(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する推定用パケット送信手段を備える送信装置と、前記受信装置と、を備え、
前記受信装置は、
前記推定用パケット送信手段から送信された前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記受信時刻に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備える情報処理システム。
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備える情報処理装置。
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信し、
受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得し、
受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出し、
検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する、
情報処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記した非特許文献1のネットワーク帯域推定システムでは、まず送信装置が、パケットサイズが同一である複数の推定用パケットを、送信間隔を指数関数的に減少させながら送信する。続いて、受信装置は、送信装置が送信した推定用パケットを受信し、推定用パケットの受信間隔を計測する。
【0007】
送信装置が、送信間隔を指数関数的に減少させると、推定用パケットの送信レートは指数関数的に増加する。そして、推定用パケットの送信レートが利用可能帯域を超えると、受信装置が計測する受信間隔が、送信装置が推定用パケットを送信した送信間隔よりも増加する。従って、受信装置が推定用パケットを受信した受信間隔から、送信装置が推定用パケットを送信した送信間隔を引いた遅延時間を算出し、算出した遅延時間が予め設定された閾値を超えたか否かを判定することで、推定用パケットの受信間隔が当該推定用パケットの送信間隔と比較して増加を始める推定用パケット(遅延開始パケット)を検出する。そして、パケットサイズ(定数)を、検出した遅延開始パケットに基づく送信間隔で割ることにより、利用可能帯域を算出(推定)する。
【0008】
このように、上述した非特許文献1のネットワーク帯域推定システムでは、受信した推定用パケット(j番目の推定用パケット(j>1:jは自然数))の情報と、1つ前に受信した推定用パケット(j−1番目の推定用パケット)の情報と、に基づいて、遅延時間を算出する。しかしながら、上述した遅延開始パケット付近の遅延時間は微小であり、ネットワーク状態によって帯域とは関係のないノイズ等の影響を受けることがあった。例えば、無線環境における電波品質の変動による遅延により推定用パケットの受信時刻に揺らぎが生じることがあった。この結果、上述した遅延開始パケットが複数検出されるおそれがあり、誤った遅延開始パケットを検出することにより、利用可能帯域の推定精度が劣化するという問題があった。
【0009】
また、上記した特許文献1のネットワーク帯域推定システムでは、利用可能帯域の推定精度の劣化を防止するために、統計的な手法を利用する技術が記載されている。具体的には、送信装置が、送信間隔を変えた異なるパケットペア(2つのパケット)を送信し、受信装置が、受信したパケットペアの受信間隔を計測し、記憶部に記憶する。そして、記憶部に記憶された複数の送信間隔と受信間隔とを用いて、送信間隔と受信間隔との傾向が変わる箇所を統計的に算出する。
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1のネットワーク帯域推定システムでは、統計的な手法を利用して利用可能帯域を推定するので、送信装置から受信装置へ一度のタイミングで送信したパケットペアだけでは、利用可能帯域の推定精度が低くなるおそれがあり、利用可能帯域の推定精度を向上させるのに時間がかかるという問題があった。
【0011】
このため、本発明の目的は、利用可能帯域の推定精度を向上するために時間がかかるという問題を解決することができる情報処理システムを提供させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の一態様における情報処理システムは、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する推定用パケット送信手段を備える送信装置と、前記受信装置と、を備え、
前記受信装置は、
前記推定用パケット送信手段から送信された前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記受信時刻に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備えるという構成を取る。
【0013】
また、本発明の他の形態である情報処理装置は、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備えるという構成を取る。
【0014】
また、本発明の他の形態である情報処理方法は、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信し、
受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得し、
