(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2以上の吐出口からそれぞれなると共に前記2以上の吐出口から吐出される液滴によって1つの画素をそれぞれ形成する複数の吐出口組、複数の圧力室、前記吐出口組と前記圧力室とをそれぞれ繋ぐ複数の個別流路、及び、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与して前記複数の吐出口組の前記吐出口から選択的に液滴を吐出させるエネルギー付与手段を含む、液体吐出ヘッドと、
環状部材及び対向部材を有し、前記液体吐出ヘッドにおける前記複数の吐出口組が形成された吐出面と対向する吐出空間が外部空間から区画された区画状態と前記吐出空間が前記外部空間に開放された開放状態とを取り得るように構成され、前記区画状態では、前記環状部材が前記吐出空間を取り囲み、前記対向部材が前記吐出空間を挟んで前記吐出面と対向するキャップ機構と、
複数の前記吐出口近傍の湿度を検知する湿度センサと、
前記キャップ機構によって前記区画状態とされた前記吐出空間に加湿空気を供給することが可能な供給口及び前記キャップ機構によって前記区画状態とされた前記吐出空間から空気を排出することが可能な排出口を有する加湿機構を含み、複数の前記吐出口近傍の湿度を調整する湿度調整手段と、
前記湿度センサが検知した湿度に基づいて、複数の前記吐出口近傍の湿度が所定範囲内に維持されるように、前記湿度調整手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記複数の吐出口組が、前記吐出口から吐出された液滴を受ける記録媒体が搬送される搬送方向と直交する主走査方向に並んで配置されて列を形成し、
前記加湿機構は、前記複数の吐出口組に対して前記搬送方向の上流側で前記吐出口組の列に沿って前記主走査方向に伸びた供給管を有し、前記供給管に複数の前記供給口が前記主走査方向に間隔をなして形成されており、
前記制御手段は、前記湿度センサが検知した湿度が前記所定範囲内の湿度よりも低い場合に、前記キャップ機構によって前記開放状態とされた前記吐出空間に前記供給口から加湿空気が供給されるように、前記加湿機構を制御することを特徴とする、液体吐出装置。
前記加湿機構は、前記複数の吐出口組に対して前記搬送方向の下流側で前記吐出口組の列に沿って前記主走査方向に伸びた排出管を有し、前記排出管に複数の前記排出口が前記主走査方向に間隔をなして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
前記キャップ機構は、画像記録に際して記録に適した間隔で前記吐出面と対向配置される前記対向部材と、前記液体吐出ヘッドに固定されていて前記吐出面と直交する方向から見たとき前記吐出面を全周に亘って包囲する弾性部を含む前記環状部材とを有し、
前記吐出空間は、前記弾性部が前記対向部材に当接することで前記区画状態を取り、前記弾性部が前記対向部材から離隔することで前記開放状態を取ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置。
前記制御手段は、前記吐出空間が前記区画状態にある一定期間に、前記吐出空間の空気が前記排出口から排出され、且つ、前記吐出空間に前記供給口から加湿空気が供給されるように、前記加湿機構を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
前記制御手段は、前記湿度センサが検知した湿度が前記所定範囲内の湿度よりも低い場合に、前記湿度センサが検知した湿度が低いほど前記吐出空間への加湿空気の供給量が多くなるように、前記加湿機構を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
先ず、
図1を参照し、本発明一実施形態に係るインクジェット式プリンタ101の全体構成について説明する。
【0015】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間には、ヘッド1、プラテン6、用紙センサ26、搬送ユニット40、給紙ユニット23、加湿ユニット50(
図4参照)、コントローラ100等が配置されている。筐体101aの内部空間には、給紙ユニット23から排紙部4に向けて、
図1に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される搬送経路が形成されている。
【0016】
ヘッド1は、主走査方向(
