特許第6048023号(P6048023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048023
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】車両の燃料タンク固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/067 20060101AFI20161212BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B60K15/067
   F02M37/00 301D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-203731(P2012-203731)
(22)【出願日】2012年9月15日
(65)【公開番号】特開2014-58201(P2014-58201A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】冨吉 勇太
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−261360(JP,A)
【文献】 特開2009−241913(JP,A)
【文献】 実開昭57−199128(JP,U)
【文献】 実開昭50−099311(JP,U)
【文献】 特開2012−066633(JP,A)
【文献】 特開2013−216206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/067
F02M 37/00
B65D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面中央部に下方に向かって車幅方向外側に広がるようにテーパ状に開く凹部が形成された鞍型の燃料タンクを固定ベルトによって車両の床下に固定する燃料タンクの固定構造において、
前記固定ベルトは、複数設けられており、
前記燃料タンクに形成された前記凹部の車幅方向両側の斜面のそれぞれに前記固定ベルトが掛けられ、
前記各固定ベルト、車上下方向に対して斜めに張設され、
車幅方向に対向配置されている前記固定ベルト間の車幅方向距離が、車両上方に向かうに従い大きくなるように、前記各固定ベルトが配設されていることを特徴とする車両の燃料タンク固定構造。
【請求項2】
前記燃料タンクをその長手方向が車幅方向と一致するよう配置し、その車幅方向中央部に前記凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の燃料タンク固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床下に配置される鞍型の燃料タンクの固定ベルトによる固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の床下に配置される燃料タンクには、固定ベルトによって車体に吊下支持されるものがあるが、斯かる燃料タンクには、その幅方向中央にプロペラシャフトとの干渉を避けるために凹部を形成して成る鞍型のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、鞍型の燃料タンクの従来の固定構造の一例を図4図6に基づいて以下に説明する。
【0004】
即ち、図4は鞍型の燃料タンクの従来の固定構造を示す車両の部分底面図、図5は同固定構造を示す正面図、図6は同固定構造を示す側面図であり、車体の後部底面の車幅方向(図4の上下方向)略中央には車両前後方向(図4の左右方向)に延びるプロペラシャフト111や配管112が配されている。
【0005】
又、車体後部の床下には鞍型の燃料タンク101がその長手方向を車幅方向に一致させて横向きに配置されており、この燃料タンク101の底面の車幅方向中央部には、前記プロペラシャフト111や配管112との干渉を避けるための凹部101Aが形成されており、この燃料タンク101は図5に示すように鞍型形状を成している。ここで、燃料タンク101の底部に形成された凹部101Aの左右には、下方に向かってテーパ状に開く斜面101aがそれぞれ形成されている。
【0006】
ところで、図4に示すように、車体後部の燃料タンク101の左右には車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ102が配置されており、燃料タンク101の前後には車幅方向に延びるクロスメンバ103,104が互いに平行に左右のサイドメンバ102に架設されている。そして、鞍型の燃料タンク101は、左右のサイドメンバ102と前後のクロスメンバ103,104によって囲まれる空間及びその下方に収納されるように横向きに配置されており、この燃料タンク101は、前後のクロスメンバ103,104に固定される左右2本の金属製の固定ベルト105によって車体の下部に押しつけられて車両の床下に吊下支持されている。
【0007】