受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出し、
検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する、
という構成を取る。
【0015】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、
情報処理装置に、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する帯域算出手段と、
を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、迅速かつ高精度にネットワークの帯域推定処理を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
まず、本発明の実施形態の理解を容易にするために、本発明に関連するネットワークの帯域推定システムの例について説明する。ネットワークの帯域推定システムでは、送信装置が送信する推定用パケットの所定のパラメータxに対し、受信装置が受信する推定用パケットのxに依存するパラメータy(x)の変化点を算出することで帯域の推定を行う。x,y(x)の組としては、例えば(x,y)=(送信レート、受信レートと送信レートの差分)や、(x,y)=(送信間隔、受信間隔と送信間隔の差分)等がある。
【0019】
例えば、上述した非特許文献1では、パケットサイズが同一である複数の推定用パケットを送信し、送信した推定用パケットの送信間隔と、受信した推定用パケットの受信間隔とから、受信間隔が送信間隔に対して増加し始める推定用パケット(遅延開始パケット)を検出する。そして、検出した遅延開始パケットの情報を用いて利用可能帯域を推定する。
【0020】
以下に、遅延開始パケットの検出処理について具体的に説明する。まず、推定用パケットの送信遅延時間の累積値を表すパケット遅延累積値Q(i)(iは自然数)を数1式のように定義する。
【0022】
数1式のT
s(i)はi番目に送信した推定用パケットの送信時刻を示しており、T
r(i)はi番目に送信した推定用パケットの受信時刻を示している。つまり、数1式のパケット遅延累積値Q(i)は、i番目に送信した推定用パケットの受信時刻から最初(1番目)に送信した推定用パケットの受信時刻を引いた値(最初とi番目の推定用パケットの受信間隔)と、i番目に送信した推定用パケットの送信時刻から最初に送信した推定用パケットの送信時刻を引いた値(最初とi番目の推定用パケットの送信間隔)と、の差分により算出される。
【0023】
上述した非特許文献1では、Q(i)−Q(i−1)の値(i番目の推定用パケットを受信した時のパケット遅延累積値の増加量)が、予め設定された閾値を超えたときに、送信した推定用パケットに遅延が発生したと判定する。
【0024】
パケット遅延累積値Q(i)は、推定用パケットの受信間隔と送信間隔の差分により算出されるので、受信間隔が送信間隔に比べて大きくなるほど増加する。送信間隔に比べて受信間隔が増加するということは、通信網13に輻輳等が発生し、遅延が発生することを表している。つまり、i番目の推定用パケットを受信した時のパケット遅延累積値の増加量が閾値を超えた場合、i番目の推定用パケットは通信網13の送信レート(利用可能帯域)を超える。従って、i番目の推定用パケットの送信レートR(i)を算出することで利用可能帯域を推定することができる。送信レートR(i)は、以下の数2式により算出される。
【0026】
数2式のP(i)はi番目の推定用パケットのパケットサイズを示している。すなわち、送信レートR(i)は、i番目の推定用パケットのパケットサイズを、i番目と(i+1)番目の推定用パケットの送信間隔で割った値により算出される。また、数1式のQ(i)は、以下の数3式に書き換えられる。
【0028】
ここで、ΔT
r(j)は(j−1)番目とj番目の推定用パケットの受信間隔を表し、ΔT
s(j)は(j−1)番目とj番目の推定用パケットの送信間隔を表している。なお、T
r(0)=T
r(1)であり、T
s(0)=T
s(1)であるとする。このとき、数3式より、Q(i)−Q(i−1)は以下の数4式のように表わされる。
【0030】
すなわち、Q(i)−Q(i−1)は、(i−1)番目とi番目の推定用パケット(相互に前後する推定用パケット)の受信間隔から、(i−1)番目とi番目の推定用パケットの送信間隔を引いた値により表わされる。ところで、数4式の値は微小であり、遅延が発生し始める推定用パケットを検出する際にノイズなどの影響を受けやすい。例えば
図1に示すように、本来、遅延が発生し始める推定用パケット301(適切な推定用パケット)より前の推定用パケット302が誤って検出されることがある。推定用パケット302は、推定用パケット301より前に送信された推定用パケットであるので、推定用パケット302に基づいて推定するネットワークの帯域(利用可能帯域)は過小評価されることがある。この結果、最適な送信レートよりも低い送信レートが設定され、パケットの転送効率が低下する。
【0031】
また、例えばノイズ等の影響により、
図1に示すように、推定用パケット301よりも後の推定用パケット303が誤って検出されることがある。推定用パケット303は、推定用パケット301より後に送信された推定用パケットであるので、推定用パケット303に基づいて推定するネットワークの帯域は過大評価されることがある。この結果、最適な送信レートよりも高い送信レートが設定され、ネットワークに輻輳等が発生する。このように、数4式の値に基づいて帯域を推定する場合、ノイズ等の影響を受けやすくネットワークの帯域の推定精度が劣化することがあった。
