(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048054
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】皮膚用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20161212BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20161212BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20161212BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20161212BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20161212BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20161212BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20161212BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20161212BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q19/10
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/39
C11D1/04
C11D1/90
C11D1/10
C11D1/74
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-226661(P2012-226661)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-76977(P2014-76977A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】住田 祥
(72)【発明者】
【氏名】村上 大
(72)【発明者】
【氏名】田村 猛
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正明
【審査官】
小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−189788(JP,A)
【文献】
特開2005−239588(JP,A)
【文献】
特開2007−119394(JP,A)
【文献】
特開2011−126805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のa、b、c、およびdの各成分を含有し、a成分が8〜30質量%、b成分が2〜15質量%、c成分が0.5〜10質量%、d成分が2〜20質量%、a成分とd成分の質量比a/dが0.7〜4であることを特徴とする皮膚用洗浄剤組成物。
a.ラウリン酸カリウム塩20〜60質量%、ミリスチン酸カリウム塩5〜40質量%、パルミチン酸カリウム塩0〜5質量%、およびオレイン酸カリウム塩20〜60質量%である脂肪酸カリウム塩混合物
b.式(1)で示されるアミドアミノ酸型両性界面活性剤、式(2)で示されるアミドベタイン型両性界面活性剤、および式(3)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の両性界面活性剤
【化1】
(式中、R
1COは炭素数8〜20のアシル基を示し、M
1は水素原子、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
【化2】
(式中、R
2COは炭素数8〜20のアシル基を示し、lは2〜4の整数を示す。)
【化3】
(式中、R
3は炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、M
2およびM
3はそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属を示す。mおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数を示す。)
c.式(4)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤
【化4】
(式中、R
4COは炭素数8〜20のアシル基を示し、M
4はアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
d.ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル型非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗顔料、ボディシャンプー、ハンドソープ等の皮膚用洗浄剤組成物に関し、更に詳しくは、使用時の延びがよく、メイクアップ化粧料等の皮膚化粧料、特にサンスクリーン剤に対して、クレンジング力が高く、かつ泡立ちおよび泡質に優れるとともに、すすぎ後のさっぱり感に優れ、つっぱり感が生じ難い皮膚用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料は、肌を美しく見せ、外界の刺激から肌を保護する効果を有し、女性の生活には欠かせないものとなっている。また、スキンケアの意識の高まりから、日焼け予防のサンスクリーン剤が男女問わず使用されるようになってきている。しかし、これらメイクアップ化粧料やサンスクリーン剤等の皮膚化粧料は、油性成分や無機顔料を多量に含んでいるため、皮膚の毛穴を塞ぎ、新陳代謝を妨げるとともに、皮膚化粧料自体が徐々に酸化されるため、長時間の使用は肌トラブルの原因となる場合がある。このため1日1回はクレンジング料を用いて皮膚化粧料を除去する必要がある。
