(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の防護材料を詳細に説明する。
本発明の防護材料は、
図1に示すように、上層、中間層、および下層の少なくとも3層のシート材料を積層した防護シート層と、ガス吸着層とをそれぞれ1層以上積層したもので、防護シート層の中間層については、平均単繊維直径10nm以上2000nm以下の不織布を含む構成からなるものである。
【0015】
本発明の防護材料の防護シート層の中間層に使用する不織布の素材としては、特に限定されるものではなく、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート、トリアセテート、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、アクリル系、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリクラール、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリプロピレン、PVDF、PPS等が挙げられる。
【0016】
防護シート層の中間層に使用する不織布の素材としては、衣服に使用することを想定すると、着心地、柔軟性、伸度等の観点からすると、ポリウレタン、ナイロン、ポリビニルアルコール等が好ましい。
【0017】
本発明の防護材料の防護シート層の中間層は、不織布が使用される。不織布であれば、優れた粒子除去性能を付与できると共に、柔軟性・伸びのバランスに優れ、例えば、防護衣服とした場合、作業性も良く、ストレスを軽減することができるからである。また、これらの材料を単独、混合、あるいは、順次他の補強材と積層して皮膜を形成するのも好ましい形態の1つである。
【0018】
防護シート層の中間層の製法としては、特に限定されるものではなく、公知の湿式法、乾式法、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、複合繊維分割法等が挙げられるが、微細な繊維径で荷電を行わなくても、高い粒子除去性能の得られる点からメルトブロー法、エレクトロスピング法等が好ましい。ここでいう、エレクトロスピニング法とは、溶液紡糸の一種であり、ポリマー溶液にプラスの高電圧を与え、それがアースやマイナスに帯電した表面にスプレーされる過程で繊維化を起こさせる手法である。
【0019】
本発明の防護シート層の中間層に用いる不織布の平均単繊維直径は、10nm以上2000nm以下である。より好ましくは、50nm以上1500nm以下である。平均単繊維直径が、10nm未満であると、機械的な強度が持たず、さらには、繊維化が困難となり、フィルム状に近い物性となり通気性が低下する上、実用可能な強度を得ることが困難となる。一方、平均単繊維直径が、2000nmを超える場合には、求められる粒子除去性能および液に対する防護性能を満足させるためには、大きな重量が必要となり、高いレベルでの防護性と着用者の快適性を両立することが困難となる。
【0020】
本発明の防護シート層の中間層に用いる不織布の質量は、0.1g/m
2以上100g/m
2以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3g/m
2以上80g/m
2以下である。質量が0.1g/m
2未満であると、求められる粒子除去性能および液に対する防護性能を満足できず、さらには、機械的強度が不足し、均一な材料とならず、強度、粒子除去性能に問題が生じやすい。一方、100g/m
2を越えると、通気性が低下するといった原因となる。
【0021】
本発明の防護シート層の中間層に用いる不織布における平均単繊維径(D)を質量(M)で除した値(A)の範囲については、10以上500以下であることが好ましい。より好ましくは、30以上400以下である。かかる範囲とすることにより、粒子除去性能、加圧時における耐液性能、更には、通気性、質量のバランスに優れた、防護シートが得られる。
【0022】
本発明の防護シート層の上層、下層へ使用するシート材料としては、特に限定されるものではないが、不織布であることが好ましい。また、上層側へ長繊維不織布を用いることで、機械的な強度を与え、さらには、液状物質に対する防護性能も向上する。長繊維不織布とは、公知のスパンボンド方式やメルトブロー方式により形成されているもので良いが、より機械的強度の高いスパンボンド方式で形成されていることがより好ましい。
【0023】
防護シート層の下層には、通気性を妨げず、柔軟性の高い不織布により防護シート層の上層および中間層を保護することが好ましい。下層についても、不織布であれば特に限定されるものではないが、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布等の柔軟性の高い不織布材料を配置することが好ましい。
なお、上層、下層それぞれの層数については、強度保持の面で、最適な数を適宜選定することが出来る。
【0024】
