特許第6048085号(P6048085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6048085空気入りタイヤの加硫方法および加硫システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048085
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの加硫方法および加硫システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20161212BHJP
   B29C 35/04 20060101ALI20161212BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20161212BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20161212BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/04
   B29K21:00
   B29K105:24
   B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-253575(P2012-253575)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-100839(P2014-100839A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】北井 宏尚
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324509(JP,A)
【文献】 特開平04−014413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29K 21/00
B29K 105/24
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインが接続された加硫ブラダを、モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入し、この加硫ブラダを、前記スチーム注入ラインを通じて注入したスチームと、前記窒素ガス注入ラインを通じて注入した窒素ガスとにより膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫方法において、
前記加硫ブラダに前記スチーム注入ラインを通じてスチームを注入し続けることにより前記加硫ブラダの内圧を所定の初期内圧にする第1ステップと、前記排出ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダからスチームの一部を排出させることにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期内圧よりも低い所定の初期範囲に低下させる第2ステップと、前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインを所定時間閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を前記所定の初期範囲に維持する第3ステップと、前記窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期範囲から前記所定の初期内圧よりも高い所定の内圧に上げる第4ステップと、前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインを閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の内圧から前記所定の初期内圧よりも高い所定の範囲に低下させる第5ステップと、前記窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の範囲から前記所定の内圧に上げる第6ステップとを有することを特徴とする空気入りタイヤの加硫方法。
【請求項2】
第6ステップの後に、第5ステップおよび第6ステップを少なくとも1回繰り返して行なう請求項1に記載の空気入りタイヤの加硫方法。
【請求項3】
モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入される加硫ブラダと、この加硫ブラダに接続されるスチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインとを備えて、前記スチーム注入ラインを通じて注入したスチームと、前記窒素ガス注入ラインを通じて注入した窒素ガスとにより前記加硫ブラダを膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫システムにおいて、
前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインにそれぞれのラインを開閉する開閉弁とこれら開閉弁の開閉を制御する制御装置とを設け、前記スチーム注入ラインに設けた開閉弁を開弁して前記加硫ブラダにこのスチーム注入ラインを通じてスチームを注入し続けて所定の初期内圧にする第1ステップを行ない、次いで、前記排出ラインに設けた開閉弁のみを開弁して排出ラインのみを開いた状態にしてこの排出ラインを通じて前記加硫ブラダからスチームの一部を排出させることにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期内圧よりも低い所定の初期範囲に低下させる第2ステップを行ない、次いで前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインのそれぞれに設けた開閉弁を閉弁してそれぞれのラインを所定時間閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を前記所定の初期範囲に維持する第3ステップを行ない、次いで前記窒素ガス注入ラインに設けた開閉弁のみを開弁して窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にしてこの窒素ガス注入ラインを通じて前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期範囲から前記所定の初期内圧よりも高い所定の内圧に上げる第4ステップを行ない、次いで前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインのそれぞれに設けた開閉弁を閉弁して、それぞれのラインを閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の内圧から前記所定の初期内圧よりも高い所定の範囲に低下させる第5ステップを行ない、次いで前記窒素ガス注入ラインに設けた開閉弁のみを開弁して窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にしてこの窒素ガス注入ラインを通じて前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の範囲から前記所定の内圧に上げる第6ステップを行なう構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの加硫システム。
【請求項4】
第6ステップの後に、第5ステップおよび第6ステップを少なくとも1回繰り返して行なう構成にした請求項3に記載の空気入りタイヤの加硫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの加硫方法および加硫システムに関し、さらに詳しくは、スチームと窒素ガスを加硫ブラダに注入してグリーンタイヤを加硫する際に、複雑な装置を用いることなく、加硫ブラダの上下温度差を効果的に低減するとともに、加硫時間の長期化を回避できる空気入りタイヤの加硫方法および加硫システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モールド内部に設置されたグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入し、この加硫ブラダにスチーム(加熱媒体)および窒素ガス(加圧媒体)を注入してグリーンタイヤを加硫する方法が知られている。このようにスチームと窒素ガスとを用いる加硫方法では、スチームに比して窒素ガスの比重が大きいため、膨張した加硫ブラダの中では、上方にスチームが圧縮された状態で存在し、その下方に窒素ガスが存在した状態になる。そのため、加硫中の加硫ブラダでは、上側の温度が下側に比して高くなって上下温度差が生じる。これに起因して加硫したタイヤでは、加硫した際の上下方向で加硫程度のばらつきが大きくなるという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、種々の加硫方法、加硫装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、加硫ブラダ内部に攪拌羽根を設置した加硫機が提案されている。この加硫機では、攪拌羽根を回転させることにより、加硫ブラダ内部のスチームと窒素ガスとが攪拌混合されて加硫ブラダの上下温度差を小さくすることができる。しかしながら、この提案では、加硫ブラダ内部に攪拌羽根を新設しなければならない。これに伴なって加硫設備が複雑になるという問題がある。加硫設備が複雑になると設備故障が発生し易くなるため、簡素な設備にすることが好ましい。特許文献2で提案されている加硫方法および装置でも追加的な設備が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29035号公報
