(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、従来とは異なる方法によって積層体への干渉縞の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みt、可視光の最長波長λ
max、および、前記中間層の面内の平均屈折率n
2が、
0<t<λ
max/(12×n
2) ・・・条件(c1)
なる条件(c1)を満たす。
【0011】
本発明による第2の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みt、可視光の最短波長λ
min、可視光の最長波長λ
max、および、前記中間層の面内の平均屈折率n
2が、
0<t<((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2)・・・条件(c2)
なる条件(c2)を満たす。
【0012】
本発明による第3の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みt、可視光の最短波長λ
min、および、前記中間層の面内の平均屈折率n
2が、
0<t<λ
min/(12×n
2) ・・・条件(c3)
なる条件(c3)を満たす。
【0013】
本発明による第4の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みt〔nm〕、および、中間層の屈折率n
2が、
0<t<555/(12×n
2) ・・・条件(c4)
なる条件(c4)を満たす。
【0014】
本発明による第5の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みt〔nm〕、および、中間層の屈折率n
2が、
0<t<507/(12×n
2) ・・・条件(c5)
なる条件(c5)を満たす。
【0015】
本発明による第6の積層体は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備え、
前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
なる条件(a)および条件(b)のいずれか一方を満たし、
前記中間層の厚みが、3nm以上30nm以下である。
【0016】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかにおいて、
前記光透過性基材は、面内の複屈折性を有し、
前記光透過性基材の面内における最も屈折率が大きい方向である遅相軸方向における屈折率n
1x、前記光透過性基材の前記遅相軸方向に直交する進相軸方向における屈折率n
1y、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、および、前記機能層の面内の平均屈折率n
3が、
n
1y>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(d)
n
1x<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(e)
なる条件(d)および(e)のいずれか一方を満たすようにしてもよい。
【0017】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかにおいて、
前記光透過性基材が、面内の複屈折性を有し、
前記光透過性基材のリタデーションが3000nm以上であってもよい。
【0018】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかにおいて、前記光透過性基材がポリエステル基材であってもよい。
【0019】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかにおいて、前記機能層はハードコート層であってもよい。
【0020】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかが、前記機能層の前記中間層側とは反対側に設けられた第2機能層を、さらに備えるようにしてもよい。
【0021】
本発明による第1〜6の積層体のいずれかにおいて、前記第2機能層が、前記機能層よりも低い屈折率を有する低屈折率層であってもよい。
【0022】
本発明による偏光板は、
偏光素子と、
本発明による第1〜6のいずれかの積層体と、を備える。
【0023】
本発明による液晶表示パネルは、
本発明による第1〜6のいずれかの積層体、または、本発明による偏光板を備える、液晶表示パネル。
【0024】
本発明による画像表示装置は、本発明による第1〜6のいずれかの積層体、本発明による偏光板、または、本発明による液晶表示パネルを備える、画像表示装置。
【0025】
本発明によるタッチパネルセンサは、
本発明による第1〜6のいずれかの積層体と、
前記積層体と接合されたセンサ電極と、を備える。
【0026】
本発明によるタッチパネル装置は、本発明によるタッチパネルセンサを備える。
【0027】
本発明による第1の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最長波長λ
maxを用いた次の条件(c1)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<λ
max/(12×n
2) ・・・条件(c1)
【0028】
本発明による第2の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最短波長λ
minおよび可視光の最長波長λ
maxを用いた次の条件(c2)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2)・・・条件(c2)
【0029】
本発明による第3の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最短波長λ
minを用いた次の条件(c3)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<λ
min/(12×n
2) ・・・条件(c3)
【0030】
本発明による第4の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c4)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<555/(12×n
2) ・・・条件(c4)
【0031】
本発明による第5の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c5)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<507/(12×n
2) ・・・条件(c5)
【0032】
本発明による第6の積層体の製造方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を製造する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c6)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
3≦t≦30 ・・・条件(c6)
【0033】
本発明による第1の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最長波長λ
maxを用いた次の条件(c1)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<λ
max/(12×n
2) ・・・条件(c1)
【0034】
本発明による第2の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最短波長λ
minおよび可視光の最長波長λ
maxを用いた次の条件(c2)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2)・・・条件(c2)
【0035】
本発明による第3の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を含む積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、可視光の最短波長λ
minを用いた次の条件(c3)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みtを設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<λ
min/(12×n
2) ・・・条件(c3)
【0036】
本発明による第4の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c4)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<555/(12×n
2) ・・・条件(c4)
【0037】
本発明による第5の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c5)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<507/(12×n
