(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照しながら第1の実施の形態によるレーダ1の構成及び動作について説明する。レーダ1は、例えば、設定された角度の範囲にミリ波を出力して反射波を検出することにより、物体のレーダ1からの距離、方向、及び移動速度などを検出する物体検出装置である。レーダ1としては、例えば、スキャン型のパルスレーダ、Frequency Modurated Continuous Wave(FM−CW)レーダなど、2次元での検出結果を出力できるレーダが適用可能である。本実施の形態においては、FM−CWレーダを例にして説明する。レーダ1は、道路の近傍に備えられ、道路上を通行する車両、または道路上の障害物などを検知するものとする。
【0013】
図1は、レーダ1の機能の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、レーダ1は、送信アンテナ部3、受信アンテナ部4、Radio Frequency(RF)部
5、アナログ回路部7、レーダ処理部9、外部Interface(I/F)17を有している。
【0014】
送信アンテナ部3は、物体を検知するための電波を送信するアンテナである。受信アンテナ部4は、送信された電波の反射波を受信するアンテナである。RF部5は、送信アンテナ部3から出力させる電波を生成するとともに、受信アンテナ部4で受信した信号を増幅するなどの処理を行う装置である。送信アンテナ部3、受信アンテナ部4、およびRF部5は、例えば、メカニカルスキャン方式、ビーム切替方式等により、設定された角度の範囲に電波を出力可能に構成される。アナログ回路部7は、送信アンテナ部3及び受信アンテナ部4側のアナログ信号と、レーダ処理部9側のデジタル信号との間の変換を行う装置である。
【0015】
レーダ処理部9は、Micro Processing Unit(MPU)11、Read Only Memory(ROM)13、Random Access Memory(RAM)15を有しており、デジタル信号を処理する装置である。例えば、MPU11は、レーダ1の動作を制御する演算処理装置である。ROM13は、読出し可能な記憶装置であり、例えば、MPU11により実行されるレーダ1の動作を制御するプログラムを書込んでおくことができる。RAM15は、書込み読出し可能な記憶装置であり、MPU11によりプログラムが実行される際に取得する各種データを記憶しておくことができる。外部I/F17は、例えば、外部からのデータ送信要求の受け付け、検知された物体の位置、速度などの情報の外部への出力を行うインタフェース装置である。
【0016】
図2は、レーダ処理部の機能を示すブロック図である。レーダ処理部9は、レーダ1における検出信号の処理を行う。
図2に示すように、レーダ処理部9は、データ処理部22、外部I/F17を有している。データ処理部22は、例えば、MPU11が、ROM13に記憶されたプログラムを実行することにより、デジタルデータの処理を行う。データ処理部22は、Fast Fourier Transform(FFT)処理部24、ペアリング処理部26、認識処理部28を有している。
【0017】
FFT処理部24は、アナログ回路部7でデジタル信号に変換された受信信号を高速フーリエ変換する。ペアリング処理部26は、FFT処理部24で得られたデータに基づき、周波数の上昇区間の送信波と反射波との差分と、下降区間の送信波と反射波との差分をペアリングすることで、物体を検出する。ペアリング処理部26は、検出結果を物体の位置を示す物体情報として出力する。ここで、レーダ1の電波による検出範囲の幅の中心の方向を中心方位ということにする。このとき、物体情報は、検出された物体のレーダ1の例えば中心(大きさの中心、重心、電波出力の中心点等:以下、単にレーダ1という)からの方向と中心方位とのなす角度、及び、物体のレーダ1からの距離を含む。物体情報は、物体の移動速度、および検出された電波の電波強度を含むこともできる。
【0018】
認識処理部28は、算出部32、選択部34、出力生成部36を有し、ペアリング処理部26から出力される複数の物体の物体情報から、所定数の情報を選択して出力する。このとき、認識処理部28は、検出したい物体(検出目的の物体ともいう)が存在すると考えられる場所(以下、検知対象領域という)の形状及び位置を代表するように設定された注目線の位置及び形状を表す注目線情報を予め例えばRAM等に記憶しておく。算出部32は、物体情報と注目線情報とに基づき、物体情報に優先順位を付す。選択部34は、複数の物体情報の中から優先度の高い物体情報を選択する。出力生成部36は、選択された物体情報に基づき出力データを生成する。なお、例えば、検知対象領域とは道路であり、検出目的の物体とは、道路上を走行する車両である。送信処理部38は、認識処理部28で選択された物体情報に基づき出力データを外部に出力する処理を行う。