2本の上記固定ベルト105は、図4に示すように車両前後方向に沿って互いに平行に配されており、各固定ベルト105は、図5に示すように燃料タンク101の底面の凹部101Aの外側に位置する平坦面101bに掛けられ、その両端は図6に示すように前後のクロスメンバ103,104にボルト106によって締結されている。従って、各固定ベルト105は、正面視では図5に示すように垂直に張設されているが、側面視では図6に示すように燃料タンクの前後の部分が斜めに張設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−241913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4図6に示す鞍型の燃料タンク101の従来の固定構造においては、側面視において燃料タンク101には図6に示すように固定ベルト105の張力によって車両の上下方向に上方への力Tが作用するとともに、燃料タンク101の底面の前後のコーナー部には固定ベルト105の張力によって斜め向きの力T,Tが作用する。従って、斜め向きの力T,Tの水平分力T1h,T2hによって燃料タンク101の車両前後方向の揺れが抑えられる。
【0010】
ところが、正面視においては各固定ベルト101は図5に示すように車両の上下方向に平行な平面上に張設されているため、燃料タンク101は各固定ベルト105から車両の前後方向の力と車両上下方向の力Fのみを受け、この張力Fには車両の左右方向の水平成分が存在しないため、固定ベルト101の張力が弱いと車両走行時の路面の凹凸等によって燃料タンク101には左右に揺れが発生する可能性がある。このような燃料タンク101の左右の揺れ(横揺れ)が発生すると、該燃料タンク101と固定ベルト105が擦れて塗装やメッキが剥がれ、これらの燃料タンク101と固定ベルト105の防錆性能が低下する他、特に燃料タンク101が樹脂製である場合には、摩耗によって該燃料タンク101の耐久性が低下するという問題が生じる恐れがある。
【0011】
又、固定ベルト101の張力が弱いと車両に横方向の大きな衝撃が加わった場合には、燃料タンク101が横方向に大きく移動して他の周辺部品に接触するという問題も発生する可能性がある。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、燃料タンクの長手方向の移動を抑制して該燃料タンクの擦れと塗装やメッキの剥がれによる錆の発生等を防ぐことができる車両の燃料タンク固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、底面の長手方向中央部に下方に向かって車幅方向外側に広がるようにテーパ状に開く凹部が形成された鞍型の燃料タンクを固定ベルトによって車両の床下に固定する燃料タンクの固定構造において、前記固定ベルトは、複数設けられており、前記燃料タンクに形成された前記凹部の車幅方向両側の斜面のそれぞれに前記固定ベルトが掛けられ、前記各固定ベルトは、車両上下方向に対して斜めに張設され、車幅方向に対向配置されている前記固定ベルト間の車幅方向距離が、車両上方に向かうに従い大きくなるように、前記各固定ベルトが配設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、前記燃料タンクをその長手方向が車幅方向と一致するよう配置し、その車幅方向中央部に前記凹部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、燃料タンクの底面に形成された凹部の斜面に固定ベルトを掛けて該固定ベルトを車両の上下方向に対して斜めに張設したため、燃料タンクの凹部の斜面に固定ベルトから作用する斜め方向の張力の水平分力によって燃料タンクの長手方向の揺れや移動量が抑えられ、燃料タンクと固定ベルトとの擦れに起因する塗装やメッキの剥がれが防がれて燃料タンクと固定ベルトに高い防錆性能が確保されるとともに、燃料タンクの他の周辺部品への接触を防ぐことができる。
【0017】
また、請求項記載の発明によれば、燃料タンクの凹部の2つの斜面にそれぞれ固定ベルトを掛けることによって、両斜面に固定ベルトから互いに逆向きの斜めの張力が作用し、各張力の水平分力も互いに逆向きとなるため、燃料タンクの長手方向何れの方向の揺れも確実に抑制される。
【0018】
請求項記載の発明によれば、燃料タンクをその長手方向が車幅方向と一致するよう配置し、その車幅方向中央部に凹部を形成したため、燃料タンクの左右方向の揺れ(横揺れ)が抑えられるとともに、燃料タンクの凹部にプロペラシャフト等を通して両者の干渉を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鞍型の燃料タンクの本発明に係る固定構造を示す車両の部分底面図である。
図2】鞍型の燃料タンクの本発明に係る固定構造を示す車両の部分正面図である。
図3図2のA部拡大詳細図である。
図4】鞍型の燃料タンクの従来の固定構造を示す車両の部分底面図である。
図5】鞍型の燃料タンクの従来の固定構造を示す車両の部分正面図である。
図6】鞍型の燃料タンクの従来の固定構造を示す車両の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は鞍型の燃料タンクの本発明に係る固定構造を示す車両の部分底面図、図2は同部分正面図、図3図2のA部拡大詳細図であり、図1に示すように、車体の後部底面の車幅方向(図1の上下方向)略中央には車両前後方向(図1の左右方向)に延びるプロペラシャフト11や配管12が配されている。
