(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような方法は試行錯誤的なものであり、ある部品において局所的補強を施すことで剛性の向上に最も寄与がありそうな位置を人間の勘にもとづいて探して、その都度当該位置に局所的補強部材を設置した部品の解析モデルを作成して解析しなければならず、著しく手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、局所的補強部材を設置するためには設置するためのある程度の大きさの場所が必要である。そのため、剛性に寄与しそうな位置のすべてに局所的補強部材を設置できるとも限らない。
また、局所的補強部材を設置できたとしても、局所的補強部材の形状や本体との接合状態の良否によっては正確な結果を得ることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、効率的に最適な局所的補強位置を検出することができる最適局所的補強位置検出方法、装置および最適局所的補強位置検出方法に基づいて部品を補強する方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る最適局所的補強位置検出方法は、
コンピュータが構造解析によって構造体を構成する部品における局所的な最適補強位置を検出する最適局所的補強位置検出方法であって、
コンピュータがプログラムを実行することで実現される各手段が各工程を行うものであり、
解析モデル生成手段が、平面要素および/または立体要素を用いて前記部品の
構造解析モデルを生成する
構造解析モデル生成工程と、
領域分割手段が、該生成された
構造解析モデルに基準となる基準軸を設定し、前記
構造解析モデルの任意の範囲に前記基準軸に対して所定の角度で任意の幅の複数領域に分割を行う領域分割工程と、
剛性変更手段が、前記分割された領域のうち任意の領域について
、弾性率を高くしたり、板厚を増減させたりして、剛性を変更する剛性変更工程と、
剛性解析手段が、剛性が一部変更された前記各
構造解析モデルについて
、前記解析モデルの少なくとも一端を拘束して剛性解析を行う剛性解析工程と、
最適補強位置検出手段が、前記複数の剛性解析結果に基づいて前記部品における最適な局所的補強位置を検出する最適補強位置検出工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記剛性変更工程は、前記任意の領域の板厚および/または弾性率を変更することを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明に係る部品の補強方法は、上記(1)または(2)に記載の最適局所的補強位置検出方法で検出された最適局所的補強位置に基づいて、バルクヘッドを設置して部品を補強することを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明に係る部品の補強方法は、上記(1)または(2)に記載の最適局所的補強位置検出方法で検出された最適局所的補強位置に基づいて、テーラードブランク材を用いて部品を補強することを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明に係る最適局所的補強位置検出装置は、
構造解析による構造体を構成する部品における局所的な最適補強位置を検出する最適局所的補強位置検出装置であって、
平面要素および/または立体要素を用いて前記部品の
構造解析モデルを生成する解析モデル生成手段と、
該生成された
構造解析モデルに基準となる基準軸を設定し、前記
構造解析モデルの任意の範囲に前記基準軸に対して所定の角度で任意の幅の複数領域に分割を行う領域分割手段と、
前記分割された領域のうち任意の領域について
、弾性率を高くしたり、板厚を増減させたりして、剛性を変更する剛性変更手段と、
剛性が一部変更された前記各
構造解析モデルについて
、前記解析モデルの少なくとも一端を拘束して剛性解析を行う剛性解析手段と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記複数の剛性解析結果に基づいて前記部品における最適な局所的補強位置を検出する最適補強位置検出手段を有することを特徴とするものである。
【0015】
(7)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、前記剛性変更手段は、前記任意の領域の板厚および/または弾性率を変更することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、部品自体の剛性を局所的に変化させて、局所的補強部材を設置した部品と同様の状態にするようにしたので、効率的に最適な局所的補強位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法の工程の流れを説明するためのフローチャート図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出装置について説明するための説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出対象の部品について説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法の領域分割工程について説明するための説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法の剛性解析工程について説明するための説明図である(その1)。