【0003】
メイクアップ化粧料やサンスクリーン剤等の皮膚化粧料の多くは、汗等で流れ落ちるのを防ぐため、皮膚に塗布した後も親油性を保つように工夫されていることから、通常の洗顔料に用いられている石けんなどのイオン性界面活性剤では充分に除去することが困難である。そのため、第一段階として、皮膚化粧料となじみやすい油性成分を多く含んだ洗浄料(メイク落とし)を用いて等の皮膚化粧料を除去し、第二段階として石けんなどのイオン性界面活性剤(洗顔フォーム)を主成分とした洗浄料を泡立たせて素肌洗いを行い、メイク落としの残存油分を皮膚上の皮脂、泥、チリ、汚れと共に洗い流すことで、すっきり感あるいはさっぱり感といった満足感を得ていた。
【0004】
このような二段階の洗浄、いわゆるダブルクレンジングを必要とする理由は、油性成分を主成分とする洗浄料では、使用後に水ですすいでも、皮膚上に残った油性成分が十分除去できず、さっぱりした洗浄感が得られないためであり、また、石けんなどの泡立たせて使う素肌洗い用の洗浄料のみでは、皮膚化粧料の油性成分に覆われた顔料や色素などを肌上から十分に除去できないためである。しかし、化粧行為の迅速性や簡便性が求められつつある近年、ダブルクレンジングは手間がかかる行為であり、また、二度の洗浄により、肌への負担が大きいといった問題を生じることもあった。
【0005】
石けんなどの泡立たせて使う洗浄料には泡立ちおよび泡質の良さが求められている。これは豊富でクリーミーな泡による緩衝作用によって皮膚への刺激を低減する効果があるためである。更に、泡立ちが良いほど洗浄した際の満足感が得られる傾向にあり、また泡質がクリーミーで細かいほど皮膚の毛穴などの小さな部位にも入りこめることから汚れのかき出しに優れているといった利点がある。しかしながら、石けんを主成分とした洗浄料は、泡立ちおよび泡質は優れている一方で、すすぎ後につっぱり感を生じることがあった。
【0006】
また、スキンケア意識の高まりから、男女問わずサンスクリーン剤を使用することが多くなってきているが、男性はダブルクレンジングを行う習慣がほとんどないため、通常の洗顔では油性成分等の除去が不十分であり、さっぱりした洗浄感が得られず、更に肌トラブルの原因になりうることもあった。
【0007】
したがって、一回の洗浄のみでメイクアップ化粧料やサンスクリーン剤等の皮膚化粧料を効果的に除去する作用と、泡立ちおよび泡質がよく洗浄後にさっぱり感を付与する作用を併せ持つダブルクレンジング不要の皮膚用洗浄料の開発が強く望まれていた。
【0008】
このような洗浄料としては例えば、特許文献1において、非イオン性界面活性剤、水酸基を有する水溶性化合物および油性成分を含有する1相型クレンジング用組成物が提案されている。この洗浄料は使用時の伸び、クレンジング力は良いものの、油性成分を多量に配合しているため、すすぎ後にぬめり感が残るばかりか、泡立たせたせることが困難であり、さっぱり感は得られ難かった。
【0009】
特許文献2では、脂肪酸アルカノールアミドと、油性成分10〜50%と陰イオン性界面活性剤とを含有する、ダブルクレンジング不要の泡立つ洗浄剤組成物が提案されている。また特許文献3では、液状の油性成分50〜90質量%、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の組み合わせからなる、ダブルクレンジング不要の気泡性洗浄料が提案されている。
これら洗浄料は液状の油性成分を10%以上含有するため、クレンジング力は良いものの、使用後のぬめり感が残りさっぱりと洗い上げることはできず、ダブルクレンジングが必要になるときもあった。
【0010】
そこで、油性成分を含まなくてもクレンジング力があり、更に泡立たせることができる洗浄料が提案されている。
例えば特許文献4において、高級脂肪酸塩、タウレート型陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は半極性界面活性剤、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物が提案されている。この洗浄料は、皮膚刺激性が低く、クリーミーな泡質でつっぱり感が少なくさっぱりと洗い上げることができるが、サンスクリーン剤に対するクレンジング力については、満足いくものではなかった。
【0011】
特許文献5では、ポリグリセリンとアルキルグルコシド型非イオン性界面活性剤を組み合わせたクレンジング組成物が提案されている。この洗浄料は、メイクアップ化粧料を落とし、その後、水を加えることで、泡立たせてからすすぐことができるものだが、クレンジング力、泡立ち、泡質およびすすぎ後のさっぱり感は十分ではなかった。
【0012】
このように特許文献1〜3の洗浄料は、クレンジング力は高いものの、ぬめり感が残りやすく、更に泡立てて洗うことはできないため、洗浄後にさっぱり感が得られ難かった。また、特許文献4および5の洗浄料はいずれもメイクアップ化粧料に対してはある程度の効果があるものの、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機物や紫外線吸収剤を大量に含み、かつ肌との密着性を上げたサンスクリーン剤に対しては十分な効果が得られていないのが実状である。また、メイクアップ化粧料やサンスクリーン剤等の皮膚化粧料に対して泡立ちや泡質も満足のできるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平4−5213号公報