図1の紙面に垂直な方向)に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド1の下面は、複数の吐出口108が開口した吐出面1aである(
図2(b)参照)。ヘッド1は、ホルダ5を介して筐体101aに支持されている。ヘッド1は、
図6に示すように、各側面にサイドカバー70が固定されている。サイドカバー70は、側面から外側に突出した鍔状部を有し、上面の全周がホルダ5の下面に固定されている。吐出面1aとプラテン6の表面との間には、所定の間隙が形成されている。ホルダ5には、ヘッド1に加え、区画部91が取り付けられている。区画部91は、吐出面1aの外周を囲む環状の部材であり、キャップ機構90を構成する。キャップ機構90の構成については、後に詳述する。
【0017】
ヘッド1は、ヘッド本体3(
図2(a)参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、回路基板等が積層された積層体である。回路基板は、コントローラ100から入力された信号を調整し、FPC上のドライバICに出力する。ドライバICは、この信号を駆動信号に変換し、アクチュエータユニット21の各電極に伝達する。リザーバユニットは、内部にリザーバを有し、インクが一時的に貯留される。リザーバには、インクカートリッジ(図示略)からインクが供給される。駆動信号に基づいてアクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバ内のインクがヘッド本体3に供給され、吐出口108からインク滴として吐出される。ヘッド1のより具体的な構成については、後に詳述する。
【0018】
プラテン6は、平板であり、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出面1aよりも一回り大きな矩形状を有する。プラテン6は、吐出面1aと対向配置されて、記録に適した間隔を作る。
【0019】
用紙センサ26は、ヘッド1よりも搬送方向の上流側に配置され、用紙Pの先端を検知する。搬送方向は、搬送ユニット40によって用紙Pが搬送される方向である。用紙センサ26から出力された検知信号は、コントローラ100に入力される。
【0020】
搬送ユニット40は、プラテン6を挟んで、上流側搬送部40a及び下流側搬送部40bを含む。上流側搬送部40aは、ガイド31a,31b,31c及びローラ対32,33,34を有する。下流側搬送部40bは、ガイド38a,38b及びローラ対35,36,37を有する。各ローラ対32〜37のうち一方のローラは、コントローラ100による制御の下、搬送モータ40M(
図7参照)の駆動により回転する駆動ローラである。他方のローラは、駆動ローラに従動する従動ローラである。各ガイド31a〜31c,38a,38bは、対向して配置された一対の板からなる。
【0021】
給紙ユニット23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち給紙トレイ24が筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ24は、上面が開口した箱であり、複数の用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、コントローラ100による制御の下、給紙モータ25M(
図7参照)の駆動により回転し、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
【0022】
コントローラ100は、
図7に示すように、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)100aに加え、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)100c、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )100d、I/F(Interface)100e、I/O(Input/Output Port)100f等を有する。ROM100bには、CPU100aが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM100cには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。ASIC100dでは、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/F100eは、外部装置(プリンタ101に接続されたPC等)とのデータ送受信を行う。I/O100fは、各種センサの検知信号の入力/出力を行う。なお、コントローラ100がASIC100dを含まず、CPU100aが実行するプログラム等により画像データの書き換え、並び替え等が処理されてもよい。
