(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048076
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】携帯可能な記憶媒体の発行処理装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
G06K19/07 220
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-243544(P2012-243544)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-92968(P2014-92968A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑
【審査官】
梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−162911(JP,A)
【文献】
特開昭61−068771(JP,A)
【文献】
特開平11−031198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部を有する携帯可能な記憶媒体の処理装置であって、
エンコード手段と、チエック手段と、孔あけ加工手段と、異常時搬送制御手段と、不良品収納部と、を備え、
前記エンコード手段は、前記記憶媒体にデータをエンコードする手段であって、
前記チエック手段は、前記記憶媒体のエンコードの良、不良の判断を行う手段であって、
孔あけ加工手段は、不良と判断された記憶媒体や処理途中で処理装置内に停滞した記憶媒体の記憶部に穿孔処理を行う手段であって、
前記異常時搬送制御手段は、異常時に処理途中で処理装置内に停滞した記憶媒体を孔あけ加工手段に搬送する手段であって、
前記孔あけ加工手段によって穿孔された記憶媒体を不良品収納部に排出し、
前記記憶部がICチップであって、穿孔される孔は直径5mm以上であり、前記直径5mm以上の孔を、記憶媒体の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔することを特徴とする携帯可能な記憶媒体の発行処理装置。
【請求項2】
前記直径5mm以上の孔を、記憶媒体の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、更に左短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔することを特徴とする請求項1に記載の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ICチップを備えたICカードの発行処理に用いるICカード処理装置に関するもので、更に詳しくはICカードの発行処理を行う際に発生する不良ICカードを使用不可能な状態として、かつ、確実に不良カード排出部に排出する処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ICカードは例えばキャッシュカードや社員証、学生証等の個人の身分を証明するものに用いられ、このようなICカードには、ICチップが備えられている。また、ICチップのほかに磁気テープが貼られていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−56771号公報
【特許文献2】特開2000−20669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、上記ICカードを発行する際には、即時発行装置を用いて個別情報や有効期限等の設定データを書き込む処理を行っている。
図1は、一般的に用いられている即時発行装置の一例を示す図である。即時発行装置1では、これから発行されるカード2は、カードを保管するカード保管庫3からカード供給部4に搬送される。次にICまたは磁気エンコード部5でクレジットカードの磁気ストライプやICチップに会員番号、有効期限、クレジットカード発行会社のコードなどのデータが入力される。この場合、エンコードチエック部6でエンコードエラーを検出し、エンコードエラーが発生した場合には、その不良カードは不良カード格納部7へ格納される。正常なカードは、次に印字ユニット8に搬送され、有効期限等が印字された後に排出部9に排出される。
【0005】
しかしながら、上記即時発行装置では、不良カード格納部へ格納された不良カードを悪意を持ったものが抜き取ってカードの不正作成を行ったり、外部流出をしてしまう問題があった。また、即時発行装置で発行処理を行っている最中に、その処理途中でカードが搬送詰まり(ジャミング)を起こしたり、また停電等のトラブルによって発行装置そのものが停止してしまうことが、極まれであるが発生することがある。この場合は、例えばエンコードチエックがなされないままの未発行カードが正常カードと混じって排出されたり、また上記と同じようにジャミングしたカードが抜き取られて不正作成されるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて不良カードや、処理途中でジャミングしたカードや、停電等の理由で発行装置内に停滞したカードに対して不正作成を防いだり、未発行カードが正常カードに混入することを防ぐことを可能にした携帯可能な記憶媒体の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、記憶部を有する携帯可能な記憶媒体の処理装置であって、エンコード手段と、チエック手段と、孔あけ加工手段と、異常時搬送制御手段と、不良品収納部と、を備え、前記エンコード手段は、前記記憶媒体にデータをエンコードする手段であって、前記チエック手段は、前記記憶媒体のエンコードの良、不良の判断を行う手段であって、孔あけ加工手段は、不良と判断された記憶媒体や処理途中で処理装置内に停滞した記憶媒体の記憶部に穿孔処理を行う手段であって、 前記異常時搬送制御手段は、異常時に処理途中で処理装置内に停滞した記憶媒体を孔あけ加工手段に搬送する手段であって、前記孔あけ加工手段によって穿孔された記憶媒体を不良品収納部に排出
し、前記記憶部がICチップであって、穿孔される孔は直径5mm以上であり、前記直径5mm以上の孔を、記憶媒体の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔することを特徴とする携帯可能な記憶媒体の発行処理装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記直径5mm以上の孔を、記憶媒体の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、更に左短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔することを特徴とする請求項
1に記載の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置によれば、カード発行時におけるカードの不正作成や、良品カードに未発行処理カードが混入することを防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一般的に用いられている即時発行装置の一例を示す図。
【