【0022】
又、車体後部の床下には鞍型の燃料タンク1がその長手方向を車幅方向に一致させて横向きに配置されており、この燃料タンク1の底面の車幅方向中央部には、前記プロペラシャフト11や配管12を通すための凹部1Aが形成されており、この燃料タンク1は図2に示すように鞍型形状を成している。ここで、燃料タンク1の底部に形成された凹部1Aの左右は、下方に向かってテーパ状に開く斜面1aに形成されている。
【0023】
ところで、図1に示すように、燃料タンク1の左右であって車体後部の左右には車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ2が配置されており、燃料タンク1の前後には車幅方向に延びるクロスメンバ3,4が互いに平行にサイドメンバ2に架設されている。そして、鞍型の燃料タンク1は、左右のサイドメンバ2と前後のクロスメンバ3,4によって囲まれる空間及びその空間の下方に収納されるように横向きに配置されており、この燃料タンク1は、前後のクロスメンバ3,4に固定される左右2本の金属製の固定ベルト5によって車体の下部に押し付けられて車両の床下に吊下支持されている。
【0024】
2本の上記固定ベルト5は、図2に示すようにその中間部が燃料タンク1の底面に形成された凹部1Aの斜面1aにそれぞれ掛けられ、正面視で斜面1aから上方に行くに従って互いに離れる方向に広がるうに斜め上方に延びており、その両端部(前後端部)は前後のクロスメンバ3,4の斜面3a,4aにボルト6によってそれぞれ締結されている。又、各固定ベルト5は、側面視では燃料タンク1の前後の部分が斜めに張設されている。
【0025】
而して、鞍型の燃料タンク1の本発明に係る固定構造においては、側面視で燃料タンク1には固定ベルト5によって車両の上下方向の力が作用するとともに、燃料タンク1の底面の前後のコーナー部には斜め向きの力が作用する(図5参照)。従って、従来と同様に斜め向きの張力の水平分力によって燃料タンク1の車両前後方向の揺れが抑えられる。
【0026】
一方、正面視においては、図2に示すように、各固定ベルト5は、燃料タンク1の底面に形成された凹部1Aの左右の斜面1aに掛けられ、斜面1aから上方に行くほど互いにに離れるように斜め上方に張設されているため、図3に詳細に示すように、燃料タンク1の凹部1Aの斜面1aに固定ベルト5から作用する斜め方向の張力Fの水平分力F1hによって燃料タンク1の左右方向の揺れ(横揺れ)が抑えられる。
【0027】
詳細には、各固定ベルト5は、車両の左右方向で車両の略中央付近となる燃料タンク1の底面に形成された凹部1Aの左右の斜面1aから上方に行くほど車両の側方側となるように斜めに張設されている。このため、右側の斜面1aは、固定ベルト5によって車両の右側上方に引っ張られ、左側の斜面1aは、固定ベルト5によって車両の左側上方に引っ張られて燃料タンク1が車体に下部に押し付けられている。車両が右旋回して燃料タンク1が左側に向かう力を受けたとき、図3に示すように、燃料タンクに力Fの水平分力F1hが作用し、燃料タンク1の左側への移動が阻止されるとともに、力Fの鉛直方向の分力が作用し燃料タンク1を上方の車体の下部に押し付けて燃料タンク1の姿勢が安定する。尚、図3には燃料タンク1の凹部1Aの一方(左側)の斜面1aに固定ベルト5から作用する力Fを図示したが、他方(右側)の斜面1aにも固定ベルト5から左右逆向きの張力が作用する。又、燃料タンクをその長手方向が車幅方向と一致するよう配置した例を示したが、燃料タンクをその長手方向が車両の前後方向と一致するよう配置しても良い。
【0028】
上述のように、本発明に係る固定構造によれば、燃料タンク1の左右方向の揺れ(横揺れ)が抑えられるため、燃料タンク1と固定ベルト5との擦れに起因する塗装やメッキの剥がれが防がれて燃料タンク1と固定ベルト5に高い防錆性能が確保されるとともに、燃料タンク1の他の周辺部品への接触が防がれる。尚、燃料タンク1が樹脂製である場合であっても、固定ベルト5との擦れによる燃料タンク1の摩耗が防がれて該燃料タンク1に高い耐久性が確保される。
【0029】
又、本実施の形態では、燃料タンク1の凹部1Aの2つの斜面1aにそれぞれ固定ベルト5を掛けたため、左右の斜面1aに互いに逆向きの斜めの張力が作用し、各張力の水平成分も互いに逆向きとなるため、燃料タンク1の左右方向の揺れが確実に抑制される。
【0030】
更に、本実施の形態では、燃料タンク1をその長手方向が車幅方向と一致するよう横向きに配置し、その車幅方向中央部に凹部1Aを形成したため、燃料タンク1の左右方向の揺れ(横揺れ)が抑えられるとともに、燃料タンク1の凹部1Aにプロペラシャフト11や配管12等を通してこれらと燃料タンク1との干渉を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料タンク
1A 燃料タンクの凹部
1a 燃料タンクの斜面
2 サイドメンバ
3,4 クロスメンバ
5 固定ベルト
6 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6