本発明の防護シート層に用いられる上層、下層のシート材料は、綿、毛、麻(リネン、ラミー)類等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、精製セルロース等の再生セルロース繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル類、その他合成繊維(ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリウレタン、アセテート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、フッ素、ポリベンザゾール、ポリ乳酸等)が挙げられる。単独、2種類以上の混合(混繊、混紡)、多層構造からなる不織布であっても構わない。
【0025】
本発明の防護シート層の上層に使用する不織布は、後述する近赤外波長領域における偽装迷彩性(波長コントロール)された外層付加層を使用した偽装迷彩性能を有する防護衣服に使用される場合には、赤外線吸収剤の練り込みが可能である樹脂からなることが好ましい。カーボンブラック等の赤外線吸収剤が練り込み可能な樹脂としては、ポリエステル、共重合ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、シリコン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。このような赤外線吸収剤が練り込まれた樹脂を用いることにより、偽装迷彩性についても性能を満足させることができる。赤外線吸収剤の練り込みの無い樹脂からなる不織布を使用する場合、上層生地からの光の反射が生じ、偽装迷彩性を損なうことが懸念される。
【0026】
また、赤外線吸収剤を練り込む量としては、通常0.2〜10重量%含まれていることが好ましい。赤外線吸収剤の含有量が、0.2重量%未満である場合には、十分な赤外線吸収性能が発現せず、逆に10重量%を超える場合には不織布の製造が悪くなる。
【0027】
さらには、赤外線吸収剤の練り込みが不可能な素材は、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維等が挙げられる。当該素材に関してはシート材料に成形した後、バインダー樹脂等を介して、赤外線吸収剤を固着させることにより、最上層の不織布材料が得られる。なお、赤外線吸収剤が練り込み可能な素材についても、バインダーを介して赤外線吸収剤を固着させても良い。
【0028】
赤外線吸収剤のシート材料への練りこみは当該分野で公知の手段により行うことが出来る。例えば、赤外線吸収剤をシート材料の1つである不織布に練り込む方法としては、赤外線吸収剤を公知の手段で練りこんだマスターバッチを作成後、乾式紡糸する方法、または、湿式紡糸等により加工する方法が挙げられる。
【0029】
赤外線吸収剤を固着させる場合には、接着方法、接着剤の種類等、特に限定されないが、固着させる接着剤には、例えば、ポリウレタン系架橋型樹脂、アクリル系架橋型樹脂(例えば、自己架橋型アクリル酸エステル系バインダー樹脂等)、シリコン系架橋型樹脂、エポキシ系架橋型樹脂、ポリアミド系架橋型樹脂、ポリエステル系架橋型樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられ、これらは、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、洗濯耐久性の固着効果を有するもの、特に耐熱性および洗濯耐久性の両方を兼ね備えている点から、シリコン系架橋型樹脂、もしくは自己架橋型アクリル酸エステル系樹脂が好ましい。
【0030】
赤外線吸収剤を固着させる方法としては、赤外線吸収剤を保有する加工液を、パディング法、含浸法、スプレー法、コーティング法当の方法により付与し、次いで乾燥、キュアリングする方法が挙げられる。乾燥は、約80℃以上200℃以下で30秒以上60秒以下、特に約95℃以上120℃以下で、1分以上30分以下で実施することが望ましい。また、乾燥後には、強固に固着させるためにキュアリングを実施することが望ましい。キュアリングは、約130℃以上180℃以下で30秒以上10分以下で実施することが好ましい。
【0031】
上記加工樹脂中には、柔軟剤、風合い調整剤、触媒、pH調整剤、機能加工剤、増粘剤等を配合してもよく、これらはそれぞれの用途に応じて単独で使用しても2種類以上併用してもよい。
【0032】
本発明の防護シート層の上層、下層のそれぞれの質量は、10g/m
2以上150g/m
2以下であること好ましい。より好ましくは、20g/m
2以上120g/m
2以下である。質量が10g/m
2未満であると、中間層の保護層としては十分に機能しない。一方、150g/m
2を越えると、材料自体が固くなり柔軟性に劣る。
【0033】
本発明の防護シート層の上層、下層のそれぞれの厚さは、0.05mm以上0.8mm以下であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、中間層の保護層としての機能を満たし、更には、通気性、使用感のバランスに優れた、防護材料が得られる。