2) ・・・条件(c5)
【0038】
本発明による第6の積層体の設計方法は、
光透過性基材と、
前記光透過性基材に隣接して前記光透過性基材に積層された中間層と、
前記中間層に隣接して、前記中間層に前記光透過性基材とは反対の側から積層された機能層と、を備える積層体を設計する方法であって、
次の条件(a)および条件(b)のいずれか一方が満たされ、且つ、次の条件(c6)が満たされるように、前記光透過性基材の面内の平均屈折率n
1、前記中間層の面内の平均屈折率n
2、前記機能層の面内の平均屈折率n
3、および、前記中間層の厚みt〔nm〕を設定する工程を備える。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
3≦t≦30 ・・・条件(c6)
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、干渉縞の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜
図7は本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1および
図2は、積層体を説明するための図である。
図3は、積層体内で反射した光の波形を説明するための図である。
図4〜
図7は、
図1の積層体を適用された偏光板、液晶表示パネル、タッチパネルセンサ、タッチパネルおよび積層体の構成を示す模式図である。
【0042】
≪積層体≫
<積層体の全体構成>
まず、積層体10の全体構成について説明する。
図1に示すように、積層体10は、積層基材11と、積層基材11の一方の面上に形成された機能層15と、を有している。積層基材11は、光透過性基材12と、光透過性基材12と積層された中間層13と、を有している。積層体10内において、中間層13は、光透過性基材12と機能層15との間に位置する。すなわち、機能層15は、中間層13の側から積層基材11に積層されている。図示された例において、積層基材11内において、中間層13は、光透過性基材12の一方の面上に形成されている。すなわち、積層体10は、光透過性基材12、中間層13、機能層15の三つの層をこの順番で含むように構成されており、中間層13は、光透過性基材12および機能層15に隣接して配置され、光透過性基材12および機能層15との間で、それぞれ、界面を形成している。
【0043】
なお、
図2には、
図1に示された積層体の一変形例としての積層体が示されている。
図2に示された積層体10では、機能層15の積層基材11に対面しない側の面上に第2機能層17が形成されている点において、
図1の積層体と異なっている。
図1に示された積層体10では、機能層15が、積層基材11の一方の面上に形成されたハードコート層から構成されるようにしてもよい。一方、
図2に示された積層体10では、機能層15が、積層基材11の一方の面上に形成されたハードコート層から構成されるとともに、第2機能層17が、ハードコート層の積層基材11とは逆側の面上に形成された低屈折率層から構成されるようにしてもよい。
【0044】
ここで説明する積層体10は、次の条件(a)および条件(b)の一方とともに、少なくとも次の条件(c1)を満たす。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<λ
max/(12×n
2) ・・・条件(c1)
【0045】
ここで条件(a)〜(c1)並びに後述する条件(c2)〜(c6)において、「n
1」は光透過性基材12の面内の平均屈折率であり、「n
2」は中間層13の面内の平均屈折率であり、「n
3」は機能層15の面内の平均屈折率である。また、条件(c1)並びに後述する条件(c2)〜(c6)において、「λ
max」は可視光の最長波長〔nm〕であり、「λ
min」は可視光の最短波長〔nm〕であり、「t」は中間層13の厚み〔nm〕である。面内の平均屈折率とは、対象となるシート状の層のそのシート面に沿って延びる互いに直交する二つの方向での屈折率の平均値である。対象となる層が光学等方性であれば、当該層のシート面に沿った各方向における屈折率は同一となる。一方、対象となる層が光学異方性であれば、当該層のシート面に沿った各方向における屈折率は相違する。
【0046】
なお、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の層または部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状の層または部材の平面方向と一致する面のことを指す。一実施の形態として説明する積層体10において、光透過性基材12のシート面、中間層13のシート面、機能層15のシート面、第2機能層17のシート面、積層基材11のシート面、および、積層体10のシート面は、互いに平行となっている。
【0047】
各層の面内における各方向での屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)、日本分光(株)製の「エリプソメーター M150」、王子計測機器製の「KOBRA−WR」等を用いて測定することができる。
【0048】
また、各層の面内における各方向での屈折率は、分光光度計(島津製作所社製のUV−3100PC)を用いて、波長380〜780nmの平均反射率(R)を測定し、得られた平均反射率(R)から、以下の式を用いて特定され得る。中間層13および機能層15の平均反射率(R)は、易接着処理のない厚さ50μmのPET上に原料組成物を塗布し、1〜3μmの厚さの硬化膜にし、PETの原料組成物を塗布しなかった面(裏面)に、裏面反射を防止するために測定スポット面積よりも大きな幅の黒ビニールテープ(例えば、ヤマトビニールテープNO200−38−21 38mm幅)を貼ってから各塗膜の平均反射率を測定することができる。光透過性基材12の屈折率は、測定面とは反対面に同様に黒ビニールテープを貼ってから測定することができる。
R(%)=(1−n)
2/(1+n)
2
【0049】
また、対象となる層12,13,15が光学等方性であれば、当該層の面内の平均屈折率n
1,n
2,n
3を次のようにして測定することも可能である。まず、各層の硬化膜をカッターなどで削り取り、粉状態のサンプルを作製する。次に、JISK7142(2008)B法(粉体または粒状の透明材料用)に従ったベッケ法(屈折率が既知のカーギル試薬を用い、前記粉状態のサンプルをスライドガラスなどに置き、そのサンプル上に試薬を滴下し、試薬でサンプルを浸漬する。その様子を顕微鏡観察によって観察し、サンプルと試薬の屈折率が異なることによってサンプル輪郭に生じる輝線;ベッケ線が目視で観察できなくなる試薬の屈折率を、サンプルの屈折率とする方法)を用いることができる。
【0050】
また、中間層13の厚み(硬化時)tは、例えば、中間層13の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより得られた任意の10点の測定値の平均値〔nm〕として、特定され得る。中間層13の厚みが非常に薄い場合は、高倍率観察したものを写真として記録し、更に拡大することで測定することができる。拡大した場合、層界面ラインが、境界線として明確に分かる程度に非常に細い線であったものが、太い線になる。その場合は、太い線幅を幅方向に2等分した中心部分を境界線として測定すればよい。
【0051】
積層体10によって、上述した条件(a)および条件(b)の一方とともに、少なくとも条件(c1)を満たされる場合、積層体10に干渉縞が発生してしまうことを有効に抑制することができる。ここで不可視化対象となる干渉縞は、機能層15の側から
図1の積層体10へ向かう光(
図3の光L
i)のうちの、機能層15の表面での反射光と、積層基材11からの反射光(
図3の光L
r)と、の干渉により生じる干渉縞である。同様に、第2機能層17の側から
図2の積層体10へ向かう光のうちの、第2機能層17の表面での反射光または第2機能層17と機能層15との界面での反射光と、積層基材11からの反射光と、の干渉により生じる干渉縞も、不可視化対象となる干渉縞となる。ここで、積層基材11からの反射光とは、機能層15と中間層13との界面での反射光(
図3の光L
r1)および中間層13と光透過性基材12との界面での反射光(
図3の光L
r2)のことである。
【0052】
そして以下に説明するように、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c1)が満たされる場合には、可視光域に含まれる少なくとも一部分の波長域の光に関し、積層体10の内部を機能層15の側から積層基材11側へ向かい積層基材11で反射されて機能層15の側へ戻る光の強度を効果的に低下させることができる。すなわち、干渉縞を引き起こす原因となる光の強度を低下させることにより、可視光域に含まれる少なくとも一部分の波長域の光に起因した干渉縞を有意に目立たなくさせることができる。
【0053】