【特許文献2】特開2007−16109号公報
【特許文献3】特開2010−47541号公報
【特許文献4】特開平8−311498号公報
【特許文献5】特開2001−226228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、使用時の延びがよく、メイクアップ化粧料等の皮膚化粧料、特にサンスクリーン剤に対して、クレンジング力が高く、かつ泡立ちおよび泡質に優れるとともに、すすぎ後のさっぱり感に優れ、つっぱり感が生じ難い皮膚用洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記に示すa、b、c、およびdの特定の界面活性剤を所定量組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、下記のa、b、c、およびdの各成分を含有し、a成分が8〜30質量%、b成分が2〜15質量%、c成分が0.5〜10質量%、d成分が2〜20質量%、a成分とd成分の質量比a/dが0.7〜4であることを特徴とする皮膚用洗浄剤組成物である。
a.ラウリン酸カリウム塩20〜60質量%、ミリスチン酸カリウム塩5〜40質量%、パルミチン酸カリウム塩0〜5質量%、およびオレイン酸カリウム塩20〜60質量%である脂肪酸カリウム塩混合物
b.式(1)で示されるアミドアミノ酸型両性界面活性剤、式(2)で示されるアミドベタイン型両性界面活性剤、および式(3)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の両性界面活性剤
【化1】
(式中、R
1COは炭素数8〜20のアシル基を示し、M
1は水素原子、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
【化2】
(式中、R
2COは炭素数8〜20のアシル基を示し、lは2〜4の整数を示す。)
【化3】
(式中、R
3は炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、M
2およびM
3はそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属を示す。mおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数を示す。)
c.式(4)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤
【化4】
(式中、R
4COは炭素数8〜20のアシル基を示し、M
4はアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
d.ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル型非イオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0017】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、使用時の延びがよく、メイクアップ化粧料やサンスクリーン剤に対して、クレンジング力が高く、かつ泡立ちおよび泡質に優れるとともに、すすぎ後のさっぱり感に優れ、つっぱり感が生じ難いという特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、上記のa、b、c、およびdの各成分を含有する。a成分から順次説明する。
【0019】
〔a成分〕
本発明に用いられるa成分は、その組成がラウリン酸カリウム塩20〜60質量%、ミリスチン酸カリウム塩5〜40質量%、パルミチン酸カリウム塩0〜5質量%、およびオレイン酸カリウム塩20〜60質量%の混合物であり、好ましくはラウリン酸カリウム塩25〜55質量%、ミリスチン酸カリウム塩7〜35質量%、パルミチン酸カリウム塩1〜4質量%、およびオレイン酸カリウム塩25〜50質量%の脂肪酸カリウム塩の混合物、より好ましくはラウリン酸カリウム塩35〜55質量%、ミリスチン酸カリウム塩10〜30質量%、パルミチン酸カリウム塩2〜4質量%、およびオレイン酸カリウム塩30〜40質量%の脂肪酸カリウム塩の混合物である。
【0020】
脂肪酸カリウム塩の混合物は、予め脂肪酸カリウム塩としたものを混合したものでもよく、また、それぞれの脂肪酸を含有する脂肪酸の混合物をまとめてカリウム塩としたものでもよい。
本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、a成分を構成する脂肪酸カリウム塩以外の脂肪酸カリウム塩を、本発明の効果を損なわない範囲で、含有していてもよく、上記a成分を100質量%としたとき、a成分以外の脂肪酸カリウム塩を5質量%程度まで含有させることができる。
【0021】
〔b成分〕
本発明に用いられるb成分は、式(1)で示されるアミドアミノ酸型両性界面活性剤、式(2)で示されるアミドベタイン型両性界面活性剤、および式(3)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の両性界面活性剤である。
【0022】
式(1)中のR
1COおよび式(2)中のR
2COはアシル基であり、炭素数8〜20の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸残基としては、具体的に脂肪酸名で表記すると、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸が挙げられる。また、混合脂肪酸由来のアシル基を用いることができ、かかる混合脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。好ましいアシル基は、炭素数8〜18の範囲のものであり、より好ましくは炭素数8〜16の範囲のものである。炭素数が8未満の場合は泡立ちおよび泡質が低下することがあり、20を超える場合は安定性に問題を生じることがある。