【0034】
本発明の防護シート層の上層、下層それぞれの通気性は、JIS L1096(2010) 8.26.1 A法(フラジール形法)に記載の方法による通気性試験で、100cm
3/cm
2・sec以上500cm
3/cm
2・sec以下であることが好ましい。より好ましくは、150cm
3/cm
2・sec以上400cm
3/cm
2・sec以下である。通気性が100cm
3/cm
2・sec未満であると、中間層を含めた防護シート層とガス吸着層からなる防護シートを使用した防護衣服を着用した場合に、着用時の蒸れ感につながり、使用感を満足出来ない原因となる。一方、500cm
3/cm
2・secを超える場合には、十分な保護層とはならない問題が生じる。
【0035】
本発明の防護シート層での下層の積層目的は、前述の通り防護シート層の上層および中間層を保護すること、および耐液防護性を付与することである。そのため、下層については、AATCC Test Method 118−2002のはつ油度が3級以上であり、好ましくは4級以上である。下層のはつ油度が3級未満であれば、防護シートの耐液防護性能が要求性能を満足できなくなる。
【0036】
本発明の防護シート層の下層は、フッ素樹脂系、シリコン樹脂系、ワックス樹脂系、天然ヤシ油系等のはつ油加工剤、好ましくはフッ素樹脂系はつ油加工剤をコーティングすることにより、AATCC Test Method 118−2002のはつ油度を3級以上とすることができる。コーティング方法としては、公知の加工法により加工できるものであり、スプレーによる噴霧や含浸加工などが挙げられる。はつ油度に関しては、はつ油加工剤の濃度、付着量等を適宜調整することにより、調整可能である。
【0037】
本発明の防護シート層の中間層の主たる積層目的は、優れた粒子除去性能を付与である。そのため、中間層に用いる不織布の平均単繊維直径は、10nm以上2000nm以下とする。なお、中間層に関しては、AATCC Test Method 118−2002のはつ油度を3級以上とすることが好ましい。これは、中間層にも耐液防護性を付与することで、防護材料により優れた耐液防護性能を付与することができるからである。
【0038】
本発明の防護シート層での上層の積層目的は、加圧下における耐液防護性能を向上することである。そのため、上層については、AATCC Test Method 118−2002のはつ油度が2級以下が好ましく、より好ましくは1級以下である。
上層のはつ油度が低い方が好ましい理由は、上層で液の拡散性を高くすることで、液状有機化学物質を出来る限り均一に分散させ、中間層および下層の一部の箇所に過度に負荷がかかることを防止するためである。
すなわち、上層で液を拡散させ、下層で液の透過を防ぐという役割を分担することにより、特に加圧下における耐液防護性能を向上させるものである。
【0039】
防護シート層の各層の積層手段としては、以下の方法が挙げられる。第1の方法としては、上層、下層の保護層のいずれかへ中間層を接着剤により接着する。第2の方法は、予め作製した上層もしくは下層のいずれかにエレクトロスピニング法等により中間層を直接塗布したのち、もう一方を接着剤により積層する方法がある。更には、第3の方法としては、ニードルパンチ、水流交絡、超音波等により3層を積層させる方法等があり、特に限定されるものではないが、耐液浸透性能を考慮すると、物理的に材料を破壊することなく積層が可能な、第1、第2の接着剤を使用した積層方法が好ましい方法である。なお、上層、下層それぞれの積層数については、強度保持の面、防護性能等から最適な数を適宜選定することが出来る。材料の積層による破壊や使用耐久性等を考慮すると第1の接着剤により接着させる方法が好ましい。
【0040】
本発明の防護シート層に使用する接着剤としては、ウレタン系、ビニルアルコール系、エステル系、エポキシ系、塩化ビニル系、オレフィン系、アミド系等が挙げられるが、積層後の柔軟性、風合い、耐久性等を考慮すると、ウレタン系、エステル系、アミド系が好ましい。なお、接着剤は、ガス吸着性能を考慮すると、無溶剤型の接着剤とすることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、樹脂状の接着剤以外にも、不織布状の接着剤を使用し積層することは、コストや加工性において有用な手段である。
【0041】
使用する接着剤は、洗濯加工性を考慮すると上記に記載のウレタン系の接着剤の中でも湿気硬化型のポリウレタン接着剤を使用することが好ましい。また、防護衣素材とした際に通気性を確保するためにも、接着剤を全面に塗布する方式ではなく、部分的に接着剤を塗布し積層した部分接着を適用することが好ましい。
【0042】
部分接着の方法としては、特に限定されないが、柔軟性、通気性等を考慮すると、グラビア方式やスクリーン方式、スプレー方式等により非全面のドット状、格子状、スパイラル状、棒状に接着剤を塗布して接着する方法が好ましい。
【0043】
使用する接着剤の塗布量としては、3g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましい。より好ましくは、5g/m