【
図6】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法の剛性解析工程について説明するための説明図である(その2)
【
図7】本発明の実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法の剛性解析工程について説明するための説明図である(その3)
【
図8】
図5を用いて説明した剛性解析工程の剛性解析結果について説明するための説明図である。
【
図9】
図6を用いて説明した剛性解析工程の剛性解析結果について説明するための説明図である。
【
図10】
図7を用いて説明した剛性解析工程の剛性解析結果について説明するための説明図である。
【
図11】本発明の実施例に係る車体について説明するための説明図である。
【
図12】本発明の実施例に係る領域分割工程について説明するための説明図である。
【
図13】本発明の実施例に係る剛性解析工程について説明するための説明図である。
【
図14】本発明の実施例おける比較例としてのバルクヘッドを説明するための説明図である。
【
図15】
図13を用いて説明した剛性解析工程の剛性解析結果と比較例の結果について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態に係る最適局所的補強位置検出方法は、
図1のフローチャート図に示すように、平面要素および/または立体要素を用いて前記部品の解析モデルを生成する解析モデル生成工程S1と、該生成された解析モデルに基準となる基準軸を設定し、前記解析モデルの任意の範囲に前記基準軸に対して所定の角度で任意の幅の複数領域に分割を行う領域分割工程S3と、前記分割された領域のうち任意の領域について剛性を変更する剛性変更工程S5と、剛性が一部変更された前記各解析モデルについて剛性解析を行う剛性解析工程S7と、前記複数の剛性解析結果に基づいて前記部品における最適な局所的補強位置を検出する最適補強位置検出工程S9とを行う。
【0019】
最適局所的補強位置検出方法はプログラム処理を実行するPC(パーソナルコンピュータ)等の装置によって行うものであるので、まず、装置(以下、「最適局所的補強位置検出装置1」という)の構成について
図2に示すブロック図に基づいて概説する。
【0020】
〔最適局所的補強位置検出装置〕
本発明の一実施の形態に係る最適局所的補強位置検出装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、
図2に示すように、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7と補助記憶装置9および演算処理部11とを有している。
また、演算処理部11には、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7および補助記憶装置9が接続され、演算処理部11の指令によって各機能を行う。表示装置3は計算結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。入力装置5はオペレータからの入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。主記憶装置7は演算処理部11で使用するデータの一時保存や演算等に用いられ、RAM等で構成される。補助記憶装置9は、データの記憶等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
【0021】
演算処理部11はPC等のCPU等によって構成され、演算処理部11内には、解析モデル生成手段13と、領域分割手段15と、剛性変更手段17と、剛性解析手段19と、最適補強位置検出手段21とを有する。これらの手段はCPU等が所定のプログラムを実行することによって実現される。以下にこれら手段について説明する。
【0022】
<解析モデル生成手段>
解析モデル生成手段13は、平面要素(シェル要素)、立体要素(ソリッド要素)、または、平面要素と立体要素の両方を使用して部品の解析モデルを生成する。