【0019】
図3は、レーダ1の設置例40を示す図である。第1の実施の形態においては、検知対象領域となる道路42が、1つの直線に沿って延びている場合を想定している。設置例40では、道路42の幅のほぼ中央上方に、レーダ1が設置されている。このとき、レーダ1が物体検出できる範囲を検出範囲といい、
図3の例では検出範囲44で表している。レーダ1は、出力した電波の反射波を検出することにより、検出範囲44に存在する物体を検知する。なお、
図3において、検出範囲44は、レーダ1が物体を検知できる範囲を概念的に表したものである。以下の他の図においても同様である。
【0020】
設置例40では、レーダ1は、例えば、道路42を通行する複数の車両46−1〜46−4の夫々のレーダ1からの距離、レーダ1からの方向と中心方位とのなす角度、移動速度などを検知する。なお、検出範囲44は、レーダ1が物体を検知できる範囲を概念的に表したものである。
【0021】
図4は、レーダ1の設置例50を示す図である。設置例50においては、検知対象領域は道路52であり、レーダ1は、道路52の路肩に設置されている。
図4に示すように、設置例50では、検知対象領域の道路52が延びる方向と、レーダ1の中心方位とが一致していない。このような場合には、例えば構造物56−1〜56−n(まとめて構造物56ともいう)で表されるような、例えば標識や防護壁などのような路肩の構造物56が検出されることがある。しかしながら、これらの構造物56は、本実施の形態においてレーダ1の検出目的の物体とは異なる。よって、構造物56が検出されないようにすることが好ましい。
【0022】
図5は、
図3の設置例40と同様、道路43の幅のほぼ中央上方にレーダ1が備えられた場合における物体の検出例60を示す図である。検出例60においては、検出範囲45において、検出目的の物体を優先して検知するために、レーダ1の検知対象領域の形状及び位置を代表する注目線64が設定される。検出例60においては、レーダ1は、道路43上の物体を検知するため、検知対象領域は道路43となる。注目線64は、この道路43の位置及び形状を擬似的に表すものとして設定される。検出例60では、注目線64は、道路43の方向に沿い、道路43の幅方向の中央を通る一本の直線として設定される。
【0023】
このとき、レーダ1を原点として、レーダ1の中心方位(
図5の上下方向)にx軸が設定され、レーダ1を通り、x軸と直交する方向(図の左右方向)にy軸が設定される。また、x軸は、電波が出力される方向を正方向とし、y軸は、上方からx軸を見た場合の右側を正方向とする。なお、
図5の例では、レーダ1の設置の方向は、中心方位が、注目線64の方向と同一の方向である。このとき、有用と判断される道路43上を走行する車両などの物体を、道路43以外の場所にある例えば物体62などに優先して検出するためには、注目線64からの距離66が近い順に検出すればよい。すなわち、距離66の絶対値が小さい順にデータをソートして小さい順から出力すればよい。
【0024】
図6は、
図4の設置例50における物体の検出例70を示す図である。
図4の例においては、レーダ1は、道路52上の物体を検知するため、検知対象領域は道路52となる。注目線74は、この道路52の形状に基づいて擬似的に設定される。検出例70では、注目線74は、道路52の方向に沿い、道路52の幅方向の中央を通る一本の直線として設定される。
【0025】
このとき、検出例60と同様に、レーダ1を原点として、レーダ1の中心方位にx軸が設定され、x軸と直交する方向にy軸が設定される。検出例70においては、レーダ1が、道路52の路肩に設置されているため、注目線74は、x軸と角度θをなす。また、注目線74とレーダ1との間の距離は、距離Pである。なお、距離Pは、レーダ1の設置場所を上方から見て、注目線に対しレーダ1が左にある場合に正とする。また、物体72の位置は、レーダ1を原点とする極座標として表され、
図6の例では、角度α、距離dで表される。
【0026】
このとき、道路52上の物体を、他の場所の物体などに優先して検出するためには、注目線74からの距離fが近い順に検出すればよい。なお、
図5の検出例60は、検出例70においてθ=0、P=0の例であるので、以下、検出例70に基づき処理を説明する。
【0027】
次に、本実施の形態によるレーダ1において生成されるデータについて説明する。