【0023】
コントローラ100は、外部装置から供給された記録指令に基づいて、用紙P上に画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク滴吐出動作等を制御する。用紙Pは、給紙ユニット23から送り出された後、ローラ対32〜37に挟持され、ガイド31a〜31c,38a,38bに導かれて、排紙部4に向かう。途中、ヘッド1の上流側で、用紙Pの先端が用紙センサ26により検出される。ヘッド1の真下を通過する際、用紙Pは、裏面がプラテン6に支持され、表面に画像が記録される。このとき、コントローラ100の制御により、ヘッド1が駆動される。吐出口108からのインク滴吐出動作は、用紙センサ26による検出信号に基づいて開始され、画像データに基づいて行われる。画像が記録された用紙Pは、筐体101a上部の開口101bから排紙部4に排出される。
【0024】
次いで、
図2及び
図3を参照し、ヘッド1について詳細に説明する。
【0025】
ヘッド本体3は、
図2(a)に示すように、流路ユニット9及びアクチュエータユニット21を含み、主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。
【0026】
流路ユニット9は、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、略同一サイズの矩形状の金属プレート122,123,124,125,126,127,128,129,130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、
図2(a)に示すように、1の供給口105a、及び、複数の圧力室110の開口が形成されている。複数の圧力室110の開口は、主走査方向に一列に配置されている。流路ユニット9の内部には、
図3(a)に示すように、マニホールド流路105及び個別流路132が形成されている。マニホールド流路105は、供給口105aを一端に有し、複数の個別流路132と接続している。マニホールド流路105は、主走査方向に沿って延在している。個別流路132は、マニホールド流路105の出口から、流路抵抗調整用の絞りであるアパーチャ112、及び圧力室110を経て、吐出口組108xに至る。流路ユニット9の下面が、吐出面1aである。
【0027】
吐出口組108xは、
図2(b)に示すように、主走査方向に互いに隣接する2つの吐出口108から構成されている。吐出口組108xは、主走査方向に等間隔に配置されている。1つの吐出口組108xと、1つの圧力室110とが、1つの個別流路132によって繋がれている。各吐出口組108xを構成する2つの吐出口108からはインク滴が同時に吐出され、当該インク滴によって1つの画素が形成される。画素は、用紙P上に記録される画像を構成する要素であり、用紙P上の画像記録領域に対応してマトリックス状に配置される。
【0028】
流路ユニット9の最下層は、吐出口108の形成されたノズルプレート130であり、その下面が吐出面1aである。ノズルプレート130には、ノズル孔107が貫通形成され、吐出口108と上面130aの開口107aとが繋がれている。平面視で、吐出口108と開口107aとは同軸の円形で、開口107aは吐出口108を内包する。つまり、ノズル孔107は、開口107aから吐出口108にかけて先細りで、テーパ状である。
【0029】
リザーバユニットは、流路ユニット9の上面に固定されている。リザーバユニットの内部には、リザーバが形成され、インクが一時的に貯留される。インクは、カートリッジ(図示略)からリザーバに供給される。リザーバ内のインクは、供給口105aから流路ユニット9に供給される。
【0030】
アクチュエータユニット21は、
図2(a)に示すように、流路ユニット9の上面に固定されている。アクチュエータユニット21は、吐出面1aと直交する方向から見て主走査方向に長尺な矩形状であり、全ての圧力室110の開口を封止し、圧力室110の側壁を構成している。
【0031】
アクチュエータユニット21は、