積層体に生じる干渉縞を不可視化する方法としては、混在領域を設けることによって積層体内の界面をぼやかす方法および積層体の表面に凹凸を形成する方法も挙げられる。しかしながら、上述したように、混在領域を設ける方法では、積層体10の強度を確保するため、機能層の厚みを厚くする必要が生じる。このため、この手法を採用した場合には、材料費が嵩んで積層体10の製造コストが上昇してしまうといった不具合が生じる。また、積層体10の表面に凹凸を形成する方法を採用すると、積層体10を介して観察される画像の画質が劣化してしまう。具体的には、画面に白濁感が生じてコントラストが低下し、画像のテリや輝きが無くなってしまう。
【0054】
これに対して、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c1)を満たす積層体10には、混在領域を設ける必要、さらには機能層の厚みを増大する必要が生じない。また、中間層13が一例として、たとえば易接着層等のプライマー層からなる場合には、干渉縞対策のみを目的として追加の層を積層体10に設ける必要もなく、コスト面でのデメリットが発生しない。また、混在領域を設けること自体が困難であるポリエステル基材を、光透過性基材12として用いることが可能となる。ポリエステル基材からなる光透過性基材12は、コスト面や安定性等において非常に優れる。
【0055】
加えて、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c1)を満たす積層体10では、拡散を引き起こす必要がないことから表面を平滑に保ちながら、干渉縞の発生を効果的に防止することができる。したがって、積層体10を介して観察される画像の画質に悪影響を及ぼすことなく干渉縞を不可視化することができる。すなわち、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c1)を満たす積層体10では、テリ輝きを画像に付与しながら、白濁感及び干渉縞の発生を防止することが可能となる。
【0056】
ここで、
図3を参照して、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c1)を満たす積層体10によって発現される干渉縞不可視化機能、言い換えると、干渉縞の発生、すなわち干渉縞が目視で確認されることを抑制する機能、さらに言い換えると干渉縞を目立たなくさせる機能について説明する。
【0057】
条件(a)および条件(b)の一方が満たされる場合、機能層15の側から積層体10へ入射した光は、機能層15と中間層13との界面および中間層13と光透過性基材12との界面のうちの一方の界面にて自由端反射し、他方の界面にて固定端反射するようになる。
図3に示された積層体10では、条件(a)および条件(b)のうちの条件(b)が満たされ、機能層15の側から積層体10へ入射した光は、機能層15と中間層13との界面で固定端反射して位相がπ〔rad〕ずれ、中間層13と光透過性基材12との界面で自由端反射して位相を維持する。
【0058】
図3に示された例では、積層体10の法線方向ndに沿った断面が示されている。そして
図3では、機能層15の側から積層体10へ入射した入射光L
i、機能層15と中間層13と界面で反射した反射光L
r1、中間層13と光透過性基材12との界面で反射した反射光L
r2、および、反射光L
r1および反射L
r2の合成である合成反射光L
rについて、或る瞬間での振動状態が示されている。
図3に示すように、x軸が積層体10の法線方向に延び、y軸が機能層15と中間層13との界面を延びるようにxy座標を設定すると、各光L
i,L
r1,L
r2,L
rの波形は、それぞれ、次の式(1)〜(4)にて表される。なお、以下の式(1)〜(4)において「λ」は光の波長〔nm〕である。
Y
i=sin((x×n
3/λ)×2π) ・・・式(1)
Y
r1=sin((x×n
3/λ)×2π) ・・・式(2)
Y
r2=-sin(((x×n
3/λ)+(2t×n
2/λ))×2π) ・・・式(3)
Y
r=-2・sin(2t×n
2×π/λ) ・cos(((x×n
3/λ)+(t×n
2/λ))×2π)・・・式(4)
【0059】
すなわち、干渉縞を引き起こすことになる積層基材11からの合成反射光L
rの強度は、当該光の波形の振幅を示す「2・sin(2t・n
2・π/λ)」によって表される。干渉縞は、合成反射光L
rの強度が弱い程、目立たなくなる。したがって、合成反射光L
rの振幅が最大値(「2」)の半分未満(「1」未満)となる次の式(5)が満たされる場合に、波長λの光に起因した干渉縞を目立たなくさせる観点から優位な状況となり、振幅が最大値の半分を超えてしまう次の式(6)が満たされる場合に、波長λの光に起因した干渉縞を目立たなくさせる観点から劣位な状況となる。
t<λ/(12×n
2) ・・・式(5)
t>λ/(12×n
2) ・・・式(6)
以上のことから、条件(b)とともに条件(c1)が満たされる場合に、可視光最長波長の光を含む少なくとも一部分の可視光波長域の光が、干渉縞として視認されることを防止する上で有効となる。言い換えると、少なくとも一部分の可視光に関し、干渉縞を有効に不可視化することができる。
【0060】
また、条件(b)に換えて条件(a)とともに条件(c1)が満たされる場合についても、少なくとも一部分の可視光波長域の光に関し、干渉縞を有効に不可視化することができる。条件(a)が満たされる場合には、機能層15の側から積層体10へ入射した光は、中間層13と光透過性基材12との界面で固定端反射して位相がπ〔rad〕ずれ、機能層15と中間層13との界面で自由端反射して位相を維持する。したがって、
図3の入射光Liに対してπ〔rad〕だけ位相が遅れた光が、条件(a)および条件(c1)を満たす積層体10に機能層15の側から入射した場合、積層基材11での反射光が
図3に示された反射光L
r1,L
r2,L
rと同様の波形を呈するようになる。この点から、条件(b)に換えて条件(a)とともに条件(c1)が満たされる場合についても、少なくとも一部分の可視光に関し干渉縞を有効に不可視化し得ることが、理解される。
【0061】
以上のことから、上述した条件(a)および(b)の一方とともに条件(c1)が満たされる場合、可視光最長波長の光を含む少なくとも一部分の可視光波長域の光が、干渉縞として視認されることを効果的に防止することができる。言い換えると、上述した条件(a)および(b)の一方とともに条件(c1)が満たされる場合、少なくとも一部分の可視光に関し、干渉縞を有効に不可視化することができる。さらに言い換えると、上述した条件(a)および(b)の一方とともに条件(c1)が満たされると、観察者が感知し得る干渉縞不可視化機能(干渉縞を目立たなくさせる機能)が発現されることを期待することができる。
【0062】
また、干渉縞を不可視化する観点からは、上述した条件(a)および条件(b)の一方とともに、次の条件(c2)が満たされることも好ましい。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2)・・・条件(c2)
条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c2)が満たされる場合には、可視光域の半分以上を占める波長域の光に対して、干渉縞不可視化機能を有効に発揮することができる。言い換えると、条件(a)および(b)の一方とともに条件(c2)が満たされると、可視光域のうちの半分以上の波長域の光に起因した干渉縞を有効に不可視化することができる。
【0063】
さらに、干渉縞を不可視化する観点からは、上述した条件(a)および条件(b)の一方とともに、次の条件(c3)が満たされることがより好ましい。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t<(λ
min/2)/(12×n
2)・・・条件(c3)
条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c3)が満たされる場合には、可視光域のうちの全域の光に対して、干渉縞不可視化機能を有効に発揮することができる。すなわち、条件(a)および(b)の一方とともに条件(c3)が満たされると、すべての色の干渉縞が視認されることを有効に防止することができる。
【0064】
なお、JISZ8120の定義によれば、可視光波長域の最長波長λ
maxは、830nmとなり、可視光波長域の最短波長λ
minは、360nmとすることができる。
【0065】
また、干渉縞を不可視化する観点からは、上述した条件(a)および条件(b)の一方とともに、次の条件(c4)または条件(c5)が満たされるようにすることも有効である。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
0<t〔nm〕<555/(12×n
2) ・・・条件(c4)
0<t〔nm〕<507/(12×n
2) ・・・条件(c5)
【0066】
