【実施例】
【0009】
図1は、本発明の第1の実施例に係る単ビット構成の面発光型半導体レーザ素子が形成された半導体ウエハーの一部を上方から見た斜視図であり、
図1(A)は、樹脂が被覆される前の状態、
図1(B)は、樹脂が被覆された状態を示している。また、
図2は、
図1(B)のX−X線断面図およびY−Y線断面図である。
【0010】
半導体ウエハー100には、複数の矩形状の素子形成領域10が行列方向にアレイ状に形成される。
図1(A)、(B)には、4つの素子形成領域10が例示されている。1つの素子形成領域10内には、円筒状のメサ構造の発光部を有するVCSEL20と、VCSEL20に電力を供給する電極パッド50とが形成される。電極パッド50は、VCSEL20から離間されたパッド形成領域上に形成され、電極パッド50は、引き出し配線52を介してVCSELのメサ頂部の上部電極28(
図2を参照)に接続される。素子形成領域10の表面の大部分は、金属層(電極パッド50、引き出し配線52、メサの上部電極など)を除き、SiN等の絶縁保護膜によって覆われている。この絶縁保護膜の表面には、VCSEL20のメサを取り囲むようにほぼ環状の疎水化された領域(以下、疎水化領域という)30が形成され、疎水化領域30の外側には、一定の深さの環状の溝40が形成されている。
【0011】
図1に示す素子形成領域10は、1つのVCSEL20を包含するため、単ビット構造である。このような素子形成領域10は、スクライブラインとして格子状に延びる隔離領域60によって相互に分離されている。半導体ウエハー100は、隔離領域60に沿うようにダイシング(切断)され、VCSEL素子の個別化が行われる。
【0012】
本実施例では、ウエハー100の個片化(シンギュレーション)を行う前に、
図1(B)に示されるように、素子形成領域10のVCSEL20のメサを被覆する樹脂70がポッティングされる。樹脂70は、VCSEL20の発振波長を透過可能な光透過性の材料から構成され、例えば、LED用シリコーン部材、シリコーン、レジンなどを用いることができる。ダイシングする前にVCSEL20を樹脂70で被覆することにより、ダイシング工程またはそれ以降の工程においてVCSEL20の表面が傷つけられたり、ゴミや粉じんが付着したりするのを防止する。また、好ましい態様では、樹脂70は、VCSEL20を外部から保護するのみならず、VCSEL20から発せられる光を集光する機能を有し、光ファイバ等との結合効率を高める。
【0013】
次に、半導体ウエハー上に形成されるVCSELの具体的な構成を
図2を参照して説明する。典型的なVCSEL20は、n型のGaAsウエハー基板21上に、λ/4n
r(但し、λは発振波長、n
rは媒質の屈折率)の厚さのAl組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(Distributed Bragg Reflector:以下、DBRという)22、下部DBR22上に形成された、上部および下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域23、活性領域23上に形成されたλ/4n
rの厚さのAl組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部DBR25を含んで構成される。好ましくは上部DBR25の最上層には、p型のGaAsコンタクト層が形成され、上部DBR25の内部には、p型のAlAsを選択酸化した電流狭窄層24が形成される。
【0014】
上部DBR25から下部DBR22の一部に至る半導体層をエッチングすることにより、基板22上に円筒状のメサ(柱状構造)が形成され、電流狭窄層24の一部は、メサ側面から選択的に酸化される。
【0015】
メサの頂部には、Au等の金属からなる環状のp側電極26が形成され、p側電極26は、上部DBR25に電気的に接続される。メサの頂部、側面、底部を覆うようにSiN等の層間絶縁膜27が形成される。メサの頂部において、層間絶縁膜27にはp側電極26を露出するためのコンタクトホールが形成される。図の例では、層間絶縁膜27がp側電極26の出射窓を覆っているが、他の保護膜により覆うようにしてもよい。メサの頂部には、環状の上部電極28が形成され、上部電極28は、コンタクトホールを介してp側電極26に接続される。また、上部電極28は、