本実施の形態では、解析対象の部品の例として、中空部品について解析モデル31を作成した。解析モデル31は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、高さが80mmのハット断面部品33と、該ハット断面部品33の開口部を覆う、幅が120mmの平板35とを接合してなり、長さが800mmの筒状からなるものである。ハット断面部品33のフランジ部33aの幅は20mmである。ハット断面部品33と平板35の接合は、フランジ部33aとフランジ部33aに当接する平板35の端部とをスポット溶接することで行われている。スポット溶接は、ハット断面部品33の長手方向に40mmピッチでフランジ部33aの幅方向端から7.5mmの位置に、直径6mmのスポットで行われている。解析モデル31の板厚は1.2mmである。
【0023】
<領域分割手段>
領域分割手段15は、解析モデルに基準となる基準軸を設定し、解析モデルの任意の範囲に基準軸に対して所定の角度の平面で、任意の幅の複数領域に分割を行う。
各領域の幅は、等間隔な幅であってもよいし、領域毎に異なってもよい。あるいは、例えばバルクヘッドが設置可能な幅など、実際に補強する際の幅を想定して決定してもよいし、それよりももっと細かい幅にしてもよい。
基準軸は、上記のような領域分割が行いやすいように設定する。例えば、解析する部品の形状に沿うような軸を設定すればよい。
図4は、中空部品の解析モデル31についての領域分割の一例を説明する図である。基準軸は解析モデル31の長手方向軸とし、解析モデル31の一端を基準として、長手方向位置200mmから500mmの間に、解析モデル31の該基準軸に対して垂直な平面で、20mm幅で15領域に分割した。
図4において分割後の各領域を他の領域と区別可能なように灰色の濃淡で色分けして示す。
【0024】
<剛性変更手段>
剛性変更手段17は、領域分割手段15で分割された領域のうちの任意の領域の剛性を変更する。剛性の変更は、例えば、任意の領域の弾性率を高くしたり、逆に低くしたり、板厚を増減させたりすることで行う。なお、ここでいう弾性率とは、ヤング率、ポアソン比、体積弾性率、剛性率のことである。
なお、分割領域の断面積が異なる部品(例えば一端から他端に向かって縮径するような部品)について、各領域の幅が同一であれば、各領域の板厚を一様に増減させると、該板厚の増減に伴う重量増減量が各領域で異なることになる。この場合、板厚の増減を一様にするのではなく、重量増減量が同一になるように、各領域の板厚の増減を調整してもよい。
【0025】
<剛性解析手段>
剛性解析手段19は、剛性変更手段17で剛性が一部変更された各解析モデルについて剛性解析を行う。剛性解析は、部品単体の解析モデルについて行ってもよいし、部品の解析モデルを構造体の解析モデルに組み込んだ状態で、構造体全体の剛性解析を行ってもよい。
【0026】
<最適補強位置検出手段>
最適補強位置検出手段21は、複数の剛性解析結果に基づいて部品における最適な局所的補強位置を検出する。
【0027】
〔最適局所的補強位置検出方法〕
以上のように構成された本実施の最適局所的補強位置検出装置1を用いて最適な局所的補強位置を検出する方法の一例を、最適局所的補強位置検出装置1の動作と共に、
図1のフローチャート図および
図3〜
図10に基づいて説明する。
上述の解析モデル31(
図3参照)を例として最適な局所的補強位置の検出する場合について以下の説明を行う。
【0028】
<解析モデル生成工程>
まず、解析モデル生成手段13を用いて、中空部品の解析モデル31を生成する(解析モデル生成工程S1)。本実施の形態では、板厚を1.2mm、メッシュサイズ10mm×10mmで生成した。
【0029】
<領域分割工程>
次に、領域分割手段15を用いて解析モデル31を、任意の範囲に前記基準軸に対して所定の角度で任意の幅の複数領域に分割する(領域分割工程S3)。本実施の形態では、
図4に示すように20mm幅で15分割の複数の領域に分割した。
【0030】
<剛性変更工程>
次に、剛性変更手段17を用いて領域分割工程S3で分割された領域のうち任意の領域について剛性を変更する(剛性変更工程S5)。本実施の形態では、剛性を変更する領域の板厚を他の領域の2倍の2.4mmにするものとした。
【0031】
<剛性解析工程>
次に、剛性解析手段19を用いて、剛性変更工程S5で剛性が一部変更された各解析モデル31について剛性解析を行う(剛性解析工程S7)。
本実施の形態では、解析モデル31単体の剛性解析を行うに際して、荷重拘束条件の例として曲げ荷重条件と、ねじり荷重条件と、コイル支持部への水平方向荷重条件の3条件で行うものとした。以下に詳細に説明する。
【0032】
曲げ荷重条件は、
図5(a)に示すように、解析モデル31の一端を完全に拘束し、他端面の中心に下方向に490Nの荷重を付与したものである。
図5(b)に曲げ荷重付与後の解析モデル31の変形状態を示す。
【0033】
ねじり荷重条件は、
図6に示すように、曲げ荷重条件の場合と同様に一端を完全に拘束し、解析モデル31の他端面の中心に、1×10
6N・mmのねじりモーメントを付与したものである。
図6(b)にねじり荷重付与後の解析モデル31の変形状態を示す。
【0034】
コイル支持部への水平方向荷重条件は、
図7に示すように、解析モデル31の両端を完全に拘束し、解析モデル31の上面中央(長手方向位置400mm)に設けたコイル支持部31aに、水平方向に解析モデル31の長手方向に直交するように10Nの荷重を付与したものである。