国際照明委員会(CIE)は、可視光域内の各波長域の光に対する人間の感度は異なっていることを報告している。国際照明委員会(CIE)によれば、明るい場所に順応したときに人間が最も感じやすい光の波長は、555nmであり、暗い場所に順応したときに人間が最も感じやすい光の波長は、507nmである。したがって、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c4)が満たされる場合には、明所において最も人間に感知されやすい波長域の光に対して、干渉縞不可視化機能を有効に発揮することができる。すなわち、条件(a)および(b)の一方とともに条件(c4)が満たされると、明るい場所にて干渉縞が視認されることを有効に防止することができる。一方、条件(a)および条件(b)の一方とともに条件(c5)が満たされる場合には、明所において最も人間に感知されやすい波長域の光に対してだけでなく、暗所において人間に最も感知されやすい波長域の光に対しても、干渉縞不可視化機能を有効に発揮することができる。すなわち、条件(a)および(b)の一方とともに条件(c5)が満たされると、明るい場所および暗い場所の両方において干渉縞が視認されることを有効に防止することができる。
【0067】
加えて、本件発明者らが鋭意実験を行ったところ、上述した条件(a)および条件(b)の一方とともに、次の条件(c6)が満たされる場合、注意深く観察したとしても干渉縞が視認されてしまうことを極めて効果的に抑制することができた。
n
1>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(a)
n
1<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(b)
3≦t〔nm〕≦30 ・・・条件(c6)
【0068】
なお、上述した式(5)だけでなく、自然数kを用いた次の式(5’)が満たされる場合にも、波長λの光に起因した干渉縞を目立たなくさせる観点において優位な状況となる。式(5’)が満たされる場合、式(5)が満たされる場合と比較して、反射光L
r2の光路が(λ×k)/(2×n
2)〔nm〕長くなるだけで、合成反射光L
rの波形に変化は生じない。このため、式(5’)が満たされる場合、式(5)が満たされる場合と同様の作用効果を期待することができる。
-λ/(12×n
2)<t-(k×λ)/(2×n
2)<λ/(12×n
2) ・・・式(5’)
したがって、条件(a)および条件(b)のうちの一方とともに次の条件(c1’)が満たされる場合、条件(a)および条件(b)のうちの一方とともに条件(c1)が満たされる場合と同様の作用効果を期待することができる。
-λ
max/(12×n
2)<t-(k×λ
max)/(2×n
2)<λ
max/(12×n
2)
・・・条件(c1’)
【0069】
また、条件(c2)〜条件(c5)についても、同様の理由から、これら条件(c2)〜条件(c5)に代えて次の条件(c2’)〜条件(c5’)が満たされる場合にも、条件(c2)〜条件(c5)が満たされる場合と同様の作用効果を期待することができる。
-((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2)<
t-(k×((λ
min+λ
max)/2))/(2×n
2)<
((λ
min+λ
max)/2)/(12×n
2) ・・・条件(c2’)
-λ
min/(12×n
2)<t-(k×λ
min)/(2×n
2)<λ
min/(12×n
2)
・・・条件(c3’)
-555/(12×n
2)<t-(k×555)/(2×n
2)<555/(12×n
2) ・・・条件(c4’)
-507/(12×n
2)<t-(k×507)/(2×n
2)<507/(12×n
2) ・・・条件(c5’)
【0070】
ただし、条件(c1)〜条件(c5)に代えて条件(c1’)〜条件(c5’)が満たされることは、中間層13の厚みtが増加することを意味している。したがって、材料費の観点から、条件(c1’)〜条件(c5’)よりも条件(c1)〜条件(c5)が満たされることが好ましい。
【0071】
ところで、従来技術の欄でも説明したように、昨今、光透過性基材12が面内の複屈折性を有する場合もある。光透過性基材12が面内の複屈折率を有する場合、光透過性基材12のシート面に沿った面内における各方向での屈折率は変化する。そして、上述した干渉縞不可視化機能がより効果的に発揮されるためには、光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1によって上述した式(a)および(b)の一方が満たされるだけでなく、次の条件(d)および(e)の一方が満たされることが好ましい。
n
1y>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(d)
n
1x<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(e)
ここで、条件(e)における「n
1x」は、光透過性基材12の面内における最も屈折率が大きい方向である遅相軸方向における屈折率の値である。一方、条件(d)における「n
1y」は、光透過性基材12の面内における最も屈折率が小さい方向である進相軸方向における屈折率の値である。
【0072】
式(d)および式(e)の一方が満たされる場合には、光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1だけでなく、光透過性基材12の面内の全ての方向における屈折率n
arbによって、次の条件(f)および条件(g)の一方が満たされることになる。
n
arb>n
2、且つ、n
2<n
3 ・・・条件(f)
n
arb<n
2、且つ、n
2>n
3 ・・・条件(g)
条件(f)および条件(g)の一方が満たされる場合には、光透過性基材12の面内の遅相軸方向に振動する偏光成分の光および光透過性基材12の面内の進相軸方向に振動する偏光成分の光の両方が、位相のずれに関して互いに同様の条件にて機能層15と中間層13との界面で反射し、且つ、位相のずれに関して互いに同様の条件にて中間層13と光透過性基材12との界面で反射する。すなわち、条件(f)および条件(g)の一方が満たされる場合には、機能層15の側から積層基材11の側へと積層体10内を進む光は、当該光の偏光状態に依らず、機能層15と中間層13との界面並びに中間層13と光透過性基材12との界面の一方の界面にて自由端反射し、他方の界面にて固定端反射する。このため、条件(f)および条件(g)の一方が満たされる場合には、偏光状態に依存することなく上述した干渉縞不可視化機能が極めて有効に発揮される。
【0073】
その一方で、条件(a)および条件(b)の一方が満たされるものの、条件(f)および条件(g)の両方が満たされない場合には、機能層15の側から積層基材11の側へと積層体10内を進む光の一部が、当該光の偏光状態に依存して、機能層15と中間層13との界面並びに中間層13と光透過性基材12との界面の両方にて、自由端反射または固定端反射するようになる。このような光に対しては、上述した干渉縞不可視化機能を有効に及ぼすことができない。しかしながら、条件(a)および条件(b)の一方が満たされる場合には、条件(f)および条件(g)の両方が満たされないような状況にても、機能層15の側から積層基材11の側へと積層体10内を進むより多くの光に対して、上述した干渉縞不可視化機能を有効に及ぼされる。すなわち、条件(a)および条件(b)の一方とともに、上述した条件(c1)〜(c6)のいずれかが満たされる場合には、機能層15の側から積層体10へ入射した光に対して上述した干渉縞不可視化機能が主として及ぼされることになり、干渉縞を効果的に目立たなくさせることができる。
【0074】
また、上述の干渉縞不可視化機能がより有効に発揮され得る観点から、機能層15の面内の平均屈折率n
3と光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1とが近い値を取っていることが好ましく、機能層15の面内の平均屈折率n
3および光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1が等しくなっていることが最も好ましい。本件発明者らが研究を重ねたところ、次の条件(h)が満たされる場合に、干渉縞不可視化機能がより有効に発揮された。
|n
1−n
3|≦0.03 ・・・条件(h)
【0075】
<光透過性基材>
次に、光透過性基材12について詳述する。光透過性基材12としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、セルロースアシレート基材、シクロオレフィンポリマー基材、ポリカーボネート基材、アクリレート系ポリマー基材、ポリエステル基材、またはガラス基材が挙げられる。
【0076】
セルロースアシレート基材としては、例えば、セルローストリアセテート基材、セルロースジアセテート基材が挙げられる。シクロオレフィンポリマー基材としては、例えばノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンモノマー等の重合体からなる基材が挙げられる。
【0077】
シクロオレフィンポリマー基材としては、例えばノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンモノマー等の重合体からなる基材が挙げられる。
【0078】
ポリカーボネート基材としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート基材、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート基材等が挙げられる。
【0079】
