(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縦孔における前記揚水管よりも前記地下水の流れ方向の下流側に、止水壁が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の地下水の浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、地下水における汚染物質の濃度は深度によってばらつきがある。例えば、局所的に濃度の高い部分が存在することがある。そして、地下水の高濃度汚染部分が特定部位の活性炭を通過し続けてしまうと、特定部位の活性炭が他の部位の活性炭に比べて早期に飽和状態となってしまう。
【0006】
このようなケースでは、汲み上げられた地下水の汚染濃度が高くなってしまうので、まだ吸着能力を有する活性炭があるにも拘わらず、活性炭の全体を交換することを余儀なくされてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、浄化材としての活性炭を効率良く使用することができる地下水の浄化装置及び浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するため、本発明に係る地下水の浄化装置は、地表から地盤内を下向きに形成された縦孔に配置され、前記縦孔内に流入した地下水を汲み上げる揚水管と、前記縦孔の内周面と前記揚水管の外周面の間に配置され、前記地下水を攪拌するための攪拌空間を区画する
中空箱状体よりなる区画体と、
前記区画体と前記揚水管の外周面の間に設けられ、汲み上げ前の前記地下水を浄化する活性炭層と、前記攪拌空間内の地下水を攪拌する攪拌手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この浄化装置によれば、縦孔の内周面から縦孔内に流入した地下水は活性炭層を通過する前に攪拌空間で攪拌されるので、攪拌空間内の地下水における汚染物質の濃度を、深さ方向に均等化させることできる。そして、汚染物質の濃度が均等化された地下水を活性炭に吸着させているので、広い範囲の活性炭を汚染物質の吸着に使用できる。すなわち、この構成において活性炭層の各所の活性炭は、ほぼ一様に地下水を浄化する。これにより、活性炭を全体的に使用しつつ汚染物質を吸着させることができ、活性炭層を万遍なく使用させた後に新たな活性炭と交換することができる。その結果、活性炭を効率良く使用することが可能となる。
【0010】
また、活性炭の交換頻度が低減されるので、活性炭のコスト、及び、交換作業に費やす労力と時間を低減することが可能である。また、汲み上げられた地下水は浄化済であるため、地上にて別途浄化しなくてもよい。このため、地上に浄化処理用の設備を設ける必要がなくなり、設備の簡素化が図れる。
【0011】
本発明に係る地下水の浄化装置は、地表から地盤内を下向きに形成された縦孔に配置され、前記縦孔内に流入した地下水を汲み上げる揚水管と、前記縦孔の内周面と前記揚水管の外周面の間に配置され、前記地下水を攪拌するための攪拌空間を区画する区画体と、前記区画体の内周面と前記揚水管の外周面の間に設けられ、汲み上げ前の前記地下水を浄化する活性炭層と、前記攪拌空間内の地下水を攪拌する攪拌手段とを備え、前記攪拌手段は、前記攪拌空間における下端部分から空気泡を放出する散気管を備えることが好ましい。この構成では、攪拌空間内の地下水の攪拌に空気を用いているので、空気ポンプ、配管及び散気管といった簡単な設備で構成できる。
【0012】
前述の浄化装置において、前記区画体は、前記揚水管よりも前記地下水の流れ方向の上流側に、前記縦孔の内周面に沿って設けられていることが好ましい。この構成では、縦孔の内周面から縦孔内に流入する地下水を確実に攪拌空間へと導くことができ、さらに攪拌空間で攪拌された地下水を確実に活性炭層へと導くことができる。その結果、地下水に含まれる汚染物質を活性炭層の全体に吸着させることができる。
【0013】
前述の浄化装置において、前記縦孔における前記揚水管よりも前記地下水の流れ方向の下流側には止水壁が設けられていることが好ましい。この構成では、揚水管で地下水を汲み上げる際に、止水壁が下流側からの地下水、例えば敷地外からの清浄な地下水の流入を抑制する。これにより、上流側から流れてくる浄化後の地下水を積極的に揚水でき、かつ、敷地外から流れてくる清浄な地下水を無駄に揚水してしまう不具合を防止できる。
【0014】
前述の浄化装置において、前記区画体は、前記縦孔の内周面に沿って、前記内周面の全周に亘って設けられていることが好ましい。この構成では、地下水が何れの方向から縦孔内に流入しても、攪拌空間で攪拌された後の地下水を活性炭層へ導くことができる。