図7(b)に水平方向荷重付与後の解析モデル31の変形状態を示す。
【0035】
<最適補強位置検出工程>
次に、最適補強位置検出手段21を用いて剛性解析工程S7の結果に基づいて、解析モデル31における最適な局所的補強位置を検出する(最適補強位置検出工程S9)。上記拘束荷重条件毎の剛性解析結果について以下に、
図8〜
図10に基づいて説明する。
【0036】
曲げ荷重を付与した場合の剛性解析の結果を
図8に示す。
図8は、剛性を変更した解析モデル31毎の剛性変化率をグラフ化したものである。
図8の縦軸は、剛性変化率(%)を示しており、横軸は解析モデル31の剛性を変更した20mm領域の拘束した一端からの長手方向中央位置(mm)を示している。剛性変化率(%)は、剛性解析工程S7における剛性解析結果G1と、比較のために行った剛性を変更させない場合の剛性解析結果G2とを下式(1)で比較したものである。
剛性変化率(%)=|G2−G1|/G1×100 ・・・(1)
【0037】
曲げ荷重を付与した場合、
図8に示す通り、荷重付与側から拘束側になるにしたがって剛性変化率が上がっている。このことから、荷重付与側の領域の剛性を向上させるよりも、拘束側の領域の剛性を向上させる方が解析モデル31の剛性が向上することが分かる。なお、
図8中の矢印で示す各プロットは、溶接スポットの位置を示している。
【0038】
図9は、ねじり荷重を付与した場合の剛性解析の結果を示したものである。
図9の縦軸と横軸は
図8と同様であるのでその説明を省略する。
ねじり荷重を付与した場合、
図9に示す通りほぼ横ばいであり、これはどの位置であっても剛性向上は同じことを意味している。なお、
図9中の矢印で示す各プロットは、
図8の場合と同様に溶接スポットの影響で両隣のプロットの値よりわずかに剛性変化率が高くなる。
【0039】
図10は、解析モデル31の上面中央にコイル支持部37aを設け、該コイル支持部37aへの水平方向荷重を付与した場合の剛性解析の結果を示したものである。
図10の縦軸と横軸は、
図8および
図9と同様である。
コイル支持部37aへの水平方向荷重を付与した場合、
図10に示す通り、コイル支持部37a(長手方向位置400mm)近傍の領域の剛性を向上させた場合の剛性変化率が高くなっている。このことは、コイル支持部37a近傍を補強することが、解析モデル31(中空部品)の剛性を高めるのに最も効果的であることを意味している。
【0040】
上記の結果に基づいて、例えばコイル支持部37aへの水平方向荷重を付与した場合についての最適補強位置を検出する場合、上述したとおり、コイル支持部37a近傍の剛性を向上させることが最も効果的であるので、最適補強位置検出手段21によって、最適補強位置としてコイル支持部37a近傍が検出される。
【0041】
なお、上記では、最適局所的補強位置検出装置1は、最適補強位置検出手段21を有している場合について説明したが、最適補強位置検出手段21を有していなくてもよい。この場合、剛性解析結果に基づいてオペレータが判断すればよい。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては、部品の任意の領域毎に部品自体の剛性を変化させて剛性解析を行い比較することで、どの領域の剛性が全体の剛性に最も寄与しているかを確認することができ、その結果に基づいて部品における最適な補強位置を検出することができる。
【0043】
なお、部品の剛性を向上させたい場合には、上記のようにして検出された局所的補強位置に基づいて、局所的補強部材(例えばバルクヘッド)を後から設置すればよい。また、局所的補強位置を補強できるようなテーラードブランク材を用いて部品を作成すれば、局所的補強部材を設置する場合と同様に、部品の剛性を効果的に向上させることができる。
【実施例】
【0044】
本発明の最適局所的補強位置検出装置1による作用効果について、具体的な実施例に基づいて説明する。
上記の実施の形態においては、剛性解析工程S7において部品(中空部品の解析モデル31)単体での剛性解析を行ったが、例えば、構造体を構成する一部品について本発明の解析モデル生成工程S1、領域分割工程S3、剛性変更工程S5を適用して、剛性解析工程S7を行うにあたって、該部品を構造体に組み込んだ状態で構造体の剛性解析を行うことで、該剛性変更の構造体全体の剛性への影響が分かる。
そこで、本実施例においては、
図11に示す車体41を構成する一部品であるリアサイドメンバ43について上記各工程(解析モデル生成工程S1、領域分割工程S3、剛性変更工程S5)を適用し、リアサイドメンバ43が車体41に組み込まれた状態で剛性解析を行った(
図12(a)参照)。
【0045】
解析に用いた車体41の寸法は、巾1200mm、長さ3350mm、高さ1130mmで、板厚0.8mmから2.0mmの鋼板および鋼材を用いた。基準の重量は125kgである。