【0032】
以上の帯域推定システムをふまえて、本発明の第1実施形態を、
図2乃至
図10を参照して説明する。
図2乃至
図8は、第1実施形態における情報処理システムの構成を説明するための図である。
図9と
図10は、情報処理システムの動作を説明するための図である。
【0033】
[構成]
図2は、本発明の第1実施形態にかかる情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理システム1は、送信装置11と、受信装置12と、通信網13(ネットワーク)と、を備える。送信装置11は、通信網13の利用可能帯域を推定するために、複数の推定用パケット(例えば試験パケット)を受信装置12へ送信する。受信装置12は、送信装置11から送信された複数の推定用パケットを受信し、受信した推定用パケットに基づいて、通信網13の利用可能帯域の推定処理を行う。
【0034】
次に、
図3と
図4を参照して、送信装置11と受信装置12(情報処理装置)との構成について説明する。
図3は、送信装置11の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、送信装置11は、演算部21と、メモリ22と、通信部23と、記憶部24と、を備えている。
【0035】
演算部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成される。演算部21は、記憶部24に記憶されたプログラムを読み込み、メモリ22を作業領域としてプログラムを実行することにより、送信装置11を制御するための各種機能を実行する。演算部21の機能的構成については、
図5を参照して後述する。通信部23は、後述する送信制御部52にて送信が指示された推定用パケットを、通信網13を介して受信装置12へ送信する。
【0036】
図4は、受信装置12の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、受信装置12は、演算部31と、メモリ32と、通信部33と、記憶部34と、を備えている。なお、
図4の受信装置12の構成は、
図3の送信装置11と同様の構成を有している。
【0037】
演算部31は、記憶部34に記憶されたプログラムを読み込み、メモリ32を作業領域としてプログラムを実行することにより、受信装置12を制御するための各種機能を実行する。演算部31の機能的構成については、
図5を参照して後述する。通信部33は、送信装置11から送信された推定用パケットを受信する。そして、受信装置12は、受信した推定用パケットに基づいて、通信網13の帯域の推定処理を行う。
【0038】
次に、
図5を参照して、送信装置11と受信装置12との各構成の詳細について説明する。
図5は、送信装置11と受信装置12との機能的構成例を示すブロック図である。送信装置11の演算部21は、プログラムを実行することにより、推定用パケット生成部51と、送信制御部52(推定用パケット送信手段)と、を有する。また、受信装置12の演算部31は、プログラムを実行することにより、受信制御部61(推定用パケット受信手段)と、パケット情報取得部62(パケット情報取得手段)と、記憶制御部63と、変化点算出部64(遅延開始パケット検出手段)と、帯域算出部65(帯域算出手段)と、を有する。
【0039】
最初に、送信装置11の推定用パケットの送信処理について説明する。まず、送信装置11の推定用パケット生成部51は、複数の推定用パケットを生成する。例えば、推定用パケット生成部51は、パケット番号を順次に設定し、パケット番号の増加とともに、パケットサイズが線形に増加するn個(nは自然数)の推定用パケットを生成する。つまり、i番目(0<i≦n)の推定用パケットのパケットサイズは以下の数5式により示される。
【0041】
数5式に示すように、i番目の推定用パケットのパケットサイズP
iは、最初(1番目)の推定用パケットのパケットサイズP
1に、最初から(i−1)番目までの推定用パケットのパケット増加サイズΔP(すなわち推定用パケットの個数(i―1)とパケット増加サイズΔPとの積)を加えた値により算出できる。なお、推定用パケット生成部51のパケットサイズの算出方法は、上記の数5式に限らず、通信網13の帯域推定処理に必要な情報であればいかなる情報でもよい。例えば、推定用パケット生成部51は、パケット番号の増加と共に、パケットサイズを減少するように推定用パケットのパケットサイズを決定してもよい。また、推定用パケット生成部51は、パケット番号にかかわらず推定用パケットのパケットサイズを一定としてもよい。
【0042】
続いて、送信制御部52は、送信時刻を取得する。送信制御部52は、順次に送信する推定用パケット間の送信間隔が予め設定された一定の送信間隔となるように、i番目の推定用パケットの送信時刻を取得する。つまり、i番目の推定用パケット送信間隔は以下の数6式に示すように一定(例えば1ミリ秒)になる。
【0044】
続いて、送信制御部52は、取得した送信時刻まで待機し、送信時刻になった時に、通信部23と通信網13とを介して受信装置12へ、送信時刻を付加した推定用パケットを送信する。そして、送信制御部52は、推定用パケット生成部51にて生成された全ての推定用パケットを送信するまで、上述した推定用パケットの送信処理を繰り返す。このように、送信制御部52は、予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、通信網13を介して接続された受信装置12に対して予め設定された送信間隔で送信する。これにより、送信装置11は、通信網13の利用可能帯域を推定するための推定用パケットを受信装置12へ送信することができる。