【0015】
前述の浄化装置において、前記攪拌空間は、流入した前記地下水が上昇する上昇経路と、前記上昇経路に隣接されるとともに流入した前記地下水が下降する下降経路とに区画され、前記上昇経路と前記下降経路の上端部同士が地下水位よりも下方で連通され、前記散気管は、前記上昇経路内に配置されていることが好ましい。この構成では、散気管から放出された空気泡により、地下水をスムーズに上昇させることができる。そして、上昇経路を上昇した地下水を、下降経路を通じて下降させることができる。このように、上昇経路と下降経路の間で地下水を循環させることができるので、攪拌空間内の地下水を効率よく攪拌することができる。
【0016】
また、本発明は、前述の浄化装置を用いて前記地下水を浄化することを特徴とする地下水の浄化方法である。この浄化方法によれば、活性炭の交換頻度が低く、活性炭のコスト、及び、交換作業に費やす労力と時間を低減し、活性炭を効率良く使用して地下水を浄化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、活性炭を効率良く使用することができる地下水の浄化装置及び浄化方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の浄化装置1は、汚染箇所の敷地境界に地下水揚水井戸(バリアー井戸)として設けられており、地下水に含まれるVOC等の有害物質を汲み上げ前に除去するものである。
【0020】
この浄化装置1は、敷地境界の地盤3に形成された縦孔10内に設けられており、井戸構造体20と活性炭層30とを備えている。縦孔10は、例えば直径約1.5〜2m、深さ10mであり、地表面3aから不透水層5に亘って下向きに形成されている。また、この縦孔10は、地下水の流れにおいて上流側が汚染箇所側となるような位置に設けられている。以下の説明では、汚染箇所側が地下水の流れにおける上流側とし、汚染箇所とは反対側を下流側として説明する。
【0021】
井戸構造体20は、地下水を汲み上げるための流路の区画、攪拌空間の区画、及び、地下水の流れ方向の規制等を行うための部材であり、
図2に示すように、揚水管22と、区画体24と、止水壁26とを備えている。
【0022】
揚水管22は、地下水を汲み上げるための汲み上げ流路を区画する管状部材であり、上端が地表面3aよりも高い位置に、下端が不透水層5の表面付近となるように、鉛直方向に配置されている。この揚水管22の下端部には、汲み上げポンプ(不図示)が接続されている。
【0023】
この揚水管22は、例えば直径約0.3mの中空をなす塩化ビニル製の管であり、周面には揚水管22の内外を連通する複数の開口22aが設けられている。これらの開口22aは、縦孔10内の地下水を揚水管22の内部空間に流入させるためのものであり、揚水管22の下側半部における全周に設けられている。
【0024】
ここで、
図1に示すように、各開口22aは、帯水層4における地下水位WHよりも下側となる高さ範囲に設けられている。
【0025】
図1〜
図3に示すように、区画体24は、縦孔10内の地下水を攪拌するための攪拌空間を区画する部材であり、本実施形態では縦孔10の内周面10aと揚水管22の外周面の間に配置されている。この区画体24は、内壁材24aと、外壁材24bと、上面板24cと、下面板24dと、側面板24eとを有している。
【0026】
内壁材24aは、攪拌空間の内周部分を区画する板状部材である。外壁材24bは、攪拌空間の外周部分を区画する板状部材であり、内壁材24aよりも所定間隔だけ外周側に配置されている。本実施形態において、外壁材24bは、縦孔10の内周面10aに沿って半円形に湾曲された板状部材であり、内壁材24aは、外壁材24bよりも1回り小さい半円形に湾曲された板状部材である。そして、内壁材24aは、外壁材24bよりも縦孔10の半径方向に約50mm〜100mm位離れた位置の同心上に配置されている。
【0027】
上面板24cは、内壁材24aの上端と外壁材24bの上端とを連結する半円帯状の板材である。下面板24dは、内壁材24aの下端と外壁材24bの下端とを連結する半円帯状の板材である。側面板24eは、内壁材24aの左端と外壁材24bの左端と、内壁材24aの右端と外壁材24bの右端とを連結する矩形帯状の板材である。
【0028】
これらの内壁材24a〜側面板24eの各部材により、区画体24は、縦孔10の内周面10aに沿って半円形に湾曲された薄手の中空箱状体として構成されている。そして、区画体24の内部空間が地下水を攪拌する攪拌空間として機能する。なお、下面板24d及び側面板24eは、内壁材24a及び外壁材24bに対して固着されており、上面板24cは内壁材24a及び外壁材24bに対して着脱可能に取り付けられている。