図7は、物体情報75の一例を示す図である。物体情報75は、ペアリング処理部26で生成されるデータであり、検出された物体の位置及び状態を示す。物体情報75は、項目76として、検知された物体のレーダ1からの距離d、物体の速度v、x軸からの角度α、受信電力eを有し、計測値78として距離d1、速度v1、角度α1、受信電力e1が示されている。
図7においては、一組の物体情報75のみを示しているが、物体情報75は、例えば、検出範囲58から100組以上検出される。
【0028】
図8は、注目線情報80の一例を示す図である。注目線情報80は、注目線の位置及び形状を表す情報である。注目線情報80は、項目82として、レーダ1と注目線との距離P、レーダ1の中心方位と注目線74とのなす角度θを有し、設定値84として、距離P1、角度θ1が示されている。
【0029】
図9は、距離データ90の一例を示す図である。距離データ90は、物体と注目線との距離を示すデータである。距離データ90は、項目92として、距離d、角度α、注目線と物体との距離fを含んでいる。距離d、角度αに対する計算値94は、上述のようにペアリング処理部26により算出されるデータであり、距離fは、距離d、角度αを用いて下記の式1、式2を用いて認識処理部28により算出される。
図9に示すように、距離d=d1、d2、・・・、dm(mは1以上の整数)、角度α=α1、α2、・・・、αm、に対し距離f=f1、f2、・・・、fmが算出されている。
【0030】
例えば、物体情報75と注目線情報80とから注目線74と物体との距離fは、以下のように計算される。まず、レーダ1を原点とする極座標系で表された物体の位置(d、α)を、レーダ1を原点とする直交座標系(x、y)に下記の式1により座標変換する。
x=dcos(α)、y=dsin(α)・・・(式1)
式1を用いると、物体の距離fは、下記の式2で表される。
f=xsinθ+ycosθ+P・・・(式2)
【0031】
認識処理部28は、注目線と物体との距離fの絶対値の小さい方から距離データ90を並べ替え、距離fの小さい方から順に出力可能な数のデータを出力対象のデータとする。
【0032】
図10は、出力データ95の一例を示す図である。出力データ95は、レーダ1からの出力対象のデータの一例である。出力データ95は、項目96として、物体の距離d、速度v、角度α、受信電力eを含んでいる。出力値97としては、例えば、距離d=d3、速度v=v3、角度α=α3、受信電力e=e3等であり、ペアリング処理部26で算出された各物体の物体情報である。出力データ95は、距離データ90を距離の昇順に並べた中の、小さい方から例えばms個に対応する物体情報である。出力データ95は、外部I/F17により、レーダ1の外部に出力される。
【0033】
次に、
図11を参照しながら、レーダ1による物体検出処理について説明する。
図11は、レーダ1の動作を示すフローチャートである。
図11では、レーダ1が電波を出力し、反射波を受信して複数の物体情報75を生成する処理が終了した後の処理について示している。
【0034】
図11に示すように、レーダ1の認識処理部28の算出部32は、ペアリング処理部26で算出された全ての物体情報75について、予め記憶された注目線情報80に基づき、上記式1、式2を用いて注目線からの距離を計算する(S101)。この処理により、例えば距離データ90が生成される。認識処理部28の選択部34は、全ての物体情報75について算出された注目線からの距離fを、昇順にソートする(S102)。認識処理部28の選択部34は、距離fが小さいものから順に、予め決められた所定数ms個(msは、正の整数)の物体情報75を、検出結果として選択する。出力生成部36は、選択された物体情報75に基づき、出力データ95を生成する。送信処理部38は、検出結果として出力データ95を出力する(S103)。もし、物体情報75がms個より少ない場合には、有効データのみを送るか、足りない数のデータを空データで埋めるなどの処理をして出力する。
【0035】
以上詳細に説明したように、第1の実施の形態によるレーダ1においては、レーダ1の検知対象領域の位置及び形状を代表して擬似的に示す注目線を設定し、注目線とレーダ1の中心方位とのなす角度、及びレーダ1との距離を注目線情報80として記憶しておく。レーダ1は、検出した物体情報75と、注目線情報80とから、物体と注目線との距離を、式1、式2に基づき算出する。さらにレーダ1は、算出した距離を絶対値の小さいほうから並べ、小さいほうから所定数の距離にある物体の物体情報を検出情報として出力する。
【0036】