図1に示すように引き出し配線52を介して電極パッド50に接続される。基板21の裏面には、n側電極29が形成される。こうして、p側電極26の中央の出射窓から例えば850n帯のレーザ光が出射される。
【0016】
メサの底部を覆う層間絶縁膜27の表面には、引き出し配線52を除き、メサを取り囲むような環状の疎水化領域30が形成される。好ましくは、疎水化領域30は、層間絶縁膜27をフッ素処理することで形成される。例えば、疎水化される領域が露出されるようにマスクパターンで覆い、露出された層間絶縁膜27をバッファードフッ酸溶液(BHF)に晒すか、あるいはフッ素系ガスによりプラズマ処理する。その際、層間絶縁膜27に一部のフッ素を残留させることでより疎水性を高めることができる。このような疎水化領域30は、一定の幅W(
図1(A)を参照)で、好ましくはVCSEL20のメサと同心円状に、かつ樹脂70をポッティングする領域の輪郭または外周に沿うように形成される。但し、疎水化領域30の形状は、必ずしも環状に限らず他の形状であってもよい。また、疎水化領域30の幅Wは、素子形成領域10の大きさやポッティングする樹脂の量、粘度等に応じて選択される。
【0017】
また、疎水化領域30の外周には、環状の溝40が形成される。溝40は、例えば、メサ底面から、下部DBR22をエッチングすることにより一定の深さまたは基板21に到達する深さに形成される。溝40は、層間絶縁膜27の形成前に形成され、従って、溝40は、層間絶縁膜27により被覆されている。VCSEL20を被覆するために樹脂70がポッティングされたとき、樹脂70は疎水化領域30によってその進行が抑制される。しかし、疎水化領域30の幅Wが制限されていたり、ポッティングされる樹脂の量が多かったり、あるいはその粘度が小さいと、樹脂70は疎水化領域30を超えることがある。さらに、引き出し配線52の表面は疎水化されないため、樹脂70の一部は、引き出し配線52上を進行することがある。このようなとき、溝40は、疎水化領域30を超えた樹脂70を収容することで、樹脂70が素子形成領域10を超えないようにし、樹脂70の球状が保たれるようにする。その後、樹脂70がポッティングされたウエハー100は、隔離領域60に沿ってダイシングされ、単ビットのVCSELを含むチップが生成される。
【0018】
図5(A)は、疎水化されていない絶縁膜上に樹脂をポッティングしたときの樹脂の表面形状の一例を示し、
図5(B)は、本実施例のように疎水化領域が形成された絶縁膜上に樹脂がポッティングされたときの樹脂の表面形状の一例を示す。下地が疎水化されていないと、言い換えれば親水性であると、樹脂72は接触角が小さいななだらかな表面形状となる。これに対し、本実施例のように樹脂70がポッティングされる領域の輪郭または外周に沿って疎水化領域30が形成されていると、樹脂が接触する周縁部分が疎水性になっているので、
図5(B)に示すように、樹脂70と層間絶縁膜27との接触角が大きくなり、樹脂材は表面張力の影響もあり、球状に盛り上がる形で形成されることとなる。樹脂70の接触角は、80度以上が望ましい。仮に、大きな接触角を得るために大量の樹脂をポッティングし、その結果、樹脂70の一部が疎水化領域30を超えたとしても、樹脂70は、溝40によって吸収されるので、樹脂70が無制限に横方向に広がることはなく、大きな接触角を保つことが可能である。なお、接触角θは、
図5(C)に示すように、樹脂70の高さhと半径rから測定された角度θ1を2倍することにより算出される。
【0019】
このように、本実施例では、ウエハー上に形成された各素子形成領域内のVCSEL素子20をダイシングなどを使って個片化する前に、VCSEL20のメサを樹脂70で覆うことで、VCSEL20を外部から保護することができる。さらに樹脂70を接触角が大きな球状に形成することで、集光性を高めることができる。また、VCSELの上方から樹脂70をポッティングしたとき、溝40は、樹脂70が素子形成領域10を超えて隔離領域60へ浸み出すことを抑えることができる。さらに、メサを中心に疎水化領域30および溝40を同心円状に形成することで、VCSELの光学中心を樹脂70の円中心に一致させることができる。つまり、発光部が中心となるように溝40を形成しているので、樹脂70の表面張力によって、ポッティング工程の樹脂70の封入場所が多少ずれても、常に樹脂70の円形部分の盛り上がった中心が光源の中心にほぼ一致される。なお、溝40は、円全周に形成しなくても扇状に何分割かされて形成されるようにしてもよい。