2以上20g/m
2以下である。塗布量が3g/m
2未満であると、中間層との接着性が悪く、洗濯、乾燥等を行った際に浮き等が生じることが懸念される。一方、30g/m
2を越える場合には、積層時の風合いが硬くなり、通気性も低下することが懸念される。
【0044】
使用する接着剤のメルトフローレート(MFR値)としては、好ましくは150g/10min以下であり、より好ましくは100g/10min以下である。MFR値を150g/10min未満とすることで、コア層の表面を接着剤により被覆される面積が小さくなり、積層による通気性の低下を抑制することが出来る。
【0045】
本発明の防護シート層の質量は、30g/m
2以上200g/m
2以下であること好ましい。より好ましくは、50g/m
2以上150g/m
2以下である。質量が30g/m
2未満であると、機械的強度が不足する。一方で、200g/m
2を越えると、通気性が低下し、更には、防護衣服とした場合に、着用性、運動追従性、使用感を満足出来ないといった原因となる。
【0046】
本発明の防護シート層の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であること好ましい。かかる範囲とすることにより、粒子除去性能、加圧時における耐液性能、更には、通気性、使用感のバランスに優れた、防護シートが得られる。
【0047】
本発明の防護シート層の通気性は、JIS L1096(2010) 8.26.1(フラジール形法)に記載の方法による通気性試験で、5cm
3/cm
2・sec以上80cm
3/cm
2・sec以下であることが好ましい。より好ましくは、7cm
3/cm
2・sec以上50cm
3/cm
2・sec以下である。通気性が5cm
3/cm
2・sec未満であると、防護衣着用時の蒸れ感につながり、使用感を満足出来ない原因となる。一方、80cm
3/cm
2・secを超える場合には、粒子除去性能、更には加圧時における耐液性能が悪くなる。
【0048】
本発明の防護シート層の防水性は、JIS L1092(2009) 7.1(静水圧法)に記載の方法による耐水圧試験で、70mm以上1300mm以下であることが好ましい。より好ましくは、80mm以上1200mm以下である。水頭が70mm未満であると、加圧時の耐液性能、粒子除去性能を満足出来ない原因となり、一方、1300mmを越えると、防護性能は高くなるが、通気性が低く、防護衣とした場合の着用間、使用感の優れたものとはならない。
【0049】
本発明の防護シート層の上層および/または下層にガス吸着層を積層することで、ガスに対する防護性も付与できるものとなる。ガス吸着層とは、活性炭やカーボンブラックなどの炭素系吸着材、あるいは、シリカゲル、ゼオライト系吸着材、炭化ケイ素、活性アルミナなどの無機系吸着材等からなるガス吸着材が挙げられるが、対象とする被吸着物質に応じて適宜選択されることができる。その中でも広範囲なガスに対応できる活性炭が好ましく、特に吸着速度や吸着容量が大きく少量の使用で効果的なガス透過抑制能が得られる繊維状活性炭がより好ましい。
【0050】
被吸着物質としてのガスには、炭素元素を1つ以上持つガス状化合物が含まれる。例えば、ガス状化合物には、50以上の比較的大きな分子量を持ち、活性炭等のガス吸着層が吸着可能なガス状化学物質が含まれる。具体的には、農薬、殺虫剤、除草剤に使用される有機リン系化合物や、塗装作業などに使用されるトルエン、塩化メチレン、クロロホルムなどの一般的な有機溶剤が挙げられる。
【0051】
ガス吸着層に繊維状活性炭を用いる場合、そのBET比表面積は、700m
2/g以上3000m
2/g以下が好ましく、1000m
2/g以上2500m
2/g以下がより好ましい。BET比表面積が上記範囲未満であると、十分な防護性を得るために多くの活性炭が必要となり材料が重くなり、柔軟性が劣ることが懸念される。一方、上記範囲より大きくなると、吸着したガス状有機化学物質を脱離する問題が起こりうる。
【0052】
ガス吸着層における繊維状活性炭の質量としては、50g/m
2以上300g/m
2以下が好ましく、より好ましくは70g/m
2以上250g/m
2以下である。質量が上記範囲未満であると、吸着できる容量が小さくなり使用時間が制限される。一方、上記範囲より大きくなると、材料の柔軟性が劣ることが懸念される。
【0053】
繊維状活性炭の原料としては、綿、麻といった天然セルロース繊維の他、レーヨン、ポリノジック、溶剤紡糸法によるといった再生セルロース繊維、さらにはポリビニルアルコール繊維、アクリル系繊維、芳香族ポリアミド繊維、リグニン繊維、フェノール系繊維、石油ピッチ繊維等の合成繊維が挙げられるが、得られる繊維状活性炭の物性(強度等)や吸着性能から再生セルロース繊維、フェノール系繊維、アクリル系繊維が好ましい。繊維状活性炭は、従来公知の方法によって製造されることができるが、例えばこれらの原料繊維の短繊維あるいは長繊維を用いて製織、製編、不織布化した布帛に必要に応じて適当な耐炎化剤を含有させた後、450℃以下の温度で耐炎化処理を施し、次いで500℃以上1000℃以下の温度で炭化賦活することによって製造されることができる。