アクリレート系ポリマー基材としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル基材、ポリ(メタ)アクリル酸エチル基材、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体基材等が挙げられる。
【0080】
ポリエステル基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする基材等が挙げられる。
【0081】
ガラス基材としては、例えば、ソーダライムシリカガラス、ホウ珪酸塩ガラス、無アルカリガラス等のガラス基材が挙げられる。
【0082】
光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1は、1.40以上1.80以下とすることが可能である。
【0083】
また、光透過性基材12は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JISK7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0084】
さらに、光透過性基材12には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0085】
ところで、光透過性基材12は、面内での複屈折率を有していてもよい。面内での複屈折率を有する光透過性基材12は、一般的に、機械的特性、透明性、熱等に対する安定性の面において優れるとともに、コスト的に極めて有利である。以下、面内での複屈折性を有する光透過性基材12について説明する。
【0086】
光学異方性の光透過性基材12は物性やコスト面で有利であるが、その一方で、このような光学異方性の光透過性基材12を、一方の直線偏光成分の光によって画像を形成する液晶表示パネルのような表示デバイスに重ねると、ニジムラと呼ばれる色模様として観察されるムラ模様が発生してしまうことがある。このニジムラに対処するため、光透過性基材12は、3000nm以上のリタデーションを有している。3000nm以上のリタデーションを有する光透過性基材であれば、当該光透過性基材を画像表示装置に組み込んだとしても、画像表示装置の表示画像にニジムラが生じることを効果的に抑制することができる。ニジムラを不可視化し得るメカニズムの詳細は不明であるが、光透過性基材12に高リタデーションを付与することによって、ニジムラを生じさせていた光がより連続的なスペクトル分布を有するようになり、これにより、もはや特異な色を呈するムラとして視認されなくなると予想される。
【0087】
また、このような高リタデーションの光透過性基材12を用いることにより、従来広く用いられてきたトリアセチルセルロース製基材等の光学等方性基材と比較して優れた次の作用効果を奏し得る。一方の直線偏光成分の光によって画像を形成する液晶表示パネルのような表示デバイスに光学等方性の基材を重ねた場合、サングラスに代表される偏光眼鏡を装着した観察者が、当該偏光眼鏡の吸収軸の向きに依存して、画像表示装置の画像を明るく観察することができない、さらには、画像表示装置の画像を観察することができないといった不具合が生じていた。一方、光学異方性の光透過性基材12、とりわけ、3000nm以上の高リタデーションの光透過性基材12を用いた場合、光学等方性の基材を用いた場合と比較して、偏光眼鏡の吸収軸の向きに依らず、画像をより明るく観察することができた。このような現象は、表示デバイスから投射される画像光の偏光状態が、光学異方性の光透過性基材12、とりわけ、3000nm以上の高リタデーションの光透過性基材12によって乱されることによるものと推測される。昨今、表示装置の使用環境が急速に多様化し、例えば、携帯デバイスや屋外で使用されるデバイス等へも広く適用されている。このような表示装置の使用態様の多様化にともない、観察者が偏光眼鏡を装着した状態で表示装置を観察する状況がより頻繁に生じることが予想される。このような傾向からも、光学異方性の光透過性基材12、とりわけ、3000nm以上の高リタデーションの光透過性基材12の光学フィルム10への適用は非常に有用である。
【0088】
なお、リタデーションは、面内の複屈折性の程度を表す指標である。ニジムラ防止性及び薄膜化の観点から、6000nm以上25000nm以下であることがより好ましく、8000nm以上20000nm以下であることがさらに好ましい。
【0089】
リタデーションRe(単位:nm)は、光透過性基材の面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(n
1x)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(n
1y)と、光透過性基材の厚みd(単位:nm)とを用いて、下記式(7)で表される。
Re=(n
1x−n
1y)×d …(7)
【0090】
リタデーションは、例えば、王子計測機器製KOBRA−WRを用いて、測定角0°かつ測定波長548.2nmに設定して、測定された値とすることができる。また、リタデーションは、次の方法でも求めることができる。まず、二枚の偏光板を用いて、光透過性基材の配向軸方向を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(n
1x,n
1y)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求める。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。また、光透過性基材の厚みを例えば電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定する。そして、得られた屈折率を用いて、屈折率差(n
1x−n
1y)(以下、n
1x−n
1yをΔnと称する)を算出し、この屈折率差Δnと光透過性基材の厚みd(nm)との積により、リタデーションを求めることができる。
【0091】
光透過性基材12のリタデーションを3000nm以上にする観点からは、屈折率差Δnは、0.05〜0.20であることが好ましい。屈折率差Δnが0.05未満であると、上述したリタデーション値を得るために必要な厚みが厚くなることがある。一方、屈折率差Δnが0.20を超えると、延伸倍率を過度に高くする必要が生じるので、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。より好ましくは、屈折率差Δnの下限は0.07であり、屈折率差Δnの上限は0.15である。なお、屈折率差Δnが0.15を超える場合、光透過性基材12の種類によっては、耐湿熱性試験での光透過性基材12の耐久性が劣ることがある。耐湿熱性試験での優れた耐久性を確保する観点からは、屈折率差Δnのより好ましい上限は0.12である。
【0092】
また、光透過性基材12の遅相軸方向における屈折率n
1xとしては、1.60〜1.80であることが好ましく、より好ましい下限は1.65、より好ましい上限は1.75である。また、光透過性基材12の進相軸方向における屈折率n
1yとしては、1.50〜1.70であることが好ましく、より好ましい下限は1.55、より好ましい上限は1.65である。光透過性基材12の遅相軸方向における屈折率n
1xおよび進相軸方向における屈折率n
1yが上記範囲にあり、かつ上述した屈折率差Δnの関係が満たされることで、より好適なニジムラの抑制効果を得ることができる。
【0093】
面内の複屈折性を有した光透過性基材12の厚みは、特に限定されないが、通常、5μm以上1000μm以下とすることが可能であり、光透過性基材12の厚みの下限はハンドリング性等の観点から15μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。光透過性基材12の厚みの上限は薄膜化の観点から80μm以下であることが好ましい。
【0094】
光透過性基材12として、リタデーションが3000nm以上のポリエステル基材を用いる場合、ポリエステル基材の厚みとしては、15μm以上500μm以下とすることが好ましい。15μm未満であると、ポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上にできず、また、力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。一方、500μmを超えると、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、工業材料としての実用性が低下するおそれがある。上記ポリエステル基材の厚さのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は400μmであり、更により好ましい上限は300μmである。
【0095】
面内の複屈折性を有した光透過性基材12としては、3000nm以上のリタデーションを有するものであれば、特に限定されず、アクリル基材、ポリエステル基材、ポリカーボネート基材、シクロオレフィンポリマー基材等が挙げられる。これらの中でも、コストおよび機械的強度の観点からポリエステル基材が好ましい。
【0096】