【0045】
次に、受信装置12の帯域推定処理について説明する。まず、受信制御部61は、送信装置11から送信された推定用パケットを、通信部33を介して受信する。続いて、パケット情報取得部62は、受信制御部61にて受信した推定用パケットのパケット情報を取得する。パケット情報は、例えば、推定用パケットのパケット番号と、パケットサイズと、送信時刻と、受信時刻等である。なお、パケット情報は、これらに限定されず、帯域推定処理に必要な情報であれば、いかなる情報でも良い。
【0046】
続いて、記憶制御部63は、パケット情報取得部62にて取得したパケット情報を記憶部34(又はメモリ32)に記憶する。例えば、記憶制御部63は、
図6に示すように、各推定用パケットのパケット情報を管理するパケット情報管理テーブル81を記憶部34に記憶する。
【0047】
続いて、受信制御部61は、送信装置11から送信された推定用パケットを全て受信したか否かを判定する。具体的には、受信制御部61は、予め記憶した推定用パケットの数、または、送信装置11から通知された推定用パケットの数に基づいて、全ての推定用パケットを受信したか否かを判定する。まだ全ての推定用パケットを受信していない場合、受信制御部61は、推定用パケットの受信処理を繰り返す。一方、全ての推定用パケットを受信した場合、変化点算出部64は、変化点の算出を行う。以下に、変化点の算出方法について説明する。
【0048】
通信網13において推定用パケットの送信にかかる遅延時間が増加し始める変化点をkとすると、上述した数4式は、理論的に以下の数7式のように表すことができる。
【0050】
P
jは、j番目の推定用パケットのパケットサイズ(byte)を表す。Cは定数であり、例えば物理帯域(bps)を表す。つまり、ΔT
r(j)−ΔT
s(j)の値は、1番目の推定用パケットからk番目の推定用パケットまでは0になる。また、ΔT
r(j)−ΔT
s(j)の値は、(k+1)番目からj番目の推定用パケットまでは、現在のパケット番号jの推定用パケットのパケットサイズからk番目の推定用パケットのパケットサイズを引いた値を、物理帯域で割った値になる。このΔT
r(j)−ΔT
s(j)の値は、通信網13において輻輳等が発生し、所定時間内に転送できなかったパケットサイズのデータを送信するためにかかる時間(すなわち遅延時間)を表す。パケットサイズPは数5式に示すように線形に増加するので、数7式は
図7のように線形に増加する。なお、数7式のCは、物理帯域に限らず、利用可能帯域や無線の有効帯域であってもよい。
【0051】
また、数7式より、上記した数3式のパケット遅延累積値Q(i)は、以下の数8式で書き直せる。
【0053】
つまり、パケット遅延累積値Q(i)は、k番目と(k+1)番目の推定用パケットのパケットサイズの差分から、k番目とi番目の推定用パケットのパケットサイズの差分までの総和を、物理帯域Cで割ることにより算出される。ここで、jにiを代入し、i>kについて数8式を展開すると、数9式が得られる。
【0055】
Q(i)>0、つまりi>kとなるiであれば上記式に代入することで変化点kを求めることが可能である。なお、推定用パケットのパケットサイズの増加量は一定であるので、パケット増加サイズΔPは定数になる。ここで、ノイズ等の影響を最も受けにくいパケット遅延累積値Q(i)は、送信装置11から送信された最後(n番目)の推定用パケットを参照したパケット遅延累積値Q(n)になる。なぜなら、最後の推定用パケットは、通信網13に輻輳が発生するのに十分な大きさのパケットサイズが設定されているので、ノイズ等が最後の推定用パケット(例えば最後の推定用パケットの受信時間)に与える影響は微差になる(ノイズ等の影響に関わらず輻輳が発生する)ためである。従って、数9式にi=nを代入して解の公式を用いると、遅延が開始する変化点kは、以下の数10式により算出される。
【0057】
ここで、パケット遅延累積値Q(n)は上述した数1式にて定義したように、最後(n番目)の推定用パケットの受信時刻から最初(1番目)の推定用パケットの受信時刻を引いた値(最初と最後の推定用パケットの受信間隔)と、最後の推定用パケットの送信時刻から最初の推定用パケットの送信時刻を引いた値(最初と最後の推定用パケットの送信間隔)と、の差分により算出される。なお、最初の推定用パケットは、通信網13に輻輳が発生しないように十分に小さなパケットサイズが設定されているので、最後の推定用パケットと同様にノイズ等の影響を受けにくい。
【0058】
つまり、変化点算出部64は、算出した推定用パケットの送信にかかる遅延時間の累積値を表すパケット遅延累積値に基づいて遅延開始パケットを検出する。よって、変化点算出部64は、ノイズ等の影響を受けにくい最初と最後の推定用パケットのパケット情報(例えば受信時刻)に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出(変化点を算出)することができるので、高精度に遅延開始パケットを検出することができる。
【0059】
変化点算出部64が、数10式を用いて変化点を算出すると、帯域算出部65は、算出された変化点に基づいて通信網13の利用可能帯域を算出(推定)する。具体的には、以下の数11式により、帯域算出部65は通信網13の利用可能帯域を算出する。
【0061】
ここで、数11式の分子の値は、k番目の推定用パケットのパケットサイズを表している(数5式参照)。また、数11式の分母の値は、送信間隔を表している(数6式参照)。つまり、利用可能帯域Bは、k番目の推定用パケットのパケットサイズを、送信間隔で割ることにより算出される。
【0062】