以上のように、第1の実施の形態によるレーダ1では、検知対象領域の形状と位置に応じた注目線を設定し、検出された物体のうちの注目線との距離が小さい順に物体情報を出力する。このため、処理能力を超える数(例えば、ms個を超える数)の物体が検出された際に、検知対象領域に存在する物体を優先して検出することができる。また、例えば、レーダ1の位置が、検知対象領域の近傍の検出目的の物体とは別の物体を検出する可能性がある位置である場合にも、精度よく検出目的の物体を検出することが可能となる。
【0037】
このように、レーダ1は、処理負荷を上げることなく、簡易な処理で、より優先度の高いデータを抽出し、出力することができる。このとき、検出範囲の画像などは必要とされない。また、レーダ1の出力範囲における検知対象領域に応じた注目線を設定しているので、物体の距離、速度、角度、受信電力などレーダ1の出力値そのものによる単純な昇順・降順でソートする方法では得ることのできない、環境に応じた所望のデータを得ることができる。注目線を用いるために、レーダ1を設置する環境に応じて、注目線の形状、位置を示す注目線情報を設定するが、注目線が直線の場合には、設定項目は注目線の角度と距離の2項目と少なく、容易に設定可能である。また、処理の最終段階で、データ処理能力、通信容量、処理周期等、システムリソースの許す範囲量の出力するデータを決定するに当たり、レーダ1は、優先度の高いデータから順に出力することが可能であり、検出目的の物体を優先して検出できる。
【0038】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態によるレーダによる物体検出処理について説明する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については、同一番号を付し、重複説明を省略する。第2の実施の形態は、注目線として複数本の直線が設定されている場合である。第2の実施の形態において用いられるレーダは、第1の実施の形態において用いられるレーダ1と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0039】
図12は、第2の実施の形態による注目線の設定例を示す図である。
図12に示すように、注目線設定例120では、互いに隣接した2本の道路122、道路124の夫々の中央部分に、2点鎖線で表される注目線126、注目線128が設定されている。
図12に示す環境では、道路122と道路124との間に構造物134、135などがある。このような環境では、例えば直線130のような道路122と道路124との間の一本の直線を注目線とすると、構造物134、135が検出されてしまい好ましくないことから、2本の注目線を設定する。
【0040】
注目線設定例120では、レーダ1の中心方位は直線130であるとすると、注目線126、注目線128ともに、直線130と平行であり、中心方位とのなす角度θ=0度である。また、注目線126は、レーダ1との距離P=Pkであり、注目線128は、距離P=Plである。この場合、注目線126の注目線情報は、角度θ=0、距離P=Pkとなり、注目線128の注目線情報は、角度θ=0、距離P=Plとなる。
【0041】
図13は、注目線が複数の場合の一般的な注目線情報の一例を示す図である。
図13に示すように、注目線情報140は、項目142として、レーダと注目線との距離P、レーダの中心方位と注目線との角度θをn本分有しており、設定値144として、例えば、距離P=P1、・・・、Pn、角度θ=θ1、・・・、θnが設定されている。
【0042】
図14は、第2実施の形態におけるレーダ1の動作を示すフローチャートである。
図14では、レーダ1が電波を出力し、反射波を受信して複数の物体の物体情報75を生成する処理を終了した後の処理について示している。
【0043】
図14に示すように、認識処理部28の算出部32は、取得された複数の物体に関する全ての物体情報75について、物体と注目線との距離算出処理を完了したか否かを判別する(S151)。完了していない場合には(S151:NO)、算出部32は、複数の注目線毎に、物体と注目線との距離を計算する(S152)。このとき、算出部32は、物体情報75と、夫々の注目線の角度θ、距離Pとに基づき、上記式1、式2を用いて距離fを計算する。
【0044】
第2の実施の形態では、注目線が複数であるため、1つの物体情報75に対し、S152で複数の距離が計算される場合がある。そこで、算出部32はは、S152で計算された距離から最短距離を抽出することにより、一つの物体情報75に対し、注目線との距離fを一つ抽出する(S153)。
【0045】