【特許文献2】特開2012−96437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スチームと窒素ガスを加硫ブラダに注入してグリーンタイヤを加硫する際に、複雑な装置を用いることなく、加硫ブラダの上下温度差を効果的に低減するとともに、加硫時間の長期化を回避できる空気入りタイヤの加硫方法および加硫システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの加硫方法は、スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインが接続された加硫ブラダを、モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入し、この加硫ブラダを、前記スチーム注入ラインを通じて注入したスチームと、前記窒素ガス注入ラインを通じて注入した窒素ガスとにより膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫方法において、前記加硫ブラダに前記スチーム注入ラインを通じてスチームを注入し続けることにより前記加硫ブラダの内圧を所定の初期内圧にする第1ステップと、前記排出ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダからスチームの一部を排出させることにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期内圧よりも低い所定の初期範囲に低下させる第2ステップと、前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインを所定時間閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を前記所定の初期範囲に維持する第3ステップと、前記窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期範囲から前記所定の初期内圧よりも高い所定の内圧に上げる第4ステップと、前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインを閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の内圧から前記所定の初期内圧よりも高い所定の範囲に低下させる第5ステップと、前記窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にして前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の範囲から前記所定の内圧に上げる第6ステップとを有することを特徴とする空気入りタイヤの加硫方法。
【0007】
本発明の空気入りタイヤの加硫システムは、モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入される加硫ブラダと、この加硫ブラダに接続されるスチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインとを備えて、前記スチーム注入ラインを通じて注入したスチームと、前記窒素ガス注入ラインを通じて注入した窒素ガスとにより前記加硫ブラダを膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫システムにおいて、前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインにそれぞれのラインを開閉する開閉弁とこれら開閉弁の開閉を制御する制御装置とを設け、前記スチーム注入ラインに設けた開閉弁を開弁して前記加硫ブラダにこのスチーム注入ラインを通じてスチームを注入し続けて所定の初期内圧にする第1ステップを行ない、次いで、前記排出ラインに設けた開閉弁のみを開弁して排出ラインのみを開いた状態にしてこの排出ラインを通じて前記加硫ブラダからスチームの一部を排出させることにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期内圧よりも低い所定の初期範囲に低下させる第2ステップを行ない、次いで前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインのそれぞれに設けた開閉弁を閉弁してそれぞれのラインを所定時間閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を前記所定の初期範囲に維持する第3ステップを行ない、次いで前記窒素ガス注入ラインに設けた開閉弁のみを開弁して窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にしてこの窒素ガス注入ラインを通じて前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の初期範囲から前記所定の初期内圧よりも高い所定の内圧に上げる第4ステップを行ない、次いで前記スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインのそれぞれに設けた開閉弁を閉弁して、それぞれのラインを閉じた状態にして前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の内圧から前記所定の初期内圧よりも高い所定の範囲に低下させる第5ステップを行ない、次いで前記窒素ガス注入ラインに設けた開閉弁のみを開弁して窒素ガス注入ラインのみを開いた状態にしてこの窒素ガス注入ラインを通じて前記加硫ブラダに窒素ガスを注入することにより前記加硫ブラダの内圧を、前記所定の範囲から前記所定の内圧に上げる第6ステップを行なう構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの加硫システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインの開閉操作(開閉弁の弁操作)によって、加硫中の膨張している加硫ブラダの内圧をコントロールするだけなので、複雑な装置が不要になる。