【0054】
ガス吸着層の作成方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えばシート基材にガス吸着剤をバインダーにより接着する方法、あるいはガス吸着剤を適当なパルプおよびバインダーを含めスラリー状とし、湿式抄紙機により抄造する方法、あるいはガス吸着剤の原料繊維をあらかじめ製織、製編、不織布化し、必要に応じて耐炎化処理したのち炭化・賦活する方法を採用することができる。
【0055】
ガス吸着層は、織物、編物、不織布、またはフェルトのいずれかの形態を有することが好ましい。これらのうち織物または編物の形態が通気性、積層の容易性、柔軟性などの面から好ましい。
【0056】
防護シート層とガス吸着層の積層手段としては、通気性を考慮すると、部分的に接着されていることが好ましい。部分接着に使用する接着剤としては、特に限定されないが、合成ゴム、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂系、ポリエステル系、塩化ビニル等の溶剤型もしくは無溶剤接着剤が好ましい。なお、溶剤系接着剤を使用する場合には、接着剤に含有する有機溶剤がガス吸着層により吸着され、ガス吸着性能が低下する恐れがあるため、脱着工程により十分に接着剤中の溶剤を気化させる必要がある。ガス吸着層に吸着された溶剤の脱着方法については、接着剤に使用されている溶剤の種類に応じて設定する必要がある。ガス吸着層に対する残存溶剤率は20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。
【0057】
部分接着の方法としては、特に限定されないが、柔軟性、通気性等を考慮すると、グラビア方式やスクリーン方式、スプレー塗工等により非全面のドット状、格子状、スパイラル状、棒状に接着剤を均一に塗布して接着する方法が好ましい。なお、接着剤は、防護シート面またはガス吸着層面のいずれでも塗布することが可能であるが、ガス吸着性能を考慮すると、防護シート面へ塗布することが好ましい。
【0058】
接着剤の塗工量としては、5g/m
2以上50g/m
2以下であることが好ましい。より好ましくは、10g/m
2以上40g/m
2以下である。塗工量が上記範囲未満であると、接着強度の低下の問題が生じ、一方、上記範囲を越えると、柔軟性と通気性が低下する原因となる。
【0059】
部分接着時の接着面積の割合(ガス吸着層の面積に対する接着剤塗布面積の割合)は5%以上80%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上70%以下である。割合が上記範囲未満であると、接着強度が低下する問題が発生し、一方、上記範囲を越えると、接着剤の塗工量が大きくなり、部分接着にはなりにくく、柔軟性、通気性が低下する問題が発生する。
【0060】
グラビア方式、スクリーン方式もしくはスプレー方式により部分接着させる場合、使用するグラビアロール、スクリーンまたはスプレーノズル条件等は、接着面積および接着剤塗布重量に応じて適宜選択することができる。グラビア方式の場合には、グラビアの線数、深度により、スクリーン方式の場合には、メッシュ厚みと開口率、スプレー方式の場合には、ノズル形状、ノズル圧等によりこれらを任意に設定することが可能である。
【0061】
また、防護シート層とガス吸着層との接着剤を介した接着界面での剥離強度は、材料の長さ方向と幅方向の両方において30gf/cm以上であることが好ましく、より好ましくは40gf/cm以上である。剥離強度が低いと、防護シートとガス吸着層の剥離が生じ、ガス吸着層の強度もしくは衣服としたときの取り扱い性等の問題が発生する。剥離強度の上限は、現実的には150gf/cmである。
【0062】
上記のように防護シート層とガス吸着層からなる防護材料の質量としては、500g/m
2以下が好ましく、より好ましくは400g/m
2以下である。積層体の質量が上記範囲を越えると、重量が重く柔軟性に乏しい材料にとなり、防護衣服とした場合には、着用性、運動追従性、使用感を満足出来ないといった問題となる。質量の下限は、現実的には100g/m
2である。
【0063】
防護シート層とガス吸着層からなる防護材料の厚みとしては、5.0mm以下が好ましく、さらに好ましくは4.0mm以下である。厚みが上記範囲を越えると、積層体のごわつきが大きくなり、防護衣への加工性が悪くなる。厚みの下限は、現実的には1.0mmである。
【0064】
防護シート層とガス吸着層からなる防護材料の柔軟性の指標となる剛軟性は、材料の長さ方向と幅方向の両方において0.08N・cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05N・cm以下である。剛軟性が上記範囲を越えると、材料が堅くなり、吸着シートとしての加工が困難になる。剛軟性の下限は、現実的には0.002N・cmである。
【0065】