図3(b)に示すように、3枚の圧電層161,162,163、個別電極135、及び共通電極134を含む。圧電層161〜163は、強誘電性のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスからなり、全ての圧力室110に跨る。個別電極135は、圧電層161の上面において、圧力室110毎に形成されている。共通電極134は、圧電層161,162の間において、全ての圧力室110に跨るように延在している。各個別電極135は、対応する圧力室110と対向する部分と対向しない部分とを有する。圧力室110と対向しない部分には、ランド136がそれぞれ形成されている。ランド136は、FPCの端子(図示略)と接続されている。
【0032】
圧電層161は、厚み方向に分極されており、個別電極135と共通電極134とで挟まれた活性部を有する。活性部は、d
31、d
33、d
15から選らばれる少なくとも1つの振動モード(本実施形態ではd
31)で変位する。圧電層162,163における活性部と対向する部分は非活性部である。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室110毎に、1層の活性部と2層の非活性部との積層体からなる、ユニモルフタイプの圧電型のアクチュエータを含む。活性部は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(圧電層161の面方向)に縮む。活性部と非活性部との間で歪み差が生じるので、アクチュエータが圧力室110に向かう凸状に変形(ユニモルフ変形)する。このように、各アクチュエータは、独立して変形可能である。
【0033】
次いで、
図4〜
図6を参照し、キャップ機構90の構成について説明する。
【0034】
キャップ機構90は、
図4に示すように、区画部91及びプラテン6を含む。区画部91は、
図6に示すように、弾性部92、剛性部93、及びダイアフラム94を含む。弾性部92及びダイアフラム94はゴム等の弾性材料からなり、剛性部93はステンレス等の剛材料からなる。弾性部92の先端は、断面が三角形の先細である。弾性部92の基端(先端と反対側の端部)に、剛性部93が固定されている。ダイアフラム94は、弾性部92の内周面とホルダ5の下面とを繋いでいる。本実施の形態では、ダイアフラム94は、内側面が、サイドカバー70の外側面とも繋がっている。剛性部93は、複数のギア95(
図4参照)と接続されている。
【0035】
コントローラ100による制御の下、区画部昇降モータ91M(
図7参照)が駆動し、ギア95が回転すると、剛性部93及び弾性部92が共に昇降する。これにより、区画部91は、弾性部92の先端がプラテン6の表面6aに当接する当接位置(
図4(a)に示す位置)と、弾性部92の先端が表面6aから離隔した離隔位置(
図4(b)及び
図6に示す位置)とを選択的に取る。区画部91が当接位置を取るとき、吐出面1aと対向する吐出空間V1が外部空間V2から区画される。区画部91が離隔位置を取るとき、吐出空間V1が外部空間V2に開放される。
【0036】
次いで、
図4〜
図6を参照し、加湿ユニット50の構成について説明する。
【0037】
加湿ユニット50は、
図4に示すように、配管53,54、タンク57、ポンプ58、供給パイプ60、及び排出パイプ80を含む。供給パイプ60及び排出パイプ80は、ヘッド1に組付けられている。タンク57は、下部空間に加湿液(例えば、純水、防腐剤を添加した水等)を貯留している。配管53は、一端がタンク57の下部空間と連通し、他端が排出パイプ80と連通している。配管54は、一端がタンク57の上部空間と連通し、他端が供給パイプ60と連通している。ポンプ58は、配管53の途中部に設けられている。供給パイプ60は、ヘッド1よりも搬送方向の上流側に配置されている。排出パイプ80は、ヘッド1よりも搬送方向の下流側に配置されている。
【0038】
コントローラ100による制御の下、ポンプ58が駆動すると、吐出空間V1内の空気が排出パイプ80から回収され、配管53を通り、タンク57内に流入する。当該流入した空気は、タンク57内に貯留された加湿液によって加湿された後、配管54を通り、供給パイプ60から吐出空間V1に供給される。
【0039】
供給パイプ60は、
図6(a)に示すように、L字状に屈曲しており、鉛直方向に延在するパイプ61及び主走査方向に延在するパイプ62を含む。パイプ61は、一端が配管54と連通し、他端がパイプ62の一端と連通している。パイプ61は、ホルダ5及びヘッド1のサイドカバー70を貫挿している。パイプ62は、一端がパイプ61と連通し、他端が閉鎖されている。パイプ62の上壁は、サイドカバー70の下面に固定されている。パイプ62の下壁には、複数の貫通孔62aが形成されている。貫通孔62aは、主走査方向に等間隔に設けられている。配管54からパイプ61内に流入した空気は、パイプ62内を通り、貫通孔62aから吐出空間V1に供給される。