ポリエステル基材に用いられるポリエステルは、これらの上記ポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、入手が容易である点において好ましい。本発明においてはポリエチレンテレフタレートのような、汎用性が極めて高いフィルムであっても、表示品質の高い液晶表示装置を作製することが可能な、光学フィルムを得ることができる。更に、ポリエチレンテレフタレートは、透明性、熱又は機械的特性に優れ、延伸加工によりリタデーションの制御が可能であり、固有複屈折が大きく、膜厚が薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られる。
【0097】
例えば、3000nm以上のリタデーションを有するポリエステル基材を得る方法としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。上記横延伸温度としては、80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0〜5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステル基材の透明性が低下しやすくなり、延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られるポリエステル基材の複屈折が小さくなり、所望のリタデーションを得るための膜厚が厚くなってしまう。また、ポリエステル基材をシート状に押出し成形する際に、流れ方向(機械方向)への延伸、すなわち、縦方向延伸を行っても良い。この場合、上記屈折率差Δnの値を上述した好ましい範囲に安定して確保する観点から、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。なお、押出し成形時に縦延伸させることに代えて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後に、縦延伸を行うようにしてもよい。また、上記熱処理時の処理温度としては、100〜250℃が好ましく、より好ましくは180〜245℃である。
【0098】
上述した方法で作製したポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上に制御する方法としては、延伸倍率や延伸温度、作製するポリエステル基材の膜厚を適宜設定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、また、膜厚が厚いほど、高いリタデーションを得やすくなり、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、また、膜厚が薄いほど、低いリタデーションを得やすくなる。
【0099】
<中間層>
次に、中間層13について詳述する。中間層13は、その厚みt〔nm〕およびその面内での平均屈折率n
2に関する上述した条件を満たすことにより、機能層15と中間層13との界面での反射光L
r1および中間層13と光透過性基材12との界面での反射光L
r2を重ね合わせてなる合成反射光L
rの光強度(振幅)を低下させ、合成反射光L
rに起因した干渉縞が視認されることを抑制する。中間層13は、厚みt〔nm〕および面内での平均屈折率n
2に関する上述した条件を満たす限りにおいて、特に限定されない。
【0100】
また、中間層13は、合成反射光L
rの光強度(振幅)を低下させて干渉縞の発生を抑制すること以外の機能を有していてもよい。例えば、プライマー層、より具体的な例として、易接着層として機能するプライマー層の厚みおよび面内の平均屈折率を調節することによって、当該プライマー層が中間層13を形成するようにしてもよい。このような例によれば、干渉縞の発生を防止する観点から、積層体10に新たな中間層13を設ける必要を排除することができる。逆に言えば、易接着性等を確保するために設けられていた層を、干渉縞不可視化に利用することができ、積層体10の材料費の観点から非常に好ましい。
【0101】
したがって、中間層13は、公知のプライマー層と同様の材料から構成することが可能である。具体的には、中間層13に含まれる樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、光重合性化合物の重合体、およびエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等の少なくともいずれかから構成することが可能である。
【0102】
上記光重合性化合物は、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における、「光重合性官能基」とは、光照射により重合反応し得る官能基である。光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、光重合性化合物を重合する際に照射される光としては、可視光線、並びに紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線のような電離放射線が挙げられる。
【0103】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0104】
後述する機能層15が光重合性化合物を用いて形成される場合にあっては、該光重合性化合物の重合を開始させることが可能な重合開始剤を中間層13に添加しておくことが好ましい。これにより、機能層15を硬化させるときに中間層13と機能層15とを強固に架橋させることができる。
【0105】
中間層13の屈折率を調整するため、微小粒径、例えば100nm以下の粒子が上記樹脂内に含有されていてもよい。一例として、中間層13の屈折率を低下させるため、シリカやフッ化マグネシウム等の低屈折率粒子が中間層に含有されていてもよいし、中間層13の屈折率を上昇させるため、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子が中間層に含有されていてもよい。
【0106】
中間層13の厚みは、干渉縞を不可視化する観点から、上述した条件(c1)〜(c6)のいずれかを満たすように設定することができる。なお、中間層13の厚みは、膜厚の均一化を図る観点から3nm以上となっていることが好ましい。一方、中間層13の面内の平均屈折率n
2は、上述した条件(a)及び条件(b)のうちの一方とともに、条件(c1)〜(c6)のいずれかを満たすように設定することができ、例えば1.40以上1.80以下とすることが可能である。
【0107】
<機能層、第2機能層>
次に、機能層15および第2機能層17について説明する。機能層15および第2機能層17は、積層体10において、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮する層が挙げられる。既に説明したように、積層体10に含まれる機能層の数は、当該積層体の用途等に応じて、一以上の任意の数とすることができる。
図1に示された積層体10では、機能層15が、積層基材11の中間層13一方の面上に形成されたハードコート層から構成されている。また、
図2に示された積層体10では、機能層15が、中間層13の一方の面上に形成されたハードコート層から構成されるとともに、第2機能層17が、ハードコート層の中間層13とは逆側の面上に形成された低屈折率層から構成されている。以下、機能層15としてのハードコート層、および、第2機能層17としての低屈折率層について、説明する。
【0108】
ハードコート層とは、光学フィルムの耐擦傷性を向上させるための層であり、具体的には、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を有する層であることが好ましい。ハードコート層は、一例として、光重合性化合物を含むハードコート層用組成物を、中間層13上に塗布し、乾燥させた後、塗膜状のハードコート層用組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることによって、作製され得る。なお、光重合性化合物は、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。「光重合性官能基」の定義は、中間層13の欄の記載と同様である。
【0109】
この方法で得られたハードコート層は、光学等方性となり、面内複屈折性を有さない。得られたハードコート層の面内の平均屈折率n
3を、1.45〜1.65とすることができる。ハードコート層の膜厚(硬化時)は0.1〜100μm、好ましくは0.5〜20μmの範囲である。上記ハードコート層の膜厚は、断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、測定した値である。
【0110】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0111】
光重合性モノマー
光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000未満のものである。光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。本明細書において、「重量平均分子量」は、THF等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。
【0112】