防護シート層とガス吸着層からなる防護材料の通気性としては、JIS L1096(2010) 8.26.1(フラジール形法)に記載の方法による通気性試験で、5cm
3/cm
2・sec以上である。好ましくは7cm
3/cm
2・sec以上100cm
3/cm
2・sec以下であり、より好ましくは10cm
3/cm
2・sec以上80cm
3/cm
2・sec以下である。通気性が上記下限未満では、通気性が劣り、上記範囲を越えると接着が不充分な材料となり、剥離の問題が生じ、さらには、耐粒子性に劣ることがある。
【0066】
防護シート層とガス吸着層からなる防護材料のトルエン吸着性能(トルエンガス平衡吸着量)としては、20g/m
2以上であることが好ましい。より好ましくは25g/m
2以上である。トルエン吸着性能が上記範囲未満では、吸着性が劣りガスに対する防護性が劣る結果となる。トルエン吸着性能の上限は、現実的には200g/m
2である。
【0067】
さらには、防護シートの液状化学物質に対する防護性をより向上させるために、ガス吸着層に予めはっ水はつ油加工を施した材料を使用してもよい。はっ水はつ油加工は従来公知のいかなる方法でもよく、特に限定されるものでない。防護材料の防護シート層を構成する中間層および下層が、JIS L1092(2009) 7.2に記載のスプレー試験を実施した場合のはっ水度が2以上、AATCC Test Method 118−2002によるはつ油度が3級以上であることが好ましい。
【0068】
さらには、防護シート層とガス吸着層からなる防護材料に、機械的強度の大幅な向上を目的としたり、対象ガスが複数にわたるときなどは、防護シート層およびガス吸着層をそれぞれ必要枚数重ね合わせて使用することは有効である。
【0069】
防護シート層とガス吸着層からなる防護材料の最も外側に外層付加層、最も内側に内層付加層を少なくともそれぞれ1層以上必要に応じて設けても良い。外層付加層の目的としては、外部から与えられる機械的な力から防護シート層、ガス吸着層を保護することと、はっ水性とはつ油性が付与されている織物、編物あるいは不織布を適用することで、耐液浸透性をさらに向上させることが可能となる。外層付加層としては、JIS L1092(2009) 7.2に記載のスプレー試験を実施した場合のはっ水度が2以上、AATCC Test Method 118−2002によるはつ油度が3級以上である織物、編物、あるいは、不織布などが好適に用いることができるが、柔軟性を考慮したものの使用が推奨される。防護シート層とガス吸着層からなる防護材料と外層付加層とは、あらかじめ接着剤により接着されている形態でもよいし、柔軟性を考慮し、接着せずに重ね合わせた状態で縫製加工し、防護衣服を作製してもよい。また、内層付加層としては、織物、編物、不織布、開孔フィルム等の材料があげられるが、通気性、柔軟性等の観点から粗い密度で製織あるいは製編された織物あるいは編物が好ましい。内層付加層の目的は、外部から与えられる機械的な力から防護シートおよびガス吸着層を保護する役割と防護衣着用者の汗によるべたつき感を抑制する役割である。防護シートとガス吸着層からなる防護材料と内層付加層とは、あらかじめ接着剤により接着されている形態でもよいし、柔軟性を考慮し、接着せずに重ね合わせた状態で縫製加工し、もしくは、あらかじめガス吸着層とキルティング加工した後、防護シートと積層を行っても良い。キルティング加工は、従来公知の方法を採用することができ、ポリエステル、ナイロン、綿等のミシン糸が好ましく使用される。液状物質に対する防護性を考慮すると、はつ油性ミシン糸を使用することが特に好ましい。
【0070】
外層付加層および/また内層付加層を付与した防護材料の積層体の質量としては、700g/m
2以下が好ましく、より好ましくは600g/m
2以下である。700g/m
2を超えると防護衣服の重量が大きくなり熱ストレスの原因となる。
【実施例】
【0071】
次に、実施例および比較例を用いて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の評価方法は以下の通りである。
【0072】
(1)加圧耐液浸透性試験:この試験の説明図を
図2に示す。スライドガラス12上にろ紙11を置き、その上に、内層付加層、ガス吸着層、防護シート、外層付加層10、9の順に配置し、試験液8(赤色染料を溶解したフタル酸ジプロピル)5μLを外層付加層へ滴下し、その試験液上へおもり(1kg/cm
2)を乗せ加圧し、24時間経過後にろ紙の呈色の程度により液の浸透性を判定した。呈色無しは○、僅かに呈色有りは△、呈色有りは×で表示した。
【0073】
(2)耐ガス浸透性試験:この試験の説明図を
図3に示す。内容積150ccの2つのガラスセル(上方セル13と下方セル18)で外層付加層、防護シート、ガス吸着層、内層付加層を挟み込み、周囲をパラフィン17により密閉する。この試験容器の上方セル13から試験液15である酢酸3メトキシブチル10μLを外層付加層の上に滴下する。これを25±2℃に設定した恒温ボックスに入れ、下方セル18側のガス濃度を所定時間ごと(1、3、5、7、24時間経過後)にサンプリングし、ガスクロマトグラフィにより試験品を透過したガス濃度を測定する。