【0029】
また、
図1〜
図3に示すように、内壁材24a及び外壁材24bの下側半部には、多数のスリット24fが設けられている。これらのスリット24fは、区画体24によって区画される攪拌空間に地下水を流入させるため、及び、攪拌空間の地下水を下流側に排出させるために形成されている。
【0030】
本実施形態のスリット24fは、上下方向に細長い矩形状の貫通孔であり、内壁材24a及び外壁材24bに対してマトリクス状(行列状)に設けられている。このように細長い形状にすることで、活性炭30aや小石等の攪拌空間への流入を抑制している。
【0031】
図1、
図3に示すように、攪拌空間には、散気管24gと空気供給管24hとが配置されている。これらの散気管24g及び空気供給管24hの組は攪拌手段に相当し、攪拌空間内の地下水を攪拌する。すなわち、地上から空気ポンプ等で供給された圧縮空気を、空気供給管24hを通じて散気管24gへ供給し、散気管24gから空気泡として放出させる。これにより、放出された空気泡が攪拌空間内を上昇し、地下水を攪拌する。
【0032】
ここで、区画体24の攪拌空間の構造並びに地下水の攪拌について、
図4のモデル図に基づいて説明する。なお、区画体24は平面視円弧状に構成されているが、
図4では平坦に展開した状態を示し、内壁材24aと外壁材24bの全面に設けられているスリット24fは、一部のみを示して他を省略して示す。
【0033】
区画体24内には、上下方向に沿うリブ25が3本横並びに設けられている。これらのリブ25により、攪拌空間は、縦孔10の周方向に沿って4つの領域に分割されている。そして、これら4つの領域は、周方向において隣接する2つの領域25a,25bが対をなすように設けられている。
【0034】
対をなす2つの領域25a,25bの各々において、中央側に位置する領域25aは、区画体24内に流入した地下水が上昇する上昇経路を構成する。一方、端側に位置する領域25bは、地下水が下降する下降経路を構成する。そして、上昇経路25aと下降経路25bとは、区画体24の上面板24c側と下面板24d側とでいずれも連通されている。すなわち、領域25a,25bを区画するリブ25は、その上端が地下水位WHよりも所定高さ低くなるように設けられている。また、その下端が区画体24の下面板24dよりも所定高さ高くなるように設けられている。
【0035】
加えて、攪拌空間の下側、詳しくは上昇経路25aの下端部には散気管24gが配置されており、空気供給管24hを通じて圧縮空気が供給されている。これにより、攪拌空間に地下水が流入されている状態にて散気管24gから空気泡が放出されると、この空気泡の上昇に伴って上昇経路25a内の地下水が上昇する。そして、上昇した地下水は上昇経路25aの上端で下降経路25bへ移動し、この下降経路25bを下降する。
【0036】
その結果、上昇経路25aと下降経路25bとの間で地下水が循環するので、上流側のスリット24fから流入した地下水に含まれる汚染物質の濃度を、攪拌空間内で均等化できる。そして、汚染物質の濃度が均等化された地下水を下流側のスリット24fから排出させることができる。
【0037】
図1、
図2に示すように、止水壁26は、縦孔10における下流側の内周面10aに沿って設けられた、湾曲した壁部である。この止水壁26は、上流側から流れてくる浄化後の地下水を積極的に揚水させ、敷地外(下流側)からの清浄な地下水の流入を抑制する。本実施形態の止水壁26は、不透水層5から帯水層4を超える高さの範囲に形成されている。そして、止水壁26における上流側の面には揚水管22が取り付けられている。本実施形態では、
図3に示すように、縦長矩形状の取付片26aを介して止水壁26が取り付けられている。これにより、止水壁26は、揚水管22の下流側にて揚水管22を中心として円周方向に振り分けられた状態で設けられている。
【0038】
図2、
図3に示すように、揚水管22と区画体24とは、揚水管22と区画体24の円周方向における端部とを繋ぐ支持部23にて連結されており、揚水管22、区画体24、及び、止水壁26を一体的に接続している。本実施形態の支持部23は、矩形板状に構成されており、上下方向に間隔を空けた状態で複数設けられている。
【0039】
図1、
図3に示すように、本実施形態の活性炭層30は、活性炭30aを縦孔10に投入したものである。活性炭30aは、地下水中の汚染物質を吸着する作用を有するものであり、各種の活性炭を使用することができる。
【0040】
そして、活性炭層30は、区画体24と止水壁26の空間に揚水管22を囲む状態で、活性炭30aを投入することによって設けられる。すなわち、活性炭層30は、区画体24の内周面と揚水管22の外周面の間に設けられ、揚水管22によって汲み上げられる前の地下水を浄化する。