【0023】
式(2)中のlは2〜4の整数であり、好ましくは3である。
【0024】
また、式(1)中のM
1は、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示し、例えば、カリウム、ナトリウム、1/2マグネシウム、1/2カルシウム、アンモニウム、トリエタノールアンモニウム、リジンの陽イオン性残基、アルギニンの陽イオン性残基等が挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウムである。
【0025】
式(3)中のR
3は炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基であり、具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基等のアルキル基、オレイル基等のアルケニル基が挙げられ、アルキル基はヤシ油アルキル基等の混合脂肪酸由来のアルキル基であってもよい。好ましいアルキル基またはアルケニル基は炭素数8〜18、より好ましくは10〜14の範囲のものである。炭素数が8未満の場合は泡立ちおよび泡質が低下することがあり、20を超える場合は安定性に問題を生じることがある。
【0026】
式(3)中のM
2およびM
3はそれぞれ水素原子またはアルカリ金属を示し、M
2とM
3は同一でも、異なっていても良く、例えば水素原子、カリウム、ナトリウムが挙げられ、好ましくは水素原子またはナトリウムである。また、式(3)中のmおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、好ましくは1または2の整数であり、より好ましくはmおよびnがともに1である。mまたはnが0の場合は安定性が低下することがあり、3を超える場合は泡質が低下することがある。
【0027】
b成分としては、式(1)で示されるアミドアミノ酸型両性界面活性剤では、例えば、N−ココイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム〔日油(株)製「ニッサンアノンGLM−R−LV」)、式(2)で示されるアミドベタイン型両性界面活性剤では、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン〔日油(株)製「ニッサンアノンBDF−R」)、式(3)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤では、例えば、ラウリルイミノジ酢酸ナトリウム〔日油(株)製「ニッサンアノンLA」〕等が挙げられる。b成分として、式(1)〜式(3)の各両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上を用いることができるし、同じ式で表わされる2種以上の両性界面活性剤を用いることもできる。
【0028】
〔c成分〕
本発明に用いられるc成分は、式(4)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤である。式中のR
4COはアシル基であり、炭素数8〜20の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸残基としては、b成分の説明において挙げられた脂肪酸残基と同一のものが挙げられ、好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは8〜16の範囲のものである。炭素数が8未満の場合は泡立ちおよび泡質が低下することがあり、20を超える場合は安定性に問題を生じることがある。
また、式中のM
4は、b成分中のM
1と同一のものが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウムである。
【0029】
c成分として具体的には、N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム〔日油(株)製「ダイヤポンK−SF」〕、N−カプロイル−N−メチルタウリンナトリウム〔日油(株)製「ダイヤポンHF−SF」〕等が挙げられる。c成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
〔d成分〕
本発明に用いられるd成分は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル型非イオン性界面活性剤であり、グリセリンの水酸基が脂肪酸によりエステル化され、更にポリオキシエチレン基が付加している非イオン性界面活性剤である。
構成する脂肪酸残基としては、例えば、炭素数6〜18の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸残基としては、具体的に脂肪酸名で表記すると、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、混合脂肪酸由来の脂肪酸残基を用いることができ、具体的に混合脂肪酸名として表記すると、例えば、カプリル酸/カプリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸残基の炭素数が6未満の場合は、クレンジング力が低下することがあり、炭素数が18を超える場合は、泡立ちや泡質が低下することがある。
【0031】