2官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
【0113】
これらの中でも硬度が高い防眩層を得る観点から、3官能以上の多官能モノマーである、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。
【0114】
光重合性オリゴマー
光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000以上10000未満のものである。光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましい。多官能オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、 ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0115】
光重合性ポリマー
光重合性ポリマーは、重量平均分子量が10000以上のものであり、重量平均分子量としては10000以上80000以下が好ましく、10000以上40000以下がより好ましい。重量平均分子量が80000を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光学積層体の外観が悪化するおそれがある。上記多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0116】
ハードコート層用組成物には、上記微粒子および光重合性化合物の他、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、ハードコート層用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0117】
ハードコート層用組成物に添加される熱可塑性樹脂としては、非結晶性で、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0118】
ハードコート層用組成物に添加される熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0119】
なお、上述したように、干渉縞不可視化機能がより有効に発揮され得る観点から、機能層15の面内の平均屈折率n
3と光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1とが、近い値を取るように、或いは等しくなるように、或いは条件(h)を満たすように調整されていることが好ましい。
|n
1−n
3|≦0.03 ・・・条件(h)
そして、機能層15の屈折率を調整する観点から、微小粒径、例えば100nm以下の粒子が機能層形成用組成物(ハードコート層形成用組成物)内に含有させてもよい。一例として、機能能15の屈折率を低下させるため、シリカやフッ化マグネシウム等の低屈折率粒子が機能層に含有されていてもよいし、機能層15の屈折率を上昇させるため、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子が機能層に含有されていてもよい。
【0120】
次に低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が積層体10の表面にて反射する際、その反射率を低くするという役割を果たす層である。上記低屈折率層は、その屈折率がハードコート層よりも小さく、かつ、空気よりも大きいものである。具体的には、低屈折率層の屈折率は、1.1〜2.0の範囲内であることが好ましく、1.2〜1.8の範囲内であることがより好ましく、1.3〜1.6の範囲内であることがさらに好ましい。低屈折率層の屈折率が上記範囲内である場合、積層体10への映り込みを効果的防止することができる。また、低屈折率層の屈折率は、低屈折率層内にて、積層体10の内部の側から、積層体10の表面の側に向かって、なだらかに屈折率が空気の屈折率に向かって変化しているものであってもよい。
【0121】
上記低屈折率層に用いられる材料としては、上述した屈折率を有する低屈折率層を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、上述したハードコート層用組成物で説明した樹脂材料を含有することが好ましい。また上記低屈折率層は、上記樹脂材料に加えて、シリコーン含有共重合体、フッ素含有共重合体及び、微粒子を含有することで屈折率を調整することができる。上記シリコーン含有共重合体としては、例えば、シリコーン含有ビニリデン共重合体が挙げられる。また、上記フッ素含有共重合体の具体例としては、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを含有するモノマー組成物を共重合することによって得られる共重合体が挙げられる。また、上記微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、アクリルスチレン共重合微粒子、空隙を有する微粒子が挙げられえる。なお、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。
【0122】
なお、ここでは、機能層15がハードコート層として構成され、第2機能層17が低屈折率層として構成された例を示したが、これらの例に限られず、積層体10が、ハードコート層および低屈折率層の少なくとも一方に加えて或いはハードコート層および低屈折率層の少なくとも一方に代えて、耐電防止層、防眩層、防汚層等の他の機能を有した層を含むようにしてもよい。
【0123】
帯電防止層は、例えば、上記ハードコート層用組成物中に帯電防止剤を含有させることで形成することができる。上記帯電防止剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤や、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の微粒子や、導電性ポリマー等を用いることができる。上記帯電防止剤を用いる場合、その含有量は、全固形分の合計質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。
【0124】
また、防眩層は、例えば、上記ハードコート層用組成物中に防眩剤を含有させることで形成することができる。上記防眩剤としては特に限定されず、公知の無機系又は有機系の各種微粒子を用いることができる。上記微粒子の平均粒径としては特に限定されないが、一般的には、0.01〜20μm程度とすれば良い。また、上記微粒子の形状は、真球状、楕円状等のいずれであっても良く、好ましくは真球状のものが挙げられる。
【0125】
上記微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性の微粒子である。このような微粒子の具体例としては、無機系であれば、例えば、シリカビーズ、有機系であれば、例えば、プラスチックビーズが挙げられる。上記プラスチックビーズの具体例としては、例えば、スチレンビーズ(屈折率1.60)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
【0126】
上記防汚層は、液晶表示装置の最表面に汚れ(指紋、水性又は油性のインキ類、鉛筆等)が付着しにくく、又は付着した場合でも容易に拭取ることができるという役割を担う層である。また、上記防汚層の形成により、液晶表示装置に対して防汚性と耐擦傷性の改善を図ることも可能となる。上記防汚層は、例えば、防汚染剤及び樹脂を含む組成物により形成することができる。
【0127】
上記防汚染剤は、液晶表示装置の最表面の汚れ防止を主目的とするものであり、液晶表示装置に耐擦傷性を付与することもできる。上記防汚染剤としては、例えば、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、又は、これらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。上記樹脂としては特に限定されず、上述のハードコート層用組成物で例示した樹脂材料が挙げられる。
【0128】
上記防汚層は、例えば、上述のハードコート層の上に形成することができる。特に、防汚層が最表面になるように形成することが好ましい。上記防汚層は、例えばハードコート層自身に防汚性能を付与することにより代替することもできる。
【0129】
<積層体について>
一実施の形態として以上に説明してきた積層体10によれば、機能層15と光透過性基材12との間に、中間層13が設けられている。そして、光透過性基材12の面内の平均屈折率n
1、中間層13の面内の平均屈折率n
2、機能層15の面内の平均屈折率n
3、および、中間層13の厚みt〔nm〕が、上述した条件(a)および条件(b)のうちの一方を満たすとともに、条件(c1)〜(c6)の少なくとも一つを満たすように調整されている。この結果、機能層15の側から積層体10へ入射して機能層15と中間層13との界面での反射する光L
r1および中間層13と光透過性基材12との界面での反射光L
r2を重ね合わせてなる合成反射光L
rの光強度(振幅)を有効に低下させることができる。したがって、積層体10の表面で反射する光と、積層体10の内部で反射する光と、の干渉に起因して視認され得るようになる干渉縞を効果的に目立たなくさせることができる。