【0020】
本実施例によれば、VCSELの発光部を樹脂70で覆うことにより、表面を保護することができ、ダイシング工程やその後の工程において発光部へのダメージを除去することができるばかりか、球状の樹脂レンズの構成をたやすく作れる利点がある。また、ダイボンディング用のコレットが接触しても、発光面をキズつけるおそれがないので、面で吸着するコレットが使用可能となり、角すいコレットによる側面へのダメージがなくなり、搭載の精度も向上する利点がある。
【0021】
次に、本実施例の変形例について説明する。上記した実施例では、
図6(A)に示すように、疎水化領域30(図中、xxで示す)は、層間絶縁膜27の表面に幅Wで形成され、それに隣接して溝40が形成されたが、疎水化領域30の幅Wを十分に確保することができないとき、疎水化領域30が延長されるように、溝40内の層間絶縁膜27に疎水化領域30Aを形成するようにしてもよい。これにより、全体の疎水化領域30、30Aの幅W1を大きくすることができ、溝40から外周へ樹脂がはみ出すことを効果的に抑制することができる。さらに必要であれば、疎水化領域30Aがさらに延長されるように、溝40の外側の層間絶縁膜27の表面を疎水化してもよい。
【0022】
図3は、他の単ビット構成のVCSELが形成されたウエハーの一部を示している。この例では、メサ状のVCSEL20と、電極パッド50が形成されるパッド形成領域とが環状のトレンチ80によって分離されている。その他の構成は、
図1、
図2に示すVCSELと同じである。
【0023】
図4は、
図3(B)のX−X線断面図、Y−Y線断面図である。これらの図に示すように、層間絶縁膜27は、メサの頂部、側面を覆い、かつトレンチ80、溝40、パッド形成領域の全面を被覆している。そして、トレンチ80と溝40との間の層間絶縁膜27の表面の全体もしくはその一部に疎水化領域30が形成されている。本例では、ポッティングされた樹脂70は、トレンチ80内の溝を充填し、疎水化領域30に沿って切り立つような球状となり得る。
【0024】
次に、第1の実施例の変形例として、マルチビット構成のVCSELが形成された半導体ウエハーを
図7ないし
図11に例示する。
図7(A)は、ウエハー上の1つの素子形成領域10内に、複数のVCSEL20と、複数のVCSEL20にそれぞれ接続された電極パッド50とが形成される。図の例では、1つの素子形成領域10内に、8つのVCSEL20がほぼ45度の等間隔で円周方向に配置されている。1つ1つのVCSELは、
図1、
図2に示した単ビット構成のVCSELと同様の構成である。これらのVCSEL20を結ぶ円と同心円となるような一定の幅の疎水化領域30が形成され、その外側にさらに同心円状の溝40が形成される。
【0025】
図7(A)に示す状態から、
図7(B)、(C)に示すように、素子形成領域10内に樹脂70がポッティングされる。樹脂70は、素子形成領域10内の複数のVCSEL20のメサまたは発光部を一括で被覆する。この場合にも、樹脂70の周縁に沿うように疎水化領域30が形成されているため、樹脂70は、接触角が大きい球状に形成される。
【0026】
図8は、
図3、
図4に示した単ビット構成のVCSELをマルチビット化したものである。素子形成領域10には、パッド形成領域からトレンチ80を介して隔離された複数のVCSEL20が形成されている。ここでも、
図7に示したときと同様に、各VCSEL20を取り囲むように疎水化領域30が形成され、その外側に溝40が形成される。
図8(A)に示す状態から、
図8(B)、(C)に示すように、それぞれの素子形成領域10に樹脂70がポッティングされ、複数のVCSEL20のメサまたは発光部が樹脂70によって一括で被覆される。
【0027】
図9(A)は、