そして、膨張した加硫ブラダの内部からスチームの一部を排出させ、次いで窒素ガスを加硫ブラダに断続的に注入して、加硫中の加硫ブラダの内圧をコントロールすることで、加硫中の膨張している加硫ブラダ内部の上方の温度上昇を抑制して上下温度差を効果的に低減させることが可能になる。そして、加硫ブラダ内部の上方の温度上昇を主に抑制するので、加硫時間が長くなる弊害も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気入りタイヤの加硫システムの全体概要を例示する説明図である。
図2】本発明の空気入りタイヤの加硫方法の工程を例示するフロー図である。
図3】加硫ブラダの内圧Pと加硫経過時間Tとの関係を模式的に例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の空気入りタイヤの加硫方法および加硫システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示するように本発明のタイヤの加硫システム1は、ゴム製の筒状の加硫ブラダ2を有している。加硫ブラダ2の上側クランプ部3a、下側クランプ部3bはそれぞれ、中心機構4に取り付けられた円盤状の上側クランプ保持部5a、下側クランプ保持部5bにより保持される。中心機構4のセンターポストには、加硫ブラダ2の内部に加熱媒体となるスチームSおよび加圧媒体となる窒素ガスNを注入する注入口6と、加硫ブラダ2の内部のスチームSおよび窒素ガスNを加硫ブラダ2の外部に排出する排出口7とが設けられている。
【0012】
この加硫システム1は、さらに、注入口6とスチーム供給源11とを接続して加硫ブラダ2に連通可能に接続されるスチーム注入ライン6a、注入口6と窒素ガス供給源12とを接続して加硫ブラダ2に連通可能に接続される窒素ガス注入ライン6bおよび排出口7につながって加硫ブラダ2に連通可能に接続される排出ライン7aを有している。スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6b、排出ライン7aにはそれぞれ、開閉弁8a、8b、8cが設けられている。さらに、それぞれの開閉弁8a、8b、8cを開閉する弁操作を制御する制御装置10が備わっている。
【0013】
この加硫システム1を用いて空気入りタイヤを加硫するには、グリーンタイヤGをモールド9の内部に横置き状態で配置する。この実施形態のモールド9は、周方向に複数に分割された環状のセクタ9aと、上側に配置される環状のサイドプレート9b、下側に配置される環状のサイドプレート9cで構成されている。加硫ブラダ2はグリーンタイヤGの内側に挿入され、モールド9を閉型した状態にする。
【0014】
この状態で図2に例示するように順次工程を行なって、加硫中の加硫ブラダ2の内部の圧力Pを図3の実線Eで示すようにコントロールする。
【0015】
まず、開閉弁8aのみを開弁して、スチーム注入ライン6aを通じてスチーム供給源11から供給されたスチームSを加硫ブラダ2に注入する。注入するスチームSの温度は例えば150℃〜250℃程度である。
【0016】
注入したスチームSにより加硫ブラダ2を所定の初期内圧Psにして、グリーンタイヤGの内壁面に沿ってドーナツ状に膨張させる(第1ステップ)。第1ステップでは、所定の初期内圧Psの加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面を押圧してグリーンタイヤGをモールド9に押圧しつつ加熱する。供給したスチームSの一部は、加硫ブラダ2の内部で凝縮して下方に流れ落ちてドレーンになるので、所定の初期内圧Psを維持するために、スチームSを注入し続ける。この状態を例えば初期内圧Psが安定するまで維持する。
【0017】
次いで、開閉弁8aを閉弁し、開閉弁8cのみを開弁して排出ライン7aのみを開いた状態にして、排出ライン7aを通じて、膨張した加硫ブラダ2の内部からスチームSの一部を外部に排出させ、加硫ブラダ2の内圧Pを所定の初期範囲Asに低下させる(第2ステップ)。これにより、加硫ブラダ2内部のスチームSの温度が急激に低下して、加硫ブラダ2内部の上下温度差が小さくなる。
【0018】
次いで、開閉弁8cを閉弁し、スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6bおよび排出ライン7aのすべてのラインを閉じた状態にして加硫ブラダ2の内圧Pを所定の初期範囲Asに維持する(第3ステップ)。これにより、加硫ブラダ2内部の上下温度差が小さくなった状態を所定時間維持する。第3ステップでは、内圧Pが所定の初期範囲Asの加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面が押圧されてグリーンタイヤGはモールド9に押圧されつつ加熱される。
【0019】
次いで、開閉弁8bのみを開弁して、窒素ガス注入ライン6bのみを開いた状態にして窒素ガス注入ライン6bを通じて、窒素ガス供給源12から供給された窒素ガスNを加硫ブラダ2に注入する(図3の加硫経過時間Tnの時点)。注入した窒素ガスNにより加硫ブラダ2の内圧Pを所定の内圧Pnに上げる(第4ステップ)。注入する窒素ガスNの温度は常温である。
【0020】
ここで、第2および第3ステップを行なったことにより、加硫ブラダ2内部のスチームSの温度は低下している。そのため、加硫ブラダ2に窒素ガスNを注入しても、スチームSの一部を排出しない従来方法に比して、加硫ブラダ2内部の上方の温度上昇が小さくなる。第4ステップでは、所定の内圧Pnの加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面は押圧されてグリーンタイヤGはモールド9に押圧されつつ加熱される。所定の内圧Pnは所定の初期内圧Psよりも高圧に設定されている。
【0021】
次いで、開閉弁8bを閉弁して、膨張している加硫ブラダ2に対する窒素ガスNを停止し、スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6bおよび排出ライン7aのすべてのラインを閉じた状態にして加硫ブラダ2の内圧Pを所定の範囲Anに低下させる。(第5ステップ)。加硫ブラダ2内部に残留しているスチームSの一部が経時的に凝縮して下方に流れ落ちてドレーンになるため、膨張している加硫ブラダ2の内圧Pが低下しつつ、加硫ブラダ2内部の上方の温度上昇が抑制されて加硫ブラダ2内部の上下温度差が小さくなる。第5ステップでは、内圧Pが所定の範囲Anの加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面は押圧されてグリーンタイヤGはモールド9に押圧されつつ加熱される。
【0022】
次いで、開閉弁8bのみを開弁して窒素ガス注入ライン6bのみを開いた状態にして再度、窒素ガス注入ライン6bを通じて窒素ガス供給源12から供給された窒素ガスNを加硫ブラダ2に注入する。注入した窒素ガスNにより加硫ブラダ2の内圧Pを所定の内圧Pnにする(第6ステップ)。第6ステップでは、所定の内圧Pnの加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面は押圧されてグリーンタイヤGはモールド9に押圧されつつ加熱される。
【0023】
以後、予め設定された加硫時間Teが経過するまで、必要に応じてステップ5、ステップ6を順次繰り返し行なう。例えば、タイヤの仕様によってステップ5、ステップ6を1回〜10回程度行なう。
【0024】
予め設定された加硫時間Teが経過した後は、上側のサイドプレート9bを上方移動させ、それぞれのセクタ9aを拡径方向に移動させてモールド9を開型する。次いで、加硫されたタイヤを上方移動させて加硫ブラダ2から抜き出す。
【0025】
本発明では上記のとおり、スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6bおよび排出ライン7aの開閉操作(開閉弁8a、8b、8cの弁操作)により、加硫中の膨張している加硫ブラダ2の内圧Pをコントロールするだけである。それ故、複雑な装置が不要であり簡便な装置にすることができる。これにより、既存の加硫設備であっても大掛かりな改造をすることなく容易に本発明を適用することが可能である。
【0026】
スチームSと窒素ガスNを用いた従来の加硫方法では、図3の破線Cで例示するように、最初にスチームSを加硫ブラダ2に注入して所定の初期内圧Psにする。その後、スチームSの注入を停止して窒素ガスNを加硫ブラダ2に注入する(図3の加硫経過時間Tnの時点)。その後、窒素ガスNを加硫ブラダ2に注入し続けて、加硫時間Teが経過するまでの間、所定の内圧Pnに維持する。
【0027】
このような従来の加硫方法では、窒素ガスNを注入する時点Tnで加硫ブラダ2内部のスチームSは注入当初の高温状態にあるので、窒素ガスNを注入することにより、加硫ブラダ2内部の上方にはスチームSが圧縮された状態で存在することになる。その後、加硫ブラダ2の内圧Pは所定の内圧Pnに保たれるので、加硫ブラダ2の上方の相対的に高温な状態は是正されることがなく、上下温度差が大きくなる。
【0028】
一方、本発明では、スチームSにより膨張させた加硫ブラダ2の内部から、スチームSの一部を排出させて内圧Pを所定の初期範囲Asに低下させることで、加硫ブラダ2内部のスチームSの温度を急激に下げることができる。これにより、加硫ブラダ2内部の上方の温度上昇が迅速に抑制される。
【0029】
その後、窒素ガスNを加硫ブラダ2に断続的に注入して、加硫中の加硫ブラダ2の内圧Pをコントロールすることで、加硫中の膨張している加硫ブラダ2内部の上方の温度上昇が抑制される。それ故、加硫ブラダ2の上下温度差を効果的に低減させることが可能になり、ひいては、加硫した際の上下方向における加硫程度のばらつきを小さくすることができる。また、加硫ブラダ2内部の上方の温度上昇を主に抑制するので、加硫時間が延びるという弊害も回避できる。
【0030】
所定の初期内圧Ps、所定の初期範囲As、所定の内圧Pn、所定の範囲Anのそれぞれの値やその値を維持する時間は、加硫するグリーンタイヤGの仕様(サイズ、形状、ゴム種など)によって異なる。そのため、予め、加硫するグリーンタイヤGと同じ仕様のグリーンタイヤGを用いてテスト加硫を行ない、これらの最適値を把握して制御装置10に入力しておく。そして、制御装置10に入力されたこれらの最適値に基づいて、スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6bおよび排出ライン7aの開閉操作(開閉弁8a、8b、8cの弁操作)を行なう。
【0031】
本発明を用いて加硫するタイヤの種類は特に限定されない。サイド部が通常のタイヤに比して厚いランフラットタイヤを、スチームSと窒素ガスNを用いた従来方法で加硫すると、横置き状態で加硫する際に上側になるサイド部のゴムと下側になるサイド部のゴムとで、加硫程度のばらつきが大きくなり易い。そのため、本発明を用いて加硫することで、両サイド部のゴムの加硫程度のばらつきが小さくなり、顕著な効果を得ることができる。
【実施例】
【0032】
ランフラット仕様の空気入りタイヤ(235/50RF18)のグリーンタイヤのサンプルを横置き状態で、スチームおよび窒素ガスを用いて加硫する際に、スチーム注入ライン、窒素ガス注入ラインおよび排出ラインの開閉操作(開閉弁の弁操作)によって、表1に示すように加硫ブラダの内圧Pのみをコントロールして加硫を行なった(従来例1〜3、実施例1〜8の合計11種類)。実施例1〜8は図3の実線E、比較例1〜3は図3の破線Cで例示した内圧Pのコントロールを行なった。
【0033】
それぞれのサンプルについて下記項目の測定を行なってその結果を表1に示す。注入するスチームの温度は200℃程度、窒素ガスの温度は常温にして共通条件にした。
【0034】
表1の総時間については、比較例1の第1〜第3ステップの総時間を基準の100として指数で示した。数値が大きい程、総時間が長いことを示す。尚、比較例1〜3では、本発明の第2および第3ステップを実施しないので、実施例1のこの総時間とは、加硫ブラダにスチームを注入し始めてから窒素ガスを注入し始めるまでの時間となる。
【0035】
表1の初期内圧Ps、初期範囲Asの下限値、所定の圧力Pn、所定の範囲Anの下限値については、比較例1の初期内圧Psを基準の100として指数で示した。数値が大きい程、圧力が大きいことを示す。
【0036】
表1のスチーム注入開始からスチーム一部排出開始までの時間については、それぞれの実施例における第1〜第3ステップの総時間に対して、どの程度の割合(%)が経過した時点でスチームの一部を加硫ブラダから排出し始めたかを示した。
【0037】
表1の初期範囲Asの維持時間については、実施例1の加硫ブラダの内圧を初期範囲Asに維持した時間を基準の100として指数で示した。数値が大きい程、維持時間が長いことを示す。
【0038】
[Gタイヤ上下温度差]
グリーンタイヤの上側および下側サイド部のゴムについて、加硫中の温度差の最大値および加硫終了時の温度差を測定した。比較例1における温度差の最大値、加硫終了時の温度差をそれぞれ基準の100として指数で評価した。数値が小さい程、温度差が小さいことを示す。
【0039】
[加硫時間]
比較例1における加硫時間を基準の100として指数で評価した。数値が小さい程、加硫時間が短いことを示す。
【0040】
[左右サイドゴムの60℃におけるtanδの差]
加硫したタイヤの左右のサイド部のゴムの60℃におけるtanδの差を測定した。比較例1におけるtanδの差を基準の100として指数で評価した。数値が小さい程、差が小さいことを示す。
【0041】
[ランフラット耐久性]
加硫したタイヤを同条件下でパンク状態でドラム走行させて、所定の走行限界基準に達するまでの走行時間を測定した。比較例1における走行時間を基準の100として指数で評価した。数値が大きい程、耐久性に優れていることを示す。
【0042】
[転がり抵抗]
加硫したタイヤの転がり抵抗を測定し、比較例1における測定値を基準の100として指数で評価した。数値が大きい程、転がり抵抗が小さいことを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、実施例1〜8は、比較例1〜3に比して、グリーンタイヤの上側および下側サイド部のゴムの温度差が格段に小さく、加硫時間は比較例1と同等であり、比較例2、3に比して短いことが分かる。また、実施例1〜8は、比較例1〜3に比して、加硫したタイヤの左右のサイド部のゴムの60℃におけるtanδの差も格段に小さいことが分かる。さらに、ランフラット耐久性および転がり抵抗については、実施例1〜8は比較例1に比して優れていて、比較例2および3と同等の性能を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
1 加硫システム
2 加硫ブラダ
3a 上側クランプ部
3b 下側クランプ部
4 中心機構
5a 上側クランプ保持部
5b 下側クランプ保持部
6 注入口
6a スチーム注入ライン
6b 窒素ガス注入ライン
7 排出口
7a 排出ライン
8a、8b、8c 開閉弁
9(9a、9b、9c) モールド
10 制御装置
11 スチーム供給源
12 窒素ガス供給源
G グリーンタイヤ
図1
図2
図3