【0040】
排出パイプ80は、供給パイプ60と同様に屈曲しており、鉛直方向に延在するパイプ81及び主走査方向に延在するパイプ82を含む。パイプ81は、一端が配管53と連通し、他端がパイプ82の一端と連通している。パイプ81は、ホルダ5及びサイドカバー70を貫挿している。パイプ82は、一端がパイプ81と連通し、他端が閉鎖されている。パイプ82の上壁は、サイドカバー70の下面に固定されている。パイプ82の下壁には、複数の貫通孔82aが形成されている。貫通孔82aは、主走査方向に等間隔に設けられている。吐出空間V1内の空気は、貫通孔82aを通ってパイプ82内に流入し、その後パイプ81を通って配管53に至る。供給パイプ60と排出パイプ80とは、ほぼ等しい形状・サイズを有し、吐出面1aの中心に関して点対称の関係に配置されている。
【0041】
サイドカバー70は、
図5及び
図6に示すように、ヘッド本体3の外周全体を囲む環状の枠体であり、流路ユニット9の外側面に固定されている。
【0042】
次いで、
図8を参照し、コントローラ100が実行するヘッド1のメンテナンスに係る制御について説明する。
【0043】
メンテナンスは、吐出口108内のインクの増粘を抑制するために行われる動作であり、キャッピング動作及び加湿動作を含む。キャッピング動作は、区画部91を当接位置に配置して、吐出空間V1を外部空間V2から区画する動作をいう。加湿動作は、ポンプ58の駆動により、吐出空間V1に加湿空気を供給する動作をいう。1つの印刷ジョブが終わった時点から説明する。この状態では、吐出空間V1は開放状態にある。このまま吐出動作が行われず、開放状態が続くと、ノズルは時間とともに乾燥が進むことになる。
【0044】
コントローラ100は、先ず、記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、コントローラ100は、前回記録指令を受信してから所定時間が経過したか否かを判断する(S2)。所定時間が経過していない場合(S2:NO)、コントローラ100は、処理をS1に戻す。所定時間が経過した場合(S2:YES)、コントローラ100は、キャッピング動作が行われるよう、キャップ機構90を制御する(S3)。S3では、キャッピング中のある一定期間に、加湿動作も行われる。このとき、加湿空気は、区画状態にある吐出空間V1に供給される。
【0045】
S3の後、コントローラ100は、記録指令を受信したか否かを判断する(S4)。記録指令を受信していない場合(S4:NO)、吐出空間V1が区画状態のまま、コントローラ100は、S4の処理を繰り返す。記録指令を受信した場合(S4:YES)、コントローラ100は、処理をS5に移す。S5では、アンキャッピング動作が行われる。吐出空間V1が外部空間V2に開放され、搬送経路が確保される。この後、コントローラ100は、処理をS6に移す。なお、S4において、記録指令の代わりに電源OFFの借号が受信されたときには、全ての動作を停止する。
【0046】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、コントローラ100は、湿度センサ27(
図7参照)からの検知信号をサンプリングすると共に、当該検知信号に基づいて吐出口108近傍の湿度が60%未満であるか否かを判断する(S6)。湿度センサ27は、吐出口108近傍の湿度を検知するものであり、例えば吐出面1aに固定されている。
【0047】
吐出口108近傍の湿度が60%以上の場合(S5:NO)、コントローラ100は、処理をS8に移す。吐出口108近傍の湿度が60%未満の場合(S6:YES)、コントローラ100は、加湿動作が行われるよう、加湿ユニット50を制御する(S7)。このとき、加湿空気は、キャップ機構90によって外部空間V2に開放された状態の吐出空間V1に供給される。
【0048】
S7の後、コントローラ100は、記録指令に基づいて記録が行われるよう、各部を制御する(S8)。S8の後、コントローラ100は、S1に戻り、新たな印刷ジョブの到来を待つ。
【0049】
S7において、コントローラ100は、加湿ユニット50の駆動を開始させた後、所定時間毎に、湿度センサ27からの検知信号をサンプリングすると共に、当該検知信号に基づいて吐出口108近傍の湿度が60%未満であるか否かを判断する。吐出口108近傍の湿度が60%未満の場合、コントローラ100は、加湿ユニット50の駆動を継続させる。吐出口108近傍の湿度が60%以上の場合、コントローラ100は、加湿ユニット50の駆動を停止させると共に、処理をS8に移す。