以降、受信制御部61が送信装置11から送信された複数の推定用パケットを全て受信した時に、パケット情報取得部62がパケット情報を取得し、変化点算出部64が変化点を算出し、帯域算出部65が通信網13の帯域を算出(推定)する各処理が継続される。そして、受信装置12が算出した利用可能帯域に基づいて、所定のネットワークアプリケーションが、遅延が発生しないように(通信網13において輻輳が発生しないように)送信データを制御する。
【0063】
このように、送信装置11から送信された推定用パケットが、ノイズ等の通信網13の輻輳と無関係な影響を受ける場合に、ノイズ等の影響を最も受けにくい最初と最後の推定用パケットの受信時刻と送信時刻とのそれぞれを用いて、遅延が開始する推定用パケットを検出するので、通信網13の帯域の推定精度を向上することができる。
【0064】
[動作]
次に、
図9と
図10を参照して、情報処理システム1の動作について説明する。
図9は、送信装置11の動作を示すフローチャートである。
図10は、受信装置12の動作を示すフローチャートである。
【0065】
図9の推定用パケット送信処理では、まず、推定用パケット生成部51が、複数の推定用パケットを生成する(ステップS1)。例えば、推定用パケット生成部51は、パケット番号の増加とともに、パケットサイズが線形に増加するn個の推定用パケットを生成する。
【0066】
次に、送信制御部52は、送信時刻を取得する(ステップS2)。例えば、送信制御部52は、順次に送信される推定用パケット間の送信間隔が、予め設定された一定の送信間隔となるようにi番目の推定用パケットの送信時刻を取得する。
【0067】
続いて、送信制御部52は、ステップS2の処理にて取得した送信時刻まで待機する(ステップS3)。そして、送信制御部52は、通信部23と通信網13とを介して受信装置12へ、送信時刻を付加した推定用パケットを送信する(ステップS4)。
【0068】
続いて、送信制御部52は、全ての推定用パケットを送信したか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、送信制御部52は、ステップS1の処理にて生成されたn個の推定用パケット全てが受信装置12へ送信されたか否かを判定する。ステップS5の処理にて、全ての送信用パケットが送信されていないと判定された場合(ステップS5:No)、処理はステップS2に戻り、送信制御部52は、(i+1)番目の送信用パケットの送信時刻を取得する。そして、ステップS3以降の処理が繰り返される。
【0069】
一方、ステップS5の処理にて、全ての推定用パケットを送信したと判定した場合(ステップS5:Yes)、推定用パケット送信処理は終了する。
【0070】
次に、
図10を参照して、受信装置12の帯域推定処理について説明する。
図10の帯域推定処理では、まず、受信制御部61は、送信装置11から送信された推定用パケットを受信する(ステップS21)。続いて、パケット情報取得部62は、パケット情報を取得する(ステップS22)。
【0071】
続いて、記憶制御部63は、ステップS22の処理にて取得したパケット情報を記憶する(ステップS23)。そして、受信制御部61は、全ての推定用パケットを受信したか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24において、全ての推定用パケットを受信していないと判定した場合(ステップS24:No)、処理はステップS21に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0072】
一方、ステップS24の処理にて、全ての推定用パケットを受信したと判定した場合(ステップS24:Yes)、変化点算出部64は、変化点を算出する(ステップS25)。変化点の算出方法は、数10式を参照して説明したので省略する。そして、帯域算出部65は、ステップS25の処理にて算出した変化点にて示される推定用パケットのパケット情報を取得する(ステップS26)。具体的には、帯域算出部65は、変化点算出部64が、算出した変化点に基づいて検出した推定用パケットのパケットサイズを取得する。
【0073】
最後に、帯域算出部65は、ステップS26の処理にて取得したパケット情報を用いて、利用可能帯域を算出する(ステップS27)(数11式参照)。ステップS27の処理の後、受信装置12の利用可能帯域推定処理は終了する。
【0074】
このように、送信装置11から送信された推定用パケットがノイズ等の影響を受ける場合に、ノイズ等の影響を最も受けにくい最初と最後の推定用パケットの受信時刻と送信時刻とのそれぞれを用いて、遅延が開始する推定用パケットを検出し、帯域を推定するので、帯域の推定精度を向上することができる。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を、
図11と
図12を参照して説明する。
図11は、情報処理システムの構成を説明するための図である。
図12は、情報処理システムの動作を説明するための図である。第2実施形態では、受信装置12が推定用パケットを受信するごとに変化点を算出する点が、第1実施形態と異なる。
【0076】
[構成]
まず、
図11を参照して第2実施形態における情報処理システム101の構成について説明する。なお、第1実施形態における情報処理システム1と同様の構成を有するものには同じ符号が付されている。すなわち、
図11の情報処理システム101は、受信装置12が変化点カウント部111を有する点が
図5の情報処理システム1と異なり、それ以外の構成については
図5の情報処理システム1と同様である。
【0077】