リアサイドメンバ43は、コの字断面形状を有し、全体の長さが1030mmの長尺の部品であり、車体41の左右後方に組み込まれている。リアサイドメンバ43は、左右で同じ形状であるため、左後方のリアサイドメンバ43を例に挙げて以下の説明をする。リアサイドメンバ43は、車体41に組み込まれた状態の下面側にコイル支持部Aを有しており、コイル支持部Aにおいて図示しないコイルによって車体41が支持される。
【0046】
領域分割は、
図12に示すように、各リアサイドメンバ43の所定の範囲(詳細は後述する)を、領域幅を40mmとして車体前方から40mmピッチで1ピッチおきに13個の領域に分割した。
図12において分割後の各領域を他の領域と区別可能なように灰色の濃淡で色分けして示す。
剛性変更は、上記分割した13個の領域のうちの任意の1つの領域の板厚を10倍(0.8mm×10=8mm)に変更するものとした。
剛性解析の荷重拘束条件は
図13に示すように、4箇所のコイル支持部(コイル支持部A、コイル支持部B、コイル支持部C、コイル支持部D)のうち3箇所を拘束して他の1箇所に0.5kNの荷重を与えるという車体ねじり荷重を、荷重を付与する箇所を4箇所ごとに変えて4条件で剛性解析を行い、該4条件の剛性解析結果の平均値を求めた。なお、車体41の元形状(剛性向上策を講じないリアサイドメンバ43を組み込んだ車体41)でのねじり剛性の平均値は25.1(kN*m/deg)である。
【0047】
また、比較例として、従来方法に基づいて、人手により、
図12(b)に示すように、各リアサイドメンバ43の発明例と同様の範囲にバルクヘッド45(
図14参照、幅97mm、高さ148mm、フランジ部幅25mm)を1つ設置した解析モデルを作成して、作成した解析モデルを車体41に組み込んだ。その後、車体41の剛性解析を行った。続いて、バルクヘッド45の設置位置を40mmずらして解析モデルを作成し、車体41に組み込んで剛性解析を行い、同様の作業を13通り繰り返した。このように、比較例では解析したい条件毎に1つ1つ解析モデルを作成し直して構造体に組み込んで剛性解析しなければならず非常に手間である。この点、本発明においてはその手間が掛からない。
なお、バルクヘッド45の設置は、バルクヘッド45のフランジ部45aの中央とリアサイドメンバ43をスポット溶接で溶接することで行った。
【0048】
剛性解析の結果を
図15に示す。
図15の縦軸は、剛性向上対策を講じていない車体41と比較した車体全体の剛性向上率(%)を表しており、横軸は、車体41における前席シート付近を原点とし、リアサイドメンバ43に至る方向をプラス方向とした長さを示している。
図15(a)は発明例の剛性解析結果であり、
図15(b)は比較例の剛性解析結果である。
【0049】
図15(a)のグラフから分かる通り、発明例では前席シート付近からの距離1260mm〜1740mmの間を領域分割した。
図15(a)に示す通り、発明例では前席シート付近からの距離1660mm(コイル支持部Aを有する領域の板厚を厚くした場合の剛性解析結果)で最大値(剛性向上率=約4.2%)になっており、前席シート付近からの距離1660mmの前後で急激にグラフが変化している。このことから、前席シート付近からの距離1660mmの位置が最適局所的補強位置であることが明確に分かる。
【0050】
他方、比較例の場合、
図15(b)に示す通り、グラフの傾きが緩やかであり、剛性向上率の最大値を示すプロットが2つ(1620mm、1660mm)あり、どの位置が最適局所的補強位置であるかが明確でない。これは、以下の理由が考えられる。バルクヘッド45の最大の補強効果を有する位置は縦壁部45bのある位置であるが、バルクヘッド45の設置位置はフランジ部45aの中央にある溶接スポットの位置であり、両者の位置がずれている。車体41に荷重を付加する場合、まず溶接スポットに荷重が付加され、フランジ部45aを介して縦壁部45bに付加される構造であるので、最適補強位置が設置位置からずれて検出される。このようにバルクヘッド45を直接車体41に組み込んで剛性解析を行う場合、正確な解が得られない。
【0051】
以上のように、本発明によれば、部品(リアサイドメンバ43)の任意の領域毎に部品(リアサイドメンバ43)自体の剛性を変化させて剛性解析を行い比較することで、どの領域の剛性が構造体(車体41)全体の剛性に最も寄与しているかを確認することができ、その結果に基づいて部品(リアサイドメンバ43)における最適な局所的補強位置を検出することができる。
【0052】
また、局所的補強部材(バルクヘッド45等)を設置して解析できないような領域にも、本発明においては、該領域のパラメータを変更して解析を行えばよい。
また、局所的補強部材(バルクヘッド45等)を設置して解析する場合のように、局所的補強部材の形状や設置条件に影響されることがないため、正確な局所的補強位置を検出することができる。
また、部品(リアサイドメンバ43)を車体に組み込んだままでも、部品単体で解析を行う場合と同様に適用できるため、部品ごとの車体41の解析モデル作成の手間がかからず、非常に効率的である。
【0053】
また、最適な局所的補強位置に基づいて補強することにより剛性や衝突特性等が向上すれば、その向上分、部品を軽量化することもできる。