S151において、全ての物体情報75について処理が完了した場合には(S151:YES)、選択部34は、距離fを昇順にソートする(S154)。選択部34は、ソートされた距離fの小さい方からms個に対応する物体情報75を、出力する結果として選択する。出力生成部36は、選択された物体情報75に基づき、出力データ95を生成する。送信処理部38は、選択されたms個の物体情報75を含む出力データ95を検出結果として出力する。
【0046】
以上詳細に説明したように、第2の実施の形態によるレーダ1においては、レーダ1の検知対象領域の位置及び形状を擬似的に示す注目線を複数設定し、注目線とレーダ1の中心方位とのなす角度、及びレーダ1との距離を注目線情報140として記憶しておく。レーダ1は、検出した物体情報75と、注目線情報140とから、物体と複数の注目線とのそれぞれの距離を、式1、式2に基づき算出する。1つの物体について、複数の距離fが算出された場合には、最も小さい値を距離fとする。さらにレーダ1は、算出した距離fを絶対値の小さいほうから並べ、小さいほうから所定数の距離fにある物体の物体情報を検出情報として出力する。
【0047】
以上のように、第2の実施の形態によるレーダ1では、検知対象領域の形状と位置に応じた注目線を複数設定し、注目線との距離が小さい順に物体情報を出力する。このため、第1の実施の形態によるレーダ1による効果に加え、例えば、道路に中央分離帯のような、構造物の多い箇所がある場合に、構造物の多い箇所を避けて設定された注目線に基づき出力データの選択が行われるという効果がある。これにより、第2の実施の形態によるレーダ1では、検出目的の物体以外の物体を検出することが防止され、道路上の検出目的の物体をより効果的に検出することが可能になる。
【0048】
(第3の実施の形態)
以下、第3の実施の形態によるレーダによる物体検出処理について説明する。第3の実施の形態において、第1または第2の実施の形態と同様の構成については、同一番号を付し、重複説明を省略する。第3の実施の形態は、注目線として線分が設定されている場合である。なお、本実施の形態における線分とは、一方に端があり、他方が無限に伸びている半直線も含むとして説明する。第3の実施の形態において用いられるレーダは、第1及び第2の実施の形態において用いられるレーダ1と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0049】
図15は、第3の実施の形態による注目線設定例150を示す図である。
図15に示すように、注目線設定例150では、検出範囲159内のY字型の道路を検知対象領域としており、Y字の注目線が設定されている。すなわち、道路151、道路155、道路157に対応する注目線152、注目線156、注目線158が設定されている。これらの注目線152〜158は、例えば注目線152の延長線154が存在しないことで示されるように、少なくとも一端が、制限されている。ここで、境界線153は、注目線152の一端を通り、注目線152に垂直な直線である。注目線が線分の場合には、物体と注目線との距離は、境界線153の注目線152側の領域について、上記式1および式2を用いて算出される。それ以外の領域の各点からは、注目線に垂線の足を下ろすことはできないが、例えば注目線の近いほうの一端との距離を計算して、物体と注目線との距離とするようにしてもよい。なお、距離fが複数計算される場合には、第2の実施の形態と同様に、最も小さい値を距離fとする。
【0050】
図16は、第3の実施の形態による別の注目線設定例160を示す図である。
図16に示すように、注目線設定例160では、検出範囲165内のT字型の道路を検知対象領域としており、T字の注目線が設定されている。すなわち、道路162、道路164に対応する注目線166、注目線168が設定されている。注目線166は、延長線161が存在せず、少なくとも一端が、制限されている。注目線設定例160の場合も、注目線設定例150と同様に、注目線と物体との距離が計算される。
【0051】
図17は、第3の実施の形態による別の注目線設定例170を示す図である。
図17に示すように、注目線設定例170では、道路172は、S字型の道路を検知対象領域としている。このため、道路172には、複数本の注目線174、176、178、・・・、179が設定されている。この例では、両端の注目線174、179を除き、注目線176、注目線168、注目線166は、両端が制限されている。注目線設定例170の場合も、注目線設定例150、160と同様に、物体の位置から注目線に垂線を下ろせる場合に、注目線と物体との距離が計算される。
【0052】
図18は、注目線が線分の場合の注目線情報180の一例を示す図である。注目線情報180は、線分が1本の場合を例にしている。