図1に示すように、活性炭層30は、その上端が地下水位WHを超える高さまで設けられる。これにより、上流側から流入してくる地下水に含まれる有害物質を活性炭30aで吸着し、浄化後の地下水を揚水管22へと導いている。
【0041】
ここで、活性炭層30に通水される地下水は、前述したように区画体24の攪拌空間で攪拌され、有害物質の濃度が均等化されている。このため、濃度が均等化された有害物質を、活性炭層30の活性炭30aの全体を使って吸着できる。
【0042】
次に、この浄化装置1の設置について説明する。
図5(a)及び(b)に示すように、まず、地盤3に掘削する縦孔10の直径と同じ直径のケーシングCSを、地表面3aから不透水層5までの範囲に打ち込む。その後、
図5(c)に示すように、ケーシングCSのその内側を掘削して縦孔10を形成する。
【0043】
次に、
図5(d)に示すように掘削した縦孔10内に井戸構造体20を配置する。なお、井戸構造体20は、区画体24がケーシングCSの上流側の周面に沿って、止水壁26がケーシングCSの下流側の周面CSに沿って、それぞれ接触するように配置される。井戸構造体20を配置したならば、
図5(e)に示すように活性炭30a入りの袋30bを縦孔10内に積み重ねる。その後、
図5(f)に示すように、ケーシングCSを抜き取ることで浄化装置1の設置が完了する。
【0044】
以上の様に設置された浄化装置1を用いて地下水を浄化するには、散気管24gから区画体24(攪拌空間)内に対して間欠的に空気泡を放出させる。例えば、1時間につき5分間程度の割合で空気泡を放出させる。空気泡の放出により、前述したように攪拌空間の地下水が攪拌され、汚染物質の濃度が均等化された状態になる。そして、汚染物質の濃度が均等化された地下水が活性炭層30を通過するので、汚染物質は活性炭30aの全体に吸着される。活性炭層30の通過によって浄化された地下水は、揚水管22から汲み上げられる。汲み上げられた地下水は、浄化済みであることから、そのまま放流することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の浄化装置1によれば、内周面10aから縦孔10に流入した地下水は、活性炭層30を通過する前に区画体24の攪拌空間で攪拌される。このため、攪拌空間の地下水における汚染物質の濃度を均等化でき、汚染状態のばらつきを抑制できる。そして、汚染物質の濃度が均等化された地下水を活性炭層30に通過させているので、広い範囲の活性炭30aを汚染物質の吸着に使用できる。
【0046】
すなわち、この構成において活性炭層30の各所の活性炭30aは、ほぼ一様に地下水を浄化する。これにより、活性炭30aを全体的に使用しつつ汚染物質を吸着させることができ、活性炭30aを万遍なく使用させた後に新たな活性炭30aと交換することができる。その結果、活性炭30aを効率良く使用することが可能となる。
【0047】
また、活性炭30aの交換頻度が低減されるので、活性炭のコスト、及び、交換作業に費やす労力と時間を低減することが可能である。また、汲み上げられた地下水は浄化済みであるため、地上にて別途浄化しなくてもよい。このため、地上に浄化処理用の設備を設ける必要がなくなり、設備の簡素化が図れる。
【0048】
また、浄化装置1において、地下水の攪拌手段が、攪拌空間における下端部分から空気泡を放出する散気管24gを備えているので、空気ポンプ(不図示)、空気供給管24h、及び、散気管24gといった簡単な設備で攪拌手段を構成できる。また、空気泡を用いて攪拌しているので、処理対象の水量を増やすことがなく、省電力での運転も可能である。
【0049】
また、浄化装置1が備える井戸構造体20は、揚水管22と、区画体24と、止水壁26とが一体化されているので、縦孔10内において自立し易い。このため、各部材を縦孔10内に容易に配置できる、かつ、井戸構造体20が配置された縦孔10内に活性炭30aを充填するだけで、容易に浄化装置1を完成させることができる。特に、揚水管22と、区画体24と、止水壁26とが一体化されていると、互いの位置合わせが不要となるため、設置作業における工数を削減し、作業時間を短縮することができる。
【0050】
また、浄化装置1において、区画体24は、揚水管22よりも上流側に、縦孔10の内周面10aに沿って設けられているので、縦孔10内に流入する地下水を確実に攪拌空間へと導くことができ、さらに攪拌空間で攪拌された地下水を確実に活性炭層30へと導くことができる。その結果、地下水に含まれる汚染物質を活性炭30aの全体に吸着させることができる。
【0051】