第2実施形態では、受信制御部61が推定用パケットを受信すると、パケット情報取得部62が、受信制御部61にて受信した推定用パケットのパケット情報を取得する。続いて、変化点算出部64は、パケット情報取得部62にて取得したパケット情報に基づいて、変化点を算出する。具体的には、変化点算出部64は、上記した数10式と、最初の推定用パケットのパケット情報(例えば受信時刻と送信時刻)と、最後の推定用パケット(直前に受信した推定用パケット)のパケット情報と、に基づいて、変化点を算出する。
【0078】
次に、変化点カウント部111は、変化点算出部64にて算出した同じ変化点が算出された回数を記録(カウント)する。そして、変化点カウント部111は、同じ変化点が予め設定された閾値以上算出されたか否かを判定する。受信装置12は、同じ変化点が閾値以上算出されるまで上述した変化点の算出処理を繰り返す。そして、変化点カウント部111は、同じ変化点が閾値以上算出されたと判定した場合に、当該変化点を帯域算出部65に出力する。なお、変化点カウント部111は、変化点算出部64にて算出した変化点に基づく同じ推定用パケットが検出された回数を記録してもよい。
【0079】
続いて、帯域算出部65は、変化点カウント部111から出力された変化点を取得し、取得した変化点に基づいて変化点算出部64により検出される推定用パケットのパケット情報を取得する。そして、帯域算出部65は、取得したパケット情報(具体的にはパケットサイズ)に基づいて、利用可能帯域を算出する(数11式)。このように、情報処理システム101では、変化点算出部64が、受信制御部61が推定用パケットを受信する度に、受信した複数の推定用パケットのうち、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて変化点を算出する(遅延開始パケットを検出する)。そして、変化点カウント部111(帯域算出手段)は、算出した同じ変化点の算出回数(同じ遅延開始パケットの検出回数)をカウントし、同じ変化点が予め設定された回数以上算出された場合に、帯域算出部65は、当該変化点(当該遅延開始パケットのパケットサイズ)を用いて帯域を算出する。この結果、第1実施形態の情報処理システム1のように、予め設定されたn個の推定用パケット全てを受信するより前に、帯域を算出するので、より迅速に高精度な帯域を推定することができる。
【0080】
[動作]
次に、
図12を参照して、第2実施形態における受信装置12の帯域推定処理について説明する。なお、
図12の帯域推定処理のステップS41乃至S44,S46,S47の処理は、
図10の帯域推定処理のステップS21乃至S23,S25乃至S27の処理と同様の処理であるので、簡単に説明する。また、送信装置11の推定用パケット送信処理は、
図9を参照して上述したので、その説明は省略する。
【0081】
図12の帯域推定処理では、まず、受信制御部61は、推定用パケットを受信する(ステップS41)。続いて、パケット情報取得部62は、パケット情報を取得する(ステップS42)。続いて、記憶制御部63は、ステップS42の処理にて取得したパケット情報を記憶する(ステップS43)。
【0082】
そして、変化点算出部64は、変化点を算出する(ステップS44)。次に、変化点カウント部111は、同じ変化点が閾値以上算出されたか否かを判定する(ステップS45)。同じ変化点が閾値以上算出されていないと判定した場合(ステップS45:No)、処理はステップS41に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0083】
一方、ステップS45において、同じ変化点が閾値以上算出されたと判定した場合(ステップS45:Yes)、帯域算出部65は、ステップS45の処理にて閾値以上算出したと判定された変化点にて示される推定用パケットのパケット情報を取得する(ステップS46)。そして、帯域算出部65は、ステップS46の処理にて取得したパケット情報を用いて、利用可能帯域を算出する(ステップS47)。ステップS47の処理の後、受信装置12の帯域推定処理は終了する。
【0084】
このように、受信装置12は、算出した変化点の算出回数をカウントし、同じ変化点が予め設定された回数以上算出された場合に、当該変化点を用いて帯域を算出するので、十分に信頼できる変化点を最終パケットが到着する前に発見することができる。この結果、帯域の推定精度が向上できるとともに、短時間で通信網13の帯域の推定処理を完了することができる。
【0085】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態にかかる情報処理システムについて
図13を参照して説明する。
第3実施形態に係る情報処理システム201は、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワーク213を介して接続された受信装置212に対して予め設定された送信間隔で送信する送信制御部221(推定用パケット送信手段)を備える送信装置211と、受信装置212と、を備え、
受信装置212は、
送信制御部221から送信された推定用パケットを受信する受信制御部231(推定用パケット受信手段)と、
受信制御部231にて受信した推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを取得するパケット情報取得部232(パケット情報取得手段)と、
受信制御部231にて受信した複数の推定用パケットのうち、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する変化点算出部233(遅延開始パケット検出手段)と、