図18に示すように、注目線情報180は、項目182として、レーダ1と注目線との距離P、レーダ1の中心方位と注目線74とのなす角度θ、注目線の開始距離dsp、開始角度αsp、注目線の終了距離dfp、終了角度αfp、を有している。注目線の開始距離dspとは、注目線の一端(始点ともいう)のレーダ1からの距離である。開始角度αspとは、レーダ1から注目線の一端への方向の、中心方位となす角度である。注目線の終了距離dfpとは、注目線の他端(終点ともいう)のレーダ1からの距離である。終了角度αfpとは、レーダ1から注目線の他端への方向の、中心方位となす角度である。
【0053】
注目線情報180は、設定値184として、例えば、距離P=P1、角度θ=θ1、開始距離dsp=dsp1、開始角度αsp=αsp1、注目線の終了距離dfp=dfp1、終了角度αfp=αfp1を有している。なお、注目線が半直線の場合には、終了距離dfp、終了角度αfpは設定されない。
【0054】
図19は、第3実施の形態におけるレーダ1の動作を示すフローチャートである。
図19では、レーダ1が電波を出力し、反射波を受信して複数の物体の物体情報75を生成する処理を終了した後の処理について示している。
【0055】
図19に示すように、認識処理部28の算出部32は、ペアリング処理部26から物体情報75の入力を行う(S191)。算出部32は、例えば物体情報75及び注目線情報180に基づき、物体が、注目線に垂直で始点を通る直線と、注目線に垂直で終点を通る直線との間にあるか否かを判別する(S192)。なお、
図15を参照しながら説明したように、注目線が半直線の場合には、注目線に垂直で始点を通る直線の注目線側にあるか否かを判別する。
【0056】
S192で、YESの場合には、
図11の処理により、算出部32は、式1、式2を用いて物体と注目線との間の距離を算出する。このとき、注目線が複数ある場合には、算出部32は、
図14の処理により、式1、式2を用いて物体と注目線との間の距離を算出する。S192でNOの場合には、その物体の位置からは注目線に垂線が下ろせないので、算出部32は、データを破棄する(S193)。なお、
図19の処理は、全ての物体について繰り返す。上述のように、物体から注目線上に垂線が下ろせない場合には、物体に近い方の端部までの距離を算出してもよい。
【0057】
図20は、注目線情報200を示す図である。注目線設定例200は、注目線として、複数の線分が設定されている場合の注目線情報の一例を示している。注目線情報200は、項目202として、レーダ1と注目線との距離P、レーダ1の中心方位と注目線74とのなす角度θ、注目線の開始距離dsp、開始角度αsp、注目線の終了距離dfp、終了角度αfp、を、例えばn本分有している。また、注目線情報200は、設定値204として、例えば、距離P=P1、・・・、Pn、角度θ=θ1、・・・、θn、開始距離dsp=dsp1、・・・、dspnが設定されている。また、開始角度αsp=αsp1、・・・、αspn、注目線の終了距離dfp=dsp1、・・・、dspn、終了角度αfp=αfp1、・・・、αfpnが夫々設定されている。なお、注目線が半直線の場合には、終了距離dfp、終了角度αfpは設定されない。
【0058】
注目線情報200の例のように、線分が複数の場合には、各線分の注目線情報200と、各物体の物体情報75とに基づき、物体と注目線との距離が計算され、最も近いものを距離fとしてソートが行われ、距離fの小さいほうから順に検知結果が出力される。
【0059】
以上説明したように、第3の実施の形態によるレーダ1では、注目線を、例えば道路に沿った半直線または線分として設定し、注目線との距離が小さい順に物体情報を出力する。このため、第1の実施の形態によるレーダ1による効果に加え、例えば、単純な直線以外の道路が検知対象領域の場合にも、その形状と位置に応じた注目線を設定することが可能となる。よって、道路上の検出目的の物体をより効果的に検出することが可能になる。
【0060】
(第4の実施の形態)
以下、第4の実施の形態によるレーダによる物体検出処理について説明する。第4の実施の形態において、第1から第3の実施の形態と同様の構成については、同一番号を付し、重複説明を省略する。第4の実施の形態は、注目線として曲線が設定されている場合である。なお、本実施の形態における注目線は、検知対象領域を円弧で近似する場合である。第4の実施の形態において用いられるレーダは、第1から第3の実施の形態において用いられるレーダ1と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0061】
図21は、第4の実施の形態による注目線設定例220を示す図である。