【0074】
(3)耐粒子透過性試験:この試験の説明図を
図4に示す。外層付加層、防護シート、ガス吸着層、内層付加層をダクト19内に設置し、空気濾過速度が5cm/secになるように大気を通気させ、防護シート上流、下流の0.3〜0.5μm粒子の個数濃度を粒子計測器(パーティクルカウンタ)24にて計測し、次式にて捕集効率を算出した。
0.3μm粒子捕集効率(%)={1−(下流側濃度/上流側濃度)}×100
【0075】
(4)平均単繊維直径:走査型電子顕微鏡写真を適当な倍率でとり、繊維側面を100本以上測定して、その平均値から求めた。
【0076】
(5)質量:JIS−L1096(2010)8.3で測定した。
【0077】
(6)厚み:JIS−L1096(2010)8.4で測定した。
【0078】
(7)通気性:JIS−L1096(2010)8.26.1 A法(フラジール形法)で測定した。
【0079】
(8)比表面積:窒素の吸着等温線を求め、これを基にしてBET法により算出した。
【0080】
(9)ガス平衡吸着量:JIS−K1477(2007)で測定した。
【0081】
(10)剥離強度:JIS−L1089(2007)7.10で、防護シート層とガス吸着層の界面での剥離強度を測定した。
【0082】
(11)はっ水度:JIS−L1092(2009)7.2スプレー試験による。
【0083】
(12)はつ油度:AATCC Test Method 118−2002による。
【0084】
(13)着用性試験:着用モニター試験としては、外層付加層、防護シート、ガス吸着層および内層付加層からなる防護衣材料で上衣、下衣、フードが連結したつなぎ形状の防護衣服を作製した後、環境温湿度20℃65%RHの人工気候室で、送風機により体幹前部に3m/secとなるように送風を行いながら、30分間トレッドミル上を5km/hrで駆け足し、30分間での鼓膜温上昇、最大心拍数および主観申告により温熱快適感から着用性を判定した。なお、被験者数は10名とした。
【0085】
ガス吸着層の作製
ガス吸着層として、編物の形態の繊維状活性炭を以下の方法で作製した。単糸繊度2.2dtex、20番手のノボラック系フェノール樹脂繊維紡績糸からなる質量220g/m
2の丸編物を410℃の不活性雰囲気中で30分間加熱し、次に水蒸気を12容量%含有する雰囲気中で890℃の温度で2時間賦活した。得られたガス吸着層は、絶乾質量が100g/m
2、比表面積が1500m
2/g、厚さが1.00mm、通気性が水位計1.27cmの圧力差で200cm
3/cm
2・sec、トルエン吸着性能(トルエンガス平衡吸着量)が50g/m
2であった。
【0086】
外層付加層を以下の方法で作製した。綿糸40番手を使用した平織物に、フッ素系はっ水はつ油加工剤(旭硝子株式会社製アサヒガードAG7105)溶液にパッド乾燥後、180℃でキュアし、樹脂固形分で2.0重量%固着させた。得られた織物は、厚さ0.2mm、質量120g/m
2、通気性は水位計1.27cmの圧力差で60cm
3/cm
2・sec、はっ水度5、はつ油度6級であった。
【0087】
内層付加層を以下の方法で作製した。28ゲージ2枚筬トリコット機により、フロント筬にポリエステルフィラメント(82.5dtex、36フィラメント)を、またバック筬にポリエステルフィラメント(22dtex、モノフィラメント)を各々セットして、フロント1−2/1−0、バック1−0/2−3の組織で経編地を編成後、定法により精錬し、更に分散染料により染色した。このようにして得られた編地は、厚さ0.28mm、質量50g/m
2、通気性は水位計1.27cmの圧力差で700cm
3/cm
2・sec、はっ水度5、はつ油度6級であった。
【0088】
(実施例1)
防護シート層の作製としては、下層に質量40g/m
2のPETスパンレース不織布(ユウホウ株式会社製)を使用し、そのスパンレース不織布へ、質量15g/m
2のポリエステル系不織布状熱可塑性接着剤(呉羽テック株式会社製ダイナック(登録商標)LNS0015)を予め重ね合わせ、その接着剤面へ、エレクトロスピニング方式により、平均単繊維直径100nm、質量0.5g/m
2となるように、ポリウレタン製ナノファイバー不織布を作製した。その後、接着層を含む3層を加熱ローラにより圧着した後、3wt%のフッ素系はつ油剤(明成化学工業株式会社製アサヒガードAG970)の加工浴に浸漬して乾燥し、100℃で乾燥処理し、150℃まで上げてキュアを施した。これらの材料のAATCC Test Method 118−2002によるはつ油度は、スパンレース不織布側およびナノファイバー不織布側ともに5級であった。さらに、上層として、質量30g/m
2のスパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製エクーレ(登録商標)3301AD)をナノファイバー上に同様の接着剤により接着させることで防護シート層を作製した。