図8に示すマルチビット構成のVCSELが形成されたウエハーにおいて、溝40が扇状に分割してまたは不連続に形成された例を示している。同図に示すように、溝40Aは、電極パッド50の引き出し配線52の部分で分断されている。これにより、引き出し配線52は、溝40Aの段差を通ることなく平坦に引き延ばされるため、引き出し配線52の断線を防止することができる。
【0028】
図9(A)に示す構成では、引き出し配線52の部分が疎水化されておらず、しかも引き出し配線52が溝40Aを通過しない。このため樹脂70は、引き出し配線52から外部へ漏れやすくなる。そこで、
図9(B)に示すように、少なくとも引き出し配線52を覆うようにさらなる絶縁膜を積層し、当該絶縁膜の表面に環状の疎水化領域30を形成するようにしてもよい。
図9(B)のようなVCSELの周囲を連続的に取り囲む疎水化領域30であれば、樹脂70の接触角をより大きなものにすることができる。
【0029】
図10は、さらなる他のマルチビット構成のVCSELが形成されたウエハーの一部を示している。1つの素子形成領域10内には、8×4に配列されたVCSEL20と、それに対応する電極パッド50とが形成される。1つ1つのVCSEL20は、
図1、
図2に示す単ビット構成のVCSELと同様である。8×4のVCSELの全体を取り囲むように楕円状の疎水化領域30が形成され、さらにその外側に楕円状の溝40が形成されている。
図10(B)は、
図10(A)のX線方向の模式的な断面を示している。
図10(A)の状態から、
図10(C)、(D)に示すように、8×4のVCSELの発光部がポッティングされた樹脂70により一括して被覆される。
【0030】
図11は、
図7に示すマルチビット構成のVCSELの他の例を示している。素子形成領域10には、
図1、
図2に示す構成と同様のVCSEL20が複数形成されている。
図7に示す例では、複数のVCSELの全体を取り囲むように疎水化領域30と溝40が形成されたが、
図11では、個々のVCSELを取り囲むように複数の疎水化領域30(図中、ハッチングで示す)とその外側に溝40が形成されている。そして、
図11(A)に示す状態から
図11(B)に示すように、素子形成領域10内の個々のVCSELに対して樹脂70がポッティングされる。従って、
図11(B)では、8つのVCSELに対応するように8つの樹脂70が形成される。疎水化領域30および溝40をVCSEL20のメサとほぼ同心円状にすることで、樹脂70の球面の中心は、VCSEL20の光軸にほぼ近似され、個々のVCSELに対し最適なレンズ機能を与えることができる。
図8ないし
図10に示すマルチビット構造のVCSELについても、上記と同様に、個々のVCSELを樹脂で被覆するようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。上記した第1の実施例では、樹脂をポッティングする領域に、疎水化領域30と溝40の組を形成したが、第2の実施例では、溝40を形成する。例えば、
図1、2に示すような単ビット構成、すなわち素子形成領域10に1つのVCSELが形成されたウエハーにおいて、層間絶縁膜27の表面に疎水化領域30を形成せず、溝40を形成する。その後、素子形成領域10のVCSEL20の発光部を覆うように樹脂70がポッティングされる。この様子を
図12に示す。同図に示すように、VCSELのメサの周囲に溝40が形成され、メサを覆うようにポッティングされた樹脂70の周縁は、溝40内に入り込み、溝40は、樹脂70を停止させるためのダムとして機能する。その結果、接触角が大きな球形状の樹脂70を形成することができる。図に示す例では、溝40は基板21に到達し、かつ溝40の幅を大きくすることで、樹脂を収容するための容積を比較的大きくしている。なお、第2の実施例において、溝40の外周に、第1の実施例のときのような疎水化領域を形成し、溝40から樹脂がはみ出さないようにしてもよい。第2の実施例は、
図3、
図4に示す他の単ビット構成のVCSELや、
図7ないし
図10に示すマルチビット構成のVCSELについても同様に適用することができる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。上記した第1の実施例では、樹脂をポッティングする領域に、疎水化領域30と溝40の組を形成したが、第3の実施例では、疎水化領域30を形成する。例えば、