変化点算出部233にて検出した遅延開始パケットのパケットサイズを用いてネットワーク213の帯域を算出する帯域算出部234(帯域算出手段)と、
を備える。
【0086】
上記構成により、まず送信装置211が、予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワーク213を介して接続された受信装置212に対して予め設定された送信間隔で送信する。そして、受信装置212が、受信した複数の推定用パケットのうち、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて、遅延開始パケットを検出する。続いて、受信装置212は、検出した遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する。この結果、送信装置211から送信した推定用パケットがネットワークにおいてノイズ等の影響を受けた場合でも、ノイズ等の影響が小さくなるように最初と最後の推定用パケットの受信時刻を用いて、受信間隔が変化し始める(遅延が開始する)推定用パケットを検出するので、ネットワーク213の帯域の推定精度を向上することができる。
【0087】
以上、上記実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成及び詳細に、本願発明の範囲内において当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0088】
なお、本願発明においては、推定する帯域は利用可能帯域に限らず、物理帯域であってもよい。また、これらに限定されず、TCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)の実効スループットなどであっても良い。
【0089】
さらに、本願発明においては、パケットサイズおよび送信間隔はそれぞれ固定であってもよく、可変であってもよい。どの場合でも、上記した式を適宜修正して利用することができる。
【0090】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における情報処理装置等の構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0091】
(付記1)
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する推定用パケット送信手段を備える送信装置と、前記受信装置と、を備え、
前記受信装置は、
前記推定用パケット送信手段から送信された前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記受信時刻に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備える情報処理システム。
【0092】
上記構成により、まず送信装置が、予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する。そして、受信装置が、受信した複数の推定用パケットのうち、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて、遅延開始パケットを検出する。続いて、受信装置は、検出した遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する。この結果、送信装置から送信した推定用パケットが通信網においてノイズ等の影響を受けた場合でも、ノイズ等の影響が小さくなるように最初と最後の推定用パケットの受信時刻を用いて、受信間隔が変化し始める(遅延が開始する)推定用パケットを検出するので、ネットワークの帯域の推定精度を向上することができる。
【0093】
(付記2)
付記1に記載の情報処理システムであって、
前記推定用パケット受信手段は、前記推定用パケット送信手段から予め設定された複数の前記推定用パケットを全て受信し、
前記遅延開始パケット検出手段は、前記推定用パケット受信手段にて全ての前記推定用パケットを受信した後に、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記受信時刻に基づいて、前記遅延開始パケットを検出する、
情報処理システム。
【0094】
上記構成により、パケット情報取得手段は、推定用パケットの送信時刻をさらに取得する。そして、遅延開始パケット検出手段は、予め設定された複数の推定用パケットを全て受信した後に、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて、遅延開始パケットを検出する。このように、ノイズ等の影響を最も受けにくい、最初と最後の推定用パケットの受信時刻を利用して遅延開始パケットを検出するので、より高精度にネットワークの帯域を推定することができる。
【0095】
(付記3)
付記1に記載の情報処理システムであって、
前記遅延開始パケット検出手段は、前記推定用パケット受信手段にて前記推定用パケットを受信する度に、受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの受信時刻に基づいて、前記遅延開始パケットを検出し、
前記帯域算出手段は、前記遅延開始パケット検出手段にて検出した同じ遅延開始パケットの検出回数が予め設定された閾値以上になる場合に、当該遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する、
情報処理システム。
【0096】