図21に示すように、第4の実施の形態においては、検知対象領域は道路222であり、道路222を円弧の注目線224で近似する。このとき、注目線224の中心は中心226であり、半径は半径228である。また、注目線224は、一端が制限されている。境界線225は、中心226と注目線224の一端を通る直線である。
【0062】
注目線設定例220の場合、境界線225の注目線224側にある物体の位置からは、注目線224に垂線が下ろせる。例えば、物体232と注目線224との距離fは、中心226と物体232との距離から半径228を減じた距離となる。この場合にも、境界線225の注目線224とは逆側にある物体からの距離を、注目線224の近いほうの端部との距離として算出してもよい。
【0063】
以上説明したように、第4の実施の形態によるレーダ1では、注目線を、例えば道路に沿った円弧で近似して設定し、円弧の半径と中心とに基づき、物体と注目線との距離を算出し、算出した距離が小さい順に物体情報を出力する。このため、第1の実施の形態によるレーダ1による効果に加え、例えば、曲線を描く道路が検知対象領域の場合にも、その形状と位置に応じた注目線を設定することが可能となる。よって、道路上の検出目的の物体をより効果的に検出することが可能になる。
【0064】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を採ることができる。例えば、第1から第4の実施の形態による注目線設定方法は、任意に組み合わせて用いることができる。注目線の少なくとも一端が存在する場合には、注目線に垂線を下ろせない領域にある物体について、例えば注目線の近い方の一端との距離を計算することもできる。また、上記第1から第4の実施の形態において設定された座標軸やその原点は上記に限られない。
【0065】
なお、送信アンテナ部3、RF部5は、電波出力部の一例であり、受信アンテナ部4、RF部5は、受信部の一例である。FFT処理部24、ペアリング処理部26は、物体情報生成部の一例であり、外部I/F17、送信処理部38は、出力部の一例である。中心方位は、基準方位の一例であり、レーダ1の中心は、基準点の一例である。距離fは、第1の距離の一例であり、距離dは、第2の距離の一例である。
【0066】
以下、
図22を参照しながら、上記第1から第4の実施の形態によるレーダ1のハードウエア構成の一例について説明する。
図22は、レーダ1のハードウエア構成の一例を示す図である。
【0067】
図22に示すように、レーダ1は、Transmitting(T)アンテナ301、Recieving(R)アンテナ303、Voltage Controlled Oscillator(VCO)305を有している。また、レーダ1は、三角波発生器307、同期信号(Sync)発生器309、ミキサ311、アンプ313、Analog/Digital(A/D)コンバータ315、1チップマイコン317を有している。
【0068】
Tアンテナ301は、物体を検知するための電波を送信するアンテナである。Tアンテナ301は、送信アンテナ部3と対応している。Rアンテナ303は、電波を受信するアンテナである。Rアンテナ303は、受信アンテナ部4と対応している。
【0069】
VCO305は、電圧制御発信回路であり、例えば、三角波発生器307で生成された三角波信号に基づき周波数変調させた送信信号を生成し、Tアンテナ301に出力する。三角波発生器307は、三角波形状の変調信号を生成し、VCO305に出力する回路である。Sync発生器309は、同期信号を発生する回路である。ミキサ311は、Tアンテナ301からの送信信号と、Rアンテナ303による受信信号とを混合する回路である。アンプ313は、ミキサ311の出力に基づき、物体からの反射波に基づく信号成分を増幅する回路である。VCO305、三角波発生器307、Sync発生器309、ミキサ311、アンプ313は、RF部5に対応している。
【0070】
A/Dコンバータ315は、Sync発生器309からの同期信号に基づきアンプ313から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する回路である。A/Dコンバータ315は、アナログ回路部7に対応している。
【0071】
1チップマイコン317は、レーダ1の制御を行うための演算処理回路であり、レーダ処理部9、外部I/F17に対応している。1チップマイコン317は、演算処理を行うことにより、検出された物体の位置、速度などの情報を外部へ出力する。なお、外部I/F17は、別のユニットとして設けられていてもよい。
【0072】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