図1、2に示すような単ビット構成のウエハーにおいて、層間絶縁膜27の表面に疎水化領域30を形成し、溝40を形成しないようにする。その後、素子形成領域10内のVCSEL20の発光部を覆うように樹脂70がポッティングされる。この様子を
図13に示す。同図に示すように、樹脂70の周縁には、疎水化領域30が形成されているため、樹脂70は、第1の実施例のときと同様に疎水化領域30で停止され、接触角が大きな球形状の樹脂70を形成することができる。なお、疎水化領域30の幅は、樹脂がはみ出さないようにするために適宜選択される。第3の実施例は、
図3、
図4に示す他の単ビット構成のVCSELや、
図7ないし
図10に示すマルチビット構成のVCSELについても同様に適用することができる。
【0033】
次に、本発明の第1の実施例に係るウエハーの製造方法について
図14および
図15を参照して説明する。なお、
図14、
図15に示す断面は、
図2のY−Y線断面に対応する。
【0034】
図14(A)は、ウエハーまたは基板21上に、酸化狭窄構造のVCSELが形成された状態を示している。ここには、1つのVCSELが例示されるが、ウエハー上には多数の素子形成領域内に単ビット構成またはマルチビット構成のVCSELが形成される。図に示すように、下部DBR22上には、円筒状のメサMが形成され、メサM内には、活性領域23、電流狭窄層24、上部DBR25、環状のp側電極26、p側電極の中央の出射窓を覆う円形状の保護膜110が形成されている。保護膜110は、
図2、
図4に示す例と異なり、層間絶縁膜27を形成する前に形成される。保護膜110は、発振波長を透過可能な材料であり、例えばSiN等である。
【0035】
次に、
図14(B)に示すように、ウエハー上にマスクパターン120が形成される。マスクパターン120には、メサ底部の下部DBR22に溝40を形成するための環状の開口122が形成される。マスクパターン120を用いてウエハー全面をRIE等の異方性エッチングを行い、所定の深さの溝40を形成する。マスクパターン120を除去した状態を
図14(C)に示す。
【0036】
次に、ウエハー全面にSiNまたはSiON等の層間絶縁膜27がCVD等により形成され、層間絶縁膜27には、
図15(D)に示すように、p側電極26を露出するための円形のコンタクトホール124が形成される。次に、
図15(E)に示すように、メサMの頂部には、p側電極26に接続された上部電極28が形成される。上部電極28と同時に、引き出し配線52および電極パッド50のパターニングも行われる。また、基板21の裏面にn側電極29が形成される。
【0037】
次に、
図15(F)に示すように、ウエハー全面にマスクパターン130が形成される。マスクパターン130には、溝40に隣接して疎水化領域30を形成するための環状の開口132が形成される。また、開口132の幅Wは、メサMと溝40との間の間隔に応じて適宜選択される。次に、マスクパターン130を用いて、開口132によって露出されている層間絶縁膜27の表面がフッ素処理される。フッ素処理は、上記したように、希釈化されたフッ素溶液(BHF)によるウエット処理、あるいはフッ素系ガスのプラズマによるドライ処理のいずれであってもよい。フッ素処理が終了したら、マスクパターン130を除去し、素子形成領域内のVCSELを覆うように、一定温度のシリコーン等の樹脂がポッティングされる。これにより、
図1、
図2に示すような素子形成領域内のVCSELの発光部が樹脂被覆されたウエハーが作成される。その後、ウエハーは、スクライブラインに沿ってダイシングされ、個々のチップが得られる。切断されたチップは、コレット等のピックアップツールにより、次の実装工程へ搬送され、パッケージ化され、面発光型半導体レーザ装置となる。
【0038】
次に、本実施例のウエハーから切り出されたVCSELチップを用いた光伝送装置について
図16を参照して説明する。ここでは、好ましい例として、マルチビット構成のVCSELに対してマルチコアファイバを用いる。