また、浄化装置1において、揚水管22よりも下流側には、地下水の流出を抑制する止水壁26が設けられているので、揚水管22で地下水を汲み上げる際に、この止水壁26が下流側からの地下水の流入量を抑制する。これにより、上流側から流れてくる浄化後の地下水を積極的に汲み上げることができる。
【0052】
また、浄化装置1において、攪拌空間は、流入した地下水が上昇する上昇経路25aと、上昇経路25aに隣接されるとともに流入した地下水が下降する下降経路25bとに区画され、上昇経路25aと下降経路25bの上端部同士が地下水位WHよりも下方で連通されており、かつ、散気管24gは、上昇経路25aの下端部分に配置されているので、散気管24gから放出された空気泡により、地下水をスムーズに上昇させることができる。そして、上昇経路25aを上昇した地下水を、下降経路25bを通じて下降させることができる。このように、上昇経路25aと下降経路25bの間で地下水を循環させることができるので、攪拌空間内の地下水を効率よく攪拌することができる。
【0053】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0054】
まず、支持部23に関し、前述した実施形態の支持部23は、狭幅の矩形板材によって構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、
図6(a)に示す支持部23Aのように、広幅の矩形板材とすることにより、多くの地下水をより揚水管22側に導くことができる。このように構成することで、浄化後の地下水を下流側に流し難くすることができ、集水効率を高めることができる。
【0055】
また、
図6(b)に示す支持部23Bのように、棒状部材によって構成した場合には、活性炭層30内の通過方向に自由度が増し、活性炭30aの全体を効率よく使用することができる。さらに、
図6(c)に示す支持部23Cのように、穴あきの板状部材によって構成した場合には、穴の大きさや数によって下流側に流れる地下水の量を調整することができ、現場の状況に応じて流量を最適化できる。
【0056】
前述の実施形態では、揚水管22の外周面と止水壁26の上流側の面とが、地下水の流れに沿う方向に離れて配置され、それらの間が縦長矩形状の取付片26aで連結されていたが、これに限らず、揚水管22を止水壁26の上流側の面に直接取り付けてもよい。このように構成すると、揚水管22よりも地下水の上流側に位置する活性炭30aの割合が増えるので、活性炭30aの全体を一層効率よく浄化に使用できる。
【0057】
また、前述の実施形態では、揚水管22、区画体24、及び、止水壁26が井戸構造体20として一体をなしている例について説明したが、揚水管22、区画体24、及び、止水壁26は、各々別個に設けられていてもよい。また、止水壁26は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、区画体24と止水壁26とが周方向に離れている例について説明したが、
図7に示す第2実施形態の浄化装置1Aのように、区画体24と止水壁26とが周方向に連結されていてもよい。
【0059】
また、
図8に示す第3実施形態の浄化装置1Bのように、区画体24が、揚水管22と間隔を隔てるとともに内周面10aに沿って全周に設けられていても良い。この場合には、地下水が何れの方向から縦孔内10に流入しても、攪拌空間で攪拌された後の地下水を活性炭層30へ導くことができる。
【0060】
また、前述の実施形態においては、区画体24と止水壁26との空間に活性炭30aを投入することで活性炭層30を設ける例について説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、透水性を有する袋(麻袋やメッシュ袋等)に活性炭30aを詰めて活性炭袋を作製し、この活性炭袋を区画体24と止水壁26との空間に投入してもよい。このように、活性炭が袋に詰められている場合には、活性炭を交換する際の作業性が向上する。また、スリット24fが、活性炭のサイズより大きい場合には、内側やスリットの部分に十分な強度を備えたメッシュを設けても構わない。
【0061】
また、第1実施形態では、区画体24内をリブ25により4つの領域に分割した例について説明したが、上昇経路25aと下降経路25bとが隣接して対をなしていれば、分割される領域は4つに限るものではなく、また、リブ25は必ずしも設けられていなくともよい。リブ25が設けられていない場合には、空気を供給する孔を下面板24dに設けることが望ましい。また、区画体24の形状を、平面視にて半円の弧状としたが、半円に限るものではない。
【0062】
また、上記実施形態においては、散気管24gから空気を送る時間を1時間につき5分としたが、これに限るものではない。