電波を出力する電波出力部と、
前記電波の反射波を受信する受信部と、
前記電波と前記反射波とに基づき、複数の物体の予め定められた基準点に対する夫々の位置を示す複数の物体情報を生成する物体情報生成部と、
検出目的の物体に応じて予め設定された検知対象領域の形状及び位置を代表する注目線と前記複数の物体の夫々との第1の距離を、予め記憶された前記注目線の形状及び位置を示す注目線情報と前記物体情報とに基づき算出する算出部と、
複数の前記物体情報のうち、前記第1の距離が小さい方から所定数以下の物体情報を、出力する物体情報として選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記所定数以下の物体情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする物体検出装置。
(付記2)
前記注目線は、少なくとも一つの直線であり、
前記注目線情報は、前記注目線と前記電波が出力される方向に基づき定められた基準方位とのなす第1の角度と、前記注目線と前記基準点との第2の距離とを含み、
前記算出部は、前記物体情報、前記第1の角度、および前記第2の距離に基づき、前記第1の距離を複数の前記物体の夫々に応じて算出することを特徴とする付記1に記載の物体検出装置。
(付記3)
前記注目線は、少なくとも一つの線分であり、
前記注目線情報は、前記注目線と前記電波が出力される方向に基づき定められた基準方位とのなす第1の角度、前記注目線と前記基準点との第2の距離、および前記線分の両端点の位置を含み、
前記算出部は、前記物体情報、前記第1の角度、前記第2の距離、および前記両端点の位置に基づき、前記第1の距離を複数の前記物体の夫々に応じて算出することを特徴とする付記1に記載の物体検出装置。
(付記4)
前記注目線は、少なくとも一つの円弧であり、
前記注目線情報は、前記円弧の中心の位置と、前記円弧の半径とを含み、
前記算出部は、前記物体情報、前記円弧の中心の位置、および前記円弧の半径に基づき、前記第1の距離を複数の前記物体の夫々に応じて算出することを特徴とする付記1に記載の物体検出装置。
(付記5)
前記注目線は、道路の形状に基づき設定されることを特徴とする付記1から付記4のいずれかに記載の物体検出装置。
(付記6)
出力された電波と前記電波の反射波とに基づき、複数の物体の予め定められた基準点に対する夫々の位置を示す複数の物体情報を生成し、
検知目的の物体に応じて予め設定された検知対象領域の形状及び位置を代表する注目線と前記複数の物体の夫々との第1の距離を、予め記憶された前記注目線の形状および位置を示す注目線情報及び前記物体情報に基づき算出し、
複数の前記物体情報のうち、前記第1の距離が小さい方から前記所定数以下の物体情報を、出力する物体情報として選択し、
前記選択された前記所定数以下の物体情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(付記7)
前記注目線は、少なくとも一つの直線であり、
前記注目線情報は、前記注目線と前記電波が出力される方向に基づき定められた基準方位とのなす第1の角度と、前記注目線と前記基準点との第2の距離とを含み、
前記第1の距離は、前記物体情報、前記第1の角度、および前記第2の距離に基づき、複数の前記物体の夫々に応じて算出されることを特徴とする付記6に記載のプログラム。
(付記8)
前記注目線は、少なくとも一つの線分であり、
前記注目線情報は、前記注目線と前記電波が出力される方向に基づき定められた基準方位とのなす第1の角度、前記基準点と前記注目線との第2の距離、および前記線分の両端点の位置を含み、
前記第1の距離は、前記物体情報、前記第1の角度、前記第2の距離、および前記両端点の位置に基づき、複数の前記物体の夫々に応じて算出されることを特徴とする付記6に記載のプログラム。
(付記9)
前記注目線は、少なくとも一つの円弧であり、
前記注目線情報は、前記円弧の中心の位置と、前記円弧の半径とを含み、
前記第1の距離は、前記物体情報、前記円弧の中心の位置、および前記円弧の半径に基づき、複数の前記物体の夫々に応じて算出されることを特徴とする付記6に記載のプログラム。
(付記10)
前記注目線は、道路の形状に基づき設定されることを特徴とする付記6から付記9のいずれかに記載のプログラム。
(付記11)
前記電波を出力し、
前記電波の反射波を受信し、
前記物体情報を前記電波と前記反射波とに基づき生成する処理をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記6から付記10のいずれかに記載のプログラム。