図2】本発明の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置に適用される記憶媒体を示す図で、ICチップと磁気テープの両方を有するICカードを例として示す図。(a)は表面を示す。(b)は裏面を示す。
【
図3】本発明の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置の概略構成を示す図。
【
図4】本発明に係る穿孔範囲を示すICカードの例を示す図。
【
図5】本発明に係る穿孔範囲を示すICカードの例を示す図。
【
図6】本発明に係る穿孔範囲を示すICカードの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施する形態を詳細に説明する。
【0016】
図2は本発明の携帯可能な記憶媒体の発行処理装置(以下、携帯可能な記憶媒体の発行処理装置を、単に処理装置と記す)に適用される記憶媒体を示す図で、ICチップと磁気テープの両方を有するICカードを例として説明する。
【0017】
図2(a)は記憶媒体の表面を示す図で、
図2(b)は裏面を示す図である。
図2(a)に示されるICカードの表面には外部機器と接続するためのICチップの8つの接触端子が設けられており、その8つの接触端子の外形は図で示される位置に規格されている。また裏面に設けられている磁気ストライプはカードの端から5.66mm離れた位置にあり、幅は9.52mmと規格されている(ISO/IEC 7816)。また、磁気ストライプはダブルストライプの場合もある。
【0018】
図3は本発明の処理装置の概略構成を示す図である。図中、実線及び破線の矢印は、ICカードの搬送方向を示す。本発明の処理装置11は、装置内部に設けられたICカード保管部13からICカード12をICカード供給部14でピックアップし、そのICカードに対してエンコード手段であるエンコード部15でデータを入力する。更にエンコードの良否をチエックする手段であるチエック部16でエンコードの良否を判断する。エンコードの良否を判断した結果、チエック部16でエンコードエラーを検出し、エンコードエラーが発生した場合には、その不良カードは孔あけ加工手段である孔あけ部20で穿孔され、その後、不良品収納部17へ収納される。正常なカードは、印字ユニット18に搬送され、有効期限等が印字された後に排出部19に排出され、発行処理が終了する。
【0019】
また、本発明の処理装置は異常時搬送制御手段を備えている。異常時とはこの場合、処理装置で発行処理を行っている最中に、その処理途中でカードがジャミングを起こしたり、また停電等のトラブルによって処理装置そのものが停止してカードが処理装置内で停滞してしまう場合を指す。この場合には、本発明の処理装置では、異常時の搬送制御手段によって、ジャミングしたり停滞したカードを、孔あけ部20まで搬送し、その後孔あけ部20で穿孔する。即ち、図中、実線で示した搬送路にあるICカードは上記異常時搬送制御手段によって、孔あけ部20まで搬送され穿孔される。このようにして異常時から復帰する(これを、イニシャライズと称す)際には、処理装置の搬送路内のICカードは穿孔されその後、不良品収納部17へ収納されるために、カードの不正作成を防ぐことが出来る。
【0020】
本発明の処理装置では孔あけ部20によって決められた範囲に複数の孔が穿孔される。
図4から
図6は上記穿孔範囲を示すICカードの例を示す図である。
【0021】
図4に示されるICカードは、直径5mm以上の孔を、記憶媒体(この場合はICカード21を指す)の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔された場合を示す。尚、
図4の場合は各範囲に1つ穿孔したことを示す。このような範囲に穿孔することによって、ICカード21に備えられたICチップ22を孔23によって確実に破壊することが出来る。また孔24によって、ICカード21が左右方向に反転した場合にもICチップ22を確実に破壊することが出来る。
【0022】
図5に示されるICカードは、直径5mm以上の孔を、ICカード21の左短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、上長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、更に左短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上、右短辺から10〜20mm、下長辺から15〜30mmの範囲に1つ以上穿孔された場合を示す。尚、
図5の場合は各範囲に1つ穿孔した
ことを示す。このような範囲に穿孔することによって、ICカード21に備えられたICチップ22を孔23によって確実に破壊することが出来る。また孔24によって、ICカード21が左右方向に反転した場合にもICチップ22を確実に破壊することが出来る。更に孔25によってICカード21が上下方向に反転した場合や、孔26によってICカード21が上下方向及び左右方向に反転した場合にもICチップ22を確実に破壊することが出来る。
【0023】
図6に示されるICカードは、直径5mm以上の孔を、ICカード21の上長辺から5.5〜15mmの範囲に1つ以上、下長辺から5.5〜15mmの範囲に1つ以上穿孔された場合を示す。尚、
図6の場合は各範囲に2つ穿孔したことを示す。このような範囲に穿孔することによって、ICカード21に備えられた磁気テープ32を孔33、34によって確実に破壊することが出来る。また孔35、36によってカード21が上下方向に反転した場合にも磁気テープ32を確実に破壊することが出来る。尚
ICカード21が磁気テープ32及び磁気テープ32aのいわゆるダブルストライプを備えた場合であっても孔35、36によって磁気テープを確実に破壊することが出来る。
【0024】
このように
図4から
図6に示す範囲に直径5mm以上の孔を穿孔することによって、ICチップ22や磁気テープ32(ダブルストライプの場合は、更に磁気テープ32a)の機能を破壊することが出来、その結果、不正作成を防ぐことが出来る。
【0025】
また、上記のように異常時搬送制御手段によって、ジャミングしたり停電時等に処理装置内に停滞したカードを、孔あけ部20まで搬送し穿孔した後、不良品収納部17へ収納するために、カードの不正作成や、また良品カードに未発行処理カードが混入することを防ぐことが出来る。
【0026】
このように本発明による携帯可能な記憶媒体の発行処理装置によれば、カード発行時におけるカードの不正作成や、良品カードに未発行処理カードが混入することを防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1・・・即時発行装置
2・・・カード
3・・・カード保管庫
4・・・カード供給部
5・・・ICまたは磁気エンコード部
6・・・エンコードチエック部
7・・・不良カード格納部
8・・・印字ユニット
9・・・排出部
11・・・処理装置
12・・・ICカード
13・・・ICカード保管部
14・・・ICカード供給部
15・・・エンコード部
16・・・チエック部
17・・・不良品収納部
18・・・印字ユニット
19・・・排出部
20・・・孔あけ部
21・・・ICカード
22・・・ICチップ
23、24、25、26・・・ICチップを破壊する孔
32、32a・・・磁気テープ
33、34、35、36・・・磁気テープを破壊する孔