュラ玉軸受において、ナット18を締め付けて導電性の玉21a,非導電性の玉21bに軸方向に予圧をかけた状態で、駆動装置30で軸8をdmn(直径×rpm)50万以上の高速で回転させる。このとき、外輪1,2,3,4、内輪11,12,13,14、導電性の玉21aおよび非導電性の玉21bの表面には、油膜が形成される。
【0030】
そして、このアンギュラ玉軸受に予圧をかけた状態で、テスター43で、外輪1,導電性の玉21a,内輪11,軸8,電気接続手段44およびテスター43からなる電流経路の抵抗値を検出する。この抵抗値は、導電性の玉21aの油膜の厚さが薄くなる程、小さくなり、この油膜の厚さは、予圧が大きくなる程、小さくなる。したがって、この電気抵抗値は、予圧の大きさに一対一に対応する。
【0031】
一方、この抵抗値と同時に、センサ41によって、保持器22の導電性の玉21aを保持している箇所の位相角を検出する。したがって、テスター43によって検出された電気抵抗値によって、パーソナルコンピュータ45は、図3のデータを参照して予圧の大きさを得るとともに、そのときの導電性の玉21aの位相角をセンサ41から得ることができる。
【0032】
したがって、パーソナルコンピュータ45は、アンギュラ玉軸受の位相角毎の予圧の大きさを得ることができ、位相角による予圧のバラツキを検出することができる。この位相角毎の予圧の大きさは、パーソナルコンピュータ45の表示装置(図示せず)に表示し、あるいは、プリントアウトされる。
【0033】
上記実施形態では、外輪1と内輪11との間の一列の軌道に一つだけの導電性の玉21aを設け、他は非導電性の玉21bを設けたから、高い分解能で、位相角を検出することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、センサ41は、保持器22の端面のパターンによって位相角を検出するものであるが、保持器22の端面の1または数カ所に反射膜を設けて、この反射膜からの光を検出して、保持器22の位相角を検出するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、保持器22の位相角を直接検出することによって、導電性の玉21aの位相角を検出していたが、軸8を一定回転速度で回転している状態で、保持器22の基準位置を検出してからの経過時間によって、導電性の玉21aの位相角を間接的に検出するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、テスター43で、電気特性値の一例としての抵抗値を検出するようにしているが、電気特性値として、電流値、電圧値を検出するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、一列の軌道に、一つだけの導電性の玉を設けたが、複数の導電性の玉を隣接して設けてもよく、あるいは、ある角度範囲内に複数の導電性の玉を設けてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、軸方向の予圧を受ける転がり軸受の例としてアンギュラ玉軸受について説明したが、この発明は、円錐ころ軸受、深溝玉軸受等の軸方向の予圧をかける転がり軸受にも適用できるのは、勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1,2,3,4 外輪
8 軸
11,12,13,14 内輪
18 ナット
21a 導電性の玉
21b 非導電性の玉
22 保持器
41 センサ
43 テスター
図1
図2
図3