上記構成により、パケット情報取得手段は、推定用パケットの送信時刻をさらに取得する。そして、遅延開始パケット検出手段は、推定用パケット列を受信する度に、受信した複数の推定用パケットのうち、最初と最後に受信した推定用パケットの受信時刻に基づいて、遅延開始パケットを検出する。そして、帯域算出手段は、検出した同じ遅延開始パケットの検出回数が予め設定された閾値以上になる場合に、当該遅延開始パケットのパケットサイズを用いてネットワークの帯域を算出する。このように、十分に信頼できる回数だけ検出された遅延開始パケットのパケットサイズを用いてネットワークの帯域を算出するので、送信装置から送信される推定用パケット全てを受信する前にネットワークの帯域を算出することができ、短時間に高精度な帯域を推定することができる。
【0097】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の情報処理システムであって、
前記パケット情報取得手段は、前記推定用パケットの送信時刻をさらに取得し、
前記遅延開始パケット検出手段は、前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最後の推定用パケットの受信時刻から最初の推定用パケットの受信時刻を引いた受信間隔と、最後の推定用パケットの送信時刻から最初の推定用パケットの送信時刻を引いた送信間隔と、の差分を、前記推定用パケットの送信にかかる遅延時間の累積値を表すパケット遅延累積値として算出し、算出した前記パケット遅延累積値に基づいて前記遅延開始パケットを検出する、
情報処理システム。
【0098】
上記構成により、遅延開始パケット検出手段は、推定用パケット受信手段にて受信した複数の推定用パケットのうち、最後の推定用パケットの受信時刻から最初の推定用パケットの受信時刻を引いた受信間隔と、最後の推定用パケットの送信時刻から最初の推定用パケットの送信時刻を引いた送信間隔と、の差分をパケット遅延累積値として算出する。そして、変化点算出部64は、算出した推定用パケットの送信にかかる遅延時間の累積値を表すパケット遅延累積値に基づいて前記遅延開始パケットを検出する。よって、遅延開始パケット検出手段は、ノイズ等の影響を受けにくい最初と最後の推定用パケットのパケット情報に基づいて変化点を算出することができるので、高精度に遅延開始パケットを検出することができる。
【0099】
(付記5)
付記4に記載の情報処理システムであって、
前記遅延開始パケット検出手段は、前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの数nと、前記ネットワークの物理帯域Cと、前記パケット遅延累積値Q(n)と、増加量が一定になる推定用パケットのパケット増加サイズΔPと、を用いた以下の数12式により、
【数12】
前記推定用パケットの送信にかかる遅延時間が増加し始める変化点kを算出する、
情報処理システム。
【0100】
(付記6)
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて前記ネットワークの帯域を算出する帯域算出手段と、
を備える情報処理装置。
【0101】
(付記7)
付記6に記載の情報処理装置であって、
前記推定用パケット受信手段は、前記推定用パケット送信手段から予め設定された複数の前記推定用パケットを全て受信し、
前記遅延開始パケット検出手段は、前記推定用パケット受信手段にて全ての前記推定用パケットを受信した後に、最初に受信した前記推定用パケットの送信時刻および受信時刻と、最後に受信した前記推定用パケットの送信時刻および受信時刻と、に基づいて、前記遅延開始パケットを検出する、
情報処理装置。
【0102】
(付記8)
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信し、
受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得し、
受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出し、
検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する、
情報処理方法。
【0103】
(付記9)
付記8に記載の情報処理方法であって、
予め設定された複数の前記推定用パケットを全て受信し、
全ての前記推定用パケットを受信した後に、最初に受信した前記推定用パケットの送信時刻および受信時刻と、最後に受信した前記推定用パケットの送信時刻および受信時刻と、に基づいて、前記遅延開始パケットを検出する、
情報処理方法。
【0104】
(付記10)
情報処理装置に、
予めパケットサイズが設定された複数の推定用パケットを、ネットワークを介して接続された受信装置に対して予め設定された送信間隔で送信する送信装置から前記推定用パケットを受信する推定用パケット受信手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した前記推定用パケットの受信時刻とパケットサイズとを、パケット情報として取得するパケット情報取得手段と、
前記推定用パケット受信手段にて受信した複数の前記推定用パケットのうち、最初と最後に受信した前記推定用パケットの前記パケット情報に基づいて、相互に前後して送信された推定用パケットとの受信間隔が変化し始める推定用パケットを遅延開始パケットとして検出する遅延開始パケット検出手段と、
前記遅延開始パケット検出手段にて検出した前記遅延開始パケットのパケットサイズを用いて帯域を算出する帯域算出手段と、
を実現させるためのプログラム。