【0050】
S8において、コントローラ100は、用紙センサ26からの検出信号に基づいてヘッド1を駆動し、記録を行う。さらに、コントローラ100は、処理をS9に移す。ここでは、記録動作の完了(印刷ジョブの完了)が判定される。印刷ジョブが継続中(S9:NO)であれば、コントローラ100は、処理をS6に戻し、湿度センサ27による計測を行う。本実施の形態では、湿度計測の再実行は、所定時間毎の定期的である。このとき、湿度が依然として60%未満であれば加湿動作を継続し、60%以上であれば加湿動作を停止する。湿度の定期的なサンプリングと加湿動作の制御は、進行中の印刷ジョブが完了するまで続けられる。なお、印刷ジョブが完了した場合(S9:YES)、コントローラ100は、処理をS1に戻す。
【0051】
以上に述べたように、本実施形態によれば、後に実施例で示すようにインク滴の飛翔方向が吐出口108近傍の湿度によって変化することから、吐出口108近傍の湿度を所定範囲内に維持することで、インク滴の飛翔方向を安定させることができ、ひいては、インク滴の飛翔方向のズレによる画像品質の悪化を抑制するための様々な措置を採ることができる。例えば、湿度が60%未満の場合、検出された湿度に応じて加湿の強度を変更しても良い。具体的には、60%未満の湿度領域について、これをいくつかに区分し、各湿度領域に対応して加湿動作時の送風量を設定する。測定湿度が該当する湿度領域に合わせて、加湿空気が送られることになる。このとき、湿度が低いほど、送風量を多くする。あるいは、60%未満の湿度が検出される間は、サンプリング毎に順次送風量を多くするとしても良い。いずれも、飛翔方向の安定化に寄与する。
【0052】
コントローラ100は、記録が行われる前(即ち、吐出口108から用紙Pに対してインク滴が吐出される時点より前の時点)に、加湿ユニット50の駆動を開始させる(S7及びS8参照)。当該構成によれば、吐出口108近傍の湿度を記録開始時点から所定範囲内に維持することができ、より確実に、インク滴の飛翔方向のズレによる画像品質の悪化を抑制することができる。
【0053】
コントローラ100は、吐出口108近傍の湿度が、基準湿度(=80%)の前後20%の範囲内(即ち、60%〜100%の範囲内)に維持されるように、加湿ユニット50を制御する。当該構成によると、吐出口108近傍の湿度が基準湿度の前後20%の範囲内であれば、インク滴の飛翔方向の変化量を比較的小さく抑えられる。
【0054】
上記基準湿度が80%である。当該構成によれば、吐出口108近傍の湿度を60%〜100%の範囲内に維持するため、吐出口108近傍の湿度が60%未満になった場合に加湿を行えばよく、除湿を行う必要がない。したがって、湿度調整手段の構成及び制御内容の簡素化を実現することができる。
【実施例】
【0055】
続いて、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0056】
本実施例では、上述の実施形態と同じ構成のヘッド1を用い、測定温度25℃において、湿度とインク滴Iのズレ量y(=y1+y2)との関係を測定した。
2つの吐出口108は、中心間距離pが60μmである。吐出の周波数(駆動周波数)は、20kHzで、各吐出口108から毎回2plのインク滴Iが吐出される。
図9(a)に示すように、ズレ量yは、吐出面1aから距離xの地点で測定された。ここでは、x=1.2mmとした。また、測定は、湿度15%、23%、35%、53%、70%および86%の場合について行った。測定結果を
図9(b)に示す。ズレ量yは、各吐出口組108xの2つの吐出口108から吐出されたインク滴Iのズレ量y1,y2の和である。
図9(b)に示すズレ量yは、ヘッド1に含まれる全ての吐出口組108xにおける平均値である。
【0057】
図9(b)から、ズレ量yが吐出口108近傍の湿度によって変化すること(即ち、インク滴Iの飛翔方向が吐出口108近傍の湿度によって変化すること)がわかる。吐出口108近傍の湿度が高くなるほど、ズレ量yが小さくなる。上記のような現象が生じる理由としては、吐出口108近傍の湿度が低い場合、インク滴Iが負に帯電し易く、飛翔中のインク滴I同士に斥力が働くことが1つの要因として考えられる。
【0058】
さらに、吐出口108近傍の湿度が10%変化すると、ズレ量yが略1.3μm変化する(1のインク滴Iあたりのズレ量y1,y2は、互いに略同じと仮定した場合、それぞれ略0.65μm変化する)ことがわかる。ところで、ズレ量yが略20μm程度あると、画質へのドットズレの影響が識別可能となる。したがって、湿度の変化量を基準湿度の前後20%の範囲内にすれば、ズレ量yを略10.4μm以下に抑えることができ、確実に高い画質を維持できる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0060】