グリセリン1分子に対するオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは3〜50であり、より好ましくは6〜30である。平均付加モル数が3未満では、泡立ちが低下するうえに配合が困難になることがあり、50を超えると、クレンジング力が低下することがある。
グリセリン1分子に対するエステルの数は、好ましくは1〜2である。
d成分として具体的には、ポリオキシエチレン(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(8E.O.)〔日油(株)製「ユニグリMC−208」〕、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル(7E.O.)〔日油(株)製「ユニグリMK−207G」〕、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル(30E.O.)〔日油(株)製「ユニグリMK−230」〕等が挙げられる。d成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
a成分の含有量は、組成物全量中に8〜30質量%であり、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは12〜20質量%である。8質量%未満では泡立ち、泡質およびさっぱり感が低下することがあり、30質量%を超えると、使用時の延び、すすぎ後のつっぱり感が生じることがあるほか、クレンジング力が低下することもあり、経時安定性に問題が生じることもある。
【0033】
b成分の含有量は、組成物全量中に2〜15質量%であり、好ましくは3〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%である。2質量%未満では、泡立ち、クレンジング力が低下し、つっぱり感が生じることがあるほか、経時安定性に問題が生じることがある。15質量%を超えると、すすぎ時やすすぎ後の不快なぬめり感が増加し、さっぱり感が低下することがある。
【0034】
c成分の含有量は、組成物全量中に0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜7質量%、より好ましくは1.5〜5質量%である。0.5質量%未満では、泡質、クレンジング力が低下し、つっぱり感が生じることがある。10質量%を超えると、すすぎ後に不快なぬめり感が生じ、さっぱり感が低下することがある。
【0035】
d成分の含有量は、組成物全量中に2〜20質量%であり、好ましくは5〜18質量%、より好ましくは7〜16質量%である。2質量%未満では、使用時の延び、クレンジング力が低下し、つっぱり感が生じることがある。20質量%を超えると、泡立ち、泡質およびつっぱり感が生じることがある。
【0036】
また、a成分とd成分の質量比a/dは0.7〜4であり、好ましくは1〜3.5、より好ましくは1〜3である。質量比a/dが0.7未満では、泡立ち、泡質およびさっぱり感が低下し、つっぱり感を生じることがある。質量比a/dが4を超えると、使用時の延び、泡立ちが低下し、つっぱり感を生じることがある。
【0037】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、通常の方法に従って製造することができる。本発明の皮膚用洗浄剤組成物の形態は液状であり、溶剤として水又は低級アルコール、特に水を用いたものが好ましい。本発明の皮膚用洗浄剤組成物において、通常、溶剤として35〜85質量%を含有させることができる。
また、本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、肌(皮膚)の洗浄を目的とした様々な使用形態に適用することができ、例えば洗顔料、ボディシャンプー、ハンドソープ等として用いることができる。特に、メイクアップ化粧料やサンスクリーン剤のクレンジング料として好適に用いることができる。
【0038】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、皮膚用洗浄剤に常用されている添加剤を含有させることも可能である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
表1(実施例1〜7)および表2(比較例1〜8)に示す皮膚用洗浄剤組成物(以下、洗浄料とも言う。)を調製し、下記の方法により評価した。
なお、表1および表2において、各成分の数値は組成物全量中の含有量(質量%)を示す。また、a/dはa成分とd成分の質量比を示す。ただし、比較例7および8においては、a成分とd’成分の質量比(a/d’)を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
(1)使用時の延び
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、左手前腕内側に洗浄料0.1gをとり、右手人差し指で円を描くように擦った。
2点:使用時に延びが良いと感じた場合。
1点:使用時に延びがやや良い感じた場合。
0点:使用時に延びが悪いと感じた場合。
【0043】
(2)O/W型サンスクリーン剤に対するクレンジング力
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のO/W型サンスクリーン剤(SPF;50、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.1gを用いてサンスクリーン剤となじませるように30秒間擦ったのち、水ですすいだ。
2点:水ですすいだ後、充分汚れが落ちたと感じた場合。
1点:水ですすいだ後、ほとんど汚れが落ちたと感じた場合。