さらに、防護シート層のスパンレース不織布側へウレタン系反応性ホットメルト(DIC株式会社製、タイフォースH−1041)をグラビア方式により接着剤量が10g/m
2となるように塗布した後、上記のガス吸着層と重ね合わせて、全材料をロールにて仮圧着させた後、30℃、65%RHの恒温恒湿チャンバーに24hr放置し、硬化処理を行い、防護材料とした。さらに、防護材料のスパンボンド不織布側へ外層付加層、ガス吸着層側へ内層付加層を重ね合わせた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0089】
(実施例2)
防護シート層の中間層において平均単繊維直径100nm、質量2g/m
2のポリウレタン製ナノファイバー不織布を中間層に使用した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0090】
(実施例3)
防護シート層の中間層において平均単繊維直径200nm、質量0.5g/m
2のポリウレタン製ナノファイバー不織布を中間層に使用した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0091】
(実施例4)
質量15g/m
2のポリプロピレンからなるメルトブローン不織布(三井化学株式会社製 SYNTEX(登録商標) nano6;平均単繊維直径600nm)を防護シート層の中間層に使用し、質量15g/m
2のポリエステル系不織布状熱可塑性接着剤(呉羽テック株式会社製ダイナック(登録商標)LNS0015)で下層の質量40g/m
2PETスパンレース不織布(ユウホウ株式会社製)を接着した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0092】
(実施例5)
質量18g/m
2のPP製メルトブローン不織布(三井化学株式会社製 SYNTEX(登録商標) nano10;平均単繊維直径900nm)を防護シート層の中間層に使用した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0093】
(実施例6)
防護シート層の上層において中間層、下層と同様のフッ素系はつ油剤(明成化学工業株式会社製アサヒガードAG970)を用いて0.5wt%の加工浴で処理した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シートと防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0094】
(実施例7)
防護シート層の上層において中層、下層と同様のフッ素系はつ油剤(明成化学工業株式会社製アサヒガードAG970)を用いて処理した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シートと防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0095】
(比較例1)
平均単繊維直径2500nm、質量30g/m
2のPET製スパンレース不織布(ユウホウ株式会社製)を防護シート層の中間層に使用した以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0096】
(比較例2)
実施例1と同様の防護シート層の中間層と下層へはつ油加工を施さない材料とした以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0097】
(比較例3)
防護シート層に中間層を積層しない以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0098】
(比較例4)
ポリウレタン樹脂をナイロン織物へコーティングした防水透湿布帛(東洋クロス株式会社社製ジオバイザー)を防護シート層の中間層に使用した以外は、実施例4と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0099】
(比較例5)
実施例1で使用した防護シート層の中間層の質量を20g/m
2とした以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0100】
(比較例6)
ガス吸着層を積層しない以外は、実施例1と同様の方法により防護衣材料を作製した。得られた防護衣材料の加圧耐液浸透性試験結果、耐ガス浸透性試験結果、耐粒子透過性試験結果、着用性試験結果および防護シート層と防護材料それぞれの物性値をそれぞれ表1から表5に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
表1〜5の結果から明らかなように、実施例1〜5の防護衣材料は、耐粒子性、耐液浸透性、耐ガス浸透性および着用性の全てにおいて良好であるのに対して、比較例1と3の防護衣材料は、耐液浸透性、耐粒子性が低く、比較例2の防護衣材料は、耐液浸透性が低く、比較例4と5の防護衣材料は、通気性が低いため着用性が劣り、比較例6の防護衣材料は、耐ガス浸透性が低く、比較例1〜6の防護衣材料は、いずれかの評価項目で実施例よりも劣るものであった。