・基準湿度は、80%に限定されず、任意である。例えば、基準湿度を70%とし、吐出口近傍の湿度を60%〜100%の範囲内に維持してもよい。
・吐出口近傍の湿度を基準湿度の前後20%の範囲内に維持することに限定されない。例えば、吐出口近傍の湿度を基準湿度の前後25〜30%の範囲内に維持してもよい。湿度変化が前後25%ではズレ量yを略13μmに抑えることができ、前後30%では15.6μmに抑えることができる。いずれも、高い画質を維持できる。
・制御手段が湿度調整手段の駆動を開始させるタイミングは、複数の吐出口から記録媒体に対して液滴が吐出され始める時点より前の時点であることに限定されず、複数の吐出口から記録媒体に対して液滴が吐出され始める時点であってもよいし、その他任意の時点であってもよい。また、複数の吐出口から記録媒体に対して液滴が吐出され始める時点において、吐出口近傍の湿度が所定範囲内にあることに限定されない。
・制御手段が湿度センサからの検知信号をサンプリングするタイミングは、任意である。
・上述の実施形態において、S7で加湿動作を開始した後、吐出口近傍の湿度が所定範囲内になる前に、記録を開始してもよい。S8において、加湿動作を行わなくてもよい。或いは、S8で記録が行われる間、加湿動作を継続的に行ってもよい。S3で加湿動作を行う際にも、湿度制御を行ってよい。
・キャップ機構は、上述した形態に限定されない。例えば、搬送ユニットがベルト搬送形式の場合、キャップ機構は、区画部91と搬送ベルトによって構成されてよい。この場合、区画部91の先端が搬送ベルトの表面に当接することによって、吐出空間が外部空間から区画される。また、例えば、記録中に記録媒体を支持するプラテンや搬送ベルトとは別の部材を、キャップ機構の構成要素としてもよい。この場合、区画部91の先端が上記別の部材の表面に当接することによって、吐出空間が外部空間から区画される。
・また、キャップ機構は、複数の部材(上述の実施形態に係る区画部91及びプラテン6、上記の区画部91及び搬送ベルト等)からなることに限定されない。例えば、キャップ機構は、面に吐出面と略同じサイズの凹部を有する1の凹部材からなってもよい。当該凹部材は、液体吐出ヘッドに固定されていない。この場合、凹部材の先端が吐出面に当接することによって、吐出空間が外部空間から区画される
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・加湿ユニットの構成は、任意に変更可能である。例えば、加湿ユニットのタンクに、加湿液を加熱するヒータを設けてもよい。これにより、加湿空気を効率よく生成することができる。また、加湿ユニットは、加湿液を貯留するタンクを有する構成に限定されず、その他任意の構成(例えば、ミスト発生装置を用いて吐出空間にミストを供給する構成、超音波式や加熱式等の加湿方式を用いた構成等)であってよい。
・湿度調整手段として、上述の実施形態では加湿ユニットを例示したが、除湿ユニット、又は、加湿ユニットと除湿ユニットの両方を用いてよい。つまり、吐出口近傍の湿度を、加湿のみではなく、除湿、又は、加湿及び除湿を行うことによって、所定範囲内に維持してもよい。
・エネルギー付与手段は、圧電式のものに限定されず、他の方式(発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
・吐出口組を構成する吐出口の数は、2に限定されず、3以上であってもよい。
・吐出口組を構成する吐出口は、主走査方向に一列に配置されることに限定されず、主走査方向に対して傾斜する方向に配置されてもよい。いずれの場合も、吐出口組が互いに平行な複数の列を構成していて良い。
・液体吐出ヘッドにおける個別流路等の流路構成は、適宜に変更可能である。
・液体吐出装置に設けられる液体吐出ヘッドの数は、1以上の任意の数であってよい。
・液体吐出ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。
・液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式であってもよい。
・液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。
・記録媒体は、用紙に限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。