【0130】
また、光透過性基材12のリタデーションを3000nm以上に設定することにより、ニジムラを目立たなくさせることができる。したがって、ここで説明した積層体10によれば、ニジムラおよび干渉縞の両方を効果的に目立たなくさせることができる。さらには、サングラス越しでの鑑賞にも適するようになる。
【0131】
さらに、中間層13がプライマー層によって実現されるようにすれば、実質的な材料費の増加や製造工程の増加等を生じさせることなく、上述した有用な作用効果を確保することができる。
【0132】
≪偏光板≫
積層体10は、例えば、偏光板20に組み込んで使用することができる。
図5は、
図1に示された積層体10を組み込んだ偏光板20の概略構成図である。
図5に示されるように偏光板20は、積層体10と、偏光素子21と、保護フィルム22とを備えている。偏光素子21は、積層基材11の機能層15が形成されている面とは反対側の面に形成されている。保護フィルム22は、偏光素子21の積層体10が設けられている面とは反対側の面に設けられている。保護フィルム22は位相差フィルムであってもよい。
【0133】
偏光素子21としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等が挙げられる。
【0134】
≪液晶表示パネル≫
積層体10および偏光板20は、液晶表示パネルに組み込んで使用することができる。
図5は、
図1に示された積層体10、並びに、
図4に示された偏光板20を組み込んだ液晶表示パネル30の概略構成図である。
【0135】
図5に示される液晶表示パネルは、光源側(バックライトユニット側)から観察者側に向けて、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)等の保護フィルム31、偏光素子32、位相差フィルム33、接着剤層34、液晶セル35、接着剤層36、位相差フィルム37、偏光素子21、積層体10の順に積層された構造を有している。液晶セル35は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
【0136】
位相差フィルム33、37としては、トリアセチルセルロースフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。位相差フィルム37は、保護フィルム22と同一であってもよい。接着剤層34、36を構成する接着剤としては、感圧接着剤(PSA)が挙げられる。
【0137】
≪画像表示装置≫
積層体10、偏光板20、液晶表示パネル30は、画像表示装置に組み込んで使用することができる。画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等が挙げられる。
図6は、
図1に示された積層体10、
図4に示された偏光板20、並びに、
図5に示された液晶表示パネル30を組み込んだ画像表示装置40の一例である液晶ディスプレイの概略構成図である。
【0138】
図6に示される画像表示装置40は、液晶ディスプレイである。画像表示装置30は、バックライトユニット41と、バックライトユニット41よりも観察者側に配置された、積層体10を備える液晶表示パネル30とから構成されている。バックライトユニット41としては、公知のバックライトユニットが使用できる。
【0139】
≪タッチパネルセンサおよびタッチパネル装置≫
また、上述した積層体10は、上述してきた用途以外の用途として、タッチパネルセンサおよびタッチパネルの一部を構成することができる。
図7は、
図1に示された積層体10が組み込まれたタッチパネルセンサ50およびタッチパネル装置55の概略構成図である。
【0140】
図7に示されるようにタッチパネルセンサ50は、積層体10と、センサ電極51と、を有している。センサ電極51は、積層基材11の機能層15が形成されている面とは反対側の面に形成されている。タッチパネル装置55は、タッチパネルセンサ50と、タッチパネルセンサ50のセンサ電極51と電気的に接続された制御装置53と、を有している。制御装置53は、機能層15上における接触位置に応じて変化する電流値に基づいて、接触位置を検出するように構成されている。
【0141】
図7に示されたタッチパネル装置55は、一例として表面型の静電容量方式のタッチパネルを構成している。したがって、センサ電極51は面状に形成され、センサ電極51の四隅が制御装置53と導通されている。タッチパネル装置55およびタッチパネルセンサ50は、
図7に示された例に限られず、投影型の静電容量方式として構成されてもよいし、抵抗膜方式として構成されてもよい。
【0142】
≪その他の用途≫
さらに、上述した積層体10は、干渉縞の発生が回避されるべき種々の用途で使用され得る。例えば、積層体10が、時計や、メーター類等の機器の表示部の窓材としても使用され得る。
【実施例】
【0143】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0144】
<機能層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、機能層用組成物を得た。
(機能層用組成物)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製):35質量部
・ジルコニア微粒子含有ハードコート組成物(製品名「デソライトZ7404」、JSR社製):110質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):5質量部
・ポリエーテル変性シリコーン(製品名「TSF4460」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):0.025質量部
・トルエン:100質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):40質量部
上記組成の機能層用組成物により形成した硬化塗膜の単独の屈折率を測定したところ、1.65であった。
【0145】
<中間層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、中間層用組成物を得た。
(中間層用組成物1)
・ポリエステル樹脂の水分散体(固形分60%):28.0質量部
・水:72.0質量部
上記組成の中間層用組成物により形成した硬化塗膜の単独の屈折率を測定したところ、1.57であった。
【0146】
(中間層用組成物2)
・ポリエステル樹脂の水分散体(固形分60%):20質量部
・酸化チタン微粒子の水分散液(固形分20%):10質量部
・水:70質量部
上記組成の中間層用組成物により形成した硬化塗膜の単独の屈折率を測定したところ、1.70であった。
【0147】
(実施例1)
溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率3.5倍に延伸した後、その両面に中間層用組成物1をロールコーターにて均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=4800nm、膜厚=80μm、n
1x=1.68、n
1y=1.62、平均屈折率1.65のポリエステル基材を得た。また、中間層の膜厚は20nmであった。
【0148】
その後、形成した中間層上に、機能層用組成物をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm
2で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmの機能層を形成し、積層体を製造した。
【0149】
(実施例2)
中間層の膜厚を30nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層体を製造した。
【0150】
(実施例3)
中間層の膜厚を40nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の積層体を製造した。
【0151】
(実施例4)
中間層用組成物1に代えて中間層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4の積層体を製造した。中間層の膜厚は18nmであった。
【0152】
(実施例5)
中間層の膜厚を30nmとした以外は、実施例4と同様にして実施例5の積層体を製造した。
【0153】
(実施例6)
中間層の膜厚を35nmとした以外は、実施例4と同様にして実施例6の積層体を製造した。
【0154】
(比較例1)
中間層の膜厚を70nmとした以外は、実施例1と同様にして比較例1の積層体を製造した。
【0155】
(比較例2)
中間層の膜厚を70nmとした以外は、実施例4と同様にして比較例2の積層体を製造した。
【0156】
(干渉縞の評価)
干渉縞の有無を下記基準で評価した。サンプルは塗工面の反対側を黒インキで塗りつぶし、塗工面に三波長蛍光灯をあて、反射観察にて評価を行った。評価基準を以下のように設定した評価結果を、表1に示す。
◎:注意深く観察したが干渉縞の発生を視認することができなかった。
○:注意深く観察すると、実使用上問題とならない非常に薄い干渉縞が観察された。
×:干渉縞がはっきり観察される。
【0157】
【表1】