0点:明らかに汚れ落ちが悪いと感じた場合。
【0044】
(3)W/O型サンスクリーン剤に対するクレンジング力
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のW/O型サンスクリーン剤(SPF;50+、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.1gを用いてサンスクリーン剤となじませるように30秒間擦ったのち、水ですすいだ。
2点:水ですすいだ後、充分汚れが落ちたと感じた場合。
1点:水ですすいだ後、ほとんど汚れが落ちたと感じた場合。
0点:明らかに汚れ落ちが悪いと感じた場合。
【0045】
(4)泡立ち
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のO/W型サンスクリーン剤(SPF;50、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.5gを用いてサンスクリーン剤となじませるように30秒間マッサージした。その後、水でぬらした右手で、マッサージした部分を50往復擦って泡立てた。
2点:泡立ちがとても良いと感じた場合。
1点:泡立ちがやや良いと感じた場合。
0点:泡立たないと感じた場合。
【0046】
(5)泡質
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のO/W型サンスクリーン剤(SPF;50、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.5gを用いてサンスクリーン剤となじませるように30秒間マッサージした。その後、水でぬらした右手で、マッサージした部分を50往復擦って泡立てた。
2点:泡質がとてもきめ細かいと感じた場合。
1点:泡質がきめ細かいと感じた場合。
0点:泡質が粗いと感じた場合。
【0047】
(6)すすぎ後のさっぱり感
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のO/W型サンスクリーン剤(SPF;50、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.5gを用いてO/W型サンスクリーン剤となじませるように30秒間マッサージした。その後、水でぬらした右手で、マッサージした部分を50往復擦って泡立てた。最後に水で5秒間すすいだ。
2点:さっぱり感があると感じた場合。
1点:ややさっぱり感があると感じた場合。
0点:さっぱり感がないと感じた場合。
【0048】
(7)すすぎ後のつっぱり感
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、市販のO/W型サンスクリーン剤(SPF;50、PA+++)を左手前腕部に直径2センチ程塗布し、乾燥させたのち、洗浄料0.5gを用いてO/W型サンスクリーン剤となじませるように30秒間マッサージした。その後、水でぬらした右手で、マッサージした部分を50往復擦って泡立てた。最後に水で5秒間すすいだ。
2点:つっぱり感が全くないと感じた場合。
1点:つっぱり感がほとんどないと感じた場合。
0点:つっぱり感があると感じた場合。
【0049】
上記(1)〜(7)について下記の基準で評価して、表1および表2にそれぞれ示した。なお、「◎」および「○」を合格と評価した。
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上35点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0050】
(8)経時安定性
各洗浄料を0℃、室温、45℃の各温度条件下でそれぞれ1カ月間保存し、その外観を観察し下記のように評価し、表1および表2にそれぞれ示した。なお、「○」を合格とした。
○:いずれの温度でも外観の変化がない。
×:いずれかの温度において白濁や分離が認められる。
【0051】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物に係る実施例1〜7の洗浄料は、いずれも、使用時の延びがよく、サンスクリーン剤に対するクレンジング力が高く、泡立ちおよび泡質に優れ、つっぱり感がなくさっぱりと洗い上げることができ、経時安定性に優れていた。
【0052】
これに対して比較例1〜8では十分な性能が得られていない。
比較例1はa成分が少ないため、泡立ち、泡質、すすぎ後のさっぱり感が悪かった。また、W/Oサンスクリーン剤に対するクレンジング力も低下し、つっぱり感が生じた。
比較例2はb成分を含有していないため、クレンジング力、泡立ち、泡質、および経時安定性が悪く、さらにすすぎ後のつっぱり感が生じた。
比較例3はc成分を含有していないため、クレンジング力、泡質が低下し、すすぎ後のつっぱり感が生じた。
比較例4はd成分を含有していないため、使用時の延びが悪く、クレンジング力が低下し、さらにすすぎ後のつっぱり感を生じた。
【0053】
比較例5はa/dが小さいため、泡立ち、泡質、さっぱり感が低下し、さらにつっぱり感も生じた。
比較例6はa/dが大きいため、使用時の延び、泡立ちが低下し、さらにすすぎ後のつっぱり感が生じた。
比較7はd成分に代えてモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(10E.O)を含有させたものであるので、使用時の延び、クレンジング力、泡立ち、泡質、およびすすぎ後のさっぱり感が悪かった。
比較例8はd成分に代えてポリオキシエチレンラウレート(9E.O)を含有させたものであるので、使用時の延び、クレンジング力、泡立ち、泡質、およびすすぎ後のさっぱり感が悪かった。