図16(A)は、マルチコアファイバ200の断面図である。マルチコアファイバ200は、1本のファイバの中に複数のコア202を含んで構成される。このようなマルチコアファイバ200の使用は、空間多重により大容量のデータ伝送を可能にする。VCSELチップ上には、マルチコアファイバ200の各コア202に対応するように複数のVCSELが配置され、VCSELチップの表面から発せられた複数のレーザ光は、それぞれ対応するコア202に入射され、伝送される。
【0039】
図16(B)に光伝送装置の一例を示す。光伝送装置300は、金属ステム302上に導電性接着剤を介してチップ310を搭載する。金属ステム302には、絶縁処理された貫通孔を介して複数の外部リード304が取付けられ、外部リード304は、チップ310のVCSELに電気的に接続される。ステム302上に中空のキャップ320が固定され、キャップ320の中央の開口内に光学部材としてのボールレンズ330が固定される。ボールレンズ330の光軸は、VCSELチップ310上に形成された複数のVCSELの中心とほぼ一致する。さらに、ステム302上には円筒状の筐体340が固定され、筐体340の端面に一体に形成されたスリーブ342内にフェルール350が保持され、フェルール350によってマルチコアファイバ200が保持される。マルチコアファイバ200は、ボールレンズ330に正確に位置合わせされ、これにより、チップ310からの複数のレーザ光はそれぞれのコア202に集光される。上記したように、チップ310の表面には、レンズ機能の役割を果たす樹脂70が形成されるため、各VCSELから発せられた光は、樹脂70によって集光され、その集光された光がボールレンズ330によりマルチコアファイバ200へ集光される。このため、VCSELチップ310とマルチコアファイバの光結合効率を高めることができる。
【0040】
図16(C)は、他の光伝送装置300Aの構成例を示している。本例では、ボールレンズ330を用いることなく、VCSELチップ310とマルチコアファイバ200とを直接的に光学結合させている。上記したように、各VCSELを被覆する樹脂の接触角を大きくし、樹脂を球面状にすることで、樹脂はより精度の高いレンズとして機能することができる。この場合には、ボールレンズを用いることなく、チップ310とマルチコアファイバ200との間隔を調整することで、チップ310からの複数のレーザ光を対応するコア202に入射させることが可能になる。本例によれば、部品点数が削減されるので、低コストであり、かつ小型化が可能な光伝送装置300Aを得ることができる。
【0041】
図17は、本実施例のウエハーから切り出されたVCSELチップを光情報処理装置の光源に適用した例を示す図である。光情報処理装置400は、VCSELチップを搭載した面発光型半導体レーザ装置410からのレーザ光を入射するコリメータレンズ420、一定の速度で回転し、コリメータレンズ420からの光線束を一定の広がり角で反射するポリゴンミラー430、ポリゴンミラー430からのレーザ光を入射し反射ミラー450を照射するfθレンズ440、ライン状の反射ミラー450、反射ミラー450からの反射光に基づき潜像を形成する感光体ドラム(記録媒体)460を備えている。このように、VCSELからのレーザ光を感光体ドラム上に集光する光学系と、集光されたレーザ光を光体ドラム上で走査する機構とを備えた複写機やプリンタなど、光情報処理装置の光源として利用することができる。なお、VCSELチップは、単ビット構成であってもよいし、マルチビット構成であってもよい。また、面発光型半導体レーザ装置410は、例えば、
図16(B)の構成から筐体340およびマルチコアファイバ200を取り外したものであることができる。
【0042】
上記実施例では、GaAs、AlAs、AlGaAsの半導体材料を用いたGaAs系のVCSELを例示したが、本発明は、他のIII−V族の化合物半導体を用いたVCSELにも適用することができる。また、上記実施例では、酸化狭窄構造のVCSELを例示したが、電流狭窄層は、酸化狭窄に限らず、プロトンイオン注入などによって形